(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レーザ光を透過させるツールベースと、このツールベースに接触して設けられ、ツールベースを透過したレーザ光によって加熱されるボンディングツールとを備え、ボンディングツールにより半導体チップを加熱して基板に接合するようにしたボンディングヘッドにおいて、
上記ボンディングツールの接触面とツールベースの接触面との少なくとも一方に凹部を形成して、該ボンディングツールとツールベースの接触面積を減少させ、
上記凹部は、上記ボンディングツールとツールベースとを接触させた際に密封空間を形成するとともに当該ツールベースに設けた負圧通路に連通するようになっており、上記ボンディングツールは、上記密封空間に導入された負圧によりツールベースに吸着保持されることを特徴とするボンディングヘッド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ボンディングツールは、多数の半導体チップを順次高速で基板に接合するために、ツールベースを透過したレーザ光によって速やかに昇温され、かつレーザ光の照射が停止された際には速やかに冷却されることが望ましい。
しかしながら従来のボンディングヘッドにおいては、ツールベースとボンディングツールとの間で相対的に多くの熱のやり取りがあるため、その結果としてボンディングツールを高速で昇温・冷却させることに一定の限界があった。
本発明はそのような事情に鑑み、より高速でボンディングツールを昇温・冷却させることが可能なボンディングヘッドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、レーザ光を透過させるツールベースと、このツールベースに接触して設けられ、ツールベースを透過したレーザ光によって加熱されるボンディングツールとを備え、ボンディングツールにより半導体チップを加熱して基板に接合するようにしたボンディングヘッドにおいて、
上記ボンディングツールの接触面とツールベースの接触面との少なくとも一方に凹部を形成して、該ボンディングツールとツールベースの接触面積を減少さ
せ、
上記凹部は、上記ボンディングツールとツールベースとを接触させた際に密封空間を形成するとともに当該ツールベースに設けた負圧通路に連通するようになっており、上記ボンディングツールは、上記密封空間に導入された負圧によりツールベースに吸着保持されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
レーザ光によるボンディングツールの加熱時には、該ボンディングツールに吸収された熱が接触面を介してツールベースに奪われるようになるが、その際に接触面積が大きいとツールベースに奪われる熱量も大きくなり、ボンディングツールの速やかな昇温が阻害されるようになる。しかるに本発明においては、上記ボンディングツールの接触面とツールベースの接触面との少なくとも一方に凹部を形成して、該ボンディングツールとツールベースの接触面積を減少させているので、ツールベースに奪われる熱量を従来に比較して低減させることができ、それによってボンディングツールを速やかに昇温させることが可能となる。
他方、ボンディングツールの冷却時においては、上記接触面を介して昇温したツールベースからボンディングツールに熱が伝わることとなり、その際に接触面積が大きいとツールベースからボンディングツールに伝わる熱量も大きくなるので、ボンディングツールの速やかな冷却が阻害されるようになる。しかるに本発明においては、ボンディングツールとツールベースとの接触面積を減少させているので、ツールベースからボンディングツールに伝わる熱量を従来に比較して低減させることができ、それによってボンディングツールの速やかな冷却が可能となる。
これらにより加熱効率、冷却効率を従来に比較して高めることができるので、ボンディング装置のタクトアップを達成することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について本発明を説明すると、
図1において、1は基板2に半導体チップ3を接合するボンディング装置であって、該ボンディング装置1は、上記基板2を支持して水平面内でX−Y方向に移動させる基板ステージ4を備えている。上記基板ステージ4の上方側にボンディングヘッド6を配置してあり、このボンディングヘッド6は昇降加圧機構7によって昇降させることができるようにしてある。
上記ボンディングヘッド6は筒状に形成したハウジング6Aを備えており、このハウジング6Aの下端部にツールベース8を水平に固定し、後に詳述するように該ツールベース8の下面にボンディングツール9を着脱自在に吸着保持すると同時に、該ボンディングツール9の下面に上記半導体チップ3を着脱自在に吸着保持できるようにしてある。
【0009】
上記ハウジング6Aの側面上部には可撓性を有する光ファイバー11の一端部を水平方向となるように接続してあり、この光ファイバー11の他端はレーザ発振器12に接続している。
上記レーザ発振器12から発振されたレーザ光Lは、光ファイバー11を介して上記一端部からハウジング6Aの中心に向けて水平に照射されるとともに、集光レンズ13によって所要の大きさに集光されるようになっている。
そして水平方向に照射されたレーザ光Lは、ハウジング6Aの内部上方中央部に設けた反射ミラー14により鉛直下方に反射され、ツールベース8を透過してボンディングツール9に照射されて該ボンディングツール9を加熱することができるようになっている。
【0010】
上記ツールベース8は強度が高い石英あるいはサファイヤから構成してあり、またボンディングツール9はシリコンカーバイド製の薄い部材から構成してある。
また上記基板ステージ4、レーザ発振器12および昇降加圧機構7の作動は図示しない制御装置によって制御されるようになっており、この制御装置によってレーザ発振器12を作動させることにより、レーザ光Lをボンディングツール9に照射させてこれを加熱することができるようにしてある。
さらに上記レーザ発振器12としては、半導体レーザ、YAGレーザ等の固体レーザ、或いはその他のレーザを用いることができる。
【0011】
図2に拡大して示すように、上記ツールベース8はリング状の取付部材21によって上記ハウジング6Aの下端面に水平に取り付けられている。上記ツールベース8の上面とハウジング6Aの下端面との間に薄板状のマスク22を介在させてあり、このマスク22の中央部にレーザ光Lの通過を許容するアパーチャ22aを形成してある。
上記アパーチャ22aの大きさは、上記ボンディングツール9の大きさに合わせて形成してある。
【0012】
上記ハウジング6Aには図示しない負圧供給手段に接続されたツール吸着用負圧ポート25と、チップ吸着用負圧ポート26とが設けられており、ツール吸着用負圧ポート25から導入される負圧によってボンディングツール9をツールベース8の下面に吸着保持し、またチップ吸着用負圧ポート26から導入される負圧によって半導体チップ3をボンディングツール9の下面に吸着保持することができるようにしてある。
上記ツール吸着用負圧ポート25は、ハウジング6Aに形成した上下方向の貫通孔27およびマスク22に形成した上下方向の貫通孔28を介してマスク22の下面とツールベース8の上面との間に連通しており、さらにマスク22の下面に形成した連通溝29を介してツールベース8に形成した複数のツール吸着孔30のそれぞれに連通している。
ツールベース8に形成した複数のツール吸着孔30は、ボンディングツール9と重合する位置に形成してあり、したがってツール吸着孔30に負圧を導入することによりツールベース8の下面にボンディングツール9を吸着保持することができるようになっている。
【0013】
他方、上記チップ吸着用負圧ポート26は、ハウジング6Aに形成した水平方向の貫通孔33を介してハウジング6Aの内部に連通している。このチップ吸着用負圧ポート26よりも上方位置で、上記反射ミラー14よりも下方位置に、ハウジング6Aの下方内部を密封するガラス板34を設けてあり、このガラス板34によってハウジング6Aに導入された負圧を保持することができるようにしてある。
そしてツールベース8とボンディングツール9とには両者を貫通させてチップ吸着孔35、36を形成してあり、これらチップ吸着孔35、36に負圧を導入することにより、ボンディングツール9の下面に半導体チップ3を吸着保持することができるようにしてある。
上記ツール吸着用負圧ポート25には常時負圧が供給されて上記ツールベース8からボンディングツール9が脱落しないようになっており、他方、チップ吸着用負圧ポート26には半導体チップ3を吸着保持する際に負圧が供給されるようになっている。
【0014】
本実施例においては上記ボンディングツール9とツールベース8とが相互に接触する接触面9A、接触面8Aのうち、ボンディングツール9の接触面9Aに凹部41を形成して、ボンディングツール9とツールベース8の接触面積を減少させている。
上記ボンディングツール9は、
図3、
図4から理解されるように、方形の薄板状に形成してあり、その底壁9aと、四方の側壁9bと、中央のチップ吸着孔36を形成するための支柱9cとを残存させるとともに、さらに側壁9bの内側における四方の補強用支柱9dと、互いに向き合う2つの側壁9bの各中央部に縦方向に形成した補強用リブ9eとを残して、その他の部分を切除して上記凹部41としている。
上記補強用支柱9dや補強用リブ9eは、ボンディングツール9によって半導体チップ3を基板2に圧着した際に、ボンディングツール9の底壁9aが歪むのを抑制することができる。
【0015】
そして上記凹部41は、ボンディングツール9の上面となる接触面9Aをツールベース8の下面となる接触面8Aに密着させた状態では、ツールベース8の接触面8Aによって密封されて、密封空間を形成するようになっている。
上記ツールベース8に形成したツール吸着孔30は、密封空間となる凹部41内に連通して該凹部41内に負圧を導入し、それによってボンディングツール9をツールベース8の下面に吸着保持することができるようになっている。
【0016】
以上の構成において、半導体チップ3をボンディングツール9の下面に吸着保持した状態において、レーザ光Lがツールベース8を透過してボンディングツール9に照射されると、該ボンディングツール9がレーザ光Lによって加熱されて、半導体チップ3およびその下面の複数箇所に配置されたバンプ42(
図1)が加熱されるようになる。
制御装置は、基板ステージ4を作動させて、ボンディングツール9に保持した半導体チップ3と基板2とを位置合わせした状態において、上記昇降加圧機構7によるボンディングヘッド6の下降を開始するようになっている。ボンディングヘッド6を所定の高さまで下降させ、チップと基板とを当接させ所要のボンディング荷重をかけた状態において、レーザ発振器12からレーザ光Lを発振させてボンディングツール9に照射させることにより、ボンディングツール9に吸着保持された半導体チップ3は、加熱されながら基板2へ押圧されて該基板2に接合されるようになる。
このようにしてボンディング作業が終了したら、制御装置からの指令によりチップ吸着孔35、36からの吸引が停止されるので、ボンディングツール9による半導体チップ3の保持状態が解除され、その後、昇降加圧機構7によりボンディングヘッド6が上昇され、次回のボンディングに移行するようになっている。
【0017】
上記ボンディングツール9がレーザ光Lによって加熱される際には、加熱されたボンディングツール9からこれに接触しているツールベース8に熱が逃げることになるが、ボンディングツール9に凹部41を形成して、ボンディングツール8とツールベース8の接触面積を減少させているので、加熱された熱がボンディングツール9からツールベース8に逃げることを良好に防止することができる。
またこの際、上記凹部41によって形成される密封空間には負圧が導入されて真空状態となっているので、この真空の凹部41を良好な断熱手段として利用することができる。
したがってこれにより、ボンディングツール9を速やかに所要の温度まで昇温させることが可能となる。
【0018】
また、ボンディングツール9に対するレーザ光Lの照射を終了した際には、このボンディングツール9は冷却されることになるが、この際には、それ以前にボンディングツール9からツールベース8に逃げた熱によって昇温されたツールベース8から、ボンディングツール9に熱が戻ることとなる。
その際、ボンディングツール9とツールベース8との接触面積が大きいと、ツールベース8からボンディングツールに伝わる熱量も大きくなるので、ボンディングツールの速やかな冷却が阻害されるようになるが、本実施例においてはボンディングツール9とツールベース8との接触面積を減少させているので、ツールベース8からボンディングツール9に伝わる熱量を従来に比較して低減させることが可能となる。
したがってこれにより、ボンディングツール9の速やかな冷却が可能となる。このように本実施例によれば、従来に比較してボンディングツール9の加熱効率、冷却効率を高めることができるので、ボンディング装置1のタクトアップを達成することが可能となる。
【0019】
なお、上記実施例ではボンディングツール9とツールベース8とが相互に接触する接触面9A、接触面8Aのうち、ボンディングツール9の接触面9Aに凹部41を形成している。ツールベース8の接触面8Aに凹部41を形成した場合には、該ツールベース8に対するレーザ光Lの透過性を阻害するおそれがあるので、上記凹部41はボンディングツール9の接触面9Aに形成することが望ましいが、これに限定されるわけではない。ツールベース8の接触面8Aに設けても、あるいは両接触面8A、9Aに設けても
よい。