特許第6019628号(P6019628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019628
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/14 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   B60C5/14 Z
   B60C5/14 A
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-51969(P2012-51969)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2013-184601(P2013-184601A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年3月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】芝井 孝志
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−132227(JP,A)
【文献】 特開平05−220866(JP,A)
【文献】 特開2009−241855(JP,A)
【文献】 特開2007−009121(JP,A)
【文献】 特開2009−242538(JP,A)
【文献】 特開2009−242537(JP,A)
【文献】 特開2009−214632(JP,A)
【文献】 特開2009−214826(JP,A)
【文献】 特開2007−313776(JP,A)
【文献】 特開2009−024119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内面に、樹脂組成物からなる層を少なくとも有するインナーライナーと、前記樹脂組成物からなる層とカーカス層とを接着するタイゴム層とを有し、かつ、スプライス部で、前記樹脂組成物からなる層と前記タイゴム層の双方がラップされることなく前記スプライス部をなしており、前記樹脂組成物からなる層のスプライス部と前記タイゴム層のスプライス部とがタイヤ周方向上で同位置に存在し、前記樹脂組成物からなる層のスプライス部の間隙が0〜3mmであり、該スプライス部のタイヤ内面側が、ゴム成分中ブチルゴムを65〜100重量%含むゴム組成物からなる補助ゴムシートでシーリングされてなることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記補助ゴムシートの厚さd(mm)が、0.2≦d≦0.7であることを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記補助ゴムシートの幅w(mm)が、前記スプライス部を中心にしてタイヤ周方向両側にそれぞれ5mm以上あることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気入りタイヤに関する。
【0002】
さらに詳しくは、タイヤ内面に、樹脂組成物からなる層を少なくとも有するインナーライナーを内貼りし、前記樹脂組成物からなる層の端部がタイヤ幅方向にわたってスプライスされているスプライス部を有する空気入りタイヤにおいて、耐空気漏れ性能が高く、かつ、インナーライナーのスプライス部付近においてクラックや剥がれを発生することがなく、ひいては高い耐空気漏れ性能を耐久性良く維持することができる空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0003】
近年、樹脂組成物からなる層を空気入りタイヤのインナーライナーに使用するという提案がされ検討されている。
【0004】
この樹脂組成物からなる層を、実際に空気入りタイヤのインナーライナーに使用するにあたっては、通常、該樹脂組成物からなる層をシート状に形成し、タイヤ成形ドラムに巻き付けてオーバーラップさせるラップスプライス方式により、タイヤの加硫成形工程に供しタイヤを製造するという手法がとられる(特許文献1)。
【0005】
該樹脂組成物からなる層は、該層に、該樹脂組成物とカーカス層を接着するタイゴム層が予め積層された積層シートとされた状態でタイヤ成形ドラムに巻き付けられるやり方、あるいは、タイヤ成形ドラム上で、該樹脂組成物からなる層と該樹脂組成物からなる層とは別個に準備されたタイゴムシートを用いて両者を積層するやり方があり、いずれも樹脂組成物からなる層とタイゴム層が積層されている状態で、タイヤの加硫成形工程に供される。
【0006】
こうして得られた空気入りタイヤは、タイヤ走行開始後にインナーライナーを構成している樹脂組成物からなる層と、加硫接着されたタイゴム層とが剥離してしまう場合があった。
【0007】
これを図で説明すると、図2(a)に示したように、樹脂組成物からなる層2とタイゴム層3とからなる積層体シート1は、刃物などで所要サイズ(長さ)に切断されて、タイヤ成形ドラム上にて、その両端部にラップスプライス部Sを設けて環状を成すようにして重ね合わされラップスプライスされる。なお、該積層体シート1は、1枚の使用のときは、その両端部がラップスプライスされて環状を成すように形成され、あるいは複数枚の使用のときは、それら相互の端部同士がラップスプライスされて繋ぎ合わされ全体で一つの環状を成すように形成される場合などがある。
【0008】
そして、更にタイヤの製造に必要なパーツ材(図示せず)が巻かれ、ブラダーで加硫成形される。加硫成形後においては、図2(b)にモデル図で示したように、樹脂組成物からなる層2がインナーライナー層10を成し、ラップスプライス部S付近では、樹脂組成物からなる層2が、露出している部分とタイゴム層3の中に埋設している部分が形成されている。図2上、上の方がタイヤ内腔側である。
【0009】
すなわち、該樹脂組成物からなる層2のタイヤ周方向端部がタイヤ幅方向にわたってタイゴムを介して重なっているラップスプライス部Sを有し、該ラップスプライス部Sはタイヤ幅方向にわたって存在して空気入りタイヤTが形成されている。
【0010】
そして、上述した樹脂組成物からなる層2と、該樹脂組成物からなる層2と加硫接着されたタイゴム層3とが剥離してしまう現象は、特に、図2(b)で示した樹脂組成物からなる層2が露出していてかつその先端部の付近4などにおいて発生し、まずクラックが発生し、それがさらに進んで樹脂組成物からなる層2やタイゴム層3の剥離現象へと進行していく。
【0011】
一方、タイヤを構成部材のスプライス部においての耐久性とタイヤユニフォミティの改善を目的として、インナーライナー層またはカーカス層のスプライス部に熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物からなる薄膜を、熱溶融させることにより被覆融着させた空気入りタイヤが提案されている(特許文献2、請求項1、同8)。
【0012】
この特許文献2に記載の提案は、スプライス部は、オーバーラップ方式あるいはバット方式(突き合わせ方式)のいずれにも採用されるというものであるが(特許文献2、段落0020、図3図4)、クラックや剥がれを発生の防止という点で、必ずしも十分満足のいくものではなく、高い耐空気漏れ性能を長期にわたり耐久性良く維持するという点では改善の余地があるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−241855号公報
【特許文献2】特開2009−214632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、耐空気漏れ性能が高く、かつ、インナーライナーのスプライス部付近においてクラックや剥がれを発生することがなく、ひいては高い耐空気漏れ性能を耐久性良く維持することができる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的を達成する本発明の空気入りタイヤは、下記(1)の構成を有するものである。
(1)タイヤ内面に、樹脂組成物からなる層を少なくとも有するインナーライナーと、前記樹脂組成物からなる層とカーカス層とを接着するタイゴム層とを有し、かつ、スプライス部で、前記樹脂組成物からなる層と前記タイゴム層の双方がラップされることなく前記スプライス部をなしており、前記樹脂組成物からなる層のスプライス部と前記タイゴム層のスプライス部とがタイヤ周方向上で同位置に存在し、前記樹脂組成物からなる層のスプライス部の間隙が0〜3mmであり、該スプライス部のタイヤ内面側が、ゴム成分中ブチルゴムを65〜100重量%含むゴム組成物からなる補助ゴムシートでシーリングされてなることを特徴とする空気入りタイヤ。
【0016】
また、かかる本発明の空気入りタイヤにおいて、以下の(2)または(3)のいずれかの構成を有することが好ましい。
(2)前記補助ゴムシートの厚さd(mm)が、0.2≦d≦0.7であることを特徴とする上記(1)記載の空気入りタイヤ。
(3)前記補助ゴムシートの幅w(mm)が、前記スプライス部を中心にしてタイヤ周方向両側にそれぞれ5mm以上あることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0017】
請求項1にかかる本発明によれば、タイヤ内面に、樹脂組成物からなる層を少なくとも有するインナーライナーを内貼りし、該樹脂組成物からなる層の端部がタイヤ幅方向にわたってスプライスされているスプライス部を有する空気入りタイヤにおいて、耐空気漏れ性能が高く、かつインナーライナーのスプライス部付近においてクラックや剥がれを発生することがなく、ひいては高い耐空気漏れ性能を耐久性良く維持することができる空気入りタイヤが提供される。
【0018】
請求項2または3にかかる本発明によれば、上述した請求項1にかかる本発明の空気入りタイヤの効果を有するとともに、該効果をより明確かつ高度に有する空気入りタイヤが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)、(b)は、いずれも本発明の空気入りタイヤにおけるスプライス部付近の構造をモデル的に説明するタイヤ周方向の要部断面図である。
図2】本発明に撚らない空気入りタイヤを説明するものであり、(a)は、樹脂組成物からなる層2と、該樹脂組成物からなる層2と加硫接着するタイゴム層3を積層した積層体シート1を所定長さで切断し、タイヤ成形ドラムに巻き付けて、該積層体シート1の両端部をラップスプライスした状態を示すモデル図であり、(b)は、(a)に示した状態で加硫成形した後の状態を示したモデル図である。
図3】本発明にかかる空気入りタイヤの形態の1例を示した一部破砕斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、更に詳しく本発明の空気入りタイヤについて、説明する。
【0021】
本発明の空気入りタイヤは、図1(a)にモデル的に示したように、タイヤ内面に、樹脂組成物からなる層2を少なくとも有するインナーライナー10を有し、樹脂組成物からなる層2のスプライス部の間隙6の間隔Gが0〜3mmであり、該スプライス部Sのタイヤ内面側(内腔側)が、ゴム成分中ブチルゴムを65〜100重量%含むゴム組成物からなる補助ゴムシート5でシーリングされてなることを特徴とする。
【0022】
本発明の空気入りタイヤは、樹脂組成物からなる層2のスプライス部の端部どおしの間隙6の間隔Gが0〜3mmであり、バットスプライス方式(突き合わせつなぎ方式)によりスプライスされている。このようにバットスプライス方式でスプライスされていることにより、スプライス部付近に応力が集中することを防ぎ、インナーライナーの耐剥がれ性が優れた空気入りタイヤを提供することができる。
【0023】
一方、本発明によらないオーバーラップ方式では、上下に樹脂組成物からなる層2がタイゴム層3を挟んで存在していることにより(図2(b))、スプライス部Sに応力が集中し、インナーライナーやタイゴム層の剥がれの原因となるのに対し、本発明の空気入りタイヤでは、インナーライナーやタイゴム層の剥がれの原因となる応力集中は生じない。
【0024】
また、本発明では、特に補助ゴムシート5として、ゴム成分中ブチルゴムを65〜100重量%含むゴム組成物からなるシートを用いてシーリングすることが重要であり、ブチルゴムは耐空気漏れ性に優れているので、従来は空気漏れの一因にもなっていたスプライス部の存在自体という点に対しても優れた耐空気漏れ性能を得ることができる。また、ブチルゴムは、加硫により、樹脂組成物からなる層2との強固な接着・接合が可能であるため、スプライス部での耐剥がれ性能を更に一段と高くすることができる点で優れているのである。その点、ジエン系ゴムは、樹脂組成物からなる層2との強固な接着・接合が難しく、本発明では採用されない。
【0025】
ゴム組成物は、ゴム成分の他、添加剤などを含んでいてもよい。また、ゴム成分中には、ブチルゴム以外にリサイクルゴムなどを上述した範囲を維持して含んでいてもよい。本発明で使用できるブチルゴムは、従来、インナーライナー層としての使用がされていたブチル系ゴムなどを使用できるものである。
【0026】
図1(a)では、樹脂組成物からなる層2のバットスプライスだけをしている場合で説明し、タイゴム層3は、例えばスプライス部のない円筒状に成形されたものを使用した場合、あるいはタイゴム層のスプライス部はタイヤ周方向上の違う位置に存在する場合を想定して説明したが、図1(b)のように、タイゴム層3のスプライス部が樹脂組成物からなる層2のスプライス部と同位置に形成されているものでもよい。図1(b)において、7はタイゴム層のスプライス部の間隙である。
【0027】
この図1(b)に示した態様は、樹脂組成物からなる層2とタイゴム層3を別個に成形ドラムにバットスプライス方式で巻くことでも形成でき、あるいは、それらの層の積層体にしてバットスプライス方式で成形ドラムに巻くことでも形成できる。
【0028】
この図1(b)のように、スプライス部で、樹脂組成物からなる層とタイゴム層の双方がオーバーラップされることなく、スプライス部をなした空気入りタイヤを形成すると、樹脂組成物からなる層のみならず、タイゴム層もオーバーラップしていないことから、樹脂組成物からなる層のスプライス部およびタイゴム層のスプライス部の双方に応力が集中するのを防止でき、一層耐剥がれ性に優れた空気入りタイヤを実現することができる。
【0029】
なお、タイゴム層とは、樹脂組成物からなる層とカーカス層とを接着する機能を有するゴム層をいう。
【0030】
補助ゴムシート5の厚さd(mm)は、0.2≦d(mm)≦0.7であることが好ましい。補助ゴムシート5の厚さd(mm)が、0.2mm以上あると、接着および耐空気漏れ性により効果的であるからであり、補助ゴムシート5の厚さd(mm)が0.7mm以下の場合は耐剥がれ性により効果がある。該厚さdが0.7mmよりも大きい場合には、その厚さが原因(引っかかりやすい、損傷を受けやすいなど)で剥がれやすくなることがあり、好ましくない。
【0031】
また、補助ゴムシート5の幅w(mm)が、スプライス部Sを中心にしてタイヤ周方向両側にそれぞれ5mm以上あることが好ましい。補助ゴムシート5の幅w(mm)が、前記スプライス部を中心にしてタイヤ周方向両側にそれぞれ5mm以上存在することがスプライス部の接着をより効果的にさせるためである。補助ゴムシート5の幅w(mm)の上限は、30mm程度までとすることが好ましい。該幅を30mmを超えるレベルで大きくしても、得られる効果は30mm程度のときとほぼ変わらず、重量増加や剥がれの起点を多くする分、不利な点も生ずるからである。
【0032】
図3は、本発明にかかる空気入りタイヤの形態の1例を示した一部破砕斜視図である。
【0033】
空気入りタイヤTは、トレッド部11の左右にサイドウォール部12とビード部13を連接するように設けている。そのタイヤ内側には、タイヤの骨格たるカーカス層14が、タイヤ幅方向には左右のビード13、13間に跨るように設けられている。トレッド部11に対応するカーカス層14の外周側にはスチールコードからなる2層のベルト層15が設けられている。矢印Xはタイヤ周方向を示している。カーカス層14の内側には、インナーライナー層10が配され、そのスプライス部Sがタイヤ幅方向に延びて存在し、該スプライス部に沿って補助ゴムシート5が配設されている。
【0034】
本発明にかかる空気入りタイヤでは、タイヤ内周面上でこのスプライス部S付近で従来は生じやすかったクラックの発生、インナーライナー10を形成している樹脂組成物からなる層とタイゴム層の間のクラックの発生、それらの剥離の発生が抑制されて耐久性が著しく向上するものである。
【0035】
本発明において、「樹脂組成物」とは、代表的には、「熱可塑性樹脂からなる」か、あるいは「熱可塑性樹脂を主成分として維持しつつ該樹脂にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物」を総称していうものである。後者の場合であっても主成分は熱可塑性樹脂であるものである。
【0036】
また、「層」とは、代表的構造としては所謂「フィルム」である。特に、熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムは、ゴム100%のシートなどと比較して、一般に剛性が大きいという特質を有するものである。
【0037】
それ故に、上述した本発明の構成として、インナーライナーのスプライス部付近を構成し保護することが、空気入りタイヤの寿命を長くする上で重要なのである。
【0038】
本発明で用いることのできる該熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えば、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕及びそれらのN−アルコキシアルキル化物、例えば、ナイロン6のメトキシメチル化物、ナイロン6/610共重合体のメトキシメチル化物、ナイロン612のメトキシメチル化物、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体、(メタ)アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリメタクリレート系樹脂〔例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル〕、ポリビニル系樹脂〔例えば、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PDVC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体(ETFE)〕、セルロース系樹脂〔例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体〕、イミド系樹脂〔例えば、芳香族ポリイミド(PI)〕等を好ましく用いることができる。
【0039】
また、本発明で使用できる「熱可塑性樹脂を主体とする熱可塑性樹脂組成物」の例を構成できる熱可塑性樹脂とエラストマーは、熱可塑性樹脂については上述のものを使用できる。エラストマーとしては、例えば、ジエン系ゴム及びその水添物〔例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR、高シスBR及び低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー〕、含ハロゲンゴム〔例えば、Br−IIR、CI−IIR、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体(BIMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレンゴム(M−CM)〕、シリコンゴム〔例えば、メチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム〕、含イオウゴム〔例えば、ポリスルフィドゴム〕、フッ素ゴム〔例えば、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム〕、熱可塑性エラストマー〔例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ボリアミド系エラストマー〕等を好ましく使用することができる。
【0040】
また、前記した特定の熱可塑性樹脂と前記した特定のエラストマーとの組合せでブレンドをするに際して、相溶性が異なる場合は、第3成分として適当な相溶化剤を用いて両者を相溶化させることができる。ブレンド系に相溶化剤を混合することにより、熱可塑性樹脂とエラストマーとの界面張力が低下し、その結果、分散層を形成しているエラストマーの粒子径が微細になることから両成分の特性はより有効に発現されることになる。そのような相溶化剤としては、一般的に熱可塑性樹脂及びエラストマーの両方または片方の構造を有する共重合体、あるいは熱可塑性樹脂又はエラストマーと反応可能なエポキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、アミノ基、オキサゾリン基、水酸基等を有した共重合体の構造をとるものとすることができる。これらはブレンドされる熱可塑性樹脂とエラストマーの種類によって選定すればよいが、通常使用されるものには、スチレン/エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEBS)及びそのマレイン酸変性物、EPDM、EPM、EPDM/スチレン又はEPDM/アクリロニトリルグラフト共重合体及びそのマレイン酸変性物、スチレン/マレイン酸共重合体、反応性フェノキシン等を挙げることができる。かかる相溶化剤の配合量には特に限定されないが、好ましくは、ポリマー成分(熱可塑性樹脂とエラストマーとの合計)100重量部に対して、0.5〜10重量部がよい。
【0041】
また、熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物においては、特定の熱可塑性樹脂とエラストマーとの組成比は、特に限定されず、熱可塑性樹脂が主たる成分を成し、そのマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとるように適宜決めればよい。
【0042】
本発明において、熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムには、インナーライナーとしての必要特性が損なわれない範囲で相溶化剤などの他のポリマーを混合することができる。他のポリマーを混合する目的は、熱可塑性樹脂とエラストマーとの相溶性を改良するため、材料の成型加工性を良くするため、耐熱性向上のため、コストダウンのため等がある。これに用いられる材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ABS、SBS、ポリカーボネート(PC)等を例示することができる。また、一般的にポリマー配合物に配合される充填剤(炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ等)、カーボンブラック、ホワイトカーボン等の補強剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、顔料、染料、老化防止剤等をインナーライナーとしての必要特性を損なわない限り任意に配合することもできる。
【0043】
また、エラストマーは熱可塑性樹脂との混合の際、動的に加硫することもできる。動的に加硫する場合の加硫剤、加硫助剤、加硫条件(温度、時間)等は、添加するエラストマーの組成に応じて適宜決定すればよく、特に限定されるものではない。
【0044】
加硫剤としては、一般的なゴム加硫剤(架橋剤)を用いることができる。具体的には、イオン系加硫剤としては粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等を例示でき、例えば、0.5〜4phr〔本明細書において、「phr」は、エラストマー成分100重量部あたりの重量部をいう。以下、同じ。〕程度用いることができる。
【0045】
また、有機過酸化物系の加硫剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が例示され、例えば、1〜20phr程度用いることができる。
【0046】
更に、フェノール樹脂系の加硫剤としては、アルキルフェノール樹脂の臭素化物や、塩化スズ、クロロプレン等のハロゲンドナーとアルキルフェノール樹脂とを含有する混合架橋系等が例示でき、例えば、1〜20phr程度用いることができる。
【0047】
その他として、亜鉛華(5phr程度)、酸化マグネシウム(4phr程度) 、リサージ(10〜20phr程度)、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ポリ−p−ジニトロソベンゼン(2〜10phr程度)、メチレンジアニリン(0.2〜10phr程度)が例示できる。
【0048】
また、必要に応じて、加硫促進剤を添加してもよい。加硫促進剤としては、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオ酸塩系、チオウレア系等の一般的な加硫促進剤を、例えば、0.5〜2phr程度用いることができる。
【0049】
具体的には、アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤としては、ヘキサメチレンテトラミン等、グアジニン系加硫促進剤としては、ジフェニルグアジニン等、チアゾール系加硫促進剤としては、ジベンゾチアジルジサルファイド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾール及びそのZn塩、シクロヘキシルアミン塩等、スルフェンアミド系加硫促進剤としては、シクロヘキシルベンゾチアジルスルフェンアマイド(CBS)、N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアマイド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアマイド、2−(チモルポリニルジチオ)ベンゾチアゾール等、チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジサルファイド(TMTD)、テトラエチルチウラムジサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド(TMTM)、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド等、ジチオ酸塩系加硫促進剤としては、Zn−ジメチルジチオカーバメート、Zn−ジエチルジチオカーバメート、Zn−ジ−n−ブチルジチオカーバメート、Zn−エチルフェニルジチオカーバメート、Te−ジエチルジチオカーバメート、Cu−ジメチルジチオカーバメート、Fe−ジメチルジチオカーバメート、ピペコリンピペコリルジチオカーバメート等、チオウレア系加硫促進剤としては、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア等を挙げることができる。
【0050】
また、加硫促進助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができ、例えば、亜鉛華(5phr程度)、ステアリン酸やオレイン酸およびこれらのZn塩(2〜4phr程度)等が使用できる。
【0051】
熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、予め熱可塑性樹脂とエラストマー(ゴムの場合は未加硫物)とを2軸混練押出機等で溶融混練し、連続相(マトリックス)を形成する熱可塑性樹脂中に分散相(ドメイン)としてエラストマーを分散させることによる。エラストマーを加硫する場合には、混練下で加硫剤を添加し、エラストマーを動的加硫させてもよい。また、熱可塑性樹脂またはエラストマーへの各種配合剤(加硫剤を除く)は、上記混練中に添加してもよいが、混練の前に予め混合しておくことが好ましい。熱可塑性樹脂とエラストマーの混練に使用する混練機としては、特に限定はなく、スクリュー押出機、ニーダ、バンバリミキサー、2軸混練押出機等が使用できる。中でも熱可塑性樹脂とエラストマーの混練およびエラストマーの動的加硫には、2軸混練押出機を使用するのが好ましい。更に、2種類以上の混練機を使用し、順次混練してもよい。溶融混練の条件として、温度は熱可塑性樹脂が溶融する温度以上であればよい。また、混練時の剪断速度は1000〜7500sec-1であるのが好ましい。混練全体の時間は30秒から10分、また加硫剤を添加した場合には、添加後の加硫時間は15秒から5分であるのが好ましい。上記方法で製作されたポリマー組成物は、射出成形、押出し成形等、通常の熱可塑性樹脂の成形方法によって所望の形状にすればよい。
【0052】
該熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとる。かかる構造をとることにより、インナーライナーに十分な柔軟性と連続相としての樹脂層の効果により十分な剛性を併せ付与することができると共に、エラストマーの多少によらず、成形に際し、熱可塑性樹脂と同等の成形加工性を得ることができるものである。
【0053】
本発明で使用できる熱可塑性樹脂、エラストマーのヤング率は、特に限定されるものではないが、いずれも、好ましくは1〜500MPa、より好ましくは50〜500MPaにするとよい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例などにより、本発明の空気入りタイヤについて具体的に説明する。
【0055】
なお、各評価特性の測定方法は、以下に記載の方法による。
(1)耐空気漏れ性能の評価:
JATMA標準リムにてリム組みして空気圧230kPaに設定した後、常温にて1ケ月放置して、空気漏れ量(空気圧の漏れ率)を算出した。評価は、従来例1のタイヤを100として指数で表示した。
【0056】
n数は、各実施例、従来例、比較例で、各100本ずつとした。数値が大きいほど、耐空気漏れ性能が優れており、1%で優位さありと判断した。
【0057】
(2)スプライス部の耐剥がれ性能の評価:
ドラム試験機にて内圧120kPa、荷重7.24kN、速度81km/hで、6500kmの走行試験をして後、各試験タイヤ(各実施例、従来例、比較例で、各100本ずつ)の内腔のインナーライナーのスプライス部付近でのインナーライナー層、タイゴム層の剥がれ、クラックの発生の有無等の状況を観察して行った。評価は、従来例1のタイヤを100として指数で表示した。
【0058】
数値が大きいほど、耐空気漏れ性能が優れており、5%で優位さありと判断した。
【0059】
実施例1〜3、従来例1、比較例1〜2
試験タイヤとして、ベルト2層、カーカス1層のタイヤ構造を有するタイヤサイズ195/65R15 91H(15x6J)のタイヤを、インナーライナーのスプライス部の構成を表1に記載したとおりに変更して、各実施例、従来例、比較例ごとに各200本を作製した。
【0060】
各試験タイヤにおいて、インナーライナーを形成する熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムは、熱可塑性樹脂としてN6/66の厚さ130μmのフィルムとタイゴム層の積層シートを用いた。
【0061】
スプライス部は、実施例1〜3と比較例1は、図1(b)に示したとおりのバットスプライス方式で形成した。従来例1と比較例2は、オーバーラップ方式で形成した(オーバーラップ量10mm)。比較例1と比較例2の補助ゴムシートはジエン系のものを使用し、実施例1〜3では、ブチル系ゴム(ゴム成分中、ブチルゴムが75重量%)からなる補助ゴムシートを用いた。
【0062】
それぞれの試験タイヤにおいて、評価した結果を表1に示した。表1からわかるように、本発明にかかる空気入りタイヤは、耐空気漏れ性能、スプライス部の耐剥がれ性能が共に優れている。
【0063】
【表1】
【符号の説明】
【0064】
1:積層体シート
2:樹脂組成物からなる層
3:タイゴム層
4:樹脂組成物からなる層の先端部の付近
5:補助ゴムシート
6:樹脂組成物からなる層のスプライス部の間隙
7:タイゴム層のスプライス部の間隙
10:インナーライナー
11:トレッド部
12:サイドウォール部
13:ビード
14:カーカス層
15:ベルト層
16:ビードフィラー
S:スプライス部
X:タイヤ周方向
G:スプライス部の間隙の間隔(ゲージ)
図1
図2
図3