特許第6019819号(P6019819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6019819液体吐出装置、配線接続構造、及び、配線接続構造の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019819
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】液体吐出装置、配線接続構造、及び、配線接続構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20161020BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20161020BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B41J2/01 301
   B41J2/175 501
   B41J2/175 503
   H01B7/08
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-147372(P2012-147372)
(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-8690(P2014-8690A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 徹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 靖弘
(72)【発明者】
【氏名】久保 智幸
【審査官】 里村 利光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−252016(JP,A)
【文献】 特開2008−018555(JP,A)
【文献】 特開2001−266658(JP,A)
【文献】 特開2005−271274(JP,A)
【文献】 実開平05−036871(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/185
H01B 7/00−7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドに供給される液体の圧力変動を抑制するためのダンパ室を形成するダンパ部材と、
前記液体吐出ヘッドに対して設けられ、前記ダンパ室と対向するように配置され、前記ヘッドへ信号を伝送する経路を有する基板と、
前記基板を外部と接続するための可撓性を有する配線部材と、を備え、
前記ダンパ室は、前記基板側の壁が変形可能な薄膜によって形成されており、前記薄膜が変形することで液体の圧力変動を抑制することができるようになっており、
前記配線部材は、
複数の配線と、
前記基板側の先端部に設けられており、前記複数の配線が露出しているとともに、前記複数の配線毎に分離した、前記基板との接続を行うための複数の接続部と、
絶縁性を有し、前記複数の接続部の先端同士を連結する連結部と、を備え、
前記接続部は、前記基板の前記ダンパ室との対向面において、前記基板に接続されており、
前記連結部は、ポッティングによって前記基板の前記ダンパ室との対向面に固定されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドに供給される液体の圧力変動を抑制するためのダンパ室を形成する、合成樹脂材料によって形成されたダンパ部材と、
前記液体吐出ヘッドに対して設けられ、前記ダンパ室と対向するように配置され、前記ヘッドへ信号を伝送する経路を有する基板と、
前記基板を外部と接続するための可撓性を有する配線部材と、を備え、
前記ダンパ室は、前記基板側の壁が変形可能な薄膜によって形成されており、前記薄膜が変形することで液体の圧力変動を抑制することができるようになっており、
前記配線部材は、
複数の配線と、
前記基板側の先端部に設けられており、前記複数の配線が露出しているとともに、前記複数の配線毎に分離した、前記基板との接続を行うための複数の接続部と、
絶縁性を有し、前記複数の接続部の先端同士を連結する連結部と、を備え、
前記接続部は、前記基板の前記ダンパ室との対向面において、前記基板に接続されており、
前記連結部は、前記基板の前記ダンパ室との対向面に固定されており、
前記配線部材の前記接続部から外部に向けて延びる部分は、前記ダンパ室と対向するように配置されており、さらに、前記薄膜に接触してしまうのを防止する接触防止手段を備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
前記ダンパ部材は、前記基板と対向する前記ダンパ室を含む複数の前記ダンパ室を有し、
複数の前記ダンパ室を、複数の液体供給源に接続する複数のチューブと、
前記複数のチューブを結束する結束部材と、をさらに備え、
前記結束部材は、前記配線部材の前記接続部から外部に向けて延びる部分と、前記ダンパ部材との間に位置して、前記配線部材の前記接続部から外部に向けて延びる部分が前記ダンパ部材側に変位するのを規制する変位規制部を有し、前記変位規制部が前記接触防止手段となっていることを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記ダンパ室の上側の壁が前記薄膜によって形成されており、
前記基板が、前記ダンパ室の上方に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置、液体吐出装置などに用いられる、可撓性を有する配線部材が基板に接続された配線接続構造、及び、配線接続構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクジェットヘッドの上方にダンパ部材が配置されており、インクジェットヘッドのアクチュエータと、ダンパ部材の上方に配置されたヘッド側回路基板とが、駆動ICが実装されたフレキシブル配線材によって接続されていることが記載されている。また、ヘッド側回路基板と本体側回路基板とが、可撓性を有する配線部材(上記のものとは別のフレキシブル配線材)によって接続されていることが記載されている。
【0003】
特許文献2には、可撓性を有する配線部材(フレキシブル基板)の先端部における、複数の配線の間に位置する部分に溝が形成されていることにより、配線部材の先端部が配線毎に分離されていることが記載されている。特許文献2では、これにより、配線部材の先端部を基板などに接続したときに、配線間にハンダブリッジが形成されて配線同士がショートしてしまうのを防止することができる。さらに、特許文献2には、配線部材の配線毎に分離された部分の先端部同士が、連結部(先端基材)によって互いに連結されており、これにより、フレキシブル基板の先端部が乱れず、配線部材の接続作業が容易になることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−80548号公報
【特許文献2】実開平5−36871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載の記録装置において、ヘッド側回路基板と本体側回路基板とを接続するための配線部材として、特許文献2に記載されているような配線部材を用いることを考える。特許文献2に記載の配線部材は、接続部よりも先端側の部分に連結部が設けられているため、接続部をヘッド側基板に接続した後、連結部をそのままにしておくと、連結部に力が加わることで接続部が基板から剥がれたり、連結部が他の部分に接触して何らかの不具合を生じさせたりする虞がある。
【0006】
さらに、特許文献1には明示されていないが、特許文献1に記載されているようなダンパ部材においては、その上端に、インクの圧力変動を抑制するための空間(ダンパ室)の壁を形成するフィルム(薄膜)が配置されている(例えば、特開2008−87240号公報など参照)。そのため、配線部材をヘッド側の基板の下面に接続した場合には、連結部がダンパ部材側に変位して上記フィルムに接触し、その結果、フィルムが破損してしまう虞がある。
【0007】
ここで、上述したような問題が生じないようにするために、接続部をヘッド側基板に接続した後に、連結部を切断するなどして除去することも考えられる。しかしながら、この場合には、連結部を除去する際に配線部材に加わる力によって接続部とヘッド側基板との接続が外れたり、連結部を除去際にカッター等がヘッド側基板に接触して、ヘッド側基板の配線を傷つけたりしてしまう虞がある。
【0008】
本発明の目的は、配線毎に分離された複数の接続部の先端部同士が連結部によって連結された構成の配線部材が、接続部において基板に接続されている場合において、連結部に力が加わることで接続部が基板から剥がれたり、連結部が他の部分に接触して何らかの不具合を生じさせたりすることを防止することが可能な液体吐出装置、配線接続構造、及び、配線接続構造の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係る液体吐出装置は、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに供給される液体の圧力変動を抑制するためのダンパ室を形成するダンパ部材と、前記液体吐出ヘッドに対して設けられ、前記ダンパ室と対向するように配置され、前記ヘッドへ信号を伝送する経路を有する基板と、前記基板を外部と接続するための可撓性を有する配線部材と、を備え、前記ダンパ室は、前記基板側の壁が変形可能な薄膜によって形成されており、前記薄膜が変形することで液体の圧力変動を抑制することができるようになっており、前記配線部材は、複数の配線と、前記基板側の先端部に設けられており、前記複数の配線が露出しているとともに、前記複数の配線毎に分離した、前記基板との接続を行うための複数の接続部と、絶縁性を有し、前記複数の接続部の先端同士を連結する連結部と、を備え、前記接続部は、前記基板の前記ダンパ室との対向面において、前記基板に接続されており、前記連結部は、ポッティングによって前記基板の前記ダンパ室との対向面に固定されていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明に係る液体吐出装置は、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに供給される液体の圧力変動を抑制するためのダンパ室を形成する、合成樹脂材料によって形成されたダンパ部材と、前記液体吐出ヘッドに対して設けられ、前記ダンパ室と対向するように配置され、前記ヘッドへ信号を伝送する経路を有する基板と、前記基板を外部と接続するための可撓性を有する配線部材と、を備え、前記ダンパ室は、前記基板側の壁が変形可能な薄膜によって形成されており、前記薄膜が変形することで液体の圧力変動を抑制することができるようになっており、前記配線部材は、複数の配線と、前記基板側の先端部に設けられており、前記複数の配線が露出しているとともに、前記複数の配線毎に分離した、前記基板との接続を行うための複数の接続部と、絶縁性を有し、前記複数の接続部の先端同士を連結する連結部と、を備え、前記接続部は、前記基板の前記ダンパ室との対向面において、前記基板に接続されており、前記連結部は、前記基板の前記ダンパ室との対向面に固定されており、前記配線部材の前記接続部から外部に向けて延びる部分が、前記ダンパ室と対向するように配置されており、さらに、前記薄膜に接触してしまうのを防止する接触防止手段を備えていることを特徴とする。
【0012】
これらの発明によると、複数の接続部の先端同士が連結部により連結されているため、配線の間隔が短い場合でも、接続部を制御基板に接続する際に、配線同士がショートしてしまうのを防止することができる。さらに、連結部が基板に固定されているため、連結部に力が加わることで接続部が基板から剥がれたり、連結部が変位して他の部分に接触し、何らかの不具合を生じさせたりすることを防止することができる。
【0014】
また、配線部材を基板の薄膜との対向面に接続する場合に、配線部材の先端に位置する連結部が、薄膜に接触してしまうのを防止することができる。これにより、薄膜が破損してダンパ室内の液体がこぼれてしまうことなどを防止することができる。
【0016】
また、第1の発明によると、ポッティングにより連結部を容易に基板のダンパ室側の面に固定することができる。
【0018】
また、第2の発明によると、合成樹脂材料からなるダンパ部材は帯電しないため、配線部材の、接続部から外部に向けて延びた部分をダンパ部材と対向するように配置することにより、配線にノイズを乗りにくくすることができる。
【0020】
また、第2の発明によると、接触防止手段が設けられていることにより、配線部材の接続部から外部に向かって延びた部分がダンパ室の壁を形成する薄膜に接触してしまうのを防止することができ、これにより、薄膜の破損を防止することができる。
【0021】
第3の発明に係る液体吐出装置は、第1又は第2の発明に係る液体吐出装置において、前記ダンパ部材は、前記基板と対向する前記ダンパ室を含む複数の前記ダンパ室を有し、複数の前記ダンパ室を、複数の液体供給源に接続する複数のチューブと、前記複数のチューブを結束する結束部材と、をさらに備え、前記結束部材は、前記配線部材の前記接続部から外部に向けて延びる部分と、前記ダンパ部材との間に位置して、前記配線部材の前記接続部から外部に向けて延びる部分が前記ダンパ部材側に変位するのを規制する変位規制部を有し、前記変位規制部が前記接触防止手段となっていることを特徴とする。
【0022】
本発明によると、チューブを結束する結束部材に、前記配線部材の接続部から外部に向かって延びた部分と前記ダンパ部材との間に位置して、配線部材の当該部分のダンパ部材側への変位を規制する変位規制部を設けることにより、変位規制部を接触防止手段とすることができる。
【0023】
第4の発明に係る液体吐出装置は、第1〜第3のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記ダンパ室の上側の壁が前記薄膜によって形成されており、前記基板が、前記ダンパ室の上方に配置されていることを特徴とする。
【0024】
ダンパ室の上側の壁が薄膜によって形成されており、基板がダンパ室の上方に配置されている場合、配線部材のダンパ室と対向する部分(連結部や、配線部材の接続部から外部に向かって延びた部分)が垂れ下がってダンパ室の薄膜に近づきやすい。本発明では、このような場合に、配線部材がダンパ室の薄膜に接触してしまうのを防止することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複数の接続部の先端同士が連結部により連結されているため、配線の間隔が短い場合でも、接続部を制御基板に接続する際に、配線同士がショートしてしまうのを防止することができる。さらに、連結部が基板に固定されているため、連結部に力が加わることで接続部が基板から剥がれたり、連結部が他の部分に接触して何らかの不具合を生じさせたりすることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態に係るプリンタの概略構成図である。
図2図1のダンパ部材の斜視図である。
図3図2を矢印IIIの方向から見た図である。
図4図3を矢印IVの方向から見た図である。
図5】FFCの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0028】
本実施の形態に係るプリンタ1(液体吐出装置)は、図1に示すように、キャリッジ2、ダンパ部材3、インクジェットヘッド4(液体吐出ヘッド)、4本のチューブ5、4つのインクカートリッジ6(液体供給源)などを有している。
【0029】
キャリッジ2は、2本のガイドレール7に沿って走査方向に往復移動する。ダンパ部材3はキャリッジ2に搭載されており、その下面にインクジェットヘッド4が取り付けられている。インクジェットヘッド4には、ダンパ部材3から、例えば、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが供給され、インクジェットヘッド4は、その下面に形成された複数のノズル10からこれら4色のインクを吐出する。
【0030】
4本のチューブ5は、合成樹脂など可撓性を有する材料からなり、一端がそれぞれダンパ部材3に接続されているとともに、他端がそれぞれインクカートリッジ6に接続されている。4つのインクカートリッジ6には、それぞれ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが充填されており、インクカートリッジ6内のインクがチューブ5を介してダンパ部材3に供給される。
【0031】
そして、プリンタ1においては、図示しない搬送ローラなどにより、走査方向と直交する紙送り方向に搬送される記録用紙Pに、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド4からインクを吐出することにより、記録用紙Pに印刷を行う。
【0032】
次に、ダンパ部材3及びインクジェットヘッド4などの構成について説明する。
【0033】
ダンパ部材3は、合成樹脂材料からなる、内部にインク流路が形成された部材であり、図2図4に示すように、チューブ接続部11、4つのダンパ室12、4つのインク供給流路13などを有している。
【0034】
チューブ接続部11は、ダンパ部材3の、紙送り方向下流側の端部に設けられている。上述の4本のチューブ5は、ダンパ部材3側の端部が、チューブバインダ9(結束部材)によって互いに結束された状態でチューブ接続部11に接続されており、これにより、4本のチューブ5が、ダンパ部材3内のインク流路に接続される。また、チューブバインダ9には、その下端部に、紙送り方向に延びているとともに、紙送り方向の両端、及び、走査方向のチューブ接続部11と反対側の端において開口した、後述するFFC32を通すためのスリット9aが設けられている。
【0035】
4つのダンパ室12は、ダンパ部材3の、紙送り方向における略中央部に設けられており、上下方向に配列されている。4つのダンパ室12は、チューブ接続部11を介して対応するチューブ5とそれぞれ接続されている。
【0036】
また、4つのダンパ室12のうち、最も上に配置されたダンパ室12、及び、上から3番目に配置されたダンパ室12の上側の壁、並びに、上から2番目に配置されたダンパ室12、及び、最も下に配置されたダンパ室12の下側の壁は、それぞれ、ダンパ膜14(薄膜)によって形成されている。ダンパ膜14は弾性材料からなり、ダンパ膜14が変形することによって、ダンパ室12内のインクの圧力変動が抑制することができるようになっている。これにより、後述するように、ダンパ室12からインク供給流路13を経てインクジェットヘッド4に供給されるインクの圧力変動が抑制され、インクジェットヘッド4におけるインクの吐出特性が変動してしまうのを防止することができる。
【0037】
また、最も上に配置されたダンパ室12と上から2番目に配置されたダンパ室12との間、及び、上から3番目に配置されたダンパ室12と最も下に配置されたダンパ室12との間は、それぞれ、隔壁15により仕切られている。また、ダンパ膜14が変形できるように、上から2番目に配置されたダンパ室12と上から3番目に配置されたダンパ室12との間には隙間が形成されている。
【0038】
4つのインク供給流路13は、ダンパ部材3の、紙送り方向上流側の端部に、走査方向に沿って配列されており、対応するダンパ室12とそれぞれ接続されている。また、4つのインク供給流路13は、それぞれ、鉛直方向に延びており、その下端がインクジェットヘッド4の後述するインク供給口21aに接続されている。これにより、ダンパ室12内のインクがインク供給流路13を経てインクジェットヘッド4に供給される。
【0039】
このとき、インク供給流路13が鉛直方向に延びているため、インク供給流路13においてはインク中の空気が上方移動してその上端部に溜まる。これにより、インク中の空気がインクから分離され、インクだけがインクジェットヘッド4に供給される。なお、詳細な説明は省略するが、インク供給流路13の上端部に溜まった空気は図示しない排気流路から外部に排出される。
【0040】
インクジェットヘッド4は、フレーム21、流路ユニット22、圧電アクチュエータ23を有している。フレーム21は、略矩形の板状の部材であり、ダンパ部材3の下方にインク供給流路13及びダンパ室12と対向するように配置されている。フレーム21には、紙送り方向上流側の端部における、4つのインク供給流路13と対向する部分に4つのインク供給口21aが形成されており、4つのインク供給流路13の下端部が4つのインク供給口21aと接続されている。また、フレーム21には、ダンパ室12と対向する部分に、略矩形の貫通孔21bが形成されている。
【0041】
流路ユニット22は、フレーム21の下面に接合されている。流路ユニット22には、複数のノズル10や、複数のノズル10に連通する図示しない複数の圧力室を含むインク流路が形成されており、インク供給口21aから供給されたインクが、このインク流路に流れ込む。なお、インク流路の構成は、従来のインクジェットヘッドと同様であるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0042】
圧電アクチュエータ23は、流路ユニット22の上面の、貫通孔21bから露出した部分に配置されている。圧電アクチュエータ23は、図示しない圧力室内のインクに圧力を付与するものであり、インクジェットヘッド4は、圧電アクチュエータ23により圧力室内のインクに圧力を付与することで、圧力室に連通するノズル10からインクを吐出させる。なお、圧電アクチュエータ23の構成は、従来のインクジェットヘッドと同様であるので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0043】
圧電アクチュエータ23の上面には、COF(Chip On Film)24が接続されている。COF24は、圧電アクチュエータ23の上面から上方に引き出されており、その上端部近傍の部分に圧電アクチュエータ23を駆動するドライバIC25が実装されている。
【0044】
また、COF24の上端部にはFPC(Flexible Printed Circuit)30が接続されている。FPC30は、COF24との接続部分から上方に延びており、ダンパ部材3の上方に配置されたヘッド基板31の上面に接続されている。さらに、ヘッド基板31は、FFC(Flexible Flat Cable)32(配線部材)を介して、プリンタ1の本体に設けられた本体基板33(外部)と接続されている。なお、本実施の形態では、ヘッド基板31が、本発明に係る基板に相当し、ヘッド基板31とFFC32とを合わせたものが、本発明に係る配線接続構造に相当する。
【0045】
そして、プリンタ1においては、FFC32を介して、本体基板33からヘッド基板31に、ドライバIC25を制御するための制御信号が伝送される。ヘッド基板31は、本体基板33から伝送されてきた制御信号を中継し、FPC30及びCOF24を介して、ドライバIC25に伝送する。これにより、ドライバIC25が制御信号に応じてインクジェットヘッド4を駆動し、ノズル10からインクが吐出される。
【0046】
次に、ヘッド基板31と本体基板33とを接続するFFC32の構成について説明する。FFC32は、合成樹脂材料等からなる可撓性を有する基材41の内部に、紙送り方向に互いに平行に延びた複数の配線42が形成された部材である。FFC32は、その一端部が、ヘッド基板31の下面(対向面)と対向しており、当該端部から、チューブ接続部11に向かって紙送り方向に延びている。
【0047】
また、ヘッド基板31の下面と対向する、FFC32のヘッド基板31側の先端部には、複数の接続部43が設けられている。複数の接続部43は、基材41の上記先端部の隣接する配線42の間に位置する部分に貫通孔が形成されることによって形成された、配線42毎に分離した部分である。また、各接続部43の上面には、対応する配線42が露出している。そして、各接続部43において露出した配線42が、ハンダなどによってヘッド基板31の下面に接続されている。また、複数の接続部43の先端部同士は、基材41の配線42よりもさらに先端側に位置する部分によって形成された連結部44によって連結されている。このとき、基材41は合成樹脂材料からなるものであるため、基材41の一部によって形成される連結部44は、絶縁性を有している。また、連結部44は、ポッティングによって形成された合成樹脂材45により、ヘッド基板31の下面に接合(固定)されている。
【0048】
ここで、FFC32をヘッド基板31に接続する方法(配線接続構造の製造方法)について説明する。FFC32をヘッド基板31に接続するためには、まず、ハンダなどにより、複数の接続部43の配線42をヘッド基板31の下面に形成された接続端子などに接続する(接続工程)。
【0049】
ここで、インクジェットヘッド4が多数のノズル10を備えている場合、FFC32に形成される配線42の数も増える。そして、FFC32の大きさが同じであれば、配線42の数が多くなるほど、配線42同士の間隔が小さくなる。そのため、本実施の形態とは異なり、仮に、FFC32のヘッド基板31との接続部分が、配線42毎に分離されていないとすると、ハンダにより各配線42とヘッド基板31とを接続したときに、ハンダが、基材41の隣接する配線42の間に位置する部分を流れることにより、いわゆるハンダブリッジが形成され、配線42同士がショートしてしまう虞がある。
【0050】
これに対して、本実施の形態では、上述したように、配線42毎に分離した複数の接続部43が設けられており、各接続部43に露出した配線42が、それぞれ、ヘッド基板31に接続されているため、隣接する配線42の間にハンダブリッジが形成されにくく、配線42同士がショートしてしまうのを防止することができる。
【0051】
ただし、FFC32に、配線42毎に分離した複数の接続部43を設けた場合、本実施の形態とは異なり、仮に、FFC32に連結部44が設けられておらず、複数の接続部43の先端部同士が互いに連結されていないとすると、複数の接続部43の先端部は独立して変形することができるため、ヘッド基板31との接続を行いにくい。これに対して、本実施の形態では、配線42毎に分離した複数の接続部43の先端部同士が連結部44によって連結されているため、複数の接続部43の先端部が独立して変形することがなく、各接続部43の配線42のヘッド基板31への接続が容易になる。
【0052】
次に、ポッティングにより合成樹脂材45を形成することで、連結部44をヘッド基板31の下面に接合する(固定工程)。
【0053】
ここで、本実施の形態とは異なり、仮に、配線42をヘッド基板31に接続した後、連結部44をヘッド基板31の下面に接合せず、そのままにしておくとすると、連結部44に外力が加わったときに、接続部43がヘッド基板31から剥がれて、配線42のヘッド基板31との接続が切断されてしまう虞がある。
【0054】
さらに、本実施の形態では、FFC32が接続されるヘッド基板31の下面と、ダンパ部材3のダンパ膜14とが対向しているため、連結部44がヘッド基板31の下面に接合されていないとすると、連結部44がダンパ部材3側に変形することによって、ダンパ膜14に接触し、その結果、ダンパ膜14が破損してしまう虞がある。特に、本実施の形態では、ヘッド基板31の下方にダンパ部材3が配置されているため、ヘッド基板31の下面に接合されたFFC32の連結部44は、重力によりダンパ部材3側に変形しやすい。
【0055】
ここで、このような問題が発生しないようにするために、複数の接続部43の配線42をヘッド基板31に接続した後に、連結部44を切り取るなどして除去することも考えられる。しかしながら、この場合には、連結部44を除去する際に接続部43に加わる力により接続部43がヘッド基板31から剥がれたり、連結部44を除去するために用いるカッターなどがヘッド基板31に接触して、ヘッド基板31の配線などを傷つけたりする虞がある。
【0056】
これに対して、本実施の形態では、連結部44が、ポッティングにより形成された合成樹脂材45により、ヘッド基板31の下面に接合されているため、連結部44に外力が作用したときに、接続部43がヘッド基板31から剥がれてしまうのを防止することができる。また、連結部44がダンパ部材3側に変形することがないので、連結部44がダンパ膜14に接触しまうのを防止することができる。これにより、ダンパ膜14の破損が防止される。また、ポッティングにより連結部44をヘッド基板31の下面に接合することにより、連結部44を容易にヘッド基板31の下面に固定することができる。
【0057】
次に、FFC32の接続部43から本体基板33に向けて延びた部分について説明する。FFC32の接続部43から本体基板33に向けて延びた部分は、ダンパ部材3のダンパ膜14と対向するように紙送り方向に延びている。ここで、合成樹脂材料からなるダンパ部材3は帯電しにくいため、FFC32の当該部分を、合成樹脂材料からなるダンパ部材3のダンパ膜14と対向するように配置することにより、FFC32にノイズを乗りにくくすることができる。
【0058】
さらに、FFC32の当該部分は、チューブバインダ9に形成されたスリット9aを通って、チューブバインダ9を挟んだ、ヘッド基板31と反対側まで延びており、FFC32のスリット9aを通る部分は、スリット9aの下側の壁を形成する支持部9b(変位規制部、接触防止手段)によって下方から支持されている。言い換えれば、支持部9bは、上下方向において、FFC32の接続部43から本体基板33に向けて延びた部分と、ダンパ部材3との間に位置している。これにより、FFC32の当該部分は、支持部9bに支持されることにより、ダンパ部材3側に変位してしまうのが規制されている。
【0059】
ここで、上述したようにFFC32の接続部43から本体基板33に向かって延びた部分がダンパ部材3のダンパ膜14と対向するように配置されている場合、FFC32の当該部分がダンパ部材3側に変位することでダンパ膜14に接触し、その結果、ダンパ膜14が破損してしまう虞がある。特に、本実施の形態の場合、FFC32の下方にダンパ部材3が位置しているため、FFC32は重力によりダンパ部材3側に垂れ下がりやすい。これに対して、本実施の形態では、FFC32の当該部分が、支持部9bに支持されることによって、ダンパ部材3側に変位するのが規制されるため、FFC32の当該部分がダンパ部材3のダンパ膜14に接触してしまうのが防止される。これにより、ダンパ膜14の破損を防止することができる。
【0060】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては、適宜その説明を省略する。
【0061】
上述の実施の形態では、最も上に配置されたダンパ室12の上側の壁を形成するダンパ膜14と、FFC32が接続されるヘッド基板31の下面とが、互いに対向するように配置されていたが、これには限られない。ヘッド基板31とFFC32との位置関係が上述の実施の形態と異なる場合でも、ヘッド基板31のFFC32との接続面が他のダンパ室12のダンパ膜14と対向するように配置されているなど、ヘッド基板31のFFC32との接続面と、ダンパ部材3のダンパ膜14とが対向している限りは、連結部44がヘッド基板31に固定されていないと、連結部44がダンパ部材3側に変位してダンパ膜に接触してしまう虞がある。しかしながら、このような場合でも、連結部44が、ヘッド基板31のFFC32との接続面に接合されていれば、連結部44がダンパ膜14に接触してしまうのを防止することができる。
【0062】
また、上述の実施の形態では、チューブバインダ9にFFC32を通すスリット9aが設けられており、FFC32の接続部43から本体基板33側に向けて延びた部分は、スリット9aの下側の壁を形成する支持部9bによって下方から支持されて下側への変位が規制されることにより、ダンパ部材3側に変位してしまうのが防止されていたが、これには限られない。チューブバインダ9の支持部9b以外の構成によって、FFC32の当該部分がダンパ部材3側に変位してしまうのを防止していてもよい。
【0063】
さらには、FFC32の当該部分がダンパ部材3側に変位してしまうのを防止するための構成は設けられていなくてもよい。ここで、連結部44が下側に変位したときには、連結部44の縁がダンパ膜14に接触することとなるため、ダンパ膜14は破損しやすい。これに対して、FFC32の接続部43から本体基板33に向けて延びた部分がダンパ膜14に接触したとしても、FFC32の当該部分の表面がダンパ膜14に接触するだけであるので、連結部44の縁がダンパ膜14に接触する場合に比べれば、ダンパ膜14は破損しにくい。
【0064】
さらに、上述の実施の形態では、FFC32の接続部43から本体基板33に向かって延びた部分がダンパ膜14と対向するように配置されていたが、これには限られない。FFC32の接続部43から本体基板33に向けて延びた部分は、ダンパ膜14と対向しないように延びていてもよい。なお、当然のことではあるが、この場合には、FFC32の接続部43から本体基板33に向けて延びた部分がダンパ膜14に接触してしまうのを防止するための構成は不要である。
【0065】
また、上述の実施の形態では、ポッティングにより形成された合成樹脂材45によって、連結部44がヘッド基板31の下面に固定されていたが、これには限られない。例えば、ヘッド基板31の下面に連結部44を取り付ける部分が設けられており、連結部44を当該部分に取り付けることによって、連結部44をヘッド基板31に固定してもよい。
【0066】
また、上述の実施の形態では、FFC32がヘッド基板31の下面に接続されていたが、これには限られず、FFC32がヘッド基板31の上面など、ヘッド基板31のダンパ部材3と対向しない面に接続されていてもよい。この場合には、FFC32がダンパ膜14と対向しないため、連結部44が変形してダンパ膜14に接触してしまうということはない。しかしながら、この場合でも、連結部44がヘッド基板31の上面に固定されていることにより、連結部44に外力が加わったときに、接続部43がヘッド基板31から剥がれて配線42とヘッド基板31との接続が切断されてしまうことや、連結部44がプリンタ1のいずれかの部分に接触して何らかの不具合を生じさせてしまうことを防止することができる。
【0067】
また、以上では、インクジェットヘッドからインクを吐出することによって印刷を行うインクジェットプリンタ及びその製造に本発明を適用した例について説明したが、インク以外の液体を吐出する液体吐出装置及びその製造に本発明を適用することも可能である。さらには、液体吐出装置以外の装置における、基板に可撓性を有する配線部材が接続された構造を有する配線接続構造及び配線接続構造の製造に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 プリンタ
3 ダンパ部材
4 インクジェットヘッド
6 インクカートリッジ
9 チューブバインダ
9b 支持部
10 ノズル
12 ダンパ室
14 ダンパ膜
31 ヘッド基板
32 FFC
42 配線
43 接続部
44 連結部
図1
図2
図3
図4
図5