【実施例】
【0051】
(
参考例1)
1.第1のAlN結晶の成長
図1(A)を参照して、直径15mm、厚さ350μmでC原子面である主面1cが、CMP(化学機械的研磨)により、AFM(原子間力顕微鏡)により測定されるRMS(二乗平均平方根)粗さが1.0nm以下まで鏡面化された4H−SiC下地基板1sを準備した。この4H−SiC下地基板1sの主面1c上に、第1のAlN結晶10を成長させた。
【0052】
図4を参照して、第1のAlN結晶10の成長は、結晶成長炉100内に加熱体120を介在させて配置されたるつぼ110内の下部にAlN原料5を配置し、るつぼ110内の上部にるつぼ蓋110cにカーボン系接着剤で貼り合わせたSiC下地基板1sを配置して、SiC下地基板1sの主面1c上に結晶成長させるフェイス−ダウン方式の昇華法により行なった。ここで、結晶成長炉100内において、るつぼ110の内部は、るつぼ110の通気口110eならびに加熱体120の上部通気口120aおよび下部通気口120bを経由して、るつぼ11の外部と通気していた。
【0053】
第1のAlN結晶10の成長は、るつぼの下部温度を2000℃、るつぼの上部温度を1800℃とし、結晶成長炉100内の全圧が50kPaとなるように窒素ガスを200sccm(1sccmは、標準状態の気体を1分間に1cm
3流す流量をいう。以下同じ。)流して、10時間行ない、その後るつぼの上部温度を1850℃としてさらに90時間行なった。
【0054】
これにより、
図1(A)を参照して、4H−SiC下地基板1s上に厚さ5mmの第1のAlN結晶10を成長させた。第1のAlN結晶10の結晶成長主面10gは、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察したところ、多結晶領域10pが形成されていた。
【0055】
2.第1のAlN結晶の結晶成長主面の平坦化
得られた第1のAlN結晶10の結晶成長主面10gは、凹凸を有する面であり、その高低差は、マイクロメータにより測定したところ、50μm〜100μm程度であった。そのため、上記のSiC下地基板1s上に形成された第1のAlN結晶10の結晶成長主面10g側を研削機により200μmの深さまで削り込み、結晶成長主面10gをその高低差が5μmまで平坦化した。さらに、結晶成長主面10gを、ダイヤモンドスラリーを用いた研磨により、AFMにより測定されるRMS粗さが3.0nm以下まで鏡面化した。
【0056】
3.SiC下地基板の除去による第1のAlN結晶基板の形成
図1(B)を参照して、結晶成長主面10gが平坦化および鏡面化された第1のAlN結晶10が形成されている厚さ350μmの4H−SiC下地基板1sを、研削機により4H−SiC下地基板1s側から360μmの深さまで削り込むことにより、完全に除去して、第1のAlN結晶基板10sを得た。こうして得られた第1のAlN結晶基板10sに現れた第1の主面10aを、ダイヤモンドスラリーを用いた研磨さらにCMPにより、AFMにより測定されるRMS粗さが1.0nm以下まで鏡面化した。ここで、研磨は、第1のAlN結晶10の4H−SiS下地基板1sとの界面10iから第1のAlN結晶10側に50μmの深さまで行なった。
【0057】
得られた第1のAlN結晶基板10sの第1の主面10aは、光学顕微鏡により観察したところクラックの発生はなく、X線回折測定による評価を行なったところ単結晶領域10mが形成されていた。
【0058】
(
参考例2)
直径2インチ(50.8mm)、厚さ350μmでC原子面である主面1cが、CMPにより、AFM(原子間力顕微鏡)により測定されるRMS(二乗平均平方根)粗さが1.0nm以下まで鏡面化された4H−SiC下地基板1sを用いたこと以外は、
参考例1と同様にして、第1のAlN結晶基板を得た。こうして得られた第1のAlN結晶基板10sに現れた第1の主面10aを、ダイヤモンドスラリーを用いた研磨さらにCMPにより、AFMにより測定されるRMS粗さが0.9nm以下まで鏡面化した。
【0059】
得られた第1のAlN結晶基板10sの第1の主面10aは、光学顕微鏡により観察したところクラックの発生はなく、X線回折測定による評価を行なったところ単結晶領域10mが形成されていた。
【0060】
(
参考例3)
1.第1のAlN結晶の成長
参考例1と同じSiC下地基板を準備した。
参考例1と同じフェイス−ダウン方式の昇華法により、第1のAlN結晶10を成長させた。第1のAlN結晶10の成長は、るつぼの下部温度を2000℃、るつぼの上部温度を1800℃とし、結晶成長炉100内の全圧が50kPaとなるように窒素ガスを200sccm流して、20時間行ない、その後るつぼの上部温度を1810℃としてさらに80時間行なった。
【0061】
これにより、4H−SiC下地基板1s上に厚さ4.7mmの第1のAlN結晶10を成長させた。
図6を参照して、第1のAlN結晶10の結晶成長主面10gは、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察したところ、1つ以上の単結晶領域10mとそれを取り囲む多結晶領域10pが形成されていた。結晶成長主面10gにおける単結晶領域10mの総面積と多結晶領域10pの総面積との比は、10:90であった。
【0062】
2.第1のAlN結晶の結晶成長主面の平坦化
得られた第1のAlN結晶10の結晶成長主面10gは、凹凸を有する面であり、その高低差は、50μm〜100μm程度であった。そのため、
参考例1と同様の研削により、結晶成長主面10gをその高低差が20μmまで平坦化した。さらに、結晶成長主面10gを、
参考例1と同様の研磨により、AFMにより測定されるRMS粗さが3.0nm以下まで鏡面化した。
【0063】
3.SiC下地基板の除去による第1のAlN結晶基板の形成
結晶成長主面10gが平坦化および鏡面化された第1のAlN結晶10が形成されている厚さ350μmの4H−SiC下地基板1sを、
参考例1と同様の研削により、完全に除去して、第1のAlN結晶基板10sを得た。こうして得られた第1のAlN結晶基板10sに現れた第1の主面10aを、
参考例1と同様の研磨およびCMPにより、AFMにより測定されるRMS粗さが1.0nm以下まで鏡面化した。
図7を参照して、得られた第1のAlN結晶基板10sの第1の主面10aは、光学顕微鏡により観察したところクラックの発生はなく、X線回折測定による評価を行なったところ単結晶領域10mが形成されていた。また、得られた第1のAlN結晶基板10sの第2の主面10bは、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察したところ、1つ以上の単結晶領域10mとそれを取り囲む多結晶領域10pが形成されていた。第2の主面10bにおける単結晶領域10mの総面積と多結晶領域10pの総面積との比は、10:90であった。
【0064】
(
参考例4)
参考例1と同様にして、
参考例1と同様の第1のAlN結晶基板10sを得た。第1のAlN結晶基板10sの結晶成長主面10g側の主面は、
参考例1と同様の研削および研磨により、
参考例1と同様にRMS粗さが3.0nm以下まで鏡面化した。第1のAlN結晶10の第1の主面10aは、
参考例1と同様の研削、研磨およびCMPにより、
参考例1と同様にRMS粗さが1.0nm以下まで鏡面化した。
【0065】
ただし、第1のAlN結晶基板10sの第1の主面10aの研磨は、第1のAlN結晶10の4H−SiC下地基板1sとの界面10iから第1のAlN結晶10側に50μm研磨する毎に研磨を止めて、X線回折測定による評価により単結晶であるか多結晶であるかを調べた。結果を表1にまとめた。
【0066】
【表1】
【0067】
表1から明らかなように、第1のAlN結晶基板10sは、第1のAlN結晶10の4H−SiC下地基板1sとの界面10iから第1のAlN結晶10側に400μmまでの領域が単結晶領域10mであり、400μmを超える領域が多結晶領域10pであることがわかった。
【0068】
(実施例5)
1.第2のAlN結晶の成長
図1を参照して、
参考例1と同様にして、
参考例1と同様の直径が15mmの第1のAlN結晶基板10sを得た。第1のAlN結晶基板10sの結晶成長主面10g側の主面は、
参考例1と同様の研削および研磨により、
参考例1と同様にRMS粗さが3.0nm以下まで鏡面化した。第1のAlN結晶10の第1の主面10aは、
参考例1と同様の研削および研磨により、
参考例1と同様にRMS粗さが1.0nm以下まで鏡面化した。
【0069】
図2(A)を参照して、直径15mmで第1の主面10aが鏡面化された第1のAlN結晶基板10sの第1の主面10a上に、第2のAlN結晶20を成長させた。
【0070】
図5を参照して、第2のAlN結晶20の成長は、結晶成長炉100内に加熱体120を介在させて配置されたるつぼ110内の上部にAlN原料5を配置し、るつぼ110内の下部にるつぼ蓋110c上に載置された直径が50mmのBN多結晶基板111ps上に載置された直径15mmmの第1のAlN結晶基板10sを配置して、第1のAlN結晶基板10sの第1の主面10a上に結晶成長させるフェイス−アップ方式の昇華法により行なった。ここで、結晶成長炉100内において、るつぼ110の内部は、るつぼ110の通気口110eならびに加熱体120の上部通気口120aおよび下部通気口120bを経由して、るつぼ11の外部と通気していた。
【0071】
第2のAlN結晶10の成長は、るつぼの下部温度を1900℃、るつぼの上部温度を2100℃とし、結晶成長炉100内の全圧が90kPaとなるように窒素ガスを300sccm流して、20時間行なった。こうして、
図2に示すように、クラックのない結晶成長主面20gを有する厚さが10mmの第2のAlN結晶20が得られた。
【0072】
得られた第2のAlN結晶20は、直径15mmの第1のAlN結晶基板10sの第1の主面10a上に単結晶領域20mが形成され、その単結晶領域20mの外周側面には多結晶領域(図示せず)が形成されていたため、外周研削機を用いて多結晶領域を除去することにより、単結晶領域20mで形成される直径15mmで厚さ10mmの第2のAlN結晶20が得られた。
【0073】
2.第2のAlN結晶基板の形成
図2(B)を参照して、厚さ10mmの第2のAlN結晶20から、第1の主面10aに平行に、厚さ500μmの第2のAlN結晶基板20sを12枚マルチワイヤソーを用いて切り出した。その後、研磨により両主面を鏡面化することにより、厚さ400μmの第2のAlN結晶基板20sが12枚得られた。
【0074】
12枚の第2のAlN結晶基板20sについて、X線回折によりθ−2θおよびロッキングカーブを測定した。
図8を参照して、第1のAlN結晶基板側よりも第2のAlN結晶の結晶成長主面側に位置する第2のAlN結晶基板ほど、(0002)面についてのロッキングカーブにおける半値全幅が小さくなり、結晶性が高くなっていた。また、θ−2θ測定から、いずれの第2のAlN結晶基板20sも単結晶であった。
【0075】
(実施例6)
1.第2のAlN結晶の成長
図1を参照して、
参考例1と同様にして、
参考例1と同様の直径が15mmの第1のAlN結晶基板10sを得た。第1のAlN結晶基板10sの結晶成長主面側の主面は、
参考例1と同様の研削および研磨により、
参考例1と同様にRMS粗さが3.0nm以下まで鏡面化した。第1のAlN結晶10の第1の主面10aは、
参考例1と同様の研削、研磨およびCMPにより、
参考例1と同様にRMS粗さが1.0nm以下まで鏡面化した。
【0076】
図3(A)を参照して、直径15mmで第1の主面10aが鏡面化された第1のAlN結晶基板10sの第1の主面10a上に、第2のAlN結晶20を成長させた。
【0077】
図5を参照して、第2のAlN結晶20の成長は、結晶成長炉100内に加熱体120を介在させて配置されたるつぼ110内の上部にAlN原料5を配置し、るつぼ110内の下部にるつぼ蓋110c上に載置された直径が3インチのBN多結晶基板111ps上に載置された直径15mmの第1のAlN結晶基板10sを配置して、第1のAlN結晶基板10sの第1の主面10a上に結晶成長させるフェイス−アップ方式の昇華法により行なった。ここで、結晶成長炉100内において、るつぼ110の内部は、るつぼ110の通気口110eならびに加熱体120の上部通気口120aおよび下部通気口120bを経由して、るつぼ11の外部と通気していた。
【0078】
第2のAlN結晶20の成長は、るつぼの下部温度を1900℃、るつぼの上部温度を2100℃とし、結晶成長炉100内の全圧が90kPaとなるように窒素ガスを300sccm流して、20時間行なった。こうして、
図2に示すように、クラックのない結晶成長主面20gを有する厚さが10mmの第2のAlN結晶20が得られた。
【0079】
図3(A)を参照して、得られた第2のAlN結晶20は、直径15mmの第1のAlN結晶基板10sの第1の主面10a上に単結晶領域20mが形成され、BN多結晶基板111psの露出している主面111pa上に多結晶領域20pが形成されたため、その単結晶領域20mの外周側面には多結晶領域20pが形成された。外周研削機を用いて直径3インチに成形加工することにより、直径が15mmの単結晶領域20mと、単結晶領域の外周側面にで形成された多結晶領域20pとを含む直径3インチの第2のAlN結晶20が得られた。
【0080】
2.第2のAlN結晶基板の形成
図2(B)を参照して、厚さ10mmの第2のAlN結晶20から、第1の主面10aに平行に、厚さ600μmの第2のAlN結晶基板20sを12枚マルチワイヤソーを用いて切り出した。その後、研磨により両主面を鏡面化することにより、厚さ400μmの第2のAlN結晶基板20sが12枚得られた。
【0081】
こうして得られた直径3インチの第2のAlN結晶基板20sは、直径が3インチのウェハープロセス、たとえば、フォトリソグラフィープロセスに流すことができる。なお、
参考例1において製造した第1のAlN結晶基板を複数個載置してもよい。
【0082】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。