(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019704
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】光送受信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 10/079 20130101AFI20161020BHJP
H04L 7/00 20060101ALI20161020BHJP
H04B 10/69 20130101ALI20161020BHJP
【FI】
H04B9/00 179
H04L7/00
H04B9/00 690
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-98357(P2012-98357)
(22)【出願日】2012年4月24日
(65)【公開番号】特開2013-229643(P2013-229643A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153110
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100099069
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】大森 弘貴
【審査官】
岡 裕之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−136195(JP,A)
【文献】
特許第3950710(JP,B2)
【文献】
特開2006−203486(JP,A)
【文献】
特開2012−015736(JP,A)
【文献】
特開2000−277842(JP,A)
【文献】
特開2005−051189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/079
H04B 10/69
H04L 7/00
IEEE Xplore
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ信号をN個のデータ信号に分離し、各々を波長の異なるN個の光信号で伝送する光送信ユニットと光受信ユニットを備えた光送受信装置であって、
前記光受信ユニットは、受信した光信号を電気信号に変換し、前記電気信号に変換されたデータ信号を送出し、並びに、光入力パワーに比例したモニタ電圧を出力するN個の光受信器と、
前記N個の光受信器からの前記データ信号を入力するN個の入力ポート、及び、入力されたN個のデータ信号の1つのデータ信号からクロック信号を抽出するPLL回路を内蔵するクロックデータ抽出器、並びに、クロック検出信号を送出する信号出力部、を有する多チャネルクロックデータリカバリ装置と、
前記N個の光受信器からのモニタ電圧を入力するN個の入力ポート、及び、前記多チャネルクロックデータリカバリ装置から送出されたクロック検出信号を入力する入力ポート、並びに、データ信号断の異常を上位監視装置に通知する通信部、を有する演算処理装置と、を備え、
前記演算処理装置は、前記N個の光受信器からの夫々のモニタ電圧を記憶し、一定時間前に記憶した夫々のモニタ電圧との差分を演算する第1の演算部と、
前記第1の演算部により算出された夫々の差分値を、前記N個の光受信器の2つの光受信器間で組み合わせて前記差分値の差分を演算する第2の演算部と、
前記第2の演算部により算出された差分値を、予め設定した第2の設定値と比較する第2の比較部を備え、
前記第2の比較部による比較の結果、前記第2の演算部により算出された差分値が、前記第2の設定値より大きい場合は、前記N個のデータ信号の何れかが断であると判定する判定部を有することを特徴とする光送受信装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記第2の比較部による比較の結果、前記第2の演算部により演算された差分値が、前記設定値より小さい場合であっても、前記多チャネルクロックデータリカバリ装置からクロック検出無しの入力があった場合は、前記N個のデータ信号の全てが断であると判定することを特徴とする請求項1に記載の光送受信装置。
【請求項3】
前記第1の演算部により算出された夫々の差分値を、予め設定した第1の設定値と比較する第1の比較部を備え、
前記第1の比較部による比較の結果、前記第1の演算部により算出された差分値が、前記第1の設定値より小さい場合は、前記第2の演算部による演算を行わないことを特徴とする請求項1または2に記載の光送受信装置。
【請求項4】
前記光受信ユニットは、入力された光信号を増幅する半導体光増幅器と、該半導体光増幅器を駆動制御するバイアス電流源および温度コントローラと、該バイアス電流源および温度コントローラを制御する制御器と、前記半導体光増幅器の光出力を波長の異なるN個の光信号に分波する分波器と、を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光送受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ信号を複数のデータ信号に分離し、各々を波長の異なる複数の光信号で伝送する光送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワーク上を流れる情報量の増加と通信速度の高速化が進んでいる。これに伴い、光伝送機器に搭載される光トランシーバ等に用いられる光送受信装置も高速化が進み、現在では40Gbpsや100Gbpsの伝送速度が要求されている。かかる高速の伝送速度は、単一の光デバイスでは追従することが難しく、波長多重による通信方法が用いられる。
【0003】
100ギガビット光トランシーバで、送信側は、例えば、データ信号を25ギガビットの4つのデータ信号に分離し、4つの光送信器で電気光変換された波長の異なる1300nm帯の光信号にして合波した後、1本の光ファイバにより100ギガビット光信号として送信する。受信側では、1本の光ファイバに波長多重された100ギガビットの光信号を受信した後、これを分波し、相異なる4つの光受信器で25ギガビットの電気信号で再生することで、100ギガビットのシングルモード光伝送を実現している。
【0004】
100ギガビットのシングルモード光伝送においては、IEE
EやITU規格にて波長分散による波形歪み抑制の観点から1300nm帯の光波長を有するレーザを用いることと定められている。また、波長分散および伝送レートの観点から電界吸収型の外部変調器付きレーザが一般に広く採用されている。
しかし、この波長帯での光ファイバの伝送損失が大きいことから、10km以上の距離の光伝送では、光受信器側での入力光レベルが受信感度を下回ってしまう。このため、光伝送路中あるいは光伝送路端にて半導体光増幅器を用いて、光強度を増幅することが一般的である(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)は、入力光信号強度に応じて、その動作点(バイアス電流、SOA温度)を変えることで増幅率を変化させ、出力光信号強度が一定になるように制御するのが一般的である(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、この方法は、SOAの入力側で光分岐を必要とするため、SOAの入力光信号強度を弱め、この結果、SOAへの出力光信号の光SN比(OSNR)を劣化させる。このため、モニタアルゴリズムを工夫することにより、出力光信号強度をモニタするのみでSOAの動作点を最適化して運用する方法が提案されている。
【0006】
上記の特許文献2には、SOAの後段にある複数の光受信器へのそれぞれの光入力パワーが所定の上限値と下限値の範囲にある場合は、SOAの利得を変化させないような制御を行うことが開示されている。そして、上限値を超えた場合には、SOAの利得を下げるようにバイアス電流を制御し、下限値を超えた場合は、SOAの利得を上げるようにバイアス電流を制御する。また、別途、最大上限値と最小下限値を設定して、それらを上回る又は下回ったときには、異常としてSOAのバイアス電流を絞るという方法が開示されている。
【0007】
また、上記の特許文献1では、SOAの後段にある複数の光受信器のうちの1つをモニタ対象に選定し、このモニタ対象の光入力レベルが所定の値になるようにSOAのバイアス電流を制御する方法が開示されている。ここでも、バイアス電流値に上限と下限を設定しているが、SOAの入力側に光分岐器を挿入して入力光をモニタする受光素子(PD)が配され、この受光量を元にモニタ対象が選定されている。
【0008】
上記のように、SOAで光伝送路を伝搬してきた光信号が増幅され、その後分波された光信号は、複数の光受信器で光電変換され、クロック信号とデータ信号を再生して、複数チャネルのギガビット電気信号に(例えば、4チャネルの25ギガビット電気信号)に再構成(再信号配置)される。なお、多連のクロックデータリカバリ(CDR)では、消費電力軽減等の観点から、特定の1チャネルの信号からクロックを抽出し、他のチャネルのCDRではクロックの抽出を行わず、前記の抽出したクロックの位相を調整してデータ再生を行う
技術が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−172202号公報
【特許文献2】特開2010−136195号公報
【特許文献3】特開2008−166719号公報
【特許文献4】特開2001−57548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
100ギガビットのシングルモード光伝送に用いられる光トランシーバでは、4つの25ギガビット電気信号に再編成され、この各25ギガビット電気信号は、電気光変換されて光波長多重信号として送信される。このとき、送信器側(電気光電変換部等)の故障により、ある1波長のデータ信号が断となる障害が発生することがある。
電界吸収型レーザ(EA−DFB)を用いた光トランシーバで、上記のように1波長の信号が断となった場合、受信側の光受信器の光出力パワーは常に0レベルに相当するものとなる。すなわち、IEEEやITUで定められている40km伝送用の消光比規格における最小値8dBの場合、上記の障害発生で−5.6dBの当該波長における光出力パワーが低下する。
【0011】
例えば、特許文献2に開示の構成で、上記のような障害が発生すると、障害発生チャネルにおける光受信器の光入力レベルが所定の下限値を下回っても、予め規定されている最小下限値を逸脱しない限り、SOAのバイアス電流を調整し、後段の光受信器にとって好適となるように、光入力パワーを調整し続けることになる。すなわち、光受信器への光入力レベルをモニタするだけでは、上記のような1波長の信号が断となる障害を検出することは困難である。
【0012】
一般には、このような信号が断、すなわちデータ信号の断を検出するには、クロックデータ抽出回路におけるPLL(Phase locked loop)回路のクロック検出信号をモニタするか、または光受信器の出力の交流振幅をモニタすることで検出することができる。しかし、いずれの場合においても、100ギガビットのシングルモード光伝送に用いられる光トランシーバのように、波長の異なる複数の光信号を用いる光送受信装置では、複数の波長数分のモニタを必要とする。このため、光トランシーバの小型化を妨げ、コスト増となる問題がある。
【0013】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、複数の光受信器の光入力パワーをモニタして半導体光増幅器のバイアス電流を制御すると共に、少ない回路構成でデータ信号の断の検出を可能とした光送受信装置の提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による光送受信装置は、データ信号をN個のデータ信号に分離し、各々を波長の異なるN個の光信号で伝送する光送信ユニットと光受信ユニットを備えた光送受信装置であって、光受信ユニットは、受信した光信号を電気信号に変換し、電気信号に変換されたデータ信号を送出し、並びに、光入力パワーに比例したモニタ電圧を出力するN個の光受信器を備える。
そして、上記のN個の光受信器からのデータ信号を入力するN個の入力ポート、及び、入力されたN個のデータ信号の1つのデータ信号からクロック信号を抽出するPLL回路を内蔵するクロックデータ抽出器、並びに、クロック検出信号を送出する信号出力部、を有する多チャネルクロックデータリカバリ装置と、上記のN個の光受信器からのモニタ電圧を入力するN個の入力ポート、及び、多チャネルクロックデータリカバリ装置から送出されたクロック信号の検出結果を入力する入力ポート、並びに、データ信号断の異常を上位監視装置に通知する通信部と、を有する演算処理装置と、を備えている。
さらに、上記の演算処理装置は、N個の光受信器からの夫々のモニタ電圧を記憶し、一定時間前に記憶した夫々のモニタ電圧との差分を算出する第1の演算部と、該第1の演算部により算出された夫々の差分値を、N個の光受信器の2つの光受信器間で組み合わせて差分値の差分を演算する第2の演算部と、該第2の演算部により算出された差分値を、予め設定した第2の設定値と比較する第2の比較部を備える。さらに、第2の比較部による比較の結果、第2の演算部により算出された差分値が、第2の設定値より大きい場合は、N個のデータ信号の何れかが断であると判定する判定部を有している。
【0015】
上記の判定部は、第2の比較部による比較の結果、第2の演算部により算出された差分値が、設定値より小さい場合であっても、多チャネルクロックデータリカバリ
装置からクロック検出無しの入力があった場合は、N個のデータ信号の全てが断であると判定する。
【0016】
また、上記の第1の演算部により算出された夫々の差分値を、予め設定した第1の設定値と比較する第1の比較部を備え、該第1の比較部による比較の結果、第1の演算部により算出された差分値が、第1の設定値より小さい場合は、第2の演算部による算出を行なわないようにしてもよい。
なお、上記の光受信ユニットは、入力された光信号を増幅する半導体光増幅器と、該半導体光増幅器を駆動制御するバイアス電流源および温度コントローラと、該バイアス電流源および温度コントローラを制御する制御器と、半導体光増幅器の光出力を波長の異なるN個の光信号に分波する分波器と、を備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数(N個)の光受信器から夫々出力されるモニタ電圧により、半導体光増幅器のバイアス電流を最適化する制御を行うと共に、データ信号の断を検出して異常状態であることを通知することができる。また、データ信号の断を検出するための回路構成を簡略化することができ、光送受信器の小型化を妨げず、コスト増を抑制することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による光送受信装置の光受信ユニットの概略を説明する図である。
【
図2】本発明おける演算処理装置の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1により光送受信装置の概略を説明する。図において、10は光受信ユニット、11は半導体光増幅器(SOA)、12はバイアス電流源、13は温度コントローラ、14はSOA制御器、15は光分波器、16〜16dは光受信器、17は多チャネルクロックデータリカバリ装置(多チャネルCDR装置)、17a〜17dはクロックデータリカバリ回路(CDR回路)、18はクロックデータ抽出器、18a〜18cは遅延回路、19は演算処理装置、20は制御信号線である。
【0020】
本発明による光送受信装置は、高速伝送するデータ信号を複数(N個)のデータ信号に分離して波長多重で光ファイバにより送信し、受信側で半導体光増幅器を用いて光増幅した後、複数(N個)の光受信器で分離された複数(N個)のデータ信号を受信するものを対象とする。
【0021】
なお、本発明の説明を簡潔にするために、光送受信装置として、100ギガビット光トランシーバを想定し、送信側の光送信ユニット(図示省略)は、データ信号を25ギガビットの4つのデータ信号に分離し、これを4つの光送信器で電気光変換された波長の異なる1300nm帯の光信号とし、これを合波して波長多重により1本の光ファイバにより100ギガビットの光信号として送信する例で説明する。
【0022】
受信側の光受信ユニット10は、
図1に示すように、光ファイバで伝送された上記の波長多重された光信号が半導体光増幅器(SOA)11に入力され、伝送損失により低下した信号光の光強度を増幅する。SOA11には、バイアス電流源12が接続され、バイアス電流を変えることにより増幅率(利得)を増減することができる。例えば、SOA11の出力光信号強度が少ない場合は、利得を上げるようにバイアス電流を制御し、出力光信号強度が大きすぎる場合は、利得を下げるようにバイアス電流を制御する。
【0023】
また、SOA11には、SOA素子の温度を一定(例えば、25℃)に制御するための温度コントローラ13が接続される。
なお、バイアス電流源12および温度コントローラ13は、SOA制御器14により駆動制御され、SOA制御器14は、後述する光受信器からのモニタ電圧により制御される。
【0024】
SOA11の出力は光分波器15に入力され、波長の異なる4波に分波される。分波された光信号は、4つの光受信器16a,16b,16c,16d(以下、光受信器16とする)に夫々入力される。光信号の波長として、前述した1300nm帯を用いると、4波の光信号の夫々の平均波長は、例えば、1295nm、1300nm、1304nm、1309nmに設定される。
【0025】
各光受信器16は、入力される光信号を受光して電流信号に変換する光電変換素子(例えば、フォトダイオード)と、電流信号を電圧信号に変換して出力するトランスインピーダンスアンプ(TIA)を備える。そして、各光受信器16は、受信した波長のデータ信号(Sa,Sb,Sc,Sd)を送出すると共に、各光受信器16の光入力パワーに比例したモニタ電圧(Va,Vb,Vc,Vd)を出力する。
【0026】
各光受信器16から送出されたデータ信号(Sa〜Sd)は、多チャネルクロックデータリカバリ装置(多チャネルCDR装置)17の夫々の入力ポートに入力される。多チャネルCDR装置17は、夫々の入力ポートに対応してD−フリップフロップからなるクロックデータリカバリ回路(CDR回路)17a,17b,17c,17dを備える。また、多チャネルCDR装置17は、少なくとも1つのチャネル(例えば、データ信号Sd)のクロックデータを抽出するPLL(Phase Locked Loop)回路を内蔵したクロックデータ抽出回路18を備える。
【0027】
そして、多チャネルCDR装置17では、クロックデータ抽出回路18で抽出されたクロック信号により、CDR回路17dに入力されたデータ信号Sdがデータリカバリされる。クロックデータ抽出回路をもたない他のCDR回路(17a〜17c)に入力されたデータ信号(Sa〜Sc)に対しては、クロックデータ抽出回路18で抽出されたクロック信号CLを用いて、遅延回路18a,18b,18cを介して、データリカバリが行われる。データリカバリされたデータ信号(Ta,Tb,Tc,Td)は、光送受信器としてそのまま出力され
るか、または、後段にさらなる信号処理部等を含んでいれば、それに入力される。
【0028】
また、多チャネルCDR装置17のクロックデータ抽出回路18は、内臓するPLL回路により生成されたクロック検出信号Csを送出する信号出力部を有している。クロック信号が検出されていれば、クロック検出信号CsはHighを送出し、検出されていなければLowを送出する。
【0029】
各光受信器16から出力されたモニタ電圧(Va〜Vd)は、演算処理装置19の夫々の入力ポートに入力される。入力されたモニタ電圧(Va〜Vd)は、制御信号線20により接続されたSOA11の利得を変えるバイアス電流源12のSOA制御器14に送出される。また、演算処理装置19は、多チャネルCDR装置17から送出されたクロック検出信号Csを入力する入力ポートを有すると共に、データ信号断の異常を通知する通信部を備えている。
【0030】
図2は、上記の演算処理装置19の概略を説明する図である。
図2において、21はメモリ、22は第1の演算部、23は第2の演算部、24は第1の比較部、25は第1の設定部、26は第2の比較部、27は第2の設定部、28はクロック検出信号入力部、29は異常判定部、30は通信部を示す。
【0031】
演算処理装置19は、光受信器16から送出されたモニタ電圧(Va〜Vd)を一時的に記憶するメモリ21を備えている。また、メモリ21では、モニタ電圧(Va〜Vd)をサンプリングした時刻(T)と、予め設定した時間間隔ΔTだけ前の時刻(T−ΔT)の値を記憶することができるものとする。このときの夫々のモニタ電圧を、Va(T)〜Vd(T)とVa(T−ΔT)〜Vd(T−ΔT)とする。なお、時間間隔ΔTは、サンプリング間隔に相当するもので、例えば、数十〜数百msec程度である。
【0032】
サンプリングされた上記のモニタ電圧は、第1の演算部22において、時刻(T)での各モニタ電圧Va(T)〜Vd(T)と、時刻(T―ΔT)での各モニタ電圧Va(T−ΔT)〜Vd(T−ΔT)との差分を演算し、その差分値(Vax〜Vdx)を算出する。この差分値は、サンプリング間隔ΔTでのモニタ電圧の変動状態を示し、この値が小さければ、光受信器への光入力パワーの変動が少ないと言える。
【0033】
第1の演算部22で算出された差分値(Vax〜Vdx)は、第2の演算部23で各光受信器間で組み合わせてその差分を演算する。すなわち、VaxとVbxの差分値Vaby、VaxとVcxの差分値Vacy、VaxとVdxの差分値Vady、VbxとVcxの差分値Vbcy、VbxとVdxの差分値Vbdy、VcxとVdxの差分値Vcdy、を算出する。この差分値は、各光受信器間の光入力パワーの変動状態を示し、第2の設定部27で予め設定された第2の設定値(yyy)と第2の比較部26で比較される。
【0034】
この差分値が設定値(yyy)より大きければ、特定の光受信器でデータ信号が断などの異常が生じていると言える。なお、全ての光受信器間での差分を演算することにより、異常を生じている光受信器を特定することもできる。
この異常状態は、異常判定部29で判定され通信部30により、アラーム等による報知や上位監視装置等に通知される。
【0035】
また、演算処理装置19は、クロック検出信号入力部28を備え、多チャネルCDR装置のクロック抽出回路でのクロック信号が検出されたか否かを示すクロック検出信号Csが入力される。このクロック検出信号CsがLow、すなわち、
図1で説明したデータ信号Sdからクロック信号が検出されなかったことから、少なくともデータ信号Sdは断の状態であると言える。しかし、前記の第2の演算部23で算出された差分値(Vaby〜Vcdy)が全て設定値以下であった場合は、全てのデータ信号(Sa〜Sd)が断の状態であると言える。
【0036】
また、全てのデータ信号(Sa〜Sd)が断であるか否かは検出することはできないが、クロック検出信号Csをトリガー
として、以下の演算処理を行うことにより、どのデータ信号(Sa〜Sd)が断であるかを検出することができる。
例えば、データ信号Sdに係る第1の演算部22による差分値Vdxが第1の設定値xxxより大きく、クロック検出信号CsがLowであれば、データ信号Sdが断であると判定することができる。
【0037】
そして、クロック検出信号CsがHighであれば、少なくともデータ信号Sdは断ではない。したがって、データ信号Sdに係る第1の演算部22による差分値Vdxと、他のデータ信号(Sa〜Sc)に係る第1の演算部22による差分値Vax〜Vcx)との第2の演算部23で算出された差分値(Vady〜Vcdy)が、設定値(yyy)より大きければ、他の当該データ信号(Sa〜Sc)が断であると判定することができる。
【0038】
なお、上記の差分値(Vaby〜Vcdy)が全て設定値以下で、且つ、多チャネルCDR装置からのクロック検出信号CsがHigh、すなわち、クロック信号が検出されていれば、データ信号に異常はないとされる。したがって、この状態においては、例えば、特許文献2で開示のようなアルゴリズムで、SOAのバイアス電流源の制御等を行えばよい。
【0039】
また、第1の演算部22で算出された差分値(Vax〜Vdx)を、第1の設定部25で予め設定された第1の設定値(xxx)と第1の比較部24で比較する。この差分値が全て設定値(xxx)より小さければ、各光受信器の受信状態に変化はなく現状を維持すればよいので、その後の第2の演算部23による演算を行う必要がなくなる。したがって、差分値(Vax〜Vdx)が、設定値以下と判定された段階で、第2の演算部23の演算を中止して計算量を軽減するようにしてもよい。
【0040】
また、第1の演算部22で算出された差分値(Vax〜Vdx)が、全て設定値(xxx)より小さい場合は、各光受信器の受信状態に変化はなく、SOAのバイアス電流源の制御も必要がないので、SOA制御器14と演算処理装置19との通信をオフにして、不要な消費電力を削減するようにしてもよい。なお、差分値(Vax〜Vdx)が設定値(xxx)より大きいと判定された時点で、SOA制御器14と演算処理装置19との通信を開始するようにすればよい。
【0041】
上述したように、本発明は、波長多重化された光信号を分波し複数の光受信器で受信する際に、光受信器間の光入力パワーの変動分の時間変化をモニタすることにより、特定の1つの光受信器のデータ信号に対してのみ、クロック信号抽出回路を設けるだけで、他の光受信器のデータ信号のクロックデータデータリカバリと、データ信号断の検出を可能としている。これにより、データ信号断の検出のための回路構成を簡素化することができ、光送受信器の小型化を妨げずコスト増を招くこともない。
【0042】
100ギガビット光トランシーバのように、常に4波長セットで多重化された状態の信号は、例えば、800GHz間隔の1300nm帯に配置されるため、伝送路による影響はどの波長にも正常時にはほぼ等しく与えられると言える。
これは、すなわち、一般の波長多重伝送
のように1波長をAdd/Dropすることや、1波長のみの伝送経路を変えるというようなことはないので、例えば、特定の光受信器の光出力パワーの変化が時間(T)と(T−ΔT)で同じならば、他の光受信器もほぼ同じであると言えることによる。
【0043】
なお、特定のデータ信号の断により、当該光受信器の光入力パワーは6dBほど低下する。この光入力パワーだけを観測するなら、伝送路の損失増加とデータ信号断の異常の区別は困難である。しかし、本発明においては、他の光受信器の光入力パワーにおける変動分と比較し、他の光受信器の光入力パワーにおける変動が小さい場合は、当該光受信器のデータ信号が断であると判断することができる。
【0044】
すなわち、本発明は、波長多重化された光信号を分波し複数の光受信器で受信した際に、通常はSOAの利得制御に用いている各光受信器のモニタ電圧を利用し、光受信器間の光入力パワーの変動分の時間変化をモニタすることにより、回路規模を大きくすることなく、特定のデータ信号の断を把握することを可能としている。
【符号の説明】
【0045】
10…光受信ユニット、11…半導体光増幅器(SOA)、12…バイアス電流源、13…温度コントローラ、14…SOA制御器、15…光分波器、16〜16d…光受信器、17…多チャネルクロックデータリカバリ装置(多チャネルCDR装置)、17a〜17d…クロックデータリカバリ回路(CDR回路)、18…クロックデータ抽出器、18a〜18c…遅延回路、19…演算処理装置、20…制御信号線、21…メモリ、22…第1の演算部、23…第2の演算部、24…第1の比較部、25…第1の設定部、26…第2の比較部、27…第2の設定部、28…クロック検出信号入力部、29…異常判定部、30…通信部。