特許第6019693号(P6019693)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019693
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20161020BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20161020BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20161020BHJP
   B60C 11/04 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B60C11/13 A
   B60C11/03 300E
   B60C11/12 A
   B60C11/12 C
   B60C11/04
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-93282(P2012-93282)
(22)【出願日】2012年4月16日
(65)【公開番号】特開2013-220726(P2013-220726A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】岡部 英俊
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−250318(JP,A)
【文献】 特開2000−233612(JP,A)
【文献】 特開2011−105170(JP,A)
【文献】 特開2005−007919(JP,A)
【文献】 特開2008−143437(JP,A)
【文献】 特開2006−056405(JP,A)
【文献】 特開平10−029411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝と、タイヤ幅方向に延在する複数のラグ溝と、前記周方向主溝および前記ラグ溝に区画された複数のブロックを有する少なくとも1列の陸部とを備える空気入りタイヤであって、
前記ラグ溝に区画された左右の前記ブロックが、前記ラグ溝側のエッジ部に凹部をそれぞれ有し、前記ラグ溝が、左右の前記ブロックから分離した底上部を有すると共に、前記底上部が、左右の前記凹部にそれぞれ挿入されて配置され、且つ、
前記ブロックの踏面と前記底上部の頂面との段差Gが、前記ラグ溝の溝深さHに対して0.1≦G/H≦0.7の関係を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記凹部と前記底上部との隙間の幅Wsが、0.3[mm]≦Ws≦3.0[mm]の範囲内にある請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記凹部と前記底上部とのタイヤ周方向のラップ幅Xが、前記ブロックの周方向長さLに対して、0.1≦X/L≦0.5の関係を有する請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記底上部の幅W1と、前記ブロックの幅W2とが、0.3≦W1/W2≦0.8の関係を有する請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ブロックの幅W2と、前記凹部の最大幅位置から前記ブロックの左右のエッジ部までの幅W3、W4とが、0.1≦W3/W2かつ0.1≦W4/W2の関係を有する請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記凹部と前記底上部との隙間が、三次元サイプから成る請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、耐偏摩耗性能およびトラクション性能を向上できる空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気入りタイヤは、ブロック列のラグ溝に底上部を形成してブロック剛性を補強することにより、ブロックのヒールアンドトゥ摩耗を抑制する構成を採用している。また、かかる構成では、ブロックと底上部とをサイプで分断することにより、タイヤのトラクション性能(湿潤路での制駆動性能)を確保できる。かかる構成を採用する空気入りタイヤとして、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−7919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、耐偏摩耗性能およびトラクション性能を向上できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、この発明にかかる空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝と、タイヤ幅方向に延在する複数のラグ溝と、前記周方向主溝および前記ラグ溝に区画された複数のブロックを有する少なくとも1列の陸部とを備える空気入りタイヤであって、前記ラグ溝に区画された左右の前記ブロックが、前記ラグ溝側のエッジ部に凹部をそれぞれ有し、前記ラグ溝が、左右の前記ブロックから分離した底上部を有すると共に、前記底上部が、左右の前記凹部にそれぞれ挿入されて配置され、且つ、前記ブロックの踏面と前記底上部の頂面との段差Gが、前記ラグ溝の溝深さHに対して0.1≦G/H≦0.7の関係を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明にかかる空気入りタイヤでは、タイヤ接地時にてブロックが変形したときに、隣り合うブロックとラグ溝の底上部とが相互に噛み合って支え合う。これにより、ブロック剛性が補強されて、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する利点がある。また、底上部が凹部に挿入されて配置されるので、ブロックと底上部とがタイヤ周方向およびタイヤ幅方向の双方向に噛み合い得る。これにより、ブロック剛性がタイヤ周方向およびタイヤ幅方向の双方向に補強されて、タイヤのトラクション性能(湿潤路における制駆動性能および耐横滑り性能)が向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
図2図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。
図3図3は、図2に記載した陸部を示す拡大平面図である。
図4図4は、図3に記載した陸部を示すA−A視断面図である。
図5図5は、図3に記載した陸部を示すB−B視断面図である。
図6図6は、図3に記載した陸部の変形例を示す説明図である。
図7図7は、図3に記載した陸部の変形例を示す説明図である。
図8図8は、図3に記載した陸部の変形例を示す説明図である。
図9図9は、図4に記載した陸部の変形例を示す説明図である。
図10図10は、図4に記載した陸部の変形例を示す説明図である。
図11図11は、図3に記載した陸部の変形例を示す説明図である。
図12図12は、図3に記載した陸部の変形例を示す説明図である。
図13図13は、図3に記載した陸部の変形例を示す説明図である。
図14図14は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
図15図15は、従来例の空気入りタイヤの陸部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0009】
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤ1を示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、空気入りタイヤ1の一例として、トラック、バスなどに装着される重荷重用ラジアルタイヤを示している。なお、符号CLは、タイヤ赤道面である。
【0010】
この空気入りタイヤ1は、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のビードゴム17、17を備える(図1参照)。
【0011】
一対のビードコア11、11は、環状構造を有し、左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、ローアーフィラー121およびアッパーフィラー122から成り、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
【0012】
カーカス層13は、単層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13は、スチールあるいは有機繊維材(例えば、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で85[deg]以上95[deg]以下のカーカス角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの繊維方向の傾斜角)を有する。
【0013】
ベルト層14は、複数のベルトプライ141〜143を積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。これらのベルトプライ141〜143は、例えば、高角度ベルト141と、一対の交差ベルト142、143とから構成される。また、各ベルトプライ141〜143は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、所定のベルト角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの繊維方向の傾斜角)を有する。
【0014】
図2は、図1に記載した空気入りタイヤ1のトレッド面を示す平面図である。
【0015】
この空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する5本の周方向主溝2と、これらの周方向主溝2に区画されて成る6列の陸部3と、タイヤ幅方向に延在する複数のラグ溝4とをトレッド部に備える(図2参照)。
【0016】
例えば、図2の構成では、5本の周方向主溝2がタイヤ赤道面CLを中心として左右対称に配置されて、4列のセンター陸部3と左右一対のショルダー陸部3とが区画されている。また、すべて陸部3が、複数のラグ溝4をそれぞれ有している。また、これらのラグ溝4が、陸部3をタイヤ幅方向に貫通するオープン構造を有し、また、タイヤ周方向に所定間隔で配列されている。これにより、すべての陸部3が、複数のブロック31に区画されてブロックパターンが形成されている。
【0017】
なお、周方向主溝とは、5[mm]以上の溝幅を有する周方向溝をいう。また、ラグ溝とは、2[mm]以上の溝幅を有する横溝をいう。
【0018】
[ラグ溝の底上部]
図3は、図2に記載した陸部3を示す拡大平面図である。図4および図5は、図3に記載した陸部3を示すA−A視断面図(図4)およびB−B視断面図(図5)である。これらの図において、図3は、タイヤ周方向に配列されて1列の陸部3を構成するブロック列を示している。また、図4および図5は、ラグ溝4の底上部41にかかるタイヤ周方向の断面図(図4)および溝長さ方向の断面図(図5)を示している。
【0019】
図3に示すように、この空気入りタイヤ1では、ラグ溝4に区画された左右のブロック31、31が、ラグ溝4側のエッジ部に凹部32をそれぞれ有する。また、ラグ溝4が、ラグ溝4を底上げする底上部41を有する。この底上部41は、ラグ溝4に区画された左右のブロック31、31から分離し、左右のブロック31、31の凹部32、32にそれぞれ挿入されて(食い込んで)配置される。したがって、タイヤ周方向に隣り合う一対のブロック31、31と、これらのブロック31、31を区画するラグ溝4の底上部41とが、ブロック31、31の凹部32、32にてタイヤ周方向およびタイヤ幅方向に相互にラップして配置される。
【0020】
例えば、図3の構成では、トレッド平面視にて、ラグ溝4がタイヤ幅方向に対して傾斜する傾斜溝であり、略ひし形状のブロック31、31が区画されている。また、ラグ溝4を挟んでタイヤ周方向に隣り合うブロック31、31が、ラグ溝4側のエッジ部の中央部に凹部32をそれぞれ有している。言い換えると、凹部32が、ラグ溝4の左右の溝壁にそれぞれ形成される。また、これらの凹部32、32が、トレッド平面視にて、矩形状ないしは平行四辺形状を有し、ラグ溝4を挟んで相互に対向して配置されている。
【0021】
また、ラグ溝4が、溝長さ方向の中央部に底上部41を有している。底上部41は、溝底からブロック状に隆起した凸部であり、ラグ溝4の左右の溝壁から分離している。また、底上部41が、トレッド平面視にて、矩形状ないしは平行四辺形状を有し、左右の凹部32、32にタイヤ周方向の両端部を挿入して配置されている。また、凹部32の内周面と底上部41の端部形状とが、略同一形状を有することにより、一定の隙間Sを開けて配置されている。
【0022】
凹部32と底上部41との隙間Sは、サイプあるいは細溝であり、所定の幅Wsおよび深さHsを有する。具体的には、隙間Sの幅Wsが、0.3[mm]≦Ws≦3.0[mm]の範囲内にある。このように、凹部32と底上部41とが所定の隙間Sをあけて近接して配置されることにより、ブロック31の変形時にて、凹部32と底上部41とが噛み合って支え合い得る。
【0023】
また、ブロック31の踏面を基準とした隙間Sの深さHs(図4参照)と、ラグ溝4の溝深さH(図4および図5参照)とが、0.5≦Hs/H≦1.0の関係を有する。これにより、凹部32と底上部41との分離状態が摩耗末期まで確保される。例えば、図3図5の構成では、隙間Sが、凹部32の全周にて一定の幅Wsおよび一定の深さHsを有している。また、隙間Sの深さHsとラグ溝4の溝深さHとが等しく(Hs/H=1.0)なっている。
【0024】
なお、隙間Sの幅Wsは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。また、ラグ溝4の溝深さHは、ラグ溝4の最大溝深さ位置を基準として測定される。
【0025】
ここで、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
【0026】
また、ブロック31の踏面と底上部41の頂面との段差G(図5参照)が、ラグ溝4の溝深さHに対して0.1≦G/H≦0.7の関係を有する。また、比G/Hが、0.3≦G/H≦0.7の範囲内にあることが好ましい。したがって、底上部41の頂面が、ブロック31の踏面よりも溝底側にオフセットして配置される。なお、底上部41の高さは、底上部41の段差Gとラグ溝4の溝深さHとの差H−Gとなる。また、図3〜5の構成では、ブロック31の踏面と底上部41の頂面とが平行であり、底上部41が平坦な頂面を有している。このため、底上部41が、頂面の全域にて一定の段差Gを有している。
【0027】
また、凹部32と底上部41とのタイヤ周方向のラップ幅Xが、ブロック31の周方向長さLに対して、0.1≦X/L≦0.5の関係を有する(図3参照)。また、比X/Lが、0.1≦X/L≦0.3の範囲内にあることが好ましい。また、ラップ幅Xは、0.5[mm]〜15[mm]の範囲内にあることが好ましい。
【0028】
なお、ラップ幅Xは、タイヤ幅方向への投影視にて、凹部32と底上部41とが重複する領域のタイヤ周方向の幅の平均値として測定される。図3の構成では、トレッド平面視にて、凹部32および底上部41が矩形状を有するため、ラップ幅Xがラグ溝4の溝長さ方向に一定となっている。また、凹部32および底上部41がラグ溝4の溝深さ方向に一様な断面を有するため、ラップ幅Xがラグ溝4の溝深さ方向に一定となっている(図4および図5参照)。
【0029】
また、底上部41の幅W1と、ブロック31の幅W2とが、0.3≦W1/W2≦0.8の関係を有する(図3参照)。また、比W1/W2が、0.3≦W1/W2≦0.5の範囲内にあることが好ましい。
【0030】
また、ブロック31の幅W2と、凹部32の最大幅位置からブロック31の左右のエッジ部までの幅W3、W4とが、0.1≦W3/W2かつ0.1≦W4/W2の関係を有する。したがって、凹部32が、ブロック31のタイヤ幅方向の中央部(ラグ溝4の中腹)に配置される。比W3/W2、W4/W2の上限は、比W1/W2および隙間Sの幅Wsとの関係で制約を受ける。
【0031】
なお、上記の幅W1〜W4は、いずれもタイヤ幅方向の寸法として測定される。また、幅W1は、凹部32と底上部41との噛み合い領域における最大値として測定される。また、幅W2〜W4は、ブロック31のラグ溝4側のエッジ部のタイヤ幅方向の幅として測定される。
【0032】
この空気入りタイヤ1では、タイヤ接地時にてブロック31が変形したときに、隣り合うブロック31、31とラグ溝4の底上部41とが相互に噛み合って支え合う。これにより、ブロック剛性が補強されて、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する。また、底上部41が、凹部32に挿入されて配置されるので、ブロック31と底上部41とが、タイヤ周方向およびタイヤ幅方向の双方向に噛み合い得る。これにより、ブロック剛性がタイヤ周方向およびタイヤ幅方向の双方向に補強されて、タイヤのトラクション性能(湿潤路における制駆動性能および耐横滑り性能)が向上する。
【0033】
なお、図2の構成では、すべての陸部3が、ブロック31およびラグ溝4を有するブロック列となっている。しかし、これに限らず、一部の陸部3が、タイヤ周方向に連続するリブであっても良い(図示省略)。
【0034】
また、図2の構成では、センター領域にあるすべての陸部3が、ブロック31の凹部32とラグ溝4の底上部41との噛み合い構造を有している。一方で、左右のショルダー領域の陸部3が、かかる噛み合い構造を有していない。しかし、これに限らず、左右のショルダー領域の陸部3が、ブロック31の凹部32とラグ溝4の底上部41との噛み合い構造を有しても良い(図示省略)。なお、センター領域とは、左右の最外周方向主溝2(タイヤ幅方向の最も外側にある左右の周方向主溝2、2)よりもタイヤ幅方向内側の領域をいい、ショルダー領域とは、センター領域よりもタイヤ幅方向外側にある領域をいう。
【0035】
[変形例]
図6図8は、図3に記載した陸部3の変形例を示す説明図である。これらの図は、1列の陸部3における一対のブロック31、31と、ラグ溝4の底上部41とを示している。
【0036】
図3の構成では、トレッド平面視にて、ブロック31の凹部32とラグ溝4の底上部41とが、相互に噛み合う矩形状を有している。しかし、これに限らず、ブロック31の凹部32とラグ溝4の底上部41とが、任意の噛合構造を有し得る。かかる噛み合い構造としては、例えば、以下の構造が挙げられる。
【0037】
例えば、図6の構成では、トレッド平面視にて、ブロック31の凹部32が円弧形状を有し、また、ラグ溝4の底上部41が楕円形状を有することにより、ブロック31の凹部32とラグ溝4の底上部41とが所定の隙間Sを隔てて噛み合い可能に配置されている。
【0038】
また、図7の構成では、トレッド平面視にて、ブロック31の凹部32が三角形状を有し、また、ラグ溝4の底上部41が六角形状を有することにより、ブロック31の凹部32とラグ溝4の底上部41とが所定の隙間Sを隔てて噛み合い可能に配置されている。
【0039】
また、図8の構成では、トレッド平面視にて、ブロック31の凹部32がラグ溝4側の開口部を窄めた円弧形状を有し、また、ラグ溝4の底上部41が円形の両端部を接続したひょうたん形状を有している。そして、底上部41の端部がブロック31の凹部32に嵌め込まれるように所定の隙間Sを隔てて噛み合い可能に配置されている。
【0040】
図9および図10は、図4に記載した陸部3の変形例を示す説明図である。これらの図は、1列の陸部3における一対のブロック31、31と、ラグ溝4の底上部41とのタイヤ周方向の断面図を示している。
【0041】
図4の構成では、ブロック31の凹部32およびラグ溝4の底上部41が、ラグ溝4の溝深さ方向に一様な断面形状を有している。かかる構成では、成形金型を用いた凹部32および底上部41の加工が容易な点で好ましい。
【0042】
これに対して、図9および図10の構成では、ブロック31の凹部32およびラグ溝4の底上部41が、ラグ溝4の溝深さ方向に向かうに連れて拡幅した形状を有している。かかる構成では、摩耗進行に連れて底上部41の面積が拡大して底上部41の剛性が増加するので、ブロック31と41が接する面積が大きくなり、支えあう効果が増幅する点で好ましい。なお、上記のように、ラップ幅Xは、タイヤ幅方向への投影視にて、凹部32と底上部41とが重複する領域のタイヤ周方向の幅の平均値として測定される。
【0043】
図11および図12は、図3に記載した陸部3の変形例を示す説明図である。これらの図は、三次元サイプの片側壁面の透過斜視図を示している。
【0044】
図3の構成では、ブロック31の凹部32とラグ溝4の底上部41との隙間Sが、二次元サイプから構成されている。二次元サイプとは、サイプ長さ方向に垂直な断面視にて直線形状のサイプ壁面を有するサイプをいう。
【0045】
しかし、これに限らず、ブロック31の凹部32とラグ溝4の底上部41との隙間Sが、三次元サイプから構成されても良い。三次元サイプとは、サイプ長さ方向に垂直な断面視にて、サイプ幅方向に屈曲した形状のサイプ壁面を有するサイプである。三次元サイプは、二次元サイプと比較して、対向するサイプ壁面の噛合力が強いため、陸部の剛性を補強する作用を有する。
【0046】
隙間Sが三次元サイプから成る構成として、例えば、図11および図12の構成が挙げられる。なお、図10の構成も、隙間Sが三次元サイプから成るといえる。
【0047】
図11の三次元サイプは、陸部の踏面の平面視にて直線形状あるいは円弧形状となる開口部を有する。また、三次元サイプは、この開口部から陸部の少なくとも80[%]摩耗位置までサイプ深さが深くなるに連れて振れ幅を漸増しながら一端から他端まで湾曲または屈曲を繰り返す波状形状を有する。また、所定のサイプ深さ位置にて、三次元サイプの両端部から三次元サイプの波状形状の振れ幅の中心を通る中心線に対してそれぞれ垂線を引き、これらの垂線の足の距離をサイプ長さLとする(図示省略)。このとき、サイプ深さが深くなるほど、サイプ長さLが短くなる。また、陸部の踏面におけるサイプのペリフェリ長さ(実際の長さ)をM0[mm]とし、80[%]摩耗位置におけるサイプ長さLをL80[mm]とし、80%摩耗位置におけるサイプのペリフェリ長さをM80[mm]とする(図示省略)。このとき、比L80/M0と比M80/M0とが、0.85≦L80/M0≦0.90かつ1.0≦M80/M0≦1.15の条件を満たす。このような三次元サイプとして、例えば、特開2006−56502号公報に記載される技術が知られている。
【0048】
また、図12の三次元サイプは、サイプ幅方向の一方側へ突き出した第1オフセット部と、第1オフセット部よりもタイヤ径方向内側の位置でサイプ幅方向の他方側へ突き出した第2オフセット部とを有する。また、タイヤ新品時のサイプ長さL1(図示省略)と、80[%]摩耗時のサイプ長さL2(図示省略)とが、実質的に同一(0.95≦L2/L1≦1.05)の関係を有する。また、タイヤ新品時のサイプのペリフェリ長さM1(図示省略)と、80[%]摩耗時のサイプのペリフェリ長さM2(図示省略)とが、1.10≦M2/M1≦1.50の関係を有する。また、80[%]摩耗時におけるサイプの平面形状が、タイヤ新品におけるサイプの平面形状に対して平行部分を有する。また、この平行部分の総長さP2(図示省略)と、タイヤ新品時のサイプ長さL1とが、0.20≦P2/L1≦0.80の関係を有する。このような三次元サイプとして、例えば、特開2009−255688号公報に記載される技術が知られている。
【0049】
図13は、図3に記載した陸部3の変形例を示す説明図である。
【0050】
図3の構成では、1列の陸部3内にて、ブロック31の凹部32およびラグ溝4の底上部41が、タイヤ周方向に一列に配置されている。しかし、これに限らず、複数の底上部41が、タイヤ幅方向に相互に位置をずらして配置されても良い(図13参照)。例えば、図13の構成では、複数の底上部41が、タイヤ幅方向に位置をずらしつつタイヤ周方向に千鳥状に配置されている。
【0051】
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝2と、タイヤ幅方向に延在する複数のラグ溝4と、周方向主溝2およびラグ溝4に区画された複数のブロック31を有する少なくとも1列の陸部3とを備える(図2参照)。また、ラグ溝4に区画された左右のブロック31、31が、ラグ溝4側のエッジ部に凹部32、32をそれぞれ有する(図3参照)。また、ラグ溝4が、左右のブロック31、31から分離した底上部41を有する。また、この底上部41が、左右の凹部32、32にそれぞれ挿入されて配置される。
【0052】
かかる構成では、タイヤ接地時にてブロック31が変形したときに、隣り合うブロック31、31とラグ溝4の底上部41とが相互に噛み合って支え合う。これにより、ブロック剛性が補強されて、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する利点がある。また、底上部41が凹部32に挿入されて配置されるので、ブロック31と底上部41とがタイヤ周方向およびタイヤ幅方向の双方向に噛み合い得る。これにより、ブロック剛性がタイヤ周方向およびタイヤ幅方向の双方向に補強されて、タイヤのトラクション性能(湿潤路における制駆動性能および耐横滑り性能)が向上する利点がある。例えば、制駆動時には、ブロック31と底上部41とがタイヤ周方向に噛み合うことにより、タイヤ周方向にかかるブロック剛性が確保されて、タイヤの制駆動性能が向上する。また、旋回走行時には、ブロック31と底上部41とがタイヤ幅方向に噛み合うことにより、タイヤ幅方向にかかるブロック剛性が確保されて、タイヤの横滑り性能が向上する。
【0053】
また、この空気入りタイヤ1では、凹部32と底上部41との隙間Sの幅Wsが、0.3[mm]≦Ws≦3.0[mm]の範囲内にある(図3参照)。かかる構成では、隙間Sの幅Wsが適正化されるので、タイヤ接地時にてブロック31が変形したときに、凹部32と底上部41との噛み合いが適正に確保される。これにより、ブロック31の剛性が適正に確保される利点がある。
【0054】
また、この空気入りタイヤ1では、ブロック31の踏面を基準とした凹部32と底上部41との隙間Sの深さHsが、ラグ溝4の溝深さHに対して0.5≦Hs/H≦1.0の関係を有する(図4参照)。これにより、凹部32と底上部41との分離状態が摩耗末期まで確保される利点がある。
【0055】
また、この空気入りタイヤ1では、ブロック31の踏面と底上部41の頂面との段差Gが、ラグ溝4の溝深さHに対して0.1≦G/H≦0.7の関係を有する(図5参照)。かかる構成では、ブロック31の踏面と底上部41の頂面との位置関係が適正化されるので、ブロック31のラグ溝4側のエッジ成分が確保される。これにより、タイヤの制駆動性能が確保される利点がある。
【0056】
また、この空気入りタイヤ1では、凹部32と底上部41とのタイヤ周方向のラップ幅Xが、ブロック31の周方向長さLに対して、0.1≦X/L≦0.5の関係を有する(図3参照)。かかる構成では、ブロック31がタイヤ幅方向に変形したときに、ブロック31と底上部41との噛み合いが適正に確保される利点がある。
【0057】
また、この空気入りタイヤ1では、底上部41の幅W1と、ブロック31の幅W2とが、0.3≦W1/W2≦0.8の関係を有する(図3参照)。かかる構成では、底上部41の幅W1が適正に確保されるので、底上部41の剛性が適正に確保され、また、凹部32と底上部41との噛み合いが適正に確保される利点がある。
【0058】
特に、かかる構成では、底上部41が、左右のブロック31、31に対して隙間Sをあけて分離した構造を有し、また、左右のブロック31、31よりも小さい(図3図5参照)。すると、底上部41が、左右のブロック31、31よりも低い剛性を有し、タイヤ接地時にて滑り易い。このため、摩耗進行時にて、底上部41が左右のブロック31、31よりも早く摩耗して、底上部41の頂面とブロック31の踏面との位置関係(段差G)が維持される。これにより、タイヤ新品時から摩耗末期に至るまで、ブロック31のラグ溝4側のエッジ成分が確保されて、タイヤの制駆動性能が確保される利点がある。
【0059】
また、この空気入りタイヤ1では、ブロック31の幅W2と、凹部32からブロック31の左右のエッジ部までの幅W3、W4とが、0.1≦W3/W2かつ0.1≦W4/W2の関係を有する(図3参照)。かかる構成では、凹部32の最大幅位置からブロック31の左右のエッジ部までの幅W3、W4が確保されることにより、凹部32の左右におけるブロック剛性が確保される。これにより、底上部41とブロック31とがタイヤ幅方向に噛み合ったときに、これらが適正に支え合う利点がある。
【0060】
また、この空気入りタイヤ1では、凹部32と底上部41との隙間Sが、三次元サイプから成る(図10図12参照)。かかる構成では、隙間Sが二次元サイプから成る構成と比較して、底上部41によるブロック剛性の補強作用が向上する利点がある。
【実施例】
【0061】
図14は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。図15は、従来例の空気入りタイヤの陸部を示す説明図である。
【0062】
この性能試験では、相互に異なる複数の空気入りタイヤについて、(1)耐偏摩耗性能、(2)制駆動性能および(3)耐横滑り性能に関する評価が行われた(図14参照)。この性能試験では、タイヤサイズ275/80R22.5の空気入りタイヤがJATMA規定の適用リムに組み付けられ、この空気入りタイヤにJATMA規定の最高空気圧および最大負荷が付与される。また、空気入りタイヤが、試験車両である6×2トラックの総輪に装着される。
【0063】
(1)耐偏摩耗性能に関する評価では、試験車両が一般舗装路を5万[km]走行した後に、ブロックに発生した偏摩耗が観察されて指数評価が行われる。この評価は、従来例を基準(100)とし、その指数値が大きいほど好ましい。また、数値が103以上であれば、優位性ありと認められる。
【0064】
(2)制駆動性能および(3)耐横滑り性能に関する評価では、試験車両が規定の湿潤試験路を走行し、専門ドライバーが制駆動および横滑りについて官能評価を行う。この評価は、従来例を基準(100)とし、その指数値が大きいほど好ましい。また、数値が103以上であれば、優位性ありと認められる。
【0065】
実施例1〜10の空気入りタイヤ1は、図1図5の構成を有する。実施例11の空気入りタイヤは、実施例1の空気入りタイヤ1において、隙間Sが図11の三次元サイプから成る。また、実施例1の空気入りタイヤ1では、W1=14.5[mm]、W2=35.5[mm]、W3=W4=9.8[mm]、X=4.0[mm]、L=42.5[mm]、H=Hs=20.0[mm]、G=5.0[mm]となっている。
【0066】
従来例の空気入りタイヤは、図15に記載した構成を有し、ブロックと底上部とがタイヤ周方向にラップしていない。
【0067】
試験結果に示すように、実施例1〜11の空気入りタイヤ1では、耐偏摩耗性能が向上し(維持され)、また、制駆動性能および耐横滑り性能が向上することが分かる。
【符号の説明】
【0068】
1 空気入りタイヤ、2 周方向主溝、3 陸部、31 ブロック、32 凹部、4 ラグ溝、41 底上部、11 ビードコア、12 ビードフィラー、121 ローアーフィラー、122 アッパーフィラー、13 カーカス層、14 ベルト層、141 高角度ベルト、142、143 交差ベルト、15 トレッドゴム、16 サイドウォールゴム、17 ビードゴム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
図14
図15