(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
食品工業などの製造分野で様々な液状材料が使用されている。これら液状材料を用いた製品の品質を安定させるためには、液状材料の高精度な送液量制御が必要であり、近年、より正確に、より均一に液状材料を送り出す事が求められている。そのため、液状材料の送液量の高精度な測定や、液状材料の出力状態の監視を簡易にかつ正確に行うことが重要になっている。
【0003】
しかし、液状物の特性が変動してしまう場合や、送液装置の各部において液状物の詰まりが発生してしまう場合には、液状材料の出力量の測定精度は得られない。特に液状物の詰まりに関しては、循環配管において液状物の流れる時間が短いために発生頻度が高い場合が多い。
【0004】
このような問題を解消する出力量の予測方法として、実際の出力量に対して出力口の圧力や配管内の送液量の測定結果やその他装置内の様々な測定値との相関関係より行う方法が知られている。
【0005】
例えば特許文献1では、
図8に示すように出力口6の出力圧力を計測し、出力圧力が事前に登録した圧力となるように液状物の送液量を制御することで出力量を一定に保つ方法が提案されている。これは出力圧力と出力量の関係を予め測定しておき、出力圧力から出力量を予測している。
【0006】
特許文献2では、
図9に示すように切替部5と出力口6の間の出力配管7に、出力配管7内の送液量を計測する計測部4を設け、計測部4より得られる送液量の積算値により出力量を測定する方法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法では出力する液状物の粘性が変化した場合に正確に出力量を予測する事ができない。粘性が変化した場合、液状物の流れ方が変化してしまい、同じ圧力であっても出力量は変化してしまうからである。
【0009】
また、特許文献2の方法では、切替部5による配管の切り替え時における出力配管7の送液量の変動が大きすぎるため、送液量を正確に計測する事ができない。(
図10参照)
しかも、特許文献2の方法では、切替部5の動作が高速の場合、出力側へ送液されている時間のみの送液量を測定することは計測部5の応答性から難しく、また切替部5動作時の送液量の変動を完全に抑えることは難しい。そのために、一定時間の平均値を算出するなどして、その影響を軽減する事が一般的である。ところが、出力配管7や循環配管8の何らかの理由により流れ方が変化してしまった場合、一定時間の平均値ではその変化を捉えることができない。
【0010】
その他、一般的な配管状態の変化を監視する方法として、監視対象の配管の複数位置の圧力を測定し、その差を監視する方法がある。しかしながら、この方法では状態変化の原因となる位置が圧力の測定位置の区間に内でなければ監視する事ができない。また使用する圧力測定機器も2つ以上または複数個必要であるため設備構成が複雑となる問題点もある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の送液装置は、液状物を貯蔵する貯蔵部と、液状物を貯蔵部外に送液する送液部と、貯蔵部から送液された液状物の流路となる送液配管と、送液配管における液状物の送液圧力を計測する計測部と送液配管から供給された液状物を出力する出力部と送液配管から出力部に供給される液状物の流路となる出力配管と送液配管から貯蔵部へ回収される液状物の流路となる循環配管と、送液配管が、出力配管、循環配管に分岐する分岐点にあり、送液配管から出力配管または循環配管に流路が連通するよう、液状物の流路を切り替える切替部と、送液部および切替部を制御する制御部を有し、制御部は、さらに送液状態を監視する監視部を有し、監視部は、切替部の切替タイミング時における計測部の圧力測定値の変化量から、循環配管または出力配管の状態を判定することを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の送液装置の監視方法は、貯蔵部に貯蔵された液状物をモータ駆動により送液配管に送液する送液ステップと、送液配管から供給された液状物を、出力配管を通して出力部から出力する出力ステップと、送液配管から供給された液状物を、循環配管を通して貯蔵部へ回収する循環ステップと、送液配管から出力配管または循環配管に、液状物の流路を切り替える切替ステップと、送液配管における液状物の送液圧力を計測する計測ステップと、送液部における流路切替タイミング前後の送液圧力値の変化量を算出する算出ステップと、流路切替タイミング前後の送液圧力値の変化量と、予め定めた設定値と比較する比較ステップと、変化量が前期設定値以上の場合に循環配管は異常であると判定する判定ステップとを有する。
【0013】
本発明の目的は、かかる欠点を解決するためになされたものであり、液状物の粘度が変化しても、詰まり等の異常判定が可能である送液装置および送液装置の監視方法を提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態に係る送液装置の構成を示す概略図である。
【0016】
送液装置1は、液状物を貯蔵する貯蔵部2と、貯蔵部2から液状物を送液する送液部3と、供給された液状物が通る供給路が設けられた管状部材(送液配管10、出力配管7、循環配管8)と、液状物を出力する出力口6と、送液経路を切り替える切替部5と、送液部3および切替部5を制御する制御部9と、送液圧力を測定する計測部4と、を備えている。
【0017】
貯蔵部2は、一方端が貯蔵部2から供給された液状物を送液配管10に送液する送液部3に、他方端が送液配管10からの液状物を貯蔵部2に回収する循環配管8に接続している。送液部3はモータ駆動により、貯蔵部2から吸引した液状物を送液配管10に連続的に送出する。送液部3では、モータの回転数が設定された値と常に同じになるようにフィードバック制御を行なっている。
【0018】
計測部4は送液配管10に設置された例えば圧力計等であり、送液配管10での液状物の送液圧力を測定する。
【0019】
送液配管10は、送液配管10から出力口6に供給される液状物の流路となる出力配管7および、送液配管10から貯蔵部2に液状物を回収する液状物の流路となる循環配管8と切替部5を介して連通している。切替部5は、出力配管7と循環配管8とのどちらか一方が送液配管10に連通するように流路を切り替える。
【0020】
切替部5は、出力配管7及び循環配管8それぞれに設置された流路を開閉するバルブであり、これらバルブを開閉制御することによって、流路を貯蔵部2と出力口6との間で液状物を循環させる循環状態か、出力口6から液状物を出力させる出力状態かに切り替える。切替器51は出力配管7側のバルブであり、切替器52は循環配管8側のバルブである。切替部5の切替動作は、運転中は制御部9のタイマー等により所望のタイミングで行う。なお、循環配管8の一部または全部の径は、出力配管7より小さい。
【0021】
液状物を出力口6から出力するとき、切替部5は送液配管10から出力配管7に流路をつなげ出力経路を形成し、貯蔵部2の液状物を送液配管10から出力配管7を経由して出力口6に出力する。液状物を出力しないとき、切替部5は送液配管10から循環配管8に流路をつなげ循環経路を形成し、貯蔵部2の液状物を送液配管10から循環配管8を経由して貯蔵部2に戻し液状物を循環させ続ける。
【0022】
制御部9は送液部3と電気的に接続し、送液部3の動作を制御する。制御部9が設定した値(回転数など)は送液部3に送信され、送液部3の出力回転数に設定される。その入力値が送液部3の出力回転数となり、回転数に応じた量の液状物が送液部3によって汲み上げられることとなる。
【0023】
制御部9は、計測部4と電気的に接続し、計測部4が計測した液状物の送液圧力を取得して記憶する。
【0024】
また、制御部9は、切替部5と電気的に接続し、切替部5を制御する。制御部9は、切替部5による出力経路と循環経路との切り替えのタイミングを設定し、タイマー等により設定したタイミングに応じて切替部5を制御する。さらに、制御部9は、送液状態を監視する監視部91を備えている。
【0025】
送液装置1の送液動作について説明する。
【0026】
まず、作業者が制御部9の入力部98に送液部3のモータ回転数等の所望の値(N)を入力する。また、作業者は切替部5の切替タイミングを設定する。
【0027】
次に、制御部9は、モータに駆動電圧を印加して送液部3のモータを回転駆動させる。これにより、モータは回転数Nで回転を開始し、貯蔵部2から供給された液状物を送液配管10に送液する。切替部5は送液配管10を循環配管8側に連通するように設定しているので、液状物は貯蔵部2への循環を開始する。所定時間が経過するまで、制御部9は、一定流量を維持する送液部3のフィードバック制御を実行する。
【0028】
最初に設定した切替タイミングに基づき、制御部9は、切替部5に切替動作を実行させる。この結果、予め設定したタイミングで出力口6への液状物の出力と貯蔵部2への循環が交互に行われる。なお、循環状態から出力状態に切替える際、切替部5の切替器51が閉から開へ切り替わり、切替器52が開から閉に切り替わる時に、一定時間同時に閉となる切替動作を行う。
【0029】
次に送液を続行するか否かを判断する。送液終了と判断された場合は、切替部5を循環配管8へと切り替えて、送液部3の駆動を停止し、送液を終了する。
送液を続行すると判定された場合は、送液終了と判断されるまで、上記工程を繰り返す。
【0030】
次に監視部91の構成を
図2に基づいて詳細に説明する。
【0031】
制御部9は、送液状態を監視する監視部91と、送液を制御する送液制御部97とを備えている。また、作業者により所望の出力量を予め設定入力するための入力部98を備えている。
【0032】
監視部91は、計測部4から得られる圧力値と、切替器51および切替器52の開閉状態とから循環配管8と出力配管7の送液状態を監視する。
監視部91はデータ取得部92と、演算部93と、判定部94とを備えている。
【0033】
データ取得部92は、切替部5の切替タイミングを取得し、切替タイミングに応じて計測部4で計測した送液配管10の圧力値を取得する。
【0034】
計測部4は、以下のタイミングで圧力を測定する。
1.切替器51と切替器52が同時閉の直前の切替器51が閉かつ切替器52が開の状態の送液配管10の圧力PGa。
2.切替器51と切替器52が同時に閉じている時間における送液配管10の圧力PGb。
3.切替器51と切替器52が同時閉の直後の切替器51が開かつ切替器52が閉の状態の送液配管10の圧力PGc
演算部93は、圧力PGbに対して、圧力PGaおよび圧力PGcとの差を演算する。
判定部94は、演算部93で演算された圧力差から循環配管8と出力配管7の状態を判定する。判定は、演算部93のデータと過去のデータまたは予め与えた設定値との差異を比較し、配管の異常有無を判定する。
【0035】
監視部91における配管の異常判定方法に関して、
図3を用いて、さらに詳しく説明する。
【0036】
図3は、切替部5の切替動作と、送液配管10、出力配管7、循環配管8それぞれの圧力、および、出力部6から出力される液状物の出力量の変化を示す。
【0037】
まず
図3(a)の切替動作について説明する。
図3(a)では、切替器51と52において同時に閉になる時間がない。流路は瞬時に切り替わる。そのため、送液配管の圧力に大きな変動はない。
出力配管7の圧力は、一定時間T1の間をかけて循環配管8の圧力が伝わる。このため、切替器51が開いた直後の出力口6からの液状物の出力量は、目標とする出力量に到達するまで若干の時間を要する。よって切替器51が開いた直後、出力口からの出力量は少なくなってしまう。
【0038】
図3(b)の切替動作について説明する。
図3(b)では、循環状態から出力状態に切替える際に切替器51および切替器52が同時に閉になる時間を一定時間作る。
【0039】
切替器51及び切替器52が同時に閉になると送液配管10の出口が塞がってしまうため、送液配管10の圧力が上昇する。
【0040】
切替器51が開き、切替部5が出力配管側へ切り替わった直後、送液配管10の圧力が
急激に出力配管7へ伝わり、出力配管7の圧力はT1に比べ短い時間T2で上昇する。このため、切替器51が開いた直後の出力口6からの液状物の出力量を急速に上昇させることができるので、目標とする出力量に到達するまでの時間が短く、切替直後から目標とする出力量を得ることが可能になる。
なお、切替器51および切替器52の同時閉の時間は、数十ms〜数百msが望ましい。
【0041】
切替部5の切替動作において循環配管8側から出力配管7側へ切り替わる際の計測部4で測定される送液配管10の圧力PGの変化を、
図4を用いて説明する。
【0042】
図4は、詰まりが発生していない通常状態における、切替り前後の計測部4での圧力値PGの変化を図示する。
【0043】
まず、循環配管側へ液状物が流れている場合(切替器51が閉、切替器52が開)の圧力PGaは、送液部3から送られる液状物の圧力と、切替部5の切替器52を経由して貯蔵部2へ戻るまでの圧力損失とにより決まる。
【0044】
次に、送液配管10の出口が塞がる場合(切替器51が閉、切替器52が閉)の圧力PGbは、PGaに比べ徐々に上昇する。送液部3は液状物が流れなくても、モーター回転数を維持するようフィードバック制御されているため、液状物の圧力は送液部3の最大送液圧力に達しない程度に上昇する。
【0045】
そして出力配管側へ液状物が流れる場合(切替器51が開、切替器52が閉)の圧力PGcは、送液部3から送られる液状物の圧力と、切替部5の切替器51を経由して出力口6から出力されるまでの配管抵抗とにより決まる。詰まり等の出力口6までの間に閉塞する箇所がない通常の場合では、PGcはPGbに比べ低くなる。
【0046】
次に、循環配管8または出力配管7で配管抵抗が変わった時の計測部4の圧力PGの変化について、
図5および
図6を用いて説明する。
図5は、循環配管8で詰まりが発生した場合における、切替り前後の圧力変化を図示する。
図5の計測部4において、実線は詰まりが発生していない時の圧力変化を、点線は循環配管8で詰まり発生している時の圧力変化を表している。
【0047】
詰まりが発生すると、循環配管8の経路が狭くなる。循環配管側へ液状物が流れている場合(切替器51が閉、切替器52が開)の圧力PGaは、詰まりが発生する前に比べ、液状物が流れ難くなるために配管抵抗が大きくなる。その結果、PGaは大きく上昇する。
【0048】
送液配管10の出口が塞がる場合(切替器51が閉、切替器52が閉)の圧力PGbは、PGaが上昇したことにより詰まり発生前に比べ少し上昇するか、または等しい圧力となる。
【0049】
出力配管側へ液状物が流れている場合(切替器51が開、切替器52が閉)の圧力PGcは、同様に詰まり発生前に比べて上昇する。
【0050】
図6は、液状物の粘度が上昇した場合における、切替り前後の圧力変化を図示する。
【0051】
図6に示すように液状物の粘度上昇した場合ではPGa、PGb、PGcそれぞれの圧力が一定数上昇する。
【0052】
以上のように、単なるPGaまたはPGc値だけの監視では粘度上昇か出力配管7または循環配管8の経路変化であるかは区別することができない。しかし、PGbとPGaとの差分PGb−a、またはPGbとPGcとの差分PGb−c、を監視することにより、粘度の影響を受けても配管の異常判定が可能になる。
【0053】
前述した計測部4の計測データPGの各時間の測定値PGa、PGb、PGcを用いて配管経路状態の変化を監視する監視部91の動作を
図7のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップ1においてデータ取得部92より、切替部5の切替タイミングと計測部4の送液配管10の圧力値PGを収集する。
【0054】
次に、ステップ2では、収集データより演算部93にて計測部4の圧力データPGa、PGb、PGcを抽出する。
【0055】
PGbとPGaとの差分PGb−aとPGbとPGcとの差分PGb−cを求める。
この時、単なる差分ではなく、前回の切替部5動作の差分データとの変化量をそれぞれPGb−a、PGb−cとしても良い。
【0056】
次にステップ3において判定部94により予め異常判定用として設定した閾値と比較し、閾値以上の場合は警報として発報を行う。
【0057】
監視部91の動作開始は、例えば切替部5動作の切替器52の閉から開へまたは開から閉へ、または切替器51の閉から開へまたは開から閉へ、または切替器51および切替器52の同時開または同時閉を検出して実行するか、または外部トリガにより動作を行う方法がある。
【0058】
以上、本発明の送液装置の制御方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、実施例に記載した構成を適宜組み合わせるなど、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【0059】
本発明の本発明の送液装置の制御方法は、送液圧力の監視を行うことにより、フィードバックにおいて簡単な制御で送液量の制御を実施するという特性を有していることから、例えば、食品工業、医薬、化学工業、電子機器製造等の液体定量送り装置の用途に好適に用いることができる。