(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明基材と、この透明基材の面上に形成され、プライマ平坦部とこのプライマ平坦部よりも厚さが厚いプライマ凸条部とからなるプライマ層と、前記プライマ凸条部の面に接して、導電性粒子とバインダ樹脂を含む導電性組成物層として形成され、多数の開口領域を画成する導電性凸条部と、を有し、
導電性メッシュが前記プライマ凸条部と前記導電性凸条部とから構成され、
前記プライマ層および前記導電性凸条部を前記透明基材の少なくとも片面上に有する透視性電極部材であって、
前記導電性凸条部は、少なくとも、前記導電性粒子のうち互いに接触している粒子の存在部分である頂部から構成され、
前記頂部が、前記プライマ平坦部の表面を水準面とした前記導電性メッシュの高さHに対して、H/4以上の高さにあり、
前記導電性メッシュは、該導電性メッシュの延在方向に直交する面に平行な断面である主切断面において、該導電性メッシュの前記高さH/4での幅Wtが、該導電性メッシュ
の前記水準面での麓幅W4に対して、Wt<W4であり、
前記導電性メッシュを構成する前記導電性凸条部は、前記導電性凸条部が形成された前記透明基材の面に立てた法線方向から観察したときの平面視形状であるメッシュパターンが、二つの分岐点の間を延びて前記開口領域を画成する多数の境界線分Lから構成され、
(a)一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0である。
(b)前記開口領域の形状が、五角形、六角形及び七角形から選ばれた2種以上の多角形を含んでなり、前記メッシュパターン中に含まれる開口領域の数は六角形の開口領域が最多である。
(c)前記メッシュパターンを構成する多角形は同一辺数の多角形の形状は一定でない。
(d)前記開口部の大きさDの分布が、前記開口部の大きさDの平均値をDAVG、前記開口部の大きさDの標準偏差をσとすると、前記開口部の大きさDの分布を
DAVG−3σ≦D≦DAVG+3σ
としたときに
3σ=0.1DAVG〜0.5DAVG
である。
の4条件を満たす、透視性電極部材。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面は概念図であり、説明上の都合に応じて適宜、構成要素の縮尺関係、縦横比等は誇張されていることがある。
【0016】
〔A〕透視性電極部材:
先ず、本発明による透視性電極部材を、
図1に示す一実施形態例を参照して説明する。
図1(A)は断面図、
図1(B)は部分拡大断面図、
図1(C)は平面図である。
【0017】
図1に示す実施形態の透視性電極部材10は、透明基材1と、この透明基材1の片方の面上に形成され、プライマ平坦部2fとこのプライマ平坦部2fよりも厚さが厚いプライマ凸条部2rとからなるプライマ層2と、このプライマ層2の面に接して形成され、多数の開口領域Aを画成する導電性凸条部3と、から構成されている。
導電性凸条部3は、導電性粒子とバインダ樹脂を含む導電性組成物層として形成されている。導電性凸条部3は、本発明においては、少なくとも、導電性粒子のうち互いに接触している粒子の存在部分である頂部3tから少なくとも構成されるが、本実施形態においては、
図2の断面図で示すように、さらに、この頂部3tよりもプライマ凸条部2r側に麓部3fも有する。この結果、導電性凸条部3は、頂部3tと麓部3fとから構成されている。
頂部3tは、プライマ平坦部2fの表面を水準面Psとした導電性メッシュ4の高さHに対して、H/4以上の高さにある。
【0018】
本実施形態では、透明基材1の面上に、このような構成の導電性凸条部3を含む導電性メッシュ4を有することで、導電性凸条部3は線幅10μm以下の細線化も可能となる。
【0019】
さらに、導電性メッシュ4の構成要素である導電性凸条部3のパターン、つまり、導電性凸条部3が形成された透明基材1の面に立てた法線方向(法線方向は
図1(C)において、紙面に垂直な方向である。)から観察したときの平面視形状であるメッシュパターン3Pが、二つの分岐点Bの間を延びて開口領域Aを画成する多数の境界線分から構成される。
【0020】
しかも、このメッシュパターン3Pは、次の(a)、(b)
、(c)及び(d)の4条件を満すパターンとなっている。
(a)一つの分岐点から延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0である。
(b)前記開口領域Aの形状が、五角形、六角形及び七角形から選ばれた2種以上の多角形を含んでなり、前記メッシュパターン3P中に含まれる開口領域Aの数は六角形の開口領域Aが最多である。
(c)前記メッシュパターン3Pを構成する多角形は同一辺数の多角形の形状は一定でない。
前記法線nの方向は、
図1(c)において、紙面に垂直な方向である。
(d)前記開口部の大きさDの分布が、前記開口部の大きさDの平均値をDAVG、前記開口部の大きさDの標準偏差をσとすると、前記開口部の大きさDの分布を
DAVG−3σ≦D≦DAVG+3σ
としたときに
3σ=0.1DAVG〜0.5DAVG
である。
【0021】
さらに、本実施形態においては、このメッシュパターン3Pは、次の
(e)の条件も満すパターンとなっている。
(e)前記開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しない領域を含んでなるパターンである。
【0022】
本実施形態では、導電性組成物を用いた不透明な導電性メッシュ4であっても、それに含まれる不透明な導電性凸条部3が呈するメッシュパターン3Pが従来のような周期的パターンでなくなる為に、画像表示パネルの画素の周期的配列との干渉によるモアレを目立たなくでき、且つ画像表示パネルの面内輝度分布に濃淡ムラも目立たなくできるので、モアレ改善と濃淡ムラ改善とを両立できる。
【0024】
<<厚み方向の構成>>
先ず、厚み方向の構成について説明する。
【0025】
《透明基材1》
透明基材1は、透明で電気絶縁性の基材であれば特に制限はなく、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂などからなる樹脂材料、ガラス、石英、セラミックス等からなる無機材料を用いることができる。透明基材1は、引抜プライマ方式凹版印刷法によって導電性メッシュ4を印刷形成する場合に、ロールに巻き取り可能なシート状物が好ましい。
【0026】
《プライマ層2》
プライマ層2は、プライマ平坦部2fとこのプライマ平坦部2fよりも厚さが厚いプライマ凸条部2rとから構成される。プライマ凸条部2rは、導電性メッシュ4の一部、より具体的には、導電性メッシュ4の透明基材1側の部分を構成している。
プライマ平坦部2fと、プライマ凸条部2rのうち導電性凸条部3で被覆されていない部分とが、それ自体が不透明な導電性凸条部3を有する導電性メッシュ4に透視性を付与している。
【0027】
プライマ平坦部2fの厚さは、プライマ凸条部2rの厚さの影響のない開口領域Aの中央部での厚さで捉える。プライマ平坦部2fの厚さは1〜25μm程度、通常5〜25μm程度であり、プライマ凸条部2rの厚さは、プライマ平坦部2fの厚さに較べて2〜10μm程度、通常2〜8μm程度厚く形成される。また、プライマ凸条部2rの厚さのプライマ平坦部2fの厚さに対する超過分(=プライマ凸条部2rの厚さ−プライマ平坦部2fの厚さ)は、プライマ平坦部2fの厚さに対して通常1/3〜1/2程度となる。
上記プライマ平坦部2fの厚さ、および、プライマ凸条部2rの厚さとは共に、プライマ層2の透明基材1側の界面を水準面とする厚さである。前記水準面とは、プライマ層2が透明基材1に接している場合では、プライマ層2と透明基材1との界面となる。
【0028】
図2でも示すように、プライマ層2のプライマ凸条部2rは、導電性メッシュ4の一部、より具体的には導電性メッシュ4の透明基材1側の部分を構成している。
【0029】
こうしたプライマ層2の形成法は、限定されるものではないが、好適には、前記特許文献2で開示された「引抜プライマ方式凹版印刷法」によって、導電性凸条部3と共に形成することができる。
【0030】
ただし、前記した主切断面における形状の、プライマ凸条部2rおよび導電性凸条部3からなる導電性メッシュ4とするためには、印刷の際に、ドクターブレードでの掻き取りを、圧を強くすることで、導電性凸条部3を形成する為の導電性組成物が強く凹版の凹部内に押し込まれることによって、主切断面形状において、プライマ層2の部分が導電性メッシュ4の最凸部により近くなるような形状を形成することができる。
そして、プライマ層2のプライマ凸条部2rの部分での主切断面における面積を、より広くでき、プライマ凸条部2rの頂部を、より高くすることができる。また、導電性凸条部3において導電性粒子のうち互いに接触している粒子の存在部分である頂部3tが、導電性メッシュ4の高さHに対して、H/4以上の高さに形成されるようにすることができる。
【0031】
[材料]
プライマ層2は透明な樹脂層として形成することができる。プライマ層2を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等を用い、硬化性樹脂には熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を用いることができる。
【0032】
例えば、前記熱硬化性樹脂は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂などが用いられる。電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線で架橋反応などによって重合硬化するモノマー、プレポリマーの1種以上を含む組成物が用いられる。電離放射線としては、通常、紫外線、電子線などが用いられる。前記モノマーやプレポリマーにはラジカル重合性やカチオン重合性の化合物が用いられる。とりわけ、アクリレート系化合物を用いた電離放射性硬化性樹脂が代表的である。前記熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂など、ポリビニルブチラール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂等である。これらの樹脂のなかでも、溶融状態から冷却固体化、或いは硬化反応などによる固化が迅速な点で紫外線照射等で硬化する電離放射線硬化性樹脂が好ましい。
【0033】
《導電性メッシュ4》
導電性メッシュ4の厚み方向の構成は、プライマ凸条部2rと、このプライマ凸条部2rの面に接して該面上に形成された導電性凸条部3と、から構成される。
【0034】
〔導電性凸条部3〕
導電性凸条部3は、導電性粒子とバインダ樹脂を含む導電性組成物層として形成される。導電性凸条部3は、前記導電性粒子のうち互いに接触している粒子の存在部分である頂部3tを少なくとも有する。さらに、頂部3tのプライマ凸条部2r側に、頂部3tに比べれば体積は僅かだが、導電性粒子が存在しないか、或いは導電性粒子が存在しても互いに接触していない部分である麓部3fも有することがある。麓部3fは、導電性凸条部3において、導電性への寄与の点で不要部だが、引抜プライマ方式凹版印刷法で導電性メッシュ4を形成時の、未だ流動状態のプライマ層2と、未だ流動状態の導電性組成物とが接触中に、互いの成分が相互に浸透することによって生じる。
麓部3fの主切断面形状における導電性凸条部3に占める面積割合は、導電性へ寄与しない観点から、通常20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは0%である。
【0035】
[主切断面形状]
図2の断面図に示す如く、頂部3tの導電性メッシュ4全体に占める位置および比率は、
a)頂部3tが、導電性メッシュ4の高さHに対して、H/4以上の高さの部分にあり、
且つ、
b)導電性メッシュ4は、導電性メッシュ4の高さH/4での幅Wtが、該導電性メッシュ4の前記高さHを測る基準となる水準面Psでの麓幅W4に対して、Wt<W4、
とすることによって、
導電性メッシュ4自体の麓幅W4を狭めることなく、導電性凸条部3において互いに接触している導電性粒子を含む部分である頂部3tの幅Wcを狭くすることができる。すなわち、
Wc≦Wt<W4
とすることができる。
【0036】
上記それぞれの幅は、導電性メッシュ4の延在方向に直交する面に平行な断面である主切断面における幅である。
上記導電性メッシュ4の高さHとは、プライマ平坦部2fの表面を水準面Psとしたときの、この水準面Psからの高さである。
上記頂部3tの幅Wcとは、頂部3tの最大の幅であり、透明基材1に最も近い部分の幅である。
【0037】
ところで、「引抜プライマ方式凹版印刷法」に限らず、印刷法一般において、導電性メッシュ4の線幅を10μm以下にすることは極めて難しい。ただ、一般に、印刷形成された導電性メッシュ4は、印刷形成するための導電性組成物が被印刷面に転移後、流動するなどにより、
導電性メッシュ4の高さH/4での幅Wt<導電性メッシュ4の麓幅W4
となる。
【0038】
よって、導電性粒子の存在部分を、導電性凸条部3の頂部3tの部分として、導電性メッシュ4内の上方に局在化できれば、互いに接触している導電性粒子を含む部分である頂部3tの幅を印刷で実現可能な下限の線幅よりも狭くして、パターン形成可能となる。
【0039】
Wc≦Wt<W4、の関係を実現する為の手段としては、特に制限されない。例えば、本実施形態においては、特許文献2(特許第4436441号公報)に開示された「引抜プライマ方式凹版印刷法」を利用して、且つ使用する凹版の版面凹部5(導電性凸条部3に対応する)の断面形状を後述の
図12の如き形状にしたり、印刷時にドクターブレードの弾性と加圧力とを最適化する等の工夫を施した上で、インク化された導電性組成物を印刷することで実現できる。
前記インク化された導電性組成物は、例えば、導電性粒子として平均粒子径0.5μmの銀粒子を導電性組成物固形分全量に対して93質量%含み、樹脂バインダとしてポリエステル系樹脂を含む組成物を用いることができる。
【0040】
即ち、導電性メッシュ4を「引抜プライマ方式凹版印刷法」で印刷形成するとき、用いる凹版として、版面凹部の断面形状を、凹部側面と版面との接続部が直角乃至は略直角となる矩形形状にしないで、版面に近くなるほど、或いは版面に近い部分が、幅が広くなる逆釣鐘形状、逆三角形状、逆台形形状などの形状にするのが好ましい。ドクターブレードで版面に施されたインクの不要な部分を除去するときに、版面凹部の開口部付近のインクも除去して、凹部底側にのみインクを充填し易くなり、また、導電性凸条部3の幅を小さくし易くなるからである。
こうした形状は、
図12で示すように、例えば、銅からなる版基材上に版面凹部5をレジスト膜6を用いてウェットエッチングにより形成するときに、いわゆるサイドエッチング現象を意識的に利用して、レジスト膜6の外輪部直下もエッチングすることで、形成することができる。また、エッチング後に、クロムなどの金属めっきを施すことで、めっき膜によって版面凹部の開口部に丸みを持たせることでも形成することができる。
【0041】
ここで、導電性メッシュ4の具体的な寸法例を例示すれば、導電性凸条部3の頂部3tの幅Wcは1〜50μm、好ましくは1〜10μmである。本発明においては、幅Wcは10μm以下も可能である。幅Wcが広くなると不可視性が低下することがあり、幅Wcが狭くなると、断線したり、面積抵抗率が高くなりすぎたりすることがある。
導電性メッシュ4の高さH/4での幅Wtは、1.0Wc〜2.0Wcである。
導電性メッシュ4の麓幅W4は、1.3Wt〜2.5Wcである。
導電性メッシュ4の高さHは、1〜250μmである。
形成される導電性メッシュ4に於いて電気伝導に寄与する部分の幅を、印刷可能な線幅(即ち麓幅W4)の下限値よりも狭くし、前記の如き細い線幅を実現する為には、Wt<W4とすることが必要である。Wtはより好ましくは、Wt=0.04W4〜0.7W4の範囲とする。
【0042】
(変曲点)
導電性メッシュ4の主切断面形状は、導電性メッシュ4の高さゼロの部分から高さHの最上部に至る線分形状が、
図2のように変曲点が存在する形状でもよいが、
図13のように、変曲点が存在しない形状でもよい。
【0043】
(傾斜角θ)
導電性メッシュ4の主切断面形状は、
図2に示すように、導電性メッシュ4の高さゼロの部分から高さHの際上部に至る線分形状において、プライマ凸条部2rと導電性凸条部3との境界部分での傾斜角θは、つまり当該部分に接する接線がプライマ平坦部2fの水準面Psと成す角度は、30〜60°程度である。換言すると、水準面Psに立てた法線と成す角度は30〜60°程度である。
【0044】
[材料]
導電性凸条部3は、導電性粒子とバインダ樹脂とを含む導電性組成物層として形成される。導電性凸条部3は、例えば、導電性粒子と樹脂バインダとを含む液状の導電性組成物(導電性ペースト、導電性インク等とも呼ばれる)を用いて形成でき、該導電性組成物を溶剤乾燥、電離放射線照射、加熱などのエネルギー付加、化学反応などの固化プロセスによって固化させて導電性組成物層として得られる。
樹脂バインダとは、上記導電性組成物から導電性粒子を除いた残りの成分であり、また溶剤等の揮発散逸成分を含み得る成分であり、この樹脂バインダ中に含まれる樹脂分がバインダ樹脂である。
樹脂バインダには、安定剤、分散剤、酸化防止剤、粘度調整剤、帯電防止剤など、公知の各種添加剤を含み得る。なお、バインダ樹脂が硬化性樹脂でその硬化に硬化剤や重合開始剤等を使用する場合、これらの硬化剤はバインダ樹脂の一成分であると捉える。
【0045】
導電性粒子としては、例えば、金、銀、白金、銅、錫、アルミニウム、ニッケルなど高導電性金属(乃至その合金)の粒子やコロイド(粒子)等を用いることができる。前記金属の粒子としては、樹脂粒子や無機非金属物粒子等の表面を前記高導電性金属で被覆した金属被覆粒子を用いることもできる。なかでも、優れた導電性、及びコスト等の点から、代表的なのは、銀粒子である。導電性粒子の粒子径は、平均粒子径で、0.01〜5μm、より低表面抵抗率とする点で好ましくは0.1〜3μmである。
【0046】
バインダ樹脂としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等を用い、硬化性樹脂には熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を用いることができる。これらの樹脂としては、前記プライマ層で列記した樹脂などを用いることができる。樹脂バインダには、安定剤、分散剤、酸化防止剤、粘度調整剤など、公知の各種添加剤を含み得る。なお、バインダ樹脂が硬化性樹脂でその硬化に硬化剤や重合開始剤等を使用する場合、これらの硬化剤はバインダ樹脂の一成分であると捉える。
【0047】
導電性ペースト、導電性インク等とも呼ばれる、前記導電性組成物は、前記導電性粒子及び樹脂バインダの他に、さらに、印刷適性を調整するために、例えば凹版の版面凹部への充填に適した流動性を得るために、有機溶剤を含み得る。有機溶剤は、印刷後、乾燥除去される。
【0048】
<<形成面方向での構成>>
本発明においては、導電性メッシュ4を構成する導電性凸条部3は、本発明固有のメッシュパターン3Pを呈する。
【0049】
《メッシュパターン3P》
導電性メッシュ4の一構成要素である導電性凸条部3は、導電性凸条部3が形成された透明基材1の面に立てた法線方向から観察したときの平面視形状であるメッシュパターン3Pが、二つの分岐点Bの間を延びて前記開口領域Aを画成する多数の境界線分Lから構成され、
(a)一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0である。
(b)前記開口領域Aの形状が、五角形、六角形及び七角形から選ばれた2種以上の多角形を含んでなり、前記メッシュパターン3P中に含まれる開口領域Aの数は六角形の開口領域Aが最多である。
(c)前記メッシュパターン3Pを構成する多角形は同一辺数の多角形の形状は一定でない。
の3条件を満たす。
【0050】
さらに、本実施形態においては、このメッシュパターン3Pは、次の
(e)の条件も満すパターンとなっている。
(e)前記開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しない領域を含んでなるパターンである。
【0051】
本実施形態では、このようなメッシュパターン3Pとすることにより、メッシュパターン3Pが、従来のような周期的パターンではなくなる為に、周期的パターンであるが故に生じていたモアレを改善することができる。
【0052】
以下、本発明に特徴的なメッシュパターン3Pについて説明する。
【0053】
[メッシュパターン3Pとこれにより画成される開口領域A]
メッシュパターン3Pは、導電性メッシュ4を、導電性凸条部3を形成した透明基材1の該形成面の法線方向から観察した場合における、導電性メッシュ4の一構成要素である導電性凸条部3の平面視形状である。以下、このメッシュパターン3Pについて、
図1、
図3および
図9を主として参照しながら説明する。
【0054】
メッシュパターン3Pは、
図3に示す如く、二つの分岐点Bの間を延びて開口領域Aを画成する多数の境界線分Lから形成され、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0、つまり、3.0以上で4.0未満であり、且つ、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でないパターンとなっている。また、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないパターンとなっている。
【0055】
メッシュパターン3Pは、
図3に示す如く、二つの分岐点Bの間を延びて開口領域Aを画成する多数の境界線分Lから形成され、少なくとも以下の3条件を満たす。
(a)一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0、つまり、3.0以上で4.0未満である。
(b)前記開口領域Aの形状は、各開口領域Aの周囲を囲繞する境界線分Lの数が5、6、及び7である開口領域Aの形状から選ばれた2種以上の形状を含んでなり、且つ、前記メッシュパターン3P中に含まれる開口領域Aは、各開口領域Aの周囲を囲繞する境界線分Lの数が6である開口領域Aが最多となっている。
尚、ここで周囲を囲繞する境界線分Lの数とは、開口領域Aが多角形である場合は、その多角形の角数(或いは辺数)と一致する。即ち、各開口領域Aを構成する境界線分Lが全て直線のみからなる場合は、上記条件(b)は、前記開口領域Aの形状は、五角形、六角形及び七角形から選ばれた2種以上の多角形を含んでなることを意味する。また、境界線分Lの数が6である開口領域Aは、六角形となる。
【0056】
ちなみに、後述する
図10A形態で仕様したメッシュパターン3Pについて、合計4631個の開口領域A(多角形)について計測したところ、
3角形 0個
4角形 79個
5角形 1141個
6角形 2382個
7角形 927個
8角形 94個
9角形 8個
10角形以上 0個
であり、六角形の開口領域Aの数が最多であった。
【0057】
(c)周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの形状は一定でないパターンとなっている。即ち、メッシュパターン3Pを構成する開口領域Aはすべて同一形状では無く、少なくとも一部は他と異なる形状のものを含む。各開口領域Aを構成する境界線分Lが全て直線のみからなる場合は、この条件は、メッシュパターン3Pを構成する多角形は同一の辺数の多角形の形状は一定でないことを意味する。
尚、特に本実施形態に於いては、以上に加えて更に、メッシュパターン3Pは、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないパターンとなっており、
(e)前記開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しない領域を含んでなるパターンである。
の条件も満たす。
尚、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないことを、開口領域Aが繰返周期を持つ方向が存在しない配列、とも言う。
【0058】
図3および
図9に示すように、メッシュパターン3Pのライン部Ltは、多数の分岐点Bを含んでいる。メッシュパターン3Pのライン部Ltは、両端において分岐点Bを形成する多数の境界線分Lから構成されている。すなわち、メッシュパターン3Pのライン部Ltは、二つの分岐点Bの間を延びる多数の境界線分Lから構成されている。そして、分岐点Bにおいて、境界線分Lが接続されていくことにより、開口領域Aが画成されている。言葉を換えて言うと、境界線分Lで囲繞され、区画されて1つの開口領域Aとしての閉
領域が構成される。
【0059】
なお、
図3および
図9に示すように、ライン部Ltが境界線分Lのみから構成されているため、開口領域Aの内部に延び入って行き止まりとなるライン部Ltは存在しない。このような態様によれば、導電性凸条部3に十分な低抵抗と高い透明性とを同時に付与することを効果的に実現することできる。
【0060】
メッシュパターン3Pは、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しない領域を含んでなるパターンとなって、モアレを改善する効果が充分に発現される為には、その全領域が、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの形状は一定でないようにすることが好ましい。好ましくは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの50%以上が互いにその形状が異なるようにする。より好ましくは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aをメッシュパターン3Pの全域に亙って、全て互いにその形状が異なるようにする。尚、こうしたメッシュパターン3Pに含まれる開口領域Aは、その周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aについては、その形状が一定でないことに加えて、更にその面積も一定でないことが、より好ましい。これは、言い換えると、メッシュパターン3Pに含まれる開口領域Aのうち、周囲を囲繞する境界線分L数が同一となる開口領域Aの形状、又は形状及び面積がすべて同一ではなく、少なくとも一部は他と異なるものになると言うことを意味する。
なお、以上に於いて、2つの開口領域A同士が互いに合同な図形であって且つその向きが異なる場合も、その2つの開口領域Aの形状は互いに異なると見做す。
【0061】
モアレを確実に解消する為には、メッシュパターン3Pの全領域がこのような領域のみから構成されていることが好ましい。本実施形態はこの様な構成からなる。本件発明者らは、鋭意研究を重ねた結果として、単にメッシュパターン3Pのパターンを不規則化するのではなく、メッシュパターン3Pの開口領域Aが、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在せず、また周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口領域Aの形状、より好ましくは面積及び形状は一定でないようにメッシュパターン3Pのパターンを画成することにより、メッシュパターンが周期的パターンである構成の従来の透視性電極部材40で生じるモアレを、極めて効果的に改善することが出来ると判明した。
【0062】
[繰返周期の不存在]
図4は、メッシュパターン3Pで画成される多数の開口部Aが、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の開口部Aの形状は一定でない。そして、開口部Aが、一定の周期で配置されている領域が存在せず、繰返周期が存在しない、言い換えると、開口部Aの配置に周期性を有する方向が存在しない、ことを説明するXY平面に平行な板面に於ける平面図である。この板面の面内において、同図では、任意の位置で任意の方向を向く一本の仮想的な直線diが選ばれている。
この一本の直線diが、ライン部Ltの境界線分Lと交差し交差点が形成される。この交差点を、図面では図面左下から順に、交差点c1,c2,c3,・・・・・,c9として図示してある。隣接する交差点、例えば、交差点c1と交差点c2との距離が、前記或る一つの開口部Aの直線di上での寸法t1である。次に、寸法t1の開口部Aに対して直線di上で隣接する別の開口部Aについても、同様に、直線di上での寸法t2が定まる。そして、任意位置で任意方向の直線diについて、直線diと交差する境界線分Lとから、該直線diと遭遇する多数の開口部Aについて、該直線di上における寸法として、t1,t2,t3,・・・・・・,t8が定まる。そして、t1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びには、周期性が存在しない。
図4では、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8は、判り易い様に図面下方に、直線diと共にメッシュパターン3Pとは分離して描いてある。
【0063】
この直線diを
図4で図示のものから任意の位置で任意の角度回転させて別の方向について各開口部Aの寸法t1,t2,・・を求めると、やはり
図4の場合と同様、直線di方向に対して繰返し周期性は見られない。
すなわち、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びの様に、境界線分Lで画成された開口部Aには繰返周期を持つ方向が存在しない。
言い換えると、開口部Aの配置において、任意位置を通る任意方向の仮想的な線分di上での開口部Aの寸法tiの並びの数列が非周期関数となる。すなわち、t(i)=t(i+M)となるMが存在しない(i,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
このように、開口部Aの配置に周期性を有する方向が存在しないことを、開口部Aが一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない、と表現する。
【0064】
さらに、本実施形態による透視性電極部材10の導電性凸条部3が有するメッシュパターン3Pでは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている。このように一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている場合、メッシュパターン3Pの配列パターンを、
図11Aに示された正方格子パターン(N=4.0)から大きく異なるパターンとすることができる。また、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている場合には、ハニカム配列(N=3.0)からも大きく異なるパターンとすることができる。そして、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nを3.0≦N<4.0とした上で、開口部Aの配列を不規則化して、開口部Aの配置に周期性を有する方向が安定して存在しないようにすることが可能となり、その結果、モアレを極めて効果的に目立たなくさせることが可能となることが、確認された。
【0065】
なお、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nは、厳密には、メッシュパターン3P内に含まれる全ての分岐点Bについて、延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出することになる。ただし、実際的には、ライン部Ltによって画成された一つ当たりの開口部Aの大きさ等を考慮した上で、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、後述の寸法例で開口部Aが形成されているメッシュパターン3Pにおいては、10mm×10mmの部分)に含まれる分岐点Bについて延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出し、算出された値を当該メッシュパターン3Pについての一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nとして取り扱うようにしてもよい。
【0066】
実際に、
図3に示された導電性凸条部3のメッシュパターン3Pでは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている。一例を挙げると、
図3のメッシュパターン3Pの場合、合計387個の分岐点Bについて計測したところ、境界線分Lが3本の分岐点Bが373個、境界線分Lが4本の分岐点Bが14個であり(分岐する境界線分Lの数が5個以上の分岐点は0個)、分岐点Bから出る境界線分Lの平均本数(平均分岐数)は3.04個であった。
【0067】
[画像表示パネルの画素配列との干渉によるモアレ発生状況]
図10A〜
図10Cおよび
図11A〜
図11Cは、透視性電極部材10を、タッチパネル用の電極基材として利用したときのモアレ発生状況を説明する図面である。
【0068】
図10Cには、
図3及び
図10Aに示されたメッシュパターン3Pを、
図10Bに示された画像表示パネル30に於ける典型的な画素配列上に重ねた状態が示されている。
図10Cからも理解され得るように、
図3及び
図10A示されたメッシュパターン3Pを実際に作製して画像表示パネル30の画素配列上に配置した場合、視認され得る程度の縞状の模様、すなわちモアレ(干渉縞)は発生しなかった。
【0069】
ここで、
図10Bで示された画像表示パネル30の画素配列は、画像表示パネル30に於ける典型的な画素配列である。
図10Bに示す様に、この画像表示パネル30では、一つの画素Pは、赤色に発光する副画素(サブピクセル)RPと、緑色に発光する副画素GPと、青色に発光する副画素BPと、から構成されている。すなわち、画像表示パネル30はカラーで画像を形成することができる。
図10Bに示された例は、いわゆるストライプ配列として、画素Pが形成されている。すなわち、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、それぞれ、一つの方向(
図10Bでは縦方向)に連続して並べられている。一方、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、当該一つの方向に直交する方向(
図10Bでは横方向)に、一つずつ、順に並べられている。なお、
図10Bは、画像表示パネル30の画像形成面(出光面、即ち画面)への法線方向、言い換えると、画像表示パネル30のパネル面への法線方向から当該画像表示パネル30を観察した状態で、画素Pの配列を示している。
【0070】
一方、画成される開口領域Aの配置が周期性を有する周期的メッシュパターン42Pの場合のモアレ発生を例示するのが
図11A〜
図11Cである。
【0071】
図11Aは、正方格子状の周期的メッシュパターン42Pであり、本発明のメッシュパターン3Pとは異なるものである。
図11Cには、
図11Aに示された周期的メッシュパターン42Pを、
図11Bに示された画像表示パネル30(
図10Bで示したものと同じである)に於ける典型的な画素配列上に重ねた状態が示されている。
図11A、
図11B及び
図11Cからも理解され得るように、周期的メッシュパターン42Pを有する透視性電極部材40が画像表示パネル30の画素配列上に配置されると、周期的メッシュパターン42Pと画素の規則的パターンとの干渉によって、明暗の筋(
図11Cに示された例では、左上から右下に延びている明暗の筋)が視認されるようになる。
【0072】
なお、
図11Aおよび
図11Cに示された例では、周期的メッシュパターン42Pのストライプを構成する多数の直線の配列方向が、画素Pの配列方向に対して、数度傾斜している。この傾斜角をバイアス角(度)と呼称する。このような傾斜は、一般的に、モアレを目立たなくさせるものとして広く用いられている手法である。但し、
図11Cに縞状模様が視認されることからも理解され得るように、モアレ発生の程度は単にバイアス角のみで決まる訳では無く、この他、画素P及び周期的メッシュパターン42Pの周期比、周期的メッシュパターン42Pの線幅等の要因にも依存する。周期的メッシュパターン42Pのバイアス角のみでモアレを解消しようとすると、画像表示パネル30の設計仕様毎に応じてバイアス角の異なる透視性電極部材を用意する必要が有る。
【0073】
[メッシュパターン3Pのパターン形状の作成方法]
ここで、本発明固有の上記メッシュパターン3Pのパターンを作成する方法の一例を以下に説明する。
【0074】
ここで説明する方法は、母点を決定する工程と、決定された母点からボロノイ図を作成する工程と、ボロノイ図における一つのボロノイ境界によって結ばれる二つのボロノイ点の間を延びる境界線分Lの経路を決定する工程と、決定された経路の太さを決定して各境界線分Lを画定してメッシュパターン3P(ライン部Lt)のパターンを決定する工程と、を有している。以下、各工程について順に説明していく。なお、上述した
図3に示されたパターンは、実際に以下に説明する方法で決定されたパターンである。
【0075】
まず、母点を決定する工程について説明する。最初に、
図5に示すように、絶対座標系O−X−Y(この座標系O−X−Yは普通の2次元平面であるが、後述の相対座標系と区別する為、頭に「絶対」を付記する)の任意の位置に一つ目の母点(以下、「第1の母点」と呼ぶ)BP1を配置する。次に、
図6に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れた任意の位置に第2の母点BP2を配置する。言い換えると、第1の母点BP1を中心として絶対座標系XY上に位置する半径rの円の円周(以下、「第1の円周」と呼ぶ)上の任意の位置に、第2の母点BP2を配置する。次に、
図7に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つ第2の母点BP2から距離r以上離れた任意の位置に、第3の母点BP3を配置する。その後、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点BP2,BP3から距離r以上離れた任意の位置に、第4の母点を配置する。
【0076】
このようにして、次の母点を配置することができなくなるまで、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、第2の母点BP2を基準にしてこの作業を続けていく。すなわち、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に、次の母点を配置する。第2の母点BP2を基準にして、次の母点を配置することができなくなるまで、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、基準となる母点を順に変更して、同様の手順で母点を形成していく。
【0077】
以上の手順で、メッシュパターン3Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなるまで、母点を配置していく。メッシュパターン3Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなった際に、母点を作製する工程が終了する。ここまでの処理により、2次元平面(XY平面)に於いて不規則的に配置された母点群が、メッシュパターン3Pが形成されるべき領域内に一様に分散した状態となる。
【0078】
このような工程で2次元平面(XY平面)内に分布された母点群BP1、BP2、・・、BP6(
図8(A)参照)について、個々の母点間の距離は一定では無く分布を有する。但し、任意の隣接する2母点間の距離Rの分布は完全なランダム分布(一様分布)でも無く、平均値R
AVGを挾んで上限値R
MAXと下限値R
MINとの間の範囲ΔR=R
MAX−R
MINの中で分布している。なお、ここで、隣接する2母点であるが、母点群BP1、BP2、・・からボロノイ図を作成した後、2つのボロノイ領域XAが隣接していた場合に(
図9参照)、その2つのボロノイ領域XAの母点同士が隣接していると定義する。
なお、
図8(A)に於いて、これら母点群から得られるボロノイ境界(
図9参照)を参考までに破線で図示してある。
【0079】
即ち、ここで説明した母点群について、各母点を原点とする座標系(相対座標系o−x−yと呼称し、一方、現実の2次元平面を規定する座標系を絶対座標系O−X−Yと呼称する)上に、原点に置いた母点と隣接する全母点をプロットした
図8(B)、
図8(C)、・・等のグラフを全母点について求める。そして、これら全部の相対座標系上の隣接母点群のグラフを、各相対座標系の原点oを重ね合わせて表示すると、
図8(D)の如きグラフが得られる。この相対座標系上での隣接母点群の分布パターンは、母点群を構成する任意の隣接する2母点間の距離が0から無限大迄の一様分布では無く、原点oからの距離がR
AVG−ΔRからR
AVG+ΔR迄の有限の範囲(半径R
MINからR
MAX迄のドーナツ形領域)内に分布していることを意味する。
【0080】
以上の様にして、各母点間の距離を設定することによって、該母点群から以下に説明する方法で得られるボロノイ領域XA、更には、これから得られる開口領域Aの大きさ(乃至は開口領域Aの面積)の分布についても、一様分布(完全ランダム)では無く、有限の範囲内に分布したものとなる。
なお、
図8(D)からわかる様に、任意の1母点BPから見た他の母点BPの方位(角度)分布は等方的(乃至は略等方的)である。このことが、こうした母点(群)BPから生成されるメッシュパターン3Pに於ける開口領域Aの方位(角度)分布が等方的(乃至は略等方的)となることに対応する。
この様に構成することにより、開口領域Aの面分布がより均一化し、モアレがより一層効果的に改善する。
【0081】
また、濃淡ムラをより均一化させる為には、開口部Aの大きさDの分布を、
D
AVG−3σ≦D≦D
AVG+3σ
としたときに(但し、D
AVGは大きさDの平均値、σは大きさDの分布の標準偏差)、
3σ=0.1D
AVG〜0.5D
AVG
とするのが好ましい。
【0082】
開口領域Aの大きさDは、全ての開口領域Aについて、以下の定義とする。
(1)或る一つの開口領域Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描ける場合は、この開口領域Aの外接円直径を以って、大きさDとする。
(2)或る一つの開口領域Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描けない場合は、この開口領域Aに属する2分岐点B間の距離の最大値(多角形の場合は最長の対角線長)を以って、大きさDとする。
【0083】
なお、以上の母点を決定する工程において、距離rの大きさを変化させることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさDを調節することができる。具体的には、距離rの大きさを小さくすることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさDを小さくすることができ、逆に距離rの大きさを大きくすることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさDを大きくすることができる。
【0084】
次に、
図9に示すように、配置された母点を基準にして、ボロノイ図を作成する。
図9に示すように、ボロノイ図とは、隣接する2つの母点BP、BP間に垂直二等分線を引き、その各二等分線同士の交点で囲まれた線分で構成される図である。ここで、垂直二等分線からなる線分をボロノイ境界XBと呼び、ボロノイ境界XBの端部をなすボロノイ境界XB同士の交点をボロノイ点XPと呼び、ボロノイ境界XBに囲まれた領域をボロノイ領域XAと呼ぶ。
【0085】
図9のように作成されたボロノイ図において、各ボロノイ点XPが、メッシュパターン3Pの分岐点Bをなすようにする。そして、一つのボロノイ境界XBの端部をなす二つのボロノイ点XPの間に、一つの境界線分Lを設ける。この際、境界線分Lは、
図9に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定してもよいし、あるいは、他の境界線分Lと接触しない範囲で二つのボロノイ点XPの間を種々の経路(例えば、円(弧)、楕円(弧)、抛物線、双曲線、正弦曲線、双曲線正弦曲線、楕円函数曲線、ベッセル関数曲線等の曲線状、折れ線状等の経路)で延びるようにしてもよい。なお、境界線分Lは、
図9に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定した場合、各ボロノイ境界XBが、境界線分Lを構成するようになる。
【0086】
各境界線分Lの経路を決定した後、各境界線分Lの線幅(太さ)を決定する。境界線分Lの線幅は、作成されたメッシュパターン3Pを呈する導電性凸条部3によって得られる表面抵抗率と透明性とを勘案して、決定される。以上のようにして、メッシュパターン3Pのパターンを決定することができる。
この結果、規則的(周期的)に画素Pが配列された画像表示パネル30に、この透視性電極部材10を重ねたとしても、縞状の模様(モアレ、干渉縞)が視認され得る程度に発生することを効果的に防止することができる。
【0087】
<<変形形態>>
本発明の透視性電極部材10は、上記した形態以外のそのたの形態をとり得る。以下、その一部を説明する。
【0088】
〔単位パターン領域Sとしての繰返し〕
上述した実施形態では、透視性電極部材10の導電性メッシュ4の全領域において、導電性凸条部3が呈するメッシュパターン3Pによって画成される開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないようになっている例を説明した。しかしながら、
図14の様に、その内部に於いてメッシュパターン3Pの全領域が、単位パターン領域Sを複数集合してメッシュパターン3Pの全領域が構成されるようにして、且つ各単位パターン領域S内に於いては、複数の開口領域Aが、その配置に周期性を有する方向が存在しないパターンで配置されている領域からなるようにしてもよい。
すなわち、この形態に於いては、メッシュパターン3Pの全領域中に、局所的に見たときに、同一パターンで開口領域A群が配置されてなる単位パターン領域Sを2箇所以上含むようになる。この場合、特定方向について、一定周期で4箇所以上の繰返しが無ければ、単位パターン領域S同士の繋ぎ目は実質上目立ち難く、外観上の見栄えの点で無視し得る。もちろん、単位パターン領域S中でモアレは改善されている。この例において、一つの単位パターン領域S内におけるメッシュパターン3Pのパターンは、例えば、
図5〜
図9を参照しながら説明したパターン作成方法と同様にして作成することができる。
【0089】
特に最近では、画像表示パネルの大型化が進んでおり、この様な大画面の画像表示パネル30に対しては、メッシュパターン3Pが、複数の単位パターン領域Sの配列から構成されていて、且つ各々の単位パターン領域S内に於いては互いに同一のパターンで開口領域Aが配列されている構成とした複数の単位パターン領域Sを含む形態とした方が、メッシュパターン3Pのパターン作成を格段に容易化することが可能となる点において好ましい。
【0090】
なお、特に一種類の単位パターン領域Sを
図14に示す様に縦横に複数配置する例においては、特定方向(図面縦方向と横方向の2方向)で単位パターン領域Sとしての繰返しが存在する。
図14の実施形態に於いては、横方向に繰返周期SP2、縦方向に繰返周期SP1を以って単位パターン領域Sが繰り返される。この条件下では、特定方向に於ける単位パターン領域Sの寸法をLsとし、該特定方向に延びる任意の仮想的な直線dj上において単位パターン領域Sが寸法Ls内に開口領域AをM個有するとき、直線dj上の或る開口領域Aに注目すると、直線dj上では開口領域Aの個数がM個分だけ離れた位置には、全く同じ寸法tj及び形状の開口領域Aが常に存在するという規則性を有する。すなわち、開口領域Aの直線dj上での寸法tjについて、直線dj上で順番に数えてk番目の寸法tj(k)と、そこから更にM番目の(k+M)番目の寸法tj(k+M)とが同じとなる、tj(k)=tj(k+M)の関係が成立する(k,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
【0091】
しかし、この規則性は、単位パターン領域Sとしての繰返周期(前記で言えば寸法Lsがその繰返周期に該当する)に基づくものであり、開口領域Aとしての繰返周期(周期性)ではなく、各単位パターン領域S内に於いて開口領域Aがその配置に周期性を上記特定方向に持つことではない。また、単位パターン領域Sとしての繰返周期は、画像表示パネルの画素配列の配列周期に対して寸法が例えば1000倍以上異なる為に、モアレが発生する様な近い寸法関係にない。
また、各単位パターン領域S内に於いては、開口領域Aの配置が特定方向に周期性を持たない為、本発明の奏すべきモアレ防止の改善効果は、支障なく奏される。
【0092】
図14に示された例では、透視性電極部材10が、同一の形状を有した六つの単位パターン領域Sに分割され、各単位パターン領域S内で、メッシュパターン3Pが同一に構成されている。そして、六つの単位パターン領域Sは、
図13の縦方向(図の上下方向)に繰返周期SP1で三つの領域が並ぶとともに、
図13の横方向に繰返周期SP2で二つの領域が並ぶように配列されている。
【0093】
〔導電性メッシュ4への金属めっき層、黒化層の付加〕
導電性メッシュ4は、その表面に金属めっき層を形成してもよい。金属めっき層は、通常、導電性凸条部3の頂部3tが導電性を有するので、この頂部3tの表面に、銅、銀、クロムなどの1種以上を含む金属をめっきすることで行われる。金属めっき層によって、導電性凸条部3単体では面積抵抗率が大きい場合に、これを小さくすることができる。
導電性メッシュ4、或いは前記金属めっき層は、その表面に黒化層を形成してもよい。黒化層は、公知の黒化処理によって形成することができる。黒化層によって、導電性メッシュ4或いは金属めっき層の表面からの反射光を減らして、これらの層を目立たなくさせ、画像表示パネルに適用したときに、画像のコントラストを向上させることができる。
【0094】
〔その他の層〕
本発明においては、上記した以外のその他の層を含んでもよい。例えば、各種光学フィルタ機能を付与する光学フィルタ層、光学フィルタ機能以外の機能を付与する機能層などである。これらの層には公知の層を適宜採用することができる。
なお、光学フィルタ層としては、紫外線吸収層、反射防止層(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)、着色(フィルタ)層などである。また、光学フィルタ機能以外の機能を付与する機能層としては、防汚層、帯電防止層、ハードコート層、粘着剤層、該粘着剤層を使用時まで保護する離型フイルム、接着剤層、層間密着を強化する密着強化層、耐衝撃層などである。なお、これらの層は単層で2以上の機能を兼用することもある。
【0095】
〔両面仕様〕
図1に示した実施形態では、導電性凸条部3が透明基材1の片面に形成された片面仕様であった。しかし、本発明においては、導電性凸条部3が透明基材1の両面に形成された両面仕様の形態もあり得る。両面仕様の形態では、両面それぞれの導電性凸条部3のメッシュパターン3P同士の干渉によるモアレも目立たなくさせることができる。よって、画像表示パネルに適用しない用途においても、モアレを目立たなくさせる効果を得ることができる。例えば、印刷物上に配置された2層の透明電極を用いたタッチパネルなどである。
【0096】
〔B〕画像表示装置:
本発明による画像表示装置は、前記した透視性電極部材10を含んでなる構成の画像表示装置である。
図15で例示する本発明による画像表示装置100は、透視性電極部材10を、画像表示パネル30の画面30a上に備える画像表示装置100である。透視性電極部材10は、例えば、タッチパネル20の透明電極として、画像表示パネル30の画面30a上に備えられ、その結果、透視性電極部材10を含んでなる画像表示装置100が構成される。上記タッチパネルは、その位置検知方式に特に制限はないが、例えば、投影型或いは表面型の静電容量方式、抵抗膜方式などである。
【0097】
本画像表示装置100は、上記した透視性電極部材10、画像表示パネル30など以外に、筐体(キャビネット)、入出力部品等の他、画像表示装置の用途に応じて、例えば、テレビジョン受像機の場合はチューナ等の、公知の各種部品を備える。これらのその他の構成要素は、特に制限はなく、用途に応じたものとなる。
画像表示パネル30は、プラズマディスプレイパネル、液晶パネル、EL(電界発光)パネル等の平面画像を表示可能な表示パネルである。また、画像表示パネル30は、表示面が平面乃至は湾曲面のブラウン管等でも良い。画像表示パネル30としては、ディスプレイ駆動回路等の各種回路、該駆動回路と画像表示パネル本体間の配線、これらを一体化するシャーシ、フレーム等を含んでいても良い。従って、画像表示パネル30は、「ディスプレイモジュール」乃至は「パネルモジュール」等と呼ぶこともできる。
【0098】
この様な構成の画像表示装置100とすることで、モアレと濃淡ムラが共に改善するので、品質の良い画像を表示できる。
【0099】
なお、透視性電極部材10を含むタッチパネル20は、画像表示パネル30の画面30a上に配置されるが、タッチパネル20と画像表示パネル30の画面30aとの間は、空気層があっても良く、樹脂層等で埋めても良い。
画像表示装置100は、図示はしないが、画像表示パネル30の画面上に、透視性電極部材10を含むタッチパネル20以外に、その他の光学部材を備えていても良い。その他の光学部材は、例えば前記した機能層を有する光学部材等である。例えば、反射防止層、表面保護ガラス等である。
【0100】
〔C〕用途:
本発明による透視性電極部材10の用途は特に限定されないが、特にモアレが生じ得る周期的パターンを有する物と組み合わせる用途であって、しかも、導電性凸条部3の線幅に10μm以下が望ましい用途が好適である。例えば、タッチパネルの透明電極部材、各種画像表示パネルの透明電極部材、電磁波シールド用の透明電極部材などである。
前記画像表示パネルとしては、液晶表示パネル、プラズマディスプレイパネル、EL(電界発光)パネル、電子ペーバーなどの各種画像表示パネルの他、ブラウン管によるディスプレイ装置でもよい。また、照明用ELパネルとして、液晶表示パネルのバックライトなどの用途に適用してもよい。
本発明による画像表示装置100の用途も特に限定されないが、特にモアレが生じ得る周期的パターンを有する物と組み合わせる用途であって、しかも、導電性凸条部3の線幅に10μm以下が望ましい用途が好適である。具体的には、携帯電話の表示部、事務用機器の画像表示部、各種機器のタッチパネル付き画像表示部、各種計測機器や医療機器の画像表示部、テレビジョン受像裝置、電子計算機のモニタ等である。組み合わせる画像表示パネルは、前記列記したものなどである。