特許第6019717号(P6019717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019717
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】流体フィルター
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20161020BHJP
   B01D 53/02 20060101ALI20161020BHJP
   H01M 8/04 20160101ALN20161020BHJP
【FI】
   B01D53/04 110
   B01D53/02
   !H01M8/04 N
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-104673(P2012-104673)
(22)【出願日】2012年5月1日
(65)【公開番号】特開2013-230443(P2013-230443A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】武田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】山口 憲幸
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−046820(JP,A)
【文献】 実開昭51−142674(JP,U)
【文献】 実公昭39−032356(JP,Y1)
【文献】 実開平02−112962(JP,U)
【文献】 特開2001−239123(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/060923(WO,A1)
【文献】 特開平04−061982(JP,A)
【文献】 特表2008−515629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02−53/12
B01D 46/00−46/54
B01D 27/00−29/48
B01D 39/00−41/04
C02F 1/28
H01M 8/04− 8/06
A61L 9/00− 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入口及び流出口を有したハウジングと、該ハウジング内に配置されたフィルターエレメントとを有する流体フィルターにおいて、
前記ハウジングは、一端側が閉鎖され、他端側が開放した有底無蓋筒形のハウジング本体と、該ハウジング本体の他端面に着脱可能に装着された蓋体とを備えており、該ハウジング本体の一端側の周面には、流出口を構成する第1の開口が設けられ、前記蓋体には、流入口を構成する第2の開口が設けられており、前記ハウジング本体内の一端側に、第1の開口とフィルターエレメント配置部とを区画するための流体通過性を有した仕切体が設置されており、前記フィルターエレメントは該フィルターエレメント配置部に充填されている共に、前記仕切体は、前記ハウジング本体を横断する目皿部と、該目皿部から前記ハウジング本体の一端側に立設された脚部とを有し、該脚部が目皿部の外周縁に沿って略半周する半円筒形であり、且つ、前記ハウジング本体の内周面には、前記脚部が前記第1の開口と非対面状態となるように該脚部の位置決めを行うための凸部が設けられていることを特徴とする流体フィルター。
【請求項2】
前記フィルターエレメントの上面と前記蓋体との間に、繊維材料からなる緩衝材が介在される請求項1記載の流体フィルター。
【請求項3】
前記流体フィルターは燃料電池用エアフィルターであり、前記フィルターエレメントは、三次元網状骨格構造の多孔質基材と、該基材に保持された活性炭とを有する請求項1又は2記載の流体フィルター。
【請求項4】
前記フィルターエレメントが径方向に圧縮されて前記ハウジング内に充填されている請求項1〜3のいずれか1項記載の流体フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスフィルターとして用いるのに好適な流体フィルターに係り、特に燃料電池用エアフィルターとして用いるのに好適な流体フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池に供給される燃料や空気の流体中に不純物が含まれていると、電極触媒を被毒させるため、燃料電池の起電力が低下し、結果として、発電効率の低下や寿命の低下を引き起こすことが知られている。
【0003】
特許文献1には、燃料電池に供給される空気や燃料中の不純物を除去するフィルターとして、三次元網状骨格構造の多孔質基材と、該多孔質基材に保持された活性炭とからなるフィルターが記載されている。
【0004】
特許文献2には、活性炭等の吸着剤をカートリッジに充填し、このカートリッジをハウジング内に挿填した流体フィルターが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2005/062411
【特許文献2】WO2007/060923
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2のように吸着剤をカートリッジに充填し、このカートリッジをハウジングに挿填した流体フィルターにあっては、エアーがカートリッジ外周面とハウジング内周面との間隙を通ってリークし、処理エアー中の不純物濃度が十分に低下しないおそれがある。
【0007】
本発明は、被処理流体のリークが防止され、高度に浄化された流体を得ることができる流体フィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様の流体フィルターは、流体の流入口及び流出口を有したハウジングと、該ハウジング内に配置されたフィルターエレメントとを有する流体フィルターにおいて、前記ハウジングは、一端側が閉鎖され、他端側が開放した有底無蓋筒形のハウジング本体と、該ハウジング本体の他端面に着脱可能に装着された蓋体とを備えており、該ハウジング本体の一端側の周面には、流出口を構成する第1の開口が設けられ、前記蓋体には、流入口を構成する第2の開口が設けられており、前記ハウジング本体内の一端側に、第1の開口とフィルターエレメント配置部とを区画するための流体通過性を有した仕切体が設置されており、前記フィルターエレメントは該フィルターエレメント配置部に充填されている共に、前記仕切体は、前記ハウジング本体を横断する目皿部と、該目皿部から前記ハウジング本体の一端側に立設された脚部とを有し、該脚部が目皿部の外周縁に沿って略半周する半円筒形であり、且つ、前記ハウジング本体の内周面には、前記脚部が前記第1の開口と非対面状態となるように該脚部の位置決めを行うための凸部が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
第2態様の流体フィルターは、第1態様において、前記フィルターエレメントの上面と前記蓋体との間に、繊維材料からなる緩衝材が介在されることを特徴とするものである。
【0010】
第3態様の流体フィルターは、第1又は第2態様において、前記流体フィルターは燃料電池用エアフィルターであり、前記フィルターエレメントは、三次元網状骨格構造の多孔質基材と、該基材に保持された活性炭とを有することを特徴とするものである。
【0011】
第4態様の流体フィルターは、第1〜第3態様において、前記フィルターエレメントが径方向に圧縮されて前記ハウジング内に充填されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
第1態様の流体フィルターにあっては、フィルターエレメントがハウジング内に直接に充填されており、カートリッジが用いられていないので、カートリッジとハウジングとの間からの流体のリークがなく、高浄化度の処理流体を得ることができる。
【0014】
また、上記流体フィルターにあっては、蓋体を開けてハウジング内にフィルターエレメントを容易に出し入れすることができる。
【0015】
更に、上記流体フィルターによると、仕切体の目皿部とハウジング本体の一端面との間にスペースが存在するので、流体がフィルターエレメントと均等に接触するようになる。
【0016】
また更に、上記流体フィルターによると、仕切体の脚部によって第1の開口が閉鎖されることがなく、流体フィルターの組み立てを容易に行うことが可能である。
【0017】
第3態様の流体フィルターによると、高度に浄化されたエアーを燃料電池に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態に係る流体フィルターの縦断面図である。
図2】実施の形態に係る流体フィルターの分解斜視図である。
図3】蓋体の平面図である。
図4図1のIII−III線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜4を参照して実施の形態に係る流体フィルター1について説明する。なお、図1図3のI−I線に沿う縦断面を示している。また、図2ではフィルターエレメント及び緩衝材の図示が省略されている。以下の説明における「上」、「下」は図1,2における「上」、「下」を表現するものであり、流体フィルターの設置状態を限定するものではない。
【0020】
この流体フィルター1は、ハウジング2と、該ハウジング2内に直接に充填されたフィルターエレメント3とを有する。ハウジング2は、一端側が閉鎖しており、他端側が開放した有底無蓋のほぼ円筒形のハウジング本体4と、該ハウジング本体4の該他端側に着脱可能に装着された蓋体5と、ハウジング本体4内に配置された仕切体6とを有する。
【0021】
ハウジング本体4は、図の下端側が閉鎖しており、上端が開放している。この実施の形態では、ハウジング本体4は下端側が上端側よりもごく僅かに小径となっており、仕切体6を出し入れし易いように構成されている。このハウジング本体4の下部外周面にノズル部7が突設され、該ノズル部7に第1の開口8が設けられている。
【0022】
仕切体6は、図2に明示の通り、目皿部6aと、該目皿部6aの外周縁を約半周する脚部6bとを有する。目皿部6aには、多数の透口6cが設けられている。この目皿部6aの透口6cの形状は後述の蓋体5の第2の開口10の形状と同一である。
【0023】
ハウジング本体4の下部内周面のうち第1の開口8側に複数の凸部9が設けられている。この実施の形態では、凸部9は上下方向に延在する突条であり、目皿部6aよりも下位側に設けられている。凸部9は、第1の開口8の両サイドと、脚部6bの直近とに合計4条設けられているが、これに限定されない。
【0024】
蓋体5は、図3に明示の通り、最外周を周回する大環体5aと、その内側を周回する中環体5bと、該中環体5bの内側を周回する小環体5cと、大環体5aと中環体5bとを連結し、半径方向に延在した橋絡部5dと、中環体5bと小環体5cとを連結し、半径方向に延在した橋絡部5eとを有している。各環体と橋絡部との間が第2の開口10となっている。大環体5aの外周面からは係止凸部11が突設されている。
【0025】
ハウジング本体4の上端部内周面には、この係止凸部11が差し込まれる係止凹部14(図2)が設けられている。また、ハウジング本体4の上端部内周面には、この係止凹部14よりも若干下位部分には、大環体5aが係合する段部12が設けられている。
【0026】
フィルターエレメント3は仕切体6の目皿部6aと蓋体5との間に充填されている。この実施の形態では、フィルターエレメント3の上面と蓋体5との間に不織布等の繊維材料よりなる緩衝材13が介在されている。
【0027】
この流体フィルター1に対しては、第1の開口8から第2の開口10に向って流体を流してもよく、逆に第2の開口10から第1の開口8に向って流体を流してもよい。
【0028】
この流体フィルター1を組み立てるには、ハウジング本体4内に仕切体6を挿填し、目皿部6aの上側にフィルターエレメント3を充填し、その上に緩衝材13を配置し、蓋体5をハウジング本体4に装着する。蓋体5の係止凸部11の向きを係止凹部14に合致させた状態で蓋体5をハウジング本体4に押し込むと、係止凸部11が係止凹部14に嵌まり、蓋体5がハウジング本体4に係止される。なお、緩衝材13が蓋体5によって圧縮されるように多目に入れておくと、フィルターエレメント3の上下方向の動きが拘束される。フィルターエレメント3の交換等を行うには、蓋体5を引っ張ってハウジング本体4から取り外す。
【0029】
フィルターエレメント3としては、適用する流体の物性に応じて適宜選定することが可能であるが、フィルターの内部濾過機能を最大限に発揮させる観点から、三次元網状構造のフィルター基材に吸着剤が担持されたものが好適であり、具体的には前記特許文献1に記載のもの(三次元網状骨格構造の多孔質基材と、該多孔質基材に保持された活性炭とからなるフィルターエレメント)が好適である。
【0030】
このように構成された流体フィルター1にあっては、フィルターエレメント3がハウジング2内に直接に充填されており、カートリッジが用いられていないので、カートリッジとハウジング本体4との間からの流体のリークがなく、高浄化度の処理流体を得ることができる。なお、フィルターエレメントを径方向に圧縮して設置(充填)するとさらにリークを防止できる点で好ましい。この流体フィルター1にあっては、蓋体5を開けてハウジング本体4内にフィルターエレメントを容易に出し入れすることができる。この流体フィルター1によると、仕切体6の目皿部6aとハウジング本体4の底面との間にスペース16(図1)が存在するので、流体がハウジング本体4内の全体に均等に分散して流れ、流体がフィルターエレメント3と均等に接触するようになる。
【0031】
この実施の形態にあっては、ハウジング本体4の下部内周面のうち第1の開口8近傍側に凸部9を設けているので、半円筒形の脚部6bが第1の開口8と反対側に位置するように仕切体6が挿填される。従って、第1の開口8が脚部6bで閉鎖されることがなく、流体フィルター1の組み立てを容易に行うことが可能である。
【0032】
この流体フィルターは、高度に浄化されたエアーを燃料電池に供給する用途に用いるのに好適であるが、その他のガスや液体などの濾過にも用いることができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例について説明する。
【0034】
[実施例1]
前記フィルターエレメント3を次のように製造した。三次元網状骨格構造を有するウレタンフォーム((株)ブリヂストン製商品名QWK−09 5mm厚み)に固形分50%のアクリル系エマルジヨンバインダー(大日精化工業(株)製商品名WA-470-2)を固形分で30g/Lになる様に含浸した後、120℃で5分間乾燥させその表裏面力平均粒子径30メッシュの椰子柄活性炭を付着加工させ余剰分の活性炭を振るい落とす事により活性炭付着量が750±200g/mの活性炭フィルターシートを得た。この活性炭フィルターシートを直径74.6mmに打ち抜き、フィルターエレメントとした。
【0035】
緩衝材13としては三次元網状骨格構造を有するウレタンフォーム用いた。
【0036】
このフィルターエレメント及び緩衝材を用いて図1〜4に示す流体フィルター1を製作した。なお、各部の寸法を次の通りとした。
仕切体6の目皿部6aの直径74mm
ハウジング本体4の段部12直下の直径80.09mm
目皿部6a上面から蓋体5の下面までの高さ155mm
フィルターエレメント3の充填厚さ155mm
緩衝材13の充填厚さ3mm
【0037】
この流体フィルター1に対しSO濃度15ppmのエアーを第2の開口10から第1の開口8へ1L/minにて流通させた。15分経過後、この流体フィルター1を通過した処理エアー中のSO濃度をガステック社製検知管にて測定したところ、0ppmであった。
【0038】
[比較例1]
実施例1において、ハウジング本体4にぴったりと嵌まる形状のケーシングを製作し、このケーシング内に実施例1と同量のフィルターエレメントを充填したこと以外は実施例1と同様にして通気試験を行った。15分経過後の処理エアー中のSO濃度は3ppmであった。
【0039】
以上の結果より、本発明によると、流体のリークを生じさせることなく流体を高度に浄化できることが認められた。
【符号の説明】
【0040】
1 流体フィルター
2 ハウジング
3 フィルターエレメント
4 ハウジング本体
5 蓋体
6 仕切体
6a 目皿部
6b 脚部
7 ノズル部
8 第1の開口
10 第2の開口
11 係止凸部
14 係止凹部
図1
図2
図3
図4