(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光透過性の図柄板と、該図柄板の裏面側に配置され有機エレクトロルミネッセンス素子板と、該有機エレクトロルミネッセンス素子板の裏面側に配置された光透過性の背面板とを有する図柄発光表示装置であって、該有機エレクトロルミネッセンス素子板が、非発光状態での波長550nmにおける光透過率TCが、65%以上であり、かつ前記有機エレクトロルミネッセンス素子板から発光される光のうち、前記図柄板に接する該有機エレクトロルミネッセンス素子板の面側Cに到達する光の光量Aが、前記背面板に接する該有機エレクトロルミネッセンス素子板の面側Dに到達する光の光量Bの1.1倍以上であることを特徴とする図柄発光表示装置。
前記有機エレクトロルミネッセンス素子板が、基板上に、一対の面電極と、該一対の面電極の間に少なくとも1層の有機発光層を有し、一対の該面電極の少なくとも一方の電極の厚さが、4.0〜10nmの範囲内にある薄膜銀電極であることを特徴とする請求項1に記載の図柄発光表示装置。
【背景技術】
【0002】
従来、道路標識等に用いられる図柄表示方法としては主には2つの方式が用いられており、一つの方式は、無照明型図柄表示装置である。この方式では、昼間における図柄の視認確保は、太陽直射光および拡散天空光、建造物、路面、樹木等からの二次的散乱光による散乱発光または吸収により、図柄の視認性および誘目性を確保する。一方、夜間においては、街路灯や建造物からの拡散光、車輌のヘッドライト光、または外部に照明手段を備えて照らすことにより、視認性および誘目性を得る方式である。
【0003】
このような無照明型図柄表示装置を道路標識に適用する場合には、標識基板の白色反射シート上に、透明着色インク、非透明着色インク、または着色反射シートおよび着色非反射シートの組合せにより図柄を構成し、昼間においては、図柄面に直接作用する太陽直射光および拡散天空光、二次的散乱光による図柄面の散乱発光または吸収で視認性および誘目性を得るものであり、夜間は車輌のヘッドライト光等による回帰性反射光により視認性および誘目性を得る。
【0004】
その他の方式としては、表示装置内部に照明部材を具備した図柄発光表示装置(内部照明図柄表示装置)が挙げられ、昼間にあっては上記のような無照明型図柄表示装置と同様にして図柄の視認性を確保させ、夜間においては内部に備えた発光部(照明部材)を点灯させて図柄を照明することにより視認させるものである。内部に具備する照明部材としては、例えば、蛍光灯、LED、発光ダイオード等が用いられている。
【0005】
一方、図柄発光表示装置に要求されるその他の特性として、図柄表示板の裏側から西日が差して逆光状態となったときの図柄の判別性や視認性を高めことが重要である。
【0006】
このような逆光環境下での視認性を高める方法としては、例えば、特許第3662602号公報に記載されているような標示板の図形の部分に多数の孔を有する方法が開示されている。しかし、板材(例えば、アルミニウム板)の図形の部分内に多数の孔を開けた後に、反射シートを積層させて、手作業にて反射シートのうち、孔に対応する部分のみに孔を開けていたので、製作に多大な手間がかかり、加えて、逆光時には、ドライバーから見て、図形の輪郭が不明瞭となるという欠点があった。
【0007】
その他の方法としては、例えば、特許第3468506号公報に開示されている様に、枠体の表面側に透明の強化プラスチック板を設け、この表面に素地の反射材及び文字等の反射材を用いて表示部が構成されている方法が挙げられる。この方法は、枠体の裏面には半透明乳白色の強化プラスチック板を設け、道路標識の裏側より太陽光を受けた場合に、その太陽光の一部を、半透明プラスチック板を通して表示部を通過させることにより、逆光時においても標識部分がよく見えるようにした方法である。
【0008】
その他、照明装置に、例えば、光拡散用ガラス繊維シートを用い、光源からの光を適度に拡散させる技術が、特開2001−55646号公報に開示されており、例えば、ポリエステルの繊維層からなる繊維シートの表示母材と逆光線を部分透過する光散乱粒子混入板とを用い、このような表示面母材に任意の文字、記号等の反射材による表示体を施す技術が、特開2002−317411号公報に開示されている。
【0009】
しかしながら、これら提案されている標識手段では、特に大型の道路標識のごとく内部に照明手段を有し、昼間の自然光による標識の視認性と夜間の内部照明手段による標識の視認性に加えて、標識の逆光時における視認性を同時に向上することが困難であった。また、大型の道路標識等において装置の重量を軽減し、相対的に強度を増すための構成が困難であった。
【0010】
上記問題に対し、図柄背面に受ける太陽直射光および拡散天空光の入射光面の逆面の図柄面を、均一に高輝度発光させるため、透明平面板の前記入射光面の逆面に縦横均一に透明な平凸レンズ群をガラスで一体に成形した面発光板を備えた高輝度図柄発光表示装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の方法によれば、図柄背面に受ける太陽直射光および拡散天空光の逆光時および夜間においても、図柄の視認性および誘目性を向上させることができるとされている。また、内部照明式標識の構造であって、アルミ製枠材からなる標識本体及び枠体と、標識本体に設けた縦横の補強材とを有し、前記枠体前面には繊維シートからなる表示母材を有し、前記標識本体裏面には、前記表示母材と同様の繊維シートからなる光透過性の裏板を有し、標識本体内部の横補強材には多数の内部照明装置が設けられ、標識に対する太陽光の逆光時に、当該逆光線が裏板及び表示母材の繊維シートを透過可能である内部照明式標識が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2に記載の方法によれば、内部照明式の逆光対策を充分に行い、軽量で丈夫な上に標識の視認性を均一化できる内部照明式標識を得ることができるとされている。また、第1金属板の表面に第1反射シートを積層した裏板を備え、裏板がその全面に多数の孔が機械加工にて貫設され、さらに、文字・図形・記号等の表示部がレーザー加工で打抜加工されるとともに第2金属板の表面に第2反射シートを積層した表板を備えた道路標識が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。特許文献3に記載の方法によれば、逆光時でも表示部の視認性が良い道路標識を容易に製作することができるとされている。
【0011】
しかしながら、これら開示されているいずれの方法も、構造が複雑で部品点数が多いため、図柄発光表示装置の組み立てに時間がかかったり、万一の修復が煩雑であったり、質量が増加して設置が制限されるなど、不都合であった。更に、特許文献3に記載の方法では、内部に照明部材を有していないため、夜間における視認性が不十分である。
【0012】
一方、表示装置内部に照明部材を具備した図柄発光表示装置においても、逆光対策として、背面部材に透明プラスチック板を適用する、あるいは多数の孔を開ける方法等を採用して、背面からの光透過性を高める構成とした場合でも、内部に具備した照明部材自身が十分な光透過性を備えていないため、逆光時において、十分な標識視認性を得ることができていないのが現状である。
【0013】
したがって、昼間の順光時、夜間時、及び昼間の逆光時のすべての条件において、優れた視認性及び誘目性を発揮することができ、構造が簡素で、組み立てが容易な図柄発光表示装置の開発が切望されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の図柄発光表示装置は、光透過性の図柄板と、該図柄板の裏面側に配置され有機エレクトロルミネッセンス素子板と、該有機エレクトロルミネッセンス素子板の裏面側に配置された光透過性の背面板とを有する図柄発光表示装置であって、該有機エレクトロルミネッセンス素子板が、非発光状態での波長550nmにおける光透過率T
Cが、65%以上
であり、かつ前記有機エレクトロルミネッセンス素子板から発光される光のうち、前記図柄板に接する該有機エレクトロルミネッセンス素子板の面側Cに到達する光の光量Aが、前記背面板に接する該有機エレクトロルミネッセンス素子板の面側Dに到達する光の光量Bの1.1倍以上であることを特徴とし、昼間の順光時や夜間時における図柄の視認性及び誘目性と、昼間の図柄発光表示装置の背面より太陽直射光を受ける逆光時に優れた視認性及び誘目性を発現し、その簡素な構成から、組み立てやメンテナンスが容易で、かつ軽量な図柄発光表示装置を実現することができる。この特徴は、請求項1から請求項
2に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0027】
本発明の実施態様としては、本発明で規定する非発光状態での波長550nmにおける光透過率T
Cが、65%以上である有機エレクトロルミネッセンス素子板を実現する観点から、有機エレクトロルミネッセンス素子板が、基板上に、対となる面電極と、該対となる面電極の間に少なくとも1層の有機発光層を有し、該対となる該面電極の少なくとも一方の電極が、厚さが4.0〜10nmの範囲内にある薄膜銀電極であることが好ましい態様である。また、有機エレクトロルミネッセンス素子板は、前記図柄板に接する面側に到達する光の光量Aが、前記背面板に接する面側に到達する光の光量Bよりも高い構成であることが、本発明の目的とする効果をより発現できる観点から好ましい。
【0028】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本発明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0029】
《図柄発光表示装置の構成》
本発明の図柄発光表示装置の構成について、図を交えて説明する。
【0030】
図1は、本発明の図柄発光表示装置の構成の一例を示す斜視図であり、
図2は本発明の図柄発光表示装置を構成する各部材の配置の一例を示す概略分解図である。
【0031】
図1及び
図2において、図柄発光表示装置1は、図柄表示面側から、I)光透過性を有する図柄板2、II)発光材料である有機EL素子板6、及びIII)光透過性を有する背面板8から構成されている。I)〜III)の各構成部材は、図に示すようにこの順序で組み合わせて構成した後、その周辺部を、筐体部9及び筐体部10で固定して、図柄発光表示装置1を形成している。
【0032】
光透過性を有する図柄板2は、透明表面板3の上に、着色した透過性を有する背景4と、道路標識等を表示する透過性を有する図柄5が印刷されている。
【0033】
詳細については後述する有機EL素子板6は、単一の有機EL素子ユニット6Uを複数個(
図2では、有機EL素子ユニット6Uを9個使用)組み合わせて、面発光体を形成している。この有機EL素子板6に対しては、コンセント7を介して、外部電源より電気を供給して、各有機EL素子ユニット6Aを駆動して発光させる。
【0034】
本発明に係る有機EL素子板6は、極めて薄膜で、密封構造を備えた発光部材であり、図柄発光表示装置1をコンパクトに設計でき、かつ耐久性に優れた特性を発揮する。
【0035】
(光透過特性)
本発明の図柄発光表示装置1においては、構成する光透過性を有する図柄板2、有機EL素子板6、光透過性を有する背面板8のそれぞれの光透過率をコントロールすることによって、昼間時の視認性や夜間の視認性はいうまでも無く、逆光時における視認性が飛躍的に向上していることが特徴である。
【0036】
本発明でいう光透過性を有するとは、550nmの波長の測定したときの光透過率(以下、単に光透過率ともいう)が30%以上であることをいい、それぞれの構成部材において、その透過率の最適とする範囲は異なってくる。なお、本発明でいう光透過率は、分光光度計(例えば、日立製作所製のU−3300等)を用いて、波長極大が550nmの光で測定して求めることができる。
【0037】
本発明の図柄発光表示装置1においては、本発明に係る有機EL素子板6の非発光状態での波長550nmにおける光透過率T
Cが、65%以上であることを特徴とする。この光透過率特性を有機EL素子板6に付与することにより、昼間において、図柄発光表示装置1の背面より太陽直射光を受ける逆光時において優れた視認性を発現する。更には、本発明に係る有機EL素子板6としては、光透過率としては70%以上であることが好ましく、更には、70〜90%の範囲内であることが好ましい。
【0038】
また、図柄板2を構成する透明表面板3の光透過率T
A(
図5に表示)としては、40〜55%の範囲内であることが好ましい。また、背面板8の光透過率T
B(
図5に表示)としては、35〜55%の範囲内であることが好ましい。各構成部材の上記光透過率の範囲に設定する技術的な理由については、後述する。
【0039】
また、本発明において、図柄板2の透明表面板3の光透過率T
A(%)と、背面板8の光透過率T
B(%)とが、TB≦TAの関係を満たす組合せとすることが、その間に挟持する有機EL素子板6の発光を、図柄板2側に対してより有効に利用できる観点から好ましい。
【0040】
また、本発明においては、図柄発光表示装置1を構成する全部材の全光透過率T(T
A×T
B×T
C)は、T
Aを図柄板2上の背景4や図柄5が印刷されていない透明表面板3部分で測定した場合、15〜30%の範囲であることが好ましい。なお、図柄発光表示装置1全体の全光透過率T(T
A×T
B×T
C)が同じ値を示す場合であっても、有機EL素子板6の非発光状態での光透過率T
Cが65%以上という条件を満たす本発明の構成においてのみ、本発明の効果を発揮することができる。
【0041】
本発明の図柄発光表示装置1の一例として、
図1及び
図2で示すように、図柄発光表示装置1の片面側に図柄板2を有する構成を示したが、背面板8の表面にも図柄を有する、両面図柄表示型の発光表示装置とすることもできる。この場合、図柄板2の透明表面板3の光透過率T
Aと、背面板8の光透過率T
Bにおいては、T
B=T
Aの関係であることが好ましい。また、両面図柄表示型の発光表示装置においては、それぞれの図柄面が東西方向を配置されていて、視認者と図柄発光表示装置の位置関係が、朝日が逆光の場合と、夕日が逆光の場合のいずれのシチュエーションにおいても、優れた視認性を発言することができる。
【0042】
(各シチュエーションにおける光線の状態)
図3は、(a)昼間の順光、(b)夜間時及び(c)昼間の逆光時における各光線の挙動を示す概略図である。
【0043】
図3の(a)は昼間の順光S
1における入射光線の状況と図柄発光表示装置の視認性を示した図であり、昼間で図柄発光表示装置の正面より、太陽光があたるような順光環境においては、内蔵している有機EL素子板6Aの発光は行わずに、主には正面より照射される太陽光の反射光La1及びLa2により、図柄4を視認する。
【0044】
また、
図3の(b)は夜間における図柄発光表示装置の視認の状況を示す図であり、夜間では、内蔵している有機EL素子板6Bが発光状態を呈し、その発光Lb1及びLb2により、図柄4を視認する。図には記載はしていないが、夜間においては、加えて、車のヘッドライトや街路灯の反射光や、図柄発光表示装置の外部に設置した外部照明等による視認効果が付加される場合がある。
【0045】
図3の(c)は昼間の逆光S
2における入射光線の状況と図柄発光表示装置の視認性を示した図であり、昼間で図柄発光表示装置の背面より、太陽光(逆光)Lc3があたるような逆光環境においては、内蔵している有機EL素子板6Aの発光は行わずに、
図3の(a)と同様に、正面から入射する光による反射光La1及びLa2により、図柄4を視認する。加えて、図柄発光表示装置の背面より受ける逆光Lc3を、透過性を有する背面板8、有機EL素子板6A及び図柄板2を通過させて、表面部まで到達させることにより、逆光条件下でも図柄発光表示装置の図柄4の視認性を飛躍的に高めることができる。
【0046】
すなわち、本発明で規定する構成からなる図柄発光表示装置は、(a)昼間の順光、(b)夜間及び(c)昼間の逆光という、それぞれ異なる状況においても優れた図柄の視認性を実現することができた。
【0047】
《図柄板》
本発明に係る図柄板2は、光透過性の透明表面板3の上に、光透過性の塗料を用いて、着色した透過性を有する背景4と、道路標識等を表示する透過性を有する図柄5を表示したものであり、その図柄は、太陽光や照明光の反射によって視認されるだけでなく、内蔵している有機EL素子板6の発光によって、その背景4部分と図柄5部分との透過率や色の違いによっても視認されるものである。図柄5としては、広告、宣伝のための文字や画像から、公共の役に供する表示、標識、案内板に至るまで、適用される。したがって、光透過性の透明表面板3としては、白色または乳白色を呈することが好ましい。
【0048】
本発明に係る図柄板2を構成する透明表面板3の材質としては、光透過性を備えている材料であれば特に制限はないが、光透過性に加えて、図柄発光表示装置としての耐久性を考慮すると、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN樹脂)、ポリプロピレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素系樹脂、メラミン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)等及びこれらの樹脂から選択される樹脂のブレンド樹脂、ポリマーアロイ等が挙げられる。その中でも、特に、アクリル樹脂及びアクリル−ウレタン樹脂が好ましい。
【0049】
また、本発明に係る透明表面板3において、所望の光透過率に調整する方法としては、透明表面板3を成形する際に、樹脂原料に対し、着色剤(例えば、白色顔料等)を適宜添加して調整することができる。
【0050】
また、本発明に係る透明表面板3上に、背景4や図柄5を付与する方法としては、印刷用のインキやペイントを用いて、グラビア印刷法、オフセット印刷法、シルクスクリーン印刷法、転写シートを用いた転写印刷法、昇華転写印刷法、インクジェット印刷法などの従来公知の湿式印刷法を用いて、所望の図柄等を形成することができる。
【0051】
また、上記記載の透明表面板3に用いることのできる樹脂を、染料や顔料で着色した後、薄膜の樹脂板を成形し、それを図柄状に切り抜いたものを、透明表面板3上に付与する方法でもよい。
【0052】
本発明において、前述のように、図柄板2を構成する透明表面板3の光透過率T
A(%)としては、40〜55%の範囲内であることが好ましい。透明表面板3の光透過率T
A(%)が40%以上であれば、内蔵している有機EL素子板6の発光を効率よく利用するのができ、逆光時での視認性の効果が充分に発揮することができる。また、透明表面板3の光透過率T
A(%)が55%以下であれば、昼間の順光時の太陽光や夜間における照明光の反射等による視認性を確保することができる。
【0053】
《有機エレクトロルミネッセンス素子板》
(有機EL素子板の構成)
本発明に係る有機EL素子板は、非発光状態において、波長550nmにおける光透過率T
Cが、65%以上であることを特徴とする。さらには、有機EL素子板が、基板上に、対となる面電極と、該対となる面電極の間に少なくとも1層の有機発光層を有し、該対となる該面電極の少なくとも一方の電極が、厚さが4.0〜10nmの範囲内にある薄膜銀電極で構成されていることが好ましい態様である。
【0054】
本発明に係る有機EL素子板の非発光状態での光透過率とは、有機EL素子板を構成する基板、一対の面電極、有機発光層を含む有機機能層、封止層全体の波長550nmにおける光透過率を意味しており、それを実現するためには、これらの各構成要素の光透過率が高いこと、とりわけ通常では低い光透過性である面電極をより高い光透過性で設計すること、すなわち陽極、陰極、必要に応じて設けられる中間電極のすべてが、光透過率が高いことが、本発明で規定する光透過率T
Cを実現する上では重要な要件となってくる。加えて、有機発光層などの有機機能層を積層するに際し、光透過率が高くなるように工夫することも好ましい。
【0055】
有機EL素子板を構成する基板及び封止層としては、ガラス、石英、プラスチックフィルムのように、光透過率が高いものを用いることが好ましい。有機EL素子板の各構成部材の光透過性を高めることによって、光透過率T
Cを65%以上とすることが可能となるが、更には、光透過率T
Cを70〜90%の範囲内に設計することが好ましい。
【0056】
本発明でいう光透過率T
Cとは、波長極大が550nmの光で測定したときの透過率をいう。光透過率T
Cは通常の分光光度計(例えば、日立製作所製U−3300など)を用いて容易に測定することができる。
【0057】
有機EL素子板の主な構成は、基板上に対となる面電極(陽極、陰極)を有し、該面電極間に有機発光層を含む有機機能層を有してなり、有機機能層としては通常、陽極側から、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などがあるが、用いる材料の特性に応じて複合層として層数を減らしてもよいし、さらに新たな機能層を追加しても良い。有機EL素子板の構成については、「有機ELハンドブック」(監修:筒井哲夫;リアライズ理工センター出版)などが参照される。
【0058】
図4は、本発明に係る有機EL素子板の構成の一例を示す概略断面図である。
【0059】
図4において、有機EL素子板6は、光透過性を有するプラスチックフィルムやガラスで構成されている支持基板11上に、例えば、陽極として透明電極12が設けられ、その上に有機機能層ユニットCが形成されている。有機機能層ユニットCは、有機発光層14の他に、例えば、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層等の有機機能層13、15から構成されている。この有機機能層ユニットC上に、例えば、陰極として透明電極16が設けられ、最後に最表層として封止部材(封止層)が設けられている。
【0060】
従来の有機EL素子板においては、陽極として構成される透明電極12としては、例えば、ある程度の光透過性を有するインジウム−スズの複合酸化物(以下、ITOと略記。)が用いられていた。一方、陰極である透明電極16としては、アルミニウム等の金属蒸着膜が用いられているが、これらの陰極材料は、光透過性が乏しく、このような構成の有機EL素子板では、光透過率が60%以下であり、図柄発光表示装置に適用する有機EL素子板の構成部材として好ましくなかった。
【0061】
本発明では、
図4に示す透明電極12または透明電極16のいずれか一方、好ましくは両方の透明電極を、光透過性にきわめて優れた部材、より詳しくは、厚さが4.0〜10nmの範囲内にある薄膜銀電極で構成することにより、波長550nmにおける光透過率T
Cが、65%以上となる有機EL素子板を実現することができ、図柄発光表示装置への適用を可能としたものである。
【0062】
図5は、本発明に係る有機EL素子板を含む図柄発光表示装置の構成を示す断面図である。
【0063】
図5において、図面の左側が順光側S
1であり、右側が逆光側S
2である。図柄発光表示装置1は、順光側S
1より、図柄板2、有機EL素子板6、背面板8の順に構成されている。このような構成において、有機EL素子板6としては、図柄板2側に、陰極である透明電極16が配置されている。
【0064】
このような構成において、有機EL素子板6から発光される光のうち、図柄板2に接する該有機エレクトロルミネッセンス素子板6の面側Cに到達する光量Aが、背面板8に接する該有機EL素子板6の面側Dに到達する光の光量Bの1.1倍以上であること
を1つの特徴とし、より好ましくは、1.1〜3.0倍であり、更に好ましくは1.2〜2.0倍の範囲である。
【0065】
上記のような構成とすることにより、発光を有効に利用でき、駆動電力を低減できるので好ましい。
【0066】
なお、
図4及び
図5で示した有機E1L素子板の層構造は単に好ましい具体例を示したものであり、本発明はこれらに限定されない。例えば、本発明に係る有機EL素子板の構成としては、下記(i)〜(v)の層構造を有していてもよい。
【0067】
(i)支持基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極/封止用接着剤/封止部材
(ii)支持基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極/封止用接着剤/封止部材
(iii)支持基板/陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極/封止用接着剤/封止部材
(iv)支持基板/陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極/封止用接着剤/封止部材
(v)支持基板/陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極/封止用接着剤/封止部材
〔有機EL素子板の有機機能層〕
次いで、本発明に係る有機EL素子板の各構成部材について説明する。
【0068】
(1)注入層:正孔注入層、電子注入層
本発明に係る有機EL素子板においては、注入層は必要に応じて設けることができる。注入層としては電子注入層と正孔注入層があり、上記の如く陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
【0069】
本発明でいう注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機機能層間に設けられる層で、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)にその詳細が記載されており、正孔注入層と電子注入層とがある。
【0070】
正孔注入層としては、例えば、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、正孔注入層に適用可能な正孔注入材料としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体等を含むポリマーやアニリン系共重合体、ポリアリールアルカン誘導体、または導電性ポリマーが挙げられ、好ましくはポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体であり、さらに好ましくはポリチオフェン誘導体である。
【0071】
本発明に係る有機EL素子板においては、電子注入層は、設けても、あるいは設けなくても、いずれであっても構わない。本発明で適用可能な電子注入層としては、例えば、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にその詳細が記載されており、具体的には、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。本発明においては、上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、フッ化カリウム、フッ化ナトリウムが好ましい。その膜厚は0.1nm〜5μm程度、好ましくは0.1〜100nm、さらに好ましくは0.5〜10nm、最も好ましくは0.5〜4nmである。
【0072】
(2)正孔輸送層
本発明に係る正孔輸送層を構成する正孔輸送材料としては、上記正孔注入層で適用するのと同様の化合物を使用することができるが、さらには、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0073】
本発明において、正孔輸送層は、湿式塗布法(例えば、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法等)を用いて、塗布、乾燥することにより形成することができる。また、その他の正孔輸送層の形成方法としては、上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、ラングミュア−ブロジェット法(LB法)等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
【0074】
(3)電子輸送層
本発明に係る電子輸送層は、電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔ブロック層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層で用いてもよいし、複数層設けることもできる。例えば、正孔ブロック層/電子輸送層の組み合わせとして用いることができる。
【0075】
電子輸送層は、単層、あるいは複数層とする場合は、発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔ブロック材料を兼ねる)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、フルオレン誘導体、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、シロール誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、8−キノリノール誘導体等の金属錯体等が挙げられる。
【0076】
(4)発光層
本発明に係る有機EL素子板を構成する発光層は、電極または電子輸送層および正孔輸送層から注入されてくる電子および正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
【0077】
発光層は、主にドーパント化合物とホスト化合物とが含有されて構成されている。本発明に係る発光層を形成する材料は、低分子量有機化合物であることを特徴としており、本発明でいう低分子量化合物とは、分子量が1500以下の化合物であると定義する。
【0078】
以下、ホスト化合物及びドーパント化合物についてそれぞれ説明する。
【0079】
〈4.1〉ホスト化合物
本発明に係る有機EL素子板の発光層に含有されるホスト化合物としては、室温(25℃)におけるリン光発光のリン光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。さらに好ましくはリン光量子収率が0.01未満である。また、非発光性有機材料にはホスト化合物を含んでいてもよい。
【0080】
公知のホスト化合物と、後述する発光材料とを、複数種用いることにより異なる発光色を得ることが可能となり、これらを混合することにより、任意の発光色、例えば、白色発光等を表現することができる。
【0081】
公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物が挙げられる。例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等が挙げられる。
【0082】
〈4.2〉発光材料
本発明に係る発光材料(発光ドーパント)としては、蛍光性化合物、リン光発光材料(リン光性化合物、リン光発光性化合物、リン光性ドーパント化合物等ともいう。)を用いることができるが、リン光性ドーパント化合物であることが好ましい。
【0083】
リン光発光材料は、有機EL素子板の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、好ましくは元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、または白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0084】
(5)透明電極
本発明に係る有機EL素子板においては、光透過率T
Cを65%以上とするには、光透過率の高い面電極(透明電極)を適用することが重要である。光透過性の高い面電極としては、一般に透明電極として知られているものを利用できる。例えば、インジウム−スズの複合酸化物(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などの金属酸化物電極、例えばポリチオフェン、ポリアニリンなどの導電性ポリマー電極、あるいは銀薄膜、銅薄膜など金属薄膜電極などがあり、1つの透明電極の光透過率T
Cとして、好ましくは80%以上となるように設計することによって達成できる。
【0085】
一方で、透明電極には高い導電性が求められる。従来の透明電極の中には、光透過率を高めるために薄く形成すると、導電性が不足してしまうものが多い。本発明においては、高い光透過率を有し、かつ高い導電性を両立できる透明電極として、以下に説明する薄膜銀電極を用いることが好ましい。
【0086】
本発明に係る透明電極は、表面比抵抗値としては、0.3〜200Ω/□の範囲であることが好ましく、0.5〜100Ω/□の範囲であることが更に好ましく、1〜50Ω/□の範囲であることが特に好ましい。表面比抵抗は、例えば、JIS K6911、ASTM D257、等に準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
【0087】
〈薄膜銀電極〉
薄膜銀電極は、銀または銀を主成分とした合金を用いて構成された層である。このような薄膜銀電極層の成膜方法としては、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法などのウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法など)、スパッタ法、CVD法などのドライプロセスを用いる方法などが挙げられる。なかでも蒸着法が好ましく適用される。また必要に応じて、成膜後に高温アニール処理等を行ったものであっても良い。
【0088】
薄膜銀電極層を構成する銀(Ag)を主成分とする合金は、銀マグネシウム(AgMg)、銀銅(AgCu)、銀パラジウム(AgPd)、銀パラジウム銅(AgPdCu)、銀インジウム(AgIn)などが挙げられる。これら、銀または銀を主成分とした合金の層が、必要に応じて複数の層に分けて積層された構成であっても良い。
【0089】
さらにこの薄膜銀電極層は、膜厚が4〜10nmの範囲にあることによって光透過率が高く、導電性も確保できるので、有機EL素子板に有効に適用することが出来る。本発明では特に、4〜9nmの範囲にあることが好ましい。膜厚が10nm以下であれば、光の吸収または反射を抑制することができ、透明電極としての所望の透過率を得ることができる。また、膜厚が4nm以上であれば、十分な導電性を得ることができると共に、連続的な薄膜の安定した形成が可能となる。本発明においては、有機EL素子板の面電極、すなわち陽極、陰極、必要に応じて設けられる中間電極の少なくとも1つが、薄膜銀電極であることが好ましく、すべての電極が薄膜銀電極であることがより好ましい。
【0090】
前記薄膜銀電極層は、窒素原子を含んだ化合物を有する下地層の上に、銀または銀を主成分とした合金を、前記の方法で形成することが好ましい。電極層を構成する銀原子が下地層を構成する窒素原子を含んだ化合物と相互作用し、銀原子の下地層表面においての拡散距離が減少し、銀の凝集が抑えられる。このため、一般的には核成長型(Volumer−Weber:VW型)での膜成長により島状に孤立し易い銀薄膜が、単層成長型(Frank−van der Merwe:FW型)の膜成長によって成膜されるようになる。したがって、薄い膜厚でありながらも、均一な膜厚の電極層が得られるようになる。この結果、より薄い膜厚として高い光透過率を保ちつつも、導電性が確保された透明電極とすることができる。
【0091】
(6)支持基板
本発明に係る有機EL素子板に用いることのできる支持基板としては、ガラス、プラスチック等の透明な支持基板を用いる。用いられる透明な支持基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0092】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名、JSR社製)あるいはアペル(商品名、三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
【0093】
《背面板》
本発明の図柄発光表示装置においては、光透過性の背面板を有することが構成上の特徴の一つである。光透過性の背面板としては、光非透過性の背面板に穴を開けて、一定の開口率となるように設計して、所望の光透過性T
B(%)としたものでもよいが、光透過性の材料を成型して均一の板状にしたものの方が、透過光が均一に図柄板に導入されるので好ましい。背面板は、本発明に係る図柄板とともに、本発明に係る高精密な有機EL素子板を保護する機能も求められるので、耐候性や耐久性に優れたものが好ましい。
【0094】
本発明に係る背面板8を構成する材質としては、光透過性を備えている材料であれば特に制限はないが、光透過性に加えて、図柄発光表示装置としての耐久性を考慮すると、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN樹脂)、ポリプロピレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素系樹脂、メラミン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)等及びこれらの樹脂から選択される樹脂のブレンド樹脂、ポリマーアロイ等が挙げられる。その中でも、特に、アクリル樹脂及びアクリル−ウレタン樹脂が好ましい。
【0095】
また、本発明に係る背面板において、所望の光透過率に調整する方法としては、背面板を成形する際に、樹脂原料に対し、着色剤(例えば、白色顔料等)を適宜添加して調整することができる。
【0096】
また、本発明に係る背面板上には、前述のように必要に応じて背景や図柄を付与することができる。それらの図柄等を付与する方法としては、図柄板で説明したのと同様の方法を適用することができる。
【0097】
本発明に係る光透過性の背面板の光透過率T
Bとしては、波長550nmで測定したときの光透過率が35〜55%の範囲内であることが好ましい。光透過率が35%以上であれば、本発明の目的とする逆光時での視認性改良効果を発揮することができ、また、55%以下であれば、夜間に有機EL素子板が発光する場合、背面板側への発光を背面板にて反射利用させる効率を十分に発現させることができる。また、光透過性の背面板は、逆光時に太陽光の一部を透過して、図柄の視認性を向上させる効果を有するが、逆光時の光透過率が過度に高すぎると図柄の視認性を低下させることがある。
【0098】
本発明に係る光透過性の背面板は、その透過光も利用して図柄の視認性に貢献するので、白色、または乳白色を呈することが好ましい。
【実施例】
【0099】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
【0100】
《有機EL素子板の作製》
〔有機EL素子板101の作製〕
(陽極の形成)
厚さ0.7mmの透明な無アルカリガラス製の基板の上に、厚さ100nmとなる条件でITOをスパッタ法で成膜してアノード電極(陽極)を形成した。
【0101】
(有機機能層ユニットの形成)
このITO層を設けた支持基板を洗浄、乾燥後、市販の真空蒸着装置にて、以下の層を順次形成した。
【0102】
〈正孔注入層兼正孔輸送層の形成〉
α−NPDを蒸着速度0.1〜0.2nm/秒でITO層上に膜厚20nmとなるようにして、正孔注入層兼正孔輸送層を設けた。
【0103】
〈発光層の形成〉
次に、発光ホスト化合物1と発光ドーパント1を、蒸着速度が発光ホスト化合物1:発光ドーパント1=100:6になるように調節して、膜厚30nmの発光層を設けた。
【0104】
〈正孔阻止層の形成〉
次に、BAlqを蒸着速度0.1〜0.2nm/秒で膜厚10nmとなるようにして、正孔阻止層を設けた。
【0105】
〈電子輸送層の形成〉
次に、含窒素化合物1とフッ化カリウムを、蒸着速度が、含窒素化合物1:フッ化カリウム=75:25になるように調節して、膜厚30nmの電子輸送層を設けた。
【0106】
〈電子注入層の形成〉
さらに、フッ化リチウムを、蒸着速度0.01〜0.02nm/秒で膜厚1nmの電子注入層を設けた。
【0107】
(陰極の形成)
ITOを、成膜速度0.3〜0.5nm/秒の範囲で調整しながら、膜厚150nmとなるようにして、光透過性の陰極を設けた。
【0108】
(有機EL素子板の封止)
最後に、上記で得られた有機EL素子をガラスケースで覆い、厚み300μmのガラス基板を封止用基板として用い、周囲にシール材としてエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを有機EL素子の支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化・封止して、有機EL素子板101を得た。
【0109】
【化1】
【0110】
〔有機EL素子板102の作製〕
上記有機EL素子板101において、電子注入層まで成膜した基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダに固定し、真空蒸着装置の真空槽に取り付けた。またタングステン製の抵抗加熱ボートに銀(Ag)を入れ、当該真空槽内に取り付けた。次に、真空槽を4×10
−4Paまで減圧した後、抵抗加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒となる条件で制御しながら、銀からなる厚さ10nmの光透過性の陰極を形成した以外は同様にして、有機EL素子板102を作製した。
【0111】
〔有機EL素子板103の作製〕
上記有機EL素子板102の作製において、下地層、陽極及び陰極を以下のように形成した以外は同様にして、有機EL素子103を作製した。
【0112】
〈下地層の形成〉
厚さ0.7mmの透明な無アルカリガラス製の基板を真空蒸着装置の真空槽に取り付けた。次いで、下記TPDを、蒸着速度が0.1〜0.2nm/秒の範囲で制御しながら、膜厚が25nmとなるように下地層を形成した。
【0113】
【化2】
【0114】
〈陽極の形成〉
下地層上に、タングステン製の抵抗加熱ボートに銀(Ag)を入れ、真空槽を4×10
−4Paまで減圧した後、抵抗加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒となる条件で制御しながら、銀からなる厚さ10nmの光透過性の陽極を形成した
〈陰極の形成〉
正孔注入層から電子注入層までは、有機EL素子101と同様に成膜した後タングステン製の抵抗加熱ボートに銀(Ag)を入れ、真空槽を4×10
−4Paまで減圧した後、抵抗加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒となる条件で制御しながら、銀からなる厚さ8nmの光透過性の陰極を形成した
〔有機EL素子板104の作製〕
上記有機EL素子板103の作製において、陽極の銀層の膜厚を8nmとし、かつ陰極の銀層の膜厚を5nmとした以外は同様にして、有機EL素子104板を作製した。
【0115】
(各有機EL素子板の光透過率の測定)
作製した有機EL素子板101〜104について、分光光度計(日立製作所製U−3300)を用いて、分光波長550nmにおける光透過率T
Cを測定した。
【0116】
測定した結果、有機EL素子板101の光透過率T
Cは57%、有機EL素子板102の光透過率T
Cは65%、有機EL素子板103の光透過率T
Cは73%、有機EL素子板104の光透過率T
Cは86%であった。
【0117】
(各有機EL素子板の発光光量の測定)
上記作製した有機EL素子板101〜104について、図柄板に接する面側Cに到達する光の光量Aと、背面板に接する面側Dに到達する光の光量Bを、公知の方法に従って測定した結果、全ての有機EL素子板において、光量Aが、光量Bの1.2倍〜1.4倍の範囲にあった。
【0118】
《図柄板の準備》
図柄板の基板として、厚さ3.0mm、乳白色で分光波長550nmでの光透過率T
Aが43%、46%、52%、57%のアクリル板を用意した。
【0119】
図柄板には、光透過性のインクにて、
図1及び
図2に示すような道路標識の図柄を印刷した。
【0120】
《背面板の準備》
背面板として、厚さ3.0mm、乳白色で分光波長550nmでの光透過率が40%、43%、46%、52%のアクリル板を用意した。
【0121】
《図柄発光表示装置の作製》
図1及び
図2に示すような構成で、表1に記載の組み合わせで、図柄板、有機EL素子板、背面板を用いて、図柄発光表示装置1から14を作製した。
【0122】
なお、有機EL素子板は、図側板面に陰極側が位置するように配置した。
【0123】
《図柄発光表示装置の評価》
上記作製した図柄発光表示装置1〜14について、日中屋外での視認性、夜間の発光時での視認性、及び昼間の逆光時での視認性について評価した。
【0124】
(日中屋外での視認性の評価)
各図柄発光表示装置を、高さ5mに設置し、図柄発光表示装置の前方10mに視認性評価者が立ち、表示板設置地点と評価者の地点を結ぶ線の表示板設置地点から45°で、表示板設置地点からの仰角60°の位置に太陽があるように配置して、快時と曇天時(雲量10)のそれぞれで、下記の評価基準に従って視認性を官能評価した。
【0125】
(夜間の発光時での視認性)
完全暗室内に図柄発光表示装置を、高さ5mに設置し、図柄発光表示装置の前方10mに視認性評価者が立ち、有機EL素子に通電して発光させて、下記の評価基準に従って視認性を官能評価した。
【0126】
(昼間の逆光時での視認性)
図柄発光表示装置を、高さ5mに設置し、図柄発光表示装置の前方10mに視認性評価者が立ち、視認性評価者からの仰角が30°で図柄発光表示装置の上に太陽があるように配置して、下記の評価基準に従って逆光時での視認性を官能評価した。
【0127】
(視認性の官能性評価基準)
男性6名及び女性4名の計10名のモニターによる目視観察を行い、下記の基準に従って評価し、そのランクの平均値を求めた。
【0128】
◎:視認性が極めて良好である
○:視認性が良好で問題が無い
△:視認性が劣る品質である
×:視認性が極めて劣る品質である
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する非発光状態での波長550nmにおける光透過率T
Cが65%以上である有機EL素子板を装備した本発明の図柄発光表示装置は、比較例に対し、(a)昼間の順光、(b)夜間時及び(c)昼間の逆光時の条件すべてで、優れた視認性を発現していることがわかる。