(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の実施の形態.
図1はこの発明の第1の実施の形態にかかる給湯装置の構成を例示するブロック図である。図中、白抜き矢印は、湯(あるいは水)が流れる向きを示す。
【0018】
当該給湯装置は、貯湯タンク1と、第1給湯経路20と、第2給湯経路35と、第1バルブ21と、第2バルブ31と、ヒートポンプ9とを備える。
【0019】
貯湯タンク1には往き配管11及び戻り配管12によってヒートポンプ9が接続される。ヒートポンプ9は例えばコントローラ4からの指示を受けて動作する。ヒートポンプ9は往き配管11を経由して貯湯タンク1の下部の水を取得してこれを加熱し、加熱後の温水を戻り配管12を経由して貯湯タンク1の上部に供給する。つまり貯湯タンク1はヒートポンプ9によって加熱された温水が蓄えられている、と把握することができる。
【0020】
図2はヒートポンプ9の構成を例示するブロック図である。ヒートポンプ9は、熱交換器91、減圧機構92、蒸発器93、圧縮機94を有する冷媒サイクルを備えている。熱交換器91は冷凍サイクル側の配管(これは凝縮器として機能する)と、往き配管11及び戻り配管12と接続された配管とを有している。これら一対の配管同士の間で熱交換が行われることにより、貯湯タンク1に蓄えられる温水がヒートポンプ9によって加熱される。
【0021】
貯湯タンク1は密閉されるのでその上部における湯温が下部における湯温よりも高い。よって貯湯タンク1の上部はヒートポンプ9で加熱された湯温がほぼ維持され、貯湯タンク1内では上部から下部に向かう温度勾配が維持される。
【0022】
第1給湯経路20は、貯湯タンク1に蓄えられた温水を当該温水の上部から取得して給湯する。第1給湯経路20上には第1バルブ21が設けられる。第1給湯経路20上には第1バルブ21よりも下流側に、温水を必要とする給湯部7が設けられている。よって第1バルブ21を開けることによって、貯湯タンク1に蓄えられた温水が第1給湯経路20を経由して給湯部7に供給される。また第1バルブ21を閉じることによって、貯湯タンク1から給湯部7への温水の供給が停止される。
【0023】
図1の例示では、第1給湯経路20は貯湯タンク1の上部からの温水を直接に給湯部7へと給湯する。よって温度の高い高温水を給湯部7へと給湯できる。温度の高い高温水を必要とする給湯部7としては、例えば食器洗浄機などが挙げられる。
【0024】
第2給湯経路35は、貯湯タンク1に蓄えられた温水を当該温水の上部から取得して給湯する。
図1の例示では、貯湯タンク1からの温水は、第2給湯経路35を構成する経路33,30をこの順に流れて給湯部8へと供給される。第2給湯経路35上は第2バルブ31が設けられる。
図1の例示では、経路30,33の間に第2バルブ31が介在する。よって第2バルブ31を開けることによって、貯湯タンク1に蓄えられた温水が第2給湯経路35を経由して給湯部8に供給される。また第2バルブ31を閉じることによって、貯湯タンク1から給湯部8への温水の供給が停止される。
【0025】
図1の例示では、第2給湯経路35は経路33を更に有する。経路32は低温水を取得する。経路32は第2バルブ31よりも貯湯タンク1側で接続部34を介して経路33に接続される。接続部34は経路33からの温水と経路32からの低温水とを所望の割合で混合し、第2バルブ31を介して経路30へと与える。
【0026】
なお、接続部34には例えば混合弁を採用することで、上記の機能を果たすことができる。この混合弁の開度を変えることにより、所望の割合に応じることができるので、所望の、例えば不図示のリモートコントローラで設定される温度で経路30から当該温度の湯を得ることができる。
【0027】
このような第2給湯経路35によれば、貯湯タンク1の上部から直接に温水を給湯する場合に比べて、比較的低い温度の中温水を給湯部8に給湯することができる。中温水を必要とする給湯部8としては、例えば台所に設けられる温水用蛇口などが挙げられる。
【0028】
経路32は外部(例えば給水経路たる給水配管(市水管)10)から低温水を得る。当該低温水は貯湯タンク1の下部にも供給され、貯湯タンク1内は湯水によって満水になっている。
【0029】
コントローラ4はヒートポンプ9に対して加熱処理の実行を指示する。このような指示を行うことは、
図1においてコントローラ4からヒートポンプ9に向かう破線矢印で示されている。またコントローラ4は、後述するバルブ閉鎖処理を第1バルブ21及び第2バルブ31に対して行う。このような処理を行うことは、
図1においてコントローラ4から第1バルブ21及び第2バルブ31に向かう破線矢印で示されている。
【0030】
また、コントローラ4が、上述した接続部34の混合弁の開度の制御を行ってもよい。
【0031】
第1の実施の形態では、バルブ閉鎖処理及びヒートポンプ9による加熱処理は貯湯タンク1内の熱量に基づいており、当該熱量は、貯湯タンク1に蓄えられた温水の温度に基づいて、熱量計算手段6が計算する。バルブ閉鎖処理及び加熱処理を行うか否かの判断基準となる熱量が推定されるのである。熱量計算手段6からコントローラ4に向かう矢印は、上記の熱量についての情報が伝達されることを示している。
【0032】
当該温度は、貯湯タンク1に設けられた測温手段5によって測定される。例えば測温手段5は貯湯タンク1の側壁において高さを異ならせて配置された複数のサーミスタ50,51,52,…、5mである。サーミスタ50,51,52,…、5mはこの順に貯湯タンク1の下方へと配置される。サーミスタ50はサーミスタ51,52,…,5mのいずれよりも高い位置で貯湯タンク1に設けられ、具体的には例えば貯湯タンク1の最上部(いわゆる「缶体上」)に設けられる。
【0033】
測温手段5による温度測定や、熱量計算手段6による熱量計算は周知の技術によって容易に実現されるので、ここでは説明を省略する。
【0034】
コントローラ4の処理は、次の二つのステップを含む。まず第1に、貯湯タンク1に蓄えられた熱量が、第1閾値よりも低下した場合に、コントローラ4は第1バルブ21及び第2バルブ31の一方を開けたまま他方を閉じ、ヒートポンプ9に貯湯タンク1からの水を加熱させる。そして貯湯タンク1に蓄えられた熱量が、第1閾値よりも低い第2閾値よりも熱量が低下した場合に、第1バルブ21及び第2バルブ31の他方を閉じたまま一方も閉じる。
【0035】
以上のようにヒートポンプ9は、第1バルブ21及び第2バルブ31の一方のみを閉じる時点で、加熱処理を実行する。したがって、第1バルブ21及び第2バルブ31の両方を閉じる時点でヒートポンプ9が加熱処理を実行する場合に比べて、貯湯タンクの湯量が不足すること(いわゆる湯切れ)を抑制できる。ヒートポンプ9では起動してから定格能力を出力する安定状態に達するまでに時間がかかるので、本処理は熱量を確保するという観点で特に有効である。
【0036】
熱量計算手段6はコントローラ4とともに、あるいは個別に構成される。当該構成の一例としてマイクロコンピュータと記憶装置を含んだ構成を選択することができる。マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップ(換言すれば手順)を実行する。上記記憶装置は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EEPROM(Erasable Programmable ROM)等)、ハードディスク装置などの各種記憶装置の1つ又は複数で構成可能である。当該記憶装置は、各種の情報やデータ等を格納し、またマイクロコンピュータが実行するプログラムを格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。なお、マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップに対応する各種手段として機能するとも把握でき、あるいは、各処理ステップに対応する各種機能を実現するとも把握できる。また、熱量計算手段6及び/又はコントローラ4はこれに限らず、実行する各種手順、あるいは実現される各種手段又は各種機能の一部又は全部をハードウェアで実現しても構わない。
【0037】
図3は、この発明の一実施の形態にかかる給湯装置の動作を例示するフローチャートである。当該フローチャートはその終了(図中「END」)後、改めて開始(図中「START」)から再実行される。
【0038】
まずステップS1において熱量算出処理が行われる。これは上述のように、測温手段5による温度測定に基づいて、熱量計算手段6が貯湯タンク1内の熱量を算出する処理である。
【0039】
次にステップS2において、当該熱量が第1閾値未満であるかどうかが判断される。貯湯タンク1における熱量が第1閾値以上であれば、第1給湯経路20及び第2給湯経路35からそれぞれ給湯部7,8へと温水を供給しても、貯湯タンク1において上部の温水が消費し尽くされる、いわゆる湯切れが発生しそうにはないと判断されるのである。
【0040】
ステップS2の判断結果が否定的である場合には第1バルブ21及び第2バルブ31を閉鎖することなく当該フローチャートに則った処理を一旦終了する。或いはステップS1を再び実行する。
【0041】
他方、ステップS2において、貯湯タンク1における熱量が第1閾値未満であるとの肯定的判断がなされれば、ステップS3へと処理が進み、第1バルブ21及び第2バルブ31のいずれかが閉鎖される。つまりステップS3は上述のバルブ閉鎖処理の一部である。いずれのバルブを閉鎖するかは例えば予め設定される。このように第1バルブ21及び第2バルブ31のいずれかを閉鎖することで、給湯部7,8の一方への温水の供給を止めつつ、給湯部7,8の他方への温水を供給し続けることができる。これによって給湯部7,8の他方の利用効率が高められる。
【0042】
ステップS3においては、ヒートポンプ9による加熱処理が実行される。ヒートポンプ9は、起動してから定格能力を出力する安定状態に達するまでに時間がかかる。このため、第1バルブ21と第2バルブ31の両方を閉じてからヒートポンプ9による加熱を開始するよりも、第1バルブ21及び第2バルブ31の一方が閉じられる時点で当該加熱を開始することが、早期に貯湯タンク1の熱量を確保する観点で望ましいのである。更に言えば、第1バルブ21と第2バルブ31の両方が閉じているということは全く湯水が使えない状態であるので、そのようになる前に熱量を確保する(加熱を開始する)。
【0043】
ステップS3におけるバルブ閉鎖処理及びヒートポンプ9の加熱処理が行われた後、ステップS4へと処理が進み、当該熱量が第2閾値未満であるかどうかが判断される。ステップS4の判断結果が否定的であれば、第1バルブ21及び第2バルブ31のうち開いているバルブから温水を供給しても、湯切れが発生しそうにはないと推測し、ステップS1へと処理が戻り、再び熱量を考慮したバルブ閉鎖処理の要否が検討される。上述のように当該フローチャートは繰り返し実行されることに鑑みれば、ステップS4の判断結果が否定的である場合には当該フローチャートに則った処理が一旦終了しても良い。
【0044】
ステップS4の判断結果が肯定的である場合にはステップS5へ進み、第1バルブ21及び第2バルブ31のうち開いていたバルブも閉じられる。これによって第1バルブ21及び第2バルブ31の両方が閉鎖される。
【0045】
第2の実施の形態.
第2の実施の形態では、貯湯タンク1における各部の温度を判断基準として第1バルブ21と第2バルブ31の閉鎖処理及びヒートポンプ9の加熱処理を行う技術を提示する。
【0046】
第2の実施の形態にかかる給湯装置は
図1の給湯装置と同様である。ただし熱量計算手段6は必ずしも必要ではない。第2の実施の形態では、後に詳述するように、サーミスタ50,51,52,…、5mによって検出される温度と閾値との比較結果を用いて、第1バルブ21及び第2バルブ31の閉鎖処理及びヒートポンプ9の加熱処理を行う。
【0047】
サーミスタ50,51,52,…、5mは
図1に示すように貯湯タンク1において高さの異なる位置に設けられる。貯湯タンク1において湯は上部から蓄えられるので、サーミスタ50,51,52,…、5mは貯湯タンク1の湯量に対応する位置に設けられる、とも把握できる。例えば缶体上に設けられるサーミスタ50の検出温度が所定値よりも低いときには、貯湯タンク1内の湯量は零であると判断することができる。なおここでは、温度が所定値よりも大きい温水を湯として把握している。またサーミスタ51の検出温度が所定値よりも高く、サーミスタ52の検出温度が所定値よりも低いときには、サーミスタ51が設けられる位置に対応する湯量が貯湯タンク1に蓄えられていると判断できる。
【0048】
第2の実施の形態では、サーミスタの検出温度と閾値との比較に基づいてバルブ閉鎖処理及び加熱処理を実行するので、貯湯タンク1の湯量に基づいたバルブ閉鎖処理及び加熱処理を実行することができるのである。
【0049】
図4は、この発明の一実施の形態にかかる給湯装置の動作を例示するフローチャートである。当該フローチャートは第1の実施の形態と同様に、その終了(図中「END」)後、改めて開始(図中「START」)から再実行される。
【0050】
まずステップS11にて、サーミスタ51,52,…、5mのうち、第1位置に設けられたサーミスタによって検出される温度Th1が、閾値TC+α以下であるかどうかが判断される。当該第1位置における温水の温度Th1が閾値TC+α以上であれば、給湯部7,8の両方への給湯に対して十分な湯量が貯湯タンク1に蓄えられていると判断されるのである。このような湯量を得るための第1位置は例えば予め設定され、貯湯タンク1の容量が460Lであれば、例えば貯湯タンク1の上方から150Lの容量を得る位置に設定される。もちろん、温度Th1を検出すべく、第1位置はサーミスタ51,52,…、5mのいずれかから予め選定されたものの位置に設定される。TCは予め設定され、例えば45度である。αは例えば1度である。
【0051】
ステップS11の判断結果が否定的である場合には、十分な湯量が蓄えられているので、第1バルブ21及び第2バルブ31を閉鎖することなく当該フローチャートにおける処理を一旦終了する。或いはステップS11を再び実行する。
【0052】
他方、ステップS11において、温度Th1が閾値TC+α以下であるとの肯定的判断がなされれば、ステップS12へと処理が進み、第1バルブ21及び第2バルブ31のいずれかが閉鎖される。またステップS12においては、ヒートポンプ9による加熱処理が実行される。
【0053】
ステップS12におけるバルブ閉鎖処理及びヒートポンプ9の加熱処理が行われた後、ステップS13へと処理が進む。ステップS13ではサーミスタ50,51,52,…、5mのうち、第1位置よりも高い第2位置に設けられたサーミスタによって検出される温度Th2が閾値TC以下であるかどうかが判断される。なおステップS11,S13において比較の基準となる閾値を異ならせていることについては後に詳述する。当該第2位置における温水の温度Th2が閾値TCよりも高ければ、ステップS12で閉鎖されないバルブを用いた給湯に対して、十分な湯量が貯湯タンク1に蓄えられていると判断するのである。このような湯量を得るための第2位置は例えば予め設定される。
【0054】
ステップS13の判断結果が否定的であれば、ステップS11へと処理が戻り、再びバルブ閉鎖処理の要否が検討される。或いは当該フローチャートに則った処理が一旦終了しても良い。
【0055】
ステップS13の判断結果が肯定的である場合にはステップS14へ進み、第1バルブ21及び第2バルブ31のうち開いていたバルブも閉じられる。これによって第1バルブ21及び第2バルブ31の両方が閉鎖される。
【0056】
このようなバルブ閉鎖処理および加熱処理によっても、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。また第2の実施の形態では、サーミスタの検出温度と閾値との比較に基づいてバルブ閉鎖処理および加熱処理が行われるので、熱量算出が必要ではなく処理を簡易にできる。
【0057】
さてステップS11で比較対象となる閾値TC+αは、ステップS13において比較対象となる閾値TCよりも高い。これは次の理由による。即ち、貯湯タンク1内の温水では上方から下方へと向かって低下する温度勾配を有するので、温度Th2>温度Th1の関係がある。しかしながら例えば温度の勾配が小さく第1位置と第2位置との差が小さい場合には、温度Th1,Th2はほぼ等しい値を採りえる。このように温度Th1,Th2が互いに等しくなったとしても、閾値TC+αは閾値TCよりも大きいので、貯湯タンク1の湯水の消費によって温度Th2が低下しても、それが閾値TCを下回る前に温度Th1が閾値TC+αを下回る。よって、たとえ温度Th1,Th2が互いに等しい場合であっても、より確実にステップS12をステップS14よりも先に実行できる。これによって、ヒートポンプ9の加熱処理をより確実にステップS14よりも先に実行することができ、適切に湯切れを抑制することができる。
【0058】
なお温度Th1,Th2が互いに等しくても適切に湯切れを抑制することができるので、第1位置及び第2位置を互いに等しくしてもよい。言い換えれば、ステップS11,S13で用いるサーミスタを同じサーミスタとしてもよい。
【0059】
第3の実施の形態.
第3の実施の形態では、
図5に示すように、複数の給湯装置100A〜100Cが設けられる。なお
図5の例示では3台の給湯装置100A〜100Cが設けられているが、2台以上の給湯装置が設けられていれば良い。給湯装置100A〜100Cの各々は第1又は第2の実施の形態にかかる給湯装置と同一の構成を有する。よって給湯装置100A〜100Cの構成については詳細な説明を省略する。
【0060】
ただし
図5に示すように、給湯装置100A〜100Cの第1給湯経路20は互いに接続されて給湯部7(例えば食器洗い機など)へと繋がる。
図5の例示では、第1給湯経路20の各々は、第1バルブ21よりも下流側で共通の経路25に接続され、経路25を介して給湯部7に繋がる。
【0061】
また給湯装置100A〜100Cの第2給湯経路35は互いに接続されて給湯部8(例えば風呂、台所又は洗面台の温水用蛇口など)へと繋がる。第2給湯経路35の各々も第2バルブ31よりも下流側で共通の経路36に接続され、経路36を介して給湯部8に繋がる。
【0062】
このような給湯システムにおいても、各給湯装置100A〜100Cは第1又は第2の実施の形態で説明したように動作する。したがって湯切れを抑制できる。
【0063】
また各給湯装置100A〜100Cで実行されるステップS3又はステップS12において、閉鎖処理の対象となるバルブを給湯装置100A〜100C毎に異ならせても良い。例えば給湯装置100A,100Cでは第1バルブ21を閉じ、給湯装置100Bでは第2バルブ31を閉じても良い。これによって、給湯部7,8の両方に給湯可能な時間帯を長くすることができる。
【0064】
もちろん、ステップS3又はステップS12において、閉鎖処理の対象となるバルブを給湯装置100A〜100Cの別によらずに互いに同じくしても構わない。これによって、ステップS3又はステップS12においてバルブが閉じられない経路に繋がる給湯部への給湯を、優先的に確保することができる。
【0065】
また
図5の例示では、第1給湯経路20の全てと第2給湯経路30の全てとにそれぞれバルブ21,31が設けられているので、貯湯タンク1のいずれに湯切れが生じたとしても、その湯切れが生じた貯湯タンク1からの出湯を停止することができる。したがって、湯切れが生じて水しか供給できない貯湯タンク1から、その水が供給されることを回避できる。よって、湯切れが生じていない他の貯湯タンク1からの湯と、湯切れが生じた貯湯タンク1からの水とが混ざって、温水の温度が所望の値から低下することを防止できる。
【0066】
第4の実施の形態.
第4の実施の形態では、
図6に示すように、複数の給湯装置100A〜100Cが設けられる。
図6の例示では3台の給湯装置が設けられているものの、複数台の給湯装置が設けられれば良い。
【0067】
給湯装置100B,100Cは第1又は第2の実施の形態にかかる給湯装置と同一であるものの、給湯装置100Aはバルブの有無という点で第1又は第2の実施の形態にかかる給湯装置と相違する。
図6の例示では、給湯装置100Aは第1バルブ21を備えていない。ただし給湯装置100Aに第1バルブ21が設けられていてもよく、また第1バルブ21が設けられる代わりに第2バルブ31が省略されてもよい。或いは給湯装置100Aに第1バルブ21及び第2バルブ31の両方が設けられていなくても良い。
【0068】
給湯装置100A〜100Cの第1給湯経路20はそれぞれ配管20A〜20Cを有し、またいずれもが共通配管25を共有して有する。共通配管25は給湯部7に繋がる。配管20Aは共通配管25と給湯装置100Aの貯湯タンク1とを接続し、配管20Bは共通配管25と給湯装置100Bの貯湯タンク1とを接続し、配管20Cは共通配管25と給湯装置100Cの貯湯タンク1とを接続する。配管20A〜20Cの各々には第1バルブ21が設けられる。
【0069】
給湯装置100A〜100Cの第2給湯経路35は、それぞれ配管30A〜30Cを有し、またいずれもが共通配管36を共有して有する。共通配管36は給湯部8に繋がる。配管30Aは共通配管36と給湯装置100Aの貯湯タンク1とを接続し、配管30Bは共通配管36と給湯装置100Bの貯湯タンク1とを接続し、配管30Cは共通配管36と給湯装置100Cの貯湯タンク1とを接続する。配管30A〜30Cの各々には第2バルブ31が設けられる。配管30A〜30Cは他の実施の形態で述べた経路30,33に相当する。
【0070】
また
図6の例示では、給湯装置100A〜100Cの第2給湯経路35は、それぞれ配管32A〜32Cを備えている。配管32A〜32Cは他の実施の形態で述べた経路32に相当するので、詳細な説明は省略する。
【0071】
給湯装置100B,100Cは第1又は第2の実施の形態で説明したように動作する。給湯装置100Aについては、第1バルブ21又は第2バルブ31が設けられている場合には、適宜に第1又は第2の実施の形態で説明したように動作しても良い。例えば第2バルブ31のみが設けられている場合には、ステップS3又はステップS12において第2バルブ31を閉鎖し、ステップS5又はステップS14の処理を省略してもよい。
【0072】
また給湯装置100Aにおける配管20Aの配管経路の圧力損失は、配管20B,20Cの配管経路の圧力損失よりも高い。これは例えば配管20Aに、その断面積を低減する絞り部(例えばオリフィス、ブローブ弁)を設けることで実現される。また配管30Aの配管経路の圧力損失は配管30B,30Cの配管経路の圧力損失よりも高い。例これは例えば配管30Aに、その断面積を低減する絞り部を設けることで実現される。
【0073】
このような給湯システムにおいては、優先的に給湯装置100B,100Cの貯湯タンク1から湯が供給される。したがって給湯装置100B,100Cの貯湯タンク1の残湯量が小さいときであっても、給湯装置100Aの貯湯タンク1の残湯量は比較的大きい状態となりやすい。よって、給湯装置100B,100Cが第1又は第2の実施の形態で説明した処理により第1バルブ21及び第2バルブ31を閉じたとしても、給湯装置100Aから給湯部7,8へと湯を供給することができる。
【0074】
つまり、給湯装置100Aの貯湯タンク1に蓄えられる温水を、給湯装置100B,100Cに湯切れが生じたときのバックアップ用の温水として機能させることができる。
【0075】
そして、給湯装置100B,100Cにおいて第1バルブ21及び第2バルブ31のいずれかが閉じられるときには、給湯装置100B,100Cにおいてヒートポンプ9による加熱処理が実行される。よって仮に給湯装置100B,100Cにおいて湯切れが生じたとしても、給湯装置100Aから湯を供給している間に給湯装置100B,100Cの貯湯タンク1の湯量を増大することができる。つまり、バックアップ用の温水を供給している間に、給湯装置100B,100Cの貯湯タンク1の湯量を増大させて、再び給湯装置100B,100Cから温水を供給できるようにするのである。
【0076】
以上のように本ヒートポンプシステムによれば、湯切れを更に抑制することができる。なお本実施の形態では、配管20Aが配管20B,20Cよりも高い圧力損失を有し、配管30Aが配管30B,30Cよりも高い圧力損失を有している、何れか一方が高い圧力損失を有していれば良い。
【0077】
なお
図6の例示では、給水配管10に減圧弁11が設けられる。減圧弁11は市水の圧力を所望の圧力に減圧して貯湯タンク1および配管32A〜32Cへと供給する。
【0078】
さて
図6の例示では、配管20A,30Aの配管経路の圧力損失を例えば絞り部によって高めている。この構造は、減圧弁11の下流側で配管経路の圧力損失を高めているので、好適である。なぜなら仮に減圧弁11よりも上流側に絞り部を設ければ、減圧弁11によって所望に圧力の水が供給されるので、絞り部によって低下した水圧が、この所望の圧力よりも高ければ絞り部の機能が実効しないからである。言い換えれば、
図6に例示するように、配管20A,30Aの配管経路における圧力損失を高めれば、給水配管10における減圧弁11の設置位置には制限が生じない。よって減圧弁11を設置しやすい。
【0079】
一方で、絞り部は例えば給水配管10に設けられても良い。ただし
図6の例示では、給水配管10に減圧弁11が設けられるので、減圧弁11よりも下流側で給水配管10に設けられる。この絞り部によっても貯湯タンク1の出湯を抑えることができる。これは次の理由による。即ち、この絞り部によって貯湯タンク1への給水配管10を介した給水が抑制される。また貯湯タンク1は常に湯水で満たされるので、給水を抑制することで、貯湯タンク1からの配管20A,30Aを介した出湯を抑えることができるのである。
【0080】
また接続部34の混合弁によって混合比が決定される場合であれば、配管30Aからの出湯を抑えるために配管32Aに絞り部が設けられても良い。配管32Aから当該混合弁に流入する水を抑えることができるので、混合比が一定であれば貯湯タンク1からの配管20Aを介した出湯も抑えられるからである。