特許第6019874号(P6019874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019874
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】バッテリパックの排気構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20060101AFI20161020BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20161020BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B60K1/04 Z
   B62D25/20 G
   H01M2/10 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-162422(P2012-162422)
(22)【出願日】2012年7月23日
(65)【公開番号】特開2014-19379(P2014-19379A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】淡川 拓郁
(72)【発明者】
【氏名】三島 惇
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−148850(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2371604(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00 − 6/12
B60K 7/00 − 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの上方に配置され、内部に電池を内蔵するバッテリパックと、一端が前記バッテリパックに連結され、かつ他端が車室外に配置される電気機器に連結される電力ケーブルと、一端が前記バッテリパックの内部と連通するように接続され、かつ他端に設けられる排気口が車室外の空間と連通する排気管と、を備えるバッテリパックの排気構造において、
前記フロアパネルは、前記電力ケーブルを挿通させる貫通孔を備え、
前記貫通孔および前記電力ケーブルを下側から覆う保護カバーを、該保護カバーの開口部の縁部が前記フロアパネルの下面側に当接するように配置して取り付け、
前記排気管を前記保護カバーの上方にて前記フロアパネルを貫通させ、
前記排気口を前記保護カバー内の空間に開口させたことを特徴とするバッテリパックの排気構造。
【請求項2】
前記バッテリパックは、前記電力ケーブルを接続するケーブル接続部と、前記排気管を接続する排気管接続部とが同一側面に配置され、前記貫通孔および前記保護カバーを前記バッテリパックの側方のうち前記ケーブル接続部および前記排気管接続部と隣接する部位に配置したことを特徴とする請求項1に記載のバッテリパックの排気構造。
【請求項3】
前記バッテリパックをフロントシートの下側に配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバッテリパックの排気構造。
【請求項4】
前記保護カバーは底面に水抜き用の孔を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバッテリパックの排気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に搭載される二次電池を収容したバッテリパックの排気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるバッテリパックとしては、電池(二次電池)を収容したものがある。このようなバッテリパックでは、電池に異常が生じた際に電池からガスなどが排出される。このようなバッテリパックを車両の車室内に搭載する場合、排出されたガスなどを車室外に排出するための排気管をバッテリパックに設けている。そして、乗員の安全を守るために、この排気管の先端部の排気口を車両のフロアパネルの下側に配置している。従来、走行時に付着する泥や雪などによる排気口の目詰まりを避けるために、排気口をフロアパネルの下側のメンバ(クロスメンバなど)内の空間に配置した構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、メンバは、フロアパネルの下側に固定され、かつ車両前後方向に延びる構造材で内部に空間を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−320426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のバッテリパックの排気構造の場合、メンバの配置によって排気管を配置できる領域が限られてしまうという問題点があった。また、このバッテリパックの排気構造は、例えばエンジンルーム内の電気機器と接続される電源ケーブルの配索状態や、車室内に配置される部品の配置状態に依存している。すなわち、上記のバッテリパックの排気構造では、電源ケーブルの配索状態、部品の配置状態により、バッテリパックに接続された排気管の引き回し状態や導出長さが大きく変わる。したがって、上記のバッテリパックの排気構造では、排気管を含むバッテリパックのレイアウトが影響を受けるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、排気管の排気口の目詰まりを防止しつつ排気管を含むバッテリパックの車両への搭載性を向上できるバッテリパックの排気構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、フロアパネルの上方に配置され、内部に電池を内蔵するバッテリパックと、一端がバッテリパックに連結され、かつ他端が車室外に配置される電気機器に連結される電力ケーブルと、一端がバッテリパックの内部と連通するように接続され、かつ他端に設けられる排気口が車室外の空間と連通する排気管と、を備えるバッテリパックの排気構造において、フロアパネルは、電力ケーブルを挿通させる貫通孔を備え、貫通孔および電力ケーブルを下側から覆う保護カバーを、該保護カバーの開口部の縁部がフロアパネルの下面側に当接するように配置して取り付け、排気管を保護カバーの上方にてフロアパネルを貫通させ、排気口を保護カバー内の空間に開口させたことを特徴とする。
【0007】
上記態様としては、バッテリパックは、電力ケーブルを接続するケーブル接続部と、排気管を接続する排気管接続部とが同一側面に配置され、貫通孔および保護カバーをバッテリパックの側方のうちケーブル接続部および排気管接続部と隣接する部位に配置することが好ましい。
【0008】
上記態様としては、バッテリパックをフロントシートの下側に配置する構成とすることができる。
また、上記態様としては、保護カバーは底面に水抜き用の孔を設けた構成とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、排気管の排気口の目詰まりを防止しつつ排気管の車両への搭載性を向上できるバッテリパックの排気構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るバッテリパックの排気構造を適用した車両の側面説明図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係るバッテリパックの排気構造を適用した車両の左フロントシートを取り外した状態を示す平面説明図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係るバッテリパックの排気構造を示す車両の平面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係るバッテリパックの排気構造を示す車両の底面図である。
図5図5は、図3のV−V線で切断した状態を示す車両の前後方向断面図である。
図6図6は、図3のVI−VI線で切断した状態を示す車両の左右方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の各実施の形態に係るバッテリパックの排気構造の詳細を図面に基づいて説明する。但し、図面相互間において寸法の関係や比率や形状が異なる部分が含まれている。なお、本実施の形態では、説明の便宜を図るために、図中において車両の前後方向(車両前後方向)、左右方向(車両左右方向)、ならびに上下方向(車両上下方向)を矢印で示している。また、以下の説明において、方向を示す用語を使用する場合は、車両前後方向、車両左右方向、車両上下方向を基準にする。
【0012】
[車両の概略構成]
先ず、本実施の形態のバッテリパックの排気構造の説明に先駆けて、バッテリパックの排気構造を適用する車両の概略構成について説明する。本実施の形態に係るバッテリパックの排気構造は、バッテリパックを搭載する各種の車両に適用される。図1に示すように、車両100は、前部にエンジンルーム101を備え、エンジンルーム101の後側に車室102を備える。エンジンルーム101と車室102とは、ダッシュパネル103で区画されている。エンジンルーム101内には、エンジン104、変速機105、バッテリ106などが搭載されている。車室102内には、左右のフロントシート107と、例えば左右一連のリヤシート108などを備えている。
【0013】
図2に示すように、車室102の床は、フロアパネル109で構成されている。フロアパネル109の車両幅方向中央部には、上側に盛り上げられて車両前後方向に沿ってトンネル110が設けられている。このトンネル110は、例えばエンジンルーム101内のエンジン104の駆動力を後輪側へ伝達するための図示しないプロペラシャフトを収納するものである。左右のフロントシート107は、このトンネル110を挟んだフロアパネル109の上に配置されている。フロントシート107は、シートクッション107Aとシートバック107Bとを備える。
【0014】
フロアパネル109の車両幅方向の両端部には、車両前後方向に沿って延びるように、上側に盛り上げられた突堤状のサイドシル111が形成されている。このサイドシル111は、車両幅方向両端部のドア開口部の下端部となるフロアパネル109を車室102内側に突出するように湾曲させたものである。このサイドシル111は、フロアパネル109の強度を高めている。
【0015】
フロアパネル109における一対のシートクッション107Aの車両前後方向の前端縁の下方のそれぞれの領域には、トンネル110とサイドシル111とを連結するクロスメンバ112が設けられている。クロスメンバ112には、トンネル110側の上面とサイドシル111側の上面とに、それぞれ前側シート取り付け部113が設けられている。また、クロスメンバ112より後方には、トンネル110の側部とサイドシル111側のフロアパネル109の上面とに、それぞれ後側シート取り付け部114が設けられている。一対の前側シート取り付け部113と一対の後側シート取り付け部114には、シートクッション107Aが取り付けられている。
【0016】
[バッテリパック]
図3に示すように、バッテリパック1は、略直方体形状のケース11内に電池1Aが内蔵されている。ケース11は、電気絶縁性を有する材料で形成された略直方体形状の剛性を有する筐体である。本実施の形態においては、このバッテリパック1は、左側のフロントシート107の下方のフロアパネル109の上に搭載される。図3に示すように、バッテリパック1内の電池1Aには、第1電力ケーブル2と第2電力ケーブル3の一端部(ケーブル接続部)が接続されている。第1電力ケーブル2は、エンジンルーム101内の電気機器としてのバッテリ106に接続される。第2電力ケーブル3は、例えばインストルメントパネル(図示省略する)に配置される電気機器に接続される。そして、エンジン104の運転を停止するアイドリングストップ時に、バッテリパック1内の電池1Aから第1電力ケーブル2および第2電力ケーブル3を介してエンジンルーム101内の補機や車室102内の電気機器に電力が供給される。
【0017】
図3に示すように、第1電力ケーブル2および第2電力ケーブル3は、ケース11の一つの側面11Aからケース11の外側へ共に導出されている。また、ケース11の一つ側面11Aには、一端(排気管接続部)がバッテリパック1の内部と連通するように連結された排気管4がケース11の外側へ導出されている。排気管4の他端は、バッテリパック1内で発生したガスを排出するための排気口4Aが設けられている。なお、図3に示すように、ケース11の下部の四隅には、側方へ突出する鍔状のケース取り付け部11Bが形成されている。
【0018】
[バッテリパックの排気構造]
図3図5および図6は、左側のフロントシート107を配置する場所を示している。図5に示すように、この場所のフロアパネル109の上には、フロアパネル109側に固定されたバッテリパック用ブラケット115を介してバッテリパック1が取り付けられている。図6に示すように、このバッテリパック用ブラケット115は、略U字形状に湾曲した樋状の部材である。このバッテリパック用ブラケット115の上部の四隅には、バッテリパック1のケース取り付け部11Bに対応するブラケット側取り付け部115Aが設けられている。なお、図6に示すように、このバッテリパック用ブラケット115が設けられたフロアパネル109の下面には、車両前後方向に延びるように配置された補強材であるサイドメンバ116が設けられている。
【0019】
図3に示すように、本実施の形態のバッテリパックの排気構造では、フロアパネル109に、第1電力ケーブル2を挿通させる貫通孔109Aと、排気管4を挿通させる貫通孔109Bが形成されている。このように貫通孔109A,109Bは、バッテリパック1の側方のうち第1電力ケーブル2を電池1Aに接続するケーブル接続部およびバッテリパック1に排気管4を接続する排気管接続部と隣接する部位に配置している。これら貫通孔109A,109Bが形成された部分を含む領域のフロアパネル109の下面には、保護カバー5が設けられている。図4および図5に示すように、この保護カバー5は、上部が開口された容器形状のカバー本体51と、このカバー本体51の周縁の例えば3箇所に形成された取り付け部52と、を有している。また、カバー本体51の底部には、水抜き孔51Aが形成されている。図4に示すように、保護カバー5は、フロアパネル109の下面に上部の開口部の縁部が当接するように配置され、カバー取り付け部52がフロアパネル109に、例えばスタッドやボルトを用いて固定されている。
【0020】
図3に示すように、本実施の形態では、バッテリパック1から導出された第1電力ケーブル2が貫通孔109Aに挿通され、フロアパネル109の下側をエンジンルーム101内のバッテリ106に向けて配索されている(図1参照)。ここで、保護カバー5は、貫通孔109Aを通った第1電力ケーブル2が貫通孔109Aから下方へ垂れ下がることを防止している。図6に示すように、排気管4は、フロアパネル109の貫通孔109Aの近傍に開口した貫通孔109Bに挿通され、先端の排気口4Aが保護カバー5内の空間に開口するように配置されている。なお、排気管4の排気口4Aは、フロアパネル109の下側を配索される第1電力ケーブル2と上下に重ならない位置に配置されることが好ましい。
【0021】
[バッテリパックの排気構造の作用・効果]
上述したバッテリパックの排気構造では、フロアパネル109に形成した貫通孔109Aから下側に出る第1電力ケーブル2の部分を保護カバー5によって覆ったため、第1電力ケーブル2がフロアパネル109から下方に垂れ下がって地上の障害物と接触することが防止できる。そして、排気管4の排気口4Aを第1電力ケーブル2の保護カバー5内に開口させているため、泥や雪の付着による排気口4Aの目詰まりを防止できる。
【0022】
また、本実施の形態では、貫通孔109A,109Bおよび保護カバー5の位置は、ある程度自由な位置に設定可能である。したがって、貫通孔109A,109Bと保護カバー5を排気管4のバッテリパック1に近い位置に配置すれば、排気管4の長さを短縮できるとともに、曲げる箇所を減らすことができる。このような本実施の形態の効果は、従来のように排気口4Aを、車体のメンバ類の内部に開口させる場合と比べ、大幅に排気管4の構造を簡素化でき、排気管4の車両への搭載性を向上させることができる。
【0023】
上記のバッテリパックの排気構造では、バッテリパック1におけるケーブル接続部および排気管接続部と、保護カバー5と、の距離を短くでき、第1電力ケーブル2、第2電力ケーブル3および排気管4の長さを短縮できる。このため、本実施の形態では、第1電力ケーブル2、第2電力ケーブル3、排気管4などをバッテリパック1の周辺の空間に効率的にレイアウトすることができる。
【0024】
一般に、フロントシート107下側の狭い空間にバッテリパック1を配置する場合、排気管4と第1電力ケーブル2と第2電力ケーブル3とをバッテリパック1の周辺の空間に効率的に配置することが必要となる。本実施の形態では、上記構成により、排気口4Aへの目詰まりを防止しつつ排気管4をより効率的にバッテリパック1の周辺の空間に効率的に配置できる。
【0025】
また、本実施の形態に係るバッテリパックの排気構造では、バッテリパック1をフロアパネル109に対してバッテリパック用ブラケット115を介して高い位置に配置できるため、万一フロアパネル109上に水などをこぼした際に、バッテリパック1が濡れることを防止できる。
【0026】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、この実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0027】
例えば、上記実施の形態では、バッテリパック1がバッテリパック用ブラケット115を介してフロアパネル109に取り付けられているが、本発明はこのような取り付け構造に限定されるものではなく各種の取り付け構造を適用することができる。また、上記実施の形態では、バッテリパック1をフロントシート107の下側に配置したが、バッテリパック1の配置位置はこれに限定されるものではない。
構成としてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 バッテリパック
1A 電池
2 第1電力ケーブル
3 第2電力ケーブル
4 排気管
4A 排気口
5 保護カバー
11A 側面
100 車両
101 エンジンルーム
102 車室
104 エンジン
106 バッテリ
107 フロントシート
109 フロアパネル
109A,109B 貫通孔
110 トンネル
113 前側シート取り付け部
114 後側シート取り付け部
図1
図2
図3
図4
図5
図6