特許第6019747号(P6019747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019747
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】電極製造システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20161020BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   H01M4/139
   H01M4/04 Z
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-116702(P2012-116702)
(22)【出願日】2012年5月22日
(65)【公開番号】特開2013-243087(P2013-243087A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】下泉 純
(72)【発明者】
【氏名】酒井 浩一
【審査官】 佐藤 知絵
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05616366(US,A)
【文献】 特開平9−283123(JP,A)
【文献】 特開2010−064022(JP,A)
【文献】 特開2013−012327(JP,A)
【文献】 特開2011−222299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/139
H01M 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回された金属箔のロールから巻出され搬送される前記金属箔の面に、溶媒を含む電極材を塗工して付着させる塗工装置と、
搬送される前記金属箔の面に付着された前記溶媒を含む電極材を乾燥させて固着する乾燥装置と、
搬送される前記金属箔の面に固着された前記電極材をプレスするプレス装置と、を備えた電池の電極製造システムであって、
記金属箔を外周面に巻き付けて接触させた状態を維持しながら前記金属箔を外周面に沿って紆余曲折させて搬送する複数のローラを備え、
前記塗工装置、前記乾燥装置および前記プレス装置による各工程は、前記金属箔を前記ローラの外周面に面接触させた状態で一連で実行される、電極製造システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記塗工装置、前記乾燥装置および前記プレス装置のうち少なくとも2つの装置は、上下方向に配置されている電極製造システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記塗工装置による塗工工程、前記乾燥装置による乾燥工程および前記プレス装置によるプレス工程のうち少なくとも2つの工程は、兼用される1つの前記ローラの外周面に沿って搬送されている前記金属箔に対して行われる、電極製造システム。
【請求項4】
請求項において、
記プレス装置によるプレス工程は、一対の前記ローラにおいて行われ
前記塗工装置による塗工工程、前記乾燥装置による乾燥工程は、前記一対のローラのうち一方のローラの外周面に沿って搬送されている前記金属箔に対して行われる、電極製造システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記電極製造システムは、前記一対のローラのうち一方のローラに隣接して配置される第3ローラを備え、
前記塗工装置による前記金属箔の一方面に対する塗工工程、前記乾燥装置による前記一方面に対する乾燥工程は、前記一対のローラのうち一方のローラの外周面に沿って搬送されている前記金属箔に対して行われ、
前記塗工装置による前記金属箔の他方面に対する塗工工程、前記乾燥装置による前記他方面に対する乾燥工程は、前記第3ローラの外周面に沿って搬送されている前記金属箔に対して行われる、電極製造システム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項において、
前記乾燥装置は、前記溶媒を含む前記電極材を乾燥させたときの蒸気を排気して回収する排気回収装置を備えている電極製造システム。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項において、
前記電極製造システムは、コンテナに収容可能に構成されている電極製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に使用される電極の製造システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池は、電気自動車や電子機器等の駆動用電源として広く用いられている。このような電池に使用される電極の製造システム(電極製造装置、電極製造方法)は、例えば、特開2010−67507号公報(特許文献1)および特開2008−147114号公報(特許文献2)に記載されている。特許文献1および2記載のように、電極製造システムは、電極材および溶媒を混練する混練装置(混練工程)と、混練した溶媒を含む電極材を金属箔に塗工する塗工装置(塗工工程)と、塗工した溶媒を含む電極材を乾燥させる乾燥装置(乾燥工程)と、乾燥した電極材をプレスするプレス装置(プレス工程)とにより概略構成されている。このような構成の電極製造システムにおいては、ロール状の金属箔は、水平方向に巻出されて搬送され、塗工装置による塗工工程、乾燥装置による乾燥工程およびプレス装置によるプレス工程が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−67507号公報
【特許文献2】特開2008−147114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、従来の電極製造システムの乾燥装置は、熱風を用いた乾燥であることから時間が掛かるため、製造ライン長が数十mにおよぶ。このため、電極製造システムは、混練装置と、塗工および乾燥装置と、プレス装置とに分割されて構成されている。そして、電池には、正極用の電極材と負極用の電極材が必要であるため、正負極用の電極製造システムが別々に設けられている。また、製造過程において、電極材に塵、埃、水分等の不純物が混入しないようにするため、電極製造システムは、クリーンでドライな環境に設置する必要がある。よって、従来の電極製造システムは、大型で高コストなものとなっている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、小型で低コストな電極製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1)本発明の電極製造システムは、巻回された金属箔のロールから巻出され搬送される前記金属箔の面に、溶媒を含む電極材を塗工して付着させる塗工装置と、搬送される前記金属箔の面に付着された前記溶媒を含む電極材を乾燥させて固着する乾燥装置と、搬送される前記金属箔の面に固着された前記電極材をプレスするプレス装置と、を備えた電池の電極製造システムであって、前記金属箔を外周面に巻き付けて接触させた状態を維持しながら前記金属箔を外周面に沿って紆余曲折させて搬送する複数のローラを備え、前記塗工装置、前記乾燥装置および前記プレス装置による各工程は、前記金属箔を前記ローラの外周面に面接触させた状態で一連で実行される
【0007】
(請求項2)前記塗工装置、前記乾燥装置および前記プレス装置のうち少なくとも2つの装置は、上下方向に配置されているようにしてもよい。
【0009】
(請求項)前記塗工装置による塗工工程、前記乾燥装置による乾燥工程および前記プレス装置によるプレス工程のうち少なくとも2つの工程は、兼用される1つの前記ローラの外周面に沿って搬送されている前記金属箔に対して行われるようにしてもよい。
【0010】
(請求項4)前記プレス装置によるプレス工程は、一対の前記ローラにおいて行われ、前記塗工装置による塗工工程、前記乾燥装置による乾燥工程は、前記一対のローラのうち一方のローラの外周面に沿って搬送されている前記金属箔に対して行われるようにしてもよい。
(請求項5)前記電極製造システムは、前記一対のローラのうち一方のローラに隣接して配置される第3ローラを備え、前記塗工装置による前記金属箔の一方面に対する塗工工程、前記乾燥装置による前記一方面に対する乾燥工程は、前記一対のローラのうち一方のローラの外周面に沿って搬送されている前記金属箔に対して行われ、前記塗工装置による前記金属箔の他方面に対する塗工工程、前記乾燥装置による前記他方面に対する乾燥工程は、前記第3ローラの外周面に沿って搬送されている前記金属箔に対して行われるようにしてもよい。
【0011】
(請求項6)前記乾燥装置は、前記溶媒を含む前記電極材を乾燥させたときの蒸気を排気して回収する排気回収装置を備えているようにしてもよい。
【0012】
(請求項7)前記電極製造システムは、コンテナに収容可能に構成されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
(請求項1)電極製造システムは、複数のローラにより金属箔を紆余曲折して搬送する構成となっている。そして、塗工装置による塗工工程、乾燥装置による乾燥工程およびプレス装置によるプレス工程をローラを用いて一連で実行する構成となっている。これにより、ロール状の金属箔は、従来のように水平方向にのみ巻出して搬送する必要はなく、上下方向にも巻出して搬送することが可能となる。よって、金属箔の搬送距離を十分に確保することが可能となるので、従来のように長大な搬送ラインは不要となり、塗工装置、乾燥装置およびプレス装置を一体化して小型化することができる。また、小型な電極製造システムを構成できるので、クリーンでドライな環境に設置することが容易となる。よって、電極製造システムの低コスト化を図ることができる。
また、電極製造システムは、金属箔をローラの外周面に面接触させた状態で塗工装置による塗工工程、乾燥装置による乾燥工程およびプレス装置によるプレス工程を行う構成となっている。これにより、例えば乾燥装置に備えられたローラを加熱して金属箔に付着された溶媒を含む電極材を乾燥させるように構成することが可能となり、従来の熱風を用いた乾燥よりも乾燥時間を大幅に短縮させることができる。
【0014】
(請求項2)電極製造システムは、塗工装置、乾燥装置およびプレス装置のうち少なくとも2台の装置を上下方向に配置した構成となっている。これにより、従来のように塗工装置、乾燥装置およびプレス装置を平面配置した場合と比較して、電極製造システムを大幅に小型化することが可能となる。
【0016】
(請求項)電極製造システムは、1つのローラを兼用して塗工装置による塗工工程、乾燥装置による乾燥工程およびプレス装置によるプレス工程のうち少なくとも2つの工程を行う構成となっている。これにより、電極製造システムの省スペース化を図ることができ、電極製造システムをさらに小型化することができる。
【0017】
(請求項)電極製造システムは、一対のローラにおいてプレス装置によるプレス工程を行い、一対のローラのうち一方のローラにおいて塗工装置による塗工工程及び乾燥装置による乾燥工程を行う構成となっている。これにより塗工装置、乾燥装置およびプレス装置の駆動を簡易に制御することができる。
(請求項5)電極製造システムは、一対のローラのうち一方のローラに隣接して配置される第3ローラを備えるので、金属箔の両面に電極材を有する電極の製造効率を大幅に向上できる。
【0018】
(請求項6)乾燥装置は、溶媒を含む電極材を乾燥させたときの蒸気を排気して回収する排気回収装置を備えた構成となっている。これにより、蒸気の飛散を防止して電極製造システム外部の雰囲気の汚染を抑制することができる。
【0019】
(請求項7)電極製造システムは、コンテナに収容可能な構成となっている。これにより、電極製造システムをトラック、列車、船等によりシステム製造工場から電極製造工場へ簡易に搬送してそのまま設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】本発明の実施形態の電極製造システムの概略構成を示す斜視図である。
図1B図1Aの電極製造システムのカートリッジおよびカセットを取外した状態を示す斜視図である。
図2図1Aの電極製造システムの内部構成を示す縦断面図である。
図3図2のカートリッジの一例を示す縦断面図である。
図4図2の定量吐出装置の内部構成を示すA−A線断面図である。
図5】電極製造システムの別形態の内部構成を示す断面図である。
図6】カートリッジの別例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(1.電極製造システムの概略構成)
電極製造システムは、電極材と溶媒とを混練し、溶媒を含む電極材を金属箔の面に塗工し、乾燥し、プレスすることにより電池に使用される電極を製造するシステムである。ここで、例えば、リチウムイオン二次電池の正負極の金属箔としては、アルミニウム箔や銅箔等が用いられる。そして、リチウムイオン二次電池の正極の電極材としては、マンガン酸リチウムおよびアセチレンブラック等が用いられ、負極の電極材としては、グラファイトおよびアセチレンブラック等が用いられる。また、正負極の溶媒としては、炭酸エチレン等が用いられる。以下、図1および図2を参照して本実施形態の電極製造システムの概略構成を説明する。
【0022】
図1および図2に示すように、電極製造システム1は、電池に使用される正極または負極の一方であって金属箔の片面に電極材を有する電極を製造するシステムである。この電極製造システム1は、全体がカバー2で覆われている。このカバー2内部には、混練装置10と、塗工装置20と、乾燥装置30と、プレス装置40と、巻出し装置50と、巻取り装置60等とが内蔵されている。そして、カバー2内部を埃や塵等の無い清浄された状態および所定の温度および湿度に空調された状態に保つことが可能なように、図略の空気清浄装置および空気調節装置が備えられている。
【0023】
この電極製造システム1においては、電極材Ta,Tbおよび溶媒Sはカートリッジ3a,3b,3sに収容されて供給され、金属箔Mはカセット4に収容されて供給される。図3に示すように、カートリッジ3a,3b,3sは、中空円筒状の本体3Aの上部に収容物の投入口3Bが設けられ、本体3Aの下部に収容物の排出口3Cが設けられ、排出口3C近傍に排出口3Cを開閉するバルブ3Dが設けられている。カートリッジ3a,3bには、2種類の粉体状の電極材Ta,Tbがそれぞれ収容され、カートリッジ3sには、液体状の溶媒Sが収容されている。カセット4は、箱状に形成されている。カセット4内部には、巻回された金属箔MのロールRが回転可能に支持されている。
【0024】
カバー2の後上部(図1の左上部)には、カートリッジ3a,3b,3sがそれぞれ着脱可能に装着されるカートリッジ装着部5が設けられている。カートリッジ装着部5には、カートリッジ装着部5を開閉する図略のバルブが設けられている。カートリッジ装着部5の下部のカバー2内部には、混練装置10が配置されている。また、混練装置10の下部のカバー2内部には、カバー2側面からカセット4が着脱可能に装着されるカセット装着部6が設けられている。このカセット装着部6には、巻出し装置50が配置されている。巻出し装置50は、カセット4を保持する図略の保持部材と、カセット4内部の金属箔MのロールRの芯材に挿入されてロールRを回転させる図略のモータを備えた軸部材51等とを備えて構成されている。
【0025】
また、カバー2の前部(図1の右部)の内部には、巻取り装置60が配置されている。巻取り装置60は、ロールRの芯材が挿入されてロールRの芯材を回転させ、電極材Ta,Tbを有する金属箔Mを巻取るための図略のモータを備えた軸部材61等を備えて構成されている。巻出し装置50と巻取り装置60との間のカバー2内部には、塗工装置20、乾燥装置30およびプレス装置40が配置されている。カバー2内部には、塗工装置20、乾燥装置30およびプレス装置40を覆う部分と、混練装置10を覆う部分と、巻出し装置50を覆う部分と、巻取り装置60を覆う部分とに仕切る仕切り壁2A,2B,2Cが設けられている。
【0026】
塗工装置20、乾燥装置30およびプレス装置40は、金属箔Mを紆余曲折させて搬送する複数のローラ52,53,41,42を備え、塗工装置20、乾燥装置30およびプレス装置40による各工程をローラ52,53,41,42を用いて一連で実行可能に配置されている。ローラ52,53は、巻出し装置50と塗工装置20との間に上下方向に配置されている。ローラ52,53は、巻出し装置50から巻出される金属箔Mの搬送方向を塗工装置20の方向に変更する搬送ローラである。また、詳細は後述するが、ローラ41,42は、塗工装置20のダイコータ21の上方にて上下方向に所定のギャップをあけて配置されている一対の第1ローラ41および第2ローラ42である。本例では、第1ローラ41において、塗工工程および乾燥工程が行われ、第1ローラ41および第2ローラ42において、プレス工程が行われる。
【0027】
混練装置10は、各カートリッジ3a,3b,3sから取出した電極材Ta,Tbおよび溶媒Sを混練する装置である。この混練装置10は、カートリッジ装着部5の下方に配置され、カートリッジ3a,3b,3sに収容された電極材Ta,Tbおよび溶媒Sをそれぞれ定量吐出する定量吐出装置12a,12b,12sと、定量吐出装置12a,12b,12sの下方に配置され、定量吐出された電極材Ta,Tbおよび溶媒Sを混練する混練押出し装置13と、混練押出し装置13の下方に配置され、混練された電極材Ta,Tbおよび溶媒S(以下、「混練物TS」という)を塗工装置20に供給する供給路14とを備えて構成されている。
【0028】
定量吐出装置12a,12bは、粉体状の電極材Ta,Tbを定量吐出する装置である。図4に示すように、この定量吐出装置12a,12bは、本体121a,121bと、回転羽根122a,122bと、エアー配管123a,123bとを備えて構成されている。
【0029】
本体121a,121bには、回転羽根122a,122bおよびエアー配管123a,123bが配置される円筒状の空間124a,124bと、該空間124a,124bに上下でそれぞれ連通する粉体供給口125a,125bおよび粉体排出口126a,126bとが設けられている。粉体供給口125a,125bは、カートリッジ装着部5に連通され、粉体排出口126a,126bは、後述する混練押出し装置13の本体131に連通されている。
【0030】
回転羽根122a,122bには、粉体供給口125a,125bから供給される電極材Ta,Tbを定量で貯蔵するポケット127a,127bが円周方向に複数(本例では4つ)設けられている。この回転羽根122a,122bは、本体121a,121bの空間124a,124b内に回転可能に配置されている。
【0031】
エアー配管123a,123bには、図略の圧縮空気供給源が接続されている。エアー配管123a,123bには、粉体排出口126a,126bに向かって穿孔され、配管内を通る圧縮空気を粉体排出口126a,126bに向かって噴射させる噴射孔128a,128bが設けられている。このエアー配管123a,123bは、回転羽根122a,122bの回転軸として固定配置されている。
【0032】
定量吐出装置12sは、液体状の溶媒Sを定量吐出する装置であり、例えば、既知のスクリューポンプである。定量吐出装置12sの本体121sには、スクリュー122sが回転可能に配置される円筒状の空間124sと、該空間124sに上下でそれぞれ連通する液体供給口125sおよび液体排出口126sとが設けられている。液体供給口125sは、カートリッジ装着部5に連通され、液体排出口126sは、後述する混練押出し装置13の本体131に連通されている。
【0033】
定量吐出装置12a,12bの回転羽根122a,122bと、定量吐出装置12sのスクリュー122sと、回転羽根122a,122bおよびスクリュー122sを回転させるモータ15のモータ軸とは、ジョイント16を介してそれぞれ連結されている。
【0034】
混練押出し装置13は、定量吐出装置12a,12b,12sから供給される電極材Ta,Tbおよび溶媒Sを混練する装置である。この混練押出し装置13は、本体131と、スクリュー132とを備えて構成されている。本体131には、スクリュー132が配置される空間131aと、該空間131aの上部で定量吐出装置12a,12b,12sの粉体排出口126a,126bおよび液体排出口126sとそれぞれ連通する粉体供給口133a,133bおよび液体排出口133sと、空間131aの一端下部で後述する供給路14に連通する混練物排出口134とが設けられている。
【0035】
本体131の空間131aは、混練物排出口134に向かうに従って先細りとなるテーパ状に形成されている。スクリュー132は、本体131の空間131a内に回転可能に配置されている。このスクリュー132は、定量吐出装置12s、定量吐出装置12b、定量吐出装置12aの方向に混練物TSを混練・押出し可能に構成されている。スクリュー132と、スクリュー132を回転させるモータ17のモータ軸とは、ジョイント18を介して連結されている。
【0036】
供給路14は、管状に形成され、一端が混練押出し装置13の混練物排出口134に連結され、他端が後述する塗工装置20の本体21に連結されている。この供給路14は、混練押出し装置13で混練される混練物TSを、主に混練押出し装置13の押出し力により塗工装置20に供給可能に配管されている。
【0037】
塗工装置20は、巻回された金属箔MのロールRから巻出され搬送される金属箔Mの片面に、混練物TSを塗工して付着させる装置である。この塗工装置20は、金属箔Mを巻付けて搬送する第1ローラ41と、第1ローラ41の下方に配置され、混練物TSを金属箔Mの表面に塗布するダイコータ21と、ダイコータ21に取付けられ、ダイコータ21への混練物TSの供給量を調整するバルブ22とを備えて構成されている。
【0038】
第1ローラ41は、図略のベアリングにより回転可能に支持され、図略のモータおよびギヤ機構により左回りに回転駆動するように構成されている。第1ローラ41は、巻出し装置50から搬送ローラ52,53を介して搬送されてくる金属箔Mを巻付けて搬送し、該巻付け範囲における所定の塗工位置Pで金属箔Mを支持するローラである。ダイコータ21は、既知の装置であり、スロットオリフィス(ダイ)に混練物TSを供給し、スロットオリフィス内で混練物TSを加圧し、第1ローラ41に支持された金属箔Mに直接塗工する装置である。バルブ22は、既知の装置であり、ダイコータ21近傍の供給路14に設けられている。
【0039】
乾燥装置30は、搬送される金属箔Mの片面に付着された混練物TSを乾燥させて電極材Ta,Tbを固着する装置である。乾燥装置30は、混練物TSが付着された金属箔Mを巻付けて搬送する第1ローラ41と、第1ローラ41における金属箔Mの巻付け範囲を覆うフード31と、フード31に連通され、混練物TSから出る溶媒Sの蒸気を通すダクト32と、ダクト32に接続され、溶媒Sの蒸気を排出して回収する排気回収装置33とを備えて構成されている。
【0040】
第1ローラ41は、ローラ自体が加熱されており、その熱源として例えば電熱線や高温の液体が通る配管等が内蔵されている。第1ローラ41は、巻出し装置50から搬送ローラ52,53を介して搬送されてくる金属箔Mを巻付けて接触加熱し、金属箔Mの片面に付着された混練物TSに含まれる溶媒Sを蒸気にして混練物TSを乾燥するローラである。フード31は、金属箔Mの片面に付着された混練物TSから出る溶媒Sの蒸気を集めることが可能なように、第1ローラ41における金属箔Mの巻付け範囲を覆うように配置されている。ダクト32は、フード31から排気回収装置33に連通するように配置されている。排気回収装置33は、既知の装置であり、排気ファン331と、排気回収部332とを備え、カバー2の中央上部に設置されている。
【0041】
プレス装置40は、搬送される金属箔Mの片面に固着された電極材Ta,Tbをプレスして均一な厚さおよび密度にする装置である。このプレス装置40は、軸同士が平行かつ並列に、周面同士が所定のギャップをあけて配置された第1ローラ41および第2ローラ42を備えて構成されている。
【0042】
第2ローラ41は、図略のベアリングにより回転可能に支持され、第1ローラ41を回転させるモータおよび図略のギヤ機構により第1ローラ41とは逆方向の右回りに回転駆動するように構成されている。第1ローラ41は、電極材Ta,Tbが固着された金属箔Mを巻付けて第1ローラ41と第2ローラ42とのギャップに搬入するローラである。第1ローラ41および第2ローラ42は、電極材Ta,Tbが固着された金属箔Mをギャップで挟み込んで電極材Ta,Tbをプレスするローラである。第2ローラ42は、プレスした電極材Ta,Tbが固着された金属箔Mを第1ローラ41と第2ローラ42とのギャップから搬出するローラである。
【0043】
(2.電極製造システムの動作)
先ず、準備工程として、作業者は、電極材Ta,Tbおよび溶媒Sが収容されたカートリッジ3a,3b,3sをカートリッジ装着部5にそれぞれ装着し、各カートリッジ3a,3b,3sのバルブ3Dを開いて排出口3Cを開放する。また、金属箔Mが収容されたカセット4をカセット装着部6に装着して巻出し装置50にセットし、ロールRの芯材を巻取り装置60にセットする。そして、電極製造システム1を起動する。
【0044】
すると、電極製造システム1の空気清浄装置および空気調節装置が作動し、カバー2内部を埃や塵等の無い清浄された状態および所定の温度および湿度に空調された状態に保つ。そして、電極製造システム1は、カセット4から金属箔Mを巻出し、搬送ローラ52,53を介して第1ローラ41および第2ローラ42に巻回し、金属箔Mの先端部を巻取り装置60にセットされたロールRの芯材に固着する。そして、巻出し装置50、巻取り装置60および第1、第2ロール41,42を駆動して金属箔Mの搬送を開始すると共に、第1ローラ41の熱源をオンにして第1ローラ41を加熱し、排気回収装置33の排気ファン331を駆動する。
【0045】
次に、混練工程として、電極製造システム1は、カートリッジ装着部5のバルブを開いてカートリッジ装着部5を開放し、電極材Ta,Tbおよび溶媒Sを定量吐出装置12a,12b,12sに供給する。このとき、粉体供給口125a,125bから供給される電極材Ta,Tbは、回転羽根122a,122bに達し、電極材Ta,Tbの一部が、上方を向いているポケット127a,127bに充填される。また、液体供給口125sから供給される溶媒Sは、スクリュー122sに達する。
【0046】
そして、電極製造システム1は、定量吐出装置12a,12b,12sのモータ15を駆動し、回転羽根122a,122bおよびスクリュー122sを回転させる。回転羽根122a,122bの回転により、電極材Ta,Tbが充填されたポケット127a,127bが下方を向くと、圧縮空気がエアー配管123a,123b内から噴射孔128a,128bを通って粉体排出口126a,126bに向かって噴射する。これにより、ポケット127a,127bに充填された定量の電極材Ta,Tbは、粉体排出口126a,126bを通って混練押出し装置13に供給される。また、スクリュー122sの回転により量られる定量の溶媒Sは、液体排出口126sを通って混練押出し装置13に供給される。
【0047】
そして、電極製造システム1は、混練押出し装置13のモータ17を駆動し、スクリュー132を回転させる。これにより、本体131の空間131a内において、溶媒Sは混練物排出口134に向かって押出され、電極材Tbは溶媒Sと混練されながら混練物排出口134に向かって押出され、電極材Taは電極材Tbおよび溶媒Sと混練される。そして、混練物TSは、混練物排出口134から供給路14を通って塗工装置20に供給される。
【0048】
次に、塗工工程として、電極製造システム1は、塗工装置20のバルブ22を開いて混練物TSの供給量を調整し、ダイコータ21のスロットオリフィスに混練物TSを供給し、第1ローラ41に支持された金属箔Mの片面に混練物TSを直接塗工する。このとき、金属箔Mは第1ローラ41上を一定速度で搬送され、混練物TSはダイコータ21から一定量で吐出されるので、金属箔Mの片面に混練物TSを均一に塗工することができる。
【0049】
次に、乾燥工程として、電極製造システム1は、混練物TSが付着された金属箔Mを第1ローラ41に接触させながら搬送する。これにより、加熱された第1ローラ41から金属箔Mに熱が伝導されるので、金属箔Mの片面に付着された混練物TSを効率的に乾燥し、金属箔Mの片面に電極材Ta,Tbを固着することができる。そして、混練物TSから出る溶媒Sの蒸気は、フード31で集められダクト32を通って排気回収装置33に排出され回収される。これにより、溶媒Sの蒸気のシステム外部への漏出を防止することができる。
【0050】
次に、プレス工程として、電極製造システム1は、電極材Ta,Tbが固着された金属箔Mを第1ローラ41と第2ローラ42とのギャップに搬入し挟み込んで電極材Ta,Tbをプレスする。これにより、電極材Ta,Tbを均一な厚さおよび密度にすることができる。以上の各工程を連続的に行い、所定長の電極の製造が完了したら、作業者はシステムを停止し、巻取り装置60から巻取られた電極のロールRを取出して次の工程に搬送する。
【0051】
(3.電極製造システムの作用効果)
電極製造システム1は、塗工装置20、乾燥装置30およびプレス装置40に配設された複数の第1ローラ41,第2ローラ42,搬送ローラ51,52により金属箔Mを紆余曲折して搬送する構成であり、各装置20,30,40による工程を第1ローラ41および第2ローラ42を用いて一連で実行する構成となっている。これにより、ロール状の金属箔Mは、従来のように水平方向にのみ巻出して搬送する必要はなく、上下方向にも巻出して搬送することが可能となる。よって、金属箔Mの搬送距離を十分に確保することが可能となるので、従来のように長大な搬送ラインは不要となり、各装置20,30,40を一体化して小型化することができる。また、小型な電極製造システム1を構成できるので、クリーンでドライな環境に設置することが容易となる。よって、電極製造システム1の低コスト化を図ることができる。
【0052】
また、電極製造システム1は、各装置20,30,40を上下方向に配置した構成となっている。これにより、従来のように各装置を平面配置した場合と比較して、電極製造システム1を大幅に小型化することが可能となる。また、電極製造システム1は、金属箔Mを第1ローラ41に接触させた状態で各装置20,30,40による工程を行う構成となっている。これにより、第1ローラ41を加熱して金属箔Mに付着された混練物TSを乾燥させることが可能となり、従来の熱風を用いた乾燥よりも乾燥時間を大幅に短縮させることができる。
【0053】
また、電極製造システム1は、一対の第1ローラ41および第2ローラ42において、各装置20,30,40による工程を行う構成となっている。本例では、第1ローラ41を兼用して各装置20,30,40による工程を行う構成となっている。これにより、電極製造システム1の省スペース化を図ることができ、電極製造システム1をさらに小型化することができる。また、各装置20,30,40の駆動を簡易に制御することができる。
【0054】
また、乾燥装置30は、混練物TSを乾燥させたときの蒸気を排気して回収する排気回収装置34を備えた構成となっている。これにより、蒸気の飛散を防止して電極製造システム1外部の雰囲気の汚染を抑制することができる。また、電極製造システム1は、コンテナに収容可能な構成となっている。これにより、電極製造システム1をトラック、列車、船等によりシステム製造工場から電極製造工場へ簡易に搬送してそのまま設置することが可能となる。
【0055】
また、電極製造システム1は、電極材Ta,Tbと溶媒Sとをそれぞれ収容した交換可能なカートリッジ3a,3b,3sが装着可能な混練装置10を備えた構成となっている。そして、混練装置10と塗工装置20との間に、混練物TSを供給する供給路14を設けた構成となっている。これにより、混練物TSに塵、埃、水分等の不純物が混入するおそれがなくなるので、良好な電極を製造することができる。また、混練から塗工に至る処理を連続で行うことが可能となり、従来のように混練をバッチ処理する必要がないので、作業を簡易に行うことができる。
【0056】
また、電極製造システム1は、混練装置10、塗工装置20、乾燥装置30、プレス装置40および供給路14の全体をカバー2で覆い、当該カバー2内部を清浄化および空調した構成となっている。これにより、カバー2内部の限られた空間を清浄化および空調する構成とすることができるので、電極製造システム1の低コスト化を図ることができる。
【0057】
また、カバー2は、塗工装置20、乾燥装置30およびプレス装置40を覆う部分と、他の装置を覆う部分とに仕切る仕切り壁2A,2B,2Cを設けた構成となっている。これにより、特に、混練装置10は、乾燥装置30から発生する熱の影響を受け難くなり、混練物の変質を防止することができる。また、カバー2は、巻回された金属箔MのロールRを収容したカセット4が交換可能に装着されるカセット装着部6を設けた構成となっている。これにより、金属箔MのロールRの交換作業が容易となり、作業時間を短縮させることができると共に、金属箔Mの汚染を防止することができる。
【0058】
(4.電極製造システムの別形態の概略構成)
図5は、電極製造システムの別例の概略構成を図2に対応させて示す断面図であり、図2と同一構成箇所は同一番号を付して同一構成箇所の詳細な説明を省略する。この電極製造システム8は、電池に使用される正極または負極の一方であって金属箔Mの両面に混練物TSを塗工し、乾燥し、プレスして電極を製造するシステムである。この電極製造システム8は、図2に示す電極製造システム1の構成装置10〜60等に加えて、さらに金属箔Mの他方の面に混練物TSを塗工する第2の塗工装置20と、金属箔Mの他方の面に付着された混練物TSを乾燥する乾燥装置80とが内蔵されている。
【0059】
乾燥装置80は、混練物TSが付着された金属箔Mを巻付けて搬送する第3ローラ81と、第3ローラ81における金属箔Mの巻付け範囲を覆うフード31と、フード31に連通され、混練物TSから出る溶媒Sの蒸気を通すダクト32と、ダクト32に接続され、溶媒Sの蒸気を排出して回収する排気回収装置33とを備えて構成されている。乾燥装置80は、搬送される金属箔Mの他方の面に付着された混練物TSを乾燥させて固着する装置である。第3ローラ81は、ローラ自体が加熱されており、その熱源として例えば電熱線や高温の液体が通る配管等が内蔵されている。
【0060】
第3ローラ81は、巻出し装置50からローラ52,53を介して搬送されてくる金属箔Mを巻付けて加熱し、金属箔Mの他方の面に付着された混練物TSに含まれる溶媒Sを蒸気にして混練物TSを乾燥して金属箔Mに固着し、電極材Ta,Tbが固着された金属箔Mを第1ローラ41に搬送するローラである。このような構成の電極製造システム8によれば、上述と同様の効果を奏すると共に、金属箔Mの両面に電極材を有する電極であっても同時に製造することが可能となり、製造効率を大幅に向上することができる。
【0061】
(5.カートリッジの別例の概略構成)
図6は、カートリッジの別例の概略構成を示す断面図である。図3に示すカートリッジ3a,3bは、電極材Ta,Tbを単にそれぞれ収容して供給する容器であるが、図5に示すカートリッジ9は、電極材Ta,Tbを収容して混合する容器である。このカートリッジ9は、中空円筒状の本体91の上部に2つの収容物の投入口92,93が設けられ、本体91の下部に収容物の排出口94が設けられ、排出口近傍に排出口94を開閉するバルブ95が設けられている。
【0062】
本体91の内部には、攪拌羽根96がベアリング97を介して垂直軸回りに回転可能に支承され、本体91の上部には、攪拌羽根96を回転させるモータ98が取付けられている。このような構成のカートリッジ9によれば、電極材Ta,Tbを投入口92,93から投入し、攪拌羽根96の回転により予め混合させておくことができるので、溶媒Sとの混練を容易且つ十分に行うことができ、電極の品質を向上させることができる。
【0063】
(6.変形例)
上述の実施形態では、カバー2の後下部(図1の左下部)の内部に巻出し装置50を配置し、カバー2の前部(図1の右部)の内部に巻取り装置60を配置する構成としたが、カバー2の前部もしくは後下部の内部に巻出し装置50と巻取り装置60とを並列に配置する構成としてもよい。これにより、金属箔MのロールRの取付け、電極材を有する金属箔MのロールRの取外しを同一方向から行うことができ、作業効率を向上させることができる。また、巻取り装置60の代わりに電極材を有する金属箔Mを所定長でカットする切断装置を設置して回収する装置を配置するように構成してもよい。これにより、金属箔Mの切断工程もシステム内に組込まれるため、生産効率をさらに向上させることができる。
【0064】
また、電極製造システム1は、塗工装置20、乾燥装置30およびプレス装置40を上下方向に配置した構成としたが、各装置20,30,40のうち少なくとも2台の装置を上下方向に配置した構成としてもよい。また、第1ローラ41を兼用して塗工装置20による塗工工程、乾燥装置30による乾燥工程およびプレス装置40によるプレス工程を行う構成としたが、各装置20,30,40の工程のうち少なくとも2つの工程を行う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1,8:電極製造システム、 2:カバー、 3a,3b,3s,9:カートリッジ、
4:カセット
10:混練装置、 12a,12b,12s:定量吐出装置、 13:混練押出し装置、
14:供給路
20:塗工装置、 21:ダイコータ、 22:バルブ
30,80:乾燥装置、 31:フード、 32:ダクト、 33:排気装置、
81:第3ローラ
40:プレス装置、 41:第1ローラ、 42:第2ローラ
50:巻出し装置、
60:巻取り装置
Ta,Tb:電極材、 S:溶媒、 M:金属箔、 R:ロール、 TS:混練物
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6