(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記読取用保持部材の基準部の上面は、前記保持部に保持された前記読取対象物の上面と、ほぼ同一高さとなるように設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の切断装置。
前記読取用保持部材の保持部は、前記読取対象物が載置されるベース部と、前記ベース部の上面側に重ねられるように配置され前記読取対象物を覆う透明シートとから構成されることを特徴とする請求項4記載の切断装置。
前記読取用保持部材の保持部は、前記読取対象物が載置されるベース部と、前記ベース部の上面に設けられ前記読取対象物を第1粘着力で剥離可能に保持する第1粘着層とから構成されることを特徴とする請求項4記載の切断装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、紙や布等の切断対象物を保持部材に保持し、前記切断対象物を所望の形状に切断する切断装置が公知である。この切断装置に、イメージセンサ(画像読取手段)を設けることで、前記保持部材に保持した切断対象物の位置や大きさ(輪郭)を検出したり、切断データを作成するための原画を読取ったりすることを行うことも考えられる。
【0007】
このような場合においても、良好な読取画像を取得するためには、読取画像に対するシェーディング補正を行う必要があり、上記特許文献1と同様の構成のシェーディング補正用の基準部材を、前記保持部材に設けることが考えられる。しかし、前記保持部材に基準部材を設けた場合、切断時に生ずる切断くずが基準部材に付着し、基準部材が汚れてしまう虞がある。また、前記保持部材は、繰り返して使用することにより、切断動作に伴う切断跡が表面に蓄積する。このため、前記保持部材は、十数回の使用後に新品に交換される消耗品とされているが、基準部材を設けることによるコストアップを招いてしまう問題点がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、画像読取手段による読取画像に対するシェーディング補正を適正に行うことを可能とす
る切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の
切断装置は、画像読取手段を有する画像読取装置
と、全体として平板状をなし、前記画像読取手段による画像読取り時に、シート状の読取対象物を保持す
る保持部材であって、前記画像読取手段の読取りに基づいて種類が判別される標識と、前記読取対象物を保持する保持部と、前記画像読取手段の読取画像に対するシェーディング補正を行うための基準部とを備える
読取用保持部材
と、前記読取用保持部材とは種類の異なる保持部材であって、前記画像読取手段の読取りに基づいて種類が判別される標識と、シート状の切断対象物を第2粘着力で剥離可能に保持する第2粘着層とを有する切断用保持部材と、前記切断用保持部材に保持された前記切断対象物を切断する切断手段とを備えるところに特徴を有する。
【0010】
上記構成の
切断装置によれば、
読取用保持部材の保持部により読取対象物を保持した状態で、画像読取手段による読取対象物を適切に読取ることができる。
更に、切断用保持部材によって切断対象物を保持した状態で、切断手段による切断対象物の切断作業を行うことができる。また、読取用保持部材及び切断用保持部材には、画像読取手段の読取りに基づいて種類が判別される標識を夫々備えるので、画像読取装置が保持部材の種類を自動で判別し、その判別に基づいて保持部材の種類に応じた処理や作業を行うことができる。読取用保持部材には、シェーディング補正用の基準部が設けられているので、
画像読取装置が読取用保持部材を判別した場合は、読取画像に対するシェーディング補正
を適正に行うことで、良好な読取画像を取得することができる。そして、画像読取装置が切断用保持部材を判別した場合は、切断手段が、切断用保持部材に保持した切断対象物を適切に切断することができる。消耗品である切断用保持部材には基準部を設けないので、切断用保持部材を安価に製作することができる。
【0011】
請求項2の
切断装置は、請求項1の発明において、前記
読取用保持部材の基準部は、前記読取画像の白レベルを補正するための基準白色部を含むところに特徴を有する。
請求項3の
切断装置は、上記請求項2の発明において、前記
読取用保持部材の基準部は、前記読取画像の黒レベルを補正するための基準黒色部を更に含むところに特徴を有する。
【0012】
請求項4の
切断装置は、請求項1
から3のいずれか一項の発明において、前記
読取用保持部材の基準部の上面は、前記保持部に保持された前記読取対象物の上面と、ほぼ同一高さとなるように設定されているところに特徴を有する。
【0013】
請求項5の
切断装置は、請求項4の発明において、前記
読取用保持部材の保持部は、前記読取対象物が載置されるベース部と、前記ベース部の上面側に重ねられるように配置され前記読取対象物を覆う透明シートとから構成されるところに特徴を有する。
【0014】
請求項6の
切断装置は、請求項4の発明において、前記
読取用保持部材の保持部は、前記読取対象物が載置されるベース部と、前記ベース部の上面に設けられ前記読取対象物を第1粘着力で剥離可能に保持する第1粘着層とから構成されるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1の
切断装置によれば、
画像読取手段を有する画像読取装置と、全体として平板状をなし、前記画像読取手段による画像読取り時に、シート状の読取対象物を保持する保持部材であって、前記画像読取手段の読取りに基づいて種類が判別される標識と、読取対象物を保持する保持部と、前記画像読取手段の読取画像に対するシェーディング補正を行うための基準部とを備える
読取用保持部材と、前記読取用保持部材とは種類の異なる保持部材であって、前記画像読取手段の読取りに基づいて種類が判別される標識と、シート状の切断対象物を第2粘着力で剥離可能に保持する第2粘着層とを有する切断用保持部材と、前記切断用保持部材に保持された前記切断対象物を切断する切断手段とを備えるので、
読取用保持部材の保持部により読取対象物を保持した状態で、画像読取手段により読取対象物を適切に読取ることができる。
更に、切断用保持部材によって切断対象物を保持した状態で、切断手段による切断対象物の切断作業を行うことができる。また、読取用保持部材及び切断用保持部材には、画像読取手段の読取りに基づいて種類が判別される標識を夫々備えるので、画像読取装置が保持部材の種類を自動で判別し、その判別に基づいて保持部材の種類に応じた処理や作業を行うことができる。読取用保持部材には、シェーディング補正用の基準部が設けられているので、
画像読取装置が読取用保持部材を判別した場合は、読取画像に対するシェーディング補正
を適正に行うことで、良好な読取画像を取得することができる。そして、画像読取装置が切断用保持部材を判別した場合は、切断手段が、切断用保持部材に保持した切断対象物を適切に切断することができる。消耗品である切断用保持部材には基準部を設けないので、切断用保持部材を安価に製作することができる。
【0019】
請求項2の
切断装置によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、前記
読取用保持部材の基準部は、前記読取画像の白レベルを補正するための基準白色部を含むので、シェーディング補正をより適正に行うことができる。
請求項3の
切断装置によれば、請求項2に記載の発明の効果に加え、前記
読取用保持部材の基準部は、前記読取画像の黒レベルを補正するための基準黒色部を更に含むので、シェーディング補正を更に適正に行うことができる。
【0020】
請求項4の
切断装置によれば、請求項1
から3のいずれか一項に記載の発明の効果に加え、前記
読取用保持部材の基準部の上面は、前記保持部に保持された前記読取対象物の上面と、ほぼ同一高さとなるように設定されているので、画像読取手段の、基準部を読取る場合と、読取対象物を読取る場合との読取距離をほぼ一致させることができるので、より正確な補正用データを設定することが可能となり、シェーディング補正をより適正に行うことができる
。
【0021】
請求項5の
切断装置によれば、請求項4の記載の発明の効果に加えて、前記
読取用保持部材の保持部は、前記読取対象物が載置されるベース部と、前記ベース部の上面側に重ねられるように配置され前記読取対象物を覆う透明シートとから構成されるので、読取対象物をベース部と透明シートとの間に挟むことで容易に保持することができる。
【0022】
請求項6の
切断装置によれば、請求項4の記載の発明の効果に加えて、前記
読取用保持部材の保持部は、前記読取対象物が載置されるベース部と、前記ベース部の上面に設けられ前記読取対象物を第1粘着力で剥離可能に保持する第1粘着層から構成されるので、読取対象物を第1粘着層に貼付するだけで容易に保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した第1の実施形態について、
図1から
図12を参照しながら説明する。本実施形態においては、画像読取装置1´は、紙等のシート部材を切断する切断装置1に含まれた装置として構成されているので、以下、切断装置1として説明する。画像読取装置1´を含む切断装置1は、
図1に示すように、本体カバー2と、本体カバー2内に配設されたプラテン3と、カッタ4(
図3、
図7参照)を有する切断手段としての切断ヘッド5とを備えている。また、
図2に示すように、切断装置1は、後述するように、画像読取手段としてのスキャナ部6を備えている。
【0027】
この切断装置1は、
図1に示すように、例えば紙や布等のシート状の切断対象物Sを保持するための切断用保持部材51が備えられている。また、
図9に示すように、例えば切断データ作成用の原画が描かれた紙等のシート状の読取対象物S´を保持するための読取用保持部材71が備えられている。これら切断用保持部材51及び読取用保持部材71は、全体として矩形状をなす平板状に構成され、その詳細については後述する。尚、これらを総称する場合には、「保持部材51,71」と略する。
【0028】
図1に示すように、前記本体カバー2は横長な矩形箱状をなしており、その前面部には横長に開口する挿入口2aが形成されている。切断対象物Sを保持した切断用保持部材51又は読取対象物S´を保持した読取用保持部材71は、前記挿入口2aから差込まれて前記プラテン3上にセットされる。切断装置1には、プラテン3上にセットされた保持部材51,71を、前後方向(Y方向)に移送する移送機構7が設けられている。更に、切断装置1には、切断ヘッド5を、保持部材51,71の移送方向と交差(直交)する左右方向(X方向)に移動させるカッタ移動機構8が設けられている。
【0029】
前記本体カバー2の前面の右側部位には、フルカラー液晶ディスプレイからなるディスプレイ9が設けられると共に、ユーザが各種の指示や選択、入力の操作を行うための各種操作スイッチ10(
図10にのみ図示)が設けられている。前記各種操作スイッチ10には、ディスプレイ9の表面に設けられるタッチパネルが含まれる。ディスプレイ9は、種々の模様や、ユーザに対して必要なメッセージ等を表示する表示手段として構成されており、各種操作スイッチ10の操作により、ディスプレイ9に表示された模様の選択や、各種パラメータの設定や機能の指示等が可能となっている。
【0030】
前記プラテン3は、切断対象物Sの切断の際、切断用保持部材51の下面を受けるもので、
図2、
図3にも示すように、前プラテン3aと後プラテン3bとからなり、機枠11に取り付けられている。このプラテン3の上面部は、水平面状をなし、切断対象物Sを保持した切断用保持部材51や、読取対象物S´を保持した読取用保持部材71が載置された状態で移送される。
【0031】
前記移送機構7は、プラテン3の上面側で前記保持部材51,71をY方向へ移送させるもので、以下のように構成される。即ち、
図1、
図2等に示すように、本体カバー2内には、機枠11が設けられている。その機枠11には、前記プラテン3の左右両側に夫々位置して、左右の側壁部11a、11bが向い合うように設けられている。
図3にも示すように、それら左右の側壁部11a、11b間には、前記前プラテン3aと後プラテン3bとのなす隙間部分に位置して、X方向に夫々延びる駆動ローラ12及びピンチローラ軸13が設けられている。駆動ローラ12とピンチローラ軸13は、上下方向に並ぶように配設されており、駆動ローラ12は下側に位置し、その上側にピンチローラ軸13が設けられている。
【0032】
前記駆動ローラ12は、上端がプラテン3の上面とほぼ同等の高さとなるようにして(
図3参照)、左右の両端側が、夫々前記側壁部11a、11bに回転可能に支持されている。これと共に、
図2に示すように、駆動ローラ12の右端部は、右側の側壁部11bを貫通して右方に延び、その先端に径大な従動ギヤ17が固着されている。
図2に示すように、右側の側壁部11bの外面側には、取付フレーム14が取付けられ、この取付フレーム14に、例えばステッピングモータからなるY軸モータ15が取付けられている。このY軸モータ15の出力軸には、径小な駆動ギヤ16が固定され、この駆動ギヤ16が前記従動ギヤ17に噛合っている。これにて、Y軸モータ15の正逆回転により、駆動ローラ12が正逆方向に回転駆動される。
【0033】
前記ピンチローラ軸13は、左右の両端部が、夫々前記側壁部11a、11bに回転可能、且つ上下方向つまり切断対象物S等の厚み方向に若干量の変位が可能に支持されている。ピンチローラ軸13は、側壁部11a、11bの外面側において、ピンチローラ軸13の左右の両端部とそれら側壁部11a、11bとの間に夫々掛渡された引張コイルばね18、18により、常に下方(駆動ローラ12側)に付勢されている。また、
図1、
図2に示すように、ピンチローラ軸13には、左右の端部寄り部位に位置して、やや径大なローラ部13a、13bが設けられている。
【0034】
これにて、切断用保持部材51の左右の縁部51a、51bが、駆動ローラ12と、ピンチローラ軸13のローラ部13a、13bとの間において夫々挟持される。移送機構7は、保持部材51,71の左右の縁部を駆動ローラ12とピンチローラ軸13(ローラ部13a、13b)との間に挟んだ状態で、Y軸モータ15の駆動に伴う駆動ローラ12の回転駆動によって、Y方向に自在に移送させる。
【0035】
前記カッタ移動機構8は、切断ヘッド5(キャリッジ19)を、X方向へ自在に移動させるもので、次の構成を備える。即ち、
図1〜
図3に示すように、左右の側壁部11a、11b間には、前記ピンチローラ軸13よりもやや後部寄りの上方に位置し、ピンチローラ軸13とほぼ平行、つまりX方向に延びるガイド軸21が配設されている。前記キャリッジ19には、
図8等にも示すように、左右2箇所に位置してガイド筒部22、22が設けられ、これらガイド筒部22、22が、前記ガイド軸21に挿通されている。これにより、キャリッジ19ひいては切断ヘッド5は、ガイド軸21に沿ってX方向に移動可能である。
【0036】
図1、
図2に示すように、左側の側壁部11aの外面側の後部寄りには、水平状の取付板23が取付けられていると共に、右側の側壁部11bの外面側に補助取付板24が取付けられている。前記取付板23には、後側に位置して例えばステッピングモータからなるX軸モータ25が上向きに取付けられていると共に、その前側に垂直方向に延びるプーリ軸26が回転可能に設けられている。前記X軸モータ25の出力軸には、径小な駆動ギヤ27が固定されている。前記プーリ軸26には、タイミングプーリ28と径大な従動ギヤ29とが回転可能に支持されている。タイミングプーリ28と従動ギヤ29は一体的に形成されており、一体的に回転する。従動ギヤ29が前記駆動ギヤ27に噛合っている。
【0037】
前記補助取付板24には、タイミングプーリ30が軸方向を上下方向として回転可能に設けられている。これらタイミングプーリ30と前記タイミングプーリ28との間には、無端状のタイミングベルト31がX方向に延びて水平に掛渡されている。このタイミングベルト31の途中部が、前記キャリッジ19の後面部の取付部32(
図3等参照)に連結されている。尚、側壁部11a、11bのうちタイミングベルト31が通過する部分には、四角形の開口部11cが設けられている。これにて、カッタ移動機構8が構成され、X軸モータ25の正逆回転駆動により、その回転駆動力が従動ギヤ29及びタイミングプーリ28を介してタイミングベルト31に伝わり、キャリッジ19(切断ヘッド5)を左右方向に自在に移動させる。
【0038】
前記切断ヘッド5は、キャリッジ19の前面側に、上下駆動機構36及びカッタホルダ20を左右に配置して構成される。この切断ヘッド5の構成を、
図3〜
図8も参照しながら説明する。
図3、
図8等に示すように、キャリッジ19は、正面から見てやや横長なほぼ矩形板状をなし、その上辺部には、左右に位置して前記ガイド筒部22、22が設けられている。また、キャリッジ19の背面部には、後方へ突出して前記タイミングベルト31に連結される取付部32(
図3参照)が設けられている。
【0039】
図8に示すように、キャリッジ19の前面部には、やや左寄り部に位置して、上下方向に延びる平面視L字状の第1係合部33が設けられていると共に、ほぼ中央部に位置して、上下方向に延びる第2係合部34が設けられている。前記第1係合部33及び前記第2係合部34には、
図6等に示すように、カッタホルダ20に設けられた第1被係合部57及び第2被係合部49が上下方向(Z方向)にスライド移動可能に係合する。さらに、このキャリッジ19の下端部には、切断ヘッド5の姿勢の保持、即ち、ガイド軸21に対する回り止めを行うための、摺接部35が設けられている。
【0040】
図3〜
図8に示すように、この摺接部35は、側面から見て下向きのほぼU字状をなし、左右方向に延びる薄板状をなしている。
図3に示すように、この摺接部35は、その内面が、前記移送機構7に備わっているピンチローラ軸13に摺動可能に接触することにより、キャリッジ19のX方向の移動を許容しつつ姿勢を保持する。このとき、上記のように、ピンチローラ軸13が切断対象物Sの厚み方向(上下方向)に変位可能に支持されているので、摺接部35は、前記ピンチローラ軸13の変位方向である上下方向に相対移動可能に摺接している。また、摺接部35は、ピンチローラ軸13を切断対象物Sの移送方向両側、つまり前後方向から挟む形状に形成されている。尚、この摺接部35は、ピンチローラ軸13のうち、ローラ部13aとローラ部13bとの間の領域を移動するのであるが、この場合、キャリッジ19(切断ヘッド5)のX方向の移動範囲を妨げることがないことは勿論である。
【0041】
前記上下駆動機構36は、次のように構成されている。
図3〜
図7に示すように、キャリッジ19の前面左側には、クランク状をなす取付板37が設けられている。この取付板37の左端部前面には、例えばステッピングモータからなるZ軸モータ38が後ろ向きに取付けられており、このZ軸モータ38の出力軸には径小な駆動ギヤ39が固定されている。取付板37には、
図4〜
図6に示すように、前記Z軸モータ38の右上部に位置して、前方に延びてギヤ軸40が取付けられている。このギヤ軸40には、径大な従動ギヤ41とピニオンギヤ42とが回転可能に支持されている。従動ギヤ41とピニオンギヤ42は一体的に形成されており、一体的に回転する。従動ギヤ41が前記駆動ギヤ39に噛合っている。
【0042】
前記ギヤ軸40の右側には、ラック部材43が設けられる。このラック部材43は、左壁面と前壁面が繋がった形状をなし、上下方向に延びる。ラック部材43は、後述する軸46に上下動可能に支持されている。このラック部材43の左壁面には、上下方向に延びるラック部43aが形成されており、そのラック部43aに、前記ピニオンギヤ42が噛合っている。これにて、前記Z軸モータ38の駆動によりピニオンギヤ42が回転され、ラック部材43が上下動される。
【0043】
また、
図7に示すように、ラック部材43の上面部には、水平薄板状の上部支持片44が一体に設けられていると共に、ラック部材43の内部の上下方向中間やや下部に位置して、水平薄板状の中間支持片45が一体に設けられている。これら上部支持片44及び中間支持片45には、夫々貫通孔44a及び45aが形成されている。ラック部材43の内部には、上下方向に長い丸棒状の軸46が、前記貫通孔44a及び45aを上下動可能に挿通された状態で配置されている。
【0044】
前記カッタホルダ20は、
図4〜
図7に示すように、取付筒部47と、軸支持部48と、第1被係合部57と、第2被係合部49(
図6にのみ図示)とを一体的に有して構成されている。前記取付筒部47は、上下方向に延びるほぼ円筒状をなし、後述するように、カッタ4を有したカッタ支持筒50が取外し可能に取付けられる。第1被係合部57は、前記軸46の後方に位置して上下方向に延びて設けられる。
【0045】
前記第1被係合部57は、前記キャリッジ19の第1係合部33に上下動可能に係合している。第2被係合部49は、
図6に示すように、平面視L字状に形成され、前記取付筒部47の背面側に上下方向に延びて設けられる。第2被係合部49は、前記キャリッジ19の第2係合部34に上下動可能に係合している。これにて、カッタホルダ20は、前記キャリッジ19に対し、上下動可能に支持される。この場合、カッタホルダ20は、後述するカッタ4の刃先4aが切断対象物Sを貫通する下降位置と、刃先4aが切断対象物Sから所定距離だけ離間した上昇位置との間で移動する。
【0046】
前記軸支持部48は、前記取付筒部47の左側に位置し、
図7に示すように、上板部48a及び下板部48bを有している。前記上板部48a及び下板部48bには、夫々前記軸46が挿通する円形孔48c、48cが形成されている。前記上板部48aは、前記ラック部材43の中間支持片45の上面に重なるように配置される。軸46は、上下方向途中部(やや上部寄り部位)と下端部に夫々止め輪51が係止されることで、軸支持部48に取り付けられている。軸46の外周部には、前記中間支持片45の下面と、下板部48bの上面との間に位置して、圧縮コイルばね58が設けられている。
【0047】
これにより、軸支持部48即ちカッタホルダ20は、ラック部材43の上昇又は下降に伴って上昇又は下降する。これによって、カッタホルダ20は、カッタ4の刃先4aが切断対象物Sを貫通する下降位置と、刃先4aが切断対象物Sから所定距離だけ離間した上昇位置との間で移動する。ここで、カッタホルダ20が下降するときの動作を詳述する。ラック部材43の下降に伴ってカッタホルダ20が徐々に下降する。そして、カッタホルダ20は、カッタ4の刃先4aが切断対象物Sを貫通した位置にて下方への移動が停止する。その一方で、引き続き、ラック部材43のみが更に降下する。そして、ラック部材43が所定距離下降した後、停止する。即ち、カッタホルダ20の下降位置では、圧縮コイルばね58がラック部材43の中間支持片45で下方へ所定距離分だけ圧縮された状態となっている。このため、圧縮コイルばね58の付勢力(弾性力)により所定のカッタ圧(カッタ4が切断対象物Sを押圧する力)が得られる一方、当該付勢力に抗してカッタホルダ5(カッタ4)の上方への移動を許容する。
【0048】
図7に示すように、前記カッタ支持筒50は、その外周面が前記取付筒部47の内周部に嵌合するような上下方向に長い円筒状をなし、その中心軸線に沿ってカッタ4が取付けられている。カッタ4は、カッタ軸4bの先端部(下端部)に刃部4aを有して構成され、刃部4aがカッタ支持筒50の下端から下方に突出している。カッタ支持筒50の下部には、前記刃部4aの周囲を覆うように、円筒キャップ状の押圧部59が上下動可能に設けられている。押圧部59とカッタ支持筒50との間には、コイルばね55(
図7にのみ図示)が配置され、押圧部59を常に下方に付勢している。この押圧部59の下面中央部に、前記カッタ4の刃部4aが通過可能な孔59aが形成されている。
【0049】
前記カッタ支持筒50は、前記取付筒部47に対して上方から嵌合され、ねじ56によって取付け固定される。これにて、カッタ4は、カッタホルダ20(カッタ支持筒50)に支持された状態で、上下駆動機構36により上下動される。このとき、通常時(非切断時)には、カッタ4は、
図5、
図7に示す上昇位置にあり、刃部4aが押圧部59により露出しないよう覆われている。
【0050】
上下駆動機構36によりカッタホルダ20(カッタ支持筒50)が下降されると、まず、押圧部59の下面が切断対象物Sの上面に接触してそれ以上の下降ができなくなる。そして、コイルばね55のばね力に抗してカッタホルダ20(カッタ4)が更に下降することにより、刃部4aが押圧部59の孔59aを通って切断対象物Sを貫通(切断)する下降位置に至る。この状態で、移送機構7により切断用保持部材51をY方向に自在に移動させると共に、カッタ移動機構8により切断ヘッド5をX方向に自在に移動させることにより、切断対象物Sに対する切断動作が実行される。
【0051】
そして、本実施形態では、
図2に示すように、画像読取装置1´を含む切断装置1は、前記切断対象物Sや読取対象物S´(
図9参照)等の画像を読取る画像読取手段としてのスキャナ部6を備えている。このスキャナ部6は、例えば密着型イメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)であり、詳しく図示はしないが、X方向に並設された複数の撮像素子からなるラインセンサと、光源(ランプ)及びレンズとを一体に有して構成されている。このスキャナ部6は、前記ガイド軸21の後ろ側に位置し、前記切断用保持部材51(及び読取用保持部材71)の幅寸法とほぼ同等の長さでX方向に延びて下向きに設けられている。
【0052】
スキャナ部6は、その下面の読取部(コンタクトガラス)が、プラテン3上に載置される対象物の上面側に近接した状態で、対象物の表面(上面)の画像を読取る。具体的には、スキャナ部6は、前記切断用保持部材51に保持された切断対象物Sの画像を読取ってその位置や大きさを検出してディスプレイ9に表示したり、後述する読取用保持部材71に保持された読取対象物S´(例えば切断データの原画)の画像を読取って切断データを作成したりするために用いられる。さらには、後述のように、保持部材51,71の標識54,73の画像を読取って保持部材の種類を判別するために用いられる。このスキャナ部6は、
図10に示すように、制御回路61(
図10参照)により制御される。
【0053】
さて、前記切断用保持部材51及び読取用保持部材71について述べる。
図1に示すように、前記切断用保持部材51は、軟質な合成樹脂材料からなり、前後方向にやや長い矩形シート状に構成されたベース部52上に、保持部53を有している。この保持部53は、ベース部52の上面のうち、左右の縁部52a、52b、及び前後の縁部52c、52dを除いた内側の矩形の領域に、粘着層が設けられている。この粘着層を第2粘着層53aと称し、第2粘着層53aが有する粘着力を第2粘着力と称する。第2粘着層53aに前記切断対象物Sが貼付けられることにより、切断対象物Sが保持される。第2粘着層53aの第2粘着力は、切断作業時に切断対象物Sを移動不能に確実に保持し、且つ、切断作業後に切断対象物Sを比較的容易に剥がせるように設定されている。
【0054】
切断用保持部材51の上面のうち前後の縁部52c、52dには、自己の種類を示すための標識54が設けられている。切断用保持部材51に設けられる標識54は、黒点を左右方向に2個並べた印からなる。標識54は、切断用保持部材51の前後の縁部52c、52dの夫々左右両端側部分の合計4箇所に設けられている。後述するように、標識54は、スキャナ部6により縁部52c又は縁部52dの上面を読取ることに基づいて、制御回路61により保持部材の種類を判別できるよう構成されている。この場合、切断用保持部材51は、前後方向に反転させた姿勢、つまり、後の縁部52dの方から挿入口2aに挿入するように使用しても良い。
【0055】
尚、切断用保持部材51においては、例えば前記保持部53の左角部を原点OとしたX−Y座標系が設定され、そのX−Y座標系に基づいて後述する切断の動作等が制御される。また、切断用保持部材51は、繰り返して使用することにより、カッタ4の切断跡が表面に徐々に累積する。そして、切断対象物Sの貼付及び剥離を繰り返すことにより、第2粘着層53aの粘着力も徐々に低下する。このため、切断用保持部材51は、十数回の使用で新品に交換される消耗品である。
【0056】
これに対し、本実施形態に係る読取用保持部材71は、
図9に示すように構成されている。即ち、
図9(a)に示すように、前記読取用保持部材71は、軟質な合成樹脂材料からなり、前後方向にやや長い矩形シート状に構成されたベース部72を備えている。このベース部72の幅(左右方向)寸法は、前記切断用保持部材51(ベース部52)の幅寸法と同等とされている。そして、このベース部72上に、自己の種類を示すための標識73、切断データ作成用の原画が描かれた紙等のシート状の読取対象物S´を保持する保持部74、後述するシェーディング補正を行うための基準部75が設けられる。
【0057】
保持部74は、ベース部72の上面のうち、前側(送り方向先方)の領域(前端部72aという)、及び、左右の縁部72b、72cを除いた内側の矩形状の領域(載置領域72dという)に、読取対象物S´を挟んで保持するための透明シート76を設けて構成されている。前記透明シート76は、矩形形状の透明度の高い軟質な合成樹脂シートからなり、前縁部がベース部72上に接着されている。図では接着部76aを、点線を付して示している。透明シート76は、その後端側をベース部72から上方に持ち上げた開いた状態と、全体をベース部72の上面の載置領域72dに重ねた閉じた状態とに亙って開閉可能である。
【0058】
ユーザが、透明シート76を持上げて開いた状態とし、載置領域72dに読取対象物S´を載置した上で、読取対象物S´を挟むように透明シート76を重ねる(閉じる)ことにより、読取対象物S´が保持される。このように、読取対象物S´を移動不能に確実に保持し、且つ、読取作業後に読取対象物S´を容易に取外すことができる。また、スキャナ部6が、透明シート76を透過して、読取対象物S´の上面の画像読取りが可能であることは勿論である。尚、この読取用保持部材71においても、例えば載置領域72d左角部を原点OとしたX−Y座標系が設定される。
【0059】
読取用保持部材71に設けられる標識73は、黒点を左右方向に3個並べた印からなる。標識73は、ベース部72の前端部72aの上面のうち、前端縁部の左右両端側部分の2箇所に設けられている。この標識73は、前記スキャナ部6により、前端部72aの上面を読取ることに基づいて、後述の制御回路61により判別可能に構成されている。そして、前記基準部75は、ベース部72の前端部72aの上面のうち標識73を設けた部分と、保持部74との間に位置して設けられる。本実施形態では、基準部75は、読取画像の白レベルを補正するための基準白色部77と、読取画像の黒レベルを補正するための基準黒色部78(便宜上、ハッチングを付して示す)との両方を備えて構成されている。
【0060】
この場合、基準白色部77は、上面(表面)が基準白色に塗られた所定幅のテープを、ベース部72の前端部72aの後側に位置して、横方向全体に延びて貼付けることにより設けられている。同様に、基準黒色部78は、上面(表面)が基準黒色に塗られた所定幅のテープを、ベース部72の前端部72aの前側に位置して、横方向全体に延びて貼付けることにより設けられている。またこのとき、
図9(b)に示すように、基準白色部77及び基準黒色部78の上面の高さ寸法は、ベース部72の載置領域72dの上面の高さよりも、読取対象物S´の標準的な厚み寸法分(例えば写真用紙の厚みを想定した0.28mm)だけ高くなるように設定されている。つまり、基準部75の上面は、保持部74に保持された読取対象物S´の上面と、ほぼ同一高さとなるように設定されている。尚、
図9(b)では、便宜上、透明シート76の図示を省略している。
【0061】
次に、切断装置1(画像読取装置1´)の制御系の構成について、
図10を参照しながら説明する。切断装置1全体の制御を司る制御回路(制御手段)61は、コンピュータ(CPU)を主体に構成されており、ROM62、RAM63、外部メモリ64が接続されている。ROM62には、切断動作を制御するための切断制御プログラムや、切断データ作成のプログラム、ディスプレイ9の表示を制御する表示制御プログラム等の各種制御プログラムが記憶されている。RAM63には、各種処理に必要なデータやプログラムが一時的に記憶される。
【0062】
制御回路61には、スキャナ部6からの読取画像信号が入力されると共に、各種操作スイッチ10の操作信号が入力される。更に、制御回路61には、前記挿入口2aから挿入された保持部材51,71の先端部を検出する検出センサ66の信号が入力される。前記外部メモリ64には、複数種類の模様について、その模様を切断するための切断データが記憶されている。前記切断データは、基本サイズ情報及び切断ラインデータと、表示用のデータとを含んだものである。基本サイズ情報は、模様の縦横の大きさを表す値で、模様の形状に対応する形状データである。前記切断ラインデータは、複数の線分からなる切断ラインの頂点を夫々XY座標によって示した座標値のデータからなり、切断装置1のXY座標系で規定されている。
【0063】
また、制御回路61には、ディスプレイ9が接続されている。ディスプレイ9の画面には、モード選択画面や模様選択画面、配置表示画面等が表示される。ユーザは、ディスプレイ9の表示を見ながら、各種操作スイッチ10を操作することにより、機能モードを選択したり、所望する模様を選択したり、切断位置を設定したりすることができる。更に、制御回路61には、Y軸モータ15、X軸モータ25、Z軸モータ38を夫々駆動する駆動回路67,68,69が接続されている。制御回路61は、切断制御プログラムの実行により、Y軸モータ15、X軸モータ25、Z軸モータ38等を制御し、切断用保持部材51上の切断対象物Sに対する切断動作を自動で実行させる。
【0064】
これにて、制御装置61は、切断対象物Sに対する模様の切断動作を実行する際には、当該模様の切断データ(切断ラインデータ)に基づき、切断対象物Sを保持した切断用保持部材51を、移送機構7によりY方向に移動させながら、カッタ移動機構8によるカッタホルダ5(カッタ4)をX方向に移動させることにより、模様の輪郭線に沿って切断対象物Sを切断する。
【0065】
また、制御回路61は、スキャナ部6による画像読取り動作を実行させる際には、画像読取りの対象物S,S´を保持した保持部材51,71を、移送機構7によってプラテン3の後部側へY方向に移動させながら、その移動に同期してスキャナ部6による読取動作を行うことにより、対象物S,S´の読取画像を取得する。制御回路61は、スキャナ部6により読取った読取画像を周知の画像処理の手法で処理して、外形(輪郭)形状や模様(図形)形状等を抽出する。この画像処理の際に、読取画像に対するシェーディング補正を行う。シェーディング補正は、読取画像の濃度レベルの不均一を補正するものであり、補正データを用いて、読取画像の濃度レベルを適正にするよう補正する。
【0066】
本実施形態では、前記制御回路61は、次の作用説明(フローチャート説明)でも述べるように、そのソフトウエア的構成により、次のような処理を実行する。即ち、制御回路61は、前記検出センサ66により保持部材51,71のいずれかが挿入されたことを検出すると、まず、スキャナ部6による保持部材51,71の標識54,73が設けられた部分の画像読取りの処理を実行し、標識54,73の種類を判別することで、挿入された保持部材51,71の種類を判断する。
【0067】
切断用保持部材51が挿入されたと判断された場合には、制御回路61は、引続き、スキャナ部6による切断用保持部材51の表面部の画像読取りの処理を実行し、切断用保持部材51に保持されている切断対象物Sの位置及び大きさを検出し、ディスプレイ9への表示や切断位置の決定などを行う。この際の画像処理時には、予め設定されて例えばROM62に記憶されているデフォルトの補正用データを用いて、読取画像に対するシェーディング補正を行う。この後、上記したような切断動作を実行する。
【0068】
これに対し、読取用保持部材71が挿入されたと判断された場合には、制御回路61は、引続き、読取用保持部材71のスキャナ部6による基準部75の画像読取りの処理を実行し、読取った画像データからシェーディング補正用データを設定することが行なわれる。この場合、基準黒色部78の画像読取りに基づく黒レベルの補正用データと、基準白色部77の画像読取りに基づく白レベルの補正用データの両方を取得する。この後、スキャナ部6による読取用保持部材71に保持された読取対象物S´の画像読取りを実行する。この際の画像処理時には、上記基準部75を読取りに基づいて設定された補正用データを用いて、読取画像に対するシェーディング補正を実行する。更にその後、読取画像に基づいて切断データの作成の処理等が行なわれる。
【0069】
次に、上記構成の作用について、
図11及び
図12も参照して述べる。
図11のフローチャートは、切断装置1の挿入口2aから保持部材51,71が挿入された場合の、制御回路61が実行する画像読取りに関する処理の流れを概略的に示している。また、
図12のフローチャートは、上記
図11の処理のうち、シェーディング補正用データの設定の処理(ステップS6)の詳細な手順を示している。
【0070】
ここで、ユーザが、切断装置1において、切断対象物Sに対する切断動作を実行させたい場合には、
図1に示すように、切断用保持部材51の保持部53の第2粘着層53a上に、切断対象物Sを貼付けて保持させた上で、切断用保持部材51の前端部を挿入口2aから挿入する。また、切断装置1において、例えば切断データの作成のため、原画が描かれた読取対象物S´の画像読取りを実行させたい場合には、
図9(a)に示すように、読取用保持部材71の透明シート76を持上げて、載置領域72dの上面に読取対象物S´を載置した上で透明シート76を閉じることにより、読取対象物S´を保持させる。その状態で、読取用保持部材71の前端部を挿入口2aから挿入する。
【0071】
このように保持部材51,71が挿入口2aから挿入されると、制御回路61は、
図11のフローチャートに示す読取りの処理を実行する。即ち、ステップS1にて、検出センサ66により保持部材51,71が挿入されたことが検出されると、次のステップS2では、移送機構7により、標識54,73の読取り位置、つまり保持部材51,71の先端部分が、スキャナ部6の真下に来る位置まで、保持部材51,71が搬送される。ステップS3では、スキャナ部6による標識54,73部分の画像読取りの処理が行われ、標識54,73の種類の判別に基づいて、保持部材51,71の種類が識別される。
【0072】
ステップS4では、セットされた保持部材が読取用保持部材71であるかどうかが判断される。読取用保持部材71でない場合、つまり切断用保持部材51であった場合には(ステップS4にてNo)、次のステップS5にて、予め設定されて記憶されているデフォルトの補正用データが読み出される。そして、ステップS6にて、スキャナ部6による切断対象物Sの画像読取りの処理が行われる。この場合、読取画像に対するシェーディング補正は、予め設定されている補正用データを用いて行なわれる。図示はしていないが、この後、切断用保持部材51に保持された切断対象物Sに対する切断動作等が実行される。
【0073】
これに対し、セットされた保持部材が読取用保持部材71であった場合には(ステップS4にてYes)、次のステップS6にて、基準部75を用いたシェーディング補正用データの設定の処理が行なわれる。この処理については、
図12のフローチャート説明で述べる。この後、ステップS7にて、スキャナ部6による読取対象物S´の画像読取りの処理が行われる。この場合、読取画像に対するシェーディング補正は、上記ステップS6にて設定された最新の補正用データを用いて行なわれる。
【0074】
次に、
図12を参照して、前記基準部75を用いたシェーディング補正用データの設定の処理について述べる。シェーディング補正は公知技術であるので、簡単に説明する。まずステップS11では、移送機構7により、スキャナ部6により基準黒色部78が読取られる位置に、読取用保持部材71が搬送される。続くステップS12では、AFE(Analog Front End)調整が行われる。ステップS13では、スキャナ部6による基準黒色部78の読取りが行なわれ、その読取画像に基づいて、黒レベルデータが取得される。
【0075】
引続き、ステップS14にて、移送機構7により、スキャナ部6により基準白色部77が読取られる位置に読取用保持部材71が搬送される。ステップS15では、光源の光量調整が行われる。そして、ステップS16にて、スキャナ部6による基準白色部77の読取りが行なわれ、読取画像に基づいて、白レベルデータが取得される。次にステップS17にて、黒レベルデータ及び白レベルデータよりシェーディング補正用のデータが生成され設定される。以上のようにしてシェーディング補正用のデータの設定処理が完了すると、
図11のフローチャートに戻って、ステップS7の読取対象物S´の読取りの処理が実行される。このときには、読取用保持部材71の基準部75の読取りに基づいて補正用データが設定されることにより、スキャナ部6による読取対象物S´の読取画像に対するシェーディング補正を適正に行うことができる。
【0076】
このように本実施形態の読取用保持部材71によれば、標識73及び基準部75を備えるので、切断装置1側で、標識73をスキャナ部6により読取ることに基づいて、読取用保持部材71がセットされたことを自動で判別することができる。そして、その判別に基づいて基準部75の基準色を読取り、シェーディング補正を行うための補正用データを設定するので、読取画像に対するシェーディング補正を適正に行うことができる。
【0077】
特に本実施形態では、基準部75に、基準白色部77と基準黒色部78との両方を含むので、シェーディング補正を更に適正に行うことができる。また、本実施形態では、基準部75の上面が、保持部74に保持された読取対象物S´の上面と、ほぼ同一高さとなるように設定されているので、スキャナ部6が基準部75を読取る場合と、読取対象物S´を読取る場合との読取距離をほぼ一致させることができ、より正確な補正用データを設定することが可能となり、シェーディング補正をより適正に行うことができる。
【0078】
更に本実施形態では、読取用保持部材71の保持部74を、ベース部72とそのベース部72上に重ねるように配置される透明シート76とから構成したので、読取対象物S´をベース部72と透明シート76との間に挟むようにして容易且つ確実に保持することができる。このとき、第2粘着層53aにより切断対象物Sを保持する切断用保持部材51とは、対象物を保持する形態が異なっているので、ユーザの誤使用を防止することができる。
【0079】
そして、本実施形態の切断装置1(画像読取装置1´)によれば、上記した読取用保持部材71を備えるので、読取用保持部材71の基準部75を読取ることによって、シェーディング補正を行うための補正用データを設定することができ、読取対象物S´の読取画像に対するシェーディング補正を適正に行うことができる。しかも、読取用保持部材71及び切断用保持部材51には、夫々標識73及び54が設けられているので、保持部材51,71の種類を自動で判別し、その判別に基づいて保持部材51,71の種類に応じた処理や作業を行うことができる。また、消耗品である切断用保持部材51には基準部75を設けないので、切断用保持部材51を安価に製作することができる。一方、読取用保持部材71は、長期的に繰り返して使用することができる。
【0080】
図13は、本発明の第2の実施形態に係る読取用保持部材81の構成を示している。
図13(a)に示すように、この読取用保持部材81は、上記第1の実施形態の読取用保持部材71と同様に、軟質な合成樹脂材料からなり、前後方向にやや長い矩形シート状に構成されたベース部82を備えている。そのベース部82のうち、前側(送り方向先方)の領域に、自己の種類を示すための標識83、シェーディング補正用の基準部85、切断データ作成用の原画が描かれた紙等のシート状の読取対象物S´(図示せず)を着脱可能に保持する保持部84が順に設けられている。前記標識83は、読取用保持部材71の標識73と同様に、黒点を左右方向に3個並べた印からなる。また、前記基準部85についても、基準白色部87と基準黒色部88との両方を備えている。
【0081】
そして、前記保持部84は、ベース部82の上面のうち、前記標識83及び基準部85の形成部分、及び左右の縁部82b、82cを除いた内側の矩形状の領域に、粘着層が設けられている。この粘着層を第1粘着層84aと称し、第1粘着層84aが有する粘着力を第1粘着力と称する。ここで、第1の実施形態における切断用保持部材51は、切断時の切断対象物Sを移動不能に保持する必要があるため、保持部53の第2粘着層53aの第2粘着力は、比較的強い粘着力を有していた。しかしながら、読取用保持部材81に保持された読取対象物S´には、外力が何ら作用しないので、第1粘着層84aの第1粘着力は、上記第2粘着層53aの第2粘着力よりも弱くても良い。
【0082】
また、
図13(b)に示すように、前記基準部85(基準白色部87及び基準黒色部88)の上面の高さ寸法は、保持部84の第1粘着層84aの上面の高さよりも、図示しない読取対象物S´の標準的な厚み寸法分(例えば0.28mm)だけ高くなるように設定されている。つまり、基準部85の上面は、保持部84に保持された読取対象物S´の上面と、ほぼ同一高さとなるように設定されている。
【0083】
このような第2の実施形態の読取用保持部材81においても、第1の実施形態の読取用保持部材71と同様の効果を奏する。
【0084】
尚、上記各実施形態では、本発明を画像読取装置1´を含む切断装置1に適用するようにしたが、本発明は、複写機、ファクシミリ装置、スキャナ装置の画像読取装置全般に適用することができる。また、上記各実施形態では、基準部75,85を、基準白色部77,87と、基準黒色部78,88との両方を備えたものとしたが、少なくとも、基準白色部を備えた構成とすれば、シェーディング補正に用いる補正用データを得ることができる。基準白色部77,87及び基準黒色部78,88を、テープの貼付けにより構成するようにしたが、塗料の印刷等により基準白色部及び基準黒色部を設けるようにしても良い。
【0085】
更には、標識54,73,83についても、黒点に限らず、各種の文字、数字、記号、図形など、画像読取りにより種類が判別可能なものであれば、様々な変更が可能である。また、標識の色を変えることにより、種類を判別するようにしても良い。その他、上記各実施形態では、読取用保持部材71,81、及び切断用保持部材51のベース部72,82,52を、合成樹脂製のシートから構成したが、厚紙又は金属板等から構成しても良い等、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。