(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のように、複数の電源回路ユニットを備えた構成では、電源回路ユニットの数が多くなると、マスタの電源回路ユニットの設置位置と他の電源回路ユニットの設置位置が離れる。そうすると、マスタの電源回路ユニットから他の電源回路ユニットに対して送信した同期信号にノイズ等が含まれる可能性がある。このように同期信号にノイズ等が含まれると、該同期信号に基づいて各電源回路ユニットで生成される駆動信号のタイミングがずれてしまう可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、複数のDC−DCコンバータユニットを備えた電力変換装置において、各DC−DCコンバータユニットをより確実に同期させることがきる構成を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態にかかる電力変換装置は、互いに電気的に接続された複数のDC−DCコンバータユニットと、前記複数のDC−DCコンバータユニットをそれぞれ制御する複数のユニット制御部と、前記複数のユニット制御部に対して通信信号を送信するメイン制御部とを備え、前記各ユニット制御部は、前記DC−DCコンバータユニットを制御する際に用いるクロックパルスをカウントするためのカウンタ部と、前記メイン制御部から受信する前記通信信号を用いて前記カウンタ部をリセットするカウンタリセット部とを有する(第1の構成)。
【0008】
以上の構成では、メイン制御部が、各DC−DCコンバータユニットを制御する複数のユニット制御部に対して通信信号を送信することにより、複数のDC−DCコンバータユニットを一つの電力変換システムとして動作させることができる。すなわち、メイン制御部によって、複数のDC−DCコンバータユニットを制御することができる。
【0009】
また、複数のユニット制御部は、それぞれ、DC−DCコンバータユニットを制御する際に用いるクロックパルスの数をカウントするカウンタ部を有するため、ユニット制御部毎に独立してDC−DCコンバータユニットが制御される。そして、各ユニット制御部では、カウンタリセット部によって、メイン制御部から各ユニット制御部に対して送信される通信信号を用いてカウンタ部をリセットすることにより、各ユニット制御部をメイン制御部に同期させることができる。これにより、従来のように常に同期信号を各ユニット制御部に送信する場合に比べて、信号にノイズが含まれるのをより確実に防止できる。
【0010】
したがって、上述の構成により、複数のDC−DCコンバータユニットをより確実に同期させることができる。
【0011】
前記第1の構成において、前記メイン制御部は、前記通信信号を前記複数のユニット制御部に対して周期的に送信するように構成されているのが好ましい(第2の構成)。各ユニット制御部がカウンタ部でクロックパルスをカウントする場合、各ユニット制御部でカウントされるカウントパルスの数にずれが生じる可能性がある。これに対し、上述のように、メイン制御部から複数のユニット制御部に対して周期的に通信信号を送信することにより、各ユニット制御部を定期的に同期させることができる。これにより、複数のユニット制御部をより確実に同期させることができる。
【0012】
前記第2の構成において、前記カウンタリセット部は、前記通信信号の受信を完了したときに、前記カウンタ部をリセットするように構成されているのが好ましい(第3の構成)。こうすることで、各ユニット制御部では、通信信号の受信に応じて、カウンタ部がリセットされる。このように、各ユニット制御部では、通信信号の受信完了時にカウンタ部がリセットされるので、各ユニット制御部でリセットのタイミングを同じタイミングにすることが可能となる。
【0013】
前記第3の構成において、前記通信信号は、信号の長さが一定であるのが好ましい(第4の構成)。これにより、複数のユニット制御部でリセットのタイミングをより確実に合わせることができる。しかも、上述の構成により、信号の長さが変化する場合に比べて、通信信号にノイズが含まれにくくなる。
【0014】
前記第1から第4の構成のうちいずれか一つの構成において、前記通信信号は、前記ユニット制御部の前記カウンタ部をリセットするかどうかを指示するリセット信号を含むのが好ましい(第5の構成)。
【0015】
こうすることで、通信信号を受信したユニット制御部のうち、通信信号内のリセット信号によってカウンタ部をリセットするように指示されたユニット制御部のカウンタ部を、選択的にリセットすることができる。よって、カウンタ部のリセットが必要なユニット制御部のカウンタ部のみをリセットすることが可能になる。
【0016】
前記第1から第5の構成のうちいずれか一つの構成において、前記カウンタリセット部は、前記通信信号を所定回数、受信した場合に、前記カウンタ部をリセットするように構成されているのが好ましい(第6の構成)。
【0017】
これにより、ユニット制御部において、カウンタ部をリセットする頻度を変更することができる。したがって、ユニット制御部のカウンタ部が、不必要に頻繁にリセットされるのを防止できる。
【0018】
前記第6の構成において、前記カウンタリセット部は、前記所定回数を変更可能に構成されているのが好ましい(第7の構成)。これにより、電力変換装置の用途等に応じて、ユニット制御部のカウンタ部をリセットする頻度を変更することが可能になる。
【0019】
前記第1から第7の構成のうちいずれか一つの構成において、前記複数のユニット制御部と前記メイン制御部とは、光通信ケーブルによって、信号の授受可能に接続されているのが好ましい(第8の構成)。
【0020】
複数のDC−DCコンバータユニットを備えた電力変換装置は、装置全体が大型化するため、各ユニット制御部とメイン制御部とを繋ぐ信号線の長さが長くなる。そうすると、各ユニット制御部とメイン制御部との間で信号を授受する際に該信号がノイズの影響を受けやすくなる。これに対し、上述のように、ユニット制御部とメイン制御部とを光通信ケーブルによって接続することにより、信号がノイズの影響を受けるのを抑制できる。しかも、光通信ケーブルを用いることにより、各ユニット制御部とメイン制御部との通信速度を向上することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施形態にかかる電力変換装置によれば、各DC−DCコンバータユニットを制御する複数のユニット制御部は、メイン制御部から受信する通信信号を用いてカウンタ部をリセットする。これにより、複数のDC−DCコンバータユニットをより確実に同期させた状態で駆動させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0024】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る電力変換装置1の概略構成を示す図である。この電力変換装置1は、複数のDC−DCコンバータユニット10と、各DC−DCコンバータユニット10の駆動を制御するための複数のユニット制御部20と、ユニット制御部20との間で信号を送受信するメイン制御部30とを備える。電力変換装置1は、例えばモータ及びバッテリー等を模擬するための自動車用試験装置として用いられる。
【0025】
電力変換装置1では、複数のDC−DCコンバータユニット10が、直列及び並列に接続されている。例えば、
図1に示す例では、2つのDC−DCコンバータユニット10が直列に接続されて直列ユニットを構成するとともに、2つの直列ユニットが並列に接続されている。このような構成にすることで、直列ユニットによって、出力電圧の増大を図れるとともに、直列ユニット同士を並列に接続することによって、出力電流の増大を図れる。
【0026】
なお、
図1の例では、2つのDC−DCコンバータユニット10によって直列ユニットを構成しているが、3つ以上のDC−DCコンバータユニット10によって直列ユニットを構成してもよい。また、複数のDC−DCコンバータユニット10が直列に接続された直列ユニットを3つ以上、並列に接続してもよい。
【0027】
例えば、3つのDC−DCコンバータユニット10によって直列ユニットを構成するとともに、その直列ユニットを並列に4つ接続してもよい。また、電力変換装置1が三相交流モータを模擬する場合には、直列ユニットが並列に接続されたDC−DCコンバータユニット10の組み合わせが、各相に対応して設けられる。よって、電力変換装置1が三相交流モータを模擬する場合、該電流変換装置1には、例えば36ユニットのDC−DCコンバータユニット10が用いられる。
【0028】
各DC−DCコンバータユニット10では、ユニット制御部20から出力されるPWM信号に応じて、DC−DCコンバータユニット10内のスイッチング素子(後述)がスイッチング制御される。DC−DCコンバータユニット10の構成については後述する。
【0029】
ユニット制御部20は、DC−DCコンバータユニット10に対してPWM信号を出力することにより、該DC−DCコンバータユニット10内のスイッチング素子の駆動を制御する。ユニット制御部20は、メイン制御部30に対し、光通信ケーブルによって、信号の授受可能に接続されている。ユニット制御部20は、メイン制御部30との間で信号の送受信を行う。ユニット制御部20は、メイン制御部30から送信される通信信号に応じて、他のユニット制御部20とともに電力変換装置1としての動作が実現可能なように、DC−DCコンバータユニット10の駆動を制御する。ユニット制御部20の構成についても後述する。
【0030】
メイン制御部30は、ユニット制御部20との間で通信信号を送受信するための通信部33を有する。この通信部33は、ユニット制御部20に対してシリアル通信を行う。通信部33は、詳しくは後述するように、送受信する通信信号にノイズが入りにくいようなプロトコルを用いて、各ユニット制御部20と通信を行う。
【0031】
メイン制御部30は、複数のDC−DCコンバータユニット10を有する電力変換装置1が全体として一つの電力変換システムとして機能するように、各DC−DCコンバータユニット10を制御する。メイン制御部30の詳しい構成についても後述する。
【0032】
なお、
図1において、符号2はリアクトルである。
【0033】
(DC−DCコンバータユニット)
次に、
図2を用いて、DC−DCコンバータユニット10の構成について説明する。
【0034】
図2に示すように、DC−DCコンバータユニット10は、トランス13が双方向に交互に励磁される双方向DC−DCコンバータである。DC−DCコンバータユニット10は、単相ブリッジ部11,12と、一方の単相ブリッジ部11に流れる電流によって励磁されることにより他方の単相ブリッジ部12に誘導電流を流すトランス13とを備える。
【0035】
単相ブリッジインバータ11,12の構成について以下で詳しく説明する。
【0036】
単相ブリッジ部11は、並列に接続された2つのスイッチングアーム11a,11bを有する。スイッチングアーム11aは、直列に接続されたスイッチング素子S11,S12を有する。スイッチングアーム11bは、直列に接続されたスイッチング素子S13,S14を有する。スイッチング素子S11〜S14には、それぞれ、ダイオードD11〜D14が逆並列に接続されている。
【0037】
スイッチングアーム11aにおいて、スイッチング素子S1とスイッチング素子S2との中点は、リアクトル14を介して、トランス13の巻線13aの一端側に接続されている。スイッチングアーム11bにおいて、スイッチング素子S3とスイッチング素子S4との中点は、トランス13の巻線13aの他端側に接続されている。
【0038】
これにより、スイッチング素子S11〜S14を用いたブリッジ回路が形成される。
【0039】
単相ブリッジ部12は、単相ブリッジ部11と同様、並列に接続された2つのスイッチングアーム12a,12bを有する。スイッチングアーム12aは、直列に接続されたスイッチング素子S21,S22を有する。スイッチングアーム12bは、直列に接続されたスイッチング素子S23,S24を有する。スイッチング素子S21〜S24には、それぞれ、ダイオードD21〜D24が逆並列に接続されている。
【0040】
スイッチングアーム12aにおいて、スイッチング素子S21とスイッチング素子S22との中点は、トランス13の巻線13bの一端側に接続されている。スイッチングアーム12bにおいて、スイッチング素子S23とスイッチング素子S24との中点は、トランス13の巻線13bの他端側に接続されている。
【0041】
これにより、スイッチング素子S21〜S24を用いたブリッジ回路が形成される。
【0042】
単相ブリッジ部12の出力側には、該単相ブリッジ部12から出力される交流電圧を平滑化するためのコンデンサ15が設けられている。また、単相ブリッジ部12の出力側には、リアクトル16も設けられている。
【0043】
単相ブリッジ部11,12のスイッチング素子S11〜S14,S21〜S24は、それぞれ、ユニット制御部20から出力されるPWM信号に応じて、オン状態またはオフ状態になる。ユニット制御部20は、トランス13の巻線13aに交流電流が流れるように、単相ブリッジ部11のスイッチング素子S11〜S14をスイッチング制御する。ユニット制御部20は、トランス13の巻線13bに流れる交流電流を出力側へ流すように、単相ブリッジ部12のスイッチング素子S21〜S24をスイッチング制御する。
【0044】
なお、ユニット制御部20は、単相ブリッジ部12に一定周期の交流電流が流れるように単相ブリッジ部12のスイッチング素子S21〜S24を制御する。ユニット制御部20は、単相ブリッジ部11のスイッチング素子S11〜S14のスイッチングのタイミングを制御することにより、単相ブリッジ部12から出力される電圧を制御する。これにより、DC−DCコンバータユニット10から出力される直流電圧を制御することができる。
【0045】
(メイン制御部)
次に、メイン制御部30の構成について、
図1及び
図3を用いて説明する。
【0046】
メイン制御部30は、
図1及び
図3に示すように、電力変換装置1全体の制御を行うCPU31と、主に各ユニット制御部20と通信を行う制御回路部32と、CPU31に対して指令信号を入力するA/Dコンバータ36とを備える。
【0047】
CPU31は、
図3に示すように、電力変換装置1の出力電流Ia及び出力電圧Vaを読み込んで、電力変換装置1の出力を制御するために必要な制御信号を、制御回路部32に対して出力する。このCPU31は、A/Dコンバータ36から出力電流Ia及び出力電圧Vaのデジタル値を指令信号として読み込む。そして、CPU31は、読み込んだ指令信号に応じて制御信号を生成し、制御回路部32に出力する。
【0048】
A/Dコンバータ36は、電力変換装置1の出力電流Ia及び出力電圧Vaのアナログ値をデジタル値に変換する。A/Dコンバータ36は、制御回路部32から読み出し指示信号が入力されると、CPU31に対して、出力電流及び出力電圧に関するデジタル値を指令信号として出力する。なお、電力変換装置1の出力電流Iaは、図示しない電流計によって検出される一方、出力電圧Vaは、図示しない電圧計によって検出される。
【0049】
制御回路部32は、
図3に示すように、各ユニット制御部20との間で通信を行う通信部33と、クロックパルスをカウントするカウンタ部34と、同期信号を生成する同期信号生成部35とを備える。制御回路部32は、例えば、FPGA(Field−Programmable Gate Array)などによって構成される回路である。
【0050】
通信部33は、各ユニット制御部20との間でシリアル通信可能に構成されている。通信部33は、
図4に示す通信プロトコルを有する通信信号を用いて通信を行う。
【0051】
前記通信信号は、
図4に示すように、1フレームが、送信開始信号(START)、ID信号(ID)、データ信号(DATA0からDATA4)及び誤り検出信号(FCS)によって構成される。なお、前記通信信号は、
図4に示すように、各フレーム間に、フレームを区切るためのIDLE信号(IDLE)が挿入されている。
【0052】
送信開始信号は、ID信号及びデータ信号等を送信する際に、各フレームの最初に送信される。
【0053】
ID信号は、送信する信号の種類を識別するための信号である。後述するように、例えば各ユニット制御部20をハードリセットする際には、ハードリセットを指示する信号であることを示す特定のID信号が、メイン制御部30から各ユニット制御部20に送信される。
【0054】
データ信号は、送信するデータを信号化したものである。なお、
図4では、一例として、データ信号をDATA0からDATA4としている。しかしながら、
図4に示すデータ信号よりも短いデータ信号であってもよいし、
図4に示すデータ信号よりも長いデータ信号であってもよい。
【0055】
誤り検出信号は、送信するデータ信号がノイズ等の影響を受けて変化していないかどうかを検出するための信号である。誤り検出信号は、例えば、データ信号に基づいて算出される値が信号化された信号である。これにより、受信側は、誤り検出信号に基づいて、正しいデータ信号を受信したかどうかを判別することができる。
【0056】
上述のような通信プロトコルを有する信号は、4ビットから5ビットに変換(以下、4B5B変換という)される。すなわち、通信部33では、例えば4B5B変換テーブル等を用いて、4ビットの信号に1ビットを加えて5ビットの信号に変換する。なお、信号を4ビットから5ビットに変換する方法は従来と同様なので、詳しい説明を省略する。
【0057】
さらに、前記信号は、5ビットの信号からマンチェスターエンコードを用いて変調される。すなわち、通信部33では、マンチェスターエンコードを用いて、5ビットの信号のうち“0”を“01”に、“1”を“10”に変換する。これにより、データ信号は、“0”または“1”が3つ以上、連続することがない。
【0058】
このようにマンチェスターエンコードを用いて信号を変調することにより、“1”または“0”が3つ以上、連続した場合に、信号のエラーとして検出することが可能になる。
【0059】
なお、上述の方法以外にも、マンチェスターエンコードに変調された信号を逆変換した後の信号が、4B5B変換の際に用いられる4B5B変換表に存在しない信号である場合にも、信号のエラーとして検出される。
【0060】
以上のように、信号の4B5B変換を行うとともにマンチェスターエンコードを用いて変調することにより、ノイズの影響を受けた信号を、エラー信号として容易に検出することが可能になる。しかも、信号の4B5B変換を行うとともにマンチェスターエンコードを用いた変調を行うことにより、変換後の信号の長さが一定になる。これにより、ノイズの影響を受けにくい信号通信を行うことが可能になる。
【0061】
カウンタ部34は、図示しない発振回路等から出力されるクロック信号のクロックパルスを数えるように構成されている。カウンタ部34は、クロックパルスを最大値までカウントした後、リセットする(
図5の(a)参照)。また、制御回路部32は、カウンタ部34のリセットの周期(以下、リセット周期という)に応じて、A/Dコンバータ36に対し、出力電流Ia及び出力電圧VaをCPU31に出力するように指示する、読み出し指示信号を出力する(
図5の(b)参照)。
【0062】
同期信号生成部35は、カウンタ部34でカウントされるクロックパルスの数が規定値に達すると、同期信号を生成する(
図5の(e)参照)。同期信号生成部35で生成された同期信号に基づいて、通信部33からユニット制御部20に通信信号を送信する(
図5の(f)参照)。なお、メイン制御部30に制御回路部32が複数、設けられている構成では、前記同期信号は、各制御回路部32に対して出力される。これにより、複数の制御回路部32からユニット制御部20に出力される信号を同期させることができる。
【0063】
なお、メイン制御部30は、図示しないリセット入力部を備えている。操作者がメイン制御部30のリセット入力部を操作すると、リセット指示信号がCPU31及び制御回路部32の図示しないリセット端子にそれぞれ入力される。これにより、CPU31及び制御回路部32は、再起動の処理がなされ、ハードリセットされる。
【0064】
また、メイン制御部30がハードリセットされた場合には、制御回路部32は、通信部33から各ユニット制御部20に対して、ハードリセットを指示する通信信号を送信する。すなわち、制御回路部32は、CPU31がハードリセットされて初期化処理されているときに、各ユニット制御部20に対してハードリセットを指示する通信信号を送信する。この通信信号は、
図4に示す通信プロトコルにおけるID信号が、ハードリセットを指示するID信号である。なお、このID信号は、全てのユニット制御部20をハードリセットする場合と一部のユニット制御部20のみをハードリセットする場合とで異なる信号に設定されていてもよい。
【0065】
(ユニット制御部)
次に、ユニット制御部20について、
図1及び
図3を用いて説明する。なお、
図1では、図示を簡略化するために、複数のユニット制御部20のうち、一つのユニット制御部20についてのみ、内部構成を図示している。内部構成を図示していない他のユニット制御部20も、同様の内部構成を有する。
【0066】
ユニット制御部20は、
図1及び
図3に示すように、CPU21と、制御回路部22と、A/Dコンバータ27とを備える。CPU21は、メイン制御部30から送信された信号に基づいて、DC−DCコンバータユニット10のスイッチング制御に関する制御信号を、回路制御部22に対して出力する。A/Dコンバータ27は、制御回路部22から読み出し指示信号が入力されると、DC−DCコンバータユニット10の出力電流Ib及び出力電圧Vbのデジタル値を指令信号としてCPU21に出力する。なお、A/Dコンバータ27は、図示しない電流計によって検出されたDC−DCコンバータユニット10の出力電流Ibをデジタル値に変換するとともに、図示しない電圧計によって検出されたDC−DCコンバータユニット10の出力電圧Vbをデジタル値に変換する。
【0067】
制御回路部22は、通信部23と、カウンタ部24と、カウンタリセット部28と、スイッチング制御部25と、リセット部26とを備える。制御回路部22は、例えば、FPGA(Field−Programmable Gate Array)などによって構成される回路である。
【0068】
通信部23は、メイン制御部30の通信部33との間でシリアル通信可能に構成されている。この通信部23は、
図4に示す通信プロトコルを有する通信信号を用いて、メイン制御部30の通信部33と通信を行う。
図4に示す通信プロトコルについては、既述したとおりなので、詳しい説明を省略する。通信部23は、メイン制御部30の通信部33から受信した信号を、4B5B変換及びマンチェスターエンコードによる変調を行う前の信号に戻すとともに、その信号にノイズ等が含まれているかどうかを、誤り検出信号を用いて判定する。
【0069】
カウンタ部24は、メイン制御部30のカウンタ部34と同様、図示しない発振回路等から出力されるクロック信号のクロックパルスを数えるように構成されている。電力変換装置1では、複数のユニット制御部20において、それぞれ、各カウンタ部24がクロックパルスをカウントする。よって、各ユニット制御部20では、それぞれのカウンタ部24のリセット周期に応じて、後述のPWM制御のキャリア周期が決まる。
【0070】
このように、各ユニット制御部20が、別々のカウンタ部24を備えている場合、ユニット制御部20ごとにカウンタ部24のリセット周期が異なるため、後述のPWM制御のキャリア周期が異なる。これに対し、本実施形態では、カウンタリセット部28によって、カウンタ部24は、メイン制御部30から各ユニット制御部20に対して送信される通信信号に合わせてリセットされる。
【0071】
カウンタリセット部28は、メイン制御部30からユニット制御部20に対して送信される通信信号の受信を完了したときに、カウンタ部24に対してカウンタリセット指示信号を出力する。これにより、各ユニット制御部20のカウンタ部24は、メイン制御部30から送信される通信信号に応じてリセットされる(
図5の(h)参照)。したがって、各ユニット制御部20のカウンタ部24は、メイン制御部30から送信される通信信号に同期して動作する。よって、各ユニット制御部20のPWM制御のキャリア周期を同期させることができる。
【0072】
カウンタリセット部28は、メイン制御部30から送信される通信信号に含まれるリセット信号に応じて、カウンタ部24に対してカウンタリセット指示信号を出力するかどうかを決定する。すなわち、通信信号内のリセット信号には、カウンタ部24をリセットするユニット制御部20に対してのみリセットを指示する信号が含まれる。カウンタリセット部28では、通信信号内に、カウンタ部24のリセットを指示するリセット信号が含まれている場合には、カウンタ部24に対してカウンタリセット指示信号を出力する。
【0073】
このように、通信信号内のリセット信号に応じて、カウンタ部24のリセットを行うユニット制御部20を選択できるようにすることで、カウンタ部24のリセットが必要なユニット制御部20のカウンタ部24のみをリセットすることができる。これにより、電力変換装置1全体を効率良く動作させることができる。
【0074】
カウンタリセット部28は、ユニット制御部20がメイン制御部30から周期的に送信される通信信号を所定回数、受信したときに、カウンタ部24に対してカウンタリセット指示信号を出力する。本実施形態では、後述するように、一例としてカウンタリセット部28は、通信信号を2回(2フレーム)受信したときに、カウンタ部24に対してカウンタリセット指示信号を出力する(
図5参照)。また、カウンタリセット部28は、前記所定回数を設定可能に構成されている。
【0075】
このように、メイン制御部30から送信される通信信号を所定回数、受信したときに、カウンタ部24をリセットすることで、不必要なカウンタ部24のリセットをなくすことができる。これにより、電力変換装置1全体をより効率良く動作させることができる。
【0076】
スイッチング制御部25は、DC−DCコンバータユニット10のスイッチング素子S11〜S14,S21〜S24のスイッチングをPWM制御するように構成されている。すなわち、スイッチング制御部25は、CPU21から出力された制御信号及びカウンタ部24のリセット周期から決まるキャリア周期に応じて、PWM信号を生成する。スイッチング制御部25で生成されたPWM信号は、DC−DCコンバータユニット10に出力される(
図3参照)。DC−DCコンバータユニット10のスイッチング素子S11〜S14,S21〜S24では、スイッチング制御部25で生成されたPWM信号に応じて、ONまたはOFFのスイッチング動作が行われる。
【0077】
リセット部26は、メイン制御部30でハードリセットが行われて、該メイン制御部30からユニット制御部20に対してハードリセットを指示する通信信号が送信された場合に、CPU21及び制御回路部22に対してリセット実行信号を出力する。具体的には、リセット部26は、CPU21及び制御回路部22のそれぞれのリセット端子(図示省略)に対して、リセット実行信号を出力する。リセット端子にリセット実行信号が入力されたCPU21及び制御回路部22は、それぞれ、再起動の処理がなされ、ハードリセットされる。
【0078】
リセット部26は、メイン制御部30からハードリセットを指示する通信信号が入力されると、その時点での制御回路部22の動作に関係なく、制御回路部22にもリセット実行信号を出力する。これにより、メイン制御部30から出力される前記通信信号に応じて、制御回路部22をハードリセットすることができる。
【0079】
以上の構成により、メイン制御部30をハードリセットした場合に、各ユニット制御部20に対してもハードリセットを指示する信号が送信されて、各ユニット制御部20でもハードリセットが行われる。よって、操作者は各ユニット制御部20に対してリセット操作を行う必要がなくなるため、電力変換装置1のリセット操作を容易に行うことができる。
【0080】
(メイン制御部とユニット制御部との通信動作)
次に、以上の構成を有する電力変換装置1において、メイン制御部30と各ユニット制御部20との間の通信動作を、
図5を用いて詳しく説明する。
【0081】
既述のとおり、メイン制御部30のカウンタ部34では、クロックパルスをカウントして所定の周期でリセットを行っている。したがって、カウンタ部34でのカウント数は、
図5の(a)に示すように鋸歯状に変化する。カウンタ部34がリセットされたときに、制御回路部32からA/Dコンバータ36に読み出し指示信号が出力される(
図5の(b)参照)。
【0082】
A/Dコンバータ36は、読み出し信号が入力されると、電力変換装置1の出力電圧Va及び出力電流Iaに応じた指令信号をCPU31に対して出力する(
図5の(c)参照)。CPU31は、指令信号が入力されると、制御回路部32に対して、制御信号を出力する(
図5の(d)参照)。なお、
図5の(d)において、五角形の部分は、制御信号のデータを示す。
【0083】
すなわち、CPU31は、カウンタ部34のリセット周期に応じて、制御回路部32に対して制御信号を出力する。
【0084】
一方、制御回路部32では、カウンタ部34のカウント数が設定値に達すると、同期信号を生成する(
図5の(e)参照)。この同期信号は、メイン制御部30が複数の制御回路部32を有する場合には、他の制御回路部32にも入力される。制御回路部32では、同期信号が生成されると、その同期信号に合わせて、通信部33から各ユニット制御部20に対して1フレーム分の通信信号が送信される(
図5(f)参照)。なお、
図5の(f)において、五角形の部分は、通信信号の1フレーム分を示す。
【0085】
ユニット制御部20では、メイン制御部30の通信部33から1フレーム分の通信信号の受信が完了したときに、制御回路部22からA/Dコンバータ27に読み出し指示信号が出力される(
図5の(g)参照)。
【0086】
また、制御回路部22のカウンタリセット部28は、メイン制御部30の通信部33から通信信号の受信が完了したときに、カウンタ部24に対してカウンタリセット指示信号を出力して、該カウンタ部24をリセットする(
図5の(h)参照)。なお、
図5の例の場合、カウンタリセット部28は、メイン制御部30の通信部33から1フレーム分の信号を2回受信したときに、カウンタ部24をリセットする。
【0087】
制御回路部22から読み出し信号が入力されたA/Dコンバータ27は、DC/DCコンバータユニット10の出力電流Ib及び出力電圧Vbに応じた指令信号をCPU21に対して出力する(
図5の(i)参照)。CPU21は、指令信号が入力されると、制御回路部22に対して、制御信号を出力する(
図5の(j)参照)。制御回路22は、制御信号に応じて、PWM信号をDC/DCコンバータユニット10に出力する。
【0088】
(実施形態の効果)
以上より、本実施形態では、DC/DCコンバータユニット10の駆動を制御する各ユニット制御部20がそれぞれカウンタ部24を備える構成において、各ユニット制御部20は、メイン制御部30から通信信号の受信を完了したときに、各ユニット制御部20内のカウンタ部24をリセットする。これにより、各ユニット制御部20内のカウンタ部24を同期させることができる。したがって、各ユニット制御部20を同期させた状態で動作させることができるため、各ユニット制御部20のPWM制御のタイミングのずれを防止できる。
【0089】
しかも、メイン制御部30から各ユニット制御部20に送信する通信信号の長さが一定なので、各ユニット制御部20は、より確実に同じタイミングでカウンタ部24をリセットすることができる。
【0090】
また、前記通信信号は、メイン制御部20から周期的に送信されるため、各ユニット制御部20のカウンタ部24の同期は周期的に行われる。これにより、各ユニット制御部20のカウンタ部24をより確実に同期させることができる。
【0091】
さらに、メイン制御部30と各ユニット制御部20とは、それぞれ、光通信ケーブルによって通信可能に接続されている。これにより、メイン制御部30と各ユニット制御部20との間でそれぞれ通信を行う際に、ノイズ等の影響を受けにくくなる。
【0092】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0093】
前記実施形態では、ユニット制御部20のカウンタリセット部28は、メイン制御部30から送信される通信信号の受信を完了したときに、カウンタ部24をリセットする。しかしながら、カウンタリセット部28は、通信信号の受信を開始したとき、または、通信信号内の特定の信号を受信したときに、カウンタ部24をリセットしてもよい。
【0094】
前記実施形態では、メイン制御部30とユニット制御部20との間で送受信される信号には、4B5B変換及びマンチェスターエンコードを用いた変調が行われている。しかしながら、他の符号化技術を用いてもよい。また、信号の通信プロトコルも
図4以外の通信プロトコルであってもよい。
【0095】
前記実施形態では、DC/DCコンバータユニット10をPWM制御によって駆動させているが、この限りではなく、DC/DCコンバータユニット10を、PAM制御など他の制御によって駆動させてもよい。