(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電動オイルポンプ装置では、コントローラの制御基板と外部の電源側とを接続させるコネクタを備え、コネクタ内に収納されたコネクタ端子を制御基板のスルーホールに挿入し接続しているので、コネクタ端子に対して制御基板を精度よく位置決めする必要がある。しかしながら、制御基板が電動モータのステータを形成する樹脂製のインシュレータに一体に固定されていると、コネクタ端子と制御基板とが他の構成部品を介して位置決めされるので、コネクタ端子と制御基板との間に位置ずれが生じ、制御基板の組み付け不良が発生する場合がある。したがって、制御基板を精度良く組み付けるために各構成部品の加工精度を確保する必要があり、このため、製造工数および設備費等の製造コストが増大する場合がある。また、制御基板が電動モータの回転軸のオイルポンプと反対側の軸受を支持する保持器に取り付けられている場合も、同様である。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、一体化した電動モータとコントローラの製造工数を削減でき製造コストの低減が可能な電動オイルポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ポンププレートとポンプハウジングとの間に形成されたポンプ室に、ポンプロータが回転軸線回りに回転可能に支承された金属製のオイルポンプと、前記オイルポンプに前記回転軸線方向に隣接して設けられ、前記ポンプロータを回転駆動する電動モータと、前記ポンプハウジングに回転可能に軸承され、前記ポンプロータと前記電動モータのロータとを連結する金属製の回転軸と、前記電動モータに隣接して設けられ、前記電動モータを駆動制御するコントローラの制御基板と、を備えた電動オイルポンプ装置において、前記電動モータを収容する前記回転軸線方向に前記制御基板に向かって開口する有底筒状の樹脂製のモータハウジングと、前記モータハウジングの開口部を覆う蓋と、前記モータハウジングの底部外側に前記蓋とで形成され、前記制御基板を収容する制御室と、前記モータハウジングに一体的に設けられ、前記制御基板と外部の電源とを接続させるコネクタのコネクタシェルと、前記コネクタシェルの内部に収納され、前記制御基板に穿設された貫通孔を貫通して接続される端子部と、前記モータハウジングに形成され、前記制御基板を取り付ける複数の基板固定部と、前記基板固定部にインサート成形
した状態で設けられ、前記制御基板をねじ締結して固定する金属製の締結部材と、を備え、前記締結部材は、前記モータハウジングの前記基板固定部の端面より前記回転軸線方向の前記制御基板側に突出して設けられ、前記制御基板が複数の前記締結部材の端面に当接し、前記基板固定部の端面との間に隙間を有していることを要旨とする。
【0007】
上記構成によれば、コントローラの制御基板をモータハウジングにねじ締結するためモータハウジングの底部外側に形成された複数の基板
固定部に金属製の締結部材が埋設される。モータハウジングに一体成形されたコネクタシェル内部のコネクタ端子部と締結部材とは、コネクタ端子部に対して締結部材の位置精度を確保して同時にモータハウジングにインサート成形される。これにより、コネクタ端子部に対して制御基板を精度よく組み付けることができる。その結果、一体化した電動モータと制御基板の製造工数を削減でき製造コストの増大を抑制することができる。
また、制御基板は、モータハウジングに設けられた基板固定部の端面から軸線方向の制御基板側に突出して埋設された複数の金属製の締結部材の座面に当接し、基板固定部の端面との間に隙間を有して取り付けられるので、ねじの安定的な締結力で平行度を保って制御基板をモータハウジングに固定することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一体化した電動モータとコントローラの製造工数を削減でき製造コストの低減が可能な電動オイルポンプ装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電動オイルポンプ装置の概略構成を示す縦断面図である。
図1に示すように、電動オイルポンプ装置1は、自動車のトランスミッション用油圧ポンプとして用いられ、オイルポンプ(例えば、内接ギヤポンプ)2とオイルポンプ2を回転駆動する電動モータ(以下、ブラシレスモータという)3とが隣接してユニット化(一体化)されている。また、コントローラ4もモータハウジング15内に組み込まれている。なお、
図1に示すブラシレスモータ3は、ダブルスター結線された3相巻線を有するセンサレスブラシレスモータである。
【0011】
オイルポンプ2は、ここではトロコイド曲線型ポンプを用いていて、トロコイド歯形を有する内歯を備えたポンプ用アウタロータ(以下、アウタロータという)10の内周側に、外歯を備えたポンプ用インナロータ(以下、インナロータという)11を噛み合わせ、ポンププレート14とポンプハウジング13との間に形成されたポンプ室12内にこれらのアウタロータ10およびインナロータ11を偏心して回転自在に配置したポンプ部(ポンプロータ)を構成したものである。
【0012】
インナロータ11は、回転駆動軸(回転軸)7におけるロータ6を形成した部分より一方に寄った部分(
図1左側)に外嵌固着されて、この回転駆動軸7とともに回転す
る。アウタロータ10は、このインナロータ11の外歯よりも1歯多い内歯を備え、回転駆動軸7に対して偏心した位置を中心にポンプ室12内で回転自在となるように配置されている。また、インナロータ11は、外歯がこのアウタロータ10の内歯に全周の一部で噛み合うとともに、各外歯がこのアウタロータ10の内面に全周の各所でそれぞれほぼ内接しながら回転す
る。
【0013】
したがって、ブラシレスモータ3により回転駆動軸7が回転駆動されると、このオイルポンプ2のアウタロータ10およびインナロータ11の間隙の容積がこの回転駆動軸7の1回転の間に拡大と縮小を繰り返すので、これらの間隙に通じるポンププレート14に設けられたインポートからアウトポートに向けて油を送り出すポンプ動作が行われることになる。
【0014】
ブラシレスモータ3は、回転するモータ用ロータ(以下、ロータという)6と、このロータ6の外周面の外側に固定されたモータ用ステータ(以下、ステータという)5とで構成される。ロータ6は、回転駆動軸7の外周面に、例えば、複数個の永久磁石8を周方向に沿って並べて配置して形成したものである。回転駆動軸7は、ブラシレスモータ3とオイルポンプ2とで共用する回転軸であり、両端部をポンプハウジング13とロータ保持部材23の内部に配置された軸受(例えば、転がり軸受)31,32によって回転自在に軸支されている。
【0015】
ステータ5は、ロータ6の外周面の外側にわずかなエアギャップを介して分割されたステータコア9の内向きの図示しないティースを複数個配置している。このステータコア9の各ティースには、コイル17をステータコア9から絶縁するための樹脂製(例えば、PPS)のインシュレータ21が軸線方向両端から装着されそれぞれ3相のコイル17が巻回されてステータサブアッシーを形成している。また、ステータ5は、上記複数のステータサブアッシーから構成され、各ステータサブアッシーは、周囲を円筒状薄肉の金属製(例えば、鉄)のカラー22によって、締め付け固定されている。
【0016】
コイル17の端部は、バスバー18と電気的に接続されている。インシュレータ21は、ブラシレスモータ3の駆動端子となる3本のバスバー18と一体にモールドされている。各バスバー18は、インシュレータ21の右端部から中心軸線に平行に延びている。
【0017】
上記ステータ5、ロータ保持部材23、およびバスバー18は、モータハウジング15と一体にモールドされ、モータハウジング15とバスバー18との間はシール部材によりシールされている。モータハウジング15は、円筒形状で反モータ側に底部を有し、回転軸線方向外側(
図1右側)に向かって開口している。この開口部は、カバー(蓋)30で覆われている。
【0018】
また、ステータコア9に装着されたインシュレータ21には、複数個の金属製(例えば、鉄、銅等)の図示しないナットが、回転中心に対し周方向に配置されインサート成形により埋設されている。そして、ポンププレート14からポンプハウジング13を通して挿入された図示しないボルトをインシュレータ21に埋設されたナットにねじ止めすることにより、ブラシレスモータ3のステータ5が固定されている。
【0019】
オイルポンプ2のハウジングを構成するポンププレート14およびポンプハウジング13は、非磁性材料(例えば、アルミダイカスト)により形成される。ブラシレスモータ3およびコントローラ4を収容するモータハウジング15およびカバー30は、樹脂材料(例えば、熱可塑性樹脂)により形成される。電動オイルポンプ装置1のハウジング本体は、上記ポンププレート14,ポンプハウジング13、カラー22、モータハウジング15、およびカバー30により構成されている。ここで、モータハウジング15およびカバー30は、防水カバーを形成している。ポンプハウジング13、カラー22、および
ロータ保持部材23は、中心軸の方向に相互に組み合わせられてブラシレスモータ3のステータ5およびロータ6を固定している。
【0020】
また、本実施形態の電動オイルポンプ装置1には、モータハウジング15の底部外側(反モータ側)の開口部と開口部を覆うカバー30とで制御室24が形成されている。ブラシレスモータ3を制御するためのコントローラ4の制御基板(以下、基板という)28がこの制御室24に収容され、モータハウジング15底部に設けられた複数の基板固定部25の端面にねじ止めで取り付けられている。基板28には、直流電源を交流に変換してブラシレスモータ3の各コイル17に駆動電流を供給するインバータ回路、およびホール素子等のセンサが検出したアウタロータ10の回転位置の情報に基づいて、このインバータ回路を制御する制御回路からなる制御回路部29が搭載されている。コントローラ4の制御回路部29を構成する上記インバータ回路および制御回路のマイコンやコイル、コンデンサ等の電子部品が基板28の両面に実装されている。
【0021】
各コイル17と接続されインシュレータ21に絶縁支持されたブラシレスモータ3の相出力端子であるバスバー18は、基板28に設けられたスルーホール(貫通孔)
に挿通され、はんだ付けにより基板28上の制御回路部29に接続されている。また、モータハウジング15の側面にはコネクタシェル19がモータハウジング15と一体に設けられ、その内部のコネクタピン(端子部)20が基板28に設けられたスルーホールに挿入されてはんだ付けにより基板28上の制御回路部29と電気的に接続されている。なお、このコネクタシェル19には、別体の電源が接続された図示しないハーネスのコネクタが装着され
る。
【0022】
ともに樹脂材料により形成されたモータハウジング15とカバー30とは、ここでは、スピン溶着を用いて接合されている。モータハウジング15の開口部を覆うカバー30の裏面側には、円環状の溶着用リブが形成されており、カバー30を回転させながら溶着用リブを加熱溶融させ、固定した相手部品のモータハウジング15の凹状部に押し付けることで溶着されている。さらに、ロータ6をモータハウジング15の中心部に挿入し、ポンプハウジング13およびポンププレート14を取り付けステータ5に固定して電動オイルポンプ装置1が組み付けられている。
【0023】
そして、上記構成により、制御回路部29によって制御された駆動電流がブラシレスモータ3の各コイル17に供給される。これにより、コイル17に回転磁界が発生し、永久磁石8にトルクが生じてロータ6が回転駆動される。このようにして、インナロータ11が回転駆動されると、アウタロータ10がこれに従動して回転し、これらのアウタロータ10の内歯と,インナロータ11の外歯の間隙が拡縮を繰り返すので、インポートおよびアウトポートを通じて油を吸入・吐出するポンプ動作が行われる。
【0024】
次に、
図2は、
図1をX−X方向から見たブラシレスモータ3のハウジング構造を示す断面図、
図3は、基板28の取付け構造を示す詳細断面図である。ここで、
図3はモータハウジング15等の基板28の固定部分のみを示し、カバー30および内部構造は省略している。
【0025】
図2に示すように、モータハウジング15のオイルポンプ2と反対側の底部の筒状空間(
図1参照)には、外周内側に等間隔で基板28を取り付ける複数(例えば、本実施形態では2個、180°ピッチ)の基板固定部25が形成されている。基板固定部25には、基板28をねじ止めするための
締結部材としての金属製(例えば、鉄、銅等)のインサートナット26がインサート成形により埋設されている。また、モータハウジング15の外周壁面には、コネクタピン20が収納されたコネクタシェル19が一体に形成されている。コネクタピン20は、モータハウジング15に一体的にモールドされ、インサートナット26に対し周方向に90°の位置に配設されて先端部がモータハウジング15の底部の筒状空間に軸方向に突出している。ここで、
図2中矢印で示すインサートナット26とコネクタピン20との間の位置精度を確保した状態でモータハウジング15が一体成形される。コネクタピン20の先端部は、基板28のスルーホールに挿入されはんだ付けにより電気的に接続される。
【0026】
図3に示すように、インサートナット26は、基板固定部25
の端面よりわずかに基板28方向(
図3上側、軸方向)に突出して装着されている。また、基板固定部25の軸方向高さは、モータハウジング15の外周端面より高く形成されている。そして、基板28の貫通孔を通して挿入された締結ねじ27を基板固定部25に埋設されたインサートナット26に螺合することにより、基板28が固定されている。このとき、基板28は、インサートナット26の座面に当接し
、基板固定部25の端面との間に隙間を有して、モータハウジング15の外周端面より軸方向上側に固定されている。
【0027】
次に、上記のように構成された本実施形態である電動オイルポンプ装置1の作用および効果について説明する。
【0028】
上記構成によれば、電動オイルポンプ装置1は、オイルポンプ2に隣接して、ブラシレスモータ3およびコントローラ4の基板28がオイルポンプ2に対して回転駆動軸7の軸線方向に並んで配置されて構成されている。基板28は、モータハウジング15の底部外側に形成される制御室24に収容されている。モータハウジング15の外周側面にはコネクタピン20が収納されたコネクタシェル19が一体成形されている。また、基板28をねじ締結するためにモータハウジング15底部に設けられた複数の基板
固定部25に金属製のインサートナット26がインサート成形されている。コネクタピン20とインサートナット26は、位置精度を確保して同時にモータハウジング15にインサート成形されている。ここで、インサートナット26は、モータハウジング15の基板
固定部25の端面から基板28方向(軸線方向外側)にわずかに突出して埋設されており、基板28は、インサートナット26の座面に当接し
、基板固定部25の端面との間に隙間を有して締結ねじ27により固定されている。
【0029】
これにより、コネクタピン20とインサートナット26とが直接位置決めされ、基板28がコネクタピン20に対してインサートナット26に精度よく位置決めされるので、コネクタピン20が基板28のスルーホールに挿入され易く、容易に基板28をモータハウジング15に組み付けることができる。その結果、基板組み付けの工数を削減できるとともに、製造コストの増大を抑制することができる。
また、基板28との接触による基板固定部25の樹脂の変形がないので、基板28を安定的な締結力で平行度を保ってモータハウジング15に固定することができる。
さらに、基板28がモータハウジング15の外周端面より軸方向外側に配置されているので、コネクタピン20の基板28裏面におけるはんだ状態(フィレット)を容易に確認できる。これにより、基板28のはんだ付け不良を低減することができる。
【0030】
以上のように、本実施形態によれば、一体化したブラシレスモータと基板の製造工数を削減でき製造コストの低減が可能な電動オイルポンプ装置を提供できる。
【0031】
以上、本発明に係る一実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施することも可能である。
【0032】
上記実施形態では、モータハウジング15の底部に2個のインサートナット26を回転中心に対し周方向に180°の間隔で配置して、基板28を締結ねじ27で締結するようにしたが、これに限定されるものでなく、インサートナット26の個数、配置は、基板28の平行度が確保され均等に締結ねじ27の締結力が規制されるものであればよい。
【0033】
また、上記実施形態では、オイルポンプ2として内接ギヤ式ポンプを用いる場合を示したが、これに限定されるものでなく、ベーン駆動や外接ギヤなどを用いた回転ポンプであってもよい。
【0034】
さらに、上記実施形態では、ブラシレスモータ3を電動オイルポンプ装置1に適用する場合を示したが、これに限定されるものでなく、同様のブラシレスモータ3を用いた他の装置に適用してもよい。さらに、ブラシ付モータも適用が可能である。