特許第6019836号(P6019836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019836
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】車両用操舵装置の車体取付構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/00 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   B62D21/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-152725(P2012-152725)
(22)【出願日】2012年7月6日
(65)【公開番号】特開2014-15090(P2014-15090A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】川原 禎弘
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−020464(JP,A)
【文献】 特開昭63−022712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
B60G 1/00−99/00
B62D 3/12
B62D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリング操作に基づく操舵力をステアリングラックに伝達することにより、前記ステアリングラックに連結された転舵輪の舵角を変更させる車両用操舵装置の車体取付構造において、
前記転舵輪に連結されるサスペンションアームを揺動自在に支持する支持部と、
車体フレームに対して固定される取付部と、
前記支持部と前記取付部との間を連結する連結部と
を有するサスペンションフレームを備え、
前記サスペンションフレームは、前記取付部が前記車体フレームに固定された場合において、前記支持部と同一の高さとなる部位に前記ステアリングラックが固定され
前記支持部は、前記車体フレームに対して前記サスペンションフレームの前記取付部が取り付けられた場合に当該サスペンションフレームにおける最下端部となる部位に設けられることを特徴とする車両用操舵装置の車体取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用操舵装置の車体取付構造において、
前記連結部は、前記車体フレームに対して前記サスペンションフレームの前記取付部が取り付けられた場合に鉛直方向に沿って延びるように形成されていることを特徴とする車両用操舵装置の車体取付構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用操舵装置の車体取付構造において、
前記サスペンションフレームは、
前後一対の前記サスペンションアームのうち前側のサスペンションアームが揺動自在に支持される前側支持部と、
前後一対の前記サスペンションアームのうち後側のサスペンションアームが揺動自在に支持される後側支持部と
を有し、
前記サスペンションフレームには、前記前側支持部及び前記後側支持部と同一の高さに前記ステアリングラックが固定されることを特徴とする車両用操舵装置の車体取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用操舵装置の車体取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ステアリング操作に基づく操舵力をステアリングラックに伝達することにより、ステアリングラックの両端部に連結された転舵輪の舵角を変化させる車両用操舵装置が知られている。このような車両用操舵装置は、そのステアリングラックがサスペンションフレームを介して車体に取り付けられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、車両用操舵装置の車体取付構造において、サスペンションフレームは、転舵輪に連結されるサスペンションアームを揺動可能に支持している。また、サスペンションフレームにおける車両前後方向での前端部からは連結パイプが斜め上方に延設されている。そして、連結パイプの上端部は、車体フレームとなるエプロンサイドメンバの下面に連結されている。また、サスペンションフレームにおける車両前後方向での後端部には前端部から延設された連結パイプとは別の連結部が設けられている。そして、この連結部の先端側は、エプロンサイドメンバの下面に連結されている。
【0004】
さらに、サスペンションフレームの上側にはステアリングギアボックス(ステアリングラック)が固定されている。その結果、ステアリングギアボックスは、サスペンションフレームを介してエプロンサイドメンバに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−56981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の車両用操舵装置の車体取付構造では、ステアリングギアボックスがサスペンションフレームに対して上側から固定されている。すなわち、サスペンションフレームは、エプロンサイドメンバに対してステアリングギアボックスよりも下方に距離をおいて配置されることになる。そのため、サスペンションフレームからエプロンサイドメンバに向けて延設される連結パイプの上下方向の長さが長くなり、連結パイプの剛性を十分に得ることが難しくなる。その結果、エプロンサイドメンバに対するサスペンションフレームを介したステアリングギアボックスの取付構造における剛性を十分に確保することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車体に対して車両用操舵装置を取り付ける構造部分の剛性を十分に確保することができる車両用操舵装置の車体取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する車両用操舵装置の車体取付構造は、ステアリング操作に基づく操舵力をステアリングラックに伝達することにより、前記ステアリングラックに連結された転舵輪の舵角を変更させる車両用操舵装置の車体取付構造において、前記転舵輪に連結されるサスペンションアームを揺動自在に支持する支持部と、車体フレームに対して固定される取付部と、前記支持部と前記取付部との間を連結する連結部とを有するサスペンションフレームを備え、前記サスペンションフレームは、前記取付部が前記車体フレームに固定
された場合において、前記支持部と同一の高さとなる部位に前記ステアリングラックが固定され、前記支持部は、前記車体フレームに対して前記サスペンションフレームの前記取付部が取り付けられた場合に当該サスペンションフレームにおける最下端部となる部位に設けられる
【0009】
上記構成によれば、サスペンションフレームにおけるサスペンションアームの支持部は、車体フレームに対してステアリングラックよりも下方に距離をおいて配置されない。その結果、サスペンションフレームにおける車体フレームへの取付部とサスペンションアームの支持部との間を連結する連結部の上下方向における長さが短くなる。そのため、サスペンションフレームにおける連結部の剛性が向上する。したがって、車体に対して車両用操舵装置を取り付ける構造部分の剛性を十分に確保することができる。
【0011】
上記構成によれば、サスペンションフレームでの最下端部がステアリングラックと同一の高さに配置される。その結果、サスペンションフレームがステアリングラックよりも下方に延在する場合と比較して、サスペンションフレームの上下方向における長さが短くなる。そのため、サスペンションフレームを介した取付構造の剛性が向上する。したがって、車体に対して車両用操舵装置を取り付ける構造部分の剛性を更に十分に確保することができる。
【0012】
また、上記構成の車両用操舵装置の車体取付構造において、前記連結部は、前記車体フレームに対して前記サスペンションフレームの前記取付部が取り付けられた場合に鉛直方向に沿って延びるように形成されていることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、サスペンションフレームの連結部が斜め上方に延びる場合と比較して連結部の長さが短くなる。その結果、サスペンションフレームの連結部の剛性が更に向上する。したがって、車体に対して車両用操舵装置を取り付ける構造部分の剛性を更に十分に確保することができる。
【0014】
また、上記構成の車両用操舵装置の車体取付構造において、前記サスペンションフレームは、前後一対の前記サスペンションアームのうち前側のサスペンションアームが揺動自在に支持される前側支持部と、前後一対の前記サスペンションアームのうち後側のサスペンションアームが揺動自在に支持される後側支持部とを有し、前記サスペンションフレームには、前記前側支持部及び前記後側支持部と同一の高さに前記ステアリングラックが固定されることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、サスペンションフレームに対して前後一対のサスペンションアームが支持される場合であっても、車体に対して車両用操舵装置を取り付ける構造部分の剛性を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車体に対して車両用操舵装置を取り付ける構造部分の剛性を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る一実施形態の車両用操舵装置の模式図。
図2】同実施形態の車両用操舵装置の車体取付構造を模式的に示す斜視図。
図3】同実施形態の車両用操舵装置の車体取付構造を模式的に示す側面図。
図4】(a)は従来例のタイロッド及びサスペンションアームの転舵輪に対する連結構造を模式的に示す正面図、(b)は従来例のタイロッド及びサスペンションアームの転舵輪に対する連結構造を模式的に示す平面図。
図5】(a)は図4(a)に示す状態から転舵輪が上方に押し上げられた状態を示す正面図、(b)は図4(b)に示す状態から転舵輪が上方に押し上げられた状態を示す平面図。
図6】(a)は本実施形態のタイロッド及びサスペンションアームの転舵輪に対する連結構造を模式的に示す正面図、(b)は本実施形態のタイロッド及びサスペンションアームの転舵輪に対する連結構造を模式的に示す平面図。
図7】(a)は図6(a)に示す状態から転舵輪が上方に押し上げられた状態を示す正面図、(b)は図6(b)に示す状態から転舵輪が上方に押し上げられた状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両用操舵装置10は、ステアリング11が固定されたステアリングシャフト12を有している。そして、ステアリングシャフト12は、ステアリング11側から順に、コラムシャフト13、インターミディエイトシャフト14、及びピニオンシャフト15を有している。また、ピニオンシャフト15は、ラック&ピニオン機構16を介してステアリングラック17のラック軸18に連結されている。ラック軸18は、ステアリングラック17の外装を構成するハウジング19によって軸方向への移動自在に収容されている。また、ラック軸18の軸線方向の両端部には、ハウジング19の内外を貫通するタイロッド20がボールジョイント20aを介して連結されている。また、タイロッド20は、ナックル21に対してボールジョイント20bを介して連結されている。そして、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト12の回転は、ラック&ピニオン機構16によりラック軸18の往復直線運動に変換される。また、ラック軸18の往復直線運動は、タイロッド20を介してナックル21に伝達されることにより、転舵輪22の舵角が変更される。
【0019】
また、車両用操舵装置10は、ステアリング操作をアシストするアシスト装置23を有している。アシスト装置23は、電動モータ24と、電動モータ24から出力されるトルクによって回転するウォームシャフト25と、ウォームシャフト25と噛み合うとともにコラムシャフト13と一体的に回転するウォームホイール26とを有している。そして、アシスト装置23は、ステアリング操作時には、電動モータ24から出力されるトルクをウォームシャフト25及びウォームホイール26を介してコラムシャフト13に伝達する。その結果、ラック軸18の往復直線運動を補助するトルクが、コラムシャフト13からラック軸18に付与される。
【0020】
さて、本実施形態では、車両用操舵装置10におけるステアリングラック17を車体に取り付ける車体取付構造が剛性を有した構造材であるサスペンションフレーム30を含んで構成されている。そこで、このサスペンションフレーム30の構成について図2及び図3に基づき以下説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」は車体の長さ方向を示すとともに、「左右方向」は車体の幅方向を示すものとする。また、図2及び図3においては、ステアリングラック17のハウジング19の図示を省略している。
【0021】
図2及び図3に示すように、サスペンションフレーム30は、ラック軸18の軸線方向となる左右方向に延びる後フレーム31と、後フレーム31の左右両端部から前方に延びる横フレーム32とを有している。サスペンションフレーム30は、後フレーム31と横フレーム32とが平面視において直角に交わっており、平面視形状が全体として前方側に開放した略U字状をなしている。
【0022】
横フレーム32は、後側鉛直部33と水平部34aと傾斜部34bと前側鉛直部35とを有している。後側鉛直部33は、後フレーム31との連結部から鉛直上方に延びている。水平部34aは、後側鉛直部33の上端部から前方に向けて直線状に水平に延びている。傾斜部34bは、水平部34aの前端部から前方斜め下方に向けて直線状に傾斜して延びている。前側鉛直部35は、傾斜部34bの前端部から鉛直上方に延びている。そして、水平部34aの鉛直下方にラック軸18が配置された状態で、ステアリングラック17のハウジング19がサスペンションフレーム30に対して図示しない固定部材を用いて固定されている。この場合、ラック軸18の軸中心は、後側鉛直部33及び前側鉛直部35の下端部とほぼ同一の高さに位置している。
【0023】
また、両鉛直部33,35の下端部の外側面には、軸受け部36a,36bがそれぞれ設けられている。軸受け部36a,36bには、前後方向へ水平に延びる回動軸線Pを有する円柱状のローラ37a,37bが回動自在に支持されている。ローラ37a,37bの外周面には、転舵輪22に先端側が連結されたサスペンションアーム38a,38bの基端側がそれぞれ連結されている。そのため、これらのサスペンションアーム38a,38bは、ローラ37a,37bの回動に伴って上下方向に揺動自在となっている。この点で、本実施形態における軸受け部36a,36bは、サスペンションアーム38a,38bを揺動自在に支持する支持部の一例となる。より具体的には、軸受け部36aは、前後一対のサスペンションアーム38a,38bのうち後側のサスペンションアーム38aを揺動自在に支持する後側支持部の一例となる。また、軸受け部36bは、前後一対のサスペンションアーム38a,38bのうち前側のサスペンションアーム38bを揺動自在に支持する前側支持部の一例となる。
【0024】
なお、これらの軸受け部36a,36bは、サスペンションフレーム30において最下端部となる両鉛直部33,35の下端部に設けられている。そして、これらの軸受け部36a,36bは、ラック軸18に対して同軸配置態様で連結されるタイロッド20と同一の高さに位置している。また、タイロッド20の揺動中心となるボールジョイント20aは、軸受け部36a,36bに支持されるローラ37a,37bの回動軸線P上に位置している。すなわち、前後一対のサスペンションアーム38a,38bの揺動中心は、正面視においてタイロッド20の揺動中心と同一の高さに位置している。
【0025】
また、これらのサスペンションアーム38a,38bのうち後側のサスペンションアーム38aは、軸受け部36aを基端として車体から幅方向において斜め前方に向けて遠ざかるように直線状に延びている。なお、この後側のサスペンションアーム38aは、ラック軸18の軸中心に位置するタイロッド20よりも僅かに下方を通るように、軸受け部36aを基端として先端側が斜め下方に向けて延びるように配置されている。一方、これらのサスペンションアーム38a,38bのうち前側のサスペンションアーム38bは、軸受け部36bを基端として車体から幅方向に沿って遠ざかるように直線状に延びている。なお、この前側のサスペンションアーム38bは、その先端側が後側のサスペンションアーム38aの先端側とほぼ同一の高さに位置するように、軸受け部36bを基端として先端側が斜め下方に向けて延びるように配置されている。
【0026】
これらのサスペンションアーム38a,38bにおける軸受け部36a,36bからの車体の幅方向への延出量は互いにほぼ等しい。すなわち、これらのサスペンションアーム38a,38bの先端部は、互いにほぼ同一の高さ位置に近接して配置されている。そのため、これらのサスペンションアーム38a,38bが軸受け部36a,36bを中心として揺動する際の前方からの正面視における揺動径は互いにほぼ等しくなる。更には、正面視におけるこれらのサスペンションアーム38a,38bの揺動径は、正面視においてタイロッド20がボールジョイント20aを中心として揺動する際の揺動径とほぼ等しくなる。そして、サスペンションアーム38a,38bの先端部には、転舵輪22のナックル21がボールジョイント39a,39b(図6参照)を介してそれぞれ回動自在に連結されている。
【0027】
また、図3に示すように、前側鉛直部35は、後側鉛直部33よりも鉛直方向における長さが長い。すなわち、前側鉛直部35は、後側鉛直部33の上端部よりも上方に突出している。そして、前側鉛直部35の上端部には平板状をなすブラケット40が設けられている。ブラケット40には、固定ボルト41を挿通させる挿通孔42が厚み方向に貫通形成されている。そして、ブラケット40の上面を車体フレーム43の下面に接触させた状態で、ブラケット40の下面側から挿通孔42を通じて挿通された固定ボルト41が車体フレーム43に螺合している。その結果、ブラケット40は、固定ボルト41によって車体フレーム43に取り付けられている。この点で、本実施形態におけるブラケット40は、サスペンションフレーム30を車体フレーム43に取り付ける取付部の一例となる。また、前側鉛直部35は、軸受け部36bから鉛直上方に延びて軸受け部36bとブラケット40とを連結する連結部の一例となる。
【0028】
次に、上記のようなサスペンションフレーム30を含んで構成された車両用操舵装置10の車体取付構造の作用について説明する。
さて、本実施形態では、サスペンションフレーム30におけるブラケット40が車体フレーム43に固定された場合に軸受け部36a,36bと同一の高さとなる部位にステアリングラック17が固定される。そのため、サスペンションフレーム30における軸受け部36a,36bは、車体フレーム43に対して、ステアリングラック17が車体フレーム43に対して上下方向で有する距離と同程度の距離をおいて配置される。すなわち、サスペンションフレーム30における軸受け部36a,36bは、車体フレーム43に対してステアリングラック17よりも下方に距離をおいて配置されない。その結果、サスペンションフレーム30において車体フレーム43に対して取り付けられるブラケット40と軸受け部36bとの間を連結する前側鉛直部35の上下方向における長さが短くなる。そのため、サスペンションフレーム30における前側鉛直部35の剛性が向上する。したがって、車体フレーム43に対してステアリングラック17を取り付ける構造部分となるサスペンションフレーム30の剛性が十分に確保される。
【0029】
ところで、図4(a)及び図4(b)に示すように、従来例のタイロッド20及びサスペンションアーム38cの転舵輪22に対する連結構造では、タイロッド20がサスペンションアーム38cに対して前方斜め上方に配置されている。また、タイロッド20の揺動中心となるボールジョイント20aは、サスペンションアーム38cの揺動中心となる軸受け部36cとは正面視における位置が互いに異なっている。また、車両が平らな路面を走行している状態では、タイロッド20はサスペンションアーム38cと平行に延びるように水平姿勢で配置されている。また、サスペンションアーム38cは、ボールジョイント39cを介してナックル21に連結されている。
【0030】
そして、図5(a)及び図5(b)に示すように、車両が走行している路面の隆起があると、この隆起に起因して転舵輪22が上方に押し上げられる。この場合、従来例では、転舵輪22の上動に伴ってタイロッド20及びサスペンションアーム38cの各先端側が上方に揺動した場合に、正面視におけるタイロッド20の揺動径は、正面視におけるサスペンションアーム38cの揺動径よりも小さい。そのため、正面視において、タイロッド20の先端部が通過する移動軌跡とサスペンションアーム38cの先端部が通過する移動軌跡とが互いに異なる。具体的には、タイロッド20の先端部は、サスペンションアーム38cの先端部よりも車体に対して幅方向により接近するように変位しつつ上方に揺動する。その結果、転舵輪22においてタイロッド20が連結される前方寄りの部位は、タイロッド20によって車体に対して幅方向に接近するように引っ張られる。そのため、転舵輪22における前方への開き角度が狭まる結果、車両の直進安定性が損なわれる虞があった。
【0031】
この点、図6(a)及び図6(b)に示すように、本実施形態のタイロッド20及びサスペンションアーム38a,38bの転舵輪22に対する連結構造では、タイロッド20がサスペンションアーム38a,38bと同程度の高さに略平行に配置されている。また、タイロッド20の揺動中心となるボールジョイント20aとサスペンションアーム38a,38bの揺動中心となる軸受け部36a,36bとは、正面視における位置が一致している。
【0032】
そして、図7(a)及び図7(b)に示すように、車両が走行している路面に隆起があると、この隆起に起因して転舵輪22が上方に押し上げられる。この場合、本実施形態では、転舵輪22の上動に伴ってタイロッド20及びサスペンションアーム38a,38bが上方に揺動した場合に、正面視におけるタイロッド20の揺動径は、正面視におけるサスペンションアーム38a,38bの揺動径とほぼ等しい。そのため、正面視において、タイロッド20の先端部が通過する移動軌跡とサスペンションアーム38a,38bの先端部が通過する移動軌跡とがほぼ重なる。その結果、転舵輪22が上動したとしても、転舵輪22がタイロッド20によって車体に対して幅方向に接近するように引っ張られることはほとんどない。したがって、転舵輪22における前方への開き角度が変化することが抑制されるため、車両の直進安定性が良好に維持される。
【0033】
本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)サスペンションフレーム30においてサスペンションアーム38a,38bを支持する部位となる軸受け部36a,36bは、車体フレーム43に対してステアリングラック17よりも下方に距離をおいて配置されない。その結果、サスペンションフレーム30において車体フレーム43に取り付けられる部位となるブラケット40と軸受け部36bとの間を連結する前側鉛直部35の上下方向における長さが短くなる。そのため、サスペンションフレーム30における前側鉛直部35の剛性が向上する。したがって、車体に対して車両用操舵装置10を取り付ける構造部分の剛性を十分に確保することができる。
【0034】
(2)サスペンションフレーム30での最下端部がステアリングラック17と同一の高さに配置される。その結果、サスペンションフレーム30がステアリングラック17よりも下方に延在する場合と比較して、サスペンションフレーム30の上下方向における長さが短くなる。そのため、サスペンションフレーム30を介した取付構造の剛性が向上する。したがって、車体に対して車両用操舵装置10を取り付ける構造部分の剛性を更に十分に確保することができる。
【0035】
(3)サスペンションフレーム30の前側鉛直部35は鉛直方向に沿って延びるように形成されている。そのため、サスペンションフレーム30の前側鉛直部35が斜め上方に延びる場合と比較して前側鉛直部35の長さが短くなる。その結果、サスペンションフレーム30の前側鉛直部35の剛性が更に向上する。したがって、車体に対して車両用操舵装置10を取り付ける構造部分の剛性を更に十分に確保することができる。
【0036】
(4)サスペンションフレーム30には、後側の軸受け部36a及び前側の軸受け部36bと同一の高さにステアリングラック17が固定される。そのため、サスペンションフレーム30に対して前後一対のサスペンションアーム38a,38bが支持される場合であっても、車体に対して車両用操舵装置10を取り付ける構造部分の剛性を十分に確保することができる。
【0037】
なお、上記実施形態は、以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、必ずしも、サスペンションフレーム30と転舵輪22との間に前後一対のサスペンションアーム38a,38bを介設する必要はなく、サスペンションフレーム30と転舵輪22との間に単一のサスペンションアームを介設する構成としてもよい。
【0038】
・上記実施形態において、サスペンションフレーム30においてブラケット40と軸受け部36bとを連結する連結部は、鉛直方向に対して傾斜して延びるように設けられてもよい。
【0039】
・上記実施形態において、軸受け部36a,36bは、必ずしもサスペンションフレーム30の最下端となる部位に設けられなくてもよい。すなわち、サスペンションフレーム30における上下方向の中間部位に軸受け部36a,36bを設ける構成としてもよい。
【0040】
・上記実施形態において、サスペンションフレーム30においてブラケット40と軸受け部36bとを連結する連結部は、必ずしも軸受け部36bから延設される必要はない。例えば、連結部は、横フレーム32の水平部34a又は傾斜部34bから上方に延設される構成としてもよいし、後フレーム31から上方に延設される構成としてもよい。
【0041】
・上記実施形態において、サスペンションフレーム30は、必ずしも車体フレーム43に対して下方から取り付けられる必要はない。例えば、サスペンションフレーム30は、車体フレーム43に対して側方から取り付けられる構成としてもよい。
【0042】
・上記実施形態において、サスペンションフレーム30とサスペンションアーム38a,38bとの間を弾性部材によって連結することにより、サスペンションフレーム30がサスペンションアーム38a,38bを揺動自在に支持する構成としてもよい。
【0043】
・上記実施形態において、車両用操舵装置10は、電動モータ24の出力をコラムシャフト13に付与するコラムアシスト型のパワーステアリング装置に限定されない。すなわち、車両用操舵装置10として、電動モータ24の出力をラック軸18を並進させる力としてラック軸18に付与するラックアシスト型のパワーステアリング装置や、電動モータ24の出力をピニオンシャフト15に付与するピニオンアシスト型のパワーステアリング装置を採用してもよい。
【0044】
次に、上記実施形態から把握される請求項に記載の発明以外の技術的思想について追記する。
(1)請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の車両用操舵装置の車体取付構造において、
前記ステアリングラックは、
ステアリング操作に基づく操舵力が伝達されるラック軸と、
前記ラック軸に対して揺動可能に連結されるタイロッドと
を有し、
前記サスペンションフレームは、前記取付部が前記車体フレームに固定された場合において、前記支持部と同一の高さとなる部位に前記タイロッドが配置されることを特徴とする車両用操舵装置の車体取付構造。
【0045】
(2)前記技術的思想(1)に記載の車両用操舵装置の車体取付構造において
前記タイロッドにおける前記ラック軸との連結部を中心とした揺動径と、前記サスペンションアームにおける前記支持部を中心とした揺動径とが互いに等しいことを特徴とする車両用操舵装置の車体取付構造。
【0046】
(3)前記技術的思想(1)又は(2)に記載の車両用操舵装置の車体取付構造において、
前記タイロッドにおける前記ラック軸との連結部は、正面視において前記支持部と同一位置に配置されることを特徴とする車両用操舵装置の車体取付構造。
【0047】
(4)前記技術的思想(1)〜(3)のうち何れか一つに記載の車両用操舵装置の車体取付構造において、
前記タイロッドは、前記サスペンションアームと略平行に延びることを特徴とする車両用操舵装置の車体取付構造。
【符号の説明】
【0048】
10…車両用操舵装置、17…ステアリングラック、22…転舵輪、30…サスペンションフレーム、35…連結部の一例としての前側鉛直部、36a…支持部及び後側支持部の一例としての軸受け部、36b…支持部及び前側支持部の一例としての軸受け部、38a,38b…サスペンションアーム、40…取付部の一例としてのブラケット、43…車体フレーム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7