(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、暖房時における送風機の風量が多いときには、風量が少ないときに比べて車室内の換気が進み、車室内の湿度が低下する。そのため、内気の循環量を増大してもフロントガラスの曇りを防止することが可能になり、エンジンの未暖機時においても内気の循環量を増やすことで暖房性能をさらに高めることが可能になり得る。つまり、特許文献1に記載された車両用空調装置は、暖房性能に関して改善の余地がある。
【0005】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両用空調装置において、フロントガラスの曇りを防止しつつ、暖房性能をさらに高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示する技術は、車両用空調装置に係り、内気導入口を通じて導入される内気の導入量及び外気導入口を通じて導入される外気の導入量を調整可能に構成された調整器と、車両に搭載されたエンジンを熱源として、前記内気導入口又は前記外気導入口から導入された空気を加熱するように構成されたヒータコアと、
前記ヒータコア上流側に配設されかつ、前記ヒータコアを通過する空気量を調整するよう構成されたエアミックスダンパと、前記ヒータコアを通過した空気が吹出口を通じて車室内に吹き出されるよう送風する、風量可変に構成された送風機と、前記外気の温度を検出するように構成された外気温度検出器と、エンジン温度の指標値を検出するように構成されたエンジン温度検出器と、前記外気温度検出器の検出結果及び前記エンジン温度検出器の検出結果に基づき、前記内気の導入量と外気の導入量と
の合計に対する前記内気の導入量の比
率である内
気混入率を設定すると共に、当該内
気混入率となるように前記調整器を制御するよう構成された制御器と、を備える。
【0007】
そして、前記制御器は、前記外気の温度が所定温度よりも低く
て、前記エアミックスダンパが、前記内気導入口及び前記外気導入口から導入された空気の実質的に全量が前記ヒータコアを通過するよう全開とされかつ、前記エンジン温度の指標値が所定温度よりも低いときに、前記エンジンの温度が高いほど前記内
気混入率の最大値を高く設定すると共に、前記送風機の前記風量が多いときには、
前記内気混入率の最大値を超えない範囲で、前記風量が少ないときよりも前記内気の導入量が増えるように前記内
気混入率を設定する。
【0008】
この構成によると、外気の温度が所定温度よりも低いため、ヒータコアによって加熱した空気を車室内に供給する暖房時であって、エンジン温度の指標値が所定温度よりも低いようなエンジンの未暖機時には、エンジンの温度が高いほど、内気導入口を通じた内気の導入量が増えるように内
気混入率を設定する。また、送風機の風量が多いときには、風量が少ないときよりも内気の導入量が増えるように内
気混入率を設定する。ここで、送風機の風量が多いときに、風量が少ないときよりも内気の導入量を増やすことには、例えば送風機の風量が多いときの内気の最大導入量を、送風機の風量がそれよりも少ないときの内気の最大導入量よりも多く設定することが含まれる。また、後述するように車速に応じて内
気混入率を変更する場合においては、同一車速で比較したときに、送風機の風量が多いときの内気の導入量を、送風機の風量がそれよりも少ないときの内気の導入量よりも多く設定することが含まれる。さらに、送風機の風量が多くなるに従って、内気の導入量を増やすようにしてもよい。
【0009】
これにより、エンジンの温度が比較的高くかつ、送風機の風量が多いときには、相対的に温度の高い内気を、比較的多量に循環させることになるから、暖房性能が高まる。また、送風機の風量が多いときには、車室内の換気が進んで湿度が低下することで、内気導入量が多くてもウインドウガラスの曇りが抑制される。従って、前記の構成は、ウインドウガラスの曇りを防止しつつ、暖房性能を高める。
【0010】
この構成は特に、吹出口を通じて車室内に吹き出す空気の一部が、ウインドウガラスに向かって吹き出される場合に効果的である。つまり、エンジンの温度が高く、高温の空気がウインドウガラスに向かって吹き出されるときには、ウインドウガラスの温度が高まる。そのため、内気導入量を増やしても曇りにくくなる。また、送風機の風量が多いときには、より多量の高温空気がウインドウガラスに向かって吹き出される。そのため、ウインドウガラスの温度がさらに高まり、ウインドウガラスは、より一層、曇りにくくなる。従って、車室内に吹き出す空気の一部をウインドウガラスに向かって吹き出す構成において、エンジンの温度が高いほど内気の導入量が増えるように内
気混入率を設定すると共に、送風機の風量が多いときには、風量が少ないときよりも内気の導入量が増えるように内
気混入率を設定することは、ウインドウガラスの曇りを確実に防止しつつ、暖房性能を大幅に向上させる。
【0011】
前記車両用空調装置は、前記車両の車速を検出する車速検出器をさらに備え、前記制御器は、前記車速検出器が検出した前記車速に基づき、前記車速が高いときには、
前記内気混入率の最大値を超えない範囲で、前記車速が低いときよりも前記内気の導入量が減るように前記内
気混入率を設定する、としてもよい。
【0012】
この構成によると、車速が高いときにはウインドウガラスの前面における熱伝達率が高まり、ウインドウガラスの温度が低下して曇りが生じやすくなる。そこで、車速が高いときには、車速が低いときよりも内気の導入量が減るように内
気混入率を設定する。ここで、車速が高いときに、車速が低いときよりも内気の導入量を減らすことには、前述したように、送風機の風量が一定という状態で比較したときに、車速が高くなるに従って、内気の導入量を減らすことが含まれる。また、ウインドウガラスの曇りは、車速が所定車速以上になれば顕著になるという本願発明者らの知見から、所定車速未満のときの内気の導入量に対し、所定車速以上のときの内気の導入量を大幅に減らすようにしてよい。
【0013】
このように車速が高いときには、車速が低いときよりも内気の導入量が減るように内
気混入率を設定することによって、ウインドウガラスの曇りが抑制される。つまり、エンジン温度の指標値及び送風機の風量に加えて、車速をも考慮して、暖房時の内
気混入率を設定することにより、ウインドウガラスの曇りを確実に抑制しつつ、暖房性能のさらなる向上が図られる。
【0014】
前記ヒータコアは、前記エンジンの冷却水を熱源とし、前記エンジン温度検出器は、前記エンジンの冷却水温度を検出し、前記制御器は、前記エンジン温度検出器が検出した冷却水温度に基づいて前記内
気混入率の最大値を設定する、としてもよい。
【0015】
ヒータコアの熱源である冷却水の温度に基づいて、内
気混入率を設定することで、ウインドウガラスの曇り防止と車室内の暖房性能の向上との両立を適切に行い得る。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、前記の車両用空調装置によると、エンジンの温度が高いほど内気の導入量が増えるように内外気混合比を設定すると共に、送風機の風量が多いときには、風量が少ないときよりも内気の導入量が増えるように内外気混合比を設定することで、ウインドウガラスの曇りを抑制しつつ、暖房効率を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、車両用空調装置の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は例示である。
図1は、車両用空調装置1の全体構成を例示する概略図である。この車両用空調装置1は、ユニット状に構成された空調ダクト11を有しており、この空調ダクト11における上流端には、車室内の空気(つまり、内気)が通過する内気導入口111と、車室外の空気(つまり、外気)が通過する外気導入口112と、が形成されている。空調ダクト11内には、内外気可変アクチュエータ121によって駆動されるダンパ12が設けられている。このダンパ12はアクチュエータ121によって駆動されることで、同図に破線の両端矢印で示すように、内気導入口111の開度及び外気導入口112の開度をそれぞれ調整する内外気可変ダンパ12である。この内外気可変ダンパ12によって、この空調装置1では、内気導入口111を閉じて外気導入口112を開け、それによって外気のみを導入する状態と、外気導入口112を閉じて内気導入口111を開け、それによって内気のみを導入する状態と、内気導入口111及び外気導入口112を共に開け、それによって内気及び外気を混合して導入する状態とを切り替え可能に構成されている。また、内外気を混合している状態では、詳細は後述するが、内外気可変ダンパ12により、内気導入口111の開度及び外気導入口112の開度をそれぞれ調整することにより、内気の導入量と外気の導入量との比率である内外気混合比(言い換えると、内気混入率)を任意に設定することが可能である。
【0019】
空調ダクト11内において、内気導入口111及び外気導入口112の下流側には、送風機13が配設されている。送風機13は、内気導入口111及び/又は外気導入口112を通じて空調ダクト11内に、内気及び/又は外気を吸い込むと共に、吸い込んだ空気を、後述の吹出口113、114、115を通じて車室内に吹き出すように駆動する。送風機13は、後述する空調制御装置7により制御されることで、設定された風量となるように駆動される。送風機13の風量は複数段階に設定されており、ここでは、Lo、MLo、MHi、Hiの4段階の風量が設定されており、空調制御装置7は、設定された風量に対応する電圧信号を送風機13に供給するように制御を行う。尚、送風機の風量は、4段階に設定することには限らず、例えば7段階や8段階等、適宜の段数に設定することが可能である。
【0020】
空調ダクト11内における、送風機13よりも下流側には、ダクト11の全体を横切るようにエバポレータ(蒸発器)14が配設されている。エバポレータ14は、
図1において破線で示す冷媒回路2によって構成される冷凍サイクルの一部を構成する。つまり、冷媒回路2は、エバポレータ14から冷媒の流れ方向(同図の破線の矢印参照)の順に、エンジン3によって駆動されかつ、冷媒を圧縮するコンプレッサ(圧縮器)21、圧縮された冷媒を、走行風及びファン24によって冷却するコンデンサ(凝縮器)22、冷却により液化された冷媒を気化するエキスパンションバルブ(膨張弁)23を含んで構成される。エバポレータ14は、エキスパンションバルブ23を通過した後の気化冷媒によって、ダクト11内を通過する空気を冷却する。ここで、コンプレッサ21は、電磁クラッチ211を介してエンジン3に駆動連結されており、電磁クラッチ211の断接は、空調制御装置7からの切り替え信号によって行われる。
【0021】
空調ダクト11内において、エバポレータ14よりも下流側には、エンジン3の冷却水を熱源とするヒータコア15が配設されている。ヒータコア15はダクト11の一部のみを横切るように配設されており、ヒータコア15の上流側には、このヒータコア15を通過する空気量を調整するための、エアミックスダンパ16が配設されている。
【0022】
ヒータコア15は、エンジン3の冷却水が循環する冷却水循環回路4上に介設されており、このヒータコア15は、エンジン冷却水と、ここを通過する空気との間で熱交換を行うことにより、空気を加熱する。冷却水循環回路4は、エンジン3から、ヒータコア15、ラジエータ41、及び、サーモスタットバルブ42を介してエンジン3に戻る主通路と、ヒータコア15から、ラジエータ41をバイパスしてエンジン3に戻るバイパス通路とを含んで構成されている。サーモスタットバルブ42は、エンジン3の冷却水の温度に応じて開閉するよう構成されており、冷却水温度が所定温度よりも低いエンジン3の未暖機時には、サーモスタットバルブ42が閉じることで、エンジン冷却水は、ラジエータ41をバイパスするように、エンジン3とヒータコア15との間で循環する(
図1の実線の矢印参照)一方、冷却水温度が所定温度以上のエンジン3の温間時には、エンジン冷却水は、エンジン3から、ヒータコア15及びラジエータ41を介してエンジン3に戻るように循環する(
図1の一点鎖線の矢印参照)。
【0023】
エアミックスダンパ16は、エアミックスアクチュエータ161によって駆動されることで、ダクト11を通過する空気の実質的に全量がヒータコア15を通過する開度(全開、
図1に示す状態に対応)と、ダクト11を通過する空気の実質的に全量がヒータコア15をバイパスする開度(全閉)との間で、その開度を無段階に調整可能に構成されている(
図1の破線の両端矢印参照)。このエアミックスダンパ16によって、エバポレータ14を通過した後の空気について、ヒータコア15によって加熱される空気の量及びヒータコア15をバイパスする空気の量を調整することにより、車室内に吹き出される空気の温度を調整する。
【0024】
空調ダクト11における下流端には、ダクト11内を通過した調和空気を車室内に吹き出す吹出口が設けられており、この吹出口は、前席に着座した乗員の上半身に調和空気を吹き出すベント吹出口113、前席に着座した乗員の足下に調和空気を吹き出すフット吹出口114、及び、フロントガラスに向かって調和空気を吹き出すデフロスタ吹出口115の3種類の吹出口を少なくとも含む。各吹出口113、114、115には、吹出口アクチュエータ174によって開閉する吹出口ダンパ171、172、173が設けられており、後述するように、空調装置1についての自動又は手動による設定内容に応じて、吹出口アクチュエータ174が各吹出口ダンパ171、172、173を駆動して、所定の吹出口を開けることで、当該吹出口から車室内に調和空気が吹き出すことになる。
【0025】
空調装置1を制御するための空調制御装置7には、乗員が操作を行う各種スイッチを含む操作スイッチ5からの操作信号、内気導入口111の付近に配設されかつ、内気の温度を検出する内気温度センサ61の検出信号、外気導入口112の付近に配設されかつ、外気の温度を検出する外気温度センサ62の検出信号、空調ダクト11内におけるエバポレータ14の下流側に配置されかつ、エバポレータ14を通過後の空気の温度を検出する蒸発器後方温度センサ63の検出信号、及び、エンジン3の冷却水循環回路4の途中に設けられ、エンジン3から排出された冷却水の温度を検出する水温センサ64の検出信号、及び、車速を検出する車速センサ65の検出信号がそれぞれ入力される。
【0026】
空調制御装置7は、入力された各信号に基づいて、内外気可変ダンパ12により内気導入量(つまり、内気循環量)及び外気導入量を調整するための、内外気可変アクチュエータ121の駆動信号、送風機13の風量を設定するための、送風機13の駆動信号(電圧信号)、エアミックスダンパ16によりヒータコア15の通過流量を設定するための、エアミックスアクチュエータ161の駆動信号、コンプレッサ21のオン・オフを切り替えるための、電磁クラッチ211の切り替え信号、及び、各吹出口ダンパ171、172、173により調和空気の吹出口113、114、115を設定するための、吹出口アクチュエータ174の駆動信号をそれぞれ出力し、これにより空調装置1を制御する。
【0027】
操作スイッチ5には、図示は省略するが、空調装置1のオン及びオフを切り替える、言い換えると送風機13をオフにするためのOFFスイッチと、送風機13の風量を設定する風量調整ダイヤルと、吹出口113、114、115から吹き出す調和空気の温度を設定する温度設定ダイヤルと、調和空気を吹き出す吹出口を切り替える吹出口切り替えスイッチと、冷房・除湿機能の作動及び停止、言い換えるとコンプレッサ21の作動及び停止を切り替えるエアコンスイッチと、内気循環と外気導入とを切り替える内外気切り替えスイッチと、フロントガラスの曇り取りを行うための曇り取りスイッチと、空調装置1をオートモードで運転するためのオートスイッチと、が少なくとも含まれる。
【0028】
操作スイッチ5のオートスイッチを選択操作したときには、空調装置1はオートモードで動作をする。具体的に空調制御装置7は、温度設定ダイヤルによって設定された温度に応じて、調和空気の温度調整、調和空気の風量調整、調和空気を吹き出す吹出口の切り替え、内気循環及び外気導入の切り替え、並びに、コンプレッサ21の作動及び停止、を自動制御する。
【0029】
これに対し、空調装置1がマニュアルモードで動作をするときには、乗員が、風量調整ダイヤル、温度設定ダイヤル、吹出口切り替えスイッチ、エアコンスイッチ、内外気切り替えスイッチ、及び、曇り取りスイッチを操作した内容に応じて、空調制御装置7は空調装置1の制御を行う。
【0030】
次に、この空調装置1において特徴的な暖房時の制御について説明する。この制御は、エンジン3の未暖機時に、内気導入量と外気導入量との比率である内外気混合比(又は内気混入率)を、エンジン3の冷却水温度、送風機13の風量、及び車速に応じて調整する内外気制御を行うことにより、ウインドウガラスの曇りを防止しつつも、高い暖房性能を確保する制御である。
【0031】
図2は、空調制御装置7が実行する内外気制御のフローチャートである。先ずスタート後のステップS21では、操作スイッチ5の操作によって空調装置1がONされたか否かを判定する。空調装置1がONされていないときにはこのステップ21を繰り返す一方、空調装置1がONされたときには、ステップS22に移行する。
【0032】
ステップS22では、内外気制御の開始条件が成立したか否かを判定する。ここでの開始条件には、(1)マニュアルモードでの運転中においてデフロスタ吹出口が選択されていないこと、(2)マニュアルモードでの運転中において外気導入が選択されていないこと、(3)マニュアルモードでの運転中において内気循環が選択されていないこと、(4)マニュアルモードでの運転中においてエアコンスイッチがオンされていないこと、(5)曇り取りスイッチが選択されていないこと、(6)外気温が10℃以上でないこと、が挙げられる。従って、外気温が10℃未満でかつ、オートモードでの運転時、又は、マニュアルモードでの運転において、フット吹出口及びデフロスタ吹出口を選択するデフヒート運転時、若しくは、フット吹出口を選択するヒート運転時のときには、ステップS22の判定がYESとなって、ステップS23に移行する。ここで、この空調装置1においては、フット吹出口を選択するヒート運転時にも、車室内に吹き出される調和空気の一部が、デフロスタ吹出口を通じて吹き出される(例えばフット吹出口が9、デフロスタ吹出口が1の割合、尚、デフヒート運転時は、例えばフット吹出口が7、デフロスタ吹出口が3の割合)。従って、内外気制御は、コンプレッサ21が非作動で、空調ダクト11内を流れる空気の実質的に全量がヒータコア15を通過する暖房運転時でかつ、車室内に吹き出される調和空気の一部がデフロスタ吹出口115を通じて吹き出されるときに、内外気制御が実行される。
【0033】
一方、ステップS22の判定がNOのときには、ステップS26に移行をして、内外気制御を行わずに通常の制御を行う。
【0034】
ステップS23では、水温センサ64によって検出されたエンジン3の冷却水温度に基づいて内気混入率を設定する。具体的には、エンジン水温と内気混入率の最大値との関係が、
図3に示すように予め設定されており、この関係に従って内気混入率の最大値を設定する。尚、内気混入率は内気導入量と外気導入量との比率に係り、内気混入率0%は、内気導入量がゼロであり、逆に、内気混入率100%は、外気導入量がゼロであり、内気混入率50%は、内気導入量と外気導入量との比率が1:1である。
図3に例示するエンジン水温と内気混入率の最大値との関係においては、エンジンの始動後、水温が40℃以上になるまでは、内気混入率が0%に設定される。そうして、水温が40℃以上80℃未満では、水温が高くなるに従って、内気混入率の最大値が20%(40℃≦水温<45℃)、50%(45℃≦水温<50℃)、100%(50℃≦水温<80℃)と高くなるように設定される。
【0035】
ここで、例えばエンジン3が比較的長時間停止していた後の始動時は、エンジン3の冷却水温度は外気温とほぼ等しい。ステップS22の判定により、ここでは外気温が10℃未満であるから、エンジン3の冷却水温度もまた、エンジン3の始動時には、およそ10℃未満となっている。エンジン3の冷却水温度が40℃未満のときには、ヒータコア15において空気を十分に加熱することができず、比較的温度の低い空気がウインドウガラスに向かって吹き出される。このため、ウインドウガラスの温度が低く保たれたままであり、ウインドウガラスが曇りやすい。そのため、冷却水温度が40℃未満のときには、内気の循環を行わずに、内気よりも湿度の低い外気のみを導入する。これによって、ウインドウガラスの曇りが効果的に抑制される。
【0036】
これに対し、冷却水温度が40℃以上に高まれば、ヒータコア15において空気を加熱して、比較的温度の高い調和空気をウインドウガラスに向かって吹き出すことが可能になる。このため、ウインドウガラスの温度が高くなり、ウインドウガラスが曇り難くなる。そこで、冷却水温度が40℃以上に高まれば、温度が相対的に高い内気の導入量を増やす。このことにより、ウインドウガラスの曇りを防止しつつ、車室内の暖房性能を高めることが可能になる。また、エンジン水温が高くなるに従って、より高温の調和空気がウインドウガラスに向かって吹き出されて、ウインドウガラスの温度がさらに高まり、ウインドウガラスの曇りをさらに抑制することが可能になる。そこで、水温が高くなるに従って、内気の導入量を増やすようにする。こうすることで、ウインドウガラスの曇りを防止しつつ、車室内の暖房性能がさらに高まる。
【0037】
そうして、エンジン3の冷却水温度が80℃以上になって、エンジン3の暖機が完了したときには、低温の外気を多量に導入してもヒータコア15において十分に加熱することが可能になり、高温の調和空気を車室内に供給することが可能になる。そこで、冷却水温度が80℃以上になれば、
図3に示すように内気混入率を0%に設定する。これによって、外気に比べて湿度が高い内気の循環を止め、外気のみを導入する。こうすることで、暖房性能を確保しつつ、ウインドウガラスの曇りを、より確実に回避することが可能になる。
【0038】
尚、
図3においては、エンジン3の冷却水温度が次第に低下した場合として、冷却水温度が75℃よりも低下したときには、内気混入率の最大値を0%から100%に復帰させ、冷却水温度が45℃よりも低下したときには、内気混入率の最大値を100%から50%に低下させ、冷却水温度が40℃よりも低下したときには、内気混入率の最大値を50%から20%に低下させ、冷却水温度が35℃よりも低下したときには、内気混入率の最大値を0%にするように設定されている。このように冷却水温度が次第に低下することは、例えば極冷間時等において、エンジン3が始動して冷却水温度が次第に高まった後に、アイドル運転が続くような場合が考えられる。
【0039】
図2のフローに戻って、ステップS23で内気混入率の最大値を決定した後の、ステップS24では、送風機13の風量及び車速によって内気混入率を設定する。
図4に示すように、送風機13の風量に応じて、車速と内気混入率との関係に係る「モード」を設定する。具体的には、4段階に設定されている送風機13の風量について、風量が最も少ないLoのときには内気混入率を0%とする。従ってモードは設定されない。一方、風量が2番目に少ないMLoのときには、第3モードとし、風量が3番目に少ない(言い換えると風量が2番目に多い)MHiのときには、第2モードとし、風量が最も多いHiのときには、第1モードとする。
【0040】
図5は、第1〜第3の各モードにおける車速と内気混入率との関係を示している。
図5(a)は、送風機13の風量が最も多いHiのときの第1モードを示している。第1モードでは、車速が50km/h未満のときには、内気混入率を60%に設定し、車速が高まるに従って、内気混入率を低下させる。具体的には、車速が50km/h以上に高まれば、内気混入率を20%に設定し、車速が60km/h以上に高まれば、内気混入率を10%に設定し、車速が70km/h以上に高まれば、内気混入率を0%に設定する。
【0041】
ここで、ステップS24で設定される内気混入率は、ステップS23において設定した内気混入率の最大値を超えない範囲で設定されるものである。従って、内気混入率の最大値が100%に設定されているときには、
図5(a)において設定される内気混入率の値がそのまま、内気混入率に設定される。一方、内気混入率の最大が50%に設定されているときには、
図5(a)において内気混入率が仮に60%であっても、ステップS24において設定される内気混入率は、50%に制限される。従って、
図2に示すフローにおいては、ステップS23で設定される内気混入率(の最大値)と、ステップS24で設定される内気混入率との内で、値の小さい方の内気混入率が採用されることになる。その結果、
図4、5の例では、内気混入率は最大でも60%である。
【0042】
車速が高いときには、フロントガラスの前面において熱伝達率が高くなり、フロントガラスの温度低下を招く。そのため、フロントガラスが曇りやすくなることから、車速が高くなれば、外気に比べて湿度が高い内気の導入量を下げる。特に車速が50km/h以上になると、フロントガラスが曇り易くなることから、内気の導入量を大幅に下げることが好ましい。こうすることで、フロントガラスの曇りの防止に有利になる。尚、
図5(a)に示すように、車速に対する内気混入率の設定にはヒステリシスが設けられており、具体的に車速が65km/h以下に低下すれば、内気導入率が0%から10%に変更され、車速が55km/h以下に低下すれば、内気導入率が10%から20%に変更され、車速が45km/h以下に低下すれば、内気導入率が20%から60%に変更される。
【0043】
図5(a)に示す第1モードと同様に、送風機13の風量が2番目に多いMHiのときの第2モードでは、
図5(b)に示すように、車速が50km/h未満のときには、内気混入率を50%に設定し、車速が50km/h以上に高まれば、内気混入率を20%に設定し、車速が60km/h以上に高まれば、内気混入率を10%に設定し、車速が70km/h以上に高まれば、内気混入率を0%に設定する。また、車速が65km/h以下に低下すれば、内気導入率が10%に設定され、車速が55km/h以下に低下すれば、内気導入率が20%に設定され、車速が45km/h以下に低下すれば、内気導入率が50%に設定される。
【0044】
さらに、
図5(c)に示すように、送風機13の風量が3番目に多いMLoのときの第3モードでは、車速が50km/h未満のときには、内気混入率を20%に設定し、車速が50km/h以上に高まれば、内気混入率を10%に設定し、車速が60km/h以上に高まれば、内気混入率を0%に設定する。また、車速が55km/h以下に低下すれば、内気導入率が10%に設定され、車速が45km/h以下に低下すれば、内気導入率が20%に設定される。
【0045】
ここで、
図5(a)〜(c)において、同一車速(例えば45km/h)で比較した場合、送風機13の風量が最も多い第1モードが、内気混入率が最も高く(60%)、次いで風量が多い第2モードが、内気混入率が2番目に高く(50%)、風量が少なくなる第3モード、第4モードの順に、内気混入率は低くなる。つまり、送風機13の風量が多いときには車室内の換気が進んで湿度が低下することにより、フロントガラスの曇り防止に有利になる。また、送風機13の風量が多いときには、デフロスタ吹出口115から吹き出される比較的高温の調和空気の吹出量が増えることで、フロントガラスの温度上昇に有利になる。その結果、フロントガラスが曇りにくくなるから、送風機13の風量が多いほど、内気導入率を高める。こうすることで、フロントガラスの曇りを防止しつつ、暖房性能の向上に有利になる。
【0046】
図2のフローに戻り、ステップS23及びS24を通じて、エンジン水温、送風機13の風量及び車速に応じて内気導入率が設定されれば、ステップS25において、設定された内気導入率となるように、空調制御装置7は、内外気可変アクチュエータ121に駆動信号を出力する。このことで、内外気可変ダンパ12の開度が調整されて、設定された内気導入率となるよう、内気導入量及び外気導入量がそれぞれ調整される。フローはその後、ステップS21に戻る。
【0047】
このように、エンジン3の未暖機時には、エンジン3の冷却水温度に応じて、冷却水温度が高くなるほど、内気導入率が高まるようにすると共に、送風機13の風量に応じて風量が多いときには、風量が少ないときよりも内気導入率を高め、さらに、車速に応じて車速が高いときには、車速が低いときよりも内気導入率を下げる。こうして、エンジン3の冷却水温度、送風機13の風量及び車速に応じて内気導入率を設定することにより、フロントガラスの曇りを確実に防止しながら、内気導入量をできるだけ増やして、エンジン3の未暖機における暖房性能を高めることが実現する。
【0048】
図6は、
図2とは異なる内外気制御に係るフローチャートを示している。この
図6のフローでは、
図2のフローに示す制御に加えて、乗員数に応じて内気導入率を変更するようにしている。つまり、乗員の呼気等の影響により、乗員数が多いほど車室内の湿度が高まってフロントガラスが曇りやすくなることから、乗員数に応じて内気導入率を変更することで、フロントガラスの曇りを確実に防止するようにする。
【0049】
具体的に、
図6のフローにおいて、スタート後のステップS61では、乗員数を検知する。乗員数は、種々の手段により検知が可能である。一例として、シートベルトの装着を検知するシートベルトセンサの検知結果に基づいて乗員数を検知してもよい。また、車室内に取り付けた赤外線センサにより車室内に居る乗員を直接検知することで、乗員数を検知してもよい。さらに、座席のシートクッションに設けた感圧センサにより、車室内に着座している乗員を検知することで乗員数を検知してもよい。また、乗員の乗降を検知するドア乗降センサにより、乗車した乗員数を検知してもよい。尚、乗員検知手段は、これらには限定されない。
【0050】
図6のフローにおいてステップS62〜S65、S68は、
図2のフローにおけるステップS21〜S24、S26と同じであるため、その説明は省略する。
【0051】
ステップS64及びステップS65を通じて、内気導入率を設定した後のステップS66では、ステップS61で検知した乗員数に従って内気導入率を補正する。具体的には、例えば乗員数が1名であれば、車室内の湿度が低いとして、ステップS65で設定した内気導入率に20%を加えることで、内気導入率をさらに高める。例えばステップS65で設定した内気導入率が60%であったときには、20%を加えることによって、内気導入率は80%となる。また、乗員数が2名であれば、ステップS65で設定した内気導入率に10%を加えることで、内気導入率を若干高める。乗員数が3名以上であれば、車室内の湿度が比較的高くなるとして、ステップS65で設定した内気導入率を補正せずに、そのままの値にする。
【0052】
そうして、ステップS67において、空調制御装置7は、内外気可変アクチュエータ121に対し駆動信号を出力し、ステップS66で補正した内気導入率となるように、内外気可変ダンパ12の開度を調整する。
【0053】
このように乗員数に応じて、内気導入率を変更することによって、フロントガラスの曇りを、より確実に防止しつつも、車室内の暖房性能を高めることが実現する。
【0054】
尚、
図3〜5に示す内気導入率等の値は例示であり、内気導入率の値、エンジン3の冷却水温度の値、風量、及び車速の値等は、図に示す値に限定されるものではない。
【0055】
また、前記の実施形態では、エンジン3の冷却水温度、送風機13の風量及び車速の3つのパラメータに基づいて、内外気制御における内気導入率を設定しているが、エンジン3の冷却水温度及び送風機13の風量に基づいて、内気導入率を設定するようにしてもよい。
【0056】
さらに、前記の実施形態では、内外気制御時には、デフロスタ吹出口115から調和空気が吹き出されるが、デフロスタ吹出口115から調和空気が吹き出されない場合においても、前述した内外気制御を適用してもよい。