特許第6019726号(P6019726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019726
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】油中水型エマルション爆薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C06B 47/14 20060101AFI20161020BHJP
   C06B 23/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C06B47/14
   C06B23/00
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-108235(P2012-108235)
(22)【出願日】2012年5月10日
(65)【公開番号】特開2013-234095(P2013-234095A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生駒 薫
(72)【発明者】
【氏名】田中 健司
(72)【発明者】
【氏名】藤原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】新美 敦志
(72)【発明者】
【氏名】太田 俊彦
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04525225(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0108687(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0094223(US,A1)
【文献】 特開昭64−052692(JP,A)
【文献】 特開2009−074061(JP,A)
【文献】 特開昭59−035085(JP,A)
【文献】 特開平03−164489(JP,A)
【文献】 特開2006−248881(JP,A)
【文献】 特開平03−164490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C06B 21/00− 49/00
C06C 5/00− 15/00
C06D 3/00− 7/00
C06F 1/00− 5/04
F42B 1/00− 99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油類と、酸化剤水溶液と、乳化剤と、微小中空球体とを含有する油中水型エマルション爆薬組成物であって、
さらに添加剤としてジブチルヒドロキシトルエン及びアスコルビン酸を含有することを特徴とする、油中水型エマルション爆薬組成物。
【請求項2】
前記添加剤の添加量が、該添加剤を除いた油中水型エマルション爆薬の全量100質量部に対して0.01〜10質量部である、請求項1に記載の油中水型エマルション爆薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油類、酸化剤水溶液、乳化剤、及び微小中空球体を含有し、隧道堀進、採石、採鉱等の産業用爆破作業に広く利用される油中水型エマルション爆薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用の爆破作業に利用される爆薬としては、硝安油剤爆薬、含水爆薬、ダイナマイト、アンモン爆薬等が使用されている。これらの爆薬のうち、含水爆薬は、組成物中に火薬成分が含まれていないことから従来の膠質ダイナマイトに比べて取扱い上の安全性に優れ、次第にその使用が広まっている。含水爆薬は、大きく分けてスラリー爆薬とエマルション爆薬の2つに分類されるが、エマルション爆薬の方が成型性や耐候性に優れているという特徴がある。含水爆薬である油中水型エマルション爆薬は、基本的には油類からなる連続相、無機酸化剤塩の水溶液からなる分散相、油類と水溶液とを乳化(エマルション化)する乳化剤、および爆発感度を向上する気泡保持剤を含んでなる。気泡保持剤としては通常微小中空球体が用いられ、その選択によってブースター起爆から雷管起爆までの広範な感度をもつ油中水型エマルション爆薬が得られている。
【0003】
このような油中水型エマルション爆薬も含めて産業用爆薬は、製造後、最終ユーザーに使用されるまで、長期間火薬庫に保管されることが多い。そのため、長期間に渡って保管されていても爆薬性能が良好である爆薬が求められている。ここで、油中水型エマルション爆薬は、微細な酸化剤水溶液滴の周りを乳化剤の作用により油類が覆うエマルション構造を取り、水と油類との接触面積が大きいため、反応性が非常に高い。しかし、長期間保存中にエマルション構造が壊れたり、成分の変質などにより反応性が低下して爆薬性能が低下し、最終的には爆薬としての機能を失ってしまう。そのため、長期間に亘ってエマルション構造を保ち、爆薬性能を良好に維持するような油中水型エマルション爆薬が必要となる。
【0004】
そこで、このような問題に鑑みて、長期保存を可能とする油中水型エマルション爆薬が下記特許文献1に提案されている。特許文献1では、油類と、酸化剤水溶液と、乳化剤と、中空体と、発熱剤とを含有する油中水型エマルション爆薬において、酸化剤水溶液を過塩素酸塩類を含有するpH2.0〜6.5の水溶液としながら、発熱剤として純度90質量%以上のシリコンを使用すると共に、さらに不純物としてイオン化傾向がマグネシウムと同等の鉄を含有させている。これにより、従来の油中水型エマルション爆薬と同等の爆発威力を有すると共に、1年後でも爆薬としての機能を失わないとされている。
【0005】
なお、油中水型エマルション爆薬の性能を確認する方法として、針入度及び低温起爆感度がある。針入度は、油中水型エマルション爆薬の硬さを表す。エマルション構造が壊れると酸化剤水溶液が結晶化して油中水型エマルション爆薬が硬くなり、針入度は小さくなる。低温起爆感度は、油中水型エマルション爆薬のある一定温度(基準温度)での起爆感度を表す。油中水型エマルション爆薬においては、爆発感度は温度に比例する。したがって、エマルション構造が壊れると、常温域においてはある程度の爆発感度が得られても、零下のような低温域での爆発感度が低下し、最終的には起爆しなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−302384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、酸化剤水溶液のpHの調整が煩雑であると共に、わざわざ不純物を含有させている。また、爆発感度は製造直後の結果しか確認されていない。したがって、1年後でも爆薬としての機能は有しているものの、エマルション構造が壊れている可能性は否定できない。すなわち、油中水型エマルション爆薬が硬化して針入度及び低温起爆感度が低下している可能性は充分考えられる。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、簡素な組成で確実に長期保存が可能な油中水型エマルション爆薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのための手段として、本発明は、少なくとも油類と、酸化剤水溶液と、乳化剤と、微小中空球体とを含有する油中水型(W/O型)エマルション爆薬組成物であって、さらに添加剤としてジブチルヒドロキシトルエンと共にアスコルビン酸を含有することを特徴とする。前記添加剤の添加量は、該添加剤を除いた油中水型エマルション爆薬の全量100質量部に対して0.01〜10質量部とする。
【0010】
なお、本発明において数値範囲を示す「○○〜××」とは、その下限(○○)及び上限(××)の数値も含む概念である。したがって、正確に表せば「○○以上××以下」となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来から公知の基本的組成に加えて、さらに添加剤としてジブチルヒドロキシトルエンと共にアスコルビン酸を添加するだけで、確実に油中水型エマルション爆薬の長期保存が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の油中水型エマルション爆薬組成物の基本的組成は、従来から公知の油中水型エマルション爆薬として使用される組成物を特に制限無く使用することができる。具体的には、油類からなる連続相、酸化剤水溶液からなる分散相、油類と酸化剤水溶液とを乳化する乳化剤、および爆発感度を向上する微小中空球体を必須成分として含有している。なお、以下の説明において、長期保存用の添加剤以外の配合成分である、油類、酸化剤水溶液、乳化剤、微小中空球体、及び必要に応じて添加される発熱剤の含有量は、長期保存用の添加剤を除いた油中水型エマルション爆薬組成物の基本組成全量基準の質量%である。したがって、油類、酸化剤水溶液、乳化剤、微小中空球体、及び必要に応じて添加される発熱剤の合計含有量は、100質量%である。
【0013】
<油類>
油類としては、従来から公知の油中水型エマルション爆薬に使用されている全てのものが包含され、非水溶性のものであれば特に限定されない。例えば、パラフイン系炭化水素、オレフイン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族系炭化水素、飽和又は不飽和炭化水素、石油精製鉱油、潤滑油、流動パラフイン等の炭化水素、ニトロ炭化水素等の炭化水素誘導体、燃料油及び石油から誘導される未精製もしくは精製マイクロクリスタリンワックス、パラフインワックス、鉱物性ワックスであるモンタンワックス等、動物性ワックスである鯨ロウ、昆虫ワックスである蜜ロウ等のワックス類、合成ワックスであるポリエチレンワックス等が挙げられる。これらの油類は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。必要に応じて、ポリブテン、ポリイソブチレン、酢酸ビニルなどを添加することもできる。
【0014】
油中水型エマルション爆薬組成物中に占める油類の配合割合(含有量)は、通常0.1〜10質量%程度であり、好ましくは1〜5質量%である。油類の配合割合が0.1質量%未満では、油中水型エマルション爆薬組成物の安定性が悪くなる。一方、油類の配合割合が10質量%を超えると、爆発威力が低下する傾向にある。
【0015】
<酸化剤水溶液>
酸化剤水溶液も、従来から公知の油中水型エマルション爆薬に使用されている全てのものを特に制限無く使用可能である。酸化剤としては、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の硝酸塩や過塩素酸アンモニウム、過塩素酸ナトリウム等の無機過塩素酸塩、硝酸ヒドラジン、硝酸モノメチルアミン等の水溶性アミン硝酸塩等が挙げられる。これら酸化剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。なお、上記酸化剤のうち、溶解温度が低く、かつ溶解量が多い点から、硝酸アンモニウム単独又は硝酸アンモニウムと他の酸化剤との混合物が好ましい。
【0016】
油中水型エマルション爆薬組成物中に占める酸化剤の配合割合(含有量)は、通常65〜90質量%程度であり、好ましくは75〜85質量%である。酸化剤の配合割合が65質量%未満では、爆発威力が弱くなる。一方、酸化剤の配合割合が90質量%を超えると、油中水型エマルション爆薬を形成する際の温度が高くなり、現場レベルの製造に適さない。
【0017】
酸化剤水溶液は、上記酸化剤を水に溶解させて酸化剤水溶液とする。酸化剤水溶液は、油中水型エマルション爆薬組成物の生成時に連続相たる油類中に分散されて、微細な分散液滴となる。これにより、酸化剤水溶液の比表面積が増大し、油類との接触面積が大きくなる。なお、酸化剤を除く水のみの含有量は、油中水型エマルション爆薬としての機能を奏する限り特に限定されないが、油中水型エマルション爆薬組成物の反応性を考慮し、酸化剤水溶液の結晶析出温度が70〜95℃になるように添加することが好ましい。この場合、水の含有量は、油中水型エマルション爆薬組成物中に5〜15質量%程度とすればよい。また、酸化剤水溶液としての油中水型エマルション爆薬組成物中に占める配合割合(含有量)は、通常70〜98質量%程度であり、好ましくは85〜95質量%である。
【0018】
<乳化剤>
乳化剤も、従来から公知の油中水型エマルション爆薬に使用されている全てのものが包含され、非イオン性界面活性剤であれば特に限定されない。非イオン性界面活性剤としては、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンジオレート、ソルビタントリオレート等のソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸モノグリセライド等の脂肪酸のモノまたはジグリセライド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキサゾリン誘導体、イミダゾリン誘導体、リン酸エステル、脂肪酸アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、1級、2級もしくは3級アミン塩等が挙げられる。これらの乳化剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。なお、上記乳化剤のうち、エマルション構造の安定性の点からソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。
【0019】
油中水型エマルション爆薬組成物中に占める乳化剤の配合割合(含有量)は、通常1〜7質量%程度であり、好ましくは1.5〜4質量%である。乳化剤の配合割合が1質量%未満では、エマルション構造の形成が困難となる。一方、乳化剤の配合割合が7質量%を超えると、爆発威力が低下する可能性がある。
【0020】
<微小中空球体>
微小中空球体も、従来から公知の油中水型エマルション爆薬に使用されている全てのものを特に制限無く使用可能である。微小中空球体としては、例えばガラス、アルミナ、頁石、シラス、珪砂、火山岩、ケイ酸ナトリウム、ホウ砂、真珠石、黒曜石等から得られる無機質微小中空球体や、ピッチ、石炭等から得られる炭素質微小中空球体や、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、尿素樹脂等から得られる合成樹脂微小中空球体等が挙げられる。これらの微小中空球体は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0021】
微小中空球体の平均粒径は、通常0.5〜100μm程度であり、好ましくは10〜80μm、より好ましくは30〜70μmである。また、油中水型エマルション爆薬組成物中に占める微小中空球体の配合割合(含有量)は、使用する微小中空球体の比重等にもよるが、通常0.1〜7質量%程度であり、好ましくは1〜5質量%である。微小中空球体の平均粒径や含有量が上記範囲を外れると、爆発感度が低下したり爆発威力が低下する可能性がある。
【0022】
<添加剤>
そのうえで、本発明の油中水型エマルション爆薬組成物では、長期保存用の添加剤としてジブチルヒドロキシトルエンと共にアスコルビン酸を含有する。理由は定かではないが、当該添加剤を油中水型エマルション爆薬組成物に添加することで長期保存が可能となり、例えば製造から18ヶ月後でも良好な針入度及び爆発感度が維持される。当該添加剤の添加量は、当該添加剤を除いた油中水型エマルション爆薬組成物の全量(添加剤以外の基本組成の全量)100質量部に対して0.01〜10質量部とし、好ましくは0.1〜8質量部とする。当該添加剤の添加量が0.01質量部未満では、有効な長期保存効果が得られない可能性がある。一方、当該添加剤の添加量が10質量部を超えると、爆発威力が低下する可能性がある。
【0023】
<発熱剤>
以上、本発明において必須の配合成分について説明したが、その他の添加剤として、爆発威力を向上するための発熱剤(還元剤)を添加することもできる。発熱剤としても、従来から公知の油中水型エマルション爆薬に使用されている全てのものを特に制限無く使用可能であり、例えば平均粒径10〜1000μm程度の、アルミニウム、マグネシウム等の金属粉末が挙げられる。これらの発熱剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。この場合、油中水型エマルション爆薬組成物中に占める発熱剤の配合割合(含有量)は、0.01〜30質量%程度、好ましくは1〜10質量%とすればよい。発熱剤の添加量が多いほど爆発威力が向上する傾向にあるが、発熱剤の配合割合が30質量%を超えると、反って爆発威力が低下する可能性がある。
【0024】
<製造方法>
油中水型エマルション爆薬組成物の製造方法も、従来からこの種の油中水型エマルション爆薬組成物の製造方法として使用されている全ての方法を特に制限無く使用可能である。具体的には、酸化剤を約85〜95℃の水に溶解させて酸化剤水溶液を得る。次いで約85〜95℃に加熱された油類と乳化剤の混合物に、十分攪拌しながら酸化剤水溶液を徐々に添加して油中水型エマルションとする。次いで、得られた油中水型エマルションに微小中空球体やその他の添加剤を加えて混合機で混合し、油中水型エマルション爆薬組成物を得る。そのうえで、エマルション爆薬とするには、当該油中水型エマルション爆薬組成物を、押し出し成型機等によって所定形状に成型し、防水加工等されたクラフト紙などで包装密閉することで完成である。成形の形状についても特に限定されず、球状、円柱状、円盤状、角柱状等のいずれでもよい。取り扱い性の点からは、円柱状や角柱状が好ましい。または、油中水型エマルション爆薬組成物を特に成形せず所定形状の非透水性容器へ直接充填することもできる。
【0025】
長期保存用の添加剤であるアスコルビン酸は、上記製造工程におけるいずれの工程において添加しても良い。具体的には、酸化剤水溶液の製造工程、油類と乳化剤の混合工程、酸化剤水溶液と油類とを混合してエマルション化するエマルション化工程、または微小中空球体の混合工程において添加することができる。一方、ジブチルヒドロキシトルエンは油溶性のため、油類と乳化剤の混合工程、酸化剤水溶液と油類とを混合してエマルション化するエマルション化工程、または微小中空球体の混合工程において添加することができる。
【実施例】
【0026】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。添加剤を除いた油中水型エマルション爆薬組成物の基本組成を100質量部とし、添加剤の割合は外割としている。
【0027】
参考例1)
まず、酸化剤として硝酸アンモニウム75.1質量部及び硝酸ナトリウム5.25質量部を、水11.57質量部に加えて加温することにより溶解させ、約90℃の酸化剤水溶液を得た。一方、油類として融点80℃の石油系炭化水素からなるワックス2.65質量部と、乳化剤として親水性・親油性バランス(HLB)が4の、ソルビタンモノオレエート(油中水型エマルション用非イオン性界面活性剤)2.64質量部と、添加剤としてジブチルヒドロキシトルエン0.01質量部を加温して溶融混合し、可燃剤混合物を得た。
【0028】
次いで、保温可能な容器内にまず可燃剤混合物5.3質量部を入れ、それに酸化剤水溶液91.92質量部を徐々に添加しながら、通常使用されるプロペラ羽根式攪拌機を用いて約600rpmで混合攪拌し、粗エマルション97.22質量部を得た。次いで、攪拌機回転数を約1600rpmに上げて3分間混合攪拌を行い、約85℃の油中水型エマルションを得た。最後に、微小中空粒子としてガラスマイクロバルーン2.79質量部と、前記油中水型エマルションとを縦型混合機を用いて約30rpmで混合することにより、油中水型エマルション爆薬組成物(実施例1)を得た。この実施例1の油中水型エマルション爆薬組成物を、直径30mm、長さ140mmのラミネートクラフト紙で包装し、試験体としてのエマルション爆薬とした。
【0029】
参考例2)
添加剤としてジブチルヒドロキシトルエン0.1質量部を油類と乳化剤とを混合して可燃剤混合物を得る際に添加した以外は、参考例1と同様の条件及び手順で油中水型エマルション爆薬組成物(実施例2)を調製し、参考例1と同様に試験体(エマルション爆薬)を作製した。
【0030】
(実施例3)
添加剤としてアスコルビン酸0.1質量部を酸化剤水溶液を得る際に添加し、ジブチルヒドロキシトルエン0.5質量部を油類と乳化剤とを混合して可燃物を得る際に添加した以外は、参考例1と同様の条件及び手順で油中水型エマルション爆薬組成物(実施例3)を調製し、参考例1と同様に試験体(エマルション爆薬)を作製した。
【0031】
(実施例4)
添加剤としてアスコルビン酸1.5質量部を酸化剤水溶液を得る際に添加し、ジブチルヒドロキシトルエン5.5質量部を油類と乳化剤とを混合して可燃物を得る際に添加した以外は、参考例1と同様の条件及び手順で油中水型エマルション爆薬組成物(実施例3)を調製し、参考例1と同様に試験体(エマルション爆薬)を作製した。
【0032】
(比較例1)
長期保存用の添加剤を添加しない以外は、参考例1と同様の条件及び手順で油中水型エマルション爆薬組成物(比較例1)を調製し、参考例1と同様に試験体(エマルション爆薬)を作製した。
【0033】
(比較例2)
長期保存用の添加剤の代わりに、トリフェニルホスファイト0.1質量部を、油類と乳化剤とを混合して可燃剤混合物を得る際に添加した以外は、参考例1と同様の条件及び手順で油中水型エマルション爆薬組成物(比較例2)を調製し、参考例1と同様に試験体(エマルション爆薬)を作製した。
【0034】
(比較例3)
長期保存用の添加剤の代わりに、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート0.1質量部を、油類と乳化剤とを混合して可燃剤混合物を得る際に添加した以外は、参考例1と同様の条件及び手順で油中水型エマルション爆薬組成物(比較例3)を調製し、参考例1と同様に試験体(エマルション爆薬)を作製した。
【0035】
参考例、実施例及び比較例の組成を表1にまとめる。なお、表1中の数値は質量部である。
【表1】
【0036】
得られた各参考例、実施例及び比較例について、長期保存後の性能(針入度及び低温起爆感度)を確認した。その結果を表2に示す。なお、針入度及び低温起爆感度は、次のようにして試験した。
【0037】
[針入度]
油中水型エマルション爆薬の硬さを調べるために、針入度を測定した。針入度は、油中水型エマルション爆薬の中心部に133gの針を45mmの高さから自由落下させたときの深さ(mm)である。測定時の各試験体の温度は20℃にする。針入度は初期値からの低下が大きいもの程、油中水型エマルション爆薬の性能が低下していることを示す。
【0038】
[低温起爆感度試験]
油中水型エマルション爆薬を−25℃に調温し、該油中水型エマルション爆薬の一端に、6号電気雷管を取り付け起爆する。完全に爆ごうしたかどうかは、起爆後の残薬の有無により判定する。エマルション構造が壊れると反応性が悪くなり、起爆感度も低下する。そのため、この試験により長期保存後の油中水型エマルション爆薬の起爆感度がわかる。これにより、長期保存の可否の目安となる。なお、判定基準は次の通りである。
◎:完全に爆ごうした ○:半爆であった ×:不爆であった
【0039】
【表2】
【0040】
表2の結果から明らかなように、参考例1,2及び実施例3,4は、製造から18ヶ月経過後でも初期値からの針入度の低下量が小さく、且つ良好な低温起爆感度も維持されていた。これに対し、添加剤を添加していない比較例1は、初期値からの針入度の低下量が大きく、すなわち油中水型エマルション爆薬の硬化が著しく早く、且つ起爆感度に関しても参考例1,2及び実施例3,4よりも劣化の程度が早かった。なお、参考例1,2及び実施例3,4の中では、ジブチルヒドロキシトルエンを単独で添加した参考例1〜2よりも、ジブチルヒドロキシトルエンとアスコルビン酸を混用した実施例3〜4の方が長期保存性が良好であった。
【0041】
一方、比較例2や比較例3では、針入度及び低温起爆感度共に著しく低下していた。したがって、比較例2や比較例3に用いた添加剤(トリフェニルホスファイトやジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート)では、長期保存が不可能であることが確認された。