(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019770
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】双方向絶縁型DC−DCコンバータの制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
H02M3/28 H
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-125555(P2012-125555)
(22)【出願日】2012年6月1日
(65)【公開番号】特開2013-251998(P2013-251998A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】大井 一伸
【審査官】
鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−224012(JP,A)
【文献】
特開平09−223935(JP,A)
【文献】
特開2011−019294(JP,A)
【文献】
Germnan G. Oggierl, Roberto Leidhold, Guillermo 0. Garcia, Alejandro R. Oliva, Juan C. Balda, Fred Barlow,Extending the ZVS Operating Range of Dual Active Bridge High-Power DC-DC Converters,Power Electronics Specialists Conference, 2006. PESC '06. 37th IEEE,IEEE,2006年 6月22日,P.1 - P.7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00− 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と変圧器の1次巻線との間に接続され、第1,第3スイッチング素子が直列接続された第1のスイッチングアームと、第2,第4スイッチング素子が直列接続された第2のスイッチングアームと、が並列接続された単相フルブリッジ回路を有する第1コンバータと、
前記変圧器の二次巻線に接続され、第5,第7スイッチング素子が直列接続された第3のスイッチングアームと、第6,第8スイッチング素子が直列接続された第4のスイッチングアームと、が並列接続された単相フルブリッジ回路を有する第2コンバータと、
を備えた双方向絶縁型DC−DCコンバータの制御装置において、
1次側直流電圧E1が、2次側直流電圧E2に変圧器巻数比nを乗算して2次側直流電圧E2を1次側に換算した2次側直流電圧換算値nE2よりも大きい場合は、第1コンバータにおける第1スイッチング素子と第2スイッチング素子との組み合わせ、または第3スイッチング素子と第4スイッチング素子との組み合わせを同時にオンして零電圧となる期間を設け、コンバータ出力電圧のパルス幅を狭くし、
2次側直流電圧換算値nE2が、1次側直流電圧E1よりも大きい場合は、第2コンバータにおける第5スイッチング素子と第6スイッチング素子との組み合わせ、または第7スイッチング素子と第8スイッチング素子の組み合わせを同時にオンして零電圧となる期間を設け、コンバータ出力電圧のパルス幅を狭くするパルス幅変調器を備え、
前記パルス幅変調器は、
1次側直流電圧E1が2次側直流電圧換算値nE2よりも大きい場合は、第1コンバータにおけるパルス幅を、第2コンバータにおけるパルス幅のnE2/E1倍とし、2次側直流電圧換算値nE2が1次側直流電圧E1よりも大きい場合は、第2コンバータにおけるパルス幅を、第1コンバータにおけるパルス幅のE1/nE2倍とすることを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータの制御装置。
【請求項2】
直流電源と変圧器の1次巻線との間に接続され、第1,第3スイッチング素子が直列接続された第1のスイッチングアームと、第2,第4スイッチング素子が直列接続された第2のスイッチングアームと、が並列接続された単相フルブリッジ回路を有する第1コンバータと、
前記変圧器の二次巻線に接続され、第5,第7スイッチング素子が直列接続された第3のスイッチングアームと、第6,第8スイッチング素子が直列接続された第4のスイッチングアームと、が並列接続された単相フルブリッジ回路を有する第2コンバータと、
を備えた双方向絶縁型DC−DCコンバータの制御装置において、
1次側直流電圧E1が、2次側直流電圧E2に変圧器巻数比nを乗算して2次側直流電圧E2を1次側に換算した2次側直流電圧換算値nE2よりも大きい場合は、第1コンバータにおける第1スイッチング素子と第2スイッチング素子との組み合わせ、または第3スイッチング素子と第4スイッチング素子との組み合わせを同時にオンして零電圧となる期間を設け、コンバータ出力電圧のパルス幅を狭くし、
2次側直流電圧換算値nE2が、1次側直流電圧E1よりも大きい場合は、第2コンバータにおける第5スイッチング素子と第6スイッチング素子との組み合わせ、または第7スイッチング素子と第8スイッチング素子の組み合わせを同時にオンして零電圧となる期間を設け、コンバータ出力電圧のパルス幅を狭くするパルス幅変調器を備え、
前記パルス幅変調器は、
1次側直流電圧E1が2次側直流電圧換算値nE2よりも大きい場合は、第1コンバータにおけるパルスの点弧角αをα=cos-1(nE2/E1)とし、2次側直流電圧換算値nE2が1次側直流電圧E1よりも大きい場合は、第2コンバータにおけるパルスの点弧角αをα=cos-1(E1/nE2)とすることを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータの制御装置。
【請求項3】
直流電源と変圧器の1次巻線との間に接続され、第1,第3スイッチング素子が直列接続された第1のスイッチングアームと、第2,第4スイッチング素子が直列接続された第2のスイッチングアームと、が並列接続された単相フルブリッジ回路を有する第1コンバータと、
前記変圧器の二次巻線に接続され、第5,第7スイッチング素子が直列接続された第3のスイッチングアームと、第6,第8スイッチング素子が直列接続された第4のスイッチングアームと、が並列接続された単相フルブリッジ回路を有する第2コンバータと、
を備えた双方向絶縁型DC−DCコンバータの制御装置において、
1次側直流電圧E1が、2次側直流電圧E2に変圧器巻数比nを乗算して2次側直流電圧E2を1次側に換算した2次側直流電圧換算値nE2よりも大きい場合は、第1コンバータにおける第1スイッチング素子と第2スイッチング素子との組み合わせ、または第3スイッチング素子と第4スイッチング素子との組み合わせを同時にオンして零電圧となる期間を設け、コンバータ出力電圧のパルス幅を狭くし、
2次側直流電圧換算値nE2が、1次側直流電圧E1よりも大きい場合は、第2コンバータにおける第5スイッチング素子と第6スイッチング素子との組み合わせ、または第7スイッチング素子と第8スイッチング素子の組み合わせを同時にオンして零電圧となる期間を設け、コンバータ出力電圧のパルス幅を狭くするパルス幅変調器と、
予め、1次側直流電圧と2次側直流電圧換算値との電圧差に対して外乱を考慮したパルス幅を格納し、前記電圧差に応じて最適なパルス幅をパルス幅指令値として、パルス幅変調器に出力するテーブルと、
を備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC−DCコンバータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 双方向絶縁型DC−DCコンバータの制御装置に係り、特に、コンバータの入力側(1次側)と出力側(2次側)との電圧差が大きい時でも、零電圧スイッチングが可能な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁共振型DC‐DCコンバータの技術として非特許文献1,特許文献1〜3が従来から知られている。
【0003】
図1に示す双方向絶縁型DC‐DCコンバータでは、各スイッチング素子が零電圧スイッチング(zero−voltage switching:以下、ZVSと称する)を行うことで高い効率を実現している。しかし、特定の条件ではZVSが成立せず、損失が増加してしまう問題がある。非特許文献1ではこの特定の条件を下記の(1)式で表している。
【0004】
【数1】
【0005】
上記(1)式において、E1は1次側の直流電圧、E2は2次側の直流電圧(1次側に換算した値)、δは1次側と2次側の電圧位相差である。この(1)式では以下のことを示している。
・1次側直流電圧E1と2次側直流電圧E2の電圧差が大きいほどZVSが成立しにくい。
・電圧位相差δが小さいほど(軽負荷で伝送電力が小さいほど)ZVSが成立しにくい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】井上重徳,赤木泰文,「双方向絶縁型DC/DCコンバータの動作電圧と損失解析」,電学論D,127巻2号,2007年,pp189−197.
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−101655号公報
【特許文献2】特開2002−238257号公報
【特許文献3】特開2011−166949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1にも記載されているように、ZVSには成立しにくい条件があり、特許文献1〜3はその改善策を開示している。
【0009】
特許文献1や特許文献2では、前記改善策としてデッドタイムを可変にする方法が採用されている。また、特許文献3では一部の電力を1次側に回生することにより常にある程度の大きさの電力伝送を行い、軽負荷動作を抑制している。
【0010】
しかし、これらの方法はいずれも軽負荷時においてZVSを成立させる方法である。そのため、これらの方法を適用しても1次側直流電圧と2次側直流電圧との電圧差が大きい場合はZVSが成立しなくなり、損失が増加してしまうという問題がある。
【0011】
以上示したようなことから、1次側直流電圧E1と2次側直流電圧E2との電圧差が大きい場合や、軽負荷時にもZVSを成立させることを可能とし、高効率な双方向絶縁型DC−DCコンバータを提供することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、直流電源と変圧器の1次巻線との間に接続され、第1,第3スイッチング素子が直列接続された第1のスイッチングアームと、第2,第4スイッチング素子が直列接続された第2のスイッチングアームと、が並列接続された単相フルブリッジ回路を有する第1コンバータと、前記変圧器の二次巻線に接続され、第5,第7スイッチング素子が直列接続された第3のスイッチングアームと、第6,第8スイッチング素子が直列接続された第4のスイッチングアームと、が並列接続された単相フルブリッジ回路を有する第2コンバータと、を備えた双方向絶縁型DC−DCコンバータの制御装置において、1次側直流電圧E1が、2次側直流電圧E2に変圧器巻数比nを乗算して2次側直流電圧E2を1次側に換算した2次側直流電圧換算値nE2よりも大きい場合は、第1コンバータにおける第1スイッチング素子と第2スイッチング素子との組み合わせ、または第3スイッチング素子と第4スイッチング素子との組み合わせを同時にオンして零電圧となる期間を設け、コンバータ出力電圧のパルス幅を狭くし、2次側直流電圧換算値nE2が、1次側直流電圧E1よりも大きい場合は、第2コンバータにおける第5スイッチング素子と第6スイッチング素子との組み合わせ、または第7スイッチング素子と第8スイッチング素子の組み合わせを同時にオンして零電圧となる期間を設け、コンバータ出力電圧のパルス幅を狭くするパルス幅変調器を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、前記パルス幅変調器は、1次側直流電圧E1が2次側直流電圧換算値nE2よりも大きい場合は、第1コンバータにおけるパルス幅を、第2コンバータにおけるパルス幅のnE2/E1倍とし、2次側直流電圧換算値nE2が1次側直流電圧E1よりも大きい場合は、第2コンバータにおけるパルス幅を、第1コンバータにおけるパルス幅のE1/nE2倍とすることを特徴とする。
【0014】
さらに他の態様として、前記パルス幅変調器は、1次側直流電圧E1が2次側直流電圧換算値nE2よりも大きい場合は、第1コンバータにおけるパルスの点弧角αをα=cos
-1(nE2/E1)とし、2次側直流電圧換算値nE2が1次側直流電圧E1よりも大きい場合は、第2コンバータにおけるパルスの点弧角αをα=cos
-1(E1/nE2)とすることを特徴とする。
【0015】
また、他の態様として、予め、1次側直流電圧と2次側直流電圧換算値との電圧差に対して外乱を考慮したパルス幅を格納し、前記電圧差に応じて最適なパルス幅をパルス幅指令値として、パルス幅変調器に出力するテーブルを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、双方向絶縁型DC−DCコンバータにおいて、1次側直流電圧E1と2次側直流電圧E2との電圧差が大きい場合や軽負荷時にも、ZVSを成立させることを可能とし、損失を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態1における双方向絶縁型DC−DCコンバータの主回路を示す構成図である。
【
図2】実施形態1における双方向絶縁型DC−DCコンバータの制御装置を示すブロック図である。
【
図3】通常のパルス幅最大動作時のコンバータ出力電圧の波形を示すグラフである。
【
図4】2次側のパルス幅減少時のコンバータ出力電圧の波形を示すグラフである。
【
図5】実施形態2における双方向絶縁型DC−DCコンバータの制御装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態1,2における双方向絶縁型DC−DCコンバータの制御装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
[実施形態1]
図1は、双方向絶縁型DC−DCコンバータの主回路を示す回路構成図である。
図1に示すように、双方向絶縁型DC−DCコンバータの主回路は、第1,第2コンバータ20a,20bを変圧器21を介して結合し、変圧器21を中心に左右対称になっている。また、双方向絶縁型DC−DCコンバータは、1次側に直流電源22,2次側にコンデンサ23を備え、この直流電源22の直流電圧E1とコンデンサ23の直流電圧E2を電圧検出器2a,2bによりそれぞれ検出している。
【0020】
第1コンバータ20aは、直列接続されたスイッチング素子T1,T3から成る第1のスイッチングアームと、直列接続されたスイッチング素子T2,T4から成る第2のスイッチングアームと、が並列接続された単相フルブリッジ回路で構成されている。スイッチング素子T1〜T4には、それぞれフリーホイールダイオードD1〜D4が逆並列に接続され、スイッチング損失低減とサージ電圧抑制を目的とするスナバコンデンサC1〜C4が並列に接続されている。第1コンバータ20aの交流端子間には変圧器21が接続されている。
【0021】
第2コンバータ20bは、直列接続されたスイッチング素子T5,T7から成る第3のスイッチングアームと、直列接続されたスイッチング素子T6,T8から成る第4のスイッチングアームと、が並列接続された単相フルブリッジ回路で構成されている。スイッチング素子T5〜T8には、それぞれフリーホイールダイオードD5〜D8が逆並列に接続され、スイッチング損失低減とサージ電圧抑制を目的とするスナバコンデンサC5〜C8が並列に接続されている。第2コンバータ20bの交流端子間には変圧器21が接続されており、直流端子間にはコンデンサ23が接続されている。
【0022】
なお、変圧器21における1次巻線と2次巻線の巻数比は1:nとし、第1コンバータの出力電圧をV1,第2コンバータの出力電圧をV2とする。この双方向絶縁型DC−DCコンバータは、入出力間の電気的絶縁を確保しつつ、双方向に電力を伝送するものである。
【0023】
次に、
図2に基づいて本実施形態1における双方向絶縁型DC−DCコンバータの制御装置1Aを説明する。
【0024】
まず、ゲイン3により、2次側直流電圧E2に変圧器巻数比nを乗算し、2次側直流電圧E2を1次側に換算した2次側直流電圧換算値nE2を出力する。次に、減算器4において、1次側直流電圧E1からゲイン3の出力である2次側直流電圧換算値nE2を減算し、E1−nE2を演算する。
【0025】
このE1−nE2と零を比較器5で比較し、E1−nE2が零よりも大きければ「H」レベルの信号を出力し、E1−nE2が零以下であれば「L」レベルの信号を出力する。すなわち、比較器5はE1>nE2であれば「H」レベルの信号を出力し、E1≦nE2であれば「L」レベルの信号を出力する。また、除算器6aは1次側直流電圧E1,2次側直流電圧換算値nE2からnE2/E1を演算し、除算器6bは1次側直流電圧E1,1次側換算値nE2からE1/nE2を演算する。
【0026】
スイッチSW1は、除算器6aの出力である「nE2/E1」と「1」を入力し、比較器5の出力が「H」レベルの信号であれば「nE2/E1」を出力し、「L」レベルの信号であれば「1」を出力する。このスイッチSW1の出力は1次側パルス幅指令値となる。
【0027】
他方、スイッチSW2は、「1」と除算器6bの出力である「E1/nE2」を入力し、比較器5の出力が「H」レベルであれば「1」を出力し、「L」レベルであれば「E1/nE2」を出力する。このスイッチSW2の出力は、2次側パルス幅指令値となる。
【0028】
ゲイン7は位相指令値δ
*に1/2を乗算し、1次側位相指令値であるδ
*/2を演算する。この1次側位相指令値δ
*/2はゲイン8において−1を乗算することにより符号が反転され、2次側位相指令値として出力される。ここでは、位相指令値δ
*は外部から入力されるものとする。位相指令値δ
*は 例えば1次側から2次側への伝送電力指令値にゲインをかけたものとしてもよいし、実際の伝送電力検出値と伝送電力指令値との偏差をアンプに入力した結果としてもよい。さらに、伝送電力指令値は2次側直流電圧E2の検出値と指令値の偏差をアンプに入力した結果とし、2次側直流電圧E2を指令値通りに調整できるよう動作させてもよい。
【0029】
パルス幅変調器9aは、1次側パルス幅指令値であるスイッチSW1の出力と、1次側位相指令値であるδ
*/2を入力し、1次側パルス幅指令値と1次側位相指令値δ
*/2に応じた矩形波を得る。他方、パルス幅変調器9bは、2次側パルス幅指令値であるスイッチSW2の出力と、2次側位相指令値である−δ
*/2を入力し、2次側パルス幅指令値と2次側位相指令値−δ
*/2に応じた矩形波を得る。
【0030】
デッドタイム付加器10a,10bは、パルス幅変調器9a,9bの出力にデッドタイムを付加して1次側ゲート信号,2次側ゲート信号を生成する。この1次側ゲート信号,2次側ゲート信号により
図1に示すスイッチング素子T1〜T4,T5〜T8をそれぞれ駆動する。
【0031】
本実施形態1における双方向絶縁側DC−DCコンバータの制御装置1Aは、1次側直流電圧E1と2次側直流電圧E2のうち高い方の電圧のパルス幅を狭くすることにより、1次側直流電圧E1と2次側直流電圧E2の差が小さいと見せかけ、ZVSを成立させる点に特徴がある。
【0032】
ここでは、例としてE1<E2である場合を考える。また、簡単化のため巻数比n=1と仮定する。
図3は第1,第2コンバータ20a,20bともに通常のパルス幅最大で動作時のコンバータ出力電圧の波形を示すグラフである。第1コンバータ20aの出力電圧V1の振幅はE1,第2コンバータ20bの出力電圧V2の振幅はE2となっている。非特許文献1によると、この状態では前記(1)式より位相差δを極めて大きくしないとZVSとならない。そのため、大きな電力伝送を行わない限り効率が低下してしまっていた。
【0033】
そこで、本実施形態1では第2コンバータ20bにおけるスイッチング素子T5とT6の組み合わせ、または、スイッチング素子T7とT8の組み合わせを同時にONし、零電圧を出力する期間を設けて第2コンバータ20bの出力電圧V2のパルス幅を狭くする。この状態を
図4に示す。この時、
図4の斜線に示す箇所の面積が等しくなるように 第2コンバータにおける出力電圧V2のパルス幅を調整することで、それぞれの出力電圧V1と出力電圧V2のバランスをとることができる。これにより、電圧位相差δが小さくてもZVSが成立するようになり、伝送電力が比較的小さくても高効率を保つことができる。
【0034】
本実施形態1では、E1<nE2であれば第2コンバータ20bのパルス幅を狭くし、E1>nE2ならば第1コンバータ20aのパルス幅を狭くする。パルス幅は
図4の斜線部分の面積が等しくなるように、E1<nE2であれば第2コンバータ20bにおけるパルス幅を第1コンバータ20aにおけるパルス幅の「E1/nE2」倍となるように調整し、nE2<E1であれば第1コンバータ20aにおけるパルス幅を第2コンバータ20bにおけるパルス幅の「nE2/E1」倍となるように調整する。
【0035】
以上示したように、実施形態1における双方向絶縁型DC−DCコンバータの制御装置1Aによれば、1次側と2次側(1次側に換算した値)の直流電圧に差がある場合でも、ZVSを成立させ高効率に電力を伝送させることができる。また、前記(1)式の右辺を零に近づけることができるため、電圧位相差δが小さく伝送電力の小さい軽負荷時でもZVSを成立させることが可能となる。
【0036】
[実施形態2]
図5は、本実施形態2における双方向絶縁型DC−DCコンバータの制御装置1Bを示す構成図である。 本実施形態2は実施形態1に対し以下の点で相違する。
【0037】
実施形態1では除算器6a,6bによりnE2/E1,E1/nE2をそれぞれ演算したが、本実施形態2では除算器6によりnE2/E1のみを演算する。また、実施形態1における減算器4,比較器5,スイッチSW1,SW2の代わりに、除算器6の出力に応じて1次側のパルス幅振幅指令値,2次側のパルス幅指令値を出力するテーブル11a,11bを設ける。
【0038】
本実施形態2は、1次側,2次側のパルス 幅指令値をテーブル11a,11bから読み出す方式である。例えば、
図4において斜線部分の面積ではなく基本波の振幅を等しくする必要があれば、E1<nE2の場合、パルスの点弧角をαとしてα=cos
-1(E1/nE2)とする必要がある。
【0039】
また、デッドタイムやスイッチング素子T1〜T8における電圧降下などの外乱により、最適なパルス幅が変化することも考えられる。そこで、電圧差に対する最適なパルス幅をシミュレーションや実験により求め、その結果をテーブル11a,11bに格納しておき、常に最適なパルス幅で運転できるようにする。これにより幅広い動作条件でZVSを成立させることが可能となる。
【0040】
以上示したように、本実施形態2によれば、実施形態1の作用効果に加え、事前にデッドタイムや電圧降下などの外乱の影響を考慮して最適なパルス幅を求めてテーブル11a,11bに格納しておき、運転時にテーブル11a,11bから読み出して最適なパルス幅で駆動することにより、実施形態1に比べ、さらに幅広い動作条件でZVSを成立させ高効率を維持することが可能となる。
【0041】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0042】
1A,1B…制御装置
9a,9b…パルス幅変調器
11a,11b…テーブル
20a,20b…第1コンバータ,第2コンバータ
21…変圧器
22…直流電源
E1,E2…1次側直流電圧,2次側直流電圧
n…変圧器巻数比
nE2…2次側直流電圧換算値
T1〜T8…スイッチング素子
V1,V2…第1コンバータの出力電圧,第2コンバータの出力電圧
δ…電圧位相差