特許第6019699号(P6019699)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019699
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】燃焼効率改良装置
(51)【国際特許分類】
   F23K 5/08 20060101AFI20161020BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20161020BHJP
   F02M 27/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   F23K5/08 Z
   F02M37/00 341Z
   F02M27/00
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-95847(P2012-95847)
(22)【出願日】2012年4月19日
(65)【公開番号】特開2013-221732(P2013-221732A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】512103527
【氏名又は名称】日本公営株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(72)【発明者】
【氏名】室岡 康資
(72)【発明者】
【氏名】木賊 茂男
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4660191(JP,B2)
【文献】 特表2004−535855(JP,A)
【文献】 特開2011−16972(JP,A)
【文献】 特開2007−255261(JP,A)
【文献】 実開昭63−12038(JP,U)
【文献】 特開平2−206690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/08
F02M 37/00
F02M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料供給通路内を流通する燃料に対して遠赤外線を照射して燃焼効率を改良する燃焼効率改良装置であって、
前記燃料に対して遠赤外線を照射する物質としての燃焼改良材と、前記燃焼改良材を収容するケーシングと、前記ケーシング内の燃焼改良材に埋設状に設けた、前記ケーシングの内面に沿って周回する螺旋状のコイル部を有する、遠赤外線を透過可能な材料からなる供給管と、前記ケーシングの中央部に設けた筒状部材と、前記筒状部材内に配置した加熱手段とを備え、
前記燃焼改良材が、遠赤外線発生物質と、遠赤外線により電子活動が活性化する常温イオン液体からなる不活性液体との混合物からなり、
前記供給管を燃料供給通路の途中部に介装して、前記供給管を流通する燃料に対して遠赤外線を照射する、
ことを特徴とする燃焼効率改良装置。
【請求項2】
燃料供給通路内を流通する燃料に対して遠赤外線を照射して燃焼効率を改良する燃焼効率改良装置であって、
前記燃料に対して遠赤外線を照射する物質としての燃焼改良材と、前記燃焼改良材を収容するケーシングと、前記ケーシング内の燃焼改良材に埋設状に設けた、前記ケーシングの内面に沿って周回する螺旋状のコイル部を有する、遠赤外線を透過可能な材料からなる供給管とを備え、
前記燃焼改良材が、遠赤外線発生物質と、遠赤外線により電子活動が活性化する常温イオン液体からなる不活性液体との混合物からなり、
前記供給管の内周面及び/又は外周面に微細な凹凸を形成し、
前記供給管を燃料供給通路の途中部に介装して、前記供給管を流通する燃料に対して遠赤外線を照射する、
ことを特徴とする燃焼効率改良装置。
【請求項3】
燃料供給通路内を流通する燃料に対して遠赤外線を照射して燃焼効率を改良する燃焼効率改良装置であって、
前記燃料に対して遠赤外線を照射する物質としての燃焼改良材と、前記燃焼改良材を収容するケーシングと、前記ケーシング内の燃焼改良材に埋設状に設けた、前記ケーシングの内面に沿って周回する螺旋状のコイル部を有する、遠赤外線を透過可能な材料からなる供給管とを備え、
前記燃焼改良材が、遠赤外線発生物質と、遠赤外線により電子活動が活性化する常温イオン液体からなる不活性液体との混合物からなり、
前記供給管に内側へ突出する螺旋状の条溝を連続的或いは間欠的に設け、
前記供給管を燃料供給通路の途中部に介装して、前記供給管を流通する燃料に対して遠赤外線を照射する、
ことを特徴とする燃焼効率改良装置。
【請求項4】
前記供給管の内周面及び/又は外周面に微細な凹凸を形成した請求項1又は3記載の燃焼効率改良装置。
【請求項5】
前記供給管に内側へ突出する螺旋状の条溝を連続的或いは間欠的に設けた請求項1又は4記載の燃焼効率改良装置。
【請求項6】
前記不活性液体として、燃料供給通路内における燃料温度以上の耐熱性を有する常温イオン液体を用いた請求項1〜5のいずれか1項記載の燃焼効率改良装置。
【請求項7】
前記遠赤外線発生物質としてグラファイトシリカ体又は、ホルンブレンドカミングトン閃石ひん岩体又は、電気石体を用いた請求項1〜6のいずれか1項記載の燃焼効率改良装置。
【請求項8】
前記不活性液体と遠赤外線発生物質との混合割合を、不活性液体100wt%に対して遠赤外線発生物質を1〜75wt%に設定した請求項1〜のいずれか1項記載の燃焼効率改良装置。
【請求項9】
前記コイル部を囲繞するケーシングの胴部内周面又は胴部外周面に鏡面仕上げしたステンレス鋼板からなる反射板を、鏡面側を内側にして設けた請求項1〜8のいずれか1項記載の燃焼効率改良装置。
【請求項10】
前記ケーシングに断熱材を外装した請求項〜9のいずれか1項記載の燃焼効率改良装置。
【請求項11】
前記燃料がC重油である請求項1〜10のいずれか1項記載の燃焼効率改良装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料の燃焼効率を改良する燃焼効率改良装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶やバス、トラックなどのエンジンへ供給する液体燃料に対して遠赤外線を照射することで、燃焼効率を改良する燃焼効率改良装置が種々提案されている。なお、本明細書では、遠赤外線のように燃焼効率を改良可能な波長の電磁波を「遠赤外線」と総称するものとする。
【0003】
前記燃焼効率改良装置として、ナノカーボングラファイト粒子を含む導電性溶液中に少なくとも電気石粒子が分散された混合分散液が、表面が硬質アルマイトで被覆された導電性材料からなる中空部材内に充填されているとともに、液体燃料の燃料タンクから液体燃料の燃焼装置に至る燃料パイプの周囲を囲繞可能に形成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ところで、船舶等で使用されるC重油は、粘度が高いことから、通常は80℃または120℃に加温して粘度を低くした状態で、燃料供給通路を通じてエンジンに供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4660191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1記載の発明では、混合分散液からの遠赤外線を燃料に照射して、燃費を改良できるものの、例えば混合分散液として、水と電気石とカーボン粒子との混合物を用いた場合には、燃料供給路内の燃料温度が高くなると、混合分散液中の水の体積が増えたり、沸騰したりすることから、80℃又は120℃に加熱して使用されるC重油を用いた船舶等に対して適用できないという問題があった。また、混合分散液に導電性を付与するためナノカーボングラファイト粒子を混入する必要があることから、混合分散液の製作コストが高くなるという問題もある。
【0007】
本発明の目的は、常温はいうまでもなく、−45℃の低温から+250℃以上の高温の燃料に対しても使用可能な燃焼効率改良装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る燃焼効率改良装置は、燃料供給通路内を流通する燃料に対して遠赤外線を照射して燃焼効率を改良する燃焼効率改良装置であって、前記燃料に対して遠赤外線を照射する物質として、遠赤外線発生物質と、遠赤外線により電子活動が活性化する不活性液体との混合物からなる燃焼改良材を用いたものである。なお、前記燃焼効率改良装置は、船舶やバス、トラックなどのエンジンだけでなく、火力発電所や焼却設備、鋳造や製鋼などの炉、ボイラーなどで使用されるバーナーに対しても適用可能である。
【0009】
この燃焼効率改良装置では、燃料に対して遠赤外線を照射する燃焼改良材として、遠赤外線発生物質と、遠赤外線により電子活動が活性化する不活性液体との混合物からなる燃焼改良材を用いているので、不活性液体として、例えば−45℃の低温から+250以上の高温においても、体積が変化したり、沸騰したりせず、しかも遠赤外線により電子活動が活性化するものを採用できるので、従来適用困難であると考えられていた、C重油を用いた船舶等のように、燃料供給通路内の燃料を例えば80℃又は120℃に加温するものであっても、該C重油に対して遠赤外線を照射して、燃焼効率を改良することができる。
【0010】
ここで、前記不活性液体として、燃料供給通路内における燃料温度以上の耐熱性を有する常温イオン液体を用いることが好ましい実施の形態である。このような耐熱性を有する常温イオン液体を用いると、80℃又は120℃に加温されているC重油を使用する船舶等に対しても、本発明を適用して燃焼効率を改良できるので好ましい。常温イオン液体としては、燃料供給通路内における燃料の温度以上の耐熱性を有するものであれば、任意の化学成分のものを採用することができる。
【0011】
前記遠赤外線発生物質としてグラファイトシリカ(Graphite Silica)体又は、ホルンブレンドカミングトン閃石ひん岩体又は、電気石(Tourmaline)体を用いることが好ましい。特に、グラファイトシリカは常温においても遠赤外線を放射できるので好適である。
【0012】
前記不活性液体と遠赤外線発生物質との混合割合を、不活性液体100wt%に対して遠赤外線発生物質を1〜75wt%に設定することが好ましい実施の形態である。不活性液体100wt%に対して遠赤外線発生物質の混合割合が1wt%未満の場合には、遠赤外線を十分に照射することができず、75wt%を超える場合には、混合体の流動性が低下して遠赤外線発生物質の密度に粗密が発生し、遠赤外線発生物質から一様に縁赤外線を照射できなくなるので、遠赤外線発生物質の混合割合は1〜75wt%に設定することが好ましい。特に、遠赤外線発生物質の混合割合は、5〜50wt%に設定することが好ましく、10〜25wt%に設定することが最適である。
【0013】
前記燃焼改良材と、前記燃焼改良材を収容するケーシングと、前記ケーシング内の燃焼改良材に埋設状に設けた、前記ケーシングの内面に沿って周回する螺旋状のコイル部を有する、遠赤外線を透過可能な材料からなる供給管とを備え、前記供給管を前記燃料供給通路の途中部に介装することも好ましい実施の形態である。この場合には、燃料が流通するコイル部が遠赤外線を照射する燃焼改良材に埋設されるので、燃料に対して遠赤外線を効率的に作用させることができる。また、コイル部内で燃料が強制的に撹拌されるので、燃料全体に対して一様に遠赤外線を照射することが可能となる。なお、遠赤外線を透過可能な材料としては、アルミニウム合金を好適に採用できる。
【0014】
前記ケーシングの中央部に筒状部材を設け、前記筒状部材内に加熱手段を配置することも好ましい実施の形態である。A重油は、C重油と比較して粘度が小さく通常は加熱しないで、常温のままでエンジン等へ供給することになるが、本発明のように加熱手段を設けると、燃焼改良材を加熱して、燃焼改良材からの遠赤外線の発生を促進させ、燃料に対して十分に遠赤外線を照射できるので好ましい。
【0015】
前記コイル部を囲繞するケーシングの胴部内周面又は胴部外周面に鏡面仕上げしたステンレス鋼板からなる反射板を、鏡面側を内側にして設けることが好ましい実施の形態である。この場合には、外部へ放散されてしまう遠赤外線を反射板で反射してコイル部に照射することができるので、燃料に対して遠赤外線を一層効率的に作用させることができる。
【0016】
前記供給管の内周面及び/又は外周面に微細な凹凸を形成することも好ましい実施の形態である。このように構成すると、供給管の表面積を増大させて、燃料に対する遠赤外線の照射面積を増大して、燃料に対して遠赤外線を更により効率的に作用させることができる。なお、微細な凹凸は、例えばブラスト処理や薬品処理により形成することができる。また、供給管の内周面に凹凸を形成すると、管内壁に沿って流通する燃料に乱流を発生させて、供給管内を流通する燃料を効率的に撹拌して、燃料全体に対してより一層一様に遠赤外線を照射することが可能となる。
【0017】
前記供給管に内側へ突出する螺旋状の条溝を連続的或いは間欠的に設けることも好ましい実施の形態である。このように構成すると、燃料を螺旋状に旋回させながら供給管内を流通させることができるので、燃料全体に対してより一層一様に遠赤外線を照射することが可能となる。
【0018】
前記ケーシングに断熱材を外装することが好ましい実施の形態である。この場合には、燃焼改良材の温度を、遠赤外線を効率的に放射可能な温度に、無駄なく維持することができる。
【0019】
前記燃料がC重油であることが好ましい。前述のように、C重油は粘度が高いことから通常は80℃や120℃に加熱して使用されるので、従来、導電性液が沸騰することから適用困難であると考えられていたが、本発明では不活性液体を用いることで、適用できるようになった。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る燃焼効率改良装置によれば、燃料に対して遠赤外線を照射する燃焼改良材として、遠赤外線発生物質と、遠赤外線により電子活動が活性化する不活性液体との混合物からなる燃焼改良材を用いているので、不活性液体として、例えば−45℃の低温から+250以上の高温においても、体積が変化したり、沸騰したりせず、しかも遠赤外線により電子活動が活性化するものを採用できるので、従来適用困難であると考えられていた、C重油を用いた船舶等のように、燃料供給通路内の燃料を例えば80℃又は120℃に加温するものであっても、該C重油に対して遠赤外線を照射して、燃焼効率を改良することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】燃焼効率改良装置の斜視図
図2図1のII-II線断面図
図3図2のIII-III線断面図
図4】他の構成の供給管の要部正面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1図3に示すように、燃焼効率改良装置10は、燃料タンク1からエンジンやバーナーなどの燃焼装置2に至る燃料供給通路3の途中部に介装され、燃料供給通路3を流通する燃料に対して遠赤外線を照射して燃焼効率を改良するもので、燃料に対して遠赤外線を照射する物質として、遠赤外線発生物質と、遠赤外線により電子活動が活性化する不活性液体との混合物からなる燃焼改良材11を用いたものである。
【0023】
不活性液体としては、遠赤外線により電子活動が活性化し且つ燃料供給通路3内における燃料の温度以上の耐熱性を有するものであれば任意の組成からなるものを採用できる。例えば、イオン液体を好適に採用できる。イオン液体としては、陽イオンとして、イミダゾリウム塩類・ピリジニウム塩類などのアンモニウム系、ホスホニウム系イオン、無系イオンなどを用い、陰イオンとして、臭化物イオンやトリフラートなどのハロゲン系、テトラフェニルボレートなどのホウ素系、ヘキサフルオロホスフェートなどのリン系などを用いたものを採用できる。例えば、LU150FT(パイオトレック株式会社製)が特に最適である。
【0024】
遠赤外線発生物質としてグラファイトシリカ体などの珪酸塩鉱物体又は、ホルンブレンドカミングトン閃石ひん岩体又は、鉄電気石、苦土電気石、シリカ電気石、オーレン電気石、鉄灰電気石、灰電気石、フォイト電気石、苦土フォイト電気石などの電気石体を用いることができる。遠赤外線発生物質の粒径は5μm以下が好ましい。
【0025】
不活性液体と遠赤外線発生物質との混合割合は、不活性液体100wt%に対して遠赤外線発生物質が1wt%未満の場合には、遠赤外線を十分に照射することができず、75wt%を超える場合には、混合体の流動性が低下して遠赤外線発生物質の密度に粗密が発生し、遠赤外線発生物質から一様に縁赤外線を照射できなくなるので、遠赤外線発生物質の混合割合は1〜75wt%に設定することが好ましく、特に5〜50wt%が好適であり、10〜25wt%が最適配合である。
【0026】
次に、燃焼効率改良装置10の具体的な構成について説明する。ただし、燃焼効率改良装置10は、燃焼改良材11から放射される遠赤外線を、燃料供給通路3を流通する燃料に対して照射可能なものであれば、以下に説明する以外の任意の構成のものを採用することも可能である。
【0027】
燃焼効率改良装置10について説明すると、燃焼効率改良装置10の下端部には設置板12が設けられ、設置板12の中央部には円筒状の芯内筒13とそれに外嵌される芯外筒(筒状部材)14とが立設固定され、芯内筒13と芯外筒14間の隙間にはシート状の加熱手段15が円筒状に丸めた状態で装着されるとともに、加熱手段15と芯内筒13間には断熱材16が充填されている。加熱手段15としては、ゲルマヒータを好適に利用できるが、それ以外のものを採用することも可能である。この加熱手段15は、燃料供給通路3を流通する燃料が、A重油のように常温にて使用される燃料の場合に、燃焼改良材11を加熱して、遠赤外線の放射量を増大させるためのものである。このため、燃料供給通路3を流通する燃料が、80℃又は120℃に加熱されるC重油の場合には、加熱手段15を省略することができる。
【0028】
芯外筒14にはその下端部を除く全体に内側ケース(ケーシング)17が外装されている。内側ケース17は、芯外筒14に同心状に外嵌される円筒状の胴部材17aと、胴部材17aの上面開口を閉塞する上面板17bと、胴部材17aの下面開口を閉塞する下面板17cとを備えている。芯外筒14は下面板17cを液密状に挿通し、その上端部は上面板17bで液密状に閉鎖されている。内側ケース17には有底円筒状の外側ケース18が開口を下側に向けて外嵌され、外側ケース18の下端部は設置板12に固定されている。
【0029】
芯外筒14と内側ケース17間には遠赤外線照射空間19が形成され、遠赤外線照射空間19には燃焼改良材11が収容されている。内側ケース17の下面板17cには1対の充填孔20が形成され、この充填孔20を通じて遠赤外線照射空間19内へ燃焼改良材11を充填できるように構成されている。なお、符号21は、燃焼改良材11の充填後に、貫通孔を閉塞するように設けたリベットである。
【0030】
遠赤外線照射空間19内には芯外筒14を周回するコイル部22aを有する供給管22が芯外筒14及び内側ケース17の胴部材17aに接触しないように設けられ、供給管22の両端部は内側ケース17及び外側ケース18を液密状に貫通して外部に突出され、供給管22のコイル部22aは遠赤外線照射空間19内の燃焼改良材11に埋設されている。供給管22は、アルミニウム合金などのように遠赤外線を透過可能な材料で構成され、燃焼改良材11から放射される遠赤外線は、供給管22を透過して、供給管22内を流通する燃料に照射されることになる。なお、符号23は、供給管22を内側ケース17に固定支持するための支持ブラケットである。
【0031】
供給管22は、燃料タンク1から燃焼装置2に至る燃料供給通路3の途中部に介装され、供給管22の流入側端部22bは流出側端部22cよりも下側に配置され、流入側端部22bは燃料タンク1に連なる燃料供給通路3に接続され、供給管22の流出側端部22cは燃焼装置2に連なる燃料供給通路3に接続されている。供給管22の流入側端部22bを燃焼装置2に連なる燃料供給通路3に接続し、供給管22の流出側端部22cを燃料タンク1に連なる燃料供給通路3に接続することも可能であるが、供給管22の流入側端部22bを燃料タンク1に連なる燃料供給通路3に接続し、供給管22の流出側端部22cを燃焼装置2に連なる燃料供給通路3に接続すると、燃料供給通路3に燃焼効率改良装置10を介装するときに、先ず燃料タンク1に連なる燃料供給通路3を供給管22の流入側端部22bに接続して、供給管22内の空気を排出しながら燃料を供給して、供給管22内の空気を完全に排出してから、供給管22の流出側端部22cに燃焼装置2に連なる燃焼供給通路3を接続することで、燃料供給通路3内における残留空気を略完全に排出できるので好ましい。
【0032】
また、供給管22の内周面及び/又は外周面に微細な凹凸を形成することも好ましい実施の形態である。このように構成すると、供給管22の表面積を増大させて、燃料に対する遠赤外線の照射面積を増大して、燃料に対して遠赤外線をより効率的に作用させることができる。なお、微細な凹凸は、例えばブラスト処理や薬品処理により形成することができる。また、供給管22の内周面に凹凸を形成すると、管内壁に沿って流通する燃料に乱流を発生させて、供給管22内を流通する燃料を効率的に撹拌して、燃料全体に対してより一層一様に遠赤外線を照射することが可能となる。また、図4に示すように、供給管22に内側突出する螺旋状の条溝24を連続的或いは間欠的に設けることも好ましい実施の形態である。このように構成すると、燃料を螺旋状に旋回させながら供給管22内を流通させることができるので、燃料全体に対してより一層一様に遠赤外線を照射することが可能となる。
【0033】
内側ケース17の胴部材17aには鏡面仕上げしたステンレス板からなる反射板25が鏡面側を内側へ向けて胴部材17aの内周面に沿って設けられ、この反射板25により燃焼改良材11から放射される遠赤外線を反射して、遠赤外線が内側ケース17から外部へ漏れることを極力防止して、供給管22の燃料に対して効率的に遠赤外線を照射できるように構成されている。なお、反射板25としては、ステンレス板以外のものを採用することも可能である。また、反射板25は、胴部材17aの内周面に沿って設けたが、胴部材17aの外周面に沿って鏡面側を内側へ向けて設けることも可能である。また、反射板25と併用して、内側ケース17の下面板17cや上面板17bの内側や外側に鏡面仕上げ側を内側へ向けて、鏡面仕上げしたステンレス板からなる反射板を設けることも好ましい。
【0034】
外側ケース18と内側ケース17間及び内側ケース17と設置板12間には保温空間26が形成され、この保温空間26内にはウレタンフォームなどからなる保温材27が収容され、内側ケース17の全体が保温材27で囲繞されるように構成されている。設置板12の下面には2つの注入孔28が形成され、保温材27はこの注入孔28から保温空間26に充填されるように構成されている。この保温材27により、燃焼改良材11が保温されて、燃焼改良材11からの遠赤外線の照射量を高めることができるように構成されている。
【0035】
この燃焼効率改良装置10は、燃料タンク1から燃焼装置2に至る燃料供給通路3の途中部に介装され、燃料タンク1からの燃料は燃焼効率改良装置10の供給管22を通過する間に、燃焼改良材11からの遠赤外線が燃料に照射されて、燃焼効率が改良されることになる。また、燃焼改良材11として、グラファイトシリカ体又は、ホルンブレンドカミングトン閃石ひん岩体又は、電気石体からなる遠赤外線発生物質と、遠赤外線により電子活動が活性化する常温イオン液体からなる不活性液体との混合物からなる燃焼改良材11を用いているので、例えば−45℃の低温から+250℃以上の高温においても、燃焼改良材11の体積が変化したり、沸騰したりせず、しかも遠赤外線により電子活動が活性化するので、従来適用困難であると考えられていた、C重油を用いた船舶等のように、燃料供給通路3内の燃料を例えば80℃又は120℃に加温するものであっても、該C重油に対して適用できることになる。
【0036】
また、供給管22の途中部にコイル部22aが形成され、燃料に対する遠赤外線の照射距離を長く設定できるので、燃料に対して遠赤外線を十分に作用させることができる。また、コイル部22a内で燃料が強制的に撹拌されるので、燃料全体に対して一様に遠赤外線を照射することが可能となる。更に、胴部材17aの内周面又は外周面に沿って反射板25を設けているので、外部へ放散されてしまう遠赤外線を反射板25で反射してコイル部22aに照射することができるので、燃料に対して遠赤外線を一層効率的に作用させることができる。
【0037】
なお、A重油を用いた燃焼装置のように、燃料を常温のままで燃焼装置に供給するように構成した燃焼装置に対して、燃焼効率改良装置10を適用する場合には、加熱手段15により燃焼改良材11を加熱して、燃焼改良材11からの遠赤外線の放射を促進させ、燃料に対して十分に遠赤外線を照射することになる。
【0038】
また、供給管22を同心状に配置した、遠赤外線を透過可能な内側管と外側管の2重管で構成することも可能で、この場合には、内側管内の収容部に燃焼改良材11を充填してその両端部を閉鎖し、内側管と外側管間の隙間を燃料供給通路3に連なる燃料通路とすることも可能である。更に、供給管22を同心状に配置した遠赤外線を透過可能な3重以上の多重管で構成し、燃焼改良材11の収容部と燃料通路とが交互に形成されるように構成することも可能である。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲においてその構成を変更し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
1 燃料タンク 2 燃焼装置
3 燃料供給通路
10 燃焼効率改良装置 11 燃焼改良材
12 設置板 13 芯内筒
14 芯外筒 15 加熱手段
16 断熱材 17 内側ケース
17a 胴部材 17b 上面板
17c 下面板 18 外側ケース
19 遠赤外線照射空間 20 充填孔
21 リベット 22 供給管
22a コイル部 22b 流入側端部
22c 流出側端部 23 支持ブラケット
24 条溝 25 反射板
26 保温空間 27 保温材
28 注入孔
図1
図2
図3
図4