(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
現像主磁極を含む複数の磁極が周方向に配列して着磁されたマグネットロールと、像保持体に対向して配置され、前記マグネットロールを収容し、現像剤を保持して搬送する円筒状の現像剤保持体と、を備えた現像部材と、
トナー及び磁性キャリアを含む二成分現像剤が収容される現像剤収容室と、を有し、
現像領域において、前記マグネットロールによって前記現像剤保持体の周面上で該周面と垂直方向に作用する磁気吸引力の周方向の分布が、 前記現像剤保持体の現像剤搬送方向における前記現像領域の上流端から下流端に向かって増加する勾配を有し、 前記現像領域の上流端から該現像領域の中央位置までの増加量が、該中央位置から下流端までの増加量より大きくなるように、前記マグネットロールに複数の磁極が着磁されていることを特徴とする現像装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である画像形成装置の概略構成図である。
この画像形成装置は、4色のトナーを用いてカラー画像を形成する画像形成装置であり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、これらと対向する中間転写ベルト11とを備えている。
中間転写ベルト11は、回転駆動される駆動ロール15と、中間転写ベルト11の幅方向への偏りを調整する調整ロール16と、対向ロール17とに張架されている。そして、上記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと対向するように配置され、図中に示す矢印Aの方向に周面が周回駆動されるものである。
【0016】
この中間転写ベルト11の周回移動方向における上流側から順に、イエローのトナー像を形成する画像形成ユニット10Y、マゼンタのトナー像を形成する画像形成ユニット10M、シアンのトナー像を形成する画像形成ユニット10C、ブラックのトナー像を形成する画像形成ユニット10Kが配列され、その下流側には、二次転写を行うための二次転写部材12が中間転写ベルト11と接触し、対向ロールと17と対向するように配置されている。
この二次転写部材12が中間転写ベルト11と対向する二次転写位置13には記録シート収容部8から搬送路9を経て、記録媒体である記録シートが送り込まれる。記録シートの搬送経路における二次転写位置13の下流側には、トナー像が転写された記録シートの搬送装置14及びトナー像を加熱及び加圧して記録シート上に圧着する定着装置7が設けられている。
さらに下流側にはトナー像が定着された記録シートを重ねて保持する排紙保持部(図示しない)が設けられている。
【0017】
上記画像形成ユニット10のそれぞれは、表面に静電潜像が形成されて像保持体として機能する感光体ドラム1を有しており、各感光体ドラム1の周囲に、該感光体ドラム1の表面を帯電する帯電装置2と、感光体ドラム1上に形成された潜像にトナーを選択的に転移させてトナー像を形成する現像装置20と、感光体ドラム1上のトナー像を中間転写ベルト11上に一次転写する一次転写ロール5と、転写後の感光体ドラム1上に残留したトナーを除去するクリーニング装置6と、を備えている。また、感光体ドラム1のそれぞれについて、画像信号に基づいて像光を発生する露光装置3が設けられており、この露光装置3から像光が各感光体ドラム1に照射されることにより、帯電された感光ドラム1に静電潜像を書き込むようになっている。本実施の形態では、感光体ドラム1は帯電装置2により−800Vに帯電され、露光された画像部分は表面電位が減衰して−400Vとなるように設定されている。
【0018】
上記感光体ドラム1は、無端状の周面を有した導電性の金属製基体上に感光層を積層して形成されており、周面が周回移動するものである。感光層は、電荷発生層と電荷輸送層とが順次積層された機能分離型となっており、露光装置3によってレーザ光線が照射されると、照射された部分の比抵抗が変化する性質を有している。
【0019】
上記現像装置20は、トナーと磁性キャリアとを含む二成分現像剤を使用するものである。そして、上記感光体ドラム1と対向する位置で、感光体ドラム1の表面の露光部分に二成分現像剤の内のトナーを転移させ、可視像としてトナー像を形成するものである。
【0020】
上記クリーニング装置6は、感光体ドラム1の周面に対向して配置され、感光体ドラム1と対向する位置に開口を有するクリーナハウジング6aを備えている。そして、このクリーナハウジング6aに支持され、感光体ドラム1の周面と接触するようにクリーニングブレード6bが配設されている。
本実施の形態では、クリーニングブレード6bの先端のエッジ部が感光体ドラム1の表面に接触する、いわゆるブレード加圧方式を採用しており、一次転写後の感光体ドラム上に残留したトナー等を掻き取って除去するものとなっている。
【0021】
上記対向ロール17と中間転写ベルト11を挟んで対向する位置に配置された二次転写部材12は、二次転写ロール12aと、補助ロール12bと、これらに張架された二次転写ベルト12cとを有するものである。二次転写ベルト12cは中間転写ベルト11と重ね合わされた状態で対向ロール17と二次転写ロール12aとの間に挟み込まれ、中間転写ベルト11が周回駆動されるのにともなって周回移動するものとなっている。また、中間転写ベルト11と二次転写ベルト12cとの間に記録シートが送り込まれたときには、この記録シートを挟み込んで搬送する。そして、二次転写ロール12aと対向ロール17との間に転写用の電界を形成するために、対向ロール17には二次転写電圧が印加される。
【0022】
上記定着装置7は、加熱源を内蔵した加熱ロール7aと、この加熱ロール7aに圧接される加圧ロール7bとを備えており、これらが接触するニップ部を形成している。トナー像が転写された記録シートは、上記ニップ部に送り込まれ、回転駆動される加熱ロール7aと加圧ロール7bとの間で加熱されるとともに加圧され、トナー像が記録シート上に圧着されるものとなっている。
【0023】
図2は、上記現像装置20を示す断面図である。
この現像装置は、二成分現像剤を収容する現像剤収容室26,27を備えたハウジング22と、上記感光体ドラム1と近接対向するように配置された現像部材である現像ロール23と、上記ハウジング内で二成分現像剤を攪拌するとともに搬送する第1のオーガ24及び第2のオーガ25と、二成分現像剤を上記ハウジング内に補給する現像剤補給部30と、ハウジング内の二成分現像剤を回収するための回収部32と、上記現像ロール上に吸着した二成分現像剤の量を規制する層厚規制部材29と、を備えている。
【0024】
上記ハウジング22には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの内の1種類のトナーを含む二成分現像剤が収容されている。また、ハウジング22は、感光体ドラム1に対向する位置が開口しており、この部分で上記現像ロール23が感光体ドラム1と近接して対向するように配設されている。
【0025】
上記ハウジング22内に収容されている二成分現像剤は、熱可塑性樹脂と色材とを混練したものを粉状にしたトナーと、フェライトと合成樹脂とを混練して形成された粒状体に被覆層を形成した磁性キャリアと、を含むものである。
トナーは粒径約3μm〜9μm、磁性キャリアは、体積平均粒径が20μm〜50μmのものを使用している。
【0026】
上記現像ロール23は、周方向に複数の磁極を有し、固定支持されたマグネットロール23aと、その周囲で回転可能に支持された非磁性の中空円筒状の部材であって、現像剤保持体として機能するスリーブ23bとを備えている。そして、スリーブ23bの外周面に二成分現像剤を磁気的に吸着し、スリーブの回転駆動によって二成分現像剤を周方向に搬送することができるようになっている。
【0027】
上記第1のオーガ24と第2のオーガ25は、上記ハウジング22内の現像ロール23が配設された位置の背後に設けられた二つの現像剤収容室26,27に備えられている。これらのオーガ24,25は、支持軸の周囲に螺旋状の翼体を有するものであり、現像ロール23と軸線が平行となるように支持されている。これらのオーガ24,25は、軸線回りに回転することによって二成分現像剤を撹拌しながら軸線方向に搬送するものとなっており、上記第1のオーガ24と第2のオーガ25とが二成分現像剤を互いに逆方向に搬送するものとなっている。そして、上記現像剤収容室26,27は、これらの間に設けられた隔壁28で仕切られるとともに、両端部で連通しており、上記オーガ24,25で搬送される二成分現像剤はこれらの現像剤収容室26,27内で撹拌されるとともに、二つの現像剤収容室26,27を循環するように搬送されるものとなっている。
【0028】
上記現像剤補給部30は、上記ハウジング22の上部に設けられた補給口22aと、この補給口22aに装着された補給用カートリッジ30aと、を含むものであり、補給用カートリッジ30aは補給口22aに離脱可能に取り付けられている。そして、現像動作を繰り返し行うのにともなって補給用カートリッジ30aに収容される補給用現像剤33が、ハウジング内に供給されるようになっている。
なお、二成分現像剤の補給は、トナーの消費量、現像された画像量、ハウジング内のトナー濃度、磁性キャリアの帯電量等に応じて、必要な量を適切なタイミングで行うように制御することができる。
【0029】
上記回収部32は、ハウジング内の二成分現像剤をハウジング外に排出する排出口32aを備えており、排出された現像剤を収容する収容容器(図示せず)に連通するものとなっている。この回収部32は、ハウジング22内に二成分現像剤が補充されることによって過剰となった二成分現像剤をハウジング内から排出し、ハウジング22内の現像剤量を調整することが可能となっている。
なお、現像剤の排出は、予め定められた高さより高く堆積した二成分現像剤を排出するものであっても良いし、補給用現像剤の補給と同様に、予め定められたタイミングで行うように制御されるものであっても良い。
【0030】
上記層厚規制部材29は、現像ロール23と第1のオーガ24とが対向する現像剤供給領域34より該現像ロール23の回転方向における下流側に備えられており、スリーブ23bの表面と間隔を開けて配置されている。この層厚規制部材29は金属板からなり、スリーブ23b上に磁気的に吸着されて穂状となった磁性キャリアの通過量を規制し、スリーブ23b上に調整された量の二成分現像剤が吸着された状態とするものである。
【0031】
上記現像ロール23と感光体ドラム1との間には、電源装置40から現像バイアス電圧が印加されている。そして、感光体ドラム1と現像ロール23とが対向する現像領域21で、これらの間に電界を形成し、この電界内で電荷を有するトナーを感光体ドラム1上の画像部に転移するものとなっている。
ここで、上記現像領域21は、次のように定義する。
マグネットロール23aの磁力によりスリーブ23b上で二成分現像剤の磁性キャリアが穂状に連なって吸着され、この穂状となった磁性キャリアが感光体ドラム1の周面に接触して現像が行われており、本発明においてはスリーブ23b上で穂状に立ち上げられた磁性キャリアが感光体ドラム1と接触している範囲を現像領域21とする。
【0032】
図3は、上記現像装置20に備えられた現像ロール23におけるスリーブ23bの周面上の磁束密度分布及び磁気吸引力分布を示す図である。
図3(a)の実線は、スリーブ23bの周面上における該周面と垂直な方向の磁束密度の分布を示す。また、破線はスリーブ23bの周面に沿った方向の磁束密度の分布を示す。一方、
図3(b)はスリーブ23bの周面上における該周面と垂直な方向の磁気吸引力(以下「磁気吸引力」という)の分布を示すものである。また、
図4〜
図9の磁束密度分布及び磁気吸引力分布においても同様である。
なお、これらの図において、磁束密度の値は、最も内側の基準円上で0mTであることを示しており、同心円状の1目盛りが20mTとなっている。また、磁気吸引力の値は、最も内側の基準円で0(N)となり、同心円状の1目盛りが6E−11(N)に相当することを示している。この磁気吸引力は、磁性キャリアの粒径を25μm、透磁率を1.007としたときにスリーブの表面で1個の磁性キャリアに作用する力の法線方向の成分であり、マグネットロールの中心に向かう方向を正としている。
【0033】
この現像ロール23が備えるマグネットロール23aには、周方向に5つの磁極が着磁されており、スリーブ23bが感光体ドラム1と対向する現像領域21の下流側に現像主磁極が設けられている。この現像主磁極における磁束密度の分布は、
図3(a)に示すように、マグネットロール23aの周方向における磁束密度の分布で、現像主磁極の両側でピーク値の80%となる2つの位置P1,P2の中心角αが、約20度となるように設定されている。
【0034】
このように着磁されたマグネットロール23aを内側に有するスリーブ23bの周面上における磁気吸引力の分布は、
図3(b)中の矢印で示すスリーブ23bの回転方向つまり現像剤搬送方向の上流端21aから下流端21cに向けて増加している。したがって、現像領域内における磁気吸引力は、現像剤搬送方向の下流端21cで最大となっている。そして、磁気吸引力の増加勾配は、現像領域21の中央位置21bから下流21cに向かう勾配より、上流21aから中央位置21bに向けての勾配の方が大きくなっている。つまり、上流端21aから中央位置21bまでの磁気吸引力の増加量は、現像領域の中央位置21bから下流端21cまでの増加量より大きく、6E−11(N)以上の増加となっている。
なお、本実施の形態では、現像領域21で対向する感光体ドラム1の周面とスリーブ23bの周面とが、反対方向に移動するように回転しており、現像剤搬送方向の上流端21aは現像される画像が現像領域21を通過するときの出口となり、現像剤搬送方向の下流端21cは、画像が現像領域を通過するときの入口となるものである。
【0035】
このように現像剤搬送方向における上流端21aから中央位置21bにかけて磁気吸引力が急激に大きくなると、以下の理由で現像性が向上すると考えられる。
磁性キャリアは、現像剤搬送方向の上流21aから中央位置21bにおいて、磁気吸引力の急激な変化により、穂状に立ち上げられた形状が変化し、衝撃を受ける。これにともない、衝撃を受けた磁性キャリアに付着しているトナーにもこの衝撃が伝わり、磁性キャリアから離脱して感光体ドラム1の画像部にトナーが転移しやすくなる。特に、現像剤搬送方向の上流側で磁性キャリアが衝撃を受け、トナーの転移が開始された二成分現像剤が現像領域21の上流側から下流側に向かって搬送される過程で、現像領域21の入口から出口に向けて移動する感光体ドラム上の画像にトナーが移転しやすくなる。
したがって、現像領域21で磁気吸引力の変化が小さいマグネットロール(例えば、磁気吸引力の変化量が6E−11(N)未満)を用いたときよりも小さい現像バイアス電圧で現像性を確保することが可能となる。
ここで現像性は、次のように評価する。
現像ロール23上に保持されて現像領域21に搬送される現像剤供給量に対して、予め定められた画像、例えばベタ画像に対して転移されるトナー量が大きいほど現像性が良いと評価することができる。
【0036】
現像剤搬送性については、現像領域21において現像剤搬送方向の下流端21cで磁気吸引力が最大となるので、二成分現像剤の搬送力も下流側へ行くほど大きくなる。これにより、連続して現像領域21に搬送されてくる磁性キャリアが現像領域内で滞留することが抑制され、磁性キャリアはスリーブ23bに吸着された状態でスリーブ23bの回転にともなって現像領域21外に搬送される。したがって、現像剤の滞留に起因して磁性キャリアが感光体ドラム1の表面を摺擦し、いわゆるベタ画像等が劣化するのが抑制される。
【0037】
図4(a)は、本発明に係る現像装置で用いることができる現像ロールの他の例における周面上の磁束密度分布を示す図であり、
図4(b)は同じ現像ロールの磁気吸引力分布を示す図である。
この現像ロールは、
図3に磁束密度分布を示す現像ロールと同様に、マグネットロールの周方向に5つの磁極が着磁されたものであるが、現像主磁極の範囲が
図3に示す現像ロールより狭くなっている。つまり、この現像ロールでは、マグネットロールの周方向における磁束密度の分布で、現像主磁極の両側でピーク値の80%となる2つの位置(図示しない)の中心角αが、約15.5度となるように設定されている。
【0038】
このような磁束密度分布となる現像ロールにおける磁気吸引力の分布は、
図3に示す現像ロールと同様に、スリーブの回転方向である現像剤搬送方向の上流端31aから下流端31cまでの範囲で増加勾配となり、この増加勾配は現像剤搬送方向の中央位置31bから下流端31cまでの勾配より上流端31aから中央位置31bまでの勾配の方が大きくなっている。そして、現像主磁極の幅を狭くすることにより、現像領域31内の磁気吸引力の増加勾配を大きくすることが可能となり、上流端31aから中央位置31bまでの増加量が8E−11(N)以上となっている。したがって、
図3に磁束密度分布を示す現像ロール23よりも磁気吸引力が急激に増大し、現像性は、
図3に示すマグネットロール23aを用いた現像装置よりも高くすることが可能となっている。
【0039】
一方、現像領域内における磁気吸引力は、現像剤搬送方向の下流端31c、つまり感光体ドラム1上で搬送される画像の現像領域31への入口で最大となっており、現像領域31で二成分現像剤の滞留が生じにくく、現像剤搬送性は良好なものとなる。
【0040】
図5は、本発明に係る現像装置で用いることができる現像ロールの他の例における周面上の磁束密度分布及び磁気吸引力分布を示す図である。
この現像ロールは、マグネットロールの周方向に7つの磁極が着磁されたものであり、それぞれの磁極の範囲は、
図4に示す現像ロールより狭くなっている。そして、現像ロールの周方向における磁束密度の分布で、現像主磁極の両側でピーク値の80%となる2つの位置の中心角αが、約13.7度となっている。
【0041】
このような磁束密度分布となる現像ロールでは、現像領域の磁気吸引力の分布が、
図5(b)に示すように、スリーブの回転方向である現像剤搬送方向の上流端41aから下流端41cまでの範囲で増加勾配を有し、上流端41aから中央部41bまでの増加量が8E−11(N)以上となっている。
【0042】
一方、現像領域内における磁気吸引力は、現像剤搬送方向の上流端41aから下流端までの範囲で増加し、現像剤搬送方向の下流端41c、つまり現像領域41の入口で最大となっている。
【0043】
図6は、
現像性を改善するために用いることができる現像ロールの他の例における周面上の磁束密度分布及び磁気吸引力分布を
参考例として示す図である。
この現像ロールは、
図5に磁束密度分布を示す現像ロールと同様に、マグネットロールの周方向に7つの磁極が着磁されたものであるが、現像主磁極の磁束密度分布のピーク値が現像領域51内にある。これにともない、磁気吸引力のピーク値が現像領域51内の下流端51c付近にあり、上流端51aからピークまで磁気吸引力の値は増加し、ピークから下流端51cまでは磁気吸引力の値が減少している。磁気吸引力の上流端51aから中央位置51bまでの増加量は6E−11(N)以上であり、中央位置51bから上記ピークまでの増加量より大きくなっている。また、ピークから下流端51bまでの減少量は、ピーク値の約2%となっている。
【0044】
このような現像ロールにおいても、現像剤搬送方向における現像領域51の上流端51aから中央位置51bまでに磁気吸引力が増大し、現像領域51の上流側における磁気吸引力の増加量が本現像ロールより小さい現像ロールに比べて、現像効率は良好なものとなる。また、現像領域51の中央位置51bより下流側で磁気吸引力は減少するが下流端51cまでの減少量はピーク値の2%程度であって、高い磁気吸引力が維持されており、
図5に示す現像ロールと比べて同等の現像剤搬送性が得られる。
【0045】
次に、本発明外の現像装置を比較例とし、現像性及び現像剤搬送性について行った実験の結果について説明する。
この実験は、現像ロールの周面上における該周面と垂直な方向の磁気吸引力分布が異なるA、B及びCの3種類の現像ロールを使用した現像装置について現像性及び現像剤搬送性について調査したものである。
【0046】
現像性については、現像ロール上に保持されて現像領域に搬送される現像剤供給量を変えて現像を行う。そして、ベタ画像に対して転移されるトナー量を測定して、転移トナー量つまり現像量が大きいほど現像性が良いと判断する。
現像剤搬送性は、現像ロール上に保持されて現像領域に搬送される現像剤供給量を変えて現像を行い、ベタ画像に対して転移されるトナー量を測定する。この転移トナー量は、現像剤供給量の増加にともなって増加するが、現像剤供給量が多くなったときに、現像剤供給量の増加にもかかわらず転移トナー量が減少し始める。この転移トナー量がピークとなるときの現像剤供給量が多いほど現像剤搬送性が良好であると判断することができる。つまり、転移トナー量の低下は、現像領域内で現像剤の滞留が生じて転移したトナーを掻き取ることに起因するものと考えられ、滞留を生じることなく搬送することができる現像剤搬送量が多いほど現像剤搬送性は良好であるといえる。
【0047】
上記3種類の現像ロールについて、次に説明する。
図7は、現像ロールAの磁束密度分布及び磁気吸引力分布を示す図である。
この現像ロールAは、
図7(a)に示すように、マグネットロールの周方向に7つの磁極が着磁され、現像主磁極は現像ロールの周面と垂直方向の磁束密度のピークが現像領域内となるように着磁されている。このような着磁により磁気吸引力分布は、
図7(b)に示すように、現像領域の中央位置A2付近にピークがあり、上流端A1からピークまで増加するものとなっている。また、ピークから現像剤搬送方向の下流端A3に向けて磁気吸引力は大きく減少し、減少量は18E−11(N)以上となっている。
【0048】
図8は、現像ロールBの磁束密度分布及び磁気吸引力分布を示す図である。
この現像ロールBは、
図8(a)に示すように、現像ロールAと同様に、マグネットロールの周方向に7つの磁極が着磁され、現像主磁極は現像ロールの周面と垂直方向の磁束密度のピークが現像領域内となるように着磁されている。現像主磁極は、現像ロールAより周方向に広い範囲に着磁されたもの、つまり磁束密度の分布で、現像主磁極の両側でピーク値の80%となる2つの位置の中心角が、現像ロールAより大きくなっている。
この現像ロールBの磁気吸引力の分布は、
図8(b)に示すように、現像領域における現像剤搬送方向の中央位置B2付近にピークがあり、現像剤搬送方向の上流端B1からピークまでは磁気吸引力が増加しているが、この増加勾配は現像ロールAと比較すると小さくなっている。また、上記ピークから現像剤搬送方向の下流端B3までにおける磁気吸引力の減少量も現像ロールAより小さくなっている。
【0049】
図9は、現像ロールCの磁束密度分布及び磁気吸引力分布を示す図である。
この現像ロールCは、
図9(a)に示すように、マグネットロールの周方向に5つの磁極が着磁され、現像主磁極は現像ロールの周面と垂直方向の磁束密度のピークが現像領域内となるように着磁されている。そして現像主磁極は、現像ロールBよりさらに周方向に広い範囲に着磁されたものとなっている。
この現像ロールCの磁気吸引力の分布は、
図9(b)に示すように、現像領域における現像剤搬送方向の中央位置C2付近にピークがあり、現像剤搬送方向の上流端C1からピークまでは磁気吸引力が増加しているが、この増加量は現像ロールA又は現像ロールBと比較すると小さく、2E−11(N)以下となっている。また、上記ピークから現像剤搬送方向の下流端C3までにおける磁気吸引力の減少量は、現像ロールA及び現像ロールBより小さく、下流端C3における磁気吸引力はピーク値の約90%となっている。
【0050】
図10は、上記3種類の現像ロール毎に現像剤供給量を変えて転移トナー量を測定した実験の結果を示す図である。この図の横軸は現像剤供給量を示し、縦軸は転移トナー量を示すものであり、転移トナー量は単位面積あたりに転移するトナーが有する電荷量で示している。
現像ロールAを使用した現像装置では、この図が示すように、現像剤供給量が約180g/m
2のときに転移トナー量が約250μc/m
2となっており、転移トナー量は現像ロールBを使用する現像装置及び現像ロールCを使用する現像装置より大きな増加勾配となっている。つまり現像性が大きいことを示している。一方、現像剤供給量が約200g/m
2を超えると転移トナー量は減少しており、現像剤の滞留による感光体ドラム上からのトナーの掻き取り量が増加したことが分かる。
【0051】
現像ロールBを使用した現像装置では、現像剤供給量が約280g/m
2のときに転移トナー量は約250μc/m
2でピークとなっており、この増加勾配は現像ロールAを使用した現像装置よりも小さくなっている。そして、ピークを超えると転移トナー量は減少しており、現像剤の滞留が生じる。これにより、現像ロールAを使用した現像装置と比較すると、現像性は劣るが現像剤搬送性は良好となっていることが分かる。
【0052】
現像ロールCを使用した現像装置では、現像剤供給量が約370g/m
2のときに転移トナー量は約290μc/m
2でピークとなり、増加勾配は最も小さい。そして、約370g/m
2を超えると現像量は減少し、現像剤搬送性の悪化が始まる。つまり、現像剤搬送性については現像ロールAを用いた現像装置及び現像ロールBを用いた現像装置よりも勝っている。
【0053】
このような実験の結果から、現像性及び現像剤搬送性についての次のような特性が理解される。
現像ロールの現像剤搬送方向における現像領域の上流側で、磁気吸引力が大きく増加する現像ロールAを用いた現像装置を用いた現像装置では、現像性は良好なものとなり、磁気吸引力が高く維持されていても現像領域の上流側で磁気吸引力の変化が小さい現像ロールCを用いた現像装置では、現像性が劣るものとなる。したがって、現像剤搬送方向における現像領域の上流側では、磁気吸引力が大きく変化することによって良好な現像性が得られることが分かる。
【0054】
一方、現像剤搬送性については、現像ロールの現像剤搬送方向における現像領域の下流側で、磁気吸引力が大きく減少する現像ロールAを用いた現像装置及び現像ロールBを用いた現像装置では、現像剤搬送性は悪く、磁気吸引力が高く維持されている現像ロールCを用いた現像装置では、良好な現像剤搬送性が得られる。また、現像領域の下流側における磁気吸引力の減少量が現像ロールAより小さい現像ロールBを用いた現像装置では、現像ロールAを用いた現像装置に比べて、現像剤搬送性は良好となる。したがって、現像剤搬送方向における現像領域の下流側では、磁気吸引力が大きく維持されることによって良好な現像剤搬送性が得られることが分かる。
さらに、現像剤の搬送力は、磁気吸引力が大きくなることによって増大するものと考えられることから、磁気吸引力の分布は、現像領域内で現像剤搬送方向おける下流側に向かって増加していることが望ましいが、現像ロールCのように、現像領域内の下流側における磁気吸引力の減少量が、ピーク値の90%では良好な現像剤搬送性が維持されることが分かる。
【0055】
以上に説明した現像装置及び画像形成装置は、本発明の実施の形態であって、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で他の実施形態として実施することができる。
例えば、上記実施の形態で示した現像ロールの磁気吸引力分布及び磁束密度分布は一例であり、本発明の範囲内で他の分布であってもよい。
また、上記実施の形態では、感光体ドラムとスリーブとの回転方向が、現像領域でそれぞれの対向する周面が互いに反対方向に移動する、いわゆるアゲインスト方式となっている。本発明は、上記アゲインスト方式の画像形成装置又はアゲインスト方式で静電潜像を現像する現像装置について有効に適用できるものであるが、対向する周面が同じ方向に移動する画像形成装置又は同じ方向に移動する感光体ドラム上の静電潜像を現像する現像装置について適用することもできる。
さらに、現像装置は、トナーと磁性キャリアとを含んだ二成分現像剤の補給及び回収を行う、いわゆるトリクル方式の現像装置を用いたが、トリクル方式に限定されるものではない。トナーのみの補給やトナーと磁性キャリアとを別けて補給を行う現像装置であってもよい。
また、現像ロールが備えるマグネットロールに着磁される磁極の数は、5極又は7極に限定されるものではない。