特許第6019763号(P6019763)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019763
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】ドアハンドル
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/12 20140101AFI20161020BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20161020BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   E05B85/12 E
   B60J5/00 M
   B60J5/04 H
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-123268(P2012-123268)
(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公開番号】特開2013-249593(P2013-249593A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】鎗水 美帆
(72)【発明者】
【氏名】石川 愛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恵子
(72)【発明者】
【氏名】横山 慶子
(72)【発明者】
【氏名】市原 祥実
(72)【発明者】
【氏名】山本 絵里
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 理恵
(72)【発明者】
【氏名】井澤 夏美
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−161057(JP,A)
【文献】 特開2012−025195(JP,A)
【文献】 特開2010−235095(JP,A)
【文献】 特開平09−317323(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/021237(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用スイングドアの開口部側に臨む内側に設けられ、長尺状の把持部を有するドアハンドルであって、
前記把持部は、その長手方向における前記車両用スイングドアの回動中心側のラッチ機構解除部と、該ラッチ機構解除部に対して前記車両用スイングドアの開放側に連続して設けられるドア開閉領域とを含み
前記ドア開閉領域の一部は前記車両用スイングドアの中心よりも前記開放側に配置されており、
前記把持部と対向面との間には空隙が形成され、
前記把持部は、前記ラッチ機構解除部において前記空隙側の被検知体を検知する検知部を備えドアハンドル。
【請求項2】
前記空隙は、前記長手方向において前記ラッチ機構解除部と前記ドア開閉領域とに跨って設けられる請求項1に記載のドアハンドル。
【請求項3】
前記把持部は、前記空隙の反対側の被検知体を検知する第2の検知部をさらに備える請求項1又は2に記載のドアハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用スイングドアに搭載されるドアハンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、こうしたプルハンドルとしては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。図4に示すように、プルハンドルとしても使用可能なインサイドハンドル81は、車両用スイングドア82の内側に開閉可能に配置されている。そして、車両用スイングドア82の閉状態において、インサイドハンドル81が開動作すると、ラッチ機構による車両用スイングドア82の車両ボデーへの保持が解除されるようになっている。あるいは、車両用スイングドア82の開状態において、ハンドルロック機構部によりインサイドハンドル81が閉位置で固定されると、該インサイドハンドル81がプルハンドルとして使用可能となる。そして、開状態にある車両用スイングドア82を閉操作する際には、その操作入力にインサイドハンドル81が使用される。
【0003】
一方、別のプルハンドルとしては、例えば特許文献2に記載されたものも知られている。図5(a)(b)に示すように、このプルハンドル91は、車両用スイングドア92の中央部から前側に寄った位置に配置されている。そして、プルハンドル91には、車両用スイングドア92の閉状態において、ラッチ機構による車両用スイングドア92の車両ボデーへの保持を電動で解除するためのドア開放スイッチ93が設けられている。従って、操作者は、プルハンドル91に手をかけた状態で、ラッチ機構の解除及び車両用スイングドア92の開操作を一連の動作で円滑に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−257185号公報
【特許文献2】特開2007−182740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のインサイドハンドル81(プルハンドル)では、閉状態にある車両用スイングドア82を開操作する際にも、その操作入力にインサイドハンドル81が使用されると推定される。この場合、ラッチ機構を解除するための操作位置と車両用スイングドア82を開操作する操作位置とが一致していることで、操作性が低くなる可能性がある。これは、閉状態にある車両用スイングドア82に対して手のかけやすい位置と、車両用スイングドア82を開操作する際に操作のしやすい位置とが異なることによる。例えばインサイドハンドル81が前側寄り(車両用スイングドア82の回動中心側寄り)に配置されている場合には、インサイドハンドル81の開動作のための操作性が増すものの、車両用スイングドア82を開操作するためにインサイドハンドル81を押す際の操作力が増してその操作性が低くなる。特に女性や高齢者等の力の弱い操作者にとっては操作しづらい構造となる。反対に、インサイドハンドル81が後側寄りに配置されている場合には、インサイドハンドル81の開動作のための操作性が低くなる。
【0006】
一方、特許文献2のプルハンドル91では、車両用スイングドア92の中央部から前側に寄った位置に配置されていることで、依然として車両用スイングドア92を開操作するためにプルハンドル91を押す際の操作力が増してその操作性が低くなる。
【0007】
本発明の目的は、車両用スイングドアの閉状態において、ラッチ機構を解除する際の操
作性を損ねることなく、車両用スイングドアを開操作する際の操作性を増すことができるドアハンドルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両用スイングドアの開口部側に臨む内側に設けられ、長尺状の把持部を有するドアハンドルであって、前記把持部は、その長手方向における前記車両用スイングドアの回動中心側のラッチ機構解除部と、該ラッチ機構解除部に対して前記車両用スイングドアの開放側に連続して設けられるドア開閉領域とを含み、前記ドア開閉領域の一部は前記車両用スイングドアの中心よりも前記開放側に配置されており、前記把持部と対向面との間には空隙が形成され、前記把持部は、前記ラッチ機構解除部において前記空隙側の被検知体を検知する検知部を備えることを要旨とする。
【0009】
同構成によれば、前記ラッチ機構解除部が前記車両用スイングドアの回動中心側寄りに配置されていることで、操作者は、車両用スイングドアの閉状態において手指をかけやすく、ラッチ機構を解除する際の前記ラッチ機構解除部の操作性を増すことができる。また、前記ドア開閉領域が前記ラッチ機構解除部に対して前記車両用スイングドアの開放側であって、その一部が前記車両用スイングドアの中心よりも前記開放側に配置されていることで、操作者は、前記車両用スイングドアを開操作する際に前記ドア開閉領域を軽く押せばよく、このときの操作力が低くなる分、その操作性を増すことができる。
【0010】
また、操作者が、前記把持部を掴むべく前記ラッチ機構解除部の位置でその手指を前記空隙に差し入れると、これが前記検知部により被検知体として検知される。従って、前記検知部による被検知体の検知に基づいて、ラッチ機構を解除することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のドアハンドルにおいて、前記空隙は、前記長手方向において前記ラッチ機構解除部と前記ドア開閉領域とに跨って設けられることを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、前記ラッチ機構解除部及び前記ドア開閉領域は、前記対向面との間に前記空隙を形成する前記把持部に含まれていることで、操作者は、その手指を前記空隙に差し入れて前記把持部を掴んだまま、前記ラッチ機構解除部から前記ドア開閉領域へと手指を移動させることで、ラッチ機構の解除及び前記車両用スイングドアの開操作を一連の動作で円滑に行うことができる。また、操作者は、ラッチ機構の解除後、前記車両用スイングドアを開操作する際に前記把持部から手指を離す必要がないため、例えば前記車両用スイングドアが開可能状態にあるときに突風などの影響を受けて開いてしまう可能性を低くできる。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載のドアハンドルにおいて、前記把持部は、前記空隙の反対側の被検知体を検知する第2の検知部をさらに備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、車両用スイングドアの閉状態において、ラッチ機構を解除する際の操作性を損ねることなく、車両用スイングドアを開操作する際の操作性を増すことができるドアハンドルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態が適用される車両用スイングドアを示す斜視図。
図2】(a)(b)は、図1のA−A線及びB−B線に沿った断面図。
図3】(a)(b)は、本発明の第2の実施形態を示す断面図。
図4】従来形態を示す模式図。
図5】(a)は、別の従来形態を示す側面図であり、(b)は、(a)のC−C線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
図1図2を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。なお、以下では、車両前後方向を「前後方向」といい、車両高さ方向上方及び下方をそれぞれ「上方」及び「下方」という。また、車室内方に向かう車両幅方向内側を「車内側」といい、車室外方に向かう車両幅方向外側を「車外側」という。
【0019】
図1に示すように、車両ボデー1の側部には、乗降用の開口部2が形成されるとともに、該開口部2の車両前方の縁部2aには、ドアヒンジ(図示略)周りに車両用スイングドア3が回動自在に支持されている。車両用スイングドア3は、ドアヒンジ周りに一側及び他側に回動することで開閉作動する。
【0020】
車両用スイングドア3の開口部2側に臨む内側には、例えば樹脂材からなるドアトリム10が取着されている。このドアトリム10は、車両用スイングドア3の車室内の意匠面を形成するもので、その全体的な外形をなす本体部11を備える。そして、本体部11の車両高さ方向中間部には、車両用スイングドア3の回動中心側から反回動中心側である開放側に向かう方向(車両用スイングドア3の閉状態における前後方向に相当)に延在する略棒状(長尺状)の把持部12が一体的に設けられている。この把持部12は、その長手方向における車両用スイングドア3の回動中心側にラッチ機構解除部13を有するとともに、該ラッチ機構解除部13に対して車両用スイングドア3の開放側に連続して設けられたドア開閉領域14を有する。ラッチ機構解除部13は、車両用スイングドア3の前後方向中心よりもその回動中心側に配置されており、ドア開閉領域14の一部は、車両用スイングドア3の前後方向中心よりもその開放側に配置されている。なお、図1にパターンを付して示したように、ラッチ機構解除部13の上部表面は、ドア開閉領域14との識別を容易化するための模様若しくは色彩又はこれらの組み合わせの施された被覆材13aで覆われている。
【0021】
図2(a)(b)に示すように、把持部12と該把持部12が車外側で対向する本体部11の対向面11aとの間には、空隙C1が形成されている。また、把持部12と該把持部12が下側で対向する本体部11の対向面11bとの間には、貫通孔C2が形成されている。空隙C1及び貫通孔C2は互いに連通しており、従って、空隙C1は、貫通孔C2を介することで車室内に連通する。すなわち、把持部12は、車両用スイングドア3の回動中心側の端部及び反回動中心側の端部(前端部及び後端部)で本体部11に接続されて、これらの間に橋渡されている。そして、空隙C1及び貫通孔C2は、把持部12の長手方向においてラッチ機構解除部13とドア開閉領域14とに跨って、即ち把持部12の長手方向略全長に亘って形成されている。
【0022】
把持部12は、ラッチ機構解除部13において空隙C1側の被検知体(例えば操作者の手指)を検知する検知部としての静電容量方式のセンサ21を内蔵する。このセンサ21は、把持部12内に設けられるとともに、例えばマイコンからなるECU(電子制御装置)22に電気的に接続されている。このECU22は、ラッチモータ23に電気的に接続されるとともに、該ラッチモータ23は、車両用スイングドア3を車両ボデー1に閉状態で保持するためのラッチ機構24に連係されている。ECU22、ラッチモータ23及びラッチ機構24は、ドアトリム10の車外側(即ち車両用スイングドア3内)に設置されている。
【0023】
センサ21は、例えば空隙C1において操作者の手指が接触又は近接する際の静電容量の変化に基づいて、操作者のラッチ解除の意思を検知し、ラッチ解除意思検知信号をECU22に出力する。ECU22は、センサ21からラッチ解除意思検知信号が入力されると、ラッチモータ23を駆動してラッチ機構24を解除する。これにより、閉状態にある車両用スイングドア3が操作者によって開操作可能な開可能状態となる。
【0024】
次に、本実施形態の動作について説明する。
まず、車両用スイングドア3が閉状態にあるものとして説明する。この状態で、車室内の操作者(即ち乗員)が、例えば降車すべくその手指で把持部12のラッチ機構解除部13を掴み、あるいは掴もうとすると、空隙C1において操作者の手指が接触又は近接することで、センサ21はラッチ解除意思検知信号をECU22へ出力する。これに伴い、ECU22によりラッチモータ23が駆動されてラッチ機構24が解除され、車両用スイングドア3が開可能状態となる。つまり、このときの把持部12(プルハンドル)は、いわゆるインサイドハンドルとして機能している。本実施形態では、ラッチ機構解除部13が車両用スイングドア3の回動中心側寄りに配置されていることで、操作者は、車両用スイングドア3の閉状態においてその手指をラッチ機構解除部13に容易にかけることができる。
【0025】
その後、操作者が、その手指で把持部12を押すと、車両用スイングドア3が開放される。本実施形態の把持部12には、ラッチ機構解除部13に連続して車両用スイングドア3の開放側にドア開閉領域14が設けられている。従って、操作者は、その手指をラッチ機構解除部13から車両用スイングドア3の開放側となるドア開閉領域14にそのまま移動させて該ドア開閉領域14を車外側に押すことで車両用スイングドア3を開放することができ、車両用スイングドア3を開操作する際の操作力を低くできる。
【0026】
なお、車両用スイングドア3の開状態では、車室内の操作者は、その手指で把持部12の任意の位置(ラッチ機構解除部13又はドア開閉領域14)を掴んで車内側に引っ張ることで、車両用スイングドア3を閉鎖することができる。つまり、操作者は、自身にとって好ましい把持部12の位置を掴んで、車両用スイングドア3を閉操作することができる。
【0027】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、ラッチ機構解除部13が車両用スイングドア3の回動中心側寄りに配置されていることで、操作者は、車両用スイングドア3の閉状態において手指をかけやすく、ラッチ機構24を解除する際のラッチ機構解除部13の操作性を増すことができる。また、ドア開閉領域14がラッチ機構解除部13に対して車両用スイングドア3の開放側であって、その一部が車両用スイングドア3の中心よりも前記開放側に配置されていることで、操作者は、車両用スイングドア3を開操作する際にドア開閉領域14を軽く押せばよく、このときの操作力が低くなる分、その操作性を増すことができる。そして、特に女性や高齢者等の力の弱い操作者にとっての操作性を向上することができる。
【0028】
(2)本実施形態では、ラッチ機構解除部13及びドア開閉領域14は、本体部11の対向面11aとの間に空隙C1を形成する把持部12に含まれている。従って、操作者は、その手指を空隙C1に差し入れて把持部12を掴んだまま、ラッチ機構解除部13からドア開閉領域14へと手指を移動させることで、ラッチ機構24の解除及び車両用スイングドア3の開操作を一連の動作で円滑に行うことができる。また、操作者は、ラッチ機構24の解除後、車両用スイングドア3を開操作する際に把持部12から手指を離す必要がないため(把持部12を保持し続けることが可能となり)、例えば車両用スイングドア3が開可能状態にあるときに突風などの影響を受けて開いてしまう可能性を低くできる。また、同様に車両が坂道で停車されている場合に、車両用スイングドア3が重力によって開いてしまう可能性を低くできる。
【0029】
(3)本実施形態では、操作者が、把持部12を掴むべくラッチ機構解除部13の位置でその手指を空隙C1に差し入れると、これがセンサ21により被検知体として検知される。従って、センサ21による被検知体の検知に基づいて、ラッチ機構24を解除することができる。特に、センサ21は、静電容量方式であることで、その構造を極めて簡易なものにできる。
【0030】
(4)本実施形態では、把持部12の下側に、空隙C1と車室内とを連通する貫通孔C2が形成されていることで、空隙C1に異物が侵入したとしても、該空隙C1に連通する貫通孔C2を通じて落下させて当該異物を車室内に排出することができる。従って、空隙C1に侵入した異物によってラッチ機構24が誤って解除される可能性を低減できる。
【0031】
(5)本実施形態では、ラッチ機構解除部13を被覆材13aで覆ったことで、ドア開閉領域14との識別を容易に行うことができる。また、ラッチ機構解除部13及びドア開閉領域14の外観が互いに異なることで、意匠性を増すことができる。
【0032】
(6)本実施形態では、車両用スイングドア3を開操作する際、該車両用スイングドア3を肘で押したりする必要がなく、従ってその動作のために把持部12から手指を離す必要もないことから、円滑な開操作を実現できる。また、操作者の手指から把持部12を離すことなく車両用スイングドア3を開操作することができるため、操作者は安心して車両用スイングドア3を操作することができる。
【0033】
(7)本実施形態では、車両用スイングドア3を開操作する際、該車両用スイングドア3の開放端側(自由端側)により近いドア開閉領域14を操作することになるため、車室外の障害物(例えば隣接車両)との距離感を容易に把握することができ、該障害物と車両用スイングドア3との干渉を容易に回避することができる。
【0034】
(8)本実施形態では、車両用スイングドア3の開状態では、車室内の操作者は、自身にとって好ましい把持部12の位置(ラッチ機構解除部13又はドア開閉領域14)を掴んで、車両用スイングドア3を閉操作することができる。例えば女性や高齢者等の力の弱い操作者は、ラッチ機構解除部13に対して車両用スイングドア3の開放側に配置されているドア開閉領域14を引っ張ることで、このときの操作力が低くなる分、その操作性を増すことができる。
【0035】
(9)本実施形態では、車両用スイングドア3を開閉操作する際、該車両用スイングドア3の開放端側(自由端側)により近いドア開閉領域14を操作することで、車両用スイングドア3の開度を容易に調整することができる。
【0036】
(第2の実施形態)
図3を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態は、把持部の接続構造及び該把持部内のセンサ構造を変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明は省略する。
【0037】
図3(a)(b)に示すように、本実施形態のドアトリム30は、その全体的な外形をなす本体部31を備える。そして、本体部31の車両高さ方向中間部には、車両用スイングドア3の回動中心側から反回動中心側である開放側に向かう方向(図3において紙面に直交する方向であって、車両用スイングドア3の閉状態における前後方向に相当)に延在する略棒状(長尺状)の把持部32が一体的に設けられている。この把持部32は、その長手方向における車両用スイングドア3の回動中心側にラッチ機構解除部33を有するとともに、該ラッチ機構解除部33に対して車両用スイングドア3の開放側に連続して設けられたドア開閉領域34を有する。
【0038】
把持部32と該把持部32が車外側で対向する本体部31の対向面31aとの間には、空隙C11が形成されている。また、把持部32は、その下端において本体部31と繋がっている。つまり、空隙C11は、車室内と連通する貫通孔(C2)が非形成であることで、把持部32に沿って延在する溝形状を呈している。すなわち、把持部32は、車両用スイングドア3の回動中心側の端部及び反回動中心側の端部(前端部及び後端部)並びに下端で本体部31に接続されている。そして、空隙C11は、把持部32の長手方向においてラッチ機構解除部33とドア開閉領域34とに跨って、即ち把持部32の長手方向略全長に亘って形成されている。
【0039】
把持部32は、ラッチ機構解除部33において空隙C11側の被検知体(例えば操作者の手指)を検知する第1の検知部としての静電容量方式の第1のセンサ36を内蔵するとともに、空隙C11の反対側(反空隙側)の被検知体を検知する第2の検知部としての静電容量方式の第2のセンサ37を内蔵する。これら第1及び第2のセンサ36,37は、把持部32内に設けられるとともに、前述のECU22に電気的に接続されている。
【0040】
第1及び第2のセンサ36,37は、例えばラッチ機構解除部33の空隙C11側及び反空隙側(車両用スイングドア3の閉状態における車外側及び車内側)において操作者の手指が接触又は近接する際の静電容量の変化に基づいて、操作者のラッチ解除意思をそれぞれ検知し、それぞれがラッチ解除意思検知信号をECU22に出力する。ECU22は、第1及び第2のセンサ36,37からのラッチ解除意思検知信号が共に入力されると、ラッチモータ23を駆動してラッチ機構24を解除する。これにより、閉状態にある車両用スイングドア3が操作者によって開操作可能な開可能状態となる。
【0041】
以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)(2)、(5)〜(9)の効果に加えて以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、操作者が、把持部32を掴むべくラッチ機構解除部33の位置でその手指を空隙C11に差し入れると、これが第1のセンサ36により被検知体として検知される。同時に、操作者が、把持部32を掴むべくラッチ機構解除部33にその手指を近付けると、これが第2のセンサ37により被検知体として検知される。従って、これら第1及び第2のセンサ36,37の協働による被検知体の検知に基づいて、ラッチ機構24をより正確に解除することができる。そして、仮に空隙C11に異物が侵入したとしても、これによってラッチ機構24が誤って解除される可能性を低減できる。特に、第1及び第2のセンサ36,37は、静電容量方式であることで、その構造を極めて簡易なものにできる。
【0042】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記第1の実施形態において、把持部12は、ラッチ機構解除部13において空隙C1の反対側(反空隙側)の被検知体を検知する検知部(第2の検知部)を内蔵していてもよい。
【0043】
・前記第1の実施形態において、貫通孔(C2)は、ラッチ機構解除部13においてのみ、空隙C1と車室内とを連通するものであってもよい。あるいは、貫通孔(C2)を割愛して把持部12の下端を本体部11に接続してもよい。
【0044】
・前記第2の実施形態において、空隙C11と車室内とを連通する貫通孔を形成してもよい。また、この貫通孔は、ラッチ機構解除部33においてのみ、空隙C11と車室内とを連通するものであってもよい。
【0045】
・前記各実施形態において、静電容量方式のセンサ(21,36,37)に代えて、例えば押しボタン式のスイッチを採用してもよい。
・前記各実施形態において、ラッチ機構解除部(13,33)は、車両用スイングドア3(ドアトリム)に開閉自在に支持されてラッチ機構24に連係された操作レバー(いわゆるインサイドハンドルに相当)であってもよい。この場合、ラッチ機構解除部の開閉操作に伴うラッチ機構24の解除後、車両用スイングドア3を開操作する際に肘で押す傾向が顕著になって、把持部(12,32)から手指を離しやすくなることから、ラッチ機構解除部に対してドア開閉領域が連続して設けられている構成は、把持部を保持し続けることにいっそう効果的である。
【0046】
・前記各実施形態において、車両用スイングドア3の全閉状態で施錠するドアロック機構を搭載する場合、ラッチ機構解除部(13,33)は、ドアロック機構を解錠する機能を併せ備えていてもよい。
【0047】
・前記各実施形態において、センサ(21,36,37)は、ドアトリムの本体部内(車両用スイングドア3内)に設けられてもよい。
・前記各実施形態において、被覆材13aは、ラッチ機構解除部(13,33)に貼り付けた布・皮などであってもよい。
【0048】
・前記各実施形態において、緊急用として、車両用スイングドア3の別部分にメカ式ハンドルを設置してもよい。
・前記各実施形態において、把持部(12,32)及び空隙(C1,C11)を割愛して、ドアトリムの本体部(車両用スイングドア3)の車内側の壁面にリブ状に突設したプルハンドルであってもよい。この場合、車両用スイングドア3を閉操作する際に操作者の手指を引っ掛ける適宜のフック部があることがより好ましい。また、車両用スイングドア3を開操作する際には、操作者は、その手指をラッチ機構解除部(13,33)にかけるとともに、ラッチ機構24の解除後にドア開閉領域(14,34)を押せばよい。
【0049】
なお、被検知体を検知する検知部(センサ)は、プルハンドル(ラッチ機構解除部)の範囲に合わせてドアトリム(車両用スイングドア3)に内蔵すればよい。
・前記各実施形態において、把持部(12,32)は、ドアトリムの本体部とは別設して該本体部に固定するようにしてもよい。
【0050】
・本発明は、車両ボデー1の側部において上端部がルーフに回動自在に支持される車両用スイングドア(いわゆるガルウイングドア)に適用してもよい。この場合、プルハンドルを上下方向に延設するとともに、当該方向にラッチ機構解除部及びドア開閉領域14を並設すればよい。
【0051】
・本発明は、車両ボデー1の後部に設けられるスイング式のバックドアに適用してもよい。特に、上端部がルーフに回動自在に支持されるバックドアの場合、プルハンドルを上下方向に延設するとともに、当該方向にラッチ機構解除部及びドア開閉領域14を並設すればよい。
【0052】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記把持部の下側に、前記空隙と車室内とを連通する貫通孔が形成されている。同構成によれば、前記空隙に異物が侵入したとしても、該空隙に連通する前記貫通孔を通じて当該異物を車室内に排出することができる。従って、前記空隙に侵入した異物によってラッチ機構が誤って解除される可能性を低減できる。
【符号の説明】
【0053】
C1,C11…空隙、C2…貫通孔、3…車両用スイングドア、11,31…本体部、11a,31a…対向面、12,32…把持部、13,33…ラッチ機構解除部、14,34…ドア開閉領域、21…センサ(検知部)、36…第1のセンサ(第1の検知部)、37…第2のセンサ(第2の検知部)。
図1
図2
図3
図4
図5