特許第6019769号(P6019769)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019769
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/12 20060101AFI20161020BHJP
   F21S 8/10 20060101ALI20161020BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20161020BHJP
   F21W 101/10 20060101ALN20161020BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20161020BHJP
【FI】
   F21S8/12 123
   F21S8/12 150
   F21S8/10 180
   H01L33/58
   F21W101:10
   F21Y115:10
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-125345(P2012-125345)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-251145(P2013-251145A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 和則
【審査官】 丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−238511(JP,A)
【文献】 特開2008−300202(JP,A)
【文献】 特開2009−048898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10 − 8/12
H01L 33/48 − 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと前面レンズで構成される灯室内に、リフレクタと発光素子が内蔵される車両用前照灯であって、
前記発光素子は、その光出射面からの光の出射方向が前記前面レンズの光軸と交差するように配置され、
前記リフレクタは、前記発光素子の配置面に対して一方の側に配置され、前記発光素子からの光を前記前面レンズ側に反射させる反射面を有して構成され、
前記反射面は、曲率あるいは角度の異なる複数の区分されたセグメントによって構成され、
これら各セグメントのうち少なくとも一つが、前記発光素子からの光を、カットオフライン形成用の配光パターンとして照射するセグメントであって、前記カットオフライン形成用の前記配光パターンとして照射するセグメントが、周囲の反射面と比べて配光パターンを上方に拡散させるように前記カットオフライン上およびその近傍照射して、カットオフラインに重なるようにカットオフラインの下方から上方に形成される周囲の前記反射面と比べて上方に拡散された前記配光パターンを形成する第1領域を具備するようにし
前記第1領域は、前記発光素子の光出射面からの垂線との交差部よりも前記前面レンズ側に形成されていることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記カットオフライン形成用の前記配光パターンを形成する前記反射面のセグメントは複数のセグメントからなり、これらセグメントは、前記リフレクタの前記発光素子に近接する一端部から前記一端部と対向する他端部に至る箇所において、互いに隣接して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記リフレクタの前記発光素子に近接する一端部から前記一端部と対向する他端部に至る箇所であって、前記発光素子に近接して配置された第2領域によってオーバーヘッドサイン用の配光パターンを形成することを特徴とする請求項2に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用前照灯に係り、特に、発光素子を光源とする車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用前照灯は、下記特許文献1、2等に示すように、ハウジングと前面レンズで構成される灯室内に、リフレクタと発光素子とからなるヘッドランプが内蔵されて構成されている。この場合、通常、発光素子は、その光出射面からの光の出射方向が前面レンズの光軸と交差するように配置され、リフレクタは、発光素子の配置面に対して一方の側に配置され、発光素子からの光を前面レンズ側に反射させる反射面を有して構成される。
【0003】
そして、前記ヘッドランプによってロービーム用配光パターンを形成しようとする場合、リフレクタの前記反射面の区分された各セグメントにおいて、その曲率あるいは角度等を設定し、これらセグメントから反射される光により、水平カットオフラインを含む水平カット部と、斜めカットオフラインを含む斜めカット部と、光拡散部と、が合わされた配光パターンが得られるようになっている。
【0004】
このようにして水平カットオフラインおよび斜めカットオフラインを有するロービーム用配光パターンは、交通法規がたとえば左側通行の地域において、前方車両や歩行者にグレアを与えないように配慮された、左通行ロービーム用配光パターンとして構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-082117号公報
【特許文献2】特開2011-238511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2に開示されている車両用前照灯は、その配光パターンにおいて、水平カットオフラインおよび斜めカットオフラインを境として、明暗差が段差的に大きく変化するように構成されていた。
【0007】
このため、車両を運転する運転者にとって、路面上において光が照射されている部分と光が照射されていない部分との境界が明確に認識され、かえって運転がし難くなるという不都合が生じていた。
【0008】
本発明はこのような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、簡単な構成にも拘わらず、配光パターンのカットオフラインにおける明暗差を緩やかに形成できる車両用前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明の車両用前照灯は、カットオフラインを有する配光パターンをリフレクタの反射面における複数のセグメントで形成するようにし、これら各セグメントのうち少なくとも一つが、前記発光素子からの光を、カットオフライン形成用の配光パターンとして照射するセグメントであって、前記カットオフライン上およびその近傍を照射するように構成したものである。
【0010】
このように構成された車両用前照灯は、反射面のセグメントの曲率あるいは角度を設定することによって上述した構成とでき、また、カットオフライン上およびその近傍を照射させることによって、該配光パターンのカットオフラインにおける明暗差を緩やかにできるようになる。
【0011】
本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の車両用前照灯は、ハウジングと前面レンズで構成される灯室内に、リフレクタと発光素子が内蔵される車両用前照灯であって、前記発光素子は、その光出射面からの光の出射方向が前記前面レンズの光軸と交差するように配置され、前記リフレクタは、前記発光素子の配置面に対して一方の側に配置され、前記発光素子からの光を前記前面レンズ側に反射させる反射面を有して構成され、前記反射面は、曲率あるいは角度の異なる複数の区分されたセグメントによって構成され、これら各セグメントのうち少なくとも一つが、前記発光素子からの光を、カットオフライン形成用の配光パターンとして照射するセグメントであって、前記カットオフライン上およびその近傍を照射する第1領域を具備するようにしたことを特徴とする。
(2)本発明の車両用前照灯は、(1)の構成において、前記カットオフライン形成用の前記配光パターンを形成する前記反射面のセグメントは複数のセグメントからなり、これらセグメントは、前記リフレクタの前記発光素子に近接する一端部から前記一端部と対向する他端部に至る箇所において、互いに隣接して形成されていることを特徴とする。
(3)本発明の車両用前照灯は、(2)の構成において、前記カットオフライン上およびその近傍を照射する前記第1領域は、前記カットオフライン形成用の配光パターンを形成する前記反射面のセグメントのうち、前記発光素子の光出射面からの垂線との交差部よりも前記前面レンズ側に形成されていることを特徴とする。
(4)本発明の車両用前照灯は、(2)、(3)のいずれかの構成において、前記リフレクタの前記発光素子に近接する一端部から前記一端部と対向する他端部に至る箇所であって、前記発光素子に近接して配置された第2領域によってオーバーヘッドサイン用の配光パターンを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このように構成された車両用前照灯によれば、簡単な構成にも拘わらず、配光パターンのカットオフラインにおける明暗差を緩やかに形成できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)、(b)は、本発明の実施形態1の車両用前照灯のリフレクタの反射面のうちカットオフライン形成用の配光パターンを形成するためのセグメントと、これらセグメントによって形成される該カットオフライン形成用の配光パターンの関係を示した説明図である。
図2】本発明の車両用前照灯の概略を示す断面図である。
図3】本発明の車両用前照灯のリフレクタを前面レンズ側から観た斜視図である。
図4】(a)、(b)は、本発明の車両用前照灯のリフレクタの反射面のうち図中左右両側に配置されるセグメントと、これらセグメントによって形成される光拡散配光パターンの関係を示した説明図である。
図5】本発明の車両用前照灯の効果を示す説明図である。
図6】本発明の車両用前照灯のリフレクタにおいて形成される領域A1、B1の配置箇所を示した断面図である。
図7】(a)は、図6に示した構成において発光素子からの光が領域A1、B1によって反射された後の光路を示す図であり、(b)は、発光素子の下方にリフレクタが配置されている場合における同様の図である。
図8】(a)、(b)は、本発明の実施形態1の車両用前照灯を示し、リフレクタに新たに形成した領域A3、A4と、これら領域A3、A4によって形成されるオーバーヘッドサイン用の配光パターンを示した図である。
図9図8に示す領域A3、A4の配置箇所を示す断面図である。
図10】本発明の車両用前照灯の他の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施形態1)
図2は、本発明の車両用前照灯の実施形態1の概略を示す断面図である。該車両用前照灯が車両に取り付けられた場合、図中左が車両の前方となり、図中右側が車両の後方となるようになっている。
【0015】
図2において、車両用前照灯10は、その灯室11を前面レンズ12とハウジング13によって画成するようになっている。前面レンズ12は車両の前方側に配置され、ハウジング13は車両の後方側に配置されるようになっている。
【0016】
ハウジング13は車両の前方側に開口14を有し、その開口縁14Aにおいて前面レンズ12の周縁部12Aを挿入させる溝部15が形成されている。ハウジング13の開口縁14Aの溝部15にはシール剤16が塗布され、このシール剤16によって前面レンズ12の周縁部12Aを固着させるとともに水分の侵入を防止するシール性を確保できるようになっている。
【0017】
車両用前照灯10の灯室11内にはヘッドランプ20が内蔵されている。このヘッドランプ20は、たとえばロービーム用配光パターンを形成するようになっており、大略、発光素子21とリフレクタ22によって構成されている。
【0018】
発光素子21は、チップ状をなし、その表面に光出射面21Aが形成されて構成されている。この発光素子21は、ハウジング13に対して傾動可能に支持されるヒートシンク23に搭載されて灯室11内に配置されるようになっている。ヒートシンク23は、発光素子21の駆動中に発生する熱を放散させるようになっている。発光素子21は、その光出射面21Aが灯室11の上方を指向するようにして配置されている。すなわち、発光素子21は、その光出射面21Aが前面レンズ12と直接に対向することなく、該光出射面21Aからの光の出射方向(図中矢印Aで示す)が前面レンズ12の光軸(図中点線Oで示す)と交差するように配置されている。
【0019】
リフレクタ22は、発光素子21の配置面(ヒートシンク23の搭載面に相当する)とほぼ平行となる平坦部22Aと、発光素子21の配置面に対して上方の側に形成される反射面22Bとを有し、前面レンズ12側に開口22Cが形成されて構成されている。図3は、リフレクタ22を前面レンズ12側から観た斜視図であり、該リフレクタ22は平坦部22Aと反射面22Bとで前記開口22Cを有する容器状の形態を有して構成されていることが明らかになる。
【0020】
図2に戻り、リフレクタ22の平坦部22Aの発光素子21が配置される箇所には該発光素子21を露出させる開口部22Dが設けられている。これにより、発光素子21とリフレクタ22をヒートシンク23を介してハウシング13に傾動可能に支持させることによって、発光素子21をリフレクタ22に対して所定の箇所に配置できるようになっている。
【0021】
リフレクタ22の反射面22Bは、大略、たとえば回転放物面、放物柱面等を組み合わせた自由曲面を有し、発光素子21と対向する側に形成されている。リフレクタ22の反射面22Bは、発光素子21の光出射面21Aからの光を前記反射面22Bで反射させて前面レンズ12側へ出射させる機能を有するようになっている。
【0022】
なお、リフレクタ22の反射面22Bは、後に詳述するように、平面的に観て(図3参照)、互いに隣接する領域からなる複数のセグメント35から構成されている。これらセグメント35は、その配置箇所に応じて設定された曲率あるいは角度を有して形成され、隣接する他のセグメント35、40と段差を介して接続されて構成されている。このように、リフレクタ22の反射面22Bを区分された複数のセグメント35および40で構成し、それぞれのセグメント35、40の曲率あるいは角度を所望の値とすることで、リフレクタ22の反射面22Bで反射された発光素子21からの光を所望の配光パターンで出射させることができるようになっている。
【0023】
なお、リフレクタ22の平坦部22Aにおいて、発光素子21が配置される前記開口部22Dの周囲のうち前面レンズ12側の部分に、たとえば樹脂材あるいは金属等からなるシェード30が取り付けられている。シェード30は、発光素子21を光出射面21Aに至る手前まで被うようにして形成されている。このシェード30は、車両用前照灯10の灯室11を前面レンズ12を通して観た場合に、発光素子21あるいはこの発光素子21に接続される配線(図示せず)等が直接に目視されることのないように遮蔽部材としての機能を有するようになっている。
【0024】
図1(a)、(b)は、それぞれ、リフレクタ22の反射面22Bのうちカットオフライン形成用の配光パターンを形成するためのセグメント35A、35Bと、これらセグメント35A、35Bによって形成される該カットオフライン形成用の配光パターン37の関係を示した説明図である。
【0025】
図1(a)は、リフレクタ22の反射面22Bを前面レンズ12側から観た図であり、カットオフライン形成用の前記配光パターン37を形成するセグメント35A、35Bは、反射面22Bの中央であって、発光素子21に近接する側のリフレクタ22の一端部22Pから該一端部22Pと対向する他端部22Qに至る領域において、互いに隣接するたとえば2列のセグメント35A、35Bとなって形成されている。この場合、セグメント35A、35Bからなるセグメント35の幅Wはたとえば40mm以内に設定されている。
【0026】
ここで、セグメント35Aにおいて、その長手方向の中途部に周囲の反射面と比べて配光パターンを上方向に拡散させる領域A1(この明細書において、第1領域と称する場合がある)を有し、また、セグメント35Bにおいて、その長手方向の中途部に周囲の反射面と比べて配光パターンを上方向に拡散させる領域B1(この明細書において、第1領域と称する場合がある)を有するようになっている。
【0027】
なお、前記領域A1、B1は、ヘッドランプ20の断面図である図6に示すように、発光素子21の光出射面21Aの垂直線(垂線)とリフレクタ22の交点(交差部)Cよりも前面レンズ12側に位置づけられて設けられている。このように構成した場合、反射面の形成の際の蒸着においてアンダーコート膜の影響を受け難くでき、信頼性ある領域A1、B1の形成を行うことができる。
また、前記領域A1、B1は、カットオフライン形成用の配光パターンを形成するセグメント35A、35B内に設定されているため、カットオフラインとの位置ずれも少なく、精度良く配光パターンを形成することができる。
図7(a)は、図6に示す構成において、発光素子21からの光がリフレクタ22の領域A1、B1に入射され、該領域A1、B1に反射される際における光路L1を示した図である。なお、図7(a)においては、リフレクタ22の図示は省略し、該リフレクタ22に形成されている反射面22Bのみを明示している。
【0028】
図1(a)では、リフレクタ22の反射面22Bにおいて、互いに隣接して配置される前記セグメント35A、35Bに対し、図中右側および図中左側の反射面においても、複数のセグメント40で区分されており、これらセグメント40は光拡散配光パターンを形成するようになっている。これら左右両側のセグメント40および光拡散配光パターンについては後述する。
【0029】
図1(b)は、車両用前照灯10の前方の仮想鉛直スクリーンに投影される配光パターンで、リフレクタ22の前記セグメント35A、35Bによって形成されるカットオフライン形成用の配光パターン37を示している。図中、H−H線は水平線であり、V−V線は垂直線である。なお、図1(b)において、二点鎖線で囲まれる領域は、後述する光拡散配光パターン39が形成される部分となっている。
【0030】
図1(b)において、カットオフライン形成用の配光パターン37の第1カットオフラインCL1は、水平カットオフラインと称され、V−V線よりも図中右側において、H−H線よりも僅かに下方にて水平方向に延在する。また、カットオフライン形成用の配光パターン37の第2カットオフラインCL2は、斜めカットオフラインと称され、V−V線から左側に向かって上方に傾斜して延在するようになっている。
【0031】
図1(b)において、配光パターンPA1は、セグメント35A(前記領域A1を除く)による投影像として形成され、その上端縁によって第1カットオフラインCL1が形成されるようになっている。そして、配光パターンPA1の第1カットオフラインCL1上およびその近傍に形成される配光パターンPA2があり、この配光パターンPA2は、前記領域A1による投影像として形成されるようになっている。配光パターンPA2は、たとえば、第1カットオフラインCL1の下方から上方に幅lを有して形成されている。この配光パターンPA2は、配光パターンPA1の第1カットオフラインCL1に重なるように光を照射することにより、第1カットオフラインCL1における明暗差を緩やかにでき、低照度の光を該第1カットオフラインCL1よりも遠方に照射することができるようになる。
【0032】
また、配光パターンPB1は、セグメント35B(前記領域B1を除く)による投影像として形成され、その上端縁によって第2カットオフラインCL2が形成されるようになっている。そして、配光パターンPB1の第2カットオフラインCL2上およびその近傍に形成される配光パターンPB2があり、この配光パターンPB2は、前記領域B1による投影像として形成されるようになっている。配光パターンPB2は、たとえば、第2カットオフラインCL2の下方から上方に幅lを有して形成されている。この配光パターンPB2は、配光パターンPB1の第2カットオフラインCL2における明暗差を緩やかにでき、低照度の光を該第2カットオフラインCL2よりも遠方に照射することができるようになる。
【0033】
図4(a)、(b)は、リフレクタ22の反射面22Bを正面側から観た図であり、光拡散配光パターン39を形成するセグメントのうちリフレクタ22の図中右側および左側に配置されるセグメント40と、これらセグメント40によって形成される該光拡散配光パターン39の関係を示した説明図である。
【0034】
図4(a)は、リフレクタ22の反射面22Bを前面レンズ12側から観た図であり、光拡散配光パターン39を形成する複数のセグメント40は、カットオフライン形成用の前記配光パターン37を形成するセグメント35の両脇にそれぞれ形成されている。前記セグメント40は、セグメント35に対して図中右側の箇所において、リフレクタ22の一端部22Pから他端部22Qにかけて3列となって互いに隣接するセグメント40A、40B、40Cによって形成され、セグメント35に対して図中左側の箇所において、リフレクタ22の一端部22Pから他端部22Qにかけて3列となって互いに隣接するセグメント40D、40E、40Fによって形成されている。
【0035】
図4(b)は、図1(b)と同様に、車両用前照灯10の前方の仮想鉛直スクリーンに投影される配光パターンで、リフレクタ22の前記セグメント40Aないし40Fによって形成される光拡散配光パターン39と、その上端縁によって形成される第3カットオフラインCL3が示されている。図中、H−H線は水平線であり、V−V線は垂直線である。
【0036】
このように構成された車両用前照灯10の配光パターンは、図1(b)に示すカットオフライン形成用の配光パターン37、図4(b)に示す光拡散配光パターン39を重ね合わせた配光パターンとして形成され、図5に示すような形状の配光パターンでロービーム用配光パターンが形成されるようになっている。この場合、上述したように、カットオフライン形成用の配光パターン37の第1カットオフラインCL1において、該第1カットオフラインCL1上およびその近傍に配光パターンPA2が該第1カットオフラインCL1に一部重なって形成され、第2カットオフラインCL2において、該第2カットオフラインCL2上およびその近傍に配光パターンPB2が該第2カットオフラインCL2に一部重なって形成されている。このため、第1カットオフラインCL1および第2カットオフラインCL2における明暗差を緩やかにでき、第1カットオフラインCL1および第2カットオフラインCL2の近傍に光のぼけた部分を形成できるようになる。このため、簡単な構成にも拘わらず、配光パターンのカットオフラインにおける明暗差を緩やかにできる。また、低照度の光をカットオフラインよりも遠方に照射することができ、視認性を向上させることができる。
(実施形態2)
図8(a)は、たとえば実施形態1によって構成した車両用前照灯10にオーバーヘッドサイン用の配光パターンを形成する場合の構成を示した図である。ここで、オーバーヘッドサイン用の配光パターンは、車両の前方路面の上方に設置された頭上標識を照明するのに適した配光パターンである。
【0037】
図8(a)において、前記セグメント35内の一部であって、リフレクタ22の発光素子21に近接する一端部22Pに隣接して並設された領域A3(この明細書において、第2領域と称する場合がある)、領域A4(この明細書において、第2領域と称する場合がある)が設けられ、これら領域A3、A4によってオーバーヘッドサイン用の配光パターンを形成するようになっている。この場合、カットオフライン形成用の配光パターン37を形成するセグメント35Aは、その発光素子21側の端辺が前記領域A3に隣接することによって形成され、カットオフライン形成用の配光パターン37を形成するセグメント35Bは、その発光素子21側の端辺が前記領域A4に隣接することによって形成されている。
【0038】
領域A3、A4は、図9に示すように、発光素子21の光出射面21Aの垂直線からリフレクタ22の平坦部22A側の後端部にかけて60°から90°の間の領域に配置させることが望ましい。そして、領域A3、A4のそれぞれは、それらが隣接するセグメント35A、35Bと無段差で接続されて構成されている。なお、図9においては、リフレクタ22の図示は省略し、該リフレクタ22に形成されている反射面22Bのみを明示している。
【0039】
図8(b)は、車両用前照灯10の前方の仮想鉛直スクリーンに投影される配光パターンを示し、セグメント35A、35Bよって形成されるカットオフライン形成用の配光パターン37、セグメント40Aないし40Fによって形成される光拡散配光パターン39とともに、領域A3、A4によって形成されるオーバーヘッドサイン用の配光パターン45を示している。
【0040】
このように構成した車両用前照灯10によれば、リフレクタ22に領域A3、A4を設ける簡単な構成によって、車両の前方路面の上方に設置された頭上標識を容易に照明することができるようになる。
【0041】
なお、この実施形態2では、実施形態1に示した構成において、領域A3、A4を設けるようにしたものである。しかし、これに限定されることはなく、たとえば、実施形態1に示した構成を採用せずに、領域A3、A4をリフレクタ22に形成するようにしてもよい。また、領域A3、A4はセグメントとして設けるようにしてもよい。
(実施形態3)
上述した各実施形態では、ヘッドランプ20は、発光素子21を下方に配置させ、リフレクタ22は該発光素子21の上方に配置させた構成としたものである。しかし、図10に示すように、ヘッドランプ20は、その発光素子21が上方に配置され、リフレクタ22が該発光素子21の下方に配置されて構成されたものにあっても、本発明を適用できることはいうまでもない。図10は、図2に対応づけて描いた図であり、図2に示した部材と同じ部材に対して同一の符号を付して示している。図において、発光素子21の光出射面21Aからの光は、図中矢印Bに示すように下方に照射され、リフレクタ22に反射された後に、前面レンズ12の光軸Oの方向に出射されるようになっている。
この場合において、図7(b)は、発光素子21からの光がリフレクタ22の領域A1、B1に入射され、該領域A1、B1に反射される際の光路L2を示した図である。なお、図7(b)においては、リフレクタ22の図示は省略し、該リフレクタ22に形成されている反射面22Bのみを明示している。
(実施形態4)
上述した各実施形態では、リフレクタ22は平坦部22Aと反射面22Bとで構成されるものとして説明した。しかし、リフレクタ22は、その反射面22Bにおいてリフレクタ(光反射部材)としての主なる機能を有する部分となっている。このことから、リフレクタ22は、平坦部22Aは必ずしも必要となる部材ではなく、反射面22Bのみの構成とするようにしてもよい。
【0042】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0043】
10……車両用前照灯、11……灯室、12……前面レンズ、12A……周縁部(前面レンズの)、13……ハウジング、14……開口(ハウジングの)、14A……開口縁、15……溝部、16……シール剤、20……ヘッドランプ、21……発光素子、21A……光出射面(発光素子の)、22……リフレクタ、22A……平坦部(リフレクタの)、22B……反射面(リフレクタの)、22C……開口(リフレクタの)、22D……開口部(リフレクタの)、23……ヒートシンク、30……シェード、35、35A、35B、40Aないし40F……セグメント、A1、B1、A3、A4……領域、37……カットオフライン形成用の配光パターン、39……光拡散配光パターン、45……オーバーヘッドサイン用の配光パターン。
図1
図2
図3
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図5
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図8
図9
図10
図7