(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部によって、検出された目の位置が前記第2特定領域の外部であると判定された場合、判定されてから予め定められた規定時間が経過するまで、前記撮像部、前記検出部、および、前記判定部の少なくとも1つの動作を停止させる動作制御部をさらに備えること、
を特徴とする請求項2に記載の診断支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる診断支援装置および診断支援方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。以下では、本発明を、被験者の視点を検出することにより発達障害の診断を支援する診断支援装置として適用した例について説明する。適用可能な装置はこれに限られるものではない。
【0013】
本実施形態の診断支援装置では、被験者の目の位置が、撮像領域内に定められる特定領域の外部に外れたかを検出する。例えば、撮像領域に複数の境界線を設定し、この境界線の内側を特定領域とする。そして、被験者の目の位置が特定領域の外側に向かって境界線を越えたことを検出する。境界線を越えたことが検出された場合、越えた量に対応して表示態様を徐々に変化させたマーカを表示部(モニタ)に表示するにより、越えたことを報知する。例えば、乳幼児である被験者の目が特定領域から外れかかったら、徐々にマーカを浮き上がらせるように表示する。これにより、母親が気づいて乳幼児の位置を調整できる。この間、画像の変換は微小であり、乳幼児はほとんど気づかない。すなわち、乳幼児の視線がマーカに向かうことにより正しい測定ができなくなる問題を回避し、効率よく測定を実施できる。
【0014】
本実施形態は、被験者の観察する対象(観察対象)となる画像(対象画像)を表示部(モニタ)に表示して被験者の発達障害を診断する例である。
図1は、本実施形態で用いる表示部、ステレオカメラ、および光源の配置の一例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態では、表示画面101の下側に、1組のステレオカメラ102を配置する。ステレオカメラ102は、赤外線によるステレオ撮影が可能な撮像部であり、右カメラ202と左カメラ204とを備えている。
【0015】
右カメラ202および左カメラ204の各レンズの直前には、円周方向に赤外LED(Light Emitting Diode)光源203および205がそれぞれ配置される。赤外LED光源203および205は、発光する波長が相互に異なる内周のLEDと外周のLEDとを含む。赤外LED光源203および205により被験者の瞳孔を検出する。瞳孔の検出方法としては、例えば特許文献3に記載された方法などを適用できる。
【0016】
視線を検出する際には、空間を座標で表現して位置を特定する。本実施形態では、表示画面101の中央位置を原点として、上下をY座標(上が+)、横をX座標(向かって右が+)、奥行きをZ座標(手前が+)としている。検出された目(瞳孔)の位置も、3次元の座標値で表される。
【0017】
図2は、診断支援装置100の機能の概要を示す図である。
図2では、
図1に示した構成の一部と、この構成の駆動などに用いられる構成を示している。
図2に示すように、診断支援装置100は、右カメラ202と、左カメラ204と、赤外LED光源203および205と、スピーカ105と、駆動・IF部208と、制御部300と、表示部210と、を含む。
図2において、表示画面101と、右カメラ202および左カメラ204との位置関係を分かりやすく示しているが、表示画面101は表示部210において表示される画面である。
【0018】
スピーカ105は、キャリブレーション時や、診断時に、装置の状態や診断の状態などを報知するための音声などを出力する。
【0019】
駆動・IF部208は、ステレオカメラ102に含まれる各部を駆動する。また、駆動・IF部208は、ステレオカメラ102に含まれる各部と、制御部300とのインタフェースとなる。
【0020】
表示部210は、診断のための対象画像等、各種情報を表示する。
【0021】
図3は、
図2に示す各部の詳細な機能の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、制御部300には、表示部210と駆動・IF部208が接続される。駆動・IF部208は、カメラIF314、315と、LED駆動制御部316と、スピーカ駆動部322と、を備える。
【0022】
駆動・IF部208には、カメラIF314、315を介して、それぞれ、右カメラ202、左カメラ204が接続される。駆動・IF部208がこれらのカメラを駆動することにより、被験者を撮像する。
【0023】
右カメラ202からはフレーム同期信号が出力される。フレーム同期信号は、左カメラ204とLED駆動制御部316とに入力される。これにより、第1フレームで、タイミングをずらして左右の波長1の赤外線光源(波長1−LED303、波長1−LED305)を発光させ、それに対応して左右カメラ(右カメラ202、左カメラ204)による画像を取り込み、第2フレームで、タイミングをずらして左右の波長2の赤外線光源(波長2−LED304、波長2−LED306)を発光させ、それに対応して左右カメラによる画像を取り込んでいる。
【0024】
赤外LED光源203は、波長1−LED303と、波長2−LED304と、を備えている。赤外LED光源205は、波長1−LED305と、波長2−LED306と、を備えている。
【0025】
波長1−LED303、305は、波長1の赤外線を照射する。波長2−LED304、306は、波長2の赤外線を照射する。
【0026】
波長1および波長2は、それぞれ例えば900nm未満の波長および900nm以上の波長とする。900nm未満の波長の赤外線を照射して瞳孔で反射された反射光を撮像すると、900nm以上の波長の赤外線を照射して瞳孔で反射された反射光を撮像した場合に比べて、明るい瞳孔像が得られるためである。
【0027】
スピーカ駆動部322は、スピーカ105を駆動する。
【0028】
制御部300は、診断支援装置100全体を制御して、結果を表示部210およびスピーカ105などに出力する。制御部300は、検出部351と、判定部352と、表示制御部353と、報知部354と、動作制御部355と、を備えている。
【0029】
検出部351は、ステレオカメラ102により撮像された撮像画像から、撮像領域内の被験者の目(右目および左目)の位置(例えば瞳孔の位置)を検出する。また、検出部351は、被験者の瞳孔の位置などを用いて、被験者の視点を検出する。本実施形態では、検出部351は、例えば、被験者の母親の画像などを含む表示画面101に表示された対象画像のうち、被験者が注視する点である視点を検出する。検出部351による視点検出方法としては、従来から用いられているあらゆる方法を適用できる。以下では、特許文献4と同様に、ステレオカメラを用いて被験者の視点を検出する場合を例に説明する。
【0030】
この場合、まず検出部351は、ステレオカメラ102で撮影された画像から、被験者の視線方向を検出する。検出部351は、例えば、特許文献1および3に記載された方法などを用いて、被験者の視線方向を検出する。具体的には、検出部351は、波長1の赤外線を照射して撮影した画像と、波長2の赤外線を照射して撮影した画像との差分を求め、瞳孔像が明確化された画像を生成する。検出部351は、左右のカメラ(右カメラ202、左カメラ204)で撮影された画像それぞれから上記のように生成された2つの画像を用いて、ステレオ視の手法により被験者の瞳孔の位置を算出する。また、検出部351は、左右のカメラで撮影された画像を用いて被験者の角膜反射の位置を算出する。そして、検出部351は、被験者の瞳孔の位置と角膜反射位置とから、被験者の視線方向を表す視線ベクトルを算出する。
【0031】
検出部351は、例えば
図1のような座標系で表される視線ベクトルとXY平面との交点を、被験者の視点として検出する。両目の視線方向が得られた場合は、被験者の左右の視線の交点を求めることによって視点を計測してもよい。
【0032】
なお、被験者の視点の検出方法はこれに限られるものではない。例えば、赤外線ではなく、可視光を用いて撮影した画像を解析することにより、被験者の視点を検出してもよい。
【0033】
図4は、被験者の瞳孔の位置を検出する方法を模式的に示す説明図である。右カメラ202で検出した瞳孔の位置と角膜反射の位置関係とから、右カメラ202から見た被験者201の瞳孔の方向が求められる。また、左カメラ204で検出した瞳孔の位置と角膜反射の位置関係とから、左カメラ204から見た被験者201の瞳孔の方向が求められる。求められた2つの瞳孔の方向の交点から、
図1の座標上の被験者201の瞳孔の位置が計算される。
【0034】
検出部351による目の位置の検出方法はこれに限られるものではなく、従来から用いられているあらゆる方法を適用できる。例えば、パターンマッチング等により撮像画像から目の位置を検出するように構成してもよい。
【0035】
検出された被験者の視点が、表示画面101に表示された対象者の目の位置と一致するかによって、被験者が対象者の目を注視しているか否かが判定できる。これにより、被験者が発達障害であるか否かを診断することが可能となる。
【0036】
図3に戻る。判定部352は、検出された目の位置が、撮像領域に含まれる特定領域(第1特定領域)の外部であるか否かを判定する。第1特定領域は、例えば高精度に目の位置を検出できる領域として予め定められる。第1特定領域は、3次元の領域であり、例えば
図1に示す座標系により表される。判定部352は、左右方向(例えば
図1のX軸方向)、上下方向(例えば
図1のY軸方向)、および、奥行方向(焦点方向。例えば
図1のZ軸方向)のいずれかに向かって、被験者の目の位置が第1特定領域の内部から外れたことを判定する。
【0037】
また、判定部352は、検出された目の位置が、撮像領域に含まれる領域であって、第1特定領域を含み第1特定領域より大きい第2特定領域の外部であるか否かを判定する。
第2特定領域の外部は、ステレオカメラ102が画像を撮像可能な範囲(撮像範囲)から外れた領域に相当する。第1特定領域の外部であって、第2特定領域の内部の領域は、撮像範囲から外れかかった領域に相当する。
【0038】
表示制御部353は、表示画面101に対する各種情報の表示を制御する。例えば、表示制御部353は、対象画像を表示画面101に表示する。また、表示制御部353は、被験者の目の位置が第1特定領域の外部であると判定された場合に、被験者の移動を促すためのマーカを表示画面101に表示する。このとき、表示制御部353は、目の位置から第1特定領域までの距離に応じてマーカの表示態様を変化させて表示する。
【0039】
表示態様としては、例えば、マーカの画像の輝度、彩度、および、色相などを用いることができる。表示態様はこれに限られるものではない。表示態様として、画像の濃度値(画像レベル)、マーカの大きさ、長さ、および、形状を用いてもよい。また、マーカの表示位置を変化させてもよい。このように、変化させる表示態様は任意であるが、変化が被験者に気づかれにくい表示態様を用いることが望ましい。
【0040】
図5は、表示画面101に表示されたマーカの一例を示す図である。表示されている顔の画像は、被験者が、目付近を見るか否かを判定するために必要な対象画像である。マーカ501は、抱きかかえた乳幼児などの被験者を移動させる方向(右)を示すマーカである。マーカ502は、被験者を移動させる方向(左)を示すマーカである。マーカ503は、被験者を移動させる方向(下)を示すマーカである。マーカ504は、被験者を移動させる方向(上)を示すマーカである。以下では、移動させる方向として右、左、上、および、下を示すマーカを、それぞれマーカA、マーカB、マーカC、および、マーカDという場合がある。
【0041】
これらのマーカは、乳幼児の目の位置が特定領域内に存在する場合には表示されず、特定領域から外れると徐々に強調表示される。乳幼児は、診断支援用コンテンツ(対象画像)を注視しているため、徐々に表示されるマーカには気づかない。一方、乳幼児を抱きかかえる大人(母親など)は、初期段階のマーカの微妙な表示でも判断できるため、乳幼児の位置を修正することができる。
【0042】
なお、目の位置が特定領域内に存在する場合にも、気づかれない程度にマーカを表示するように構成してもよい。また、マーカの形状および表示位置は、
図5に示すものに限られない。例えば検出された目の位置と第1特定領域との位置関係を示すものであれば、どのようなマーカを用いてもよい。被験者に気づかれないようにするため、マーカの表示位置は表示画面101の端部とすることが望ましい。マーカを表示部210と異なる表示部(図示せず)に表示してもよいが、対象画像を表示する表示部210に表示すれば構成を簡易化しコストを低減できる。
【0043】
図6は、表示画面101に表示されたマーカの他の例を示す図である。
図6では、マーカ601〜604を表示画面101の右上に集中して配置した例が示されている。
図6の例では、マーカ601〜604が、マーカA〜Dに対応する。
【0044】
図7は、表示画面101に表示されたマーカの他の例を示す図である。
図5および6は、移動方向を4方向で示す例であった。これに対し、
図7は、移動方向を8方向で示す例を表している。
図7の例では、マーカ1201〜1204が、右、左、下、および、上の移動方向を示すマーカ(マーカA〜D)に相当する。マーカ1205〜1208が、右下、左下、左上、および、右上の移動方向を示すマーカ(マーカE〜H)に相当する。なお、さらに細分化した移動方向を示すマーカを用いてもよい。
【0045】
図8は、表示画面101に表示されたマーカの他の例を示す図である。
図8は、移動方向を示す矢印を切り替えてマーカ1301として表示する例である。
【0046】
図3に戻る。報知部354は、スピーカ105を用いた音声出力、および、表示画面101を用いた情報表示などにより、各種情報を報知する。例えば、報知部354は、被験者の目の位置が第2特定領域の外部であると判定された場合に、目の位置が第2特定領域の外部であることを示す警告音声をスピーカ105から報知する。報知方法はこれに限られるものではない。例えば、マーカの表示態様をさらに変化させる(例えば点滅など)方法などを用いてもよい。
【0047】
動作制御部355は、上記各部の動作を制御する。例えば、動作制御部355は、被験者の目の位置が第2特定領域の外部であると判定された場合に、判定されてから予め定められた規定時間が経過するまで、診断処理を停止する。動作制御部355は、例えば、ステレオカメラ102による撮像処理、検出部351による検出処理、および、判定部352による判定処理の少なくとも1つを停止する。
【0048】
このように、本実施形態では、カメラの撮像領域を複数の領域(第1特定領域、第2特定領域等)に分けて、撮像される目の位置がいずれの領域に存在するかを検出して領域ごとに異なる対応を実施する。例えば第1特定領域を外れたときはマーカを表示し、さらに第2特定領域を外れたときは警告音声を出力する。また、中央周辺の領域(第1特定領域の内部)では、表示および音声出力などを行わず、最良の状態で測定を実施できる。なお、3以上の閾値を用いて、すなわち、3以上の特定領域を用いて、特定領域ごとに異なる処理を実行するように構成してもよい。
【0049】
次に、判定部352による判定処理の詳細について説明する。
図9は、領域および領域に応じた表示態様の変更方法の一例を説明する図である。
図9は、右目および左目それぞれの視点を検出することを前提とした例である。
【0050】
まず、検出部351が、ステレオカメラ102における、カメラ202またはカメラ204により撮像された撮像画像から被験者の右目と左目を検出して、その中心座標を決定する。上述のように、検出部351は特許文献4などの方法で、瞳孔の中心位置を求めればよい。
【0051】
図9の例では、X軸方向に4つの境界を設け、境界それぞれのX軸方向の座標値(X座標値)で表される閾値を設けている。なお、
図9では、
図1の座標系とは異なる座標系を用いている。座標系は任意であり、
図1の座標系を用いてもよいし、他の座標系を用いてもよい。
図9の例では、X座標値が閾値A0から閾値B0までの領域が、第1特定領域に相当する。また、X座標値が閾値A1から閾値B1までの領域が、第2特定領域に相当する。
【0052】
右目の位置のX座標値が閾値A1より小さい、または、左目の位置のX座標値が閾値B1より大きくなったら、目が第2特定領域から外れた可能性があるので、動作制御部355は、測定を中止して所定時間経過後に測定を再開する。
【0053】
右目の位置のX座標値が、閾値A1より大きく、かつ、閾値A0より小さい場合には、閾値A0より閾値A1に向かって閾値A0から離れる距離に応じて、徐々にマーカAの表示を強調して、母親に注意を促す。
【0054】
左目の位置のX座標値が、閾値B0より大きく、かつ、閾値B1より小さい場合には、B閾値0より閾値B1に向かって閾値B0から離れる距離に応じて、徐々にマーカBの表示を強調して、母親に注意を促す。
【0055】
このように、
図9の例では、閾値A0、閾値A1は、被験者の右目の座標位置が比較対象となり、閾値B0、閾値B1は、左目の座標位置が比較対象となる。
【0056】
図10は、領域および領域に応じた表示態様の変更方法の他の例を説明する図である。
図10は、上下方向に領域を分ける例である。
【0057】
図10の例では、Y軸方向に4つの境界を設け、境界それぞれのY軸方向の座標値(Y座標値)で表される閾値を設けている。
図10の例では、Y座標値が閾値C0から閾値D0までの領域が、第1特定領域に相当する。また、Y座標値が閾値C1から閾値D1までの領域が、第2特定領域に相当する。
【0058】
両目の位置のY座標値のいずれかが、閾値C1より小さい、または、閾値D1より大きくなったら、目が第2特定領域から外れた可能性があるので、動作制御部355は、測定を中止して所定時間経過後に測定を再開する。
【0059】
両目の位置のY座標値のいずれかが、閾値C1より大きく、かつ、閾値C0より小さい場合には、閾値C0より閾値C1に向かって閾値C0から離れる距離に応じて、徐々にマーカCの表示を強調して、母親に注意を促す。
【0060】
両目の位置のY座標値のいずれかが、閾値D0より大きく、かつ、閾値D1より小さい場合には、閾値D0より閾値D1に向かって閾値D0から離れる距離に応じて、徐々にマーカDの表示を強調して、母親に注意を促す。
【0061】
このように、
図10の例では、閾値C0、閾値C1は、被験者の左右の目のY座標値が小さい方が比較対象となり、閾値D0、閾値D1は、左右の目のY座標値が大きい方が比較対象となる。
【0062】
図9および
図10では、マーカの表示態様としてマーカの画像レベル(濃度値)を徐々に変化させる例が示されている。また、
図9および
図10では、閾値からの距離と比例するように画像レベルを変化させる例が示されている。変化させる度合いは、これに限られるものではなく、例えば曲線的に画像レベルを変化させてもよい。また、段階的に表示態様を変化させてもよい。
【0063】
表示態様として、HSL色空間のHue(色相)、Saturation(彩度)、およびLuminance(明度)を変化させる場合は、各要素を例えば以下のように変化させてもよい。
【0064】
色相の場合は、元画像のマーカ位置のピクセルを、0〜+30°または、0〜−30°の範囲で変化させる。彩度の場合は、元画像のマーカ位置のピクセルを、0〜+20%または、0〜−20%で変化させる。明度の場合は、元画像のマーカ位置のピクセルを、0〜+10%または、0〜−10%で変化させる。各要素のいずれかを変化させてもよいし、いずれか2つ以上を複合的に変化させてもよい。HSL色空間以外の色空間の各要素の1以上を変化させてもよい。
【0065】
図9および
図10を組み合わせ、上下左右に閾値を設けるように構成してもよい。例えば、X座標値が閾値A0から閾値B0まで、かつ、Y座標値が閾値C0から閾値D0までの領域を第1特定領域とし、X座標値が閾値A1から閾値B1まで、かつ、Y座標値が閾値C1から閾値D1までの領域を第2特定領域としてもよい。また、奥行方向に閾値を設ける例(詳細は後述)をさらに組み合わせてもよい。この場合、上下左右および奥行方向の6つの閾値に対応する境界に囲まれる領域が第1特定領域および第2特定領域に相当する。
【0066】
図11は、領域および領域に応じた表示態様の変更方法の他の例を説明する図である。
図9は、右目および左目それぞれの視点を検出することを前提とした例であった。これに対し
図11は、右目および左目いずれかの視点を検出することを前提とした例である。この場合、内側の目が閾値に対する比較対象となる。このような構成では、視点検出の精度は下がる可能性があるが、横方向の目の位置の許容範囲が広くなる。
【0067】
図12は、視点検出処理の一例を示すフローチャートである。
図12は、
図9および
図10を組み合わせ、上下左右の閾値を用いて、両目の視点を検出する例である。
【0068】
まず、検出部351は、瞳孔の中心位置を検出する(ステップS101)。以下、右目の瞳孔の中心座標は(PRx,PRy)、左目の瞳孔の中心座標は(PLx,PLy)と表す。
【0069】
次に、判定部352は、PRx<閾値A0であるか否かを判断する(ステップS102)。PRxが、閾値A0以上であった場合(ステップS102:No)、ステップS107に遷移する。PRx<閾値A0である場合(ステップS102:Yes)、判定部352は、PRx<閾値A1であるか否かを判断する(ステップS103)。PRxが、閾値A1未満であった場合(ステップS103:Yes)、撮像範囲から外れた可能性が高いのでステップS117に遷移する。
【0070】
次に、PRxが閾値A1以上であった場合(ステップS103:No)、表示制御部353は、マーカAの強調表示の変化率を決定する(ステップS104)。このステップに遷移するのは、閾値A1≦PRx<閾値A0の条件であり、目が撮像範囲から外れかかった状態である。
【0071】
このとき、表示制御部353は、外れる可能性に対応して徐々にマーカを強調表示する。表示制御部353は、輝度、彩度および色相などを徐々に変化させればよい。表示制御部353は、例えば、閾値から外れる度合い(第1特定領域までの距離)に応じて、表示態様の変化率を決定する。
図9の例では、閾値A0の位置で無変化(変化率0%)、閾値A1の位置で最高(変化率100%)になる。最高の変化率で変化させても大人が気づく程度の変化として、徐々に変化させるので、コンテンツ(対象画像)に見入る乳幼児には気づかれ難い。
【0072】
次に、表示制御部353は、マーカAの表示される部分の画像(背景の画像)を確認する(ステップS105)。例えば、表示制御部353は、マーカ部分に対応した画素1つ1つの輝度、彩度および色相を確認する。表示制御部353は、確認したマーカAの画像の各画素の輝度、彩度および色相のいずれか、または、輝度、彩度および色相のうち2以上の組み合わせを、同様の変化率で変化させる。これにより目立たずにマーカを表示することが可能となる。なお、表示制御部353が、透過の画像をマーカとして透過率を変化させながら重ねて表示するように構成してもよい。この場合、ステップS105の処理は不要となる。
【0073】
次に、表示制御部353は、決定した変化率でマーカ部分の画像を変化させることにより、マーカAを表示する(ステップS106)。
【0074】
マーカB(ステップS107〜ステップS111)、マーカC(ステップS112〜ステップS116)、および、マーカD(ステップS119〜ステップS123)についても、同様に処理を行っていく。上下方向は、左右の目のうちY座標値が小さい方をPy1とし、大きい方をPy0としている。
【0075】
それぞれのマーカの表示および非表示が完了した後、検出部351は、視点検出を行う(ステップS124)。
【0076】
次に、動作制御部355は、測定全体が終了か否かを判断する(ステップS125)。例えば動作制御部355は、測定者により終了が指示されたこと、または、指示された測定時間が経過したこと、などにより処理の終了を判断する。
【0077】
終了してない場合は(ステップS125:No)、ステップS101に戻り処理を繰り返す。終了した場合は(ステップS125:Yes)、視点検出処理を完了する。
【0078】
目が撮像範囲から外れた可能性がある場合には(ステップS103:Yes、ステップS108:Yes、ステップS113:Yes、ステップS120:Yes)、報知部354は、警告音声をスピーカ105から発生させる(ステップS117)。その後、動作制御部355は、例えばタイマーで数秒ウェイトを掛けて(ステップS118)、処理を停止する。停止している間に母親に被験者である乳幼児の位置を修正してもらい、測定を再開するためである。
【0079】
図13は、視点検出処理の他の例を示すフローチャートである。
図13は、
図11および
図10を組み合わせ、上下左右の閾値を用いて、左右のいずれかの目の視点を検出する例である。
図13の例では、左右方向について、左右の目のうちX座標値が小さい方をPx1とし、大きい方をPx0としている。
図13は、PRxの代わりにPx0を用い、PLxの代わりにPx1を用いる点が
図12と異なっている。処理の流れは
図12と同様であるため説明を省略する。
図13のような処理により、片目でも検出できれば、測定できるようになる。
【0080】
次に、奥行方向に閾値を設ける場合の判定処理の詳細について説明する。
図14は、この場合の、領域および領域に応じた表示態様の変更方法の一例を説明する図である。被験者の目を高精度に検出するためには、ステレオカメラ102の焦点が合った領域内に被験者が存在することが望ましい。
図14では、焦点が合った領域を第1特定領域とする。そして、被験者の目の位置が、この領域から奥行方向に外れた場合に、マーカを表示する。
【0081】
図14の例では、Z軸方向に4つの境界を設け、境界それぞれのZ軸方向の座標値(Z座標値)で表される閾値を設けている。
図14の例では、Z座標値が閾値E0から閾値F0までの領域が、第1特定領域に相当する。また、Z座標値が閾値E1から閾値F1までの領域が、第2特定領域に相当する。
【0082】
図15は、奥行方向の移動を示すマーカを含むマーカの一例を示す図である。
図15は、
図6のようなマーカ601〜604に加えて、奥行方向の移動を示すマーカ1501および1502をさらに含む例である。マーカ1501および1502は、例えば、それぞれ奥行方向の手前側および奥側の移動を示すマーカとすることができる。以下では、移動させる方向として奥行方向の手前および奥を示すマーカを、それぞれマーカSおよびマーカTという場合がある。
【0083】
図14に戻る。両目の位置のZ座標値のいずれかが、閾値E1より小さい、または、閾値F1より大きくなったら、目が第2特定領域から外れた可能性があるので、動作制御部355は、測定を中止して所定時間経過後に測定を再開する。
【0084】
両目の位置のZ座標値のいずれかが、閾値E1より大きく、かつ、閾値E0より小さい場合には、閾値E0より閾値E1に向かって閾値E0から離れる距離に応じて、徐々にマーカSの表示を強調して、母親に注意を促す。
【0085】
両目の位置のZ座標値のいずれかが、閾値F0より大きく、かつ、閾値F1より小さい場合には、閾値F0より閾値F1に向かって閾値F0から離れる距離に応じて、徐々にマーカTの表示を強調して、母親に注意を促す。
【0086】
このように、
図14の例では、閾値E0、閾値E1は、被験者の左右の目のZ座標値が小さい方が比較対象となり、閾値F0、閾値F1は、左右の目のZ座標値が大きい方が比較対象となる。なお、片目の視点の検出でよい場合は、被験者の左右の目のZ座標値が大きい方を閾値E0、閾値E1と比較し、左右の目のZ座標値が小さい方を閾値F0、閾値F1と比較するように構成してもよい。
【0087】
次に、
図14に対応する視点検出処理について説明する。
図16は、視点検出処理の他の例を示すフローチャートである。
【0088】
まず、検出部351は、瞳孔の中心位置を検出する(ステップS301)。以下、右目の瞳孔の中心座標のZ座標値をPRzと表し、左目の瞳孔の中心座標のZ座標値をPLzと表す。また、PRzおよびPLzのうち値が小さい方をPz0とし、大きい方をPz1とする。
【0089】
次に、判定部352は、Pz0<閾値E0であるか否かを判断する(ステップS302)。Pz0が、閾値E0以上であった場合(ステップS302:No)、ステップS307に遷移する。Pz0<閾値E0である場合(ステップS302:Yes)、判定部352は、Pz0<閾値E1であるか否かを判断する(ステップS303)。Pz0が、閾値E1未満であった場合(ステップS303:Yes)、撮像範囲から外れた可能性が高いのでステップS313に遷移する。
【0090】
次に、Pz0が閾値E1以上であった場合(ステップS303:No)、表示制御部353は、マーカSの強調表示の変化率を決定する(ステップS304)。このステップに遷移するのは、閾値E1≦Pz0<閾値E0の条件であり、目が撮像範囲から外れかかった状態である。
【0091】
次に、表示制御部353は、マーカSの表示される部分の画像(背景の画像)を確認する(ステップS305)。次に、表示制御部353は、決定した変化率でマーカ部分の画像を変化させることにより、マーカSを表示する(ステップS306)。
【0092】
マーカT(ステップS307〜ステップS311)についても、同様に処理を行っていく。
【0093】
それぞれのマーカの表示および非表示が完了した後、検出部351は、視点検出を行う(ステップS312)。
【0094】
次に、動作制御部355は、測定全体が終了か否かを判断する(ステップS315)。
【0095】
終了してない場合は(ステップS315:No)、ステップS301に戻り処理を繰り返す。終了した場合は(ステップS315:Yes)、視点検出処理を完了する。
【0096】
目が撮像範囲から外れた可能性がある場合には(ステップS303:Yes、ステップS308:Yes)、報知部354は、警告音声をスピーカ105から発生させる(ステップS313)。その後、動作制御部355は、例えばタイマーで数秒ウェイトを掛けて(ステップS314)、処理を停止する。
【0097】
図16は、Z座標方向のみについての視点検出処理を示しているが、Z座標方向のみならず、
図12または
図13に示したX座標方向およびY座標方向の視点検出処理と組み合わせて処理が実行されることにより、効率よく測定を行うことができる。
【0098】
以上のように、本実施形態によれば、例えば以下のような効果が得られる。
(1)通常は、マーカが表示されず、測定に影響しない。
(2)目が撮像範囲から外れかかったら、徐々にマーカを浮き上がらせる。これにより、母親が気づいて乳幼児の位置を調整できる。この間、画像の変換は微小であり、乳幼児はほとんど気づかない。
(3)目が撮像範囲から外れた場合は、外れたことを報知した後、乳幼児の報知に対する集中が解除された時点で測定を開始できる。これにより、効率よく測定を実施できる。