特許第6019904号(P6019904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6019904-電力変換装置の制御を行う制御装置 図000002
  • 特許6019904-電力変換装置の制御を行う制御装置 図000003
  • 特許6019904-電力変換装置の制御を行う制御装置 図000004
  • 特許6019904-電力変換装置の制御を行う制御装置 図000005
  • 特許6019904-電力変換装置の制御を行う制御装置 図000006
  • 特許6019904-電力変換装置の制御を行う制御装置 図000007
  • 特許6019904-電力変換装置の制御を行う制御装置 図000008
  • 特許6019904-電力変換装置の制御を行う制御装置 図000009
  • 特許6019904-電力変換装置の制御を行う制御装置 図000010
  • 特許6019904-電力変換装置の制御を行う制御装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019904
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】電力変換装置の制御を行う制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/08 20060101AFI20161020BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20161020BHJP
【FI】
   H02P27/08
   H02M7/48 F
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-174558(P2012-174558)
(22)【出願日】2012年8月7日
(65)【公開番号】特開2014-36446(P2014-36446A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111763
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100163832
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直哉
(72)【発明者】
【氏名】田島 宏一
(72)【発明者】
【氏名】大口 英樹
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−180095(JP,A)
【文献】 特開2006−217776(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/155013(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/08
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子によるパルス幅変調を用いて直流を三相交流に変換して、定格速度以下の速度範囲ではトルク一定、定格速度から最高速度までの速度範囲では出力一定の出力特性を有する交流電動機に供給する電力変換装置の制御を行う制御装置において、
前記パルス幅変調に用いるキャリアの周波数であるキャリア周波数を、前記交流電動機に印加する各相電圧の周波数である一次周波数に応じて設定するキャリア周波数設定部であって、前記スイッチング素子の冷却能力と前記交流電動機に流れる電流の大きさとに応じて定まる上限値を上回らないようにキャリア周波数を設定するキャリア周波数設定部と、
前記交流電動機に流れる電流の振幅を演算する電流振幅演算部とを備え、
前記キャリア周波数設定部は、
一次周波数が高くなるにつれてキャリア周波数を段階的に引き上げ、
一次周波数が切替周波数以下のときのキャリア周波数を前記電流振幅演算部により演算された振幅に応じて調整する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記キャリア周波数設定部は、一次周波数に対する比が所定値を下回らないようにキャリア周波数を設定することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スイッチング素子によるパルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)により直流を交流に変換して交流電動機に供給するPWMインバータなどの電力変換装置の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術の従来例としては非特許文献1に開示された技術が挙げられる。図7は、交流電動機1に三相交流電力を供給するPWMインバータ2の制御を行う制御装置3の構成例を示すブロック図である。図7に示す制御装置3は、交流電動機1の回転軸の位置および回転速度とPWMインバータ2から交流電動機1へ供給される各相の電流値とに基づいてPWMインバータ2の制御を行い、これにより交流電動機1の駆動制御を行う。図7に示す制御装置3では、位置・速度検出部10は、交流電動機1の回転軸の位置および回転速度を検出し、その検出結果を示す位置・速度検出信号をモータ制御器20に与える。また、モータ制御器20には、交流電動機1に供給される電流の電流値を示す情報が与えられる。より詳細に説明すると、PWMインバータ2から交流電動機1に供給される各相の電流値(i、i、i)は電流座標変換部30による三相二相変換によって二相の電流値(i1d、i1q)に変換され、これら電流値(i1d、i1q)が電流座標変換部30からモータ制御器20に与えられる。
【0003】
モータ制御器20は、PWMインバータ2の駆動制御のための各種指令を、電流検出値i1dおよびi1qと位置・速度検出信号とに基づいて演算し出力する。モータ制御器20により演算される指令の一例としては、位相角指令値θ、電圧指令ν1dおよびν1qが挙げられる。電圧座標変換部40は、電圧指令ν1dおよびν1qと位相角指令値θとに基づいて三相電圧指令(ν、ν、ν)を生成し、PWM演算部70に与える。三相電圧指令(ν、ν、ν)とは、交流電動機1に印加する三相交流電流の各相の電圧を制御するための相電圧指令のことをいう。キャリア生成部50は、キャリア周波数設定部60により設定された周波数の三角波を発生させ、当該三角波をキャリア(搬送波)としてPWM演算部70に与える。キャリア周波数とは、キャリア生成部50の発生させるキャリアの周波数(すなわち、キャリア周波数設定部60により設定される周波数)のことである。
【0004】
PWM演算部70は各相の電圧指令(ν、ν、ν)とキャリアを入力としてパルス幅変調を行い、三相のPWM指令をPWMインバータ2に与える。図8は、PWM演算部70に与えられる電圧指令およびキャリアと、PWM演算部70の発生させるPWM指令の関係を示す図である。なお、図8では、PWM演算部70に与えられる三相の電圧指令のうちの1つが例示されている。図8に示すように、PWM演算部70は、電圧指令とキャリアの波形とを比較し、前者が後者よりも大きい期間においてはHighレベルのPWM指令を、逆に後者が前者以上である期間においてはLowレベルのPWM指令を出力する処理を相毎に実行する。PWMインバータ2は、PWM演算部70から与えられる各相のPWM指令に基づいてスイッチング素子のスイッチングを行い、これにより発生させた三相交流電圧を交流電動機1に印加する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】中野孝良「交流モータのベクトル制御」、日刊工業新聞社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PWMインバータにより三相交流電圧を発生させる場合、各相の電圧指令の周波数(以下、一次周波数)に対するキャリア周波数の比率R(比率R=キャリア周波数÷一次周波数と定義する)は9〜10倍以上とする必要がある。比率Rが十分に高くないと電圧ひずみが発生し、交流電動機の駆動制御に支障を来たす虞があるからである。電圧ひずみの発生を抑えるという観点からすると、一次周波数に対するキャリア周波数の比率Rは高ければ高いほど好ましいのであるが、交流電動機に流す電流の大きさとの関係でキャリア周波数には上限が存在する。その理由は以下の通りである。キャリア周波数が高いほど、また、交流電動機に流す電流が大きいほどPWMインバータにおけるスイッチング損失は増加し、スイッチング損失の増加はスイッチング素子の温度上昇として現れる。スイッチング素子の温度が高くなりすぎると、素子の特性が変化したり、スイッチング素子の破損が発生したりするため、スイッチング損失はスイッチング素子の冷却能力等に見合った範囲に収まっていなければならない。つまり、交流電動機に所定の電流を流す際のキャリア周波数の上限は、その交流電動機に三相交流電力を供給するPWMインバータに含まれるスイッチング素子の冷却能力等に応じて定まるのである。以下、スイッチング素子の冷却能力等に応じて定まる上限のことを「電流によるキャリア周波数の上限」と呼ぶ。
【0007】
交流電動機の設計方法としては、所定の定格速度を設け、定格の負荷条件として、定格速度以下はトルクを一定値とし、定格速度以上は出力を一定値とすることが一般的である。この場合、出力一定の定出力領域ではトルク一定の定トルク領域に比較して交流電動機に流れる電流が小さくなる傾向がある。特に、永久磁石同期電動機においてマグネットトルクのみを使う場合、定出力領域において交流電動機に流れる電流は速度に反比例して減少するため(図9参照)、この傾向が顕著になる。なお、図9に示す例は、交流電動機の一次周波数・電流特性であるが、交流電動機の速度は一次周波数に応じて定まるため、この一次周波数・電流特性は速度・電流特性と等価である。PWMインバータによる駆動制御の対象となる交流電動機が図9に示す速度・電流特性を有している場合には、交流電動機に流れる電流の大きさが速度(一次周波数)に応じて図9に示すように変化することを考慮してキャリア周波数を適切に設定しなければならない。
【0008】
例えば、図10の「低い設定値」に示すように、キャリア周波数が低くすぎるとfAを上回る一次周波数では比率Rが所定値nを下回る。前述したように、比率Rが所定値nを下回る状態では大きな電圧ひずみが発生し、交流電動機の駆動制御が不能になる虞がある。逆に、図10の「高い設定値」に示すように、キャリア周波数が高すぎると、fB以下の一次周波数ではキャリア周波数が「電流によるキャリア周波数の上限」を上回り、スイッチング損失が増大する。このため、一次周波数がfB以下の領域ではスイッチング損失に起因する発熱量が素子の冷却能力に見合ったものとなるように交流電動機に流す電流を低減させることが必要となり、所定の電流を流すことができなくなってしまう。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、第1の目的は、交流電動機に三相交流電力を供給する電力変換装置の制御を行う際に交流電動機の速度に応じて定まる電流を確実に流せるようにすることであり、第2の目的は、交流電動機に三相交流電力を供給する電力変換装置の制御を行う際に予め定められた最高速度までの全速度範囲に亘って電圧ひずみの発生を確実に抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、スイッチング素子によるパルス幅変調を用いて直流を三相の交流に変換し交流電動機に供給するPWMインバータなどの電力変換装置の制御を行う制御装置に、PWM変調に使用するキャリアの周波数であるキャリア周波数を一次周波数に応じて設定するキャリア周波数設定部を設ける。そして、スイッチング素子の冷却能力と交流電動機に流れる電流の大きさに応じて定まる上限値を上回らないようにキャリア周波数を設定する処理をキャリア周波数設定部に実行させる。周知のように、交流電動機の速度は、交流電動機に印加する三相交流電圧の周波数(すなわち、一次周波数)に応じて定まる。このような態様によれば、高すぎるキャリア周波数を設定されることが回避され、交流電動機にその速度に応じて定まる所定の電流を流したとしても、スイッチング損失によるスイッチング素子の温度上昇は当該スイッチング素子の冷却能力等に見合った範囲に収まることとなる。
【0011】
より好ましい態様においては、キャリア周波数設定部は、一次周波数に対する比率Rが所定値を下回らないようにキャリア周波数を設定することを特徴とする。このような態様によれば、低すぎるキャリア周波数を設定されることが回避され、最高速度までの全速度範囲に亘って電圧ひずみの発生を確実に抑えることができる。
【0012】
電力変換装置による駆動制御の対象の交流電動機が、定格速度よりも遅い速度範囲ではトルク一定、定格速度から最高速度までの速度範囲では出力一定の出力特性(図9参照)を有している場合には、キャリア周波数設定部には、一次周波数が大きくなるにつれてキャリア周期を段階的に引き上げる処理を実行させるようにすれば良い。
【0013】
例えば、キャリア周波数としてキャリア周波数(1)とこのキャリア周波数(1)よりも高いキャリア周波数(2)の2種類を用いる場合には、以下の要領でキャリア周波数の設定を行えば良い。まず、交流電動機の定格速度に応じた一次周波数の値(以下、定格周波数)と同交流電動機の最大速度に応じた一次周波数の値(以下、最大周波数)の間で切替周波数を定めておく。そして、切替周波数以下の一次周波数ではキャリア周波数としてキャリア周波数(1)を、切替周波数を上回る一次周波数ではキャリア周波数としてキャリア周波数(2)をキャリア周波数設定部に設定させるのである。ただし、キャリア周波数(1)は、切替周波数以下の全ての一次周波数について「電流によるキャリア周波数の限界以下」、かつ「比率Rが所定の値n(n=9〜10)以上」となるように定められている必要がある。同様に、キャリア周波数(2)についても、切替周波数より高くかつ最大周波数以下の全ての一次周波数について「電流によるキャリア周波数の限界以下」、かつ「比率Rが所定の値n(n=9〜10)以上」となるように定められている必要がある。
【0014】
さらに好ましい態様においては、上記各制御装置は、交流電動機に流れる電流の振幅を検出する電流振幅検出部を備え、キャリア周波数設定部は、同じ一次周波数であれば電流振幅検出部により検出された振幅が大きいほど、キャリア周波数を低く設定することを特徴とする。キャリア周波数が同じであれば、電力変換装置から交流電動機に流れる電流の振幅が大きいほど、スイッチング損失は大きくなる。このような態様によれば、電力変換装置から交流電動機に流れる電流の振幅が大きいほどキャリア周波数が低く設定されるため、スイッチング損失をさらに低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態の制御装置3Aの構成例を示すブロック図である。
図2】本実施形態における一次周波数と交流電動機1に流れる電流の関係を示す図である。
図3】本実施形態における一次周波数およびキャリア周波数の関係を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態の制御装置3Bの構成例を示すブロック図である。
図5】同制御装置3Bのキャリア周波数設定部60Bの動作を説明するための図である。
図6】本実施形態におけるキャリア周波数のパターンを示す図である。
図7】交流電動機1へ三相交流電力を供給するPWMインバータ2の制御を行う従来の制御装置3の構成例を示すブロック図である。
図8】同制御装置3における電圧指令、キャリアおよびPWM指令の関係を示す図である。
図9】交流電動機の速度・電流特性の一例を示す図である。
図10】従来技術の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
(A:第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の制御装置3Aの構成例を示すブロック図である。
図1に示す制御装置3Aは、前掲図7の制御装置3と同様に、交流電動機1に三相交流電力を供給するPWMインバータ2の制御を行う装置である。交流電動機1は、永久磁石同期電動機である。交流電動機1は、図2に示すように、定格周波数までは一定トルク、定格周波数から最大周波数までは出力一定の一次周波数・電流特性(速度・電流特性)を有している。図1に示す制御装置3Aは、前掲図7の制御装置3と同様に、交流電動機1の回転軸の位置および回転速度の検出結果とPWMインバータ2から交流電動機1に流れ込む各相の電流の検出結果とに基づいて、PWMインバータ2の制御を行う。図1においては、図7と同一の構成要素には同一の符号が付されている。制御装置3Aの構成は、モータ制御器20に代えてモータ制御器20Aを設けた点と、キャリア周波数設定部60に換えてキャリア周波数設定部60Aを設けた点が従来の制御装置3の構成と異なる。
【0017】
モータ制御器20Aは、モータ制御器20と同様に、電流検出値i1dおよびi1qと位置・速度検出信号とに基づいて各種指令を演算し出力する。モータ制御器20Aは、上記指令のうち、一次周波数の値を指定する一次周波数指令値ωをキャリア周波数設定部60Aに与える点がモータ制御器20と異なる。キャリア周波数設定部60Aは、キャリア周波数設定部60と同様にキャリア周波数をキャリア生成部50に設定する。ただし、キャリア周波数設定部60Aは、モータ制御器20Aから与えられる一次周波数指令値ωの示す一次周波数の値に応じてキャリア周波数の切替を行う点がキャリア周波数設定部60と異なる。
【0018】
キャリア周波数設定部60Aには、交流電動機1の一次周波数・電流特性(図2参照)を表すデータが予め記憶されている。ここで、交流電動機1の一次周波数・電流特性を表すデータの一例としては、各一次周波数に対応する電流値を格納したテーブルや、図2に示す一次周波数と電流の関数関係を数式により表現した場合の当該数式を表すデータなどが挙げられる。キャリア周波数設定部60Aは、キャリア周波数の切替の要否を判定するための一次周波数についての閾値である切替周波数を、上記データを用いて以下の要領で設定する。
【0019】
すなわち、キャリア周波数設定部60Aは、一次周波数指令値ωの示す一次周波数が切替周波数と最高周波数の間の領域において交流電動機1に流れる電流が所定の電流値以下となるように、当該切替周波数を設定する。より詳細に説明すると、キャリア周波数設定部60Aは、交流電動機1に所定の電流値の電流が流れるときの一次周波数を上記データより求め、この周波数を切替周波数とする。なお、本実施形態では、交流電動機1の一次周波数・電流特性を示すデータがキャリア周波数設定部60Aに予め記憶されており、このデータに基づいてキャリア周波数設定部60Aに切替周波数を算出させた。しかし、上記の要領で事前に算出した切替周波数を表すデータをキャリア周波数設定部60Aに記憶させておいても良い。
【0020】
そして、キャリア周波数設定部60Aは、図3に示すように、一次周波数指令値ωの示す一次周波数が切替周波数以下のときは、キャリア周波数としてキャリア周波数(1)を設定し、一次周波数が切替周波数を上回っているときはキャリア周波数としてキャリア周波数(1)より高い周波数のキャリア周波数(2)を設定する。ここで、キャリア周波数(1)およびキャリア周波数(2)は、図3に示すように、何れも「電流によるキャリアの限界」よりは低く、かつ比率Rが所定の値n(n=9〜10)となる境界線(図3では、点線で図示)上の周波数よりは高い周波数である。キャリア周波数(1)およびキャリア周波数(2)の具体的な定め方については、種々の態様が考えられる。
【0021】
例えば、キャリア周波数(2)については、「n×最高周波数」と「一次周波数=切替周波数のときの電流によるキャリア周波数の限界」の何れか、または、両者の中間の値を採用することが考えられる。キャリア周波数(2)として「一次周波数=切替周波数のときの電流によるキャリア周波数の限界」の値を用いる場合には、各一次周波数についての「電流によるキャリア周波数の上限」を表すデータをキャリア周波数設定部60Aに予め記憶させておき、交流電動機1の一次周波数・電流特性から求めた切替周波数と当該データとに基づいてキャリア周波数(2)をキャリア周波数設定部60Aに算出させるようにすれば良い。また、キャリア周波数(2)として「n×最高周波数」と「一次周波数=切替周波数のときの電流によるキャリア周波数の限界」の間の値を用いる場合には、前者の値と後者の値を1−m対m(0<m<1)に内分して得られる値をキャリア周波数(2)として用いるようにすれば良く、上記値mについては適宜実験を行って好適な値に定めるようにすれば良い。同様に、キャリア周波数(1)についても、「n×切替周波数」と「定トルク領域における電流によるキャリア周波数の限界」の何れか、または両者の中間の値を採用するようにすれば良い。また、キャリア周波数(1)およびキャリア周波数(2)をキャリア周波数設定部60Aに算出させるのではなく、上記の要領で定めたキャリア周波数(1)およびキャリア周波数(2)の各々を示すデータを、切替周波数を示すデータとともにキャリア周波数設定部60Aに予め記憶させておいても良い。
【0022】
前述したように、キャリア周波数(1)およびキャリア周波数(2)は、何れも、電流によるキャリア周波数の限界よりは低く、かつ一次周波数に対する比率Rが所定値nを上回る周波数である。このため、本実施形態によれば、最高速度までの速度範囲の全域に亘って、交流電動機1に速度に応じた電流を流すこと、および電圧ひずみの発生を抑えることが可能になる。なお、本実施形態では、一次周波数の増加に応じてキャリア周波数を2段階の階段状に引き上げる場合について説明したが3段階以上の階段状に引き上げても勿論良い。また、一次周波数の値に応じて、「電流によるキャリアの限界」より下側で、かつ「比率R=nとなる境界線上の周波数」より上側になるようにその都度キャリア周波数を算出して設定するようにしても良い。例えば、各一次周波数において、「電流によるキャリアの限界」と「比率R=nとなる境界線上の周波数」を1−m対m(ただし、0<m<1)に内分して得られる値をキャリア周波数として設定するようにしても良い。
【0023】
(B:第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態の制御装置3Bの構成例を示すブロック図である。この制御装置3Bも、前掲図1の制御装置3Aや前掲図7の制御装置3と同様に、交流電動機1に三相交流電力を供給するPWMインバータ2の制御を行う装置である。図4では図1と同一の構成要素には同一の符号が付されている。制御装置3Bの構成は、電流振幅演算部80を設けた点と、キャリア周波数設定部60Aに代えてキャリア周波数設定部60Bを設けた点が、制御装置3Aの構成と異なる。
【0024】
電流振幅演算部80は、PWMインバータ2から交流電動機1へ供給される三相交流電流の振幅値を算出するためのものである。電流振幅演算部80には、電流座標変換部30から電流検出値i1dおよびi1qが与えられる。電流振幅演算部80は、電流検出値i1dおよびi1qから電流振幅|i|(すなわち、i1dおよびi1qの二乗和の平方根)を演算してキャリア周波数設定部60Bに与える。キャリア周波数設定部60Bは、キャリア周波数をキャリア生成部50に設定するとともに、モータ制御器20Aから与えられる一次周波数指令値ωに応じてキャリア周波数の切替を行う。この点はキャリア周波数設定部60Aと同一である。ただし、キャリア周波数設定部60Bは、一次周波数が切替周波数以下のときのキャリア周波数(1)を、電流振幅演算部80から与えられる電流振幅|i|に応じて図5に示すように調整する点がキャリア周波数設定部60Aと異なる。
【0025】
キャリア周波数設定部60Bは、図5に示すように、電流振幅値|i|が小さいときは同じ一次周波数であってもキャリア周波数(1)を高くし、電流振幅値|i|が大きいときはキャリア周波数(1)を低くする。このようにした理由は、以下の通りである。図6にて一点鎖線および二点鎖線のグラフ曲線により示すように、電流振幅が大きくなると「電流によるキャリア周波数の限界」は小さくなる。電流振幅値|i|が大きいときにキャリア周波数(1)を低くするのは、図6に示すように、「電流振幅・大のときのキャリア周波数の限界」より下にキャリア周波数(1)が設定されるようにするためである。逆に電流振幅|i|が小さいときにキャリア周波数(1)を高く設定するのは、電流振幅値|i|が小さくなると「電流によるキャリア周波数の限界」が大きくなるため、この限界を上回らない範囲でキャリア周波数(1)をできるだけ高く設定し、電圧ひずみの発生を確実に抑制するためである。
【0026】
電流振幅値|i|の値に応じてキャリア周波数(1)の大きさを調整する態様の具体例としては、以下の態様が考えられる。まず、電流振幅値|i|についての基準値を予め定めておき、当該基準値を示すデータをキャリア周波数設定部60Bに記憶させておく。さらに、電流振幅値が当該基準値以下の場合に設定するキャリア周波数(1−1)と、電流振幅値が当該基準値を上回っている場合に設定するキャリア周波数(1−2)(ただし、キャリア周波数(1−1)>キャリア周波数(1−2))を各別個に定めておき、キャリア周波数(1−1)およびキャリア周波数(1−2)の各々を示すデータをキャリア周波数設定部60Bに記憶させておく。ここで、キャリア周波数(1−1)および(1−2)の各々が前述したキャリア周波数(1)に関する要件を満たす必要があることは言うまでもない。そして、キャリア周波数設定部60Bには、上記基準値と電流振幅値|i|の大小比較の比較結果に応じてキャリア周波数(1−1)および(1−2)の何れか一方をキャリア周波数として設定させるのである。なお、図5ではキャリア周波数を急激に切り替えず、一定期間、一次関数で徐々に変化させている例を示しているが、この切り替えのための期間範囲や、この期間におけるキャリア周波数変化の態様は、図5のような一次関数での切り替えに限られるものではなく、様々な態様が採用される。また、電流振幅値|i|の値に応じてキャリア周波数(1)の大きさを調整する態様の他の具体例としては、一次周波数が切替周波数以下のときに適用するキャリア周波数の値を1種類だけ定めておき、当該値に上記基準値を電流振幅値|i|で除した値を乗算して得られる値をキャリア周波数(1)として用いる態様が考えられる。
【0027】
本実施形態によっても、最高速度までの速度範囲の全域に亘って、交流電動機1に速度に応じた電流を流すこと、および電圧ひずみの発生を抑えることが可能になる。
【0028】
(C:変形)
以上、本発明の第1および第2実施形態について説明したが、これら実施形態に以下の変形を加えても勿論良い。
(1)上記第1および第2実施形態では、交流電動機1の回転軸の位置および回転速度を位置・速度検出部10により実際に検出し、その検出結果に基づいてPWMインバータ2の作動制御を行う場合について説明した。しかし、PWMインバータ2から交流電動機1に流れる電流に基づいて交流電動機1の回転軸の位置および回転速度を推定する推定部を位置・速度検出部10の代わりに設け、この推定部による推定結果に基づいてPWMインバータ2の作動制御を行うセンサレス構成としても勿論良い。
【0029】
(2)上記第1および第2実施形態では、電流によるキャリア周波数の上限以下となり、かつ一次周波数に対する比率Rが所定値n以上となるようにキャリア周波数を設定したが何れか一方の要件のみを満たすようにキャリア周波数の設定を行うようにしても良い。前者の要件が満たされていれば、交流電動機1に速度に応じて定まる電流を確実に流すことが可能になり、後者の要件が満たされていれば全速度範囲に亘って電圧歪みの発生を抑えることが可能になるからである。
【0030】
(3)上記第1および第2実施形態では、PWMインバータ2により三相交流電力を供給される交流電動機1が図2に示す速度・電流特性を有する永久磁石同期電動機であったが、他の速度・電流特性を有する交流電動機に三相交流電力を供給する電力変換装置の作動制御に本発明を適用しても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
1…交流電動機、2…PWMインバータ、3,3A、3B…制御装置、10…位置・速度検出部、20,20A…モータ制御器、30…電流座標変換部、40…電圧座標変換部、50…キャリア生成部、60,60A,60B…キャリア周波数設定部、70…PWM演算部、80…電流振幅演算部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10