(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記触媒層A及び前記触媒層Bに供給されるガスの供給方向と直交する平面において、前記暖機手段、前記触媒層A、及び前記触媒層Bがこの順に配置されている請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の触媒反応装置。
前記触媒層A及び前記触媒層Bに供給されるガスの供給方向と直交する平面において、前記触媒層Bの周囲に前記触媒層Aが配置され、前記触媒層Aの周囲に前記暖機手段が配置されている請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の触媒反応装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の技術のうち、ケミカル蓄熱装置は、アンモニアガスを凝縮する凝縮器を備えるため、気/液相変化を制御する機構が必要であり、装置が複雑化する傾向がある。
【0008】
また、酸化カルシウムに水を反応させて暖機する触媒暖機装置では、水を必要とするため、氷点下での作動は困難である。また、暖機後の再生反応(CaO+H
2O←Ca(OH)
2+Q)に400℃以上の熱が必要とされるため、エンジンからの排ガスからその熱を得ようとすると長時間を要し、運転状態によっては再生が完了せず、次の始動時に暖機が行なえない可能性がある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、低温(例えば氷点下)を含む広い温度範囲で作動し、且つ、従来よりも低い温度(例えば160℃程度)で安定的に再生できる暖機機能を備え、使用温度環境に依らず高い触媒活性を発現する触媒反応装置、及び使用温度環境に依らず安定的に排ガスの浄化が行なわれる車両を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための具体的手段は以下のとおりである。
即ち、第1の発明である触媒反応装置は、アンモニアが固定化されるときに放熱しアンモニアが脱離するときに蓄熱する化学蓄熱材を含む暖機手段と、ガスを浄化する浄化触媒を含み前記暖機手段との間で熱交換する触媒層A、及び、ガスを浄化する浄化触媒を含み前記触媒層Aの前記暖機手段と対向しない側に配置された触媒層Bを有する触媒反応部と、を備えて構成される。
【0011】
第1の発明では、暖機手段における熱輸送の媒体として水ではなくアンモニアを用いることで、特に低温環境下(氷点下を含む)で安定的な暖機機能が確保される。
具体的には、エンジン等の内燃機関から排出されるガス(排ガス)を浄化する浄化触媒を含む触媒層のうち、その一部である触媒層Aに対して、アンモニアの脱着により吸発熱する化学蓄熱材を用いた暖機手段を、この触媒層Aとの間で熱交換可能に(好ましくは前記触媒層Aに接触させて)配置したことにより、低温環境下(氷点下を含む)においても迅速に触媒層A中の浄化触媒を暖機できるので、低温を含む広い温度範囲に渡り、触媒反応装置全体として高い触媒活性を発現させることができる。
更に、第1の発明における暖機手段は、熱輸送の媒体として水ではなくアンモニアを用いるので、熱輸送の媒体として水を用いた暖機手段の再生温度(例えば400℃以上)と比較して、低い温度(例えば160℃程度)で安定的に再生できる。ここで、再生とは、化学蓄熱材に固定化されたアンモニアを脱離させることを指す。暖機手段の再生は、暖機手段との間で熱交換する触媒層Aに供給されたガスの熱を利用して行なうことができる。
【0012】
従って、第1の発明によれば、低温(例えば氷点下)を含む広い温度範囲で作動し、且つ、従来よりも低い温度(例えば160℃程度)で安定的に再生できる暖機機能を備え、使用温度環境に依らず高い触媒活性を発現する触媒反応装置が提供される。
【0013】
第1の発明に係る触媒反応装置では、更に、前記触媒層Aのガス供給側に設けられ該触媒層Aへのガスの供給量を調整する供給量調整手段Aを備え
る。
【0014】
前記触媒反応装置が前記供給量調整手段Aを備えることにより、ガスが高温(例えば600℃程度)である場合において、暖機手段との間で熱交換する触媒層Aへの高温のガスの供給量を減少させることができる。これにより、触媒層Aに供給されたガスの熱により暖機手段におけるアンモニアが熱分解する現象を抑制できる(即ち、高温のガスの熱から暖機手段を保護できる)。この場合、高温のガスの浄化は、主に、暖機手段との間に触媒層Aを介して設けられた触媒層Bによって行なうことができる。
【0015】
ここで、アンモニアの熱分解について詳述する。
アンモニアは、例えば600℃といった高温下に曝されると、水素と窒素とに熱分解し易い性質がある。従って、アンモニアを利用した暖機手段との間で熱交換する触媒層Aに高温(600℃程度)のガスが供給されると、このガスの熱によって暖機手段におけるアンモニアが熱分解し、該暖機手段による暖機機能が安定的に保たれない可能性がある。
例えばディーゼルエンジンを備えた車両などは、エンジンから排出される排ガス中に、一般に窒素酸化物(NO
x)や一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)などに加え、煤、燃料やエンジンオイルの燃えかすである可溶有機成分(SOF:Soluble Organic Fraction)等の炭素質を主成分とする粒子状物質(Particulate Matter;以下、PMと略記することがある。)が含まれている。そのため、排ガス中の粒子状物質を減少させるためのフィルタ〔DPF(=Diesel particulate filter);以下、DPF〕を設け、排ガスの浄化が行なわれている。このDPFには、基材に貴金属を担持させたDPF触媒もある。そして、DPFに堆積したPMの燃焼処理により、DPFのPMを除去すること(以下、この動作を「DPF再生」ともいう)が行なわれるが、PM除去(DPF再生)は600℃以上に及ぶ高温度で行なわれる。したがって、DPFを備えた排気系においては、特にアンモニアの熱分解が起きやすい。
第1の発明に係る触媒反応装置が前記供給量調整手段Aを備える
ことにより、上述したアンモニアの熱分解が抑制され、暖機手段による暖機機能が安定的に保たれる。
【0016】
前記供給量調整手段Aは、触媒層Aへのガス供給量を減少させるだけでなく、(例えば、触媒層Aへのガス供給量を減少させた後に、触媒反応部に供給されるガスの温度が低下した場合等において、)触媒層Aへのガス供給量を増大させることもできる。
前記供給量調整手段Aとしては、調整弁(例えば、ゲートバルブ、バタフライバルブ等)であることが好ましく、バタフライバルブであることがより好ましい。これにより、触媒層Aへのガス供給量の調整をより効果的に行なうことができる。
【0017】
第1の発明に係る触媒反応装置では、更に、前記触媒層Bのガス供給側に設けられ該触媒層Bへのガスの供給量を調整する供給量調整手段Bを備えることが好ましい。
【0018】
一般に、ガスを浄化する浄化触媒は、低温(例えば25℃)条件において触媒活性が不足する場合がある。この点に関し、前記触媒反応装置が前記供給量調整手段Bを備えることにより、ガスが低温である場合において、暖機手段との間に触媒層Aを介して設けられた触媒層Bへの低温のガスの供給量を減少させることができるので、触媒層Bの触媒活性の不足による浄化効率の低下をより効果的に抑制できる。これにより、ガスが低温である場合において、触媒反応装置(触媒反応部)全体としてガスの浄化を促進させることができる。この場合、低温のガスの浄化は、主に、暖機手段によって暖機される触媒層Aによって行なうことができる。
【0019】
前記供給量調整手段Bは、触媒層Bへのガス供給量を減少させるだけでなく、(例えば、触媒層Bへのガス供給量を減少させた後、触媒反応部に供給されるガスの温度が上昇した場合等において、)触媒層Bへのガス供給量を増大させることもできる。
前記供給量調整手段Bは、調整弁(例えば、ゲートバルブ、バタフライバルブ等)であることが好ましく、バタフライバルブであることがより好ましい。これにより、触媒層Bへのガス供給量の調整をより効果的に行なうことができる。
【0020】
第1の発明に係る触媒反応装置では、更に、前記触媒層Aのガス供給側に設けられ該触媒層Aへのガスの供給量を調整する供給量調整手段Aと、前記触媒反応部のガス供給側に設けられガスの温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段によって検出された温度が閾値T1以上であるときに触媒層Aへのガスの供給量が減少するように前記供給量調整手段Aによるガスの供給を制御する制御手段と、を備えることが好ましい。
【0021】
前記触媒反応装置が供給量調整手段Aを備えることにより、前述のとおり、触媒層Aとの間で熱交換する暖機手段におけるアンモニアの熱分解をより効果的に抑制することができる。
このとき、更に、前記温度検出手段と前記制御手段とを備えることにより、触媒層Aへの供給前の排ガスの温度を温度検出手段によって検出し、検出された温度が高温(閾値T1以上)である場合に触媒層Aへのガスの供給量を減少させる動作を自動的に行なうことができるので、暖機手段におけるアンモニアの熱分解をより効果的に抑制することができる。
【0022】
前記閾値T1には特に制限はないが、例えば300℃〜500℃(好ましくは350℃〜450℃)の範囲で設定することができる。
【0023】
第1の発明に係る触媒反応装置では、前記供給量調整手段A、前記温度検出手段、及び前記制御手段を備える場合において、更に、前記触媒層Bのガス供給側に設けられ該触媒層Bへのガスの供給量を調整する供給量調整手段Bを備え、前記制御手段は、前記温度検出手段によって検出された温度が閾値T2以下(但し、T1>T2の関係を満たす)であるときに触媒層Bへのガスの供給量が減少するように前記供給量調整手段Bによるガスの供給を制御する形態が好ましい。
【0024】
前記触媒反応装置が供給量調整手段Bを備えることにより、前述のとおり、排ガスが低温である場合において、触媒層Bの触媒活性の不足による浄化効率の低下をより効果的に抑制できる。
このとき、更に、前記供給量調整手段A、前記温度検出手段、及び前記制御手段を備え、かつ、前記温度検出手段及び前記制御手段を上記の形態とすることにより、触媒層Bへの供給前の排ガスの温度を温度検出手段によって検出し、検出された温度が低温(閾値T2以下;但し、T1>T2)である場合に触媒層Bへのガスの供給量を減少させる動作を自動的に行なうことができるので、触媒層Bの触媒活性の不足によるガス浄化効率の低下をより効果的に抑制できる。
詳細には、上記形態では、触媒層A及び触媒層Bへの供給前のガスの温度を温度検出手段によって検出し、検出された温度が高温(閾値T1以上)である場合には触媒層Aへのガスの供給量を減少させ、かつ、検出された温度が低温(閾値T2以下;但し、T1>T2)である場合には触媒層Bへのガスの供給量を減少させる動作が自動的に行なわれる。
従って、上記形態によれば、ガスが高温(閾値T1以上)である場合におけるアンモニアの熱分解の抑制と、ガスが低温(閾値T2以下)である場合における浄化効率の低下の抑制と、が効果的に両立される。
【0025】
前記閾値T2は、例えば50℃〜250℃(好ましくは100℃〜250℃、より好ましくは150℃〜250℃)の範囲で設定することができる。
【0026】
第1の発明に係る触媒反応装置では、前記触媒層A及び前記触媒層Bに供給されるガスの供給方向と直交する平面において、前記暖機手段、前記触媒層A、及び前記触媒層Bがこの順に配置されていることが好ましい。
これにより、触媒層Aと暖機手段とが熱交換する面積(好ましくは触媒層Aと暖機手段との接触面積)をより広く確保できるので、暖機手段による触媒層Aの暖機効果をより向上させることができる。
【0027】
第1の発明に係る触媒反応装置では、前記触媒層A及び前記触媒層Bに供給されるガスの供給方向と直交する平面において、前記触媒層Bの周囲に前記触媒層Aが配置され、前記触媒層Aの周囲に前記暖機手段が配置されていることが好ましい。
これにより、触媒層Aと暖機手段とが熱交換する面積(好ましくは触媒層Aと暖機手段との接触面積)をより広く確保できるので、暖機手段による触媒層Aの暖機効果をより向上させることができる。
一方、前記平面において、触媒層Bの断面積は触媒反応部全体の断面積より小さくなるが、触媒層Bのみで浄化を行なう際のガスの温度は高温(例えば、閾値T2以上)であることが多いため、断面積が小さい触媒層Bによっても触媒活性(浄化効率)がある程度確保される。
【0028】
第1の発明に係る触媒反応装置では、更に、前記触媒層Aと前記触媒層Bとの間に断熱層を備えることが好ましい。
これにより、触媒層Aと触媒層Bとの断熱性が向上され、触媒層Bに供給された高温のガスの熱が触媒層Aに伝わりにくくなるので、触媒層Aとの間で熱交換する暖機手段におけるアンモニアの分解を抑制できる。
例えば、触媒反応装置が供給量調整手段Aを備える場合には、供給量調整手段Aによって触媒層Aへのガスの供給量を低下させたことによる効果がより効果的に奏される。
【0029】
第1の発明に係る触媒反応装置では、前記暖機手段は、化学蓄熱材の少なくとも一種として金属塩化物を用いて構成された態様が好ましく、アルカリ金属の塩化物、アルカリ土類金属の塩化物、及び遷移金属の塩化物からなる群から選択される金属塩化物を有している態様がより好ましい。
【0030】
金属塩化物は、高い蓄熱密度(kJ/kg)が得られる点で好適であり、浄化触媒の暖機機能を高めることができる。アルカリ金属の塩化物、アルカリ土類金属の塩化物、及び遷移金属の塩化物は、暖機機能をより高める点で有用である。
なお、蓄熱密度は、アンモニアの脱離により金属塩化物1kgあたりに蓄熱される熱量(kJ)を示す。
前記金属塩化物としては、LiCl、MgCl
2、CaCl
2、SrCl
2、BaCl
2、MnCl
2、CoCl
2、及びNiCl
2の少なくとも一種であることがより好ましい。
【0031】
第1の発明に係る触媒反応装置では、前記供給量調整手段A及び前記供給量調整手段Bの少なくとも一方が、バタフライバルブであることが好ましい。
これにより、触媒層A及び触媒層Bへのガス供給量の調整をより効果的に行なうことができる。
【0032】
また、第1の発明に係る触媒反応装置では、暖機手段が、少なくとも1つのアンモニア供給口と、化学蓄熱材及びアンモニア供給口の間に配置され、供給されたアンモニアを拡散すると共に化学蓄熱材と接触させる多孔体とを有している態様に構成されるのが好ましい。
【0033】
アンモニアを供給するためのアンモニア供給口を1つ又は複数設け、暖機手段内に配置された化学蓄熱材にアンモニアが供給されると、アンモニアの化学蓄熱材への化学吸着に伴なう発熱反応で触媒の暖機が開始される。このとき、アンモニア供給口と化学蓄熱材との間に気体が流通可能な孔を多数有する多孔体が設けられていると、アンモニアが多孔体内を流通して拡散しながら化学蓄熱材に供給されるので、化学蓄熱材での発熱反応を広範な範囲にわたって均一に生じさせることができる。
【0034】
次に、第2の発明である車両は、内燃機関と、内燃機関から排出された排ガスが流入する第1の発明である触媒反応装置とを設けて構成される。
【0035】
第2の発明である車両では、内燃機関から排出された排ガスが本発明の触媒反応装置に送られ、浄化されるので、使用環境が低温域(氷点下を含む)である場合でも、安定的に浄化機能を発現させることができる。これにより、車両から排出される排ガスの有害成分の除去が高効率に行なわれる。
【0036】
第2の発明は、内燃機関としてディーゼルエンジンを備えており、更に、該ディーゼルエンジンから排出された排ガスの流通方向における触媒反応装置の下流に、排ガス中の粒子状物質(PM)を減少させる炭素質浄化手段(例えばDPF)を設けて構成されていることが好ましい。
【0037】
炭素質浄化手段では、PMが堆積し、そのフィルタ壁面に堆積したり壁内部に流れ込んで蓄積されたPMがフィルタの細孔を詰まらせる一因となるため、例えば600℃以上の高温の排ガスを流通し、PMを除去処理するDPF再生モードが実行される場合がある。このような場合に、暖機時に使用されたアンモニアが600℃以上の高温下に曝されるのを防ぎ、アンモニアが水素と窒素に熱分解するのを防ぐので、暖機機能を長期に亘り安定的に維持することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、低温(例えば氷点下)を含む広い温度範囲で作動し、且つ、従来よりも低い温度(例えば160℃程度)で安定的に再生できる暖機機能を備え、使用温度環境に依らず高い触媒活性を発現する触媒反応装置が提供される。
また、本発明によれば、使用温度環境に依らず安定的に排ガスの浄化が行なわれる車両が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、
図1〜
図11を参照して、本発明の触媒反応装置及びこれを備えた車両の実施形態について具体的に説明する。但し、本発明においては、以下に示す実施形態に制限されるものではない。
【0041】
本実施形態では、まず初めに暖機機能を有する触媒反応装置100が適用された車両としての自動車の熱系統について簡単に説明し、続いて自動車に搭載された触媒反応装置100について詳細に説明する。
【0042】
図1に示されるように、本実施形態の自動車は、内燃機関の一例であるディーゼルエンジン120と、ディーゼルエンジンから排出された排ガスを浄化する触媒反応装置100と、排ガス中に含まれる炭素質の粒子状物質(PM)を除去する炭素質除去手段であるPM除去用フィルタ(DPF:Diesel particulate filter)130と、を排ガスの排出方向に順次設けて構成されている。
【0043】
触媒反応装置100は、アンモニア(NH
3)が固定化されるときに放熱しアンモニア(NH
3)が脱離するときに蓄熱する化学蓄熱材を含む暖機手段と、ガスを浄化する浄化触媒を含み前記暖機手段との間で熱交換する(好ましくは前記暖機手段に接触する)触媒層A、及び、ガスを浄化する浄化触媒を含み前記触媒層Aの前記暖機手段と対向しない側に配置された触媒層Bを有する触媒反応部と、を備えている。
本実施形態では、触媒反応装置100における暖機手段の熱輸送媒体として、水ではなくアンモニアを用いているため、低温環境下(氷点下を含む)においても触媒層A中の浄化触媒を迅速に暖機して該浄化触媒の触媒活性を発現させることができるので、低温を含む広い温度範囲に渡り、触媒反応装置全体として高い触媒活性(高い排ガス浄化効率)を発現させることができる。更に、この暖機手段は、アンモニアを用いているため、低い温度(例えば160℃)で安定的に再生できる。
【0044】
図1に示すように、触媒反応装置100は、バルブ110を備えたアンモニア配管112により、アンモニア貯留器としてのアンモニアタンク140と接続されている。アンモニア配管112は、アンモニア導入口48(アンモニア供給口)を介して触媒反応装置100の暖機手段(例えば後述の暖機用蓄熱反応器40)に連通されている。かかる構成により、本実施形態では、アンモニアタンク140から触媒反応装置100の暖機手段にアンモニア(NH
3)を供給したり、触媒反応装置100の暖機手段内のアンモニア(NH
3)をアンモニアタンク140に回収できるようになっている。
【0045】
本実施形態において、アンモニアタンク140は、公知のアンモニア蒸発凝縮器の構成となっている。これにより、暖機手段による暖機を行なわないとき(暖機手段の再生時など)には、アンモニアを液体状態で貯留しておき、暖機手段による暖機を行なうときには、アンモニアをガス状態として触媒反応装置100に供給できるようになっている。
但し、本発明では、アンモニア蒸発凝縮器であるアンモニアタンク140に代えて、アンモニアを吸脱着可能な物理吸着材を備えた吸着器や、アンモニアを固定化及び脱離できる化学蓄熱材を備えた蓄熱器を用いてもよい。前記物理吸着材の例としては、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、粘土鉱物(セピオライト等)等が挙げられる。前記粘土鉱物としては、非架橋の粘土鉱物であっても、架橋された粘土鉱物(架橋粘土鉱物)であってもよい。前記化学蓄熱材の例としては、後述する暖機用蓄熱反応器40に備えられる化学蓄熱材の例と同様である。
【0046】
また、本実施形態は、ディーゼルエンジン120を備えており、その排ガス中のPMが堆積したDPFのPM除去時(DPF再生時)には、600℃以上に及ぶ高温の排ガスが流通することになり、触媒反応装置100は600℃以上の高温環境に曝されることになる。この構成において、触媒反応装置100がアンモニアを使用した暖機機能を備えている場合、アンモニアが高温下に曝されて熱分解する懸念がある。本実施形態の触媒反応装置100は、後述するように、暖機手段と熱交換する触媒層Aへのアンモニアの供給量を減少させ、主として触媒層Bにアンモニアを供給することにより、高温環境にアンモニアが曝されにくくなるので、アンモニアの熱分解が抑制される。これにより、長期にわたり装置中のアンモニア分圧、すなわち暖機機能を保持することが可能である。
【0047】
なお、PM除去用フィルタ(DPF)130には、一般にDPF用基材又はこれに触媒金属を担持したDPF触媒が使用される。DPFの例としては、コージェライトや炭化珪素、金属などのハニカム基材等の多孔質状の壁材の内部もしくは表面に、白金(Pt)やパラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属を担体に担持した触媒粒子が担持された触媒を使用することができる。
【0048】
図2は、
図1中の触媒反応装置100のA−A線断面を示す概略断面図であり、
図3は、
図1中の触媒反応装置100のB−B線断面を示す概略断面図である。
図2及び
図3に示すように、触媒反応装置100は断面円形の筒形状となっており、ガスの供給方向と直交する平面(
図3)において、中心から外側に向かって、触媒層Bとしての触媒層10Bと、断熱層12と、触媒層Aとしての触媒層10Aと、暖機手段としての暖機用蓄熱反応器40と、が順次配置されて構成されている。ここで、触媒層10B、断熱層12、触媒層10A、及び暖機用蓄熱反応器40は、同心円状に配置されており、触媒層10B、断熱層12、及び触媒層10Aによって触媒反応部20が構成されている。
【0049】
触媒層10A及び触媒層10Bは、それぞれ、ガスを浄化する浄化触媒を含んでいる。
これにより、触媒層10A及び触媒層10Bに供給されたガス中のHC、CO等の成分が浄化触媒により分解、除去され、ガスの浄化が行なわれる。浄化されたガスは、触媒層10A及び触媒層10BからPM除去用フィルタ(DPF)130側に排出される。
ここで、触媒層10Aは、主として低温域〜中温域の(例えば、後述する閾値T1未満の温度域の)ガスの浄化を行い、触媒層10Bは、主として中温域〜高温域の(例えば、後述する閾値T2を超える温度域の)ガスの浄化を行なう。
【0050】
触媒層10A及び触媒層10Bの具体的な構成としては、例えば、ハニカム構造を有するハニカムモノリス基材(支持基材)に、触媒粒子(浄化触媒)が担体に担持されてなる触媒構造体が設けられた構成が挙げられる。
支持基材の具体的な例としては、SiC製ハニカム基材、コージェライト製ハニカム基材、メタルハニカム基材などが挙げられる。また、触媒粒子としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属の粒子が挙げられ、該粒子を担持する担体としては、二酸化ジルコニウム(ZrO
2)や酸化アルミニウム(Al
2O
3)、シリカ、シリカ−アルミナ、セリア(CeO
2)、ゼオライトなどの酸化物の粒子が挙げられる。
本発明において、触媒層10A及び触媒層10Bの構成は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、触媒層10Aにおける浄化触媒と、触媒層10Bにおける浄化触媒とは、同一種であっても異種であってもよい。
【0051】
また、触媒層10Aと触媒層10Bとの間には断熱層12が設けられており、これにより、特に触媒層10A及び触媒層10Bの少なくとも一方(特に触媒層10A)の熱伝導性が高い場合において、触媒層10Aと触媒層10Bとの間での熱の授受を抑制できるようになっている。
断熱層12は、例えば、グラスウール、ロックウール、セラミックファイバー等によって構成される。
但し、本発明において断熱層12は必須ではなく省略することもできる。
【0052】
また、
図2及び
図3に示すように、触媒層10Aには、暖機手段としての暖機用蓄熱反応器40が接触している。この暖機用蓄熱反応器40は、アンモニアが固定化されるときに放熱(発熱)しアンモニアが脱離するときに蓄熱(吸熱)する化学蓄熱材を含んでいる。
これにより、始動時など排ガスの温度が低い(例えば25℃以下)ときに、暖機用蓄熱反応器40の化学蓄熱材にアンモニアを固定化することで放熱(発熱)し、この熱で触媒層10Aを暖機できるようになっている。更に、排ガスの温度がある程度高く(例えば160℃)なったときには、吸熱反応によって化学蓄熱材からアンモニアを脱離させて暖機用蓄熱反応器40を再生できるようになっている。
なお、本実施形態では触媒層10A(触媒層A)と暖機用蓄熱反応器40(暖機手段)とが接触している例を示しているが、本発明では、触媒層Aと暖機手段とが熱交換可能な配置であれば両者が接触している形態には限定されない。例えば、両者の間に他の層が存在していてもよい。
【0053】
図4に、暖機用蓄熱反応器40の具体的な構造を示す。
図4に示すように、暖機用蓄熱反応器40には、触媒層10Aの外周面に沿って配設された複数の板状の蓄熱材42と、複数の蓄熱材上及び複数の蓄熱材間(すなわち担体の外周面)を被覆する多孔質体44とが設けられている。つまり、多孔質体44は、化学蓄熱材とアンモニア供給口との間に配置されている。多孔質体44の周囲には、多孔質体の全面を覆って外装材46が配置され、多孔質体44の孔を通ってNH
3が流通するための流路が形成されている。
【0054】
外装材46には、アンモニアガス(NH
3)を導入するためのアンモニア導入口48(アンモニア供給口)が取り付けられている。アンモニア導入口48からNH
3が導入されると、導入されたNH
3が多孔質体44中を流通して複数の蓄熱材42の位置まで達することで、複数の蓄熱材42はNH
3と接触する。このとき、NH
3は各蓄熱材と反応するが、この反応は発熱反応であり、発生した熱が触媒層Aの暖機に利用される。
暖機用蓄熱反応器40の再生時には、触媒層10Aに供給された排ガスの熱を利用した吸熱反応によって各蓄熱材からNH
3が脱離し、脱離したNH
3がアンモニア導入口48から排出される。
【0055】
板状の蓄熱材42は、化学蓄熱材である塩化マグネシウム(MgCl
2)の粉末をバインダーとしてのポリビニルアルコール(PVA)と混合した混合物を熱プレスすることで、板状に成形されたものである。本実施形態では、
図4のように、板状の成形体である蓄熱材を複数配置して構成した例を示している。しかしながら、蓄熱材は、必ずしも板状の成形体を並べて構成されている必要はなく、触媒層10Aの外周面に沿ってその全面に単一の連続層として蓄熱材が配置されてもよい。
【0056】
本実施形態の暖機用蓄熱反応器40においては、化学蓄熱材としてMgCl
2(塩化マグネシウム)が設けられており、下記の可逆反応により、浄化触媒の暖機を要求に応じて繰り返し行なえるようになっている。すなわち、アンモニアが蓄熱材に固定化されるとき(下記の可逆反応(1)において右方向に進む反応時)に放熱し、アンモニアが蓄熱材から脱離するとき(下記の可逆反応(1)において左方向に進む反応時)に蓄熱する。
MgCl
2・2NH
3+ 4NH
3 ⇔ MgCl
2・6NH
3 + Q[kJ] …(1)
【0057】
化学蓄熱材は、MgCl
2に限られるものではなく、アンモニアの吸着時に発熱反応を生じる化合物を適用することができる。化学蓄熱材としては、反応器における蓄熱密度をより高める観点から、金属塩化物が好ましく、例えば、アルカリ金属の塩化物、アルカリ土類金属の塩化物、又は遷移金属の塩化物がより好ましく、LiCl、MgCl
2、CaCl
2、SrCl
2、BaCl
2、MnCl
2、CoCl
2、又はNiCl
2が特に好ましい。
例えば、LiCl、MgCl
2、CaCl
2、SrCl
2、BaCl
2、MnCl
2、CoCl
2、及びNiCl
2は、約800kJ/kg〜1400kJ/kgの高い蓄熱密度を示す。また、蓄熱温度は、金属塩化物の種類によって異なり、約30℃〜220℃の範囲である。
【0058】
本実施形態においては、アンモニア圧や温度に合わせて、金属塩化物の種類を適宜選定することができる。したがって、熱利用の対象に合わせ、アンモニア圧や温度を選定できる幅が広がる。
本実施形態において、化学蓄熱材(例えば金属塩化物)は、一種単独で用いるほか、二種以上を併用してもよい。
【0059】
化学蓄熱材を成形する際には、その成形性を高めるため、バインダーを混合してもよい。バインダーとしては、例えば、変性又は未変性の各種ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系樹脂、水性ウレタン等のウレタン樹脂、デンプンなどの樹脂成分や、ジエチレングリコール(DEG)、エタノールなどの溶剤成分、等を好適に用いることができる。
【0060】
成形方法については、特に限定はなく、例えば、化学蓄熱材及び必要に応じてバインダー等の他の成分を含む蓄熱材(又は蓄熱材を含むスラリー)を、加圧成形、押出成形等により成形する公知の成形方法を適用することができる。成形時の圧力は、例えば20〜100MPaとすることができ、20〜40MPaが好ましい。
【0061】
図2に戻り、触媒反応装置100では、触媒層10Aのガス供給側(ディーゼルエンジン120側)に、供給量調整手段Aとしてのバルブ30Aが設けられており、これにより、触媒層Aへのガスの供給量を調整できるようになっている。
同様に、触媒層10Bのガス供給側(ディーゼルエンジン120側)には、供給量調整手段Bとしてのバルブ30Bが設けられており、これにより、触媒層Bへのガスの供給量を調整できるようになっている。
バルブ30A及びバルブ30Bの具体的な形態については後述する(
図8〜
図10)。
【0062】
バルブ30A及びバルブ30Bのガス供給側(ディーゼルエンジン120側)には温度検出手段としての温度検出センサ34が設けられており、これにより、ディーゼルエンジン120から排出された排ガスの温度を検出できるようになっている。
【0063】
更に、触媒反応装置100は、温度検出センサ34、バルブ30A、及びバルブ30Bに電気的に接続された制御装置50(制御手段)を備えている。
この制御装置50は、温度検出センサ34によって検出された排ガス温度に応じ、バルブ30Aによる触媒層Aへのガス供給、及び、バルブ30Bによる触媒層Bへのガス供給の少なくとも一方を制御する。
具体的には、制御装置50は、検出された排ガス温度が閾値T1以上である場合には、触媒層10Aへのガスの供給量が減少するようにバルブ30Aの動作を制御し、検出された排ガス温度が閾値T2以下(但し、T1>T2の関係を満たす)である場合には、触媒層10Bへのガスの供給量が減少するようにバルブ30Bの動作を制御する。
但し、本実施形態では、上述した制御装置50による自動制御に代え、バルブ30A及びバルブ30Bの上述した動作を、排ガス温度に応じて手動により行なうこともできる。
【0064】
前記閾値T1及び前記閾値T2は、T1>T2の関係を満たす限り任意に設定できるが、それぞれ、以下の範囲で設定される値であることが好ましい。
【0065】
前記閾値T1は、好ましくは300℃〜500℃、より好ましくは350℃〜450℃である。
閾値T1が500℃以下であると、エンジンから高温の排ガスが排出されたとき(例えばDPF再生時)の、アンモニアの熱分解をより効果的に抑制できる。
閾値T1が300℃以上であると、触媒層10A及び触媒層10Bの両方にガスが供給される時間(後述の
図6参照)が増えるため、触媒反応部20全体としての排ガス浄化効率の面や、暖機用蓄熱反応器40の再生(化学蓄熱材からのアンモニアの脱離)の面で有利である。
【0066】
前記閾値T2は、好ましくは50℃〜250℃、より好ましくは100℃〜250℃、特に好ましくは150℃〜250℃である。
閾値T2が50℃以上であると、エンジンから低温の排ガスが排出されたとき(例えば始動時)に、暖機用蓄熱反応器40に接触しない触媒層10Bへのガスの供給を抑制でき、かつ、暖機用蓄熱反応器40に接触し暖機用蓄熱反応器40によって暖機される触媒層10Aを主体として排ガスを浄化できる。これにより、触媒反応部20全体としての排ガス浄化効率を向上させることができる。具体的には、一般的な浄化触媒は常温(25℃)で触媒活性が低いため、閾値T2は50℃以上が好ましい。
一方、閾値T2が250℃以下であると、触媒層10A及び触媒層10Bの両方にガスが供給される時間(後述の
図6参照)が増えるため、触媒反応部20全体としての排ガス浄化効率の面で有利である。
【0067】
本実施形態において、触媒反応装置100が作動する温度域としては、−30℃以上250℃以下の範囲とすることができる。また、触媒反応装置100内のアンモニア圧(作動圧)は、例えば、0.1atm以上10atm以下の範囲とすることができる。
【0068】
次に、触媒反応装置100による排ガス浄化の一連の動作の一例を、
図5〜
図7を参照して説明する。
図5は、排ガス温度T及び閾値T2がT2≧Tの関係を満たす場合(以下、単に「T2≧Tの場合」ともいう)の動作であり、
図6は、排ガス温度T、閾値T1、及び閾値T2が、T1>T>T2の関係を満たす場合(以下、単に「T1>T>T2の場合」ともいう)の動作であり、
図7は、排ガス温度T及び閾値T1がT≧T1の関係を満たす場合(以下、単に「T≧T1の場合」ともいう)の動作である。
図5〜
図7では、バルブ30A及びバルブ30Bについて、開いている状態を白抜きで表し、閉じている状態をハッチング(右肩上がりの斜線)で表している。
また、以下の一例では、閾値T1を400℃とし、閾値T2を200℃として説明する。
【0069】
図5に示すように、ディーゼルエンジンの始動時など、T2(=200℃)≧Tの場合(排ガスが低温である場合)には、暖機用蓄熱反応器40にアンモニアを供給し、バルブ30Aを開きバルブ30Bを閉じる。
暖機用蓄熱反応器40へのアンモニアの供給は、
図1に示した熱系統におけるバルブ110を開け、アンモニアタンク140から生じたアンモニアガスを暖機用蓄熱反応器40へ輸送することにより行なう。この際、前もって、暖機用蓄熱反応器40内の化学蓄熱材からアンモニアが脱離した状態とし(即ち、暖機用蓄熱反応器40が再生された状態とし)、且つ、バルブ110が閉じた状態にして準備しておけば、アンモニアの供給をより効果的に行なうことができる。
一方、バルブ30Aを開きバルブ30Bを閉じることにより、ディーゼルエンジンから排出された低温の排ガスは、触媒層10Bには供給されず触媒層10Aにのみ供給される。
このとき、暖機用蓄熱反応器40内では、化学蓄熱材にアンモニアが固定化され、発熱反応により化学蓄熱材から熱Q
1が放出される。この熱Q
1によって触媒層10Aが暖機され、暖機されて触媒活性が高められた触媒層10Aにより、排ガスの浄化が行なわれる。ここで、暖機用蓄熱反応器40は、触媒反応部20全体ではなく、その一部である触媒層10Aのみを暖機するので、暖機を効率よく迅速に行なうことができる。
一方、暖機用蓄熱反応器40に接触しない触媒層10Bには排ガスが供給されないので、暖機されない触媒層10Bでは排ガスの浄化は行なわれない。これにより、触媒反応部20全体として、排ガスが低温であることによる低い触媒活性が補われる。
【0070】
次に、
図6に示すように、ディーゼルエンジンの始動からある程度時間が経過した時(いわゆる通常運転時)など、T1(=400℃)>T>T2(=200℃)の場合には、バルブ30A及びバルブ30Bを開く。このとき、ディーゼルエンジンからの排ガスは、触媒層10A及び触媒層10Bに供給され、触媒層10A及び触媒層10Bによって排ガスの浄化が行なわれる。
このときの排ガスの温度はある程度高い(T>T2(=200℃))ため、触媒層10A及び触媒層10Bは十分な触媒活性を発現し、排ガスを効果的に浄化する。また、触媒層10Aに供給される排ガスの温度はある程度低い(T1(=400℃)>T)ため、暖機用蓄熱反応器40でのアンモニアの熱分解が抑制される。
更に、バルブ30A及びバルブ30Bを開き、バルブ110を開いた状態としておくことにより、触媒層Aに供給される排ガスの熱Q
2を利用して、暖機用蓄熱反応器40の再生(化学蓄熱材からのアンモニアの脱離)が行なわれる。この再生がある程度進んだら(好ましくは終了したら)、次の暖機に備え、バルブ110を閉じる。但し、このバルブ110を閉じる動作は、以下のT≧T1(=400℃)の場合に行なってもよい。
【0071】
次に、
図7に示すように、DPF再生時など、T≧T1(=400℃)の場合には、バルブ30Bを開きバルブ30Aを閉じる。これにより、ディーゼルエンジンからの高温の排ガスは、触媒層10Aには供給されず触媒層10Bに供給され、触媒層10Bによって排ガスの浄化が行なわれる。
このとき、高温の排ガスが触媒層10Aに供給されないことから、触媒層10Aに接触する暖機用蓄熱反応器40が高温の排ガスの熱から保護され、この暖機用蓄熱反応器40でのアンモニアの熱分解が抑制される。
更に、この実施形態では、触媒層10Aと触媒層10Bとの間に断熱層12が設けられているので、触媒層10Bに供給された高温の排ガスの熱が、触媒層10Aを経由して暖機用蓄熱反応器40に伝わる現象をより抑制できる。これにより、暖機用蓄熱反応器40でのアンモニアの熱分解がより抑制される。
一方、この実施形態では、触媒層10Bの体積が触媒層10Aの体積と比較して小さいが、排ガスの温度が高いために触媒層10Bの触媒活性が高いことから、体積が小さい触媒層Bによっても十分に排ガスを浄化できる。
なお、前述のとおり、T≧T1(=400℃)の場合において、バルブ30Bを開きバルブ30Aを閉じるとともに、次の暖機に備え、バルブ110を閉じる動作を行なってもよい。
【0072】
以上により、本実施形態に係る触媒反応装置100によれば、排ガスの温度が高い場合(600℃程度)におけるアンモニアの熱分解を抑制でき、かつ、排ガスの温度が低い場合(例えば25℃以下)における触媒活性の低下(即ち、排ガス浄化効率の低下)を抑制できる。更に、触媒反応装置100における暖機用蓄熱反応器40は、熱輸送媒体としてアンモニアを用いているため、熱輸送媒体として水を用いた従来の暖機手段と比較して、低い温度(例えば160℃)での再生が可能である。
【0073】
次に、本実施形態におけるバルブ30A及びバルブ30Bの具体的な形態について、上述した一連の動作と合わせ、
図8〜
図10を参照しながら説明する。
図8は、T2≧Tの場合におけるバルブ30A及びバルブ30Bを示す概略斜視図であり、
図9は、T1>T>T2の場合におけるバルブ30A及びバルブ30Bを示す概略斜視図を示す概略斜視図であり、
図10は、T≧T1の場合におけるバルブ30A及びバルブ30Bを示す概略斜視図である。
【0074】
図8〜
図10に示すように、バルブ30Aはドーナツ盤状のバタフライバルブであり、バルブ30Bは円盤状のバタフライバルブである。
ここで、バルブ30Aの外径は、触媒層10Aの断面(ガスの供給方向と直交する方向についての断面(
図3);以下同じ)の外径に対応する寸法となっており、バルブ30Aの内径は、触媒層10Aの断面の内径に対応する寸法となっている。更に、バルブ30Bの直径は、触媒層10Bの断面の直径に対応する寸法となっている。
【0075】
バルブ30Aは、その外径方向を軸としてガス供給側に向かって曲げ変形自在に構成されている。
図8及び
図9に示すように、バルブ30Aが曲げ変形した状態は、バルブ30Aが開いた状態(触媒層10Aにガスが供給される状態)である。
図10に示すように、バルブ30Aが曲げ変形していない状態(ドーナツ盤状の状態)は、バルブ30Aが閉じた状態(触媒層10Aにガスが供給されない状態)である。
但し、バルブ30Aが曲げ変形される構成は必須ではなく、バルブ30Aは、曲げ変形せずに外径方向を軸として回転する、ドーナツ盤状のバタフライバルブに置き換えてもよい。
バルブ30Bは、公知のバタフライバルブの構成であり、その直径方向を軸に回転自在に構成されている。
図9及び
図10に示すように、バルブ30Bの面がガス供給方向に対し平行な状態は、バルブ30Bが開いた状態(触媒層10Bにガスが供給される状態)である。
図8に示すように、バルブ30Bの面がガス供給方向に対し垂直な状態は、バルブ30Bが閉じた状態(触媒層10Bにガスが供給されない状態)である。
【0076】
以上、本実施形態におけるバルブ30A及びバルブ30Bの具体的な形態について説明したが、本発明における供給量調整手段A及び供給量調整手段Bは上記の具体的な形態には限定されず、触媒層Aへのガス供給量と触媒層Bへのガス供給量とを独立して調整できる手段を任意に選択できる。
例えば、上記形態以外の前記供給量調整手段A及び前記供給量調整手段Bとしては、ゲートバルブや上記形態以外のバタフライバルブ等、一般的な調整弁を挙げることができる。
【0077】
次に、本実施形態の制御装置50による制御ルーチンの一例を
図11を参照して説明する。
【0078】
まず、イグニッションスイッチ(IGスイッチ)のオンにより、制御装置50の電源がオンされると、システムが起動される。なお、システムの起動は、自動で行なう以外に手動で行なうようにしてもよい。
システム起動時は、バルブ30A及びバルブ30Bが開いた状態となっている。
【0079】
本ルーチンが実行されると、まず、ステップ200において、温度検出センサ34により排ガス温度Tを検出し、検出された排ガス温度Tと予め定めた閾値T2とがT≦T2を満たすか否かが判定される。
【0080】
ステップ200においてT≦T2を満たすと判定された場合(ディーゼルエンジンの始動時など)には、触媒温度が低く暖機が必要であるため、ステップ220に移行しバルブ30Bを閉じ、再びステップ200に戻る。
これにより、
図5に示すように、触媒層10Aによって排ガスの浄化が行なわれる。このとき、触媒層Aにのみ排ガスが供給されるため、暖機を迅速に行なうことができる。
この際、前述のとおり、
図1に示した熱系統におけるバルブ110を開け、アンモニアタンク140から暖機用蓄熱反応器40へアンモニアガスが供給され、暖機用蓄熱反応器40によって触媒層10Aの暖機が行なわれる。本実施形態では、バルブ110が制御装置50と電気的に接続され、ステップ220において、バルブ30Bを閉じる操作とともにバルブ110を開く操作が行なわれてもよい。
【0081】
ステップ200においてT≦T2を満たさないと判定された場合(ディーゼルエンジンの始動からある程度時間が経過した後など)には、暖機の必要がないため、ステップ230に移行しバルブ30Bを開き、次のステップ240に移行する。
【0082】
ステップ240では、温度センサ34により検出された排ガス温度Tと、予め定めた閾値T1と、がT≧T1を満たすか否かが判定される。
ステップ240において、T≧T1を満たさないと判定された場合(いわゆる通常運転時など)には、暖機手段のアンモニアが熱分解される可能性が低いため、再びステップ230に戻って通常運転が継続される。
このとき、
図6に示されるように、触媒層10A及び触媒層10Bによって排ガスの浄化が行なわれるとともに、暖機用蓄熱反応器40の再生が行なわれる。
【0083】
ステップ240において、T≧T1を満たすと判定された場合(DPF再生時など)には、排ガス温度が高温であるため、ステップ250に移行し、バルブ30Aを閉じる。
すると、
図7に示されるように、触媒層10Aへの排ガスの供給が遮断され、触媒層10Bのみによって排ガスの処理が行なわれる。これにより、触媒層10Aに接触する暖機用蓄熱反応器40でのアンモニアの熱分解が抑制される。本実施形態では、バルブ110が制御装置50と電気的に接続され、ステップ250において、バルブ30Aを閉じる操作とともにバルブ110を閉じる操作が行なわれてもよい。
この状態で、次のステップ260に移行する。
【0084】
ステップ260では、ステップ240と同様に、T≧T1を満たすか否かが判定される。
ステップ260において、T≧T1を満たすと判定された場合(DPF再生時など)には、上記ステップ250における状態を維持したままステップ280に移行し、運転を継続するか否かが判定される。
【0085】
ステップ260において、T≧T1を満たさないと判定された場合(DPF再生の終了から一定時間経過後など)には、暖機手段のアンモニアが熱分解する可能性が低いため、ステップ270に移行してバルブ30Aを開き、再び、触媒層10A及び触媒層10Bによって排ガスの浄化を行なう。
この状態で、次のステップ280に移行し、運転を継続するか否かが判定される。
【0086】
ステップ280において、運転を継続すると判定された場合には、再びステップ200に戻り、上述したルーチンが繰り返される。
一方、ステップ280において、運転を継続しないと判定された場合には、本ルーチンを終了する。
【0087】
以上、本実施形態における一連の動作、及び、制御装置50における制御ルーチンについて説明したが、上述した一連の動作及び制御ルーチンにおいて、バルブ30A(又はバルブ30B)を開く動作は、触媒層10A(又は触媒層10B)への排ガス供給量が増大するようにバルブ30A(又はバルブ30B)を調整する動作に置き換えてもよい。また、バルブ30A(又はバルブ30B)を閉じる動作は、触媒層10A(又は触媒層10B)への排ガス供給量が減少するようにバルブ30A(又はバルブ30B)を調整する動作に置き換えてもよい。