特許第6019731号(P6019731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019731
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】位相シフトマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/26 20120101AFI20161020BHJP
   G03F 1/80 20120101ALI20161020BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   G03F1/26
   G03F1/80
   H01L21/302 105A
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-110631(P2012-110631)
(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公開番号】特開2013-238691(P2013-238691A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100159651
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 成男
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 洋介
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2004/090635(JP,A1)
【文献】 国際公開第2011/030521(WO,A1)
【文献】 特開2011−123426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 1/00〜1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光波長に対して透明な基板上に、MoSiを主成分とする位相シフト膜と、Crを主成分とする遮光膜と、TaNを主成分とするハードマスクとが順次積層された位相シフトマスクブランクであって、前記位相シフト膜及び遮光膜は、前記ハードマスクをエッチング可能な非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)では実質的にエッチングされない材質からなり、前記位相シフト膜及びハードマスクは、前記遮光膜をエッチング可能な酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)では実質的にエッチングされない材質からなり、前記遮光膜は、前記位相シフト膜をエッチング可能なフッ素系エッチング(F系)では実質的にエッチングされない材質からなる位相シフトマスクブランク前記ハードマスクを、前記非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)を利用してパターニングすることにより、ハードマスクパターンを形成する工程、
前記ハードマスクパターンをマスクとして用いて前記遮光膜を前記酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)でドライエッチングすることにより、遮光膜パターンを形成する工程、
前記遮光膜パターンと前記位相シフト膜を実質的にエッチングせずに前記ハードマスクパターンを、前記非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)でドライエッチングすることにより除去する工程、及び
前記遮光膜パターンをマスクとして用いて前記位相シフト膜と前記基板と前記フッ素系エッチング(F系)でドライエッチングすることにより、位相シフトパターンを形成するとともに、前記基板を掘り込む工程
含んだ位相シフトマスクの製造方法。
【請求項2】
前記遮光膜パターンをマスクとして用いた前記フッ素系エッチング(F系)により、前記基板を1nm〜3nm掘り込む請求項1に記載の位相シフトマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相シフトマスクの製造方法に係り、特に、半導体集積回路、CCD(電荷結合素子)、LCD(液体表示素子)用カラーフィルタ、及び磁気ヘッド等の製造に用いられる位相シフトマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の微細化に伴い、投影露光にも高い解像性が求められている。そこで、フォトマスクの分野においては、転写パターンの解像性を向上させる手法として、位相シフト法が開発された。位相シフト法の原理は、開口部を通過した透過光の位相が開口部に隣接する部分を通過した透過光の位相と180度反転するように調整することによって、透過光が干渉し合う際に境界部での光強度を弱め(位相シフト効果)、その結果として転写パターンの解像性及び焦点深度を向上させるものであり、この原理を用いたフォトマスクを総じて位相シフトマスクと呼ぶ。
【0003】
位相シフトマスクに使用される位相シフトマスクブランクは、ガラス基板等の透明基板上に位相シフト膜と遮光膜を順次積層した構造が最も一般的である。位相シフト膜は、所望の位相差、透過率、膜厚となるように調整されており、位相差175度〜180度、透過率5%〜7%、膜厚60nm〜80nmが主流であり、MoSiを主成分とする単層膜もしくは複数層膜で形成されるのが主流である。また、遮光膜は、所望の透過率、膜厚となるように調整されており、位相シフト膜と合わせた透過率0.1%以下、膜厚40nm〜60nmが主流であり、Crを主成分とする単層膜もしくは複数層膜で形成されるのが主流である。
【0004】
位相シフトマスクのパターン形成方法としては、位相シフトマスクブランクの遮光膜上にレジスト膜を形成し、このレジスト膜に光もしくは電子ビームによりパターンを描画し、これを現像してレジストパターンを形成し、このレジストパターンをエッチングマスクとして遮光膜をエッチングして遮光膜パターンを形成し、この遮光膜パターンをエッチングマスクとして位相シフト膜をエッチングし、更にレジスト膜と遮光膜を除去して位相シフトパターンを形成する方式が一般的である。
【0005】
高精度なパターン形成が要求される位相シフトマスクでは、エッチングはガスプラズマを用いるドライエッチングが主流である。Crを主成分とする遮光膜のドライエッチングは、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)、MoSiを主成分とする位相シフト膜のドライエッチングは、フッ素系エッチング(F系)が主流である。
【0006】
一方、半導体素子の微細化に伴い、原版となるフォトマスクパターンも微細に形成する技術が求められている。特に、フォトマスクのメインパターンの解像性を補助するアシストパターンは、露光の際にウェハ上に転写されないように、メインパターンよりも小さく形成する必要がある。ハーフピッチ45nm以下の世代用のアシストパターン寸法は60nm以下が要求される。
【0007】
フォトマスクパターンの微細化に有力な手段の一つとして、レジスト膜の薄膜化がある。レジスト膜のアスペクト比(膜厚/幅)を下げることにより、現像の際のレジストパターンの倒れや抜け不良を減少させることができる。
【0008】
位相シフトマスクにおいてもパターンの微細化を実現するために、レジスト膜の薄膜化が行われて来た。しかし、膜厚40nm〜60nmの遮光膜をドライエッチングする際にレジストパターンもダメージを受けるため、遮光膜エッチングの際の耐性まで考慮すると、レジスト膜の薄膜化には限界であった。
【0009】
そこで、遮光膜の上にハードマスクを形成する位相シフトマスクの製造方法が提案された(例えば、特許文献1参照)。ハードマスクは、Si系化合物であるMoSiNやSiONにより形成されるため、下層のCrを主成分とする遮光膜エッチングに対して十分な耐性がある。また、膜厚は5nm〜40nmと遮光膜よりも薄いため、ドライエッチングする際のレジストのダメージを遮光膜よりも抑制することが可能となり、更なるレジスト膜の薄膜化が実現できる。
【0010】
従来のハードマスクを用いる位相シフトマスクの製造方法を図5に示す。
【0011】
図5(a)に示すように、透明基板31上に位相シフト膜32、遮光膜33、及びハードマスク34が順次形成されてなる位相シフトマスクブランクのハードマスク34上に、レジストパターン35を形成する。次いで、図5(b)に示すように、レジストパターン35をマスクとしてハードマスク34をフッ素系エッチング(F系)でドライエッチングし、ハードマスクパターン36を形成する。
【0012】
次に、図5(c)に示すように、レジストパターン35を除去した後、図5(d)に示すように、ハードマスクパターン36をマスクとして遮光膜33を酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)でドライエッチングし、遮光膜パタ−ン37を形成する。
【0013】
その後、図5(e)に示すように、遮光膜パタ−ン37をマスクとして位相シフト膜32がフッ素系エッチング(F系)でドライエッチングし、位相シフトパターン38を形成する。
【0014】
以上の工程において、ハードマスク34と位相シフト膜32が共にフッ素系エッチング(F系)で加工されるため、位相シフト膜32のドライエッチングの際に同時にハードマスクの除去も行われる。したがって、位相シフト膜32のエッチングの初期の段階では、ハードマスクパターン36により位相シフトパターン38の寸法が決まるが、膜厚の薄いハードマスクパターン36が途中で消失した後は、露出した下層の遮光膜パタ−ン37により位相シフトパターン38の寸法が決まる。しかし、ハードマスクパターン36と遮光膜パターン37の寸法が同一にはならず、図5(d)に示すように、下層の遮光膜パターン37にアンダーカット39が生じる場合がある。
【0015】
これは、Si系化合物からなりフッ素系エッチング(F系)で加工されるハードマスク34と、Crを主成分とし酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)で加工される遮光膜33とでは、横方向にエッチングが進み易い遮光膜33の方がラインパターンの寸法が細くなるからである。このハードマスクパターン36と遮光膜パターン37の寸法差は、遮光膜33のドライエッチングにより調整するが、エッチングするパターン領域の幅や面積により横方向へのエッチングの進み量が変わるため、すべてのパターンにおいてハードマスクパターン36と遮光膜パターン38の寸法差を消すことは困難である。
【0016】
このように、ハードマスクパターン36と遮光膜パターン37の寸法が同一ではない状態で、位相シフト膜32をフッ素系エッチング(F系)で加工すると、ハードマスクパターン36消失の前後で位相シフトパターン38の寸法が変わるため、図5(e)に示すように、位相シフトパターン38に段差40が発生してしまう。
【0017】
また、位相シフト膜32のドライエッチングには形成される位相シフトパターン38のエッチング形状や深さ制御が要求されるため、ハードマスクパターン36の除去に適した条件のみを選択することができず、ハードマスクの残渣41(除去残り)の原因となる(図5(e)参照)。更に、このハードマスクパターンの残渣39をドライエッチング修正する場合、フッ素系エッチング(F系)では位相シフトパターン38と透明基板31も同時にダメージを受けるため、ハードマスクパターンの残渣41のみを修正することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2004/090635号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、以上のような事情の下になされ、ハードマスクを用いて製造された位相シフトマスクの位相シフト膜の段差改善と、ハードマスクの残渣抑制と、ハードマスクの残渣のドライエッチング修正とを可能にする位相シフトマスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明の態様は、露光波長に対して透明な基板上に、MoSiを主成分とする位相シフト膜と、Crを主成分とする遮光膜と、TaNを主成分とするハードマスクとが順次積層された位相シフトマスクブランクであって、前記位相シフト膜及び遮光膜は、前記ハードマスクをエッチング可能な非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)では実質的にエッチングされない材質からなり、前記位相シフト膜及びハードマスクは、前記遮光膜をエッチング可能な酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)では実質的にエッチングされない材質からなり、前記遮光膜は、前記位相シフト膜をエッチング可能なフッ素系エッチング(F系)では実質的にエッチングされない材質からなる位相シフトマスクブランク前記ハードマスクを、前記非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)を利用してパターニングすることにより、ハードマスクパターンを形成する工程、前記ハードマスクパターンをマスクとして用いて前記遮光膜を前記酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)でドライエッチングすることにより、遮光膜パターンを形成する工程、前記遮光膜パターンと前記位相シフト膜を実質的にエッチングせずに前記ハードマスクパターンを、前記非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)でドライエッチングすることにより除去する工程、及び前記遮光膜パターンをマスクとして用いて前記位相シフト膜と前記基板と前記フッ素系エッチング(F系)でドライエッチングすることにより、位相シフトパターンを形成するとともに、前記基板を掘り込む工程を含んだ位相シフトマスクの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によると、位相シフト膜と遮光膜が実質的にエッチングされないドライエッチングによりエッチング可能なハードマスクを採用することで、位相シフト膜をドライエッチングする前に、ハードマスクパターンのみを遮光膜と位相シフト膜にダメージを与えずにドライエッチングにて除去することが可能になる。これにより、遮光膜パターンにアンダーカットが発生した場合でも、位相シフトパターンに段差を生じさせることはない。
【0036】
また、本発明によると、位相シフト膜の制御に縛られることなくハードマスクパターン除去に適したドライエッチング条件を選択できるため、ハードマスクパターンの残渣を抑制することができる。更に、ハードマスクパターンの残渣が発生した場合でも、他の膜や基板にダメージを与えることなく、ハードマスクパターンの残渣のみをドライエッチング修正することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の第1の態様に係る位相シフトマスクブランクを示す断面図である。
図2図1に示す位相シフトマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造方法を工程順に示す断面図である。
図3図1に示す位相シフトマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造方法を工程順に示す断面図である。
図4図1に示す位相シフトマスクブランクを用いて製造された位相シフトマスクにおけるハードマスクパターンの残渣修正方法を示す拡大断面図である。
図5】従来のハードマスク付き位相シフトマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造方法を工程順に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0039】
従来のハードマスク付き位相シフトマスクブランクを用いる位相シフトマスク及びその製造方法では、位相シフト膜のドライエッチングの際に同時にハードマスクパターンの除去も行うため、ハードマスクパターンと遮光膜パターンの寸法が同一にはならずに下層の遮光膜パターンにアンダーカットが生じた場合、位相シフト膜をフッ素系エッチング(F系)により加工すると、ハードマスクパターン消失の前後で位相シフトパターンの寸法が変わるため、位相シフトパターンに段差が発生してしまうという問題があった。
【0040】
これに対し、本発明の位相シフトマスク及びその製造方法では、遮光膜パターンにアンダーカットが生じていても、ハードマスクパターンのみを位相シフト膜のエッチング加工の前に個別に除去することが可能であるため、位相シフトパターンに段差が生じることはない。
【0041】
また、従来のハードマスク付き位相シフトマスクブランクを用い位相シフトマスクの製造方法において、位相シフト膜のドライエッチングには、形成される位相シフトパターンのエッチング形状や深さの制御が要求されるため、ハードマスクパターンの除去に適した条件のみを選択することができず、ハードマスクパターンの残渣が発生し易いという問題があった。更に、一度ハードマスクパターンの残渣が発生してしまうと、フッ素系エッチング(F系)で除去しようとすると、位相シフトパターンと透明基板も同時にダメージを受けるため、ハードマスクパターンの残渣のみをドライエッチング修正する手段がなかった。これに対して、本発明の位相シフトマスク及びその製造方法では、ハードマスクパタ−ンを個別にドライエッチングすることが可能となるため、位相シフト膜の制御に縛られることなくハードマスクパターン除去に適したドライエッチング条件を選択することができる。これにより、ハードマスクパターンの残渣を抑制することができることに加え、ハードマスクパターンの残渣が発生した場合でも、他の膜や基板にダメージを与えることなく、ハードマスクパターンの残渣のみをドライエッチング修正することが可能になる。
【0042】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る位相シフトマスクブランクを示す断面図である。図1に示す位相シフトマスクブランク10は、露光波長に対して透明な基板11と、基板11上に成膜された位相シフト膜12と、位相シフト膜12上に成膜された遮光膜13と、遮光膜13上に成膜されたハードマスク14とからなる。
【0043】
ここで、露光波長に対して透明な基板11は、特に限定されず、石英ガラスやCaFあるいはアルミノシリケートガラスなどを一般的に使用できる。
【0044】
位相シフト膜12としては、(1)Siの酸化膜、窒化膜もしくは酸窒化膜、(2)SiおよびMoの酸化膜、窒化膜、もしくは酸窒化膜、(3)これらの複数層膜もしくは傾斜膜、のいずれかであって、含有量の比率と膜厚を適宜選択することで露光波長に対する透過率と位相差を調整したものが挙げられる。透過率の値は、最終的なフォトマスク作製終了時に好ましくは2%以上40%以下、より好ましくは5%以上7%以下であり、位相差の値は、最終的なフォトマスク作製終了時に好ましくは170度以上190度以下、より好ましくは175度以上180度以下である。膜厚は、好ましくは30nm以上80nm以下、より好ましくは60nm以上80nm以下である。
【0045】
遮光膜13としては、(1)Cr酸化物、Cr窒化物もしくはCr酸窒化物を主成分とする金属化合物膜、(2)Crを主成分とする金属膜もしくは合金膜、(3)これらの複数層膜もしくは傾斜膜、のいずれかが挙げられる。遮光膜13の膜厚は、好ましくは30nm以上60nm以下であり、この値は、露光波長に対する透過率が下層の位相シフト膜を含めて0.1%以下になるように選択することが好ましい。また、遮光膜は、複数の異なる組成のCrを含む膜を積層させて反射防止層とするようにしてもよい。この場合、露光波長に対する反射率を例えば20%以下、好ましくは15%以下に抑えることが、露光の際にフォトマスクと投影露光面との間での多重反射を抑制する上で望ましい。さらに、フォトマスクブランクやフォトマスクの反射検査に用いる波長(例えば257nm)に対する反射率を例えば30%以下とすることが、欠陥を高精度で検出する上で望ましい。
【0046】
ハードマスク14としては、Ta、Ti、Zr、Nb、及びHfから選ばれる少なくとも1種以上の金属膜もしくは窒化膜、またはこれらの複数層膜もしくは傾斜膜を挙げることが出来、好ましくはTaNを含む膜がよい。ハードマスク14の膜厚は、好ましくは1nm以上30nm以下であり、より好ましくは、ハードマスクのドライエッチングの際のレジストダメージを低減し、レジストの薄膜化を実現するために、15nm以下である。また、さらに好ましくは、成膜での安定性確保とピンホールの防止のために、2nm以上であるのがよい。ハードマスク14には、描画機でのチャージングを防止するために、シート抵抗の低い膜を積層させてもよい。この場合、積層する膜はハードマスクのドライエッチングと同一の条件でエッチング可能であることが望ましく、ハードマスクを含めたトータルのシート抵抗が10kΩ/cm以下であることが望ましい。
【0047】
図2及び図3は、図1に示す本発明の第1の実施形態に係る位相シフトマスクブランク10を用いた、本発明の第2の実施形態に係る位相シフトマスクの製造方法を工程順に示す断面図である。
【0048】
まず、図2(a)に示すように、位相シフトマスクブランク10上にレジスト膜を塗布し、描画を施し、その後に現像処理を行い、レジストパターン15を形成する。レジスト膜の材料としては、ポジ型レジストでもネガ型レジストでも用いることができるが、高精度パターンの形成を可能とする電子ビーム描画用の化学増幅型レジストを用いることが好ましい。
【0049】
レジスト膜の膜厚は、例えば、50nm以上200nm以下の範囲とすることができる。特に、微細なパターン形成が求められるフォトマスクを作製する場合、パターン倒れを防止する上で、レジストパターンのアスペクト比が大きくならないようにレジスト膜を薄膜化することが必要であり、150nm以下の膜厚が好ましい。一方、レジスト膜の膜厚の下限は、用いるレジスト材料のエッチング耐性などの条件を総合的に考慮して決定され、60nm以上であることが望ましい。レジスト膜として電子ビーム露光用の化学増幅型のものを使用する場合、描画の際の電子ビームのエネルギー密度は3〜40μC/cmの範囲であり、この描画の後に加熱処理及び現像処理を施してレジストパターン15を得ることができる。
【0050】
次いで、図2(b)に示すように、レジストパターン15をマスクとして非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系:エッチングガスとして塩素ガスを用いたドライエッチング)によりハードマスク14をパターニングし、ハードマスクパターン16を形成する。この場合、遮光膜13は、非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)では実質的にエッチングされないため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。エッチングガスとしては、塩素ガスに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。また、塩素ガスに代えて、HCl、CCl、BClのような塩素化合物ガスを用いることも可能である。
【0051】
次に、図2(c)に示すように、残存したレジストパターン15を剥離除去した後、洗浄する。剥離除去はドライエッチングにより行うことも可能だが、一般には剥離液によりウェット剥離する。
【0052】
その後、図2(d)に示すように、ハードマスクパターン16をマスクとして酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系:エッチングガスとして酸素を含む塩素ガスを用いたドライエッチング)により遮光膜13をパターニングし、遮光膜パターン17を形成する。酸素ガスの量は、塩素ガスの5〜50容量%であるのが好ましい。
【0053】
ハードマスクパターン16と位相シフト膜12は、酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)では実質的にエッチングされないため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。エッチングガスとしては、従来において、Cr化合物膜をドライエッチングする際に用いられてきた公知のものを用いることができ、塩素ガスと酸素ガスに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。また、この工程の際に、ハードマスクパターン16と遮光膜13の横方向のエッチングの進み具合の差から生じるアンダーカットが発生してもよい。
【0054】
更に、図3(a)に示すように、遮光膜パターン17上に残ったハードマスクパターン16を非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)により除去する。遮光膜パターン17と位相シフト膜12は、非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)では実質的にエッチングされないため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。エッチング条件は、ハードマスクパターン16を除去するため、横方向のエッチングが進み易い条件を選択することが望ましい。横方向のエッチングが進み易いエッチングのプラズマ発生条件は、従来から膜の除去に用いられてきた公知のものとしてよく、高圧力(低真空度)、例えば、20mT〜1000mTが望ましい。また、エッチングガスとして塩素ガスに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。
【0055】
次いで、図3(b)に示すように、遮光膜パターン17をマスクとしてフッ素系ドライエッチング(F系)により位相シフト膜12をパターニングして、位相シフトパターン18を形成する。遮光膜パターン17は、フッ素系ドライエッチング(F系)では実質的にエッチングされないため、本工程では、除去もしくはパターニングされずに残る。この際、透明基板11を1nm〜3nm程度同時に掘り込み、位相シフトパターン18の抜け不良を防止すると共に、位相差の微調整を行うことが一般的である。エッチング条件は、従来からSi系化合物膜をドライエッチングする際に用いられてきた公知のものとしてよく、エッチングガスであるフッ素系ガスとしては、CF、C、C、C、SF、CHF、CH等が挙げられるが、CFやCが一般的であり、必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。
【0056】
その後、図3(c)に示すように、第2のレジストパターンを新たに形成する。本工程では、レジスト膜を成膜した後、図2(a)と同様に、電子ビーム描画を行った後、現像処理することで、第2のレジストパターン19を得る。
【0057】
次いで、図3(d)に示すように、第2のレジストパターン19に覆われていない領域の遮光膜パターン17を酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)により除去する。位相シフトパターン18は、酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)では実質的にエッチングされないため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。エッチング条件は、遮光膜パターン17を除去するため、横方向のエッチングが進み易い条件を選択することが望ましい。横方向のエッチングが進み易いエッチングのプラズマ発生条件は、従来から膜の除去に用いられてきた公知のものとしてよく、高圧力(低真空)、例えば、20mT〜1000mTが望ましい。また、塩素ガスと酸素ガスに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。
【0058】
次に、図3(e)に示すように、残存した第2のレジストパターン19を剥離除去した後、洗浄する。剥離除去はドライエッチングにより行うことも可能だが、一般には剥離液によりウェット剥離する。本工程により、位相シフトマスク20が完成する。
【0059】
図4は、図1に示す位相シフトマスクブランク10を用いた、本発明の第3の実施形態に係る、位相シフトマスク20のハードマスクパターン16の残渣修正方法を工程順に示す拡大断面図である。
【0060】
図4(a)に示すように、位相シフトパターン18上にハードマスク14の残渣21が存在する。ハードマスク14の残渣21の下層には、残渣21がエッチングマスクとなり酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)で除去されなかった遮光膜13の残渣22も存在する。
【0061】
次いで、図4(b)は、ハードマスク14の残渣21が発生した領域を覆わないようにレジストパターン23を新たに形成する工程を示す。本工程では、レジスト膜を成膜した後、図3(a)と同様に、電子ビーム描画を行った後、現像処理することで、レジストパターン23を得る。また、ハードマスクの残渣21が発生した領域にスポット露光を施した後、現像処理することでレジストパターン23を得てもよい。
【0062】
次に、図4(c)に示すように、レジストパターン23に覆われていない領域のハードマスク14の残渣21を非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)により除去する。遮光膜13の残渣22と位相シフトパターン18は、非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)では実質的にエッチングされないため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。エッチング条件は、ハードマスク14の残渣21を除去するため、横方向のエッチングが進み易い条件を選択することが望ましい。横方向のエッチングが進み易いエッチングのプラズマ発生条件は、従来から膜の除去に用いられてきた公知のものとしてよく、高圧力(低真空)が望ましい。また、塩素ガスに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。
【0063】
その後、図4(d)に示すように、レジストパターン23に覆われていない領域の遮光膜13の残渣22を酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)により除去する。位相シフトパターン18は、酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)では実質的にエッチングされないため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。エッチング条件は、遮光膜13の残渣22を除去するため、横方向のエッチングが進み易い条件を選択することが望ましい。横方向のエッチングが進み易いエッチングのプラズマ発生条件は、従来から膜の除去に用いられてきた公知のものとしてよく、高圧力(低真空)が望ましい。また、塩素ガスと酸素ガスに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。
【0064】
最後に、図4(e)に示すように、残存したレジストパターン23を剥離除去した後、洗浄する。剥離除去はドライエッチングにより行うことも可能だが、一般には剥離液によりウェット剥離する。本工程により、本実施形態に係る、位相シフトマスク20のハードマスク14の残渣21の修正が完了する。
【0065】
以上、本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランク、位相シフトマスク及び位相シフトマスクの製造方法、位相シフトマスクのハードマスク残渣の修正方法について説明したが、上記実施形態は本発明を実施するための一例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。これらの実施形態を種々変形することは本発明の範囲内であり、本発明の範囲内において他の様々な実施形態が可能であることは上記記載から自明である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、位相シフトマスクブランクの組成、膜厚及び層構造と、これを用いた位相シフトマスクの製造工程及び条件を適切な範囲で選択することにより、微細なパターンを高精度で形成した位相シフトマスクを提供することができ、この位相シフトマスクは、ハーフピッチ45nm以降の半導体デバイスの製造に適用することができる。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
露光波長に対して透明な基板上に、位相シフト膜と、遮光膜と、ハードマスクとが順次積層された位相シフトマスクブランクであって、前記位相シフト膜及び遮光膜は、前記ハードマスクをエッチング可能なドライエッチングでは実質的にエッチングされない材質からなり、前記位相シフト膜及びハードマスクは、前記遮光膜をエッチング可能なドライエッチングでは実質的にエッチングされない材質からなり、前記遮光膜は、前記位相シフト膜をエッチング可能なドライエッチングでは実質的にエッチングされない材質からなることを特徴とする位相シフトマスクブランク。
[2]
前記ハードマスクをエッチング可能なドライエッチングは、非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)であることを特徴とする項1に記載の位相シフトマスクブランク。
[3]
前記遮光膜をエッチング可能なドライエッチングは、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)であることを特徴とする項1または2に記載の位相シフトマスクブランク。
[4]
前記位相シフト膜をエッチング可能なドライエッチングは、フッ素系エッチング(F系)であることを特徴とする項1〜3のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
[5]
前記ハードマスクは、(1)Ta、Ti、Zr、Nb、及びHfから選ばれる少なくとも1種の金属膜もしくは窒化膜、(2)これらの複数層膜もしくは傾斜膜、のいずれかを含むことを特徴とする項1〜4のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
[6]
前記ハードマスクは、TaNを含むことを特徴とする項1〜5のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
[7]
前記ハードマスクの膜厚は、1nm以上30nm以下であることを特徴とする項1〜6のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
[8]
前記遮光膜は、(1)Cr酸化物、Cr窒化物、もしくはCr酸窒化物を主成分とする金属化合物膜、(2)Crを主成分とする金属膜もしくは合金膜、(3)これらの複数層膜もしくは傾斜膜、のいずれかを含むことを特徴とする項1〜7のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
[9]
前記遮光膜の膜厚は、30nm以上60nm以下であることを特徴とする項1〜8のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
[10]
前記位相シフト膜は、(1)Siの酸化膜、窒化膜、または酸窒化膜、(2)SiおよびMoの酸化膜、窒化膜、または酸窒化膜、(3)これらの複数層膜もしくは傾斜膜、を含むことを特徴とする項1〜9のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
[11]
前記位相シフト膜の膜厚は、30nm以上80nm以下であることを特徴とする項1〜10のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
[12]
前記ハードマスクがTaNを主成分とし、前記遮光膜がCrを主成分とし、前記位相シフト膜がMoSiを主成分とする位相シフトマスクブランクであって、前記位相シフト膜及び遮光膜は、前記ハードマスクをエッチング可能な非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)では実質的にエッチングされない材質からなり、前記位相シフト膜及びハードマスクは、前記遮光膜をエッチング可能な酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)では実質的にエッチングされない材質からなり、前記遮光膜は、前記位相シフト膜をエッチング可能なフッ素系エッチング(F系)では実質的にエッチングされない材質からなることを特徴とする項1〜11のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
[13]
項1〜12のいずれかに記載の位相シフトマスクブランクを用いて製造された位相シフトマスクであって、露光波長に対して透明な基板上に形成された位相シフトパターンと、前記位相シフトパターン上に選択的に形成された遮光膜パターンとを具備し、前記位相シフトパターン及び遮光膜パターンは、前記ハードマスクをエッチング可能なドライエッチングでは実質的にエッチングされない材質からなり、前記位相シフトパターン及びハードマスクは、前記遮光膜パターンをエッチング可能なドライエッチングでは実質的にエッチングされない材質からなることを特徴とする位相シフトマスク。
[14]
前記遮光膜パターンは、前記位相シフト膜をエッチング可能なドライエッチングでは実質的にエッチングされない材質からなり、前記遮光膜パターンは、前記ハードマスクのパターンをマスクとしたドライエッチングにより形成され、前記位相シフトパターンは、前記遮光膜パターンをマスクとしたドライエッチングにより形成されたものであることを特徴とする項13に記載の位相シフトマスク。
[15]
項1〜12のいずれかに記載の位相シフトマスクブランクのハードマスクをパターニングしてハードマスクパターンを形成する工程、
前記ハードマスクパターンをマスクとして前記遮光膜をドライエッチングし、遮光膜パターンを形成する工程、
前記遮光膜パターンと前記位相シフト膜を実質的にエッチングせずに前記ハードマスクパターンをドライエッチングにより除去する工程、及び
前記遮光膜パターンをマスクとして前記位相シフト膜をドライエッチングし、位相シフトパターンを形成する工程
を具備することを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。

【符号の説明】
【0067】
10・・・位相シフトマスクブランク、
11,31・・・露光波長に対して透明な基板、
12,32・・・位相シフト膜
13,33・・・遮光膜、
14,34・・・ハードマスク、
15,23,35・・・レジストパターン、
16,36・・・ハードマスクパターン、
17,37・・・遮光膜パターン、
18,38・・・位相シフトパターン、
19・・・第2のレジストパターン、
21,41・・・ハードマスクパターンの残渣、
22・・・遮光膜パターンの残渣、
39・・・アンダーカット、
40・・・段差
図1
図2
図3
図4
図5