(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。まず、本発明の実施の形態に係る撹拌スクリューを備える画像形成装置について説明する。
【0018】
<画像形成装置の全体構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る撹拌スクリューを備える画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。
図2は、同実施の形態に係る画像形成装置1の制御系の主要部を示す図である。
【0019】
図1、2に示す画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に転写(一次転写)し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙Sに転写(二次転写)することにより、画像を形成する。
【0020】
また、画像形成装置1には、CMYKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0021】
図1、2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60、及び制御部100を備える。
【0022】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
【0023】
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピュータ)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙Sに画像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0024】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11及び原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備える。
【0025】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
【0026】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0027】
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
【0028】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定又はユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0029】
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、及び中間転写ユニット42等を備える。
【0030】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示すこととする。
図2では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0031】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、及びドラムクリーニング装置415等を備える。
【0032】
感光体ドラム413は、例えばドラム径が80mmであるアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。
【0033】
電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネート樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
【0034】
制御部100が感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413は一定の周速度で回転する。
【0035】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。
【0036】
露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成されることとなる。
【0037】
現像装置412は、各色成分の現像剤(例えば、小粒径のトナーと磁性体とからなる二成分現像剤)を収容しており、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。現像装置412の詳細な構成については後述する。
【0038】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレード等を有し、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーを除去する。
【0039】
中間転写ユニット42は、中間転写体となる中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、二次転写ローラー423、駆動ローラー424、従動ローラー425、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
【0040】
中間転写ベルト421は無端状ベルトで構成され、駆動ローラー424及び従動ローラー425に張架される。中間転写ベルト421は、駆動ローラー424の回転により矢印A方向に一定速度で走行する。一次転写ローラー422によって、中間転写ベルト421が感光体ドラム413に圧接されると、中間転写ベルト421に各色トナー像が順次重ねて一次転写される。
【0041】
そして、中間転写ベルト421に二次転写ローラー423が圧接されることにより形成された転写ニップを用紙Sが通過する際、中間転写ベルト421に一次転写されたトナー像が用紙Sに二次転写される。
【0042】
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接されるベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残存する転写残トナーを除去する。
【0043】
定着部60は、搬送されてきた用紙Sを定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。定着部60には、エアを吹き付けることにより、定着面側部材(例えば定着ベルト)又は裏面側支持部材(例えば加圧ローラー)から用紙Sを分離させるエア分離ユニットを配置してもよい。
【0044】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、及び搬送ローラー部53等を備える。
給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a〜51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。
【0045】
搬送ローラー部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー対を有する。給紙トレイユニット51a〜51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送ローラー部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。
【0046】
そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0047】
図3は、本発明の実施の形態に係る撹拌スクリューを備える画像形成装置の現像ユニットの説明に供する図であり、現像装置の模式図である。
図3に示すように、現像装置412は、感光体ドラム413にトナー像を形成する現像ユニット81、及び現像ユニット81にトナーを補給するトナー補給部82を備える。また、図示を省略するが、現像装置412は、現像ユニット81にキャリアーを補給するキャリアー補給部を備える。
【0048】
現像ユニット81は、現像ローラー811(トナー担持体)、搬送ローラー812(現像剤担持体)、撹拌スクリュー90−1、90−2、現像剤規制部材815、現像容器816、及びトナー濃度検出センサー83等を備える。すなわち、現像ユニット81は、二成分現像方式と一成分現像方式を組み合わせた、いわゆるハイブリッド現像方式により感光体ドラム413にトナー像を形成する。なお、
図3に示す現像ユニット81の構成は一例であり、二成分現像剤を用いて、すなわち二成分現像方式(ハイブリッド現像方式を含む)により、感光体ドラム413(
図1参照)にトナー像を形成するものであれば、特に制限はない。
【0049】
現像ローラー811、搬送ローラー812、撹拌スクリュー90−1、90−2は、それぞれ平行に配置され、制御部100によって現像ユニット駆動モーターM1(
図2参照)が駆動されることにより、回転する。
【0050】
現像容器816には、現像剤の搬送方向上流側から下流側(
図3では右側から左側)に向かって、撹拌スクリュー90−2、撹拌スクリュー90−1、搬送ローラー812、現像ローラー811が順に配置される。
【0051】
現像容器816は、現像剤を収容するものであり、現像剤に含まれるトナー及びキャリアーを補給するための現像剤補給口816a(
図3では撹拌スクリュー90−2の略上方)を有する。トナー補給部82から送り出されたトナー及びキャリアー補給部(図示略)から送り出されたキャリアーは、現像剤補給口816aを介して現像容器816に補給される。
【0052】
また、現像容器816は、現像剤を排出する現像剤排出口816b(
図3では搬送ローラー812の略下方)を有する。現像容器816内の現像剤は、現像剤排出口816bを介して定期的に排出され、現像剤回収容器(図示略)に回収される。
【0053】
現像容器816は、撹拌室816c、816dを有する。現像剤は、撹拌室816c、816d内で回転可能に支持される撹拌スクリュー90−1、90−2によって、撹拌されて現像ローラー811及び搬送ローラー812側に搬送される。
【0054】
撹拌スクリュー90−1、90−2は、軸方向に延びるスクリュー状の羽根部材92(
図4参照)を有し、攪拌室816c、816d内に、それぞれの端部どうしを対向させた状態で、搬送方向が逆になるように配置されている。
【0055】
撹拌スクリュー90−1、90−2は、攪拌室816c、816dの間で現像剤を循環搬送しながら攪拌して混合する。
【0056】
すなわち、現像剤は、回転する撹拌スクリュー90−2によって、撹拌スクリュー90−2の一端側から他端側に撹拌されつつ搬送される。次いで、撹拌スクリュー90−2の他端に至った現像剤は、撹拌スクリュー90−1によって、撹拌スクリュー90−2の他端側で対向する撹拌スクリュー90−1の他端から撹拌スクリュー90−1の一端側に撹拌されつつ搬送される。
【0057】
このように撹拌室816c、816d内で回転する撹拌スクリュー90−1、90−2により、現像剤に含まれるトナーとキャリアーが摩擦接触し、互いに逆の極性に帯電する。ここでは、キャリアーは正極性、トナーは負極性に帯電されるものとする。
【0058】
正極性に帯電したキャリアーの周囲に、負極性に帯電したトナーが、主として両者の電気的な吸引力により付着する。そして、現像剤は、撹拌スクリュー90−1によって搬送される過程で、搬送ローラー812に供給される。また、現像剤は、撹拌スクリュー90−2によって搬送される過程で、トナー補給部82から供給される新しいトナーとともに撹拌され混合される。
【0059】
搬送ローラー812は、回転不能に固定された磁石体812aと、磁石体812aの周囲に回転可能に配置された円筒状の搬送スリーブ812bを有する、いわゆるマグネットローラーである。
【0060】
搬送スリーブ812bの略上方には、現像剤規制部材815が、搬送スリーブ812bから所定距離だけ離間して対向配置される。現像剤規制部材815は、ステンレス鋼材等の磁性体で形成された板状の部材であり、搬送ローラー812と平行に延在する。
【0061】
磁石体812aは、搬送ローラー812の軸方向に延在する、複数の磁極(図示略)を有する。これらの複数の磁極によって、搬送スリーブ812bで現像剤を搬送するための磁界(磁力線)が形成される。
【0062】
搬送スリーブ812bに供給された現像剤は、磁石体812aによって形成された磁力線に沿って穂立ちし、いわゆる磁気ブラシを形成する。そして、現像剤は、搬送スリーブ812bの回転に伴い反時計回りに搬送され、現像剤規制部材815とのギャップを通過することで一定厚に規制される。
【0063】
現像ローラー811は、アルミニウム等の金属からなる導電性ローラーである。現像ローラー811は、導電性ローラーの外周面にポリエステル樹脂等のコーティングが形成されたものであってもよい。
【0064】
現像ローラー811と搬送ローラー812との間に電界を形成することにより、搬送スリーブ812bで搬送されている現像剤からトナーだけが脱離して、現像ローラー811に供給される。そして、現像ローラー811は、感光体ドラム413にトナーを供給して、感光体ドラム413上の静電潜像を可視化する。
【0065】
また、現像ユニット81には、現像剤を徐々に入れ替えるトリクル現像方式が採用される。すなわち、現像ユニット81は、現像剤補給口816aから現像剤(トナー及びキャリアー)を定期的に補給するとともに、余剰分の現像剤を現像剤排出口816bから排出するように構成される(トリクル機構)。トリクル機構としては、公知の循環オーバーフロー型や液面オーバーフロー型のものを適用できる。これにより、劣化したキャリアーが新しいキャリアーに入れ替われるので、現像容器816内のトナーは常に均一に帯電される。したがって、プリント枚数や環境変化に左右されず安定した画像品質が実現される。
【0066】
トナー濃度検出センサー83は、現像容器816内の現像剤の透磁率を検出する透磁率センサーで構成される。トナー濃度検出センサー83は、現像容器816の底部(
図3では撹拌スクリュー90−2の略下方)に設けられた開口に検出子が臨むように配置される。トナー濃度検出センサー83のセンサー出力(透磁率を示す出力電圧)に基づいて、現像剤のトナー濃度を検出することができる。トナー濃度検出センサー83からのセンサー出力は、制御部100がトナー補給の要否を判定する際に用いられる。
【0067】
トナー補給部82は、トナーが収容されたトナーボックスとトナー補給ローラーを備える(いずれも図示略)。制御部100によってトナー補給用モーターM2(
図2参照)が駆動されることにより、トナー補給ローラーが回転する。これに伴い、所定量のトナーが現像ユニット81に補給される。トナー補給部82による一回のトナー補給量は、一定量としてもよいし、トナー消費量に応じて変更してもよい。
【0068】
<撹拌スクリューの構成>
本実施の形態に係る画像形成装置1の特徴である撹拌スクリュー90−1、90−2について詳細に説明する。なお、撹拌スクリュー90−2は、撹拌スクリュー90−1と同様に構成され、現像容器816において、撹拌スクリュー90−1と螺旋方向が逆になるように配置されるものである。よって、ここでは、
図4〜
図6を用いて、撹拌スクリュー90−1の説明のみ行い、撹拌スクリュー90−1と同様の構成である撹拌スクリュー90−2の詳細については省略する。
【0069】
図4は、撹拌スクリューの平面図であり、
図5は、撹拌スクリューの要部を示す斜視図であり、
図6は、同撹拌スクリューの側面図である。
【0070】
図4に示す撹拌スクリュー90−1は、軸部91と、軸部91周りに形成された羽根部材92と、羽根部材92において軸部91の回転軸方向で対向するスクリュー面間に回転軸と平行に架け渡された線部材95とを備える。
【0071】
軸部91は、その両端部91a、91bで、現像容器816(
図3参照)内に、具体的には、撹拌室816c(816d)内に回転自在に支持される。
【0072】
羽根部材92は、軸部91の外周にスクリュー状に突出して形成され、軸部91の回転軸方向に現像剤を撹拌しつつ搬送する。羽根部材92は、軸部91とともにABS樹脂(Acrylonitrile、Butadiene、Styrene共重合合成樹脂)、PC(Polycarbonate)樹脂等の樹脂部材、金属或いは、樹脂と金属とを組み合わせて形成される。
【0073】
軸部91は、強度をもたせるために金属部材で形成し、その周囲の羽根部材92は、複雑形状の加工性に優れた樹脂部材により形成されている。なお、軸部91は、円柱状の金属部材の外周を、羽根部材92と同じ材料である樹脂部材で被覆した構成としてもよい。
【0074】
図4〜6に示すように線部材95は、羽根部材92において回転軸方向で対向する羽根面(スクリュー面)921、922を有する羽根(以下、「スクリュー面部分」ともいう)920間に渡って複数並んで架設されている。
【0075】
線部材95は、高強度分子材料などで作られた繊維部材、或いは、ピアノ線などの金属線金属により形成されており、耐久性能が高い。ここでは、線部材95は、高強度な炭素鋼のピアノ線により形成されている。
【0076】
線部材95は、羽根部材92の一端部92aの端面から他端部92bまで延在する1本の連続した線材である。なお、ここでは、一端部92a及び他端部92bはフランジ状をなしており、線部材95は、羽根部材92において複数の羽根920を回転軸方向に貫通して、一端部92aの内側端面と他端部92bの内側端面との間に架設されている。
【0077】
回転軸と平行な線部材95は、それぞれ、回転軸方向で対向する羽根920間、詳細には対向する羽根920、920のスクリュー面921、922間、で直線となるように張力をかけて配置されている。ここでは、線部材95は、回転軸方向で対向する複数の羽根920のスクリュー面921、922を貫いて羽根部材92に支持されている。
【0078】
図7は、
図6のA―A線部分断面図である。
【0079】
図7に示すように、羽根部材92の羽根920において、線部材95が挿通する部分の厚み(t
max)は、羽根部材92において他の部分(t)よりも、回転軸方向に肉厚となっている。ここでは、線部材95は、羽根920において、他の部分よりも肉厚が厚い部分に挿通され、且つ、固定されて支持されている。また、線部材95は、スクリュー面921、922間で直線となるように張力をかけて配置されている。すなわち、線部材95は、回転軸方向で対向する羽根920間で直線となるように張力をかけて配置されている。線部材95に対する張力は、例えば、羽根部材92の成形時に、羽根部材92のスクリュー面921、922間にインサート成形により配設することで付与して形成してもよい。
【0080】
線部材95は、羽根部材92の羽根920に、回転軸と直交する方向に複数配設されている。
【0081】
図8は、撹拌スクリューにおける線部材の位置関係を示す図であり、撹拌スクリューを軸方向で見た図である。
【0082】
撹拌スクリュー90−1では、線部材95は、軸部91の回転軸を中心として、所定間隔(一定の角度θ)を空けて回転軸を通る平面上に複数本配置されている。
【0083】
ここでは、
図8に示すように、線部材95は、羽根部材92に対して、回転軸を通る平面(回転軸を中心に半径方向に90度毎離れた面)上に、それぞれ複数本並べて配置されている。ここでは、羽根部材92において、回転座標系でθ=一定面とし、θ=90、180、270、degの4面に、半径方向に1.5mm間隔で4本配置している。また、このとき、羽根部材92の直径φ30mm、羽根部材92の回転軸方向で対向する羽根のピッチ(スクリューピッチ)l
S=36mmとし、線部材95をd
l=0.2mmのピアノ線としてもよい。なお、線部材95としてのピアノ線は、羽根部材92の全長(スクリュー長、例えば、300mm)に渡って連続する長さを有するようにしてもよい。
【0084】
次に、この撹拌スクリュー90−1の製造方法について説明する。なお、撹拌スクリュー90−2も同様に製造されるため、撹拌スクリュー90−2の製造方法については省略する。
【0085】
まず、線部材95を所定本数用意するとともに、羽根部材92を成型するための樹脂金型に、線部材95を配置するためのジグを設ける。そして、このジグに線部材95を配置するとともに、軸部91が備える金属柱状部を配置する。その後、金型に羽根部材92となる樹脂を流し込むことで、線部材95及び軸部91の周りに、スクリュー形状の羽根部材92を成型する。
【0086】
このとき、線部材95に若干の張力を付与して金型内のジグに配置することによって、線部材95は、撹拌スクリュー90−1の成形時において、成形された羽根部材92の羽根920間に、テンションがかかった状態で固定される。これにより、撹拌スクリュー90−1を回転駆動した際に、線部材95が、撹拌される現像材によって繰り返し変形されることで切断されることを避けることが出来る。
【0087】
また、撹拌スクリュー90−1の別の製造方法としては、軸部91の周りに、スクリュー状の羽根部材92を形成するための金型を用意し、この金型内に、軸部91を配置して、樹脂を流し込む。これにより、回転軸周りにスクリュー状の羽根部材92が成形されたスクリュー本体を形成する。そして、スクリュー本体における成形後の羽根部材92において、軸方向で対向するスクリュー面を有する羽根920に、軸方向に貫通する貫通穴を作成し、そこに線部材95を通す。そして、羽根920間に通された線部材95を、羽根部材92の両端部92a、92b(或いは両端に位置する羽根)と、貫通穴とに、溶着若しくは接着するか、さらには、締結部材で固定して撹拌スクリュー90−1を製造する。このとき、線部材95には、羽根920間で張力が架けられ、直線状をなすように配設されることが望ましい。
【0088】
このように構成された撹拌スクリュー90−1、90−2を、画像形成装置1の現像ユニット81において、現像容器816の撹拌室816c、816dに配置して、2成分現像剤を所定の回転数(例えば、回転数n=300min
−1)で撹拌する。これにより、原料剤を良好に混合して、現像剤におけるトナーの粉塊を粉砕することができる。この様子を、
図9を用いて説明する。また、トナー1成分の方式に適用しても、現像容器816における攪拌室816c、816d内部の新旧のトナーをむら無く撹拌できた。
【0089】
図9は、本発明の一実施の形態に係る撹拌スクリューにより撹拌される現像剤の状態の説明に供する図である。なお、
図9Aは、スクリュー状の羽根部材のみで撹拌されている現像剤を部分的に示す上面図であり、
図9Bは、本実施の形態の撹拌スクリューで撹拌された現像剤を部分的に示す上面図である。
【0090】
図9Bに示すように、本実施の形態の撹拌スクリュー90−1、90−2によれば、スクリュー状の羽根部材のみで攪拌する場合(
図9A)と比較して、現像剤である粉体の3次元的な挙動が大きくなるとともに、軸方向に並進する領域が少なくなっており、良好な攪拌状態であることがわかる。
【0091】
また、線部材95によって、羽根部材92の外径よりも内側の領域(中心軸側の領域)を、攪拌できる。このとき、スクリュー面間に配設された線部材95は、搬送方向には抵抗が少ないため、例えば、特許文献5に示す従来のメッシュ部材を備える撹拌スクリューと異なり、搬送量が著しく減少することはない。
【0092】
また、撹拌スクリュー90−1、90−2が、現像容器816内で、回転軸を中心に回転すると、線部材95は、現像容器816内の現像剤を、剪断応力を作用して撹拌する。これにより、現像剤において、液架橋付着力や圧力で形成された粉塊がある場合、粉塊が、複数の線部材95に対して、その回転方向に位置すると、線部材95は、その粉塊に対して、回転方向に剪断応力を作用して撹拌する。つまり、現像剤の粉塊は、線部材95の剪断応力により、粉砕されて、回転軸方向に搬送される。
【0093】
このように、羽根部材92の回転により撹拌されつつ回転軸方向に沿って搬送される現像剤に対して、線部材95は、剪断応力を作用して、現像剤の粉塊を細かく粉砕して撹拌し、現像剤が粉塊の状態で回転軸方向に並進する領域を少なくできる。
【0094】
よって、撹拌スクリュー90−1、90−2は、従来の撹拌スクリューに相当する現像剤搬送部材と比較して、大きくトルクを増やすことがないとともに、大きく搬送量を減らすこともなく、現像剤をむら無く撹拌して、搬送できる。これにより、搬送ローラー812に搬送される現像剤では、トナー濃度の均一化が図れる。
【0095】
また、線部材95は、羽根部材92において回転軸方向で離間する一端部92aの端面から他端部92bの端面まで連続する一本の線材である。すなわち、羽根920間の線部材95は、羽根部材92の一端部92aから他端部92bに渡って回転軸に沿って配置された線材の一部で形成される。
【0096】
これにより、羽根部材92の全長に渡って線部材を配設する場合、羽根部材92の羽根920間毎に線部材を架設して配設する必要がなく、羽根部材92における各羽根920に、回転軸方向に一本の線材を挿通して支持させることで撹拌スクリュー90−1、90−2を容易に形成できる。
【0097】
また、本実施の形態によれば、線部材95は、羽根部材92に、回転軸を通る平面に複数本配置されている。このため、撹拌スクリュー90によれば、複数の線部材95の間隔に相当する現像剤の粉塊を粉砕できる。
【0098】
ところで、特許文献1,2に示す従来の撹拌スクリューでは、スクリュー状の羽根部材にパドル等の突起物を付加して撹拌性能を高めようとしている。この構成では、突起物によって、撹拌スクリューの駆動トルクが大きくなる点と、現像剤の搬送量が減少する点とはトレードオフの関係となる。
【0099】
これに対して、本実施の形態の撹拌スクリューでは、スクリュー状の羽根部材92における羽根920間に線部材95を配置して現像剤を撹拌、混合している。このため、従来と比較して、上記トレードオフの関係を考慮して突起物を取り付ける必要がなく、簡易な構成で、確実に、現像剤を撹拌、混合できる。
【0100】
また、複数の線部材95は、羽根部材92に、回転軸を通る平面上に並んで互いに平行に配置されている。これにより、羽根部材92を成形する金型内に、線部材95を配置して樹脂材料で羽根部材95を成形することで撹拌スクリュー90−1を大量生産する場合、羽根部材92を成形する金型の分割数を減らすことができる。具体的には、
図8で示すように、撹拌スクリュー90−1を成形する金型B1〜B4を、成形されてなる撹拌スクリュー90−1から放射方向外方(
図8で矢印Cで示す方向)に外す際に、線部材95が並ぶ平面で分割することができる。これにより、撹拌スクリュー90−1、90−2の金型(
図8の破線B1〜B4で示す)を設計する際に、その分割数を少数に抑えることができる。
【0101】
さらに、羽根部材92の羽根920では、線部材95が挿通される部分(スクリュー面部分)は、他の部分よりも肉厚が厚い。このため、軸部91及び羽根部材92を有するスクリュー本体を、樹脂材料で金型により大量生産する場合、金型において羽根920が対応する部位が、羽根920から抜け易くなり、金型の耐久性能の向上を図ることができる。
【0102】
なお、本実施の形態の撹拌スクリュー90−1、90−2では、スクリュー状の羽根部材92において、回転軸方向で対向する羽根920間に配設される線部材95は、羽根部材92の全長に渡って配置された一本の線材としたが、これに限らない。例えば、線部材95が、スクリュー状の羽根部材92において、回転軸方向で並ぶ羽根920間毎に、互いに平行となる位置で架設された構成としてもよい。
【0103】
また、本実施の形態の撹拌スクリュー90−1、90−2では、スクリュー状の羽根部材92において軸部91の回転軸方向で対向する羽根920間に配設される線部材95は、回転軸と平行であるが、これに限らない。例えば、線部材95が、回転軸に対して傾いた方向で延在するように羽根920間に架け渡される構成としても良い。
【0104】
本実施の形態の撹拌スクリュー90では、線部材95は、羽根部材92の羽根920間に、回転軸を通る平面に複数配置された構成としたが、これに限らず、複数の線部材95は、羽根部材92の羽根920間で、回転軸と平行に、任意の位置で架設されてもよい。
【0105】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。