特許第6019761号(P6019761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019761
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】面状発熱体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/14 20060101AFI20161020BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20161020BHJP
   H05B 3/12 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   H05B3/14 E
   H05B3/14 F
   H05B3/20 326A
   H05B3/20 392A
   H05B3/12 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-123155(P2012-123155)
(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公開番号】特開2013-251064(P2013-251064A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 奈緒
(72)【発明者】
【氏名】大森 友美子
【審査官】 宮崎 光治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−264052(JP,A)
【文献】 特許第2809432(JP,B2)
【文献】 特開2010−043144(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/118407(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/118361(WO,A1)
【文献】 特開2011−228018(JP,A)
【文献】 特開2009−263825(JP,A)
【文献】 特開2007−248317(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0138121(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B1/00−3/86
B32B1/00−43/00
C08B1/00−37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材、前記基材の一方の面に形成した抵抗体、および抵抗体へ通電するための電極で構成され、前記抵抗体が導電性物質とカルボキシル基を有する繊維状多糖類とを含み、
前記カルボキシル基を有する繊維状多糖類がセルロース繊維であり、
前記セルロース繊維の繊維幅が2nm以上50nm以下であり、前記セルロース繊維の長さが0.5μm以上50μm以下であることを特徴とする面状発熱体。
【請求項2】
前記セルロース繊維のカルボキシル基の少なくとも一部がカルボン酸塩であることを特徴とする請求項記載の面状発熱体。
【請求項3】
前記導電性物質がカーボン粒子から成ることを特徴とする請求項1記載の面状発熱体。
【請求項4】
前記導電性物質が金属粒子であることを特徴とする請求項1記載の面状発熱体。
【請求項5】
前記導電性物質の粒子径が1nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項またはに記載の面状発熱体。
【請求項6】
前記抵抗体の硬化後の厚みが0.5μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1記載の面状発熱体。
【請求項7】
基材の一方の面に印刷により抵抗体を形成する工程と前記抵抗体上に電極を設ける工程とを備え、前記抵抗体が導電性物質とカルボキシル基を有する繊維状多糖類とを含み、
前記カルボキシル基を有する繊維状多糖類がセルロース繊維であり、
前記セルロース繊維の繊維幅が2nm以上50nm以下であり、前記セルロース繊維の長さが0.5μm以上50μm以下であることを特徴とする面状発熱体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも基材と抵抗体で構成され、抵抗体が導電性物質とカルボキシル基を有する繊維状多糖類を含むことを特徴とする面状発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、面状発熱体としては、バインダーとなる樹脂にカーボンブラックを初めとしたカーボン粒子や導電性無機フィラー、金属化合物などの導電性物質を混在させ、このペースト状材料を絶縁基材上に成形して抵抗体を作製し、そこに通電して発生したジュール熱を利用した構造が用いられてきた。導電性物質の電導度やバインダーの熱導電性、抵抗体の形状等を設計・作製したうえで、印加電圧を制御すること等により温度制御を可能とする。このような発熱体は床面や壁面の暖房機器など比較的広範囲の平面や曲面を持つ機器へ適用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-256617号公報
【特許文献2】特開2005-11651号公報
【特許文献3】特願2009−547135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導電性物質をバインダー中に分散する際、比表面積の大きさや表面状態の親和性により導電性物質が凝集体を形成したり、偏在すること等により、均一に分散させることが困難であるという課題がある。或いは金属粒子など比重の大きな物質を用いる場合、保管中にバインダー内で分離、沈殿してしまい、再分散させるのが困難である。このように、導電性物質の分散制御は難しい。一方、導電特性や発熱特性はその分散性により大きく影響を受け、機能の多くは良分散状態で効率的に発揮される。
【0005】
上記の課題を解決するために、従来、様々な試みが成されてきた。
特許文献1では、カーボン粒子表面にイミド基を有する合成高分子を吸着させる方法が開示されている。しかし、本方法を用いると、耐熱性や樹脂への相溶性は向上するものの、カーボン粒子同士の凝集を十分に抑制することができず、電気的・機械的特性を十分に発揮させることが困難である。特許文献2では、発熱体の面内温度を均一化するために均熱板を装着する方法が開示されている。しかし、本方法を用いると製造工程が複雑になるうえ、薄層化が困難になる。特許文献3では、分散媒中に界面活性剤を添加することでカーボンナノチューブの分散性を向上させる方法が開示されている。しかし、本方法を用いると、分散液状態での分散性は良いが、乾燥過程においてカーボンナノチューブが凝集体を形成するため、電気的特性を十分に発揮させることが困難である。
【0006】
本発明は以上のような背景技術を考慮して成されたもので、製造から廃棄に至る環境負荷が極めて低く、製造工程が簡便で、生産性が高く、さらに電気的・機械的特性の高い面状発熱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、本発明は、少なくとも基材、前記基材の一方の面に形成した抵抗体、および抵抗体へ通電するための電極で構成され、抵抗体が導電性物質とカルボキシル基を有する繊維状多糖類を含むことを特徴とする面状発熱体である。かつ、前記カルボキシル基を有する繊維状多糖類がセルロース繊維であることを特徴とする。かつ、前記セルロース繊維の繊維幅が2nm以上50nm以下であり、前記セルロース繊維の長さが0.5μm以上50μm以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明は、前記セルロース繊維のカルボキシル基の少なくとも一部がカルボン酸塩であることを特徴とする面状発熱体である。
【0010】
本発明は、前記導電性物質がカーボン粒子から成ることを特徴とする面状発熱体である。
【0011】
本発明は、前記導電性物質が金属粒子であることを特徴とする面状発熱体である。
【0012】
本発明は、前記導電性物質の粒子径が1nm以上100nm以下であることを特徴とする面状発熱体である。
【0014】
本発明は、前記抵抗体の硬化後の厚みが0.5μm以上10μm以下であることを特徴とする面状発熱体である。
【0015】
本発明は、基材の一方の面に印刷により抵抗体を形成する工程と前記抵抗体上に電極を設ける工程とを備え、前記抵抗体が導電性物質とカルボキシル基を有する繊維状多糖類とを含むことを特徴とする面状発熱体の製造方法である。かつ、前記カルボキシル基を有する繊維状多糖類がセルロース繊維であることを特徴とする。かつ、前記セルロース繊維の繊維幅が2nm以上50nm以下であり、前記セルロース繊維の長さが0.5μm以上50μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、製造から廃棄に至る環境負荷が極めて低く、かつ製造工程が簡便で、生産性が高い面状発熱体を提供することができる。本方法によると、導電性物質が簡便に分散された分散液を得られ、この分散液により形成された抵抗体は、十分な電気的・機械的特性を備える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の面状発熱体の一実施形態の上面図である。
図2】本発明の面状発熱体の一実施形態の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明における面状発熱体の上方図である。本発明における面状発熱体10は、少なくとも抵抗体11が形成され、電極12が抵抗体11に設けられたものである。また、抵抗体11は、少なくとも、導電性物質とカルボキシル基を有する繊維状多糖類とを含む。ここで、電極12の形状および配置に関しては、抵抗体11の形状および配置や、面状発熱体の用途によって適宜設計され、特に限定はされない。
【0019】
図2は、図1に図示した本発明における面状発熱体のA’−Aにおける側断面図である。本発明における面状発熱体20は、基材23の少なくとも一方の面に、少なくとも抵抗体21が形成され、抵抗体21に電極22が設けられたものである。ここで基材の両面に抵抗体21および電極22が形成されていてもよい。また、抵抗体21は基材上の一部分または全表面に形成されていてもよい。抵抗体21の形状は、例えば、短冊形状、蛇腹形状、凹凸形状等が挙げられるが、面状発熱体の用途によって適宜設計され、特に限定はされない。
【0020】
本発明に用いる繊維状多糖類としては、セルロース、キチン、キトサンなどが挙げられ、特に構造配列が規則的であり、剛直な骨格を有するセルロース繊維が好ましい。セルロース繊維の原料となるセルロースとしては、木材パルプ、非木材パルプ、コットン、バクテリアセルロース等を用いることができる。
【0021】
セルロースにカルボキシル基を導入する方法としては、現在いくつか化学処理の方法が報告されている。しかし、本発明のように繊維状であり分散性が良好で、且つ導電性物質が効率的にセルロースのカルボキシル基と相互作用できる構造を有するためには、できるだけセルロースの結晶構造を保ちながらカルボキシル基を導入し、且つカルボキシル基が繊維表面に規則的に存在することが望ましい。
【0022】
具体的には、次の方法が望ましい。2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペジニルオキシラジカル(TEMPO)を触媒として使用し、pHを調整しながら次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤、臭化ナトリウム等の臭化物を用いて処理する。この方法によると、TEMPOの立体障害により結晶性を有する繊維最小単位であるミクロフィブリルの表面に存在するセルロースC6位の一級水酸基のみが選択的にカルボキシル基へと酸化される。導入されたカルボキシル基の静電反発によってミクロフィブリルの結合が弱められるために、低エネルギー投入による機械的処理によって高分散した高結晶性を有する繊維状セルロースが得られる。
さらに、本方法を利用すると、得られたセルロース繊維の分子量低下が抑えられるため、高い力学強度が保持される。
【0023】
以下、上記化学処理の具体的な方法を説明する。
水中で分散させたセルロースにニトロキシラジカルと臭化ナトリウムとを添加して室温で攪拌しながら、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加してセルロースの酸化を行う。酸化反応中に水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液を添加し、反応系内のpHを9〜11に制御する。この時、セルロース繊維表面のC6位の水酸基がカルボキシル基に酸化される。十分水洗し、得られたセルロースを繊維状に分散したものを分散液の構成材料として用いる。なお、酸化剤としては、次亜ハロゲン酸又はその塩、および亜ハロゲン酸又はその塩が使用可能であり、特に次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。臭化物としては、臭化リチウム、臭化カリウム、臭化ナトリウム等が挙げられ、特に臭化ナトリウムが好ましい。
【0024】
さらに、カルボキシル基の一部がカルボン酸塩であることを特徴とする。例えば、カルボキシル基の対イオンとなるカチオンは、アルカリ金属イオン(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム等)、アンモニウムイオン、有機オニウム(各種脂肪族アミン、芳香族アミン、ジアミンなどのアミン類や水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラn−ブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム等のNR4OH(Rはアルキル基、またはベンジル基、またはフェニル基、またはヒドロキシアルキル基で、4つのRが同一でも異なっていてもよい。)で表される水酸化アンモニウム化合物、水酸化テトラエチルホスホニウムなどの水酸化ホスホニウム化合物、水酸化オキソニウム化合物、水酸化スルホニウム化合物など)の対イオンが挙げられる。また、これらを2種以上混合して塩を形成することもできる。
【0025】
さらに、繊維幅は2nm以上50nm以下であり、長さが0.5μm以上50μm以下を有する繊維状多糖類を含むことが好ましい。本発明における導電性物質の分散性のメカニズムは明らかではないが、この範囲の繊維状多糖類は、繊維同士の静電反発によって分散安定性が確保できる。また、セルロース繊維同士の絡み合い構造によって、導電性物質が捕捉されるため、欠落しにくくなり、歩留まりを向上させることができる。一方、繊維幅が50nmを超えると、セルロース繊維の全体積に占める表面積の割合が相対的に小さくなり、導電性物質と相互作用できる部位が減るため、導電性物質を効率的に分散させることが出来なくなると共に、導電性物質同士の相互作用を高めることが出来ないため、導電効率の低下を招いてしまう。また、長さが0.5μm未満だとセルロース繊維同士の絡み合いが十分に行えず、抵抗体の膜強度低下の原因になってしまうため好ましくない。さらに、長さが50μmを超えるとセルロース繊維同士の絡み合いが大きくなるために繊維は分散しにくく、沈殿を形成しやすくなるため、分散安定性が低下する。繊維の幅や長さは、分散液の状態では水などの溶媒に固形分濃度0.1%程度に希釈した繊維をガラス等に展開し、乾燥させたものをAFMやTEMなどを用いて測定することができる。
【0026】
なお、カルボキシル基を有するセルロースの分散方法、及び導電性物質を混合させ分散液を調製する際の分散方法としては、特に限定しないが、各種の粉砕機、混合機、攪拌機、超音波等の使用により分散させる。例えば、ミキサー、高速回転ミキサー、シェアミキサー、ブレンダー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ボールミル等のせん断力或いは衝突による処理方法、ワーリングブレンダー、フラッシュミキサー、タービュライザーなどを用いることができ、またこれらを組み合わせることも出来る。予めセルロースを分散媒中で分散させた後に導電性物質を混合してもよく、或いはセルロースと導電性物質を混合したものを分散処理してもよい。これにより、セルロースは分散されナノオーダーの繊維状となり、導電性物質は分散した繊維に効率的に相互作用し、分散性が良好な分散液が調製される。
【0027】
これを基材に印刷し、加熱焼成することにより低導電性を有する抵抗体を形成する。形成した抵抗体に電極を設け、電流を流すことによりジュール熱が発生し、抵抗体が発熱する仕組みとなっている。
【0028】
本発明における導電性物質の分散性及び分散安定性のメカニズムとしては、分散液中に存在する繊維状多糖類が本来有する水酸基及び化学的処理により付与したカルボキシル基と、個々の導電性物質が相互作用し、さらに繊維状多糖類のカルボキシル基が部分的に電離していることにより、互いに静電反発しているため分散しやすく、また分散状態での安定性が良いと考えられる。さらに、本方法を用いると繊維状多糖類を含むことにより、繊維同士の絡み合いによる成膜性や多糖類の持つ耐熱性、ナノオーダーの繊維に導電性物質が捕捉されることによる導電性物質の歩留まり向上、多糖類に含まれるカルボキシル基の電離による導電性の向上等の付随的な効果が得られる。
また、紙すきに見られるように、乾燥状態において多糖類の繊維同士は強固な水素結合により、良好な成膜性を有するため、抵抗体の作製時に高温による加熱を必要としない。さらに、導電性物質分散時において、化学的あるいは機械的負荷が少ないため、導電性物質本来の特性を発揮させることができる。また、繊維状多糖類はアスペクト比が高く、分子量をある程度保持しながら分散媒中に分散するため、低濃度でも粘性を有し、印刷において膜厚を調整しやすいという特徴がある。
上述の効果を考慮し、本発明を用いれば様々な分野や用途への展開が可能となる。
【0029】
本発明に用いる導電性物質としては、カーボン粒子からなることが好ましい。その粒子径は1nm以上100nm以下が好ましく、1nm以上50nm以下がより好ましい。カーボン粒子としては、あらゆるカーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ランプブラック)を始め、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、黒鉛、を挙げることができ、これらを物理的、化学的処理した物質の何れを用いてもよい。
【0030】
また、前処理としてカーボン粒子に表面処理を施しても良い。表面処理としては、酸化処理、グラフト重合反応、カップリング処理、機械的処理、プラズマ処理、黒鉛化、賦活化処理などを挙げることができる。前処理を施すことにより、カーボン粒子の表面状態を変化させ各種官能基を導入したり、有機層を形成することによってマトリックス樹脂との反応や相溶性を向上させたり、また、カーボン粒子自体の凝集を阻害することにより分散性を向上させることができる。
【0031】
また、導電性物質として金属粒子を用いることが更に望ましい。その粒子径は1nm以上100nm以下が好ましく、1nm以上20nm以下がより好ましい。粒子径が1nmより小さい場合では、ナノ粒子の表面張力による凝集力が強く、均一に分散することが困難なため、面上で均一な導電性を得ることができない。また、粒子径が100nmより大きい場合では、粒子同士の相互作用が相対的に小さくなるために凝集が起こりにくく、本方法による分散の効果が発揮されにくい。
【0032】
本発明における導電性物質としての金属粒子について、分散媒中に金属粒子を添加する方法の他、酸化還元反応を利用して分散媒中で金属粒子を析出させる方法を用いることができる。具体的には次の方法が望ましい。(参考文献:Chem.Commun.,2010,46,8567−8569)
カルボキシル基を有するセルロース繊維を含む分散液に水溶性の無機金属塩類を添加し、低温下で攪拌する。この時、セルロース繊維上に存在するカルボキシル基或いはカルボン酸塩の対イオンとしてイオン化した金属が配位する。その後、過剰量の還元剤を加えることにより、イオン化傾向の違いで金属が還元され析出する。このようにして得られた金属粒子の粒径は反応温度や反応時間、無機金属塩類の濃度によって制御することができ、1〜100nmの金属粒子が得られる。無機金属塩類の金属としては、金、銀、銅、鉄、鉛、白金などの金属またはこれらの合金、酸化物、塩化物などを用いることができる。なお。金属粒子の粒子径は金属粒子の分散液を固形分濃度0.05%程度に希釈してガラス等に展開し、乾燥させたものをTEM等を用いて観察することで求めることができる。
【0033】
上記方法により得られた金属粒子はセルロース繊維と単離することが出来ない。そのため、観察により得られた粒子径と、仕込みの無機金属塩類から算出される析出金属量によって評価される。
【0034】
分散媒中に金属粒子を添加する方法と異なり、上記方法を用いると、剛直なセルロース繊維に沿って一直線上に金属粒子が形成されるため、金属粒子が偏在することがない。また、粒子間距離が均一であることから抵抗体において均一な導電性を得ることができる。さらに、セルロース繊維の絡み合いに伴い金属粒子同士がネットワークを形成するため、電気的接続における効率がよく、少量の金属により高い導電性を発揮することができるため、金属の使用量を大幅に削減することができる。
【0035】
凝集や沈殿が生成しない範囲においては、より繊維同士の静電反発を増大させる目的や分散液の粘度を制御する目的、あるいは塗工性やぬれ性など機能性付与などのために、水溶性多糖類を含む各種添加物、各種樹脂を含んでもよい。例えば、カルボキシメチルセルロース等に代表される化学修飾したセルロース、カラギーナン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、寒天、可溶化澱粉や、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、水溶性高分子、合成高分子、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤などを用いることができる。
【0036】
本発明における抵抗体については、基材上に導電性物質の分散液を一部分または全表面に印刷し、これを加熱、焼成することにより低導電性を有する抵抗体を形成することができる。印刷方法としては、特に限定されず、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、バーコーター、スピンコーター等を用いることができる。印刷後、加熱、焼成することにより、分散媒を気化させるとともに分散媒中の繊維状多糖類同士あるいは繊維状多糖類と基材が主に水素結合による物理架橋を形成することで導電性物質を内包した抵抗体を形成する。加熱、焼成方法としては抵抗加熱、赤外線加熱、誘電加熱、マイクロ波加熱、誘導加熱等のいずれか、もしくはこれら二つ以上の加熱方法を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
抵抗体の硬化後の厚みに関しても0.5μmより小さいと基材表面の凹凸に抵抗体の追従が十分に行われず、基材が部分的に露出してしまうため、設計どおりの導電性が得られないとともに、抵抗体表面で均一な導電性を得られない可能性がある。また、硬化後の厚みが10μmより大きくなると、ハンドリング時に抵抗体にクラック発生等の問題が生じやすくなる。
【0038】
本発明に用いる基材としては、絶縁性があればよく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紙、ガラス等を用いることが出来る。
【0039】
抵抗体表面の保護や吸湿抑制を目的に、抵抗体を形成後樹脂層を設けてもよい。樹脂層は特に限定されないが、熱可塑性樹脂を直接形成してもよく、接着剤を介してシート状樹脂をラミネートしてもよい。
【実施例】
【0040】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、各種評価結果は表1にまとめた。
【0041】
<試薬・材料>
銀ペースト:((株)アサヒ化学研究所、LS−453)
セルロース: 漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ「Machenzie」)
TEMPO: 市販品(東京化成工業(株)、98%)
次亜塩素酸ナトリウム: 市販品(和光純薬(株)、Cl:5%)
臭化ナトリウム: 市販品(和光純薬(株))
カーボンブラック: 市販品(三菱化学、#40)
硝酸銀水溶液:市販品(和光純薬(株))
水素化ホウ素ナトリウム:市販品(和光純薬(株))
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(置換度1.2): 市販品(和光純薬(株))
【0042】
<実施例1>
基材としては、ガラス基材を用いた。銀ペーストをスクリーン印刷により塗布し、線幅1mmのT字電極と電極パッドを電極幅10mmとなるように形成し、100℃で30分硬化させた。次に、TEMPO酸化処理によりカルボキシル基を付与したセルロース(カルボキシル基量1.5mmol/g)を調製した。全体としてセルロースの固形分濃度4%となるようにイオン交換水を添加しながら1M水酸化ナトリウムを用いてpH10に調整した。これらをミキサー(大阪ケミカル、アブソルートミル、14,000rpm)を用いて1時間処理し、セルロース繊維を含む調製液を調製した。得られたセルロース繊維は繊維幅3nm、繊維長1.6μmであった。上記調製液5mlとカーボンブラック400mgとイオン交換水5mlとを混合し、卓上スターラーにて攪拌し、カーボンブラックの分散液を調製した。分散液をスクリーン印刷を用いて電極上に10mm角となるように塗工し、その後100℃で30分間乾燥させ、10μm厚の抵抗体を形成した。
【0043】
<実施例2>
実施例1と同様に固形分濃度4%になるようにセルロース繊維を含む調製液を調製した。5mMの硝酸銀を同量加え、卓上スターラーにて30分間攪拌後、50mMの水素化ホウ素ナトリウムをさらに調製液の2倍量加え、90分間攪拌し、分散液を調製した。分散液のTEM観察から、粒径5〜7nmの銀粒子の形成を確認した。実施例1と同様にガラス基材上に抵抗体を形成した。
【0044】
<比較例1>
実施例1における調製液の替わりにバインダーとして、非繊維状多糖類であるカルボキシメチルを使用したカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液(固形分4%)を用いて、同様に形成した。
<比較例2>
実施例2における調製液の替わりにCMC水溶液(固形分4%)を用いて、同様に形成した。
【0045】
実施例1、2、比較例1、2においてデジタルマルチメーターにて電極間の抵抗値を測定した。また、面状発熱体において印加電圧を20〜80Vとし、発熱体中心部の60秒後の温度を熱電対によって測定した(表1)。また、実施例1と比較例1において印加電圧50Vを用いて10秒毎の温度変化を測定した(表2)。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
表1、2のように、カルボキシル基を付与したセルロース繊維がカーボン粒子や金属粒子の分散液に存在することにより電流が流れ、応答性の高い発熱体となることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、製造から廃棄に至る環境負荷が極めて低く、かつ製造コストが低い導電性基材を製造することができる。本発明を用いると、繊維状多糖類を含むことにより、繊維同士の絡み合いによる成膜性や多糖類の持つ耐熱性や熱負荷時の寸法安定性、多糖類に含まれるカルボキシル基の電離による導電性向上、ナノオーダーの繊維による基材への密着性など付随的な効果が得られる。
上述の効果を考慮し、本発明を用いれば、様々な食品、医薬品、電子部材等の用途への展開が可能となる。
【符号の説明】
【0050】
10・・・面状発熱体
11・・・抵抗体
12・・・電極
20・・・面状発熱体
21・・・抵抗体
22・・・電極
23・・・基材
図1
図2