(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019739
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】紙箱および紙箱ブランク
(51)【国際特許分類】
B65D 5/66 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
B65D5/66 311N
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-113121(P2012-113121)
(22)【出願日】2012年5月17日
(65)【公開番号】特開2013-237473(P2013-237473A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080322
【弁理士】
【氏名又は名称】牛久 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100104651
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100114786
【弁理士】
【氏名又は名称】高城 貞晶
(72)【発明者】
【氏名】杉山 有二
【審査官】
遠藤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−002457(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3057218(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3061917(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面部,底面部,および上記天面部の周縁と上記底面部の周縁とを結ぶ側壁面部を備え,上記天面部に形成された天面破断線に沿って上記天面部の少なくとも一部を裂くことによって上記天面部の少なくとも一部を開閉部分として閉鎖可能に開口させる紙箱であって,
上記側壁面部の一部が,上記側壁面部に形成された,上記天面破断線に連続する側壁面破断線によって外形が規定される,上記天面部の開閉部分とつながる押込み片を構成しており,
上記押込み片が紙箱の内がわに向けて押込まれて上記側壁面破断線に沿って裂かれたときに紙箱の内がわに向けて押されることで両がわに向けてそれぞれ撓みを生じる部分を有しており,かつ上記開閉部分が閉鎖されるときに上記押込み片が差込まれる切込みが形成されている撓み片が,上記押込み片を有する側壁面部の内がわ面に沿って設けられており,
上記撓み片が,上記押込み片を有する側壁面部の一側がわから延びる第1の撓み半片と,上記押込み片を有する側壁面部の他側がわから延びる第2の撓み半片とから構成され,
上記押込み片に対応する位置において,上記第1の撓み半片の先端部分と第2の撓み半片の先端部分とが互いに向き合って位置しており,上記先端部分を除いて上記第1および第2の撓み半片が上記押込み片を有する側壁面部の内がわ面に接着されている,
紙箱。
【請求項2】
天面部,底面部,および上記天面部の周縁と上記底面部の周縁とを結ぶ側壁面部を備え,上記天面部に形成された天面破断線に沿って上記天面部の少なくとも一部を裂くことによって上記天面部の少なくとも一部を開閉部分として閉鎖可能に開口させる紙箱であって,
上記側壁面部の一部が,上記側壁面部に形成された,上記天面破断線に連続する側壁面破断線によって外形が規定される,上記天面部の開閉部分とつながる押込み片を構成しており,
上記押込み片が紙箱の内がわに向けて押込まれて上記側壁面破断線に沿って裂かれたときに紙箱の内がわに向けて押されることで両がわに向けてそれぞれ撓みを生じる部分を有しており,かつ上記開閉部分が閉鎖されるときに上記押込み片が差込まれる切込みが形成されている撓み片が,上記押込み片を有する側壁面部の内がわ面に沿って設けられており,
上記天面部が方形であり,
上記天面部の四辺にそれぞれ折り線を介して連設された上記第1〜第4の4つの側壁面部分によって上記紙箱の側壁面部が構成され,
上記第1〜第4の側壁面部分のそれぞれに折り線を介してさらに連設された第1〜第4の底面部分によって紙箱の底面部が構成されている,
紙箱。
【請求項3】
上記撓み片が,上記押込み片の押込みが無くなったときに元の位置に戻る弾性を有している,
請求項1または2に記載の紙箱。
【請求項4】
天面部,底面部,および上記天面部の周縁と上記底面部の周縁とを結ぶ側壁面部を備え,上記天面部に形成された天面破断線に沿って上記天面部の少なくとも一部を裂くことによって上記天面部の少なくとも一部を開閉部分として閉鎖可能に開口させる紙箱をつくるためのブランクであって,
上記天面破断線が形成された方形の天面部,
上記天面部の四辺に折り線を介してそれぞれ連設された方形の第1〜第4の側壁面部分,ならびに
上記第1〜第4の側壁面部分のそれぞれに折り線を介してさらに連設され,先端部分が互いに接着される三角形の第1〜第4の底面部分を備え,
上記第1の側壁面部分の一部が,上記第1の側壁面部分に形成された上記天面破断線に連続する側壁面破断線によって外形が規定される,上記天面部の開閉部分とつながる押込み片を構成しており,
上記第1の側壁面部分に隣接する第2,第3の側壁面部の同じがわの一側にそれぞれ折り線を介して連設されており,組み立てられるときに上記第1の側壁面部分の内がわ面に先端部分を除いて接着されかつその先端部分に上記開閉部分が閉鎖されるときに上記押込み片が差込まれる切込みが形成された第1および第2の撓み半片,ならびに
上記第1の側壁面部分に隣接する第2,第3の側壁面部分の同じがわの他側にそれぞれ折り線を介して連設されており,組み立てられるときに上記第1の側壁面部分に対向する第4の側壁面部分の内がわ面に沿って設けられる第1および第2のフラップをさらに備えている,
紙箱ブランク。
【請求項5】
少なくとも上記第1および第2の撓み半片が弾性を有している,請求項4に記載の紙箱ブランク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は紙箱および紙箱ブランクに関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレート,飴,ラムネ等の一口サイズの菓子を,所定数ずつ紙箱内に収納して紙箱単位で販売することがある。このような紙箱は,一般に開封時に完全には解体されずに,残った菓子を収納するためにリクローズできるようにしたものが多い(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−95239号公報
【0004】
図7はリクローズ構造を持つ従来の紙箱のブランク(展開図)50Aを,
図8は
図7のブランク50Aから組立てられた紙箱50Bの斜視図をそれぞれ示している。
【0005】
図7を参照して,紙箱50Bを形成するためのブランク50Aは方形の底面部31を備えている。底面部31の左右に内がわ左右側壁面部32が,上下(前後)に後側壁面部35および内がわ前側壁面部33が,それぞれ折り線を介して連設されている。後側壁面部35にはさらに天面部37が折り線を介して連設されている。天面部37にさらに外がわ前側壁面部39が折り線を介して連設され,天面部37の左右にはそれぞれ外がわ左右側壁面部38が折り線を介して連設されている。さらに,内がわ前側壁面部33の左右に折り線を介して差込みパネル34が連設され,内がわ前側壁面部33の先端には飾りパネル42が折り線を介して連設されている。後側壁面部35の左右にも折り線を介して差込みパネル36が連設されている。
【0006】
底面部31の四辺につながる内がわ前側壁面部33,後側壁面部35,および左右対称の内がわ左右側壁面部32をそれぞれ折り線に沿って直角に折曲げ,内がわ前側壁面部33の左右および後側壁面部35の左右につながる差込みパネル34,36もそれぞれ折り線に沿って直角に折曲げる。内がわ前側壁面部33の先端につながる飾りパネル42も折り線に沿って直角に折り曲げる。内がわ左右側壁面部32に形成された合計4つの切込み32aのそれぞれに,内がわ前側壁面部33の左右の2つの差込みパネル34および後側壁面部35の左右の2つの差込みパネル36をそれぞれ差込んで係合する。底面部31,内がわ前側壁面部33,内がわ左右側壁面部32,および後側壁面部35から構成される天面が開口した箱体が組み立てられる。飾りパネル42は箱体の開口の一部を覆う。
【0007】
次に,後側壁面部35につながる天面部37,天面部37の先端につながる外がわ前側壁面部39,天面部37の左右につながる外がわ左右側壁面部38もそれぞれ折り線に沿って直角に折り曲げ,外がわ前側壁面部39(後述する閉鎖部分39Aを除く範囲)と内がわ前側壁面部33,外がわ左右側壁面部38と内がわ左右側壁面部32をそれぞれ接着する。これにより天面開口が天面部37によって閉じられて,前側および左右側に二重の側壁を備える紙箱50Bが完成する。
【0008】
図7を参照して,天面部37から外がわ前側壁面部39にかけて,2本の破断線(ミシン目)mが間隔をあけて形成されている。2本の破断線mは天面部37上において互いに平行であり,2本の破断線mの先端を結ぶように天面部37上には折り目fが形成されている。また,外がわ前側壁面部39において2本の破断線mは途中で互いに近づき,互いに離れたままで外がわ前側壁面部39の先端にまで至っている。天面部37において2本の破断線mおよび折り目によって囲まれる範囲を開閉部分37Aと呼ぶ。外がわ前側壁面部39において2本の破断線mによって囲まれる範囲を閉鎖部分39Aと呼ぶ。閉鎖部分39Aの先端部分を特に摘み部40と呼ぶ。
【0009】
図8を参照して,組み立てられた紙箱50Bにおいて,紙箱50Bの前壁(外がわ前側壁面部39)の下端に摘み部40が位置している。この摘み部40を指で摘んで引っぱり,上方に引き上げることで破断線mに沿って閉鎖部分39Aが裂け,続いて摘み部40を紙箱50Bの後ろがわに向けて移動させると,破断線mに沿って開閉部分37Aが裂けて紙箱50Bの天面が開口する(プルオープン)。開閉部分37Aは折り目fにおいて折り曲げられる。
【0010】
上記摘み部40に弧状の切込みによって差込み片40aが形成されている。この差込み片40aが,内がわ前側壁面部33に入れられた切込み33a(
図7参照)に差込まれることで,上記開閉部分37Aによる天面開口のリクローズが簡易に保持される。
【0011】
図9は変形例の紙箱のブランク(展開図)60Aを,
図10は
図9のブランク60Aから組立てられる紙箱60Bの斜視図をそれぞれ示している。
図7に示すブランク50Aおよび
図8の紙箱50Bとは,外がわ前側壁面部39,内がわ左右側壁面部32および外がわ左右側壁面部38の幅が狭い点,摘み部40が差込まれる内がわ前側壁面部33の切込み33aの形成位置,および飾りパネルが形成されていない点が異なる。変形例の紙箱60Bも,摘み部40を引っぱり,その後移動させることで開封されるプルオープンのタイプである。
図7のブランク50Aに比べて,
図9のブランク60Aは約15%程度の省面積化を図ることができている。
【0012】
摘み部40を引っぱって開封するプルオープン・タイプの紙箱50B,60Bでは,開封に際して,最初に摘み部40に爪ないし指を引っかけることが必要とされる。摘み部40と摘み部40が位置する側壁面部33との間にはほとんど隙間が無いので,摘み部40に爪ないし指をかけるとき(摘み部40を摘むまで)にやや手間がかかることがある。
【発明の開示】
【0013】
この発明は,リクローズ構造を有しつつ,より開封しやすい新規な開封構造を持つ紙箱を提供することを目的とする。
【0014】
この発明はまた,省面積化がさらに図られた,上述の新規な開封構造を持つ紙箱を作成するための紙箱ブランクを提供することを目的とする。
【0015】
この発明による紙箱は,天面部,底面部,および上記天面部の周縁と上記底面部の周縁とを結ぶ側壁面部を備え,上記天面部に形成された天面破断線に沿って上記天面部の少なくとも一部を裂くことによって上記天面部の少なくとも一部を開閉部分として閉鎖可能に開口させるものであって,上記側壁面部の一部が,上記側壁面部に形成された,上記天面破断線に連続する側壁面破断線によって外形が規定される,上記天面部の開閉部分とつながる押込み片を構成しており,上記押込み片が紙箱の内がわに向けて押込まれて上記側壁面破断線に沿って裂かれたときに紙箱の内がわに向けて押されることで両がわに向けてそれぞれ撓みを生じる部分を有しており,かつ上記開閉部分が閉鎖されるときに上記押込み片が差込まれる切込みが形成されている撓み片が,上記押込み片を有する側壁面部の内がわ面に沿って設けられていることを特徴とする。
【0016】
この発明による紙箱は,側壁面部の一部を構成する押込み片を紙箱の内がわに向けて押込んで上記側壁面破断線に沿って押込み片を裂き,その後上記押込み片につながる開閉部分を天面破断線に沿って裂くことで開封される(プッシュオープン)。切込みが形成されている撓み片が,上記押込み片を有する壁面部の内がわ面に沿って設けられているから,開閉部分につながる押込み片を上記撓み片の切込みに差込むことで,開封された紙箱の開口をリクローズしてその状態を簡易に保持することができる。リクローズを達成するために上記切込みが形成されている撓み片が上記押込み片を有する側壁面部の内がわ面に沿って設けられているが,上記撓み片は押込み片が紙箱の内がわに向けて押込まれたときに紙箱の内がわに向けて押されることで両がわに向けてそれぞれ撓みを生じる部分を有しているから,上記押込み片の押込み(開封の契機)が撓み片によって阻害されることはない。リクローズ構造を有しつつ,これまでの紙箱にはない新しい開封構造(プッシュオープン構造)を持つ紙箱が提供される。この発明による紙箱は,摘み部に爪ないし指を引っかけることを必要とするプルオープン構造を持つ従来の紙箱よりも確実に開封しやすい。
【0017】
好ましくは上記撓み片が,上記押込み片の押込みが無くなったときに元の位置に戻る弾性を有している。上記押込み片の上記撓み片の切込みへの差込みが容易になる。
【0018】
好ましくは,上記撓み片が,上記押込み片を有する側壁面部の一側がわから延びる第1の撓み半片と,上記押込み片を有する側壁面部の他側がわから延びる第2の撓み半片とから構成され,上記押込み片に対応する位置(上記押込み片を臨む位置)において,上記第1の撓み半片の先端部分と第2の撓み半片の先端部分とが互いに向き合って位置しており,上記先端部分を除いて上記第1および第2の撓み半片が上記押込み片を有する側壁面部の内がわ面に接着されている。押込み片を紙箱の内がわに向けて押すと,第1の撓み半片の先端部分と第2の撓み半片の先端部分が観音開き(ケースメント)のようにして互いに両がわの向き(離れる向き)に撓みを生じるから,押込み片の押込みが,第1,第2の撓み半片によって邪魔されることがない。
【0019】
たとえば上記天面部が方形であれば,上記天面部の四辺にそれぞれ折り線を介して連設された第1〜第4の側壁面部分によって上記紙箱の壁面部を構成し,上記第1〜第4の側壁面部分のそれぞれに折り線を介してさらに連設された第1〜第4の底面部分によって紙箱の底面部を構成することができる。
【0020】
この発明は,上述した紙箱を作成するための紙箱ブランクも提供する。この発明による紙箱ブランクは,天面部,底面部,および上記天面部の周縁と上記底面部の周縁とを結ぶ側壁面部を備え,上記天面部に形成された天面破断線に沿って上記天面部の少なくとも一部を裂くことによって上記天面部の少なくとも一部を開閉部分として閉鎖可能に開口させる紙箱をつくるためのブランクであって,上記天面破断線が形成された方形の天面部,上記天面部の四辺に折り線を介してそれぞれ連設された方形の第1〜第4の側壁面部分,ならびに上記第1〜第4の壁面部分のそれぞれに折り線を介してさらに連設され,先端部分が互いに接着される三角形の第1〜第4の底面部分を備え,上記第1の側壁面部分の一部が,上記第1の側壁面部分に形成された上記天面破断線に連続する側壁面破断線によって外形が規定される,上記天面部の開閉部分とつながる押込み片を構成しており,上記第1の側壁面部分に隣接する第2,第3の側壁面部分の同じがわの一側にそれぞれ折り線を介して連設されており,組み立てられるときに上記第1の側壁面部分の内がわ面に先端部分を除いて接着されかつその先端部分に上記開閉部分が閉鎖されるときに上記押込み片が差込まれる切込みが形成された第1および第2の撓み半片,ならびに上記第1の側壁面部分に隣接する第2,第3の側壁面部分の同じがわの他側にそれぞれ折り線を介して連設されており,組み立てられるときに上記第1の側壁面部分に対向する第4の側壁面部分の内がわ面に沿って設けられる第1および第2のフラップをさらに備えていることを特徴とする。
【0021】
この発明による紙箱ブランクは,展開状態において,上記天面部がほぼ中心(中央)に据えられた,正方形に近い外形を持つことができる。紙箱の作成に用いられるブランクの面積の省面積化を図ることができる。
【0022】
少なくとも上記第1および第2の撓み半片は弾性を有していることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】
図1の紙箱ブランクから組立てられる紙箱の斜視図である。
【
図4】開封の様子を示す紙箱の一部破断拡大斜視図である。
【
図6】リクローズの様子を示す紙箱の一部拡大斜視図である。
【
図7】従来の紙箱の紙箱ブランク(展開図)である。
【
図8】
図7に示す紙箱ブランクから組立てられた紙箱の斜視図である。
【
図9】従来の紙箱の紙箱ブランク(展開図)の他の例である。
【
図10】
図9に示す紙箱ブランクから組立てられた紙箱の斜視図である。
【実施例】
【0024】
図1から
図6はこの発明の実施例による紙箱を示している。この実施例による紙箱1B(
図2)は1枚の厚紙により作られる。
図1は紙箱1Bを形成する型取り(型抜き)された型紙(以下,ブランクという)1Aの展開図であり,紙箱1Bの外がわとなる面を見たものである。破線は紙箱1Bを作るときに山折りされる折り線を示している。好ましくは折り曲げを容易にするために,破線に沿って折り線加工または折罫加工が施される。
図2は
図1に示すブランク1Aを折り曲げかつ後述する必要箇所を接着(糊付け)することにより完成した紙箱1Bを示している。
【0025】
図1を参照して,紙箱1Bのブランク1Aにおいて,方形の天面部11がほぼ中心(中央)に据えられている。天面部11の左右両側に側壁面部12L,12Rが折り線を介してそれぞれ互いに反対方向に連設されている。天面部11の前,後(正面,背面)がわには折り線を介して前側壁面部13および後側壁面部14がそれぞれ互いに反対方向に連設されている。左右側壁面部12L,12R,前側壁面部13および後側壁面部14は同一の方形の形状を持つ。左右側壁面部12L,12R,前側壁面部13および後側壁面部14の幅が紙箱1Bの高さを規定する。
【0026】
天面部11に2本の破断線(鉤型の切れ目を間欠的に連続させたもの)mが形成されている。2本の破断線mは左右対称に形成されており,それらの一端は左右側壁面部12L,12Rのそれぞれとの境界の近くでかつ後側壁面部14との境界にも近い位置にあり,そこから前側壁面部13に向けて直線状に延び,途中で互いに近づく向きに斜めに延びて,他端は間隔をあけて前側壁面部13との境界にまで達している。また,天面部11には2本の破断線mの上記一端同士を結ぶようにして折り目fが形成されている。2本の破断線m,2本の破断線mの一端同士を結ぶ折り目f,および2本の破断線mの他端同士を結ぶ前側壁面部13との境界の一部によって囲まれる天面部11の範囲を,以下,開閉部分11Aと呼ぶ。
【0027】
角が丸められた概略方形の押込み片13aが上記開閉部分11Aに連続して前側壁面部13上に形成されている。押込み片13aは前側壁面部13の一部であり,間欠的に設けられたつなぎ部tを持つ1本の切込みkによってその外形が規定され,切込みkの両端は天面部11に形成された2本の破断線mのそれぞれの他端とほぼ連続する位置にある。切込みkとつなぎ部tとの組合せを,「間欠切込み」または「破断線」と表現することもできる。
【0028】
左右側壁面部12L,12R,前側壁面部13および後側壁面部14に,角が丸められた概略三角形の同一形状の4つの底面部15が,天面部11から離れる向きに折り線を介してそれぞれ連設されている。互いに反対方向に延びる一対の底面部15の一方(
図1では左側壁面部12Lにつながる底面部15と前側壁面部13につながる底面部15)の先端部分に糊部Nが設けられている。4つの底面部15のいずれについても,2つの斜辺のそれぞれが隣りの底面部15の斜辺と一直線上にある。
【0029】
前側壁面部13の左右の両側に,左右側壁面部12L,12Rの一側端と折り線を介して連設された第1,第2の同一形状の撓み半片21L,21Rがそれぞれ設けられている。第1,第2の撓み半片21L,21Rのそれぞれと前側壁面部13との間には切込みが入れられており,第1,第2の撓み半片21L,21Rと前側壁面部13とは連続していない。第1,第2の撓み半片21L,21Rは,左右側壁面部12L,12Rとの境界および前側壁面部13との間の切込みを斜辺とする,概略三角形状の外形を持つ。第1,第2の撓み半片21L,21Rの底辺は,いずれもその両がわに位置する底面部15の斜辺と一直線上にある。
【0030】
第1,第2の撓み半片21L,21Rの先端部分(左右側壁面部12L,12Rとの境界から最も遠い箇所)に弧状の差込用切込み21aが形成されており,第1,第2の撓み半片21L,21Rの先端部分はこの差込用切込み21aよって2つに分離されている。差込用切込み21aよって2つに分離されている第1,第2の撓み半片21L,21Rの先端部分を,それぞれ内がわ押さえ部21Aおよび外がわ押さえ部21Bと呼ぶ。
【0031】
差込用切込み21aが形成された先端部分を除いて,上記第1,第2の撓み半片21L,21Rにも糊部Nが設けられている。
【0032】
後側壁面部13の左右の両側に,左右側壁面部12L,12Rの他側端と折り線を介して連設された第1,第2の同一形状の接着片22L,22Rがそれぞれ設けられている。第1,第2の接着片22L,22Rと後側壁面部14との間には切込みが入れられており,第1,第2の接着片22L,22Rと後側壁面部14とは連続していない。第1,第2の接着片22L,22Rは方形の一頂点の部分が斜めにカットされた外形を持つ。この斜めのカットが,第1,第2の接着片22L,22Rのそれぞれの両がわに位置する底面部15の斜辺と一直線上にある。第1,第2の接着片22L,22Rにも糊部Nが設けられている。
【0033】
上記のように型取り(型抜き)されたブランク1Aが折り線(破線)に沿って折り曲げられ,かつ糊部Nによって接着されることで,
図2に示す形状の紙箱1Bとなる。
【0034】
すなわち,左右側壁面部12L,12Rを天面部11に対してほぼ直角に折り曲げて起立させ,第1,第2の撓み半片21L,21R,および第1,第2の接着片22L,22Rを左右側壁面部12L,12Rに対してほぼ直角に折り曲げる。このとき第1,第2の撓み半片21L,21Rは,それらの先端部分が,わずかな間隙を持ってまたは互いに接して,互いに向き合う。前側壁面部13および後側壁面部14を天面部11に対してほぼ直角に折り曲げて起立させ,糊部Nによって前側壁面部13の内がわ面と第1,第2の撓み半片21L,21Rとを接着し,かつ糊部Nによって後側壁面部14と第1,第2の接着片22L,22Rとを接着する。ここまでの組み立てによって,底面が開口した紙箱が形成される。内容物(チョコレート,飴,ラムネ等)はこの底面開口から紙箱内に収容される。
【0035】
最後に,4つの底面部15を折り線に沿ってほぼ直角に折り曲げ,重なり部分を底面部15に設けられた糊部Nによって接着することで,4つの底面部15によって上記底面開口が閉じられ,内容物を収容した紙箱1Bの組み立てが完成する。内容物を収容した紙箱1Bを透明フィルム(図示略)によって包装してもよい。
【0036】
紙箱1Bは,天面部11の一部である開閉部分11Aを裂くことで開封される。
【0037】
図3を参照して,紙箱1Bを開封する場合,はじめに前側壁面部13の押込み片13aが紙箱1Bの外がわから内がわに向けて押込まれる。押込み片13aは,上述のように,開閉部分11Aに連続する箇所を除いて間欠的に設けられたつなぎ部tによって前側壁面部13につながっているだけであるから(
図1参照),押込み片13aを指で軽く押込むだけでつなぎ部tが切れ,押込み片13aは開閉部分11Aとの境界で紙箱1Bの内がわに向けて折れ曲がる。
【0038】
前側壁面部13の内がわには,上述したように,前側壁面部13と接着された第1,第2の撓み半片21L,21Rが位置している。ここで
図4を参照して,
図4は,押込み片13aが押込まれているときの紙箱1Bの拡大図であって,押込み片13aが押し込まれたときの上記第1,第2の撓み半片21L,21Rの様子を,押込み片13,天面部11等の図示を省略して示す一部破断斜視図である。第1,第2の撓み半片21L,21Rは,上述のように,その先端部分を除く箇所が糊部Nによって前側壁面部13の内がわ面と接着されており,先端部分は前側壁面部13と接着されていない。このため押込み片13を押込むと,押込み片13によって押されることで,第1,第2の撓み半片21L,21Rの先端部分は観音開きのようにして左右に互いに離れつつ撓みを生じる。このため前側壁面部13の内がわに位置する第1,第2の撓み半片21L,21Rが,押込み片13aの内がわへの押込みを阻害することはない。なお,分かりやすくするために,
図4では,第1,第2の撓み半片21L,21Rが,紙箱1Bの内がわかつ両がわの向きにそれぞれ撓んでいる様子が強調して描かれている。
【0039】
押込み片13aと開閉部分11Aの先端(境界部分)を指で摘み,紙箱1Bの後ろ方向(背面方向)に押す。
図5を参照して,天面部11に形成された破断線mに沿って開閉部分11Aが天面部11から裂かれ,紙箱1Bの天面が開口する。破断線mに沿う破断は天面部11に形成された折り目fの位置で止まり,開閉部分11Aは折り目fに沿って折り曲げることができる。また,第1,第2の撓み半片21L,21Rを含む紙箱1Bの全体は厚紙で構成されているから,押込み片13aの押込みが無くなると,厚紙が持つ弾性(反発力)によって,第1,第2の撓み半片21L,21Rの先端部分の撓みは無くなり,第1,第2の撓み半片21L,21Rの先端部分はほぼ元の位置に復帰する。
【0040】
図6を参照して,天面開口を再度閉じる(リクローズする)場合,押込み片13aが第1,第2の撓み半片21L,21Rの先端部分に形成された差込用切込み21aに差込まれる。押込み片13aは内がわ押さえ部21Aと外がわ押さえ部21Bとによって挟まれ,これによりリクローズ状態が簡易に保持される。
【0041】
この実施例に記載の紙箱1Bは,その容量(高さ,幅,奥行き)を従来技術において説明した紙箱50B,60B(
図8および
図10)の容量と同じにした場合,紙箱1Bを組立てるためのブランク1A(
図1)の面積については,
図9のブランク60Aと比較して約10%の省面積化を図ることができる。
【0042】
また,この実施例に記載の紙箱1Bは,従来技術において説明した紙箱50B,60B(
図8および
図10)のように摘み部40を引っぱって開口させるもの(プルオープン)ではなく,押込み片13aを紙箱1Bの内がわに押込んで開口させるもの(プッシュオープン)である。従来の紙箱にはない,開封が容易な斬新な開封構造も提供している。
【符号の説明】
【0043】
1A ブランク
1B 紙箱
12 左右側壁面部
13 前側壁面部
13a 押込み片
14 後側壁面部
15 底面部
21L,21R 撓み半片(撓み片)
21a 差込用切込み
22L,22R 接着片(フラップ)
N 糊部
m 破断線
k 切込み
t つなぎ部