(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記暫定調整時間決定手段は、前記走査方向と直交する方向における前記被記録媒体の位置に応じて前記ベースディレイ時間を変えて、前記暫定ディレイ時間を決定することを特徴とする請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、記録シートに上述したような波形状を生じさせているため、記録ヘッドのインク吐出面と記録シートとのギャップが、記録シートの部分毎に異なる。そのため、記録シートに波形状を生じさせないとした場合と同じ吐出タイミングで記録ヘッドからインクを吐出して記録シートに印刷を行うと、記録シートに着弾するインクに着弾位置ズレが生じ、画質の低下につながる。また、このとき、インクの着弾位置ズレ量は記録シートの部分毎に異なってくる。
【0005】
そこで、このように波形状とした被記録媒体に印刷を行う場合に、被記録媒体の適切な着弾位置にインクを着弾させるために、例えば、インクジェットヘッドのインク吐出面と、被記録媒体の各山部分及び谷部分とのギャップに応じて、インクジェットヘッドからのインクの吐出タイミングを調整することが考えられる。
【0006】
本発明の目的は、被記録媒体に波形状を生じさせた場合に、インクの吐出タイミングを適切に決定することが可能なインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係るインクジェットプリンタは、インクを選択的に吐出するノズルが形成されたインク吐出面を有するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを被記録媒体に対して前記インク吐出面と平行な走査方向に往復移動させるヘッド走査手段と、前記被記録媒体に、前記走査方向に沿って、前記インク吐出面側に突出した山部分と前記インク吐出面と反対側に窪んだ谷部分とが交互に並んだ、所定の波形状を生じさせる波形状生成機構と、前記走査方向に沿った、前記インク吐出面と
前記波形状にされた前記被記録媒体とのギャップの変動の情報であるギャップ変動情報を保持するギャップ変動情報保持手段と、前記ギャップ変動情報に基づいて、前記ノズルからのインクの吐出タイミングを決定する吐出タイミング決定手段
であって、予め決められた基準吐出タイミングに対してどれだけ吐出タイミングをずらすかを示す調整時間を決定することによって、前記ノズルから連続してインクを吐出させる際のインクの吐出タイミングの間隔が1つのドットを形成するときに前記インクジェットヘッドが行う動作に必要な所定時間よりも長くなるように、吐出タイミングを決定する吐出タイミング決定手段と、
前記ギャップ変動情報から、各吐出タイミングにおける前記調整時間の暫定値である暫定調整時間をそれぞれ決定する暫定調整時間決定手段と、少なくとも一部の前記暫定調整時間を補正する補正手段と、を備え、
前記調整時間は、前記基準吐出タイミングに対して吐出タイミングを遅らせる場合を正とし、ある吐出タイミング及びその直前の吐出タイミングにおける前記調整時間をそれぞれDM、DM-1とし、前記基準吐出タイミングの間隔をAとし、前記所定時間をTとした場合に、全ての吐出タイミングにおいてA+(DM−DM-1)−T>0の関係を満たすようになっており、前記暫定調整時間決定手段は、前記補正手段により補正されなかった前記暫定調整時間についてはそのまま前記調整時間として決定し、前記補正手段により補正された前記暫定調整時間については補正後の前記暫定調整時間を前記調整時間として決定し、前記補正手段は、前記暫定調整時間が、ある吐出タイミング及びその直前の吐出タイミングにおける前記暫定調整時間をそれぞれRM、RM-1とし、いずれかの吐出タイミングにおいてA+(RM−RM-1)−T≦0となる場合に、補正されない前記暫定調整時間及び補正後の前記暫定調整時間のいずれかとして決定される前記調整時間が、全ての吐出タイミングにおいてA+(DM−DM-1)−T>0の関係を満たすように、少なくとも一部の前記暫定調整時間を補正することを特徴とする。
【0008】
被記録媒体に大きな波形状を生じさせた場合、インク吐出面と被記録媒体とのギャップの走査方向に沿った変動が大きくなる。そのため、ギャップに応じて吐出タイミングを決定すると、ある吐出タイミングと直前の吐出タイミングとの時間間隔が短くなったり、ある吐出タイミングが次の吐出タイミングよりも後のタイミングに設定されたりして、インクジェットヘッドからインクを正常に吐出できなくなってしまう虞がある。
【0009】
本発明によると、インクの吐出タイミングの間隔が、上記所定時間よりも長くなるようになっているため、インクの吐出タイミングの間隔が、正常にインクを吐出させることができなくなってしまうほど詰まったり、あるインクの吐出タイミングが、次のインク吐出タイミングよりも後に設定されたりすることがない。したがって、各吐出タイミングにおいて正常にインクの吐出を行うことができる。
【0011】
さらに、本発明によると、基準吐出タイミングに対してどれだけ吐出タイミングをずらすかを示す調整時間を決定することで吐出タイミングを決定する場合には、全ての吐出タイミングにおいて、A+(D
M−D
M-1)−T>0の関係を満たすようにすれば、インクの吐出タイミングの間隔を、上記所定時間よりも長くすることができる。
【0013】
またさらに、本発明によると、ギャップ変動情報から暫定調整時間を決定したときに、いずれかの吐出タイミングにおいてA+(R
M−R
M-1)−T≦0となってしまう場合に、少なくとも一部の暫定ディレイ時間を補正することにより、全ての吐出タイミングにおいてA+(D
M−D
M-1)−T>0の関係を満たすようにすることができる。
【0014】
第2の発明に係るインクジェットプリンタは、第1の発明に係るインクジェットプリンタにおいて、前記吐出タイミング決定手段は、前記調整時間として、吐出タイミングを前記基準吐出タイミングからどれだけ遅らせるかを示すディレイ時間を決定し、前記暫定調整時間決定手段は、前記暫定調整時間として、前記ディレイ時間の暫定値である暫定ディレイ時間を決定し、前記補正手段は、ある吐出タイミングにお
ける暫定ディレイ時間RMが、A+(R
M−R
M-1)−T≦0となる場合に、当該吐出タイミングにおける前記暫定ディレイ時間R
Mを
、A+(K
M−R
M-1)−T=B
(ここで、Bは、全ての吐出タイミングにおいて直前の吐出タイミングとの前記ディレイ時間の差の絶対値が所定の上限値を超えないようにするために設定される、B>0の定数である。)を満たす所定の置換ディレイ時間K
Mに置き換えることによって、前記暫定ディレイ時間の補正を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明によると、A+(R
M−R
M−1)−T≦0となる場合に、当該吐出タイミングにおける前記暫定ディレイ時間R
Mを、A+(K
M−R
M−1)−T=Bを満たす所定の置換ディレイ時間K
Mに置き換えることによって、全ての吐出タイミングにおいて、A+(D
M−D
M−1)−T>0の関係を満たすようにすることができる。
【0016】
第
3の発明に係るインクジェットプリンタは、第
1又は第2の発明に係るインクジェットプリンタにおいて、前記吐出タイミング決定手段は、前記調整時間として、吐出タイミングを前記基準吐出タイミングからどれだけ遅らせるかを示すディレイ時間を決定し、前記暫定調整時間決定手段は、前記暫定調整時間として、前記ディレイ時間の暫定値である暫定ディレイ時間を決定し、前記補正手段は、前記被記録媒体の走査方向のある位置に着弾させるインクの吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間R
Mが、A+(R
M−R
M-1)−T≦0となる場合に、
前記波形状を生じさせた前記被記録媒体の、各山部分において前記インク吐出面とのギャップが最も小さくなる複数の山頂部分、及び、各谷部分において前記インク吐出面とのギャップが最も大きくなる複数の谷底部分によって区切られる複数の区間のうち、当該位置を含む区間である補正区間に着弾させるインクの吐出タイミングにおける前記暫定ディレイ時間を、全体として、その変動幅が小さくなるように補正することで、前記補正区間に着弾させるインクの全ての吐出タイミングにおいて、直前の吐出タイミングとの前記ディレイ時間の差の絶対値が所定の上限値を超えないようにすることを特徴とする。
【0017】
本発明によると、A+(R
M−R
M−1)−T≦0となる位置を含む区間における暫定ディレイ時間を、全体として、その変動幅が小さくなるように補正することにより、当該区間における(R
M−R
M−1)の絶対値が小さくなり、大きな負の値にならない。したがって、全ての吐出タイミングにおいて、A+(D
M−D
M−1)−T>0の関係を満たすようにすることができる。
【0018】
また、A+(R
M−R
M−1)−T≦0となる位置を含む区間の暫定ディレイ時間を全体として補正するため、A+(R
M−R
M−1)−T≦0となる位置に対応する暫定ディレイ時間だけを補正する場合に比べて、補正によって生じる画質の低下を極力抑えることができる。
【0019】
第
4の発明に係るインクジェットプリンタは、第
3の発明に係るインクジェットプリンタにおいて、前記波形状生成機構は、前記走査方向に沿って間隔をあけて配置されており、前記被記録媒体を前記インク吐出面と反対側から支持する複数の支持部と、前記走査方向における前記複数の支持部との間に配置されており、前記被記録媒体の前記支持部の間に位置する部分を前記インク吐出面と反対側に押さえる押さえ部と、を備え、前記補正手段は、前記補正区間における前記暫定ディレイ時間を、全体として、前記補正区間の一方の端に位置する前記山頂部分に着弾させるインクの吐出タイミングにおけるディレイ時間に前記所定割合で近づけるように補正し、前記所定割合は、全ての吐出タイミングにおいて、A+(D
M−D
M-1)−T>0の関係を満たすようになる割合であることを特徴とする。
【0020】
複数の支持部と複数の押さえ部とによって被記録媒体に波形状を生じさせた場合、山頂部分におけるギャップは、谷底部分におけるギャップに比べて安定している。
【0021】
本発明では、A+(R
M−R
M−1)−T≦0となる位置を含む区間における暫定ディレイ時間を、全体として、当該区間の山頂部分に対応する暫定ディレイ時間(暫定ディレイ時間の極大値)に近づけるように補正するため、最終的に決定されるディレイ時間が信頼性の高いものとなる。
【0022】
第
5の発明に係るインクジェットプリンタは、第
3又は第
4の発明に係るインクジェットプリンタにおいて、前記補正手段は、前記補正区間の一方の端に位置する前記山頂部分に着弾させるインクの吐出タイミングにおける前記暫定ディレイ時間を補正する場合には、前記補正区間と、前記補正区間の前記一方側に隣接する区間に着弾させるインクの吐出タイミングの前記暫定ディレイ時間を全体として、その変動幅が小さくなるように補正し、前記補正区間の他方の端に位置する前記谷底部分に着弾させるインクの吐出タイミングにおける前記暫定ディレイ時間を補正する場合には、前記補正区間と、前記補正区間の前記他方側に隣接する区間に着弾させるインクの吐出タイミングの前記暫定ディレイ時間を全体として、その変動幅が小さくなるように補正することを特徴とする。
【0023】
補正区間に着弾させるインクの吐出タイミングを補正する場合、補正区間の一方側の端に位置する山頂部分及び他方側の端に位置する谷底部分に着弾させるインクの吐出タイミングの暫定ディレイ時間のうち少なくともいずれかは補正される。これに対して、本発明では、補正区間と補正区間に隣接する区間に着弾させるインクの吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間を全体として補正することにより、これらの区間の境界部分におけるディレイ時間の変化を滑らかにすることができる。
【0024】
第6の発明に係るインクジェットプリンタは、第2〜第5の発明に係るインクジェットプリンタにおいて、前記
暫定調整時間決定手段
は、所定の上限ディレイ時間以下の範囲で
、前記ギャップが前記インク吐出面と前記被記録媒体との平均のギャップであるとしたときの前記暫定ディレイ時間であるベースディレイ時間が、前記上限ディレイ時間の半分の時間となるように、前記暫定ディレイ時間を決定することを特徴とする。
【0025】
被記録用紙を波形状とした場合、山頂部分に着弾させるインクの吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間は、ほぼ、ベースディレイ時間よりもある一定時間長い時間になり、谷底部分に着弾させるインクの吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間が、ほぼ、ベースディレイ時間よりも上記一定時間だけ短い時間になる。したがって、被記録媒体を波形状とした場合には、暫定ディレイ時間は、上記2つの暫定ディレイ時間の間で変化することとなる。
【0026】
本発明では、ベースディレイ時間が上限ディレイ時間の半分の時間であるため、山頂部分に着弾させるインクの吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間が、ほぼ上限ディレイ時間程度となり、谷底部分に着弾させるインクの吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間が、ほぼ0となる。これにより、上記2つのディレイ時間の差が大きくなり、ギャップの変動に応じて暫定ディレイ時間を変更するときの、暫定ディレイ時間の変更可能範囲を大きくすることができる。その結果、波形状の振幅をより大きくすることができる。なお、上限ディレイ時間とは、上記の関係式とは関係なく決まる、ディレイ時間の設計上の上限を指している。
【0027】
第
7の発明に係るインクジェットプリンタは、第
6の発明に係るインクジェットプリンタにおいて、前記暫定調整時間決定手段は、前記走査方向と直交する方向における前記被記録媒体の位置に応じて前記ベースディレイ時間を変えて、前記暫定ディレイ時間を決定することを特徴とする。
【0028】
ギャップは、走査方向と直交する方向における被記録媒体の位置によって変わることがある。本発明では、被記録媒体の直交方向における位置に応じて、ベースディレイ時間を変えるため、被記録媒体の直交方向の位置によらず、ギャップの変動に応じて暫定ディレイ時間を変更するときの、暫定ディレイ時間の変更可能範囲を大きくすることができる。
【0029】
第8の発明に係るインクジェットプリンタは、第1〜第7のいずれかの発明に係るインクジェットプリンタにおいて、前記波形状生成
機構は、前記吐出タイミング決定手段が決定する前記調整時間が、全ての吐出タイミングにおいて、A+(D
M−D
M-1)−T>0を満たすような波形状を前記被記録媒体に生じさせることを特徴とする。
【0030】
本発明によると、波形状生成
機構が、吐出タイミング決定手段が決定する調整時間が、全ての吐出タイミングにおいて、A+(D
M−D
M-1)−T>0を満たす範囲で、被記録媒体に波形状を生じさせるため、インクの吐出タイミングの間隔を上記所定時間よりも長くすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、インクの吐出タイミングの間隔が、上記所定時間よりも長くなるようになっているため、インクの吐出タイミングの間隔が、正常にインクを吐出させることができなくなってしまうほど詰まったり、あるインクの吐出タイミングが、次のインク吐出タイミングよりも後に設定されたりすることがない。したがって、各吐出タイミングにおいて正常にインクの吐出を行うことができる。
さらに、本発明によると、基準吐出タイミングに対してどれだけ吐出タイミングをずらすかを示す調整時間を決定することで吐出タイミングを決定する場合には、全ての吐出タイミングにおいて、A+(DM−DM-1)−T>0の関係を満たすようにすれば、インクの吐出タイミングの間隔を、上記所定時間よりも長くすることができる。
またさらに、本発明によると、ギャップ変動情報から暫定調整時間を決定したときに、いずれかの吐出タイミングにおいてA+(RM−RM-1)−T≦0となってしまう場合に、少なくとも一部の暫定ディレイ時間を補正することにより、全ての吐出タイミングにおいてA+(DM−DM-1)−T>0の関係を満たすようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0034】
本実施の形態に係るインクジェットプリンタ1は、記録用紙Pに対する印刷のほか、画像の読み取りなども行うことが可能な、いわゆる複合機である。インクジェットプリンタ1は、印刷部2(
図2参照)、給紙部3、排紙部4、読取部5、操作部6、表示部7などを備えている。また、インクジェットプリンタ1の動作は、制御装置50(
図5参照)によって制御されている。
【0035】
印刷部2は、インクジェットプリンタ1の内部に設けられており、記録用紙Pに対する印刷を行う。なお、印刷部2の詳細な構成については、後程説明する。給紙部3は、印刷部2により印刷が行われる記録用紙Pを供給するための部分である。排紙部4は、印刷部2により印刷が行われた記録用紙Pが排出される部分である。読取部5は、スキャナなどであって、画像の読み取りを行う部分である。操作部6は、ボタンなどを備えており、ユーザは、操作部6のボタンなどを操作することによって、インクジェットプリンタ1に対して必要な操作を行う。表示部7は液晶ディスプレイなどであって、インクジェットプリンタ1の使用時に必要な情報を表示する。
【0036】
次に、印刷部2について説明する。印刷部2は、
図2〜
図4に示すように、キャリッジ11(ヘッド走査手段)、インクジェットヘッド12、給紙ローラ13、プラテン14、複数のコルゲートプレート15、複数のリブ16、排紙ローラ17、複数のコルゲート拍車18、19などを備えている。ただし、
図2では、図面を見やすくするために、キャリッジ11を二点鎖線で図示し、キャリッジ11の下方に位置する部分を実線で図示している。
【0037】
キャリッジ11は、図示しないガイドレールなどに案内されて走査方向に往復移動する。インクジェットヘッド12は、キャリッジ11に搭載されており、その下面であるインク吐出面12aに形成された複数のノズル10からインクを吐出する。
【0038】
給紙ローラ13は、一対のローラであって、給紙部3から供給された記録用紙Pを挟んで、走査方向と直交する紙送り方向に搬送する。プラテン14は、インク吐出面12aと対向するように配置されており、給紙ローラ13により搬送される記録用紙Pは、プラテン14の上面に沿って搬送される。
【0039】
複数のコルゲートプレート15は、プラテン14の紙送り方向上流側の端部の上面と対向するように配置されており、走査方向にほぼ等間隔に配列されている。給紙ローラ13に搬送される記録用紙Pは、プラテン14とコルゲートプレート15との間を通過し、複数のコルゲートプレート15は、その下面である押さえ面15aにより記録用紙Pを上から押さえる。
【0040】
複数のリブ16は、プラテン14の上面の、走査方向に関するコルゲートプレート15の間の部分に配置されており、走査方向にほぼ等間隔に配列されている。リブ16は、それぞれ、プラテン14の上面からコルゲートプレート15の押さえ面15aよりも上方まで突出しているとともに、プラテン14の紙送り方向に関する上流側の端部から紙送り方向下流側に向かって延びている。これにより、プラテン14上の記録用紙Pは、複数のリブ16によって下方から支持されている。
【0041】
排紙ローラ17は、一対のローラであって、記録用紙Pの走査方向に関して複数のリブ16と同じ位置にある部分を挟んで、記録用紙Pを排紙部4に向けて紙送り方向に搬送する。なお一対のローラである排紙ローラ17のうち上側の排紙ローラは、記録用紙Pに着弾したインクが付着しにくいように拍車となっている。
【0042】
複数のコルゲート拍車18は、排紙ローラ17の紙送り方向下流側の、走査方向に関してコルゲートプレート15とほぼ同じ位置に配置されている。複数のコルゲート拍車19は、複数のコルゲート拍車18の紙送り方向下流側の、走査方向に関してコルゲートプレート15とほぼ同じ位置に配置されている。また、複数のコルゲート拍車18、19は、上下方向に関して、排紙ローラ17が記録用紙Pを挟む位置よりも下方に位置しており、この位置で、記録用紙Pを上方から押さえている。なお、コルゲート拍車18、19は外周面が平坦なローラではなく拍車であるので、記録用紙Pに着弾したインクが付着しにくい。
【0043】
そして、プラテン14上の記録用紙Pは、複数のコルゲートプレート15及び複数のコルゲート拍車18、19により上から押さえられるとともに、複数のリブ16により下方から支持されることによって曲げられ、
図3に示すように、上側(インク吐出面12a側)に突出した山部分Pmと、下側(インク吐出面12aと反対側)に窪んだ谷部分Pvとが交互に並ぶ波形状となっている。また、山部分Pmは、走査方向に関して、リブ16の中央部とほぼ同じ位置にある部分が、上側に最も大きく突出した山頂部分Ptとなっている。また、谷部分Pvは、走査方向に関して、コルゲートプレート15及びコルゲート拍車18、19とほぼ同じ位置にある部分が、最も下側に窪んだ谷底部分Pbとなっている。なお、本実施の形態では、このように、記録用紙Pを波形状にするコルゲートプレート15、リブ16及びコルゲート拍車18、19を合わせたものが、本発明に係る波形状生成機構に相当する。
【0044】
エンコーダセンサ20は、キャリッジ11に搭載されている。エンコーダセンサ20は、走査方向に延びた図示しないエンコーダベルトとともにリニアエンコーダを形成しており、エンコーダベルトに形成されたスリットを検出することによって、キャリッジ11によって走査方向に移動されるインクジェットヘッド12の位置を検出する。
【0045】
そして、以上のような構成の印刷部2では、給紙ローラ13及び排紙ローラ17によって記録用紙Pを紙送り方向に搬送させつつ、キャリッジ11とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド12からインクを吐出させることにより、記録用紙Pに印刷を行う。
【0046】
次に、インクジェットプリンタ1の動作を制御するための制御装置50について説明する。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、制御回路等からなり、これらが、
図5に示すように、記録制御部51、読取制御部52、ズレ量記憶部53(ギャップ変動情報保持手段)、暫定補間関数決定部54(暫定ディレイ時間決定手段)、補正部55、ヘッド位置検出部56、ディレイ時間決定部57(吐出タイミング決定手段)などとして機能する。
【0047】
記録制御部51は、インクジェットプリンタ1において印刷を行うときのキャリッジ11、インクジェットヘッド12、給紙ローラ13、排紙ローラ17などの動作を制御する。読取制御部52は、画像の読み取りを行う際の読取部5の動作を制御する。
【0048】
ズレ量記憶部53は、後述するように、着弾ズレ検出パターンから取得される、記録用紙Pの複数の山頂部分Pt及び谷底部分Pbにおける交点の紙送り方向へのズレ量(以下、交点ズレ量とすることがある)(ギャップ変動情報)を記憶する(保持する)。暫定補間関数決定部54は、ズレ量記憶部53に記憶された交点ズレ量から、波形状となった記録用紙Pの走査方向の各位置に着弾させるインクの吐出タイミングの基準となる吐出タイミング(基準吐出タイミング)からのディレイ時間の暫定値である暫定ディレイ時間を算出するための補間関数E(X)を決定する。
【0049】
補正部55は、後述するように、インクの吐出タイミングを、補間関数E(X)から算出される暫定ディレイ時間だけ基準吐出タイミングから遅れたタイミングとしてしまうと、正常にインクの吐出を行うことができない場合に、補間関数E(X)を補正する。
【0050】
ヘッド位置検出部56は、エンコーダセンサ20の検出結果から、印刷時に、キャリッジ11により走査方向に往復移動されたインクジェットヘッド12の位置を検出する。ディレイ時間決定部57は、補間関数E(X)から算出される暫定ディレイ時間、及び、補正部55による補正後のディレイ時間と、ヘッド位置検出部56によって検出されたインクジェットヘッド12の位置とに基づいて、最終的なディレイ時間を決定する。
【0051】
次に、インクジェットプリンタ1において、ノズル10からインクの吐出タイミング(ディレイ時間)を決定し、印刷を行う手順について説明する。ノズル10からのインクの吐出タイミングを決定し、印刷を行うためには、以下に説明するように、インクジェットプリンタ1の製造段階等、ユーザがインクジェットプリンタ1を使用して印刷を行う前に、予め、
図6に示すように、ステップS101〜S107(以下、単にS101などとする)の処理を実行させておく。そして、ユーザがインクジェットプリンタ1を使用して印刷を行うときに、
図11に示すように、S201〜S204の処理を実行させる。
【0052】
S101では、インクジェットプリンタ1において、記録用紙Pに、
図7に示すような、複数の着弾ズレ検出パターンQからなるパッチJを印刷する(パターン印刷ステップ)。より詳細に説明すると、例えば、キャリッジ11を走査方向の一方向に移動させつつ、ノズル10からインクを吐出させることにより、それぞれが紙送り方向に平行に延び、走査方向に配列された複数の直線L1を印刷させる。その後、キャリッジ11を走査方向の他方向に移動させつつ、ノズル10からインクを吐出させることにより、それぞれが紙送り方向に対して傾いており、複数の直線L1とそれぞれ重なる複数の直線L2を印刷させる。これにより、
図7に示すように、互いに交差する直線L1と直線L2の組によってそれぞれ形成された着弾ズレ検出パターンQが、走査方向に沿って複数配列されたパッチJが印刷される。なお、このときには、例えば、記録用紙Pが波形状となっておらず平坦であるとした場合の設計上の吐出タイミングでノズル10からインクを吐出させる。
【0053】
S102では、S101で印刷した複数の着弾ズレ検出パターンQを、インクジェットプリンタ1とは別に設けられた専用のスキャナ61に読み取らせ、スキャナ61に接続されたPC62において、読み取られた着弾ズレ検出パターンQから、複数の山頂部分Pt及び谷底部分Pbにおける交点ズレ量を取得する。なお、着弾ズレ検出パターンQの読み取りを複合機1の読取部5で行い、読み取り結果からの交点ズレ量の取得を制御装置50で行ってもよい。
【0054】
より詳細に説明すると、例えば、
図7に示すような着弾ズレ検出パターンQを印刷した場合、直線L1、L2は、キャリッジ11を走査方向の右側に移動させるときと左側に移動させるときの着弾位置にズレがあると、走査方向に互いにずれて印刷される。そのため、直線L1と直線L2とは、走査方向に関する着弾位置ズレ量に応じて、直線L1と直線L2との交点(以下、パターン交点とする)が、紙送り方向にずれる。また、読取部5において着弾ズレ検出パターンQを読み取った場合、パターン交点において記録用紙Pの地の部分(白色)に対する直線L1及びL2(黒色)の占める面積の割合が小さくなるので、他の部分よりも検出される輝度が高くなる。したがって、着弾ズレ検出パターンQを読み取り、最も輝度が高くなる部分の紙送り方向の位置を取得することにより、直線L1と直線L2とが重なっている紙送り方向の位置を検出することができる。
【0055】
ここで、直線L1と直線L2との紙送り方向での重なる位置の変動は走査方向での重なる位置の変動と比例する。具体的には、直線L1と直線L2の相対的な傾きが、紙送り方向:走査方向で10:1であれば、直線L1と直線L2の紙送り方向での重なる位置の変動は走査方向での重なる位置の変動を10倍に増幅した情報となっている。一般に、直線L1と直線L2のなす角度がθであるとき、パターン交点の紙送り方向へのズレ量は、走査方向へのズレ量を1/tanθ倍に増幅した情報となる。すなわち、パターン交点の紙送り方向へのズレ量を検出することで、双方向印刷における主走査方向への着弾位置ズレ量の情報を取得することができる。
【0056】
そこで、本実施の形態では、複数の着弾ズレ検出パターンQのうち、記録用紙Pの山頂部分Pt及び谷底部分Pb(
図7(a)の一点鎖線で囲んだ部分、以下、これらをまとめて検査部分Peとすることがある)に印刷された着弾ズレ検出パターンQを読み取ることにより、各山頂部分Pt及び各谷底部分Pbにおける交点ズレ量を取得する。
【0057】
また、S102では、上述のとおり、記録用紙Pの山頂部分Pt及び谷底部分Pbに印刷された着弾ズレ検出パターンQのみを読み取るため、S101では、少なくとも山頂部分Pt及び谷底部分Pbに着弾ズレ検出パターンQを印刷すればよい。
【0058】
S103では、
図5に破線で示すように、PC62とズレ量記憶部53とを通信可能に接続し、S102において取得された、各山頂部分Pt及び谷底部分Pbにおける交点ズレ量を、ズレ量記憶部53に書き込んで記憶させる。なお、PC62とズレ量記憶部53との接続は、S103よりも前であれば、どのタイミングで行ってもよい。
【0059】
S104では、暫定補間関数決定部54において、S103でズレ量記憶部53に記憶された各山頂部分Pt及び谷底部分Pbにおける交点ズレ量から、各吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間を算出するための補間関数E(X)を決定する。
【0060】
より詳細に説明すると、上述したように記録用紙Pが走査方向に沿って波形状となっている場合、この波形状を横軸に走査方向の位置X、縦軸に用紙の上下方向での高さZを用いて図示すると、
図8(a)に示すようになる。ここで、N番目の検査部分Peの走査方向に沿った位置をX
Nとして表す。S
NはX=X
NからX=X
N+1までの区間を表す。
図8(a)では、記録用紙Pの走査方向全域にわたるZの値をXの関数として表したものを、Z=H(X)と表現している。ここで、Z
0は高さZの平均値である。
【0061】
図8(b)は、同じく横軸に走査方向の位置X、縦軸には走査方向の着弾位置ズレW=F(X)を用いて図示したものである。Z=Z
0のときの走査方向の着弾位置ズレをW
0とすると、(インク滴移動距離)=(インク滴速度)×(インク飛翔時間)であって、同じインク飛翔時間の間に上下方向と走査方向にそれぞれインク滴が移動するから(上下方向インク滴移動距離)/(上下方向インク滴速度)=(走査方向インク滴移動距離)/(走査方向インク滴速度)、すなわち(Z−Z
0)/U=(W−W
0)/Vとなる。ただし、Vは走査方向のキャリッジ速度、Uは上下方向のインクの飛翔速度とする。Z
0、W
0、U、Vは、Xの値によって変化しない定数であるから、Z=H(X)とW=F(X)は本質的に相似なグラフである。また、
図8の(c)は、同じく横軸に走査方向の位置X、縦軸には紙送り方向のパターン交点位置ズレY=G(X)をとって図示したものである。前述のように、Y=W/tanθであるから、Y=G(X)もZ=H(X)、W=F(X)と相似なグラフとなる。ここで、Y
0は、Z=Z
0のときのYの値である。
【0062】
したがって、
図8(b)、(c)に示すように、走査方向への着弾位置ズレ量Wの変化、及び、走査方向の位置Xに応じた交点ズレ量Yの変化も、記録用紙Pの高さZの変化と、縦軸の伸縮と平行移動のみで重ね合わせることができるようなグラフで表すことができる。すなわち、交点ズレ量Yの補間関数G(X)のグラフは、縦軸の伸縮と平行移動により、高さZの補間関数H(X)、及び、着弾位置ズレ量Wの補間関数F(X)のグラフとなる。
【0063】
さらに、暫定ディレイ時間Rの関数をE(X)とすると、吐出タイミングの変化量と着弾位置ズレからF(X)−W
0=V・(E(X)−R
0)が成り立つ。さらに、[H(X)−Z
0]:[F(X)−W
0]=U:V、及び、[F(X)−W
0]:[G(X)−Y
0]=sinθ:cosθの関係も成り立つ。そして、これらの関係から、補間関数E(X)は以下のようになり、補間関数G(X)から、補間関数E(X)を決定することができることがわかる。
【0065】
図8(d)は、R=E(X)の関係を示すグラフである。そして、このグラフも、縦軸の伸縮と平行移動により、
図8(a)〜(c)のグラフと重ねることができる。ここで、R
0は、Z=Z
0のときのRの値である。本実施の形態では、インクジェットヘッド12が所定の位置に達したときにエンコーダセンサ20からの信号を受けてノズル10からインクを吐出するため、基準吐出タイミングより早いタイミングでインクを吐出するのは困難である。したがって、補間関数E(X)におけるインク吐出面12aと記録用紙Pのギャップが平均のギャップであるとしたときのベースディレイ時間R
0の値はつねにR≧0となるような値が選択される。
【0066】
また、記録用紙Pを波形状とした場合、山頂部分Ptに着弾させるインクの吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間は、ほぼ、ベースディレイ時間R
0よりもある一定時間長い時間となり、谷底部分Pbに着弾させるインクの吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間は、ほぼ、ベースディレイ時間R
0よりも上記一定時間だけ短い時間となる。一方、暫定ディレイ時間は、山頂部分Ptに着弾させるインクの吐出タイミングにおいて極大値を取り、谷底部分Pbに着弾させるインクの吐出タイミングにおいて極小値を取る。したがって、暫定ディレイ時間は、上記2つの暫定ディレイ時間の間で変化することとなる。
【0067】
そこで、本実施の形態では、ベースディレイ時間R
0を、後述する関係式を満たすか否かとは関係なく決まるディレイ時間の設計上の上限値である上限ディレイ時間R
MAXの約半分の時間R
MAX/2となるように設定する。これにより、ギャップの変動に応じて暫定ディレイ時間を変更するときの、暫定ディレイ時間の変更可能範囲を最大限大きくすることができ、その結果、波形状の振幅を大きくすることができる。なお、この場合、最もディレイ時間の短くなる谷底部分Pbに着弾させるインクの吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間がほぼ0となり、常にR≧0の関係を満たす。
【0068】
また、上述したようにして決定される補間関数E(X)は、記録用紙PがパッチJを印刷した位置にあるときの、インク吐出面12aと被記録用紙Pとのギャップに対応したものとなっている。しかしながら、例えば、記録用紙Pの先端部に印刷されるとき(コルゲートプレート15とリブ16によってのみ波形状にされる位置にあるとき)と、記録用紙Pの中央部に印刷されるとき(コルゲートプレート15、リブ16及びコルゲート拍車18、19によって波形状にされる位置にあるとき)と、記録用紙Pの後端部に印刷されるとき(リブ16とコルゲート拍車18、19によってのみ波形状にされる位置にあるとき)とで、インク吐出面12aと記録用紙Pとの平均のギャップや、波形状の振幅が変わってくる。
図9は、これら3つの状態での平均のギャップG1〜G3、及び、波形状の振幅A1〜A3を順に示したものとなっており、A3>A2>A1、G3>G2>G1となっている。
【0069】
そこで、本実施の形態では、補間関数E(X)を、記録用紙Pの搬送方向の位置に応じて、上下方向に平行移動及び伸縮させることによって変換し、変換後の関数を、暫定ディレイ時間の補間関数として使用する。さらに、このとき、記録用紙Pの位置毎に、記録用紙Pの紙送り方向の位置毎にベースディレイ時間(変換後のR
0に対応する時間)を、上限ディレイ時間R
MAXの約半分となるように、補間関数E(X)を上下方向に平行移動する。これにより、記録用紙Pの位置によらず、ギャップの変動に応じて暫定ディレイ時間を変更するときの、暫定ディレイ時間の変更可能範囲を最大限大きくすることができる。
【0070】
このように、これら4つの情報は関連する定数が既知の場合には本質的に等価であり、ズレ量記憶部53に4つの情報のいずれを記憶していても、また4つの情報のいずれを使って補間計算を行っても適切な変換により着弾補正を行うことが可能である。ここでは交点ズレ量Yを記憶しているものとして説明している。
【0071】
補間関数G(X)は、例えば、検査部分Peによって区切られる区間毎に個別に、3次関数などの座標Xの多項式や、座標Xの正弦関数などとして決定する。
図8では、補間関数G(X)のうち、左からN番目の検査部分PeとN+1番目の検査部分Peとの間の部分の補間関数をG
N(X)で示している。そして、決定された交点ズレ量の補間関数G(X)から、暫定ディレイ時間の補間関数E(X)を決定する。ここで、
図8(d)の補間関数E
N(X)は、補間関数G
N(X)に対応する関数である。
【0072】
S105では、S104で決定された補間関数E(X)から算出される暫定ディレイ時間が、全ての吐出タイミングにおいて、A+(R
M−R
M−1)−T>0の関係が成立するか否かを判定する。ここで、R
Mは、ある吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間、R
M−1はその直前の吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間、Aは基準吐出タイミングの間隔、Tは、あるノズル10からインクを吐出して1つのドットの形成するときにインクジェットヘッド12において実行される動作に必要な所定時間である。具体的には、例えば、ノズル10からインクを吐出させるためのインクジェットヘッド12の駆動や、インクの吐出後の、インクジェットヘッド12内のインクの圧力変動を抑えるためのインクジェットヘッド12の駆動などにかかる時間を合計したものである。
【0073】
そして、全ての吐出タイミングにおいて、上記関係を満たす場合には(S104:YES)、S103で決定した補間関数E(X)をディレイ時間の補間関数として決定する(S106)。一方、いずれかの吐出タイミングにおいて、A+(R
M−R
M−1)−T≦0となってしまう場合には(S104:NO)、後述するように、補間関数E(X)を補正し(S105)、補正後の補間関数E’(X)をディレイ時間の補間関数として決定する(S106)。
【0074】
ここで、A+(R
M−R
M−1)−T>0となる場合、及び、A+(R
M−R
M−1)−T≦0となる場合について説明する。
図10(a)〜(c)は、それぞれ、ある吐出タイミングとその直前の吐出タイミングにおける、基準吐出タイミング(図中に円で示すタイミング)と、暫定ディレイ時間だけ遅らせたときの吐出タイミング(図中に四角形で示すタイミング)との関係を示す図である。
【0075】
A+(R
M−R
M−1)−T>0となる場合には、
図10(a)に示すように、ある吐出タイミングと直前の吐出タイミングとの時間間隔Δ(=A+(R
M−R
M−1))が上述の所定時間Tよりも長くなる。そのため、当該吐出タイミングは、直前の吐出タイミングの後、さらに所定時間Tが経過した後のタイミングとなる。したがって、ノズル10から連続してインクを吐出させて印刷を行う場合に、正常にインクを吐出させることができる。
【0076】
一方、A+(R
M−R
M−1)−T≦0となる場合には、時間間隔Δが上述の所定時間T以下となる。そのため、
図10(b)に示すように、当該吐出タイミングは、直前の吐出タイミングの後、さらに所定時間Tが経過する前のタイミングとなってしまう。あるいは、
図10(c)に示すように、当該吐出タイミングが、直前の吐出タイミングよりも前のタイミングとなってしまう。そして、これらの場合には、正常にインクを吐出させることができなくなってしまう。
【0077】
S105における補間関数E(X)の補正について説明する。ある吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間R
Mがその直前の暫定ディレイ時間R
M−1に比べて短い場合に、両者の差(R
M−R
M−1)が大きな負の値になり、A+(R
M−R
M−1)−T≦0となる。例えば、キャリッジ11の移動方向を右側とすると、区間S
N+1のように、キャリッジ11の移動方向の上流側の端に山頂部分Ptが位置し、下流側の端に谷底部分Pbが位置する区間Sにおける走査方向の中央位置(区間S
N+1の場合には(X
N+X
N+1)/2)において、暫定ディレイ時間の変化(R
M−R
M−1)が最も大きな負の値になる。
【0078】
そこで、本実施の形態では、S105において、例えば、補間関数E(X)から、各吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間を最初の吐出タイミングから順に算出していく。そして、ある吐出タイミングにおいてA+(R
M−R
M−1)−T≦0となったときに、当該吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間R
Mを所定の置換ディレイ時間K
Mに置き換える。ここで、置換ディレイ時間K
Mは、A+(K
M−R
M−1)−T=B(Bは、B>0の定数)となるような時間である。これにより、暫定ディレイ時間の差(R
M−R
M−1)がある上限値(=B−A+T)を超える場合に、R
MがK
Mに置き換えられて、補正後のディレイ時間の差(D
M−D
M−1)が、上記上限値となり、上記上限値を超えることがない。
【0079】
そして、上記補正が行われることにより、補正後の補間関数E’(X)は、補間関数E(X)においてA+(R
M−R
M−1)−T≦0となる吐出タイミングに対応する位置においてK
Mをとり、それ以外の位置において補間関数E(X)と同じ値を取る関数となる。本実施の形態の場合、例えば、X座標が(X
N+X
N+1)/2となる位置及びその周辺の位置(
図8(d)の一点鎖線で囲んだ領域に対応する位置)に着弾させるインク吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間が置換ディレイ時間K
Mに置き換えられる。
【0080】
そして、このようにすれば、ディレイ時間は、全ての吐出タイミングにおいて、A+(D
M−D
M−1)−T>0の関係を満たす。ここで、D
Mは、ある吐出タイミングにおけるディレイ時間、D
M−1はその直前の吐出タイミングにおけるディレイ時間である。
【0081】
S201では、キャリッジ11の移動中に、ヘッド位置検出部56により、キャリッジ11とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド12の走査方向の位置を検出する。S202では、記録用紙Pの各部分におけるディレイ時間を算出する。具体的には、キャリッジ11によるインクジェットヘッド12の移動中に、S201において検出されたインクジェットヘッド12の位置(補間関数E(X)、E’(X)のX座標に対応する)と、検出された位置に対応する補間関数E(X)、E’(X)のいずれかとからディレイ時間Dを逐次算出する。
【0082】
S203では、基準吐出タイミングから、S202において算出されたディレイ時間だけ遅らせたタイミングでノズル10からインクを吐出させる。そして、印刷が完了するまで(S204:NO)、上記S201〜S203の動作を繰り返し、印刷が完了したときに(S204:YES)、動作を終了する。このとき、全ての吐出タイミングにおいてA+(D
M−D
M−1)−T>0の関係を満たすため、上述したように、ノズル10から連続してインクを吐出させて印刷を行う場合に、正常にインクを吐出することができる。
【0083】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成については、適宜その説明を省略する。
【0084】
上述の実施の形態では、A+(R
M−R
M−1)−T≦0となる吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間R
Mを所定の置換ディレイ時間K
Mに置き換えることによって、補間関数E(X)を補正したが、これには限られない。
【0085】
一変形例(変形例1)では、最も左側のリブ16の右側、左から2、4、5、7番目のリブ16の左右両側、最も右側リブ16の左側に、それぞれ、リブ16よりも高さの低い補助リブ71が形成されている。各補助リブ71の高さは等しい。そして、走査方向に関して外側のコルゲートプレート15に近接して配置されている補助リブ71ほど、対応するリブ16との走査方向における間隔が大きくなっている(
図12でI1>I2>I3>I4となっている)。
【0086】
ここで、記録用紙Pを波形状とするためには、波形状とされる前の記録用紙Pを走査方向両側から引き寄せて押し下げることになるが、このとき、記録用紙Pの走査方向の両端から遠い、走査方向の中央部分ほど記録用紙Pを押し下げにくい。そのため、このままだと、記録用紙Pの走査方向の中央部分が正常に波形状とならない虞がある。
【0087】
そこで、変形例1では、外側の補助リブ71ほど対応するリブ16との走査方向における間隔を大きくすることで、記録用紙Pを走査方向の中央部から遠い部分ほど押し下げにくくしている。これにより、記録用紙Pの押し下げやすさが均一になり、記録用紙Pを確実に波形状にすることができる。
【0088】
しかしながら、この場合には、外側の補助リブ71ほど、コルゲートプレート15に近い位置で記録用紙Pを下方から支持するため、記録用紙Pは、走査方向における外側の部分ほど、下側に撓みにくい。そのため、谷底部分Pbの高さが、山頂部分Ptの高さに比べて不安定になる。
【0089】
そこで、変形例1では、補間関数E(X)から算出される暫定ディレイ時間が、例えば、区間S
N−1に対応するいずれか吐出タイミングにおいて、A+(R
M−R
M−1)−T≦0となる場合に、
図13に太線で示すように、区間S
N−1における補間関数E
M−1(X)を、全体として、X座標がX
M−1の位置(山頂部分Pt)に着弾させるインクの吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間(暫定ディレイ時間の極大値)に近づけるように所定割合で増加させて、補間関数E'
M−1(X)に補正する。また、これにより、X=X
Nにおいて、補間関数E'
M−1(X)とE
M−1(X)との値にずれが生じるため、このずれをなくして、補間関数E'
M−1(X)とE
M−1(X)との境界部分におけるディレイ時間の変化を滑らかにするために、区間S
Nにおける補間関数E
N(X)も、全体として、座標XがX
N+1の位置に着弾させるインクの吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間(暫定ディレイ時間の極大値)に近づけるように所定割合で増加させて、補間関数E'
N(X)に補正する。
【0090】
これにより、区間S
N−1に対応する暫定ディレイ時間が、全体として、その変動幅が小さくなるように補正され、各吐出タイミングにおけるディレイ時間の差(D
M−D
M−1)の絶対値が小さくなり、大きな負の値となることがない。
【0091】
ここで、A+(R
M−R
M−1)−Tの値が最も小さくなるのは、X=(X
N−1+X
N)/2となるときであり、所定割合とは、この位置に着弾させるインク吐出タイミングにおけるディレイ時間が、A+(D
M−D
M−1)−T>0となるような割合である。したがって、全ての吐出タイミングにおいて、A+(D
M−D
M−1)−T>0の関係を満たすように、暫定ディレイ時間を補正することができる。
【0092】
また、変形例1では、山頂部分Ptの高さが谷底部分Pbの高さに比べて安定しているため、暫定ディレイ時間を、全体として、山頂部分Ptに着弾させるインクの吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間を近づけるように増加させたが、これには限られない。
【0093】
例えば、山頂部分Pt及び谷底部分Pbの高さが同程度安定しているのであれば、
図13(b)に示すように、暫定ディレイ時間を、谷底部分Pbに着弾させるインクの吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間に近づけるように低減させてもよい。ただし、この場合には、補間関数E
N(X)に代わって補間関数E
N−2(X)を合わせて補正する。
【0094】
あるいは、暫定ディレイ時間を、
図13(c)に示すように、ギャップが平均のギャップとなる位置に着弾させるインクの吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間に近づけるように、山部分に対応する暫定ディレイ時間を低減させ、谷部分に対応する暫定ディレイ時間を増加させてもよい。また、この場合には、補間関数E
N(X)と補間関数E
N−2(X)を合わせて補正する。
【0095】
そして、これらの場合でも、区間S
N−1に着弾させるインクの吐出タイミングにおける暫定ディレイ時間が、全体として、その変動幅が小さくなるように補正され、各吐出タイミングにおけるディレイ時間の差(D
M−D
M−1)の絶対値が小さくなる。
【0096】
また、上述の実施の形態では、補間関数E(X)を、記録用紙Pの紙送り方向の位置に応じて変換する際に、ベースディレイ時間が、上限ディレイ時間D
MAXの約半分となるように関数の変換を行ったが、ベースディレイ時間は、R
0に固定したままでもよい。
【0097】
また、補間関数E(X)の補正の方法は、以上に説明したものには限られず、全ての吐出タイミングにおいて、A+(D
M−D
M−1)−T>0を満たすようにする別の方法によって補間関数E(X)を補正してもよい。
【0098】
また、以上の例では、吐出タイミングを、基準吐出タイミングから遅らせることによって吐出タイミングの調整を行ったが、これには限られない。エンコーダセンサ20の検出結果に応じて、吐出タイミングを決定する上述の実施の形態とは異なり、予め吐出タイミングを全て決定してから印刷を開始させるような場合には、吐出タイミングを、基準吐出タイミングから早めることによって吐出タイミングの調整を行ってもよい。この場合には、上述のD
M、D
M−1、R
M、R
M−1が、基準吐出タイミングから遅らせる場合に正の値となり、早める場合に負の値となる。
【0099】
また、以上の例では、吐出タイミングを、基準吐出タイミングからどれだけずらすかを決定することによって、吐出タイミングを決定していたが、
本発明の参考例においては、これには限られず、吐出タイミングそのものを直接決定してもよい。この場合でも、ノズル10から連続してインクを吐出させる際のインクの吐出タイミングの間隔が、1つのドットを形成するときにインクジェットヘッド12が行う動作に必要な所定時間よりも長くなるように、吐出タイミングを決定すれば、ノズル10から正常にインクを吐出させることができる。
【0100】
また、上述の実施の形態では、着弾ズレ検出パターンQを読み取ることによって取得される交点ズレ量に基づいてディレイ時間を決定したが、これには限られない。例えば、走査方向への着弾位置のズレ量、インク吐出面12aと記録用紙Pとのギャップなど、別の情報に基づいてディレイ時間を決定してもよい。
【0101】
また、以上の例では、記録用紙Pに所定の波形状を生じさせた場合の暫定ディレイ時間の補間関数E(X)を決定し、A+(R
M−R
M−1)−T≦0となる吐出タイミングがある場合に補間関数E(X)を補正することによって、ディレイ時間の補間関数E'(X)を決定したが、これには限られない。補間関数E(X)を決定するのと同様にして決定される補間関数を最終的なディレイ時間の補間関数とし、この補間関数が、全ての吐出タイミングにおいて、A+(D
M−D
M−1)−T>0の関係を満たす関数として決定されるように、コルゲートプレート15、リブ16、コルゲート拍車18、19の高さなどを調整するなどしてもよい。