(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
紙基材の内面及び外面に熱可塑性樹脂層が設けられた積層シートから構成されたブランクの一方の側端縁を他方の側端縁に重ね合わせた胴部貼り合わせ部を有する紙カップにおいて、該熱可塑性樹脂層は、最内面および最外面にランダム共重合ポリプロピレン樹脂からなるシーラント層を含んでおり、ポリエチレンテレフタレート層またはポリブチレンテレフタレート層を介して紙基材に積層されていることを特徴とするレトルト用紙カップ。
前記ガスバリア層はエチレンービニルアルコール共重合体、MDXナイロン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリアクリル酸系樹脂をコーティングしたポリエチレンテレフタレートフィルムまたはナイロンフィルムまたはこれらに金属あるいは金属酸化物、無機酸化物を蒸着したフィルムからなることを特徴とする、請求項2に記載のレトルト用紙カップ。
前記ブランクの胴部貼り合わせ部の内側に位置する側端縁は、前記紙基材の側端縁から延出する樹脂部を、基材の外面側に折り返した折り返し樹脂部を有し、前記ブランクの重ね合わせ部の外側に位置する側端縁は、前記紙基材の側端縁から延出する樹脂部を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のレトルト用紙カップ。
前記ブランクの胴部貼り合わせ部の外側に位置する側端縁から延出する樹脂部が、紙基材の外面側または内面側に折り返した折り返し樹脂部を有することを特徴とする、請求項4に記載のレトルト用紙カップ。
【背景技術】
【0002】
ジュース等の飲料を充填し、上部の開口部を蓋材で密封して使用するカップ状紙容器は、紙を基材とし両面にポリエチレン等の熱可塑性樹脂層を設けた積層材料を所定の形状に打ち抜いたブランクを、胴部に貼り合わせ部を設けてから成形した紙カップが一般的であった。
【0003】
また、酸素や水蒸気等のガスに対するバリア性を必要とする場合、前記胴部の構成材料として、例えば、表側から、ポリエチレン/紙/ポリエチレン/アルミニウム箔/ポリエチレンテレフタレートフィルム/ポリエチレン、またはポリエチレン/紙/ポリエチレン/金属酸化物蒸着層を有するプラスチックフィルム/ポリエチレンのような積層材料を用いて成形した紙カップを用いることが多かった。
【0004】
このような紙カップの場合に問題となるのが一つは外部からの水分やガスの浸透に対する耐性の確保でありもう一つは加工あるいは使用中の積層材の剥離やピンホール等の発生防止である。
とくに層構成中に紙を含む積層材料においては紙の端面の露出を避けるさまざまな工夫がなされている。
例えば、紙カップの接合部のバリア性を確保するため、紙カップの胴部を構成する胴部材の接合部の両側端の端面を保護するための端面処理(エッジプロテクト)の方法として、
図7(a)〜(c)に示すスカイブヘミングと呼ばれる方法も知られている。
【0005】
この方法では紙基材(101)に熱可塑性樹脂(102)を積層した
図7(a)に示すような積層シートからなる胴部材(100)の最外層端縁部を切削ミーリング方式あるいは切削ベルナイフ方式等により
図7(b)に示すように胴部材(100)の厚みの約半分をスカイブ(切削)する。
次に、スカイブした残りの半分を削除面が内側になるようにヘミング(折り返し)し、
図7(c)に示すように熱可塑性樹脂によって紙端面を保護する。
【0006】
紙端面のスカイブヘミング加工を行うためには、あらかじめ打ち抜いた胴部材ブランクを紙カップに成形する前に、特別の加工機械を用いて紙端面のスカイブヘミング加工を行うことが必要である。
また、スカイブ端面を一直線上にそろえる必要があるために、カップ成形機でスカイブヘミング加工をすると同時にカップ成形をすることは困難であった。
このようにスカイブヘミング加工は複雑な加工工程を経なければならず、さらに、用紙をスカイブ(切削)するため紙粉が発生し、紙粉の完全除去が困難であった。
【0007】
スカイブヘミング加工はさらに、スカイブ深さの管理が難しく成形後にスカイブ部からの切れが発生する場合があり、サイドシール等が安定しないという問題もあった。
加えて、スカイブヘミング加工でのスカイブ後の折り返し接着には糊を使用するため、糊の量や位置等の管理が難しかった。
【0008】
このような問題点を有するスカイブヘミング加工を行わずに紙カップの胴部を構成する胴部材の接合部の両側端の端面を保護して端面処理を行いバリア性に優れた紙カップを作製する端面処理の方法として、紙基材の表面を覆う耐水耐油性の熱可塑性プラスチックフ
ィルムの延設によって端面が覆われたブランクを用い、紙カップを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
この紙基材の端面を保護した、バリア性を有する紙カップにおいては、胴部貼り合わせ部の内側の端縁は全体にわたって熱可塑性樹脂層が紙基材から延出して作製されているが、このように、紙基材から延出した熱可塑性樹脂層のフィルムは、カップ成形する際に、不規則に成形されてしまい、本来の目的である紙基材の端面を被覆することが十分にできないことがあった。
また、紙カップとしての仕上がりが悪く、外観的に不具合が生じてしまう等の問題もあった。
【0010】
さらに、少なくとも内面に熱可塑性樹脂層が設けられた紙を基材とする積層シートを所定の形状に打ち抜き、一方の側端縁に外方に延出する樹脂部を、基材の端面に沿って、密着被覆させたブランクを、他方の側端縁の内側となるように重ね合わせ、密着することにより胴部貼り合わせ部を形成した紙容器が提案されている(特許文献2参照)。
【0011】
この紙容器では、カップ状容器の場合、開口部に胴部材の上端縁部を巻き込んでフランジ部が形成されているため、基材の紙の重なり具合の差によって、フランジ部上面で厚みの差による段差部が生じる。
そのため、フランジ部の上面に蓋材を重ね、そのまま加熱シールした場合、前記段差部により密封を確実に行うことができなかった。特に、フランジ部が扁平状態の場合、基材の厚みによる影響が大きかった。
【0012】
また、蓋材による密封を確実に行うためには、フランジ部の上面の段差部を埋めるための別の樹脂等からなる充填部材を設け、段差部を解消するために前記段差部の位置の密封シールを部分的に行なわなければならなかった。
【0013】
さらに、内面に熱可塑性樹脂層が設けられた紙を基材とする積層シートを所定の形状に打ち抜き、一方の側端縁に外方に延出する樹脂部を外面側に折り返した折り返し樹脂部を有するブランクを、他方の側端縁の内側となるように重ね合わせて基材に密着することにより胴部貼り合わせ部を形成した紙容器も提案されている(特許文献3参照)。
【0014】
この紙容器では、貼り合わせ部における内面側基材端面は、熱可塑性樹脂層で被覆することにより保護されている。
特許文献3にはまた、カップ状容器の場合、開口部に胴部材の上端縁部を巻き込んで形成されているフランジ部で、基材の紙の厚みによる段差部が生じないように、フランジ部の上面に蓋材を重ね、そのまま加熱シールしても密封を確実に行うことが出来るように胴部材ブランクの上端縁部の一部を切除するという解決策も用意されている。
【0015】
容器に用いる紙の端面からの水分浸透による劣化を防止するための方法としては、端面をプラスチックフィルムで覆う方法以外にも紙自体の耐水性を改良することによってこの目的を達成する方法が提案されている。
【0016】
特許文献4では、胴部と底部のブランク板が、少なくとも最外層の耐熱性熱接着性樹脂層と、中間層のコップ原紙およびガスバリア層と、最内層の耐熱性熱接着性樹脂層とを含む積層シートで形成され、且つ、該コップ原紙の米坪量が150〜400g/m
2の範囲であって、該コップ原紙のステキヒト・サイズ度が400秒以上である原紙を使用する、レトルト殺菌処理可能な紙カップが提案されている。
ステキヒト・サイズ度が400秒を下回る場合はコップ原紙の耐水度が不足し、積層シート端縁部の端面は、外部に露出しているため、レトルト殺菌処理の加熱蒸気がこの部分からコップ原紙の内部に浸透し、ふやけ現象を発生すると共に、剛性の低下により容器の変形も認められるとされている。
【0017】
ここでは、熱水が浸透しにくい紙を使用してはいるが、レトルト殺菌時に加わり得る高圧条件下で熱水の浸透を完全に防ぐのは困難である。
また、水分浸透性の指標としてのステキヒト・サイズが通常の倍以上の秒数の原紙が必要となり、特殊な紙を使用する必要があるので経済性および加工技術面からの問題もある。
【0018】
基材に用いる紙として、熱水浸漬時にも強度が低下し難い加工を施した紙を使用することによってレトルト殺菌時の熱水にも耐えるカップ状容器とする試みも提案されている。
特殊な紙を必要としない方法として、特許文献5には、耐熱性、耐水性、耐摩擦性および耐レトルト性に優れた塗膜物性が得られるα−メチルスチレンとメタクリル酸メチル、およびカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を必須成分とする水性アクリル樹脂を紙基材へ塗工して耐久性を付与することが提案されている。
【0019】
さらに特許文献5には、含浸により紙基材の繊維構造物内部にポリイソシアネート化合物を導入し、繊維自体に被膜を形成して繊維の絡み合い部分に固着し水と尿素化合物を生成させることを併用することも提案されている。
生成した尿素化合物は耐水性、耐熱性に優れるため、その含浸物である繊維構造物に極めて高い乾燥強度、湿潤強度、耐熱水性を付与することができるとされている。
【0020】
この方法によれば、たとえばレトルト殺菌時に紙基材内部に熱水が浸透しても紙基材に極めて高い湿潤強度、耐熱水性が付与されているために容器が破壊されることはない。
しかしながら、高温高圧でのレトルト殺菌時に紙基材内部に浸透した熱水を蒸発させる過程で内部の水蒸気を外部に蒸散させるための水蒸気透過性が必要であるため、紙基材表面の印刷適性を確保するためのコート層の形成に限界があり美麗な容器とならない場合があった。
【0021】
特許文献6には、トップ材とサイド材とボトム材を持ち、サイド材とトップ材を接着する部分を形成する際に、サイド材のトップ側およびボトム側の端部を容器内側あるいは外側にカーリングさせる工程において、サイド材端部を1周以上カーリングさせることによってサイド材端部のエッジを容器外部に露出させない構造とした紙容器が提案されており、胴部サイド材の重なる端面のみならずトップとボトムの胴部サイド材の端面も確実に封止して端面からの熱水等の浸透を防止する容器となっている。
【0022】
以上のように、液体紙容器のバリア性を熱水レトルト処理に耐え得るまで強化するために特に紙基材の端面からの水分浸透を防止する多くの提案によって、外部からの水分やガスの浸透に対する耐性の確保という課題は一定の前進をみている。
しかしながら、このような紙カップの場合に問題となるもう一つは加工あるいは使用中の積層材の剥離やピンホール等の発生防止である。これに対しても従来からさまざまな工夫がなされている。
【0023】
紙基材表面に設けられた熱可塑性樹脂層の機械的強度が不足することよって引き起こされる問題のうちで深刻なのは成型時のダメージにより生成したピンホールやクラック等の孔によって必要なバリア性が失われてしまい、特に熱水と圧力という条件の厳しい熱水レトルト工程に耐えられなくなることである。
【0024】
紙カップの成型時のダメージのうちで典型的なのは容器底部を形成する工程において、筒状に形成した胴部材の底部を、金型上に載置した底部材(ボトム材)の外周周縁部(起
立部)を巻き込むようにカールさせる(ボトムインカール)時に胴部材の底部外周に金型が当たることによって表面の熱可塑性樹脂層が削られて孔が出来、この孔からの熱水の浸透によってレトルト処理時に基材の紙が膨潤してしまう場合である。
【0025】
さらに内側にカールさせた胴部材の底部を、底部材外周を挟む形で圧着するかしめ作業の工程でも、胴部材底部を内側から底部材起立部に押し付けながら回転するローレットまたは内側から膨張するエキスパンションの目によって熱可塑性樹脂層が切られて孔が出来、この孔からの熱水の浸透によってレトルト処理時に基材の紙が膨潤してしまう場合もある。
【0026】
胴部材をカールさせるときに起こる、表面の熱可塑性樹脂層が削られて孔が出来るという上記の問題に対しては、熱可塑性樹脂層を構成する層中に機械的強度の高いたとえば、延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム等のプラスチックフィルムを用いることによってカップ成形時の孔の生成を防止する技術がいくつか提案されている。
【0027】
たとえば、カップ状紙容器の胴部材の容器外面側に、シーラント層に挟まれた、耐熱性と耐摩擦性にすぐれたポリエチレンテレフタレート層またはナイロン層を設けることにより、カップ成型時の胴部材表面の孔傷の発生を防止して、熱水の浸透力に対する抵抗の強い、熱水式レトルト処理も可能なバリア性を保持できるカップ状紙容器が提案されている(特許文献7)。
【0028】
また、紙カップの胴部材の基材外面側に積層する耐熱性と耐摩耗性にすぐれたポリエチレンテレフタレート層またはナイロン層からなる耐熱耐磨耗性樹脂層をドライラミネート法により設けることにより、カップ成型時の成形性を保持しながらシーラント層の密着性を向上させた紙カップの作成方法が提案されている(特許文献8)。
【0029】
さらに、シーラント層として無延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂層の内面にポリプロピレン(PP)樹脂とポリエチレン(PE)樹脂の混合層を形成したものを用いて、中密度ポリエチレン(MDPE)樹脂又は酸変性中密度ポリエチレン樹脂により押出しラミネートすることで成形性を保持しながらシーラント層の密着性を向上させることが提案されている(特許文献9)。
【0030】
紙カップの胴部材に耐熱耐磨耗性樹脂層をドライラミネート法により設けたことにより、カップ成型時の成形性を保持しながらシーラント層の密着性を向上させた以上の提案により熱水レトルト処理への耐性を向上させるいくつかの解決策が示されたが、バリア性の保持という点から見るとつぎのような問題を残していた。
【0031】
紙基材表面に設けられる熱可塑性樹脂層のみではバリア性の程度が不足する場合に、金属や無機化合物の蒸着層をプラスチックフィルム上に設けた積層体をガスバリア層として用いることがよく行われる。
この場合の蒸着層は伸展性が少ないものが多く、一般に蒸着厚みが薄いこともあって上記のような成型工程において、破断して孔があき易い性質を持っており、成型後も必要なバリア性を確保することは容易ではない。
【0032】
金属や無機化合物蒸着層等のバリア性を有する層は紙カップの成型工程中では胴部材の側端縁にはみだした熱可塑性樹脂層中にも含まれる場合があり、この熱可塑性樹脂層を折り曲げる工程でも同様の不具合が起こることがある(
図6参照)。(特願2011−027013:未公開)。
【0033】
ここでは、成型工程中で基材の紙端面のみならず紙表面の被覆の遮水性を含むバリア性を保持できる熱水レトルト処理可能な紙カップとして、胴部材の基材内面に積層された、バリア性にすぐれた樹脂層からなる保護層を、金属または無機化合物蒸着プラスチックフィルムからなるガスバリア層の紙基材側に設けることにより、容器成型の際にガスバリア層の蒸着膜にクラックが入った場合でもクラックから浸透してくる水分を遮断することが出来、これにより、カップ成型時の胴部材表面の孔傷の発生を防止して、熱水の浸透力に対する抵抗の強い、熱水式レトルト処理も可能な耐水性を保持できるようにしている。
【0034】
上記のような構成では積層材料を構成する層の数が多く、したがって材料費、工程費が高くなり、収率も上がらないのみならず、積層するための接着剤あるいは接着層の耐熱性が不足している場合には、胴部貼り合わせ部の形成工程や胴部と底部を貼り合せる工程で加熱する場合の熱で接着剤あるいは接着層が軟化して、紙基材に含まれている水分の水蒸気化に伴い、紙基材とたとえばPETフィルムの層間で剥離してしまうということが起こる。
【0035】
そこで紙カップの胴部材の紙基材内面に、耐熱性にすぐれた熱可塑性樹脂層からなる水蒸気遮断層を、金属または無機化合物蒸着プラスチックフィルムからなるガスバリア層の紙基材側に押出しラミネート法によって設けることにより、容器成型の際にカップ成型時の熱による紙基材に含まれている水分の水蒸気化に伴い、紙基材とフィルムの層間で剥離する現象を防止して、熱水の浸透力に対する抵抗の強い、熱水式レトルト処理も可能な耐水性を保持できる紙カップとすることが提案されている(特願2012−045160:未公開)。
【0036】
上記のような改良にもかかわらず、レトルト用途の紙容器におけるシーラントの熱可塑性樹脂層は耐水耐油性および蒸気バリア性とともに成型時のヒートシール性というシーラントとしての性質を併せ持つことが要求されるためその選択は簡単ではなかった。
内容物封入後に熱水によるレトルト殺菌を行う用途のカップ状紙容器においては、レトルト殺菌時の熱水温度に耐える接着性を実現するのに必要なカップ成型時のシーラントのヒートシール温度から熱可塑性樹脂層の内のシーラントに用いる樹脂層の樹脂の融点の範囲が決まってくる。
【0037】
レトルト殺菌時の熱水温度に耐え得る比較的高融点のシーラントの熱可塑性樹脂として通常ポリプロピレン樹脂のエチレンブロック共重合体(ブロックPP)が用いられているが、このブロックPPを溶融させるには高温加熱する必要があり、容器成型時のヒートシールに際に用紙が焦げるあるいは紙中の水分が蒸発して溶融樹脂中に気泡を形成して発泡してしまう等の問題を起こすことがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
本発明は、重ね合わせ部に位置する側端縁が、延出した熱可塑性樹脂層からなる樹脂部フィルムがはみだして形成されている胴部材を用いてバリア性に優れた容器を成形する際に発生する以上のような問題に鑑みてなされたもので、カップ成型時の熱でシーラント層が軟化、あるいは紙基材に含まれている水分の水蒸気化に伴い発泡して、紙基材とフィルムの層間で剥離する現象を防止し、紙基材の端面のみならず紙基材表面の被覆の遮水性を含むバリア性を保持できる熱水レトルト処理可能な紙カップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0040】
本発明は、紙カップの胴部材に用いる積層材の最外面のシーラント層として、レトルト用途に通常用いられる高融点のブロック共重合ポリプロピレン樹脂に代えて融点の低いランダム共重合ポリプロピレン樹脂を用いることによって、容器成型の際にカップ成型時の熱による紙基材に含まれている水分の水蒸気化に伴い、紙基材とフィルムの層間で剥離する現象を防止して、熱水の浸透力に対する抵抗の強い、熱水式レトルト処理も可能な耐水性を保持できる紙カップとしたものである。
【0041】
本発明の請求項1の発明は、紙基材の内面及び外面に熱可塑性樹脂層が設けられた積層シートから構成されたブランクの一方の側端縁を他方の側端縁に重ね合わせた胴部貼り合わせ部を有する紙カップにおいて、該熱可塑性樹脂層は、最内面および最外面にランダム共重合ポリプロピレン樹脂からなるシーラント層を含んで
おり、ポリエチレンテレフタレート層またはポリブチレンテレフタレート層を介して紙基材に積層されていることを特徴とするレトルト用紙カップである。
【0043】
本発明の請求項
2の発明は、前記熱可塑性樹脂層は、ガスバリア層を含むことを特徴とする、請求項
1に記載のレトルト用紙カップである。
【0044】
本発明の請求項
3の発明は、前記ガスバリア層はエチレンービニルアルコール共重合体、MDXナイロン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリアクリル酸系樹脂をコーティングしたポリエチレンテレフタレートフィルムまたはナイロンフィルムまたはこれらに金属あるいは金属酸化物、無機酸化物を蒸着したフィルムからなることを特徴とする、請求項
2に記載のレトルト用紙カップである。
【0045】
本発明の請求項
4の発明は、前記ブランクの胴部貼り合わせ部の内側に位置する側端縁は、前記紙基材の側端縁から延出する樹脂部を、基材の外面側に折り返した折り返し樹脂部を有し、前記ブランクの重ね合わせ部の外側に位置する側端縁は、前記紙基材の側端縁から延出する樹脂部を有することを特徴とする、請求項1から
3のいずれか1項に記載のレトルト用紙カップである。
【0046】
本発明の請求項
5の発明は、前記ブランクの胴部貼り合わせ部の外側に位置する側端縁から延出する樹脂部が、紙基材の外面側または内面側に折り返した折り返し樹脂部を有することを特徴とする、請求項
4に記載のレトルト用紙カップである。
【0047】
本発明の請求項
6の発明は、前記ブランクの胴部貼り合わせ部の外側に位置する側端縁から延出する樹脂部が、前記胴部貼り合わせ部の内側のブランクに沿って密着していることを特徴とする、請求項
4から
5のいずれか1項に記載のレトルト用紙カップである。
【0048】
本発明の請求項
7の発明は、前記内側または外側に位置する側端縁から延出する樹脂部は、側端縁の全長に設けられていることを特徴とする、請求項
4から
6のいずれか1項に記載のレトルト用紙カップである。
【発明の効果】
【0049】
本発明の請求項1に係る発明によれば、
紙基材の内面及び外面に熱可塑性樹脂層が設けられた積層シートから構成されたブランクの一方の側端縁を他方の側端縁に重ね合わせた胴部貼り合わせ部を有する紙カップにおいて、該熱可塑性樹脂層は、最内面および最外面のシーラント層がランダム共重合ポリプロピレン樹脂からなることによって、カップ成型時のヒートシール温度を通常のブロック共重合ポリプロピレン樹脂の場合よりも低温で行うことが出来る。
このことによって、シール強度が安定してカップの品質のばらつきを抑える事が可能になるのみならず、必要熱量が低下することで生産に要するエネルギーの節約にもなる。
【0050】
また、シーラント層がランダム共重合ポリプロピレン樹脂からなることによって、高融点のブロック共重合ポリプロピレン樹脂の場合よりもレトルト殺菌時に以下の白化現象が起こりやすい。
レトルト殺菌の加熱時にシーラント層の樹脂が軟化して再結晶化するときに細かな結晶を多数作ることで光が乱反射して白化する。この白化が機能上問題にならなくても外観上問題になる場合には通常それに対する対策(シーラント層樹脂の高融点化等)が採られることが多い。
本発明のように紙カップの場合には上記の白化は外観上目立つことがないため無視できるので成型時の安定性を実現できる、ランダム共重合ポリプロピレン樹脂のシーラント層への採用を選択した。
【0051】
また本発明の請求項
1に係る発明によれば、熱可塑性樹脂層は
、シーラント層よりも高融点のポリエチレンテレフタレート層またはポリブチレンテレフタレート層を介して紙基材に積層されていることによって、押出しラミネート法により紙基材層に積層されている場合における製造時の積層のための熱圧により起こる以下の問題を効果的に回避してシーラント層としての熱溶融性と必要な耐熱性を持つポリプロピレン樹脂等をシーラント層として効果的に使用することが出来る。
【0052】
基材となる紙に、熱可塑性樹脂層を積層する方法として押出しラミネート法をもちいた場合には、最外側のシーラント層に用いる樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)の融点よりも低い融点の樹脂(例えばポリエチレン樹脂)を基材と例えばポリエチレンテレフタレート層の間に熱溶融させて層状に形成する場合が多い。
【0053】
このような構成の積層体を用いてカップ状に成型を行う場合には、ブランクス端部において外側のシーラント層を熱溶融させて内側表面に溶着することが必要であるが、この時の加熱によって紙基材とポリエチレンテレフタレート等のフィルム層の間にある融点の低いポリエチレン樹脂等が溶融して、加熱された紙基材から発生する水分の蒸発によって発泡して空気層が出来ると、浮いた熱可塑性樹脂層が強く加熱され、密封性を破壊するピンホール等の孔が発生しやすくなるということが起こる。
【0054】
カップ成型時の貼り合わせにおける以上のような不良発生を防止するためには、紙基材と熱可塑性樹脂層との接着にシーラント層よりも高融点のポリエチレンテレフタレート樹脂またはポリブチレンテレフタレート樹脂の押出しラミネート法を用いることが効果的である。
【0055】
本発明の請求項
2に係る発明によれば、前記熱可塑性樹脂層は、ガスバリア層を含むので内容物の酸素による劣化や水蒸気による変質等を抑止することが出来る紙カップとなる。
【0056】
本発明の請求項
3に係る発明によれば、前記ガスバリア層はエチレンービニルアルコール共重合体、MDXナイロン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリアクリル酸系樹脂をコーティングしたポリエチレンテレフタレートフィルムまたはナイロンフィルムまたはこれらに金属あるいは金属酸化物や酸化ケイ素等の無機酸化物を蒸着したフィルムからなることによって、バリア性の確保と熱可塑性樹脂層の傷やピンホールに起因する紙基材層への熱水の浸透防止がより確実に可能になる。
このような紙基材層への熱水の浸透防止を安定して確実に行うことは熱水を使用したレトルト殺菌を含む工程に於いて特に重要である。
【0057】
本発明の請求項
4に係る発明によれば、胴部材ブランクの側端縁重ね合わせ部の内側に位置する側端縁は、紙基材の側端縁から延出する樹脂部を、紙基材の外面側に折り返した折り返し樹脂部を有し、前記ブランクの重ね合わせ部の外側に位置する側端縁は、前記紙基材の側端縁から延出する樹脂部を有することで、貼り合わせ部における外面側基材端面が重ね合わされている状態で胴部貼り合わせ部に段差部が生じ、外観上不都合なだけでなく、重ね合わせ時のシワ等により外部からの水分の浸透が起こりやすいという問題をなくすことが出来る。
【0058】
本発明の請求項
5に係る発明によれば、前記ブランクの重ね合わせ部の外側に位置する側端縁から延出する樹脂部が、紙基材の外面側または内面側に折り返した折り返し樹脂部を有することにより、紙基材端部の封止が確実に行えるだけでなく、胴部貼り合わせ部の樹脂量が確保でき、さらに、ガスバリア層を含む熱可塑性樹脂層の場合、前記ガスバリア層の端面が露出しない紙カップが得られる(
図3参照)。
【0059】
本発明の請求項
6に係る発明によれば、前記ブランクの重ね合わせ部の外側に位置する側端縁から延出する樹脂部が、前記重ね合わせ部の内側のブランクに沿って密着していることによって紙基材端部の封止が確実に行えるだけでなく、胴部貼り合わせ部の樹脂量が確保できる紙カップが得られる(
図4参照)。
【0060】
本発明の請求項
7に係る発明によれば、前記内側及びまたは外側に位置する側端縁から延出する樹脂部は、側端縁の全長に設けることで、フランジ部以外の胴部貼り合わせ部の
密封性の優れた紙カップが得られる(
図5参照)。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明のレトルト用紙カップの実施形態例を必要に応じて図面を参照して以下に詳細に説明する。
カップ状容器の製造工程を示す説明図を
図1に、本発明のレトルト用紙カップに用いる胴部材ブランクの層構成例を示す簡単な断面説明図を
図2に示した。説明に直接関係のな
い部分は省略した。
【0063】
本発明のレトルト用紙カップは、紙基材の内面及び外面に熱可塑性樹脂層が設けられた積層シートから構成されたブランクの一方の側端縁を他方の側端縁に重ね合わせた胴部貼り合わせ部を有する紙カップにおいて、該熱可塑性樹脂層は、最内面および最外面にランダム共重合ポリプロピレン樹脂からなるシーラント層を含んでいることを特徴とするレトルト用紙カップである。
【0064】
この胴部材として用いられる(底部材としても用いられることがある)ブランクの水平断面(たとえば
図5のA−A’線での断面)の例を
図2に示した。
図2の例は内側と外側の熱可塑性樹脂層がPETまたはPBTでラミネートされている層からなる構成の例を示している。
【0065】
図2に示したように、本発明のレトルト用紙カップに用いる胴部材ブランクは、紙基材(1)の外面にポリエチレンテレフタレート層またはポリブチレンテレフタレートの層(50)とシーラント(40a)としてのランダム共重合ポリプロピレン樹脂の層からなる熱可塑性樹脂層(40)が積層されており、紙基材(1)の内面にはポリエチレンテレフタレート層またはポリブチレンテレフタレートの層(50)とシーラント(41a)としてのランダム共重合ポリプロピレン樹脂の層を含む熱可塑性樹脂層(41)が積層されている。
【0066】
熱可塑性樹脂層(41)はこの例では最外層のシーラント層(41a)とガスバリア層(2a)を含み、外部からの酸素や水蒸気の浸透を防止して内容物の保存性を高めている。この例ではガスバリア層(2a)として蒸着層(41b)を設けた蒸着フィルムを用いている。
ガスバリア層と蒸着層の積層順序は特に決められていないが、ガスバリア層に用いる樹脂が吸水性を有する場合には水分の浸透を阻止したい面に蒸着層を配置することが望ましい。
【0067】
以下の説明ではおもに内面の熱可塑性樹脂層(41)がPETまたはPBTの押出しラミネート法により紙基材に積層されている場合の例を取り上げ、外面の熱可塑性樹脂層(40)については必要に応じて説明する。
【0068】
熱可塑性樹脂層(41)を構成するガスバリア層(2a)はその表面に蒸着層(41b)が形成されており、ガスバリア層に用いる樹脂のバリア性を補強すると同時にカップ成形時のガスバリア層の伸縮による蒸着膜のクラックを通した水分透過を抑制するためのバリア性とを全面に備えている。
【0069】
本発明のレトルト用紙カップに用いる紙基材(1)は通常のカップ原紙として用いられるものであればよく、特に限定はしないが、印刷適性と紙力を有し、成形性に優れ、且つ表面強度が強いカップ紙の坪量100〜500g/m
2程度のものが好んで用いられる。
【0070】
容器内面の熱可塑性樹脂層(41)を構成するシーラント層(41a)及び容器外面の熱可塑性樹脂層(40)を構成するシーラント層に用いる樹脂としては、ヒートシール性を有する樹脂のうちでもとくに、ポリプロピレンのエチレンのランダム共重合体が用いられる。
このランダムポリプロピレン樹脂をシーラントとして用いることによってこれより約20℃融点の高い通常のブロックポリプロピレン樹脂を用いるよりもカップ成型時のヒートシール工程において接着不良の発生する割合を減らすことができる。
シーラント層の膜厚は通常10μmから60μmであり、エクストルーダー等の熱溶融
押出しやドライラミネート等公知の方法によって設けることが出来る。
【0071】
ガスバリア層(2a)としては、アルミニウムなどの金属、またはシリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化錫、酸化マグネシウムなどの無機酸化物の蒸着層(41b)を延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムなどの延伸ポリエステル樹脂フィルムや、延伸ナイロン樹脂フィルムなどの延伸ポリアミド樹脂フィルムに設けた蒸着フィルムを用いることが出来る。
【0072】
本発明のレトルト用紙カップに用いるガスバリア層(2a)に用いる樹脂としては、使用時及び工程中での熱と摩擦により傷やピンホール等の欠陥を生じない程度の必要な機械的特性を持った材料が使用できるが、成型性やシーラント層との接着性等の加工適性および蒸着層にクラックが入った場合のバリア性の保持を考慮すると、レトルト耐性の優れたエチレンービニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂、バリア性の優れたMDXナイロン(Ny)樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂が挙げられる。
とくにポリアクリル酸系樹脂をコーティングしたPETフィルムが好ましく用いることが出来る。
【0073】
ガスバリア層(2a)の厚さは6μm未満であると必要な特性を確保することが困難になり、30μmよりも大きいと成型時の加工性が悪くなってしまうので、厚さは6μm以上30μm以下であることが望ましい。
【0074】
上記熱可塑性樹脂層(41)はPETまたはPBTを介して紙基材(1)に積層されている。PETまたはPBT層(50)の厚さは10μmから50μmの範囲であることが望ましい。厚さが10μm未満であると接着強度が不足することがあり、厚さが50μmを超えると成型性が悪化する。
【0075】
図1は上記の胴部材を用いた本発明のレトルト用紙カップの製造工程を簡単に示す説明図である。
図1に示すように、胴部材(18)を、両側端縁上部にそれぞれ切欠き部(31)(32)を設けた胴部材ブランク(10)の、一方の端縁(11)をもう一方の端縁(12)に重ね合わせて胴部貼り合わせ部(15)を形成させて円筒形状とする。
また、底部材(20)は、円形状で、下向きに起立させた周縁部(21)を有する。そして、前記胴部材(18)の下部内面に、底部材(20)の周縁部(21)の外面を接合させる。
【0076】
さらにボトムインカール金型の内面に沿って周縁部(21)を覆うように、前記胴部材(18)の下端縁部を外側から内方に折り曲げ、底部材の周縁部(21)内面に接合させて、ローレットまたはエキスパンダで圧着することにより環状脚部(22)を形成させる一方、胴部材の上部周縁を外方に、1周以上巻き込み、フランジ部(16)を形成させて紙カップとする。
【0077】
内容物収納後の状態は図示しないが、蓋材によって密閉する工程を経る場合にはフランジ(16)の上面を超音波加熱により平面化しながらシールを行う場合がある。この場合にも紙基材と熱可塑性樹脂層との接着にシーラント層よりも高融点のPET樹脂またはPBT樹脂の押出しラミネート法を用いることにより接着不良を防止して、ガスバリア層によって蒸着層のクラックから生じるバリア性の低下を抑制する効果は有用である。
さらに耐熱性と機械的強度の大きいPETまたはPBT樹脂層の積層により外部からの摩擦や衝突による障害も軽減できるようになる。
【0078】
なお、このような構造は、テーパー状の紙カップに限定されず、円筒状のカップ状紙容
器であっても同様である。
さらには、内容物および外部環境からの水分の浸透等に対する紙基材接合部のエッジプロテクトを要求される紙容器であっても構造の基本は同じである。
【0079】
図3はレトルト用紙カップの胴部貼り合わせ部の一例を示す断面説明図であり、(a)は胴部貼り合わせ部の内側となるブランクの断面説明図、(b)は胴部貼り合わせ部の外側となるブランクの断面説明図であり、(c)は貼り合わせ後の貼り合わせ部の断面説明図である。
【0080】
図4はレトルト用紙カップの胴部貼り合わせ部の他の一例を示す断面説明図であり、(a)は胴部貼り合わせ部の内側となるブランクの断面説明図、(b)は胴部貼り合わせ部の外側となるブランクの断面説明図であり、(c)は貼り合わせ後の貼り合わせ部の断面説明図である。
【0081】
図3に示した例の胴部材ブランク(10)は、胴部貼り合わせ部(15)において容器内面側に位置する一方の端縁(11)が、紙基材(1)内面側の熱可塑性樹脂層(40)と紙基材(1)外面側の熱可塑性樹脂層(41)が、紙基材(1)の側端縁より外方に延出した樹脂部(4a)を、紙基材(1)の近傍で、紙基材(1)の外面側に折り返した折り返し樹脂部(4b)を備えた構成とする。
【0082】
また、胴部貼り合わせ部(15)において容器外面側に位置するもう一方の端縁(12)が、紙基材(1)内面側の熱可塑性樹脂層(40)と、ガスバリア層(図示せず)を積層した紙基材(1)外面側の熱可塑性樹脂層(41)が、紙基材(1)の側端縁より外方に延出した樹脂部(4c)を、基材(1)の近傍で、紙基材(1)の外面側に折り返した折り返し樹脂部(4d)を備えた構成とする。
このように、樹脂部(4b)は、樹脂部(4a)を紙基材(1)の外面側に折り返した構成とすることで、胴部貼り合わせ部(15)における樹脂量が確保でき、貼り合わせ部内面の密封性が良好となる。
【0083】
また、樹脂部(4d)は、樹脂部(4c)を紙基材(1)の外面側に折り返した構成とすることで、胴部貼り合わせ部(15)における樹脂量が確保でき、貼り合わせ部外面の密封性が良好となる。この樹脂部(4a)の端部と樹脂部(4c)の端部との間は空隙であってももちろん重なっていても構わない。
もしくは、図示していないが樹脂部(4d)は、樹脂部(4c)を基材(1)の内面側に折り返した構成とすることも可能である。
【0084】
さらに、胴部貼り合わせ部の外部に対するエッジプロテクトの必要性の程度によっては、
図4に示したように胴部貼り合わせ部(15)において容器外面側に位置する紙基材のもう一方の端縁(12)が、紙基材内面側の熱可塑性樹脂層(40)と紙基材外面側の熱可塑性樹脂層(41)が、紙基材(1)の側端縁より外方に延出した樹脂部(4c)を、容器内面側の紙基材(1)の外面側の熱可塑性樹脂(41)に重ねて圧着した構成とすることも出来る。
【0085】
このような構造を有している本発明のレトルト用紙カップは、胴部貼り合わせ部(15)の内側に位置する紙基材の端面が、折り返し樹脂部(4b)により保護されており、胴部貼り合わせ部(15)の外側に位置する紙基材の端面が、折り返し樹脂部(4d)または熱圧着により封止された樹脂部(4c)で保護されているので、容器に充填された内容物が紙基材端面から浸透することがないのみならず、容器外部からの浸透をも防止するエッジプロテクト効果を得ることが出来る。
【0086】
このように、紙基材の両面に熱可塑性樹脂層(40)、(41)を設けることにより、紙基材端面に外延した樹脂部(4a)、(4c)が、前記両面の熱可塑性樹脂層(40)、(41)が外縁で一体化された状態で形成される。
そして、前記樹脂部(4a)を、前述のように紙基材の端縁から外方に延出した構成でなく、紙基材の外面側に折り返した折り返し樹脂部(4b)の構成とするとともに、前記樹脂部(4c)を、紙基材の端縁から外方に延出して熱圧着する構成かまたは、紙基材の外面側もしくは内面側に折り返した折り返し樹脂部(4d)の構成とする。
【0087】
このように、容器内面側の胴部材の貼合わせ樹脂部を、基材の外面側もしくは内面側に折り返した折り返し樹脂部(4b)の構成とすることによって、胴部貼り合わせ部の段差が、前記折り返し樹脂部(4b)で埋まり、段差のない構成とすることができるうえ、紙基材(1)と前記樹脂部の端面が紙カップ内部に露出しない構成とすることができる。
【0088】
また、前記樹脂部(4c)を、紙基材の端縁から外方に延出して熱圧着する構成とすることによって、胴部貼り合わせ部の段差が、前記外延樹脂部(4c)で埋まり、段差のない構成とすることができるうえ、紙基材(1)が紙カップ外部に露出しない構成とすることができる。
また、前記樹脂部(4c)を、紙基材の端縁から紙基材の外面側に折り返した折り返し樹脂部(4d)の構成とすることによって、胴部貼り合わせ部の段差が、前記折り返し樹脂部(4d)で埋まり、段差のない構成とすることができるうえ、紙基材(1)とさらに前記樹脂部の端面が紙カップ外部に露出しない構成とすることができる。
【0089】
本発明のレトルト用紙カップには通常フランジ部(16)が設けられており、胴部材(18)の貼合わせ部(15)の上端においては、両側端縁上部にそれぞれ切欠き部(31)(32)を設けた胴部材ブランク(10)を用いることによって、胴部材の上部周縁を外方に1周以上巻き込んで、少なくとも3重構成のフランジ部を形成した際、貼り合わせ部においても、基材が、前記貼り合せ部以外の部分と同様の3重構成の巻き込み状態となる。
【0090】
ここで、この切欠き部(31)(32)の形状を異なる形状とすることにより、少なくとも3重構成のフランジ部(16)の上面を平坦にしても、フランジ部上面に、前記貼り合せ部の位置に生じる段差を解消することができる。
【0091】
本発明のレトルト用紙カップにおいては、前記熱可塑性樹脂層が、ガスバリア層の内側に配置された蒸着層を含む層とする構成となっている。
このような構成とすることにより、紙基材(1)の表面及び端面もガスバリア層と蒸着層によって保護され、
図6に例示したように樹脂部を折り返すことによって、端面のガスバリア層にクラックが入った場合でも遮水性を保持できるので水分浸入による紙基材の劣化が少ないバリア性に優れた紙カップとすることができる。
【0092】
また、ガスバリア層(2a)と蒸着層(41b)を含めた樹脂部(4a)を折り返した樹脂部(4b)の構成とすることで、ガスバリア層(2a)の端面が、カップ内部に露出しない構成となり、内容物がガスバリア層と接触することがないようにすることができ、内容物の保存に悪影響を及ぼさない。
【0093】
このように、折り返し樹脂部(4b)、(4d)を、樹脂部先端が、貼り合わせ部内側基材外面側もしくは貼り合わせ部外側基材外面側もしくは内面側に折り返した構成としていることにより、前記熱可塑性樹脂層が、異なる材料のガスバリア層や保護樹脂層を含む構成であっても、胴部を形成した際、胴部貼り合わせ部(15)において貼り合わせのための一定の樹脂量が確保でき、紙基材(1)の端面の保護ばかりでなく、胴部貼り合わせ
部(15)の紙基材による段差を解消することができる。
同時に、折り返し樹脂部を折り返す際に樹脂部の伸縮によりガスバリア層(2a)の蒸着膜にクラックが入ることがあってもバリア性樹脂層により遮水性の低下を防止することが出来る。
【0094】
特に、胴部貼り合わせ部(15)の外側に接着される紙基材(1)の端部に両面の熱可塑性樹脂層(40)(41)で形成した樹脂部(4c)は、容器外部からの水分等の侵入を防止する必要性が付加的になければ単なる熱圧着で形成したのちに、内側の紙基材(1)の端部に形成された樹脂部(4b)または熱可塑性樹脂層(41)に密着させて固定することによって必要な端部保護が出来、接着部で一定の樹脂量が確保でき、胴部を形成した際、胴部貼り合わせ部(15)の段差を解消することもできる。
【0095】
また、前記熱可塑性樹脂層(40)が、金属やその酸化物等の腐食し易い材料のガスバリア層(2a)を含む構成であっても、紙基材端部の樹脂部が折り返した構成となっていることで、ガスバリア層(2a)の端面が、容器内部に露出しない構成となり、内容物がガスバリア層と接触することがないようにすることができ、内容物の保存に悪影響を及ぼさない。
【0096】
また、前記熱可塑性樹脂層の構成要素は、シーラント層とガスバリア層と保護樹脂層に限られるものではなく、機械的強度の補強のためのフィルムのような中間層や層間の接着促進のためのプライマーコートやコロナ処理等々のされた中間層を内面側に形成してもよい。
【0097】
以上のような本発明のレトルト用紙カップの成型に当たって、紙基材の両面に積層された熱可塑性樹脂層の最外面のシーラント層としてレトルト殺菌に使用する熱に対する耐性を有する範囲で通常のブロック共重合ポリプロピレン樹脂よりも低融点のランダム共重合ポリプロピレン樹脂を用いているために、紙中の水分の蒸発による水蒸気の気泡形成や紙焦げ等の不具合がなく安定した接着を確保することが出来る。
【0098】
なお、このような構造は、テーパー状の紙カップに限定されず、円筒状や角筒状のカップ状紙容器であってもよく、紙基材のエッジプロテクトと表面の機械的耐久性の必要な紙容器に用いることが出来る。
【0099】
本発明のレトルト用紙カップは周知の方法で加飾することが出来る。たとえば、紙基材の表面に通常のグラビアあるいはオフセット等の印刷により、装飾層を設けた基材を胴部ブランクとして用い、紙カップを製造することが出来る。あるいは、成形された紙カップの胴部の表面に、印刷、金属蒸着により装飾層を施したプラスチックフィルムを被覆することも出来る。
【実施例】
【0100】
<
参考例1>
紙基材(坪量260g/m
2)を打ち抜いて、胴部材ブランクとなる領域の両方の端縁に、その端縁を含めて外方の部分に長窓を形成した。
紙基材の片面にランダム共重合ポリプロピレン樹脂層(20μm)をドライラミネート法により貼着し、他の面にアルミナ蒸着層/エチレンービニルアルコール共重合体層(12μm)/ランダム共重合ポリプロピレン樹脂層(20μm)からなる積層フィルムをアルミナ蒸着層面と紙基材層が接するように、ポリブチレンテレフタレート樹脂(20μm)の押出しラミネート法により貼着して前記長窓の位置で内面を接合一体化した積層シートを作成した。
【0101】
そして、紙基材の片側の側端縁上部に、幅が9mm、高さが5mmの三角形の切欠き部、他方の側端部上部に、幅が8mm、高さが6mmの三角形の切欠き部を有する扇形形状(上辺の長さ225mm、下辺の長さ162mm)に打ち抜き、胴部ブランクを形成した。なお、両方の側端縁に設けた樹脂部は、5mm幅で設け、折り返した、2.5mm延出する折り返し樹脂部を有する胴部ブランクを形成した。
【0102】
前記折り返し樹脂部を有する前記ブランクの側端縁を重ね合わせ接合一体化し、胴部貼り合わせ部を設けて胴部を形成した。
次に、前記胴部の下部内面に、円形状で、下向きに起立させた周縁部を有する底部材の周縁部の外面を接合させた。底部材に用いた積層体の層構成は胴部ブランクと同様のものを用いた。
【0103】
カップ成形機を用いて、前記胴部材の下部内面に、底部材の周縁部の外面を接合させたのち、さらにボトムインカール金型の内面に沿って該周縁部を覆うように、前記胴部材の下端縁部を外側から内方に折り曲げ、底部材の周縁部内面に接合させて、ローレットで圧着することにより直径が52mmの環状脚部を形成した。この時に前記胴部材の下端縁部外面を含めてカップ表面には発泡やふくれは見られなかった。
【0104】
また、トップカールユニットにより、上部開口部を1周以上巻き込み、下側半分が一重巻き、上側半分が二重巻きとなる、幅が3mmのフランジ部を有する、開口の直径が69mmの紙カップを成形した。
【0105】
この紙カップは、胴部貼り合わせ部およびフランジ部の上面の、胴部貼り合わせ部に位置する部分に段差がなく成形された。さらに超音波シール装置を用い、上下から加圧圧着し、フランジ上面を平坦にした。
前記、紙カップは、フランジ部の上面を平坦にしたにもかかわらず、フランジ部の上面の胴部貼り合わせ部に位置する部分に段差がなく成形された。
【0106】
<実施例
1>
長窓を形成した紙基材(坪量260g/m
2)の片面にランダム共重合ポリプロピレン樹脂層を貼着する方法としてポリブチレンテレフタレート樹脂(20μm)の押出しラミネート法により貼着した以外は
参考例1と同様にして紙カップを成形した。
【0107】
この紙カップは、胴部貼り合わせ部およびフランジ部の上面の、胴部貼り合わせ部に位置する部分に段差がなく成形された。さらに超音波シール装置を用い、上下から加圧圧着し、フランジ上面を平坦にした。
前記、紙カップは、フランジ部の上面を平坦にしたにもかかわらず、フランジ部の上面の胴部貼り合わせ部に位置する部分に段差がなく成形された。
さらに内容物として水を入れて蓋材でシールしたのち30分間熱湯中で煮沸したが取り出した容器には外観上の異常は見られなかった。
【0108】
<実施例
2>
長窓を形成した紙基材(坪量260g/m
2)の片面にランダム共重合ポリプロピレン樹脂層(30μm)とポリエチレンテレフタレート樹脂(12μm)の積層フィルムを押出しラミネート法により貼着した以外は実施例
1と同様にして紙カップを成形した。
【0109】
この紙カップは、胴部貼り合わせ部およびフランジ部の上面の、胴部貼り合わせ部に位置する部分に段差がなく成形された。さらに超音波シール装置を用い、上下から加圧圧着し、フランジ上面を平坦にした。
前記、紙カップは、フランジ部の上面を平坦にしたにもかかわらず、フランジ部の上面
の胴部貼り合わせ部に位置する部分に段差がなく成形された。
さらに内容物として水を入れて蓋材でシールしたのち30分間熱湯中で煮沸したが取り出した容器には外観上の異常は見られなかった。
【0110】
<比較例1>
長窓を形成した紙基材(坪量260g/m
2)の片面にランダム共重合ポリプロピレン樹脂層に代えてブロック共重合ポリプロピレン樹脂層を貼着した以外は
参考例1と同様にして紙カップを成形した。
この紙カップは、胴部貼り合わせ部の一部に積層体の層間剥離によるふくれが観察された。
【0111】
以上のように、本発明によれば、カップ成型時の熱で接着層が軟化して、紙基材に含まれている水分の水蒸気化に伴い、紙基材とフィルムの層間で剥離する現象を防止して、基材の紙端面のみならず紙表面の被覆の遮水性を含むバリア性を保持できる熱水レトルト処理可能な紙カップを提供することが出来た。