(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行車体(2)の走行駆動力を遮断するブレーキ装置(J)と、該ブレーキ装置(J)を作動させるブレーキ部材(130)と、該ブレーキ部材(130)の操作の有無を検知するブレーキ検知部材(130a)とを設け、
ブレーキ検知部材(130a)がブレーキ部材(130)の操作を検知していないときは、第1移動規制部材(16b)が作動停止することで副変速レバー(16)の操作を規制する制御構成を有する制御装置(100)を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1には、前記走行操作レバーと副変速レバーを備える苗移植機が開示されている。しかしながら、傾斜地等を移動中に誤操作により走行モードが中立(PTO)モードに切替操作されると、走行駆動力が無くなり、傾斜地を滑り降りてしまい、再度傾斜地を登り直す必要がある。これにより、作業能率が低下する問題がある。
また、植付モードにおける走行の開始位置及び終了位置と、苗の植付装置の軌跡が一致せず、植付開始位置と植付終了位置が乱れて苗の植付精度が低下する問題がある。
【0005】
これに加えて、畦際に苗が寄っていると、畦際作業時に苗を踏み付けてしまい、苗を植え付けたにもかかわらず苗を手作業で植え直さねばならないという問題があると共に、畦際から苗が離れていると、その箇所に手作業で植え直さなければならない問題がある。
また、前記特許文献2には、苗植付部を苗タンクの左右端部まで移動させる操作スイッチを設け、該操作スイッチを操作すると、油圧式無段変速装置が「低速走行域」に入り、植付クラッチが「入」になるなど、苗植付部の左右移動に対応した状態に切り替わる構成が開示されている。
【0006】
しかしながら、苗タンクの左右端部まで苗植付部が動いた後は、油圧式無段変速装置や植付クラッチはそのまま維持されるので、油圧式無段変速装置の「中立」操作や植付クラッチの「切」操作は作業者が行わねばならず、作業者の労力が増大する問題がある。
また、苗植付部の苗タンクの左右方向への移動中であっても苗植付部の下降操作が行えるので、誤操作等により苗植付部が下降してしまうと、苗植付部の下部に大量の泥土が付着して苗の植付精度を著しく低下させることや、接触の衝撃で破損する問題がある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、走行車体が走行中は、副変速レバーを操作しても3つの走行モード(路上走行モード、植付
速走行モード及び中立(PTO)モード)が切り替わらないようにして不測の事態の発生を防ぐ苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の課題は次の解決手段により解決される。
請求項1記載の発明は、エンジン(20)と、エンジン(20)の駆動力に基づき圃場を走行する走行車体(2)と、走行車体(2)上に設けた操縦部(33)と、走行車体(2)の後部に昇降可能に装着した苗植付部(4)と、操縦部(33)に設けた走行車体(2)の前後進、停止及び走行速度を変速する走行操作レバー(17)と、走行操作レバー(17)の操作量に合わせてエンジン(20)の回転数を変速する変速装置(HST)(23)と、
操縦部(33)に設けられ、変速装置(23)からの動力を歯車切替機構により複数段に変速するための副変速レバー(16)と、を設けた苗移植機において、
副変速レバー(16)を比較的高速の路上モード、走行が停止する中立モード、比較的低速の植付モードの3つのモードのうちのいずれかに切り替える第1移動規制部材(16b)と、走行車体(2)の走行中は、副変速レバー(16)の操作を規制する第2移動規制部材(PTOシフタ)(16c)を設けたことを特徴とする苗移植機である。
【0009】
請求項2記載の発明は、走行車体
(2
)の移動状態を検知する走行検知部材(後輪の回転数センサ)(11b)と、副変速レバー(16)の操作位置を検出する副変速レバー位置検知部材(16a)と、走行検知部材(11b)が走行車体(2)の移動状態を検知している状態にあるとき、切替アクチュエータからなる第1移動規制部材(電動モータ16b)(16b)が副変速レバー(16)の移動を規制する制御構成(例えば、レバー(16)の移動軌跡を塞ぐピン等を移動させる制御構成、現在の位置から動かないよう回転し続ける等の制御構成)を有する制御装置(100)を備えていることを特徴とする請求項1記載の苗移植機である。
【0010】
請求項3記載の発明は、走行車体(2)の走行駆動力を遮断するブレーキ装置(J)と、該ブレーキ装置(J)を作動させるブレーキ部材(ブレーキペダル)(130)と、該ブレーキ部材(130)の操作の有無を検知するブレーキ検知部材(130a)とを設け、ブレーキ検知部材(130a)がブレーキ部材(130)の操作を検知していないときは、第1移動規制部材(16b)が作動停止することで副変速レバー(16)の操作を規制する制御構成を有する制御装置(100)を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機である。
【0011】
請求項4記載の発明は、副変速レバー(16)の操作位置を検知する副変速レバー操作位置検知部材(スイッチまたはポテンショメータ)(16a)を設け、副変速レバー(16)の操作位置が「中立モード」位置にあることを副変速レバー位置検知部材(16a)が検知すると、第
1移動規制部材(16b)が作動して副変速レバー(16)を「植付モード」
位置に切り替える制御構成を制御装置(100)が有することを特徴とする請求項2記載の苗移植機である。
【0012】
請求項5記載の発明は、苗植付部(4)の下部に苗を植え付けるための苗植付装置(52)を設け、苗植付装置(52)の作動回数を検知する植付検知部材(52b)を設け、副変速レバー(16)が「植付モード」位置にあり、走行操作レバー(17)を「前進走行」位置にすると、走行車体(2)を前進走行を開始した直後に副変速レバー(16)を「中立モード」位置に切り替えて走行停止し、植付検知部材(52b)が所定回数(例:1回)の
苗の植付を検知する(前進開始前に一株分だけ走行して停止させる)と、切替アクチュエータ
からなる第1移動規制部材(16b)が作動して副変速レバー(16)を「植付モード」位置に戻して前進走行を再開する制御構成を制御装置(100)が有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の苗移植機である。
【0013】
請求項6記載の発明は、走行車体(2)を旋回操作する操舵部材(ハンドル)(34)と、操舵部材(34)を旋回操作すると苗植付部(4)を上昇させる自動上昇機構(オートリフト機構)と、自動上昇機構が作動すると、切替アクチュエータ
からなる第1移動規制部材(16b)が作動して
(畦際などで)旋回する直前に副変速レバー(16)を「中立モード」
位置に切り替え、植付検知部材(52b)が所定回数(例:1回)の苗の植付を検知する
と(このときは機体は未だ旋回走行を開始していない)副変速レバー(16)を「植付モード」
位置に戻す制御構成を制御装置(100)が有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の苗移植機である。
【0014】
請求項7記載の発明は、植付クラッチの入切を切り替える植付切替アクチュエータ(植付切替モータ)(54)と苗植付部(4)の構成部材である苗
を載置している苗載台(51)が、苗植付部(4)の左右端部まで移動したことを検知する左右の端部検知部材(端部到達スイッチ)(51d)と苗載台(51)を左右端部まで移動させる端寄せ操作部材(端寄せスイッチ)(51e)とを設け、端寄せ操作部材(51e)を操作すると、第1移動規制部材(切替アクチュエータ)(16b)が副変速レバー(16)を「中立モード」
位置に切り替え、変速アクチュエータ(17
b)が
変速装置(23)であるHST(23)のトラニオン軸の開度を小さくする側(低速域)に切り替え、植付切替アクチュエータ(植付切替モータ)(54)が植付クラッチを「入状態」に切り替える制御構成と、端部検知部材(端部到達スイッチ)(51d)の左右どちらか一方が、苗植付部(4)もしくは苗載台(51)の左側または右側端部への移動を検知すると、変速アクチュエータ(17
b)がHST(23)を「中
立」に切り替え、植付切替アクチュエータ(植付切替モータ)(54)が植付クラッチを「切状態」に切り替える制御構成を制御装置(100)が有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の苗移植機である。
【0015】
請求項8記載の発明は、苗植付部(4)が所定高さ以上に上昇していることを検知する植付高さ検知部材(昇降リンクセンサ(47))と、植付高さ検知部材(昇降リンクセンサ)(47)が、苗植付部(4)が所定高さ以上に上昇していることを検知状態であるとき、端寄せ操作部材(端寄せスイッチ)(51e)の操作を受け付け、端寄せ操作部材(端寄せスイッチ)(51e)を操作してから端部検知部材(端部到達スイッチ)(51d)が苗植付部(4)の左右端移動を検知するまで、苗植付部(4)の下降操作を行わない(昇降油圧シリンダ46の下降方向への移動を促す送油を行わない)制御構成を制御装置(100)が有することを特徴とする請求項7に記載の苗移植機である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、走行車体2が走行中は、副変速レバー16を操作しても3つの走行モード(路上モード、植
付モード及び中立(PTO)モード)が切り替わらないことにより、オペレータの足等が副変速レバー16に接触して副変速レバー16が操作されてしまい、走行車体2が急停止したり急減速したりすることを防止できるので、副変速レバー16を元に戻して走行速度を調節し直す必要が無く、移動能率が従来技術より向上する。
【0017】
また、圃場内で植付作業中に、その場に停止して苗の植付を繰り返すことが防止されるので、無駄になる苗が減少し、作業コストの低減が図られると共に、走行車体が急加速することを防止できるので、苗の植付間隔や植付姿勢が乱れることが防止され、苗の植付精度が従来技術より向上する。
【0018】
さらに、圃場の出入口など、傾斜地を移動中に、オペレータの足が誤って副変速レバー16を踏んで中立モードになると、走行車体2が傾斜地を滑り降りてしまい、移動に手間が掛かることがあるが、走行車体2の走行中は副変速レバー16の操作が第2移動規制部材16cで規制されているので、中立モードになることはなく、走行車体2が傾斜地を滑り降りることがないため、従来技術より作業能率が向上する。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、走行検知部材(後輪の回転数センサ)11bが走行車体2の移動状態を検知している間は、切替アクチュエータ16bが副変速レバー16の移動を規制する構成としたことにより、副変速レバー16の規制が必要なときに自動的に規制状態とすることができるので、事前のセッティングが不要となり、作業能率が従来技術より向上する。
また、走行中に副変速レバー16が切り替わることが原因で走行速度の著しい変化や苗の植付姿勢の変化が防止されるので、作業能率や植付精度が従来技術より向上する。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、ブレーキ部材130を操作していないと副変速レバー16の操作が受け付けられないことにより、操縦者は走行モードの切替を意識的に行う必要があるので、走行モードの切替操作を誤ることが防止され、切替作用に要する時間が短縮される。
【0021】
傾斜地等で苗植付部4の左右位置調節を行うために副変速レバー16を「中立モード」に切り替える際にブレーキ部材130を確実に操作することができるので、ブレーキ装置Jが効いていない状態で走行駆動力が無くなり、傾斜地を滑り降りることが防止され、圃場の出入口近くの苗を押し潰すことが防止されると共に、圃場の出入口を登り直す必要が無くなり、作業時間が短縮される。
【0022】
請求項4記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、傾斜地等で副変速レバー16の操作位置を「中立モード」に切り替える際、走行車体2が傾斜によって滑り降りることがあると、副変速レバー16の操作位置を「植付モード」に切り替えられることにより、自動的に低速走行用の走行駆動力を得られるので、傾斜地の途中で停止することができ、滑り降りた先で苗を押し潰すことが防止されると共に、圃場の出入口を登り直す作業が不要となる。
【0023】
請求項5記載の発明によれば、請求項1から4のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、副変速レバー16が「中立モード」であると走行車体2は停止しており、そのとき、すなわち走行車体の植付走行用の前進開始前に一株分だけ走行して停止させ、その後すぐに副変速レバー16を「植付モード」位置に戻すことで走行車体2は前進を開始する。そのため、植付開始位置が作業条によって異なることが防止され、畦際での植付作業時に、畦際にはみ出した苗を踏み潰すことも防止され、苗の無駄がなくなる。
また、上記構成で畦際に苗を植えた際に植付可能な区域が残ることがなく、作業者が手作業で苗を植え付ける作業が不要となり、作業者の労力が軽減される。
【0024】
請求項6記載の発明によれば、請求項1から5のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、旋回直前に一度停止して所定回数(例、1回)の苗を植え付けることにより、植付終了位置を揃えることができるので、畦際での植付作業時に、畦際にはみ出した苗を踏み潰すことが防止され、苗の無駄がなくなる。
また、畦際に苗を植えた際に植付可能な区域が残ることがなく、作業者が手作業で苗を植え付ける作業が不要となり、作業者の労力が軽減される。
【0025】
請求項7記載の発明によれば、請求項1から6のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、端寄せ操作部材(端寄せスイッチ)51eを操作すると、自動的に苗植付部4の左右移動が可能な条件に切り替わることにより、作業者の操作工数が大幅に減少するので、作業能率が向上する。
苗植付部4が左右どちらかの端まで寄ったことを端部検知部材(端部到達スイッチ)51dが検知すると、苗植付部4の左右移動が停止し、植付クラッチが「切状態」になると共に、HST23が中立状態になり、作業者の操作工数が大幅に減少するので、作業能率が向上する。
【0026】
請求項8記載の発明によれば、請求項7に記載の発明の効果に加えて、苗植付部4が所定高さまで上昇していないと端寄せ操作部材(端寄せスイッチ)(51e)の操作を受け付けないことにより、苗植付部4の下部側が圃場に接触したまま左右方向に移動することを防止できるので、苗植付部4が破損することが防止される。
また、苗植付部4の下部に泥が付着し、苗が正常に植え付けられなくなることを防止できるので、苗の植付精度が向上すると共に、苗の植え付けられていない場所に作業者が苗を植える作業が不要となり、作業者の労力が軽減される。
さらに、端寄せ操作部材(端寄せスイッチ)(51e)を操作してから端部検知部材(端部到達スイッチ(51d)が検知状態となるまでは、苗植付部4を下降させないことにより、苗植付部4の左右移動中に誤操作により苗植付部4が下降し、下部側が破損することが防止される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び
図2は作業車両の一実施例形態である乗用型苗移植機の側面図及び平面図である。この乗用型苗移植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して作業部としての苗植付部4が昇降可能に装着されている。
【0029】
この乗用型苗移植機1は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸10a,10aに左右前輪10,10が各々取り付けられている。
また、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0030】
さらに、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸(図示せず)を支点にして後輪ケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ケース18,18から外向きに突出する後輪車軸11a,11aに後輪11,11が取り付けられている。
【0031】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、静油圧式無段変速装置(HST)23などを介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ミッションケース12内の主変速装置及び副変速装置により変速された後、走行動力と外部取り出し軸に分離して取り出される。
【0032】
エンジン20からHST23を介して伝達される走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13を経て前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ケース18,18を経て後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース(図示せず)に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動される。
【0033】
エンジン20の上部には操縦席31が設置された操縦部33があり、該操縦部33にはHST23を操作して走行車体2の前後進、停止及び走行速度を変速する走行操作レバー(HST操作レバー)17と走行車体2の走行速度を歯車切替機構により複数段に変速するための副変速レバー16(
図1)が配置されている。
【0034】
操縦席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。フロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は多数の穴が設けられており(
図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリアステップ36となっている。
【0035】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38を設けても良い。予備苗載台38は機体に支持された支持枠体49の頂部を前後2つに分岐させた分岐支持枠体49p1,49p2を設け、該分岐支持枠体49p1,49p2に第3予備苗載台38cと第2、第3移動リンク部材39b,39cを取り付け、第2、第3移動リンク部材39b,39cで第2予備苗載台38bを支持し、さらに第1、第2移動リンク部材39a,39bと第2予備苗載台38bで第1予備苗載台38aを支持している。第1、第2、第3移動リンク部材39a,39b,39cは分岐支持枠体49p1に取り付けられた第2移動リンク部材39bの回動中心軸に設けられた図示しないとモータからなる回動機構70で回動して、第1、第2、第3予備苗載台38a,38b,38cを前後ほぼ同一平面状に展開する展開状態と上下に段状に配置される積層状態に変更することができる。
【0036】
また、昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。
【0037】
そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降用油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0038】
また、苗載せ台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65bと支持ローラ65aからなる枠体構造物65をレール状にして左右方向にスライドする構成である。
【0039】
左右一対の苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a,…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a,…に供給すると苗送りベルト51b,…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a,…に供給された苗を圃場に植え付ける苗植付爪52aを備えた苗植付装置52,…、次工程における機体の進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ184等を備えている。なお、機体の前方にも左右一対のサイドマーカ75を備えている。このサイドマーカ75は、圃場面より上方に位置しており、線は形成しない。これは、機体から90度回動させ、隣接条に植え付けた苗の上方を通過するように機体を操縦すると、隣接条に合わせた苗の植付を行えるという機能を有するマーカである。線引きマーカ184で線を形成しても、すぐに消えてしまうような土質(土の粒子が細かく、形成した線がすぐに埋まる等)の圃場で使用する。また、苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。
【0040】
これらフロート55,56,56を、圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52,…により苗が植え付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動がフロート傾斜角センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降用油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0041】
苗植付部4には整地装置の一例であるロータ27(27a,27b)が取り付けられている。整地ロータ27a,27bの後ろ上方には、ロータカバー37を設け、フロート55,56上に泥がかからないようにしている。
【0042】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61,…によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62,…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず),…まで導き、施肥ガイド,…の前側に設けた作溝体64(
図1),…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62に吹き込まれ、施肥ホース62内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0043】
図3には、
図1の乗用型苗移植機1の伝動機構図を示し、
図4には副変速装置の路上走行モードと中立モードと植付モードの爪クラッチ切替機構の側面図を示し、
図5には前輪駆動部の副変速装置の切替機構の概略図を示し、
図6には、
図1に示す乗用型苗移植機1のミッションケース12のサイドクラッチとサイドブレーキ部分の断面図を示し、
図7には、
図6の一部拡大図を示す。
図8にはブレーキペダルの作動部分の平面図を示し、
図9には本苗移植機の主要な制御ブロックを示す。
【0044】
エンジン20の回転動力は油圧式無段変速装置(HST)23から主変速装置(図示せず)、副変速装置(図示せず)等の変速装置に伝達される。
そして、ミッションケース12内の後部には、リアアクスル105,105(
図3)とフロントアクスル107,107が支承されている。
【0045】
HST23の出力軸に軸着された出力ギアBに副変速ギア機構Cを構成する中立位置にあるギアDoが常時噛み合い、該ギアDoが
図5に示す電動モータ16bと電動モータ16bで作動するシフタ16c(
図4)により、ギアDoからの駆動力が副変速機構Cの伝動ギアDa(路上走行速)又は伝動ギアDb(植付速)側にシフトすることでフロントアクスル107,107に軸着された入力ギアEa,Ebのいずれかと伝動ギアDa(路上走行速)又は伝動ギアDb(植付速)が噛み合うことにより、フロントアクスル107,107を介して前輪車軸10a,10aが回転し、前輪10,10が回転する。
【0046】
そして、フロントアクスル107,107には左右の出力ベベルが軸着されており、この出力ベベルと噛み合う入力ベベルを、サイドクラッチ軸76,76に軸着している。さらに、サイドクラッチ軸76,76の後端部のリア出力軸109,109を左右の後輪入力軸103,103の前端部に接続している。また、後輪駆動軸103,103の後端部には後部出力ベベルが装着されており、この後部出力ベベルに、リアアクスル105,105の一側に装着した後部入力ベベルを噛み合わせ、他側に出力スパーを装着し、この出力スパーに後輪車軸11a,11aに装着した入力スパーを噛み合わせることにより、後輪11,11に駆動力が伝動される。
【0047】
サイドクラッチ軸76,76からはリア出力軸109,109にサイドクラッチI,Iを介して伝動される。サイドクラッチIは多板クラッチであり、摩擦板111を備えている。サイドクラッチI,IとサイドブレーキJ,Jの入り切り操作は、フロアステップ35上に設けた左右のブレーキペダル130(
図8)によって行う。
【0048】
ブレーキペダル130を踏んでいない通常の走行時には、設定された走行速度で機体は走行する。
そして、ブレーキペダル130を踏むとブレーキペダル130に連結するブレーキアーム120が作動する。なお、ブレーキアーム120(
図6)は図
8に示すブレーキペダルアーム132とは異なる部材で、ブレーキペダル130から位置が離れている。ブレーキペダル130からブレーキアーム120までの連結機構は複雑なため図示を省略している。
【0049】
ブレーキペダル130を踏み込んで、
図6に示すようにブレーキアーム120がA段階まで操作され機体前側に回動すると半月状のブレーキアーム軸122も回転してブレーキアーム軸122の平面部がシム115の左右一側を押してX方向(機体後側)に移動させることで(基準点Oから点線A1まで移動)、サイドクラッチIが切れる。サイドクラッチIが切れることで後輪11に駆動力が伝わらなくなり、左右どちらか一方のサイドクラッチIだけが切りであれば旋回走行となり、両方のサイドクラッチI,Iが同時に切りであれば慣性駆動の後に停止する。乗用型苗移植機1の場合は、低速で走行するため、比較的短い距離で止まるが、このときサイドブレーキJは切りであるため、サイドブレーキJによる制動作用はない。
【0050】
更にブレーキペダル130を踏み込んでブレーキアーム120がB段階まで操作されると、クラッチ側のシム115が点線B1まで移動して、ブレーキ側のシム117が
ブレーキ118を押すことでサイドブレーキJが掛かる。このときサイドクラッチIは切り、サイドブレーキJは入りとなって、後輪11の回転が強制的に停止することから、左右どちらか一方のサイドブレーキJを操作した場合は、より機体の急旋回が可能となり、両方のサイドブレーキJ,Jが同時に入りであればほぼその場で停止する。
【0051】
図7に示すように、ブレーキペダル130を踏むと、ブレーキアーム120(
図6)の円弧面が第2シム115に当接し、ばね113,113はクラッチケース116の機体後方(矢印X方向)への移動に伴い縮められ、ばね113,113が押圧する第1シム114はリア出力軸109に固着しているのではなく、装着しているだけであるが、ばね113,113による第1シム114の押圧力では第1シム114を機体後方に移動させる程ではない。
【0052】
第1シム114の押圧力でクラッチケース116が後方移動する際、クラッチケース116の後部側に内装されているベアリング112を介して設けた第3シム117がクラッチケース116と共に矢印X方向へ後退することにより、クラッチ111の摩擦板同士を押さえつける力が弱まり、伝動力が弱くなくなり、ついにはクラッチ111の摩擦板は駆動力の伝動が不能になる。
第3シム117がさらに、クラッチケース116と共に後退すると、第3シム117はブレーキ118を構成する摩擦板同士が接近してついにはブレーキ118が作動する。
【0053】
ブレーキペダル130の操作を止めると、ブレーキアーム120が回転してブレーキアーム120の円弧面が第2シム115から離れるので、第2シム115やクラッチケース116は機体前側(矢印Xの反対側)に移動可能になる。このとき、第1シム114に接触する圧縮されたばね113はクラッチケース116を内側から機体前側に向かって押圧するので、クラッチケース116が前方に移動する。該クラッチケース116の前方移動に伴い、第3シム117によるブレーキ118の摩擦板の押圧が解除され、ブレーキ118が効かない状態になり、その後クラッチ111の摩擦板が第3シム117を取り付けているベアリング112によって押圧され、クラッチ111が駆動力を伝動可能な状態になる。
【0057】
図8(a)には、左右のブレーキペダル130,130の平面図(操縦席31に座って上から見た場合の図)を示す。また、
図8(b)及び
図8(c)には
図8(a)の矢印S−S線矢視図を示し、
図9には、乗用型苗移植機1の制御装置(CPU)100のブロック図を示す。なお、
図8(c)の停止位置とはブレーキペダル130を踏んで車両が停止するときのペダル130の位置であるが、この図では右側のブレーキペダル130が踏まれており、左側のブレーキペダル130を踏んで左右位置を合わせる必要がある状態を示している。
【0058】
そして、本実施形態の乗用型苗移植機1は、左右のブレーキペダル130を連結して連動させる連結状態と左右のブレーキペダル130が連動しない非連結状態とに切り替える切替装置140を設けている。
この切替装置140は左右のブレーキペダル130,130に設けた電磁石142によって構成されており、具体的には電磁石142は左右のブレーキペダルアーム132,132のいずれかに、ピン135などの固定具によって取り付けられている。
【0059】
制御装置(CPU)100は、電磁石142に通電して左右のブレーキペダル130,130が隣り合って連動する連結状態にする一方、電磁石142への通電を停止して左右のブレーキペダル130,130が離れて連動しない非連結状態にする電磁石切替機能(左右のブレーキペダル130,130が互いに接近していることを検出する近接センサ133,133が、近接状態を検知するとバッテリ(図示省略)から電磁石142に電気を通電する信号が制御装置100から送られ、該電磁石142が磁力を帯びる構成による)を有する。
【0060】
図8に示すように、左のブレーキペダルアーム132の右側に電磁石142を取り付ける。ピン135の先端部は左のブレーキペダルアーム132を突き抜けて電磁石142に嵌入している。制御装置100によって電磁石142に通電されると、電磁石142は右のブレーキペダルアーム132に接着する。図示例では、左のブレーキペダルアーム132に電磁石142を取り付けた場合を示しているが、右のブレーキペダルアーム132に取り付けても良い。
【0061】
通常、左右のブレーキペダル130,130はプレートなどのブレーキ連結部材によって連結されており、作業者がプレートを取り付けたり外したりすることによって左右のブレーキペダル130,130を連結状態又は非連結状態にしている。しかし、作業者がこのプレートの操作を忘れることがある。
プレートを連結する操作を忘れていた場合に、乗用型苗移植機1の路上走行(非作業走行)時において、左右一方のブレーキペダル130を踏むと(片ブレーキとも言う)、機体が左又は右方向に急旋回する場合があり、作業者の意図しない方向に機体が走行してしまうという問題がある。
【0062】
また、圃場で作業を行う際にブレーキペダル130の連結を解除する(非連結とする)ことを忘れていると、乗用型苗移植機1が圃場端で旋回する際に左右のブレーキペダル130,130を踏むと走行が停止してしまい、作業者が意図した旋回動作ができず、圃場端を荒らしてしまったり、旋回の終了位置が作業者の意図した位置から離れてしまったりするという問題がある。
【0063】
しかし、本構成によれば、左右のブレーキペダル130,130の切替装置140が電磁石142により構成されることから、制御装置100からの電磁石142への電気信号(左右のブレーキペダル130,130に設ける、左右のブレーキペダル130,130が互いに接近していることを検知する近接センサ133,133が、近接状態を検知するとバッテリ(図示省略)から電磁石142に電気を通電する信号が制御装置100から送られ、該電磁石142が磁力を帯びる構成)で左右のブレーキペダル130,130の連結及び非連結を切り替えることができるので、左右のブレーキペダル130,130の連結操作が自動化され、作業能率が向上する。
【0064】
したがって、作業者に負担を掛けないで、左右のブレーキペダル130,130の連結と非連結を容易に切り替え可能であり、作業条件に合わせた操作が行える。
なお、作業車両の例としては、トラクタ(耕耘機)、管理機(防除機、薬剤散布機)、田植機などが挙げられる。作業走行や路上走行に適した左右のブレーキペダル130,130の連結と非連結の切り替えが自動的に、且つ容易に行うことができる。
【0065】
操縦席31の近傍には、副変速レバー16(
図2)が設けられ、副変速レバー16はレバーガイド(図示せず)に沿って回動操作することにより、
図5に示す電動モータ16bとシフタ16cが作動し、副変速装置が「路上走行速」、「中立」、「植付速」のいずれかに手動で切り換わるように構成されている。なお、路上走行速、高速、低速の順に速度が低下する。そして、副変速レバー16の基部側に設けた副変速レバーセンサ(レバー16の操作角度を検出するポテンショメータなど)16a(
図9)によって副変速レバー16の操作位置を検出することができる。
例えば、副変速レバーセンサ16aにより検出される操作位置が高速側の路上走行速の場合に、切替装置140を作動して左右のブレーキペダル130,130を連結状態にする副変速レバー切替機能を制御装置100に設けると良い。
【0066】
走行操作レバー(HST操作レバー)17を操作すると、その操作量に対応した走行操作レバーセンサ17a(
図9にのみ示す)の値に応じて変速モータ17b(
図9にのみ示す)が作動してHST23のトラニオン軸を作動させる。そして 副変速レバー16で操作される爪クラッチ式の副変速装置の全体構成図を
図3,
図5に示し、
図4には爪クラッチの詳細図を示す。
図4に示す爪クラッチ機構は副変速軸77上に路上走行用ギアDaと植付速走行用ギアDbとを設け、それぞれのギアDa,Dbが中立ギアDoと噛合する構成になっている。前記2つのギアDa,Dbの間にシフタを配置している。クラッチシフタ16cは電動モータ16b(
図5)により、
図4に示す副変速軸77上に左右に移動させることで路上走行用ギアDaと植付速走行用ギアDbを係合させて、HST23からの動力を出力ギアBを経由して副変速装置に伝達し、副変速装置の出力をそれぞれ植付速モードと路上走行速モードとすることができる。また、クラッチシフタ16cを路上走行用ギアDaと植付速走行用ギアDbと係合させない位置の副変速軸77上に移動させることで中立モードとすることができる。
【0067】
このように走行車体2の走行モードを「路上モード」、「植付速モード」及び「中立(PTO)モード」への切り替えは副変速レバー16を操作して、電動モータ16bによりシフタ16cを作動させて中立ギアDoをギアDa,Dbと噛合させて苗移植機の走行速度を決める。
【0068】
苗移植機が走行中は、副変速レバー16を操作しても3つの走行モード(路上モード、植付速モード及び中立(PTO)モードが切り替わらないことにより、オペレータの足等が接触して副変速レバー16が操作され、走行車体2が急停止したり急減速したりすることを防止できるので、副変速レバー16を元に戻して走行速度を調節し直す必要が無く、移動能率が従来技術より向上する。上記苗移植機が走行中であることは、後輪の回転数センサ11bで後輪の回転数を制御装置100が検知して識別可能となる。
【0069】
圃場内で植付作業中に、その場に停止して苗の植付を繰り返すことが防止されるので、無駄になる苗が減少し、作業コストの低減が図られると共に、走行車体が急加速することを防止できるので、苗の植付間隔や植付姿勢が乱れることが防止され、苗の植付精度が従来技術より向上する。
【0070】
圃場の出入口など、傾斜地を苗移植機が移動中に、オペレータの足が誤って副変速レバー16を踏んで中立モードになると、苗移植機が傾斜地を滑り降りてしまい、移動に手間が掛かることがあるが、苗移植機の走行中は副変速レバー16の操作が第2移動規制部材(PTOシフタ)16cで規制されているので、中立モードになることはなく、苗移植機2が傾斜地を滑り降りることがなく、従来技術より作業能率が向上する。
【0071】
また、苗移植機の移動状態を検知する後輪11の回転数センサ11bが苗移植機の移動状態を検知しているときには、副変速レバー16の移動を規制する(例えば副変速装置が「路上モード」又は「植付速モード」にあると、そのまま「路上モード」又は「植付速モード」の状態に保つ)ように電動モータ16bを作動させる。
副変速レバー16の移動を規制するために、例えばレバー16の移動軌跡を塞ぐピン等を移動させるか又は現在の位置から動かないよう電動モータ16bを回転し続ける。
【0072】
このように、走行操作レバーセンサ17aが苗移植機の移動状態を検知している間は、電動モータ16bが副変速レバー16の移動を規制する構成としたことにより、副変速レバー16の規制が必要なときに自動的に規制状態とすることができるので、事前のセッティングが不要となり、作業能率が従来技術より向上する。
また、苗移植機が走行中に副変速レバー16が切り替わり、走行モードが切り替わり、それが原因で走行速度の著しい変化や苗の植付姿勢の変化が防止されるので、作業能率や植付精度が従来技術より向上する。
【0073】
本実施例の苗移植機の走行駆動力を遮断するサイドブレーキJ(
図7)を作動させるブレーキペダル130の操作の有無を検知するブレーキセンサ130aを設け、ブレーキセンサ130aがブレーキペダル130の操作を検知していないときは、電動モータ16bが副変速レバー16の操作を規制する制御構成を制御装置100に設けている。
【0074】
そのため、ブレーキペダル130を操作していないと副変速レバー16の操作が受け付けられず、作業者は走行モードの切替を意識的に行う必要があるので、走行モードの切替操作を誤ることが防止され、切替作業に要する時間が短縮される。また、傾斜地等で苗植付部4の左右位置調節を行うために副変速レバー16を「中立モード」に切り替える際にブレーキペダル130を確実に操作することができるので、サイドブレーキJが効いていない状態で走行駆動力が無くなり、傾斜地を滑り降りることが防止され、圃場の出入口近くの苗を押し潰すことが防止されると共に、圃場の出入口を登り直す必要が無くなり、作業時間が短縮される。
【0075】
副変速レバー16の操作位置を検知する副変速レバーセンサ16aを設け、副変速レバー16の操作位置が「中立モード」位置にあることを副変速レバーセンサ16aが検知すると、電動モータ16bが作動して副変速レバー16を「植付モード」に切り替える制御構成を制御装置100が備えている。
そのため、傾斜地等で副変速レバー16の操作位置を「中立モード」に切り替える際、走行車体2が傾斜によって滑り降りることがあると、副変速レバー16の操作位置を「植付モード」に切り替えられるので、自動的に低速走行用の走行駆動力を得られ、傾斜地の途中で停止することができ、滑り降りた先で苗を押し潰すことが防止されると共に、圃場の出入口を登り直す作業が不要となる。
【0076】
苗植付装置52の作動回数を検知する作動回数センサ52bを設け、副変速レバー16が「植付モード」位置にあり、走行操作レバー17を「前進走行」位置にすると、苗移植機を前進走行開始前に、電動モータ16bが自動的に作動して副変速レバー16を「中立モード」位置に切り替え、前記作動回数センサ52bが所定回数(例:1回)の苗植付を検知すると電動モータ16bが作動して副変速レバー16を「植付モード」位置に戻す制御構成を制御装置100が有する。
【0077】
こうして、副変速レバー16が「中立モード」にあると苗移植機は停止しており、そのとき、すなわち植付走行開始前に1回苗を植えてから、副変速レバー16を「植付モード」位置に戻すことで苗移植機は前進を開始する。そのため、植付開始位置が作業条によって異なることが防止され、畦際での植付作業時に、畦際にはみ出した苗を踏み潰すことも防止され、苗の無駄がなくなる。また、上記構成で畦際に苗を植えた際に植付可能な区域が残ることがなく、作業者が手作業で苗を植え付ける作業が不要となり、作業者の労力が軽減される。
【0078】
また、ハンドル34を旋回操作すると苗植付部4を上昇させる自動上昇機構と該自動上昇機構が作動すると、
電動モータ16bが作動して副変速レバー16を「中立モード」に切り替え、作動回数センサ52bが所定回数(例:1回)の苗の植付を検知すると副変速レバー16を「植付モード」に戻す制御構成を制御装置100が備えることもできる。
この場合は、旋回直前に一度停止して所定回数(1回)の苗を植え付けることにより、植付終了位置を揃えることができるので、畦際での植付作業時に、畦際にはみ出した苗を踏み潰すことが防止され、苗の無駄がなくなる。また、畦際に苗を植えた際に植付可能な区域が残ることがなく、作業者が手作業で苗を植え付ける作業が不要となり、作業者の労力が軽減される。
【0079】
植付クラッチ(図示せず)の入切を切り替える植付切替モータ54と苗植付部4の左右端部まで苗植付部4の苗載台51が左右に移動したことを検知する左右の端部到達スイッチ51dと苗植付部4の苗載台51を左右端部まで移動させる端寄せスイッチ51eとを設け、端寄せスイッチ51eを操作すると、電動モータ16bが副変速レバー16を「中立モード」に切り替え、走行変速レバー17の変速モータ17bがHST23を低速側に切り替え(この操作は、変速モータ17bがHST23のトラニオン軸開度を変更することで行う。)、植付切替モータ54が植付クラッチを「入り状態」に切り替える制御構成と、端部到達スイッチ51dの左右どちらか一方が苗載台51を検知すると、変速モータ17bがHST23を「中立」に切り替え、植付切替モータ54が植付クラッチを「切状態」に切り替える制御構成を制御装置(100)が有している。
【0080】
そのため、端寄せスイッチ51eを操作すると、自動的に苗植付部4の左右移動が可能な条件に切り替わることにより、作業者の操作工数が大幅に減少するので、作業能率が向上する。また、苗植付部4が左右どちらかの端まで寄ったことを端部到達スイッチ51dが検知すると、苗植付部4の左右移動が停止し、植付クラッチが「切状態」になると共に、HST23が中立状態になるので、作業者の操作工数が大幅に減少するので、作業能率が向上する。
【0081】
苗植付部4が所定高さ以上に上昇していることを検知する昇降リンクセンサ47を設け、該昇降リンクセンサ47が検知状態であるときに端寄せスイッチ51eの操作を受け付け、端寄せスイッチ51eを操作してから端部到達スイッチ51dが苗植付部4の左右端移動を検知するまで、苗植付部4の下降操作を行わないように油圧バルブ(図示せず)に昇降油圧シリンダ46の下降方向の送油を行わない制御構成を制御装置100が有する。
【0082】
このため、苗植付部4が所定高さまで上昇していないと端寄せスイッチ51eの操作を受け付けないことにより、苗植付部4の下部側が圃場に接触したまま左右方向に移動することを防止できるので、苗植付部4が破損することが防止される。また、苗植付部4の下部に泥が付着し、苗が正常に植え付けられなくなることを防止できるので、苗の植付精度が向上すると共に、苗の植え付けられていない場所に作業者が苗を植える作業が不要となり、作業者の労力が軽減される。
【0083】
端寄せスイッチ51eを操作してから端部到達スイッチ51dが検知状態となるまでは、苗植付部4を下降させないことにより、苗植付部4の左右移動中に誤操作により苗植付部4が下降し、下部側が破損することが防止される。
【0084】
苗植付部4が上昇中はエンジン20をストップさせて燃費節約を図るための構成を以下に述べる。
従来から苗移植機では、旋回中に自動的に苗植付部4を上昇させる制御を実行しているが、その際に走行操作レバー17が中立位置にあることを走行操作レバーセンサ17aが検知すると、その間に通常苗や肥料を苗移植機に補給する作業を行っている場合が多く、そのような状態になるとエンジン20の停止信号を制御装置100がエンジン20のスロットルモータに送ることでエンジン20をストップさせる。
【0085】
フローチャートを
図10に示す。すなわち、ハンドル34の旋回連動スイッチ34a(予め設定されたハンドル34の旋回角度になると作動するスイッチ)がオンとなり、苗植付部4が所定角度以上に上昇して苗植付部昇降リンクセンサ47がオンとなり、さらに走行操作レバーセンサ17aが走行操作レバー17の中立位置を検知するとエンジン20を停止させる。
【0086】
また、苗や肥料を苗移植機に補給する作業等が終了して苗移植機を走行させる場合には走行操作レバー17が中立位置にある限り、エンジン20が始動可能であるので、走行操作レバー17が中立位置でエンジン20を始動させて走行が可能になる。
【0087】
また、苗植付部4の苗タンク51の苗送りベルト51bに隣接した位置にある苗減少スイッチ51cが苗が減少したことを検知し、さらに操縦席30の下側に配置されているシート感圧スイッチ31aが操縦者が操縦席30から離れたことを検知すると、制御装置100はエンジン20を停止させる。フローチャートを
図11に示す。これも燃費節約のためである。
【0088】
また施肥タンク60内に肥料減少スイッチ60aを配置しておき、苗減少スイッチ51cの代わりに肥料減少スイッチ60aでの検知結果を用いて
図11のフローチャートに示すエンジン20の停止を行う構成にしても良い。
苗や肥料を苗移植機に補給する作業等が終了して苗移植機を走行させる場合には走行操作レバー17が中立位置にある限り、エンジン20が始動可能であるので、走行操作レバー17が中立位置でエンジン20を始動させて走行が可能になる。
【0089】
畦際での苗植付作業は一般に圃場が荒れているので、苗移植機の走行抵抗が通常時より大きくなる。そこで畦際での苗植付作業時には、走行トルク(走行パワー)を確保するために、エンジン20回転数を下げて低速段での走行を行いながら、EFi (電子制御式燃料噴射装置)付きのエンジンが燃料噴射量を多くすることでエンジン20の回転数が低下しないようにする。