(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019914
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】光分岐装置および光分岐方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20161020BHJP
G02B 6/34 20060101ALI20161020BHJP
H01S 3/10 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
G02B6/42
G02B6/34
H01S3/10 Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-179717(P2012-179717)
(22)【出願日】2012年8月14日
(65)【公開番号】特開2014-38917(P2014-38917A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 秀司
【審査官】
林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−138646(JP,A)
【文献】
特開2003−179290(JP,A)
【文献】
実開昭61−193405(JP,U)
【文献】
特開2000−180659(JP,A)
【文献】
特開平09−257813(JP,A)
【文献】
特開平05−099641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/10−3/30
G02B 6/00
G02B 6/28
G02B 6/34
G02B 6/42
G01N 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号光を伝送する光伝送路と、
前記光伝送路の近傍に配置され、前記光伝送路から漏洩した信号光であるエバネッセント光を取り出す取出部と、
前記取出部にて取り出されたエバネッセント光の強度を検出する強度検出部と、
前記検出した強度に基づいて、前記光伝送路に対する前記取出部の位置を調整する制御部と、を備える光分岐装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検出した強度が高くなるように前記取出部の位置を調整する、請求項1に記載の光分岐装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記取出部を前記光伝送路の長手方向に沿って移動させることで、前記取出部の位置を調整する、請求項1または2のいずれかに記載の光分岐装置。
【請求項4】
前記光伝送路は、前記信号光を増幅する光増幅部を有し、
前記制御部は、前記強度に基づいて、前記光増幅部の増幅率を調節する、請求項1に記載の光分岐装置。
【請求項5】
前記信号光は、所定の周波数を有する基準光を含み、
前記取出部は、前記エバネッセント光を取り出して分波し、
前記強度検出部は、前記分波されたエバネッセント光のうちの前記基準光の強度を検出する、請求項4に記載の光分岐装置。
【請求項6】
信号光を伝送する光伝送路から漏洩した信号光であるエバネッセント光を取り出す取出部が前記光伝送路の近傍に配置された光分岐装置による光分岐方法であって、
前記取出部が取り出したエバネッセント光の強度を検出し、
前記検出した強度に基づいて、前記光伝送路に対する前記取出部の位置を調整する、光分岐方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光分岐装置および光分岐方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光が屈折率の高い媒質から屈折率の低い媒質に入射される場合、入射角がある角度以上になると、光は全反射される。光ファイバなどの光伝送路は、このような現象を利用して周りよりも屈折率の高い伝送媒体の内部に信号光を閉じ込めて伝送する。伝送媒体の内部に閉じ込められた信号光を光伝送路から取り出す方法としては、光カプラなどの分岐部材を用いて信号光を分岐する方法が挙げられる。
【0003】
図3は、光カプラを用いて信号光を分岐する分岐装置の構成を説明するための説明図である。
図3に示す分岐装置900は、光伝送路から取り出した信号光を信号光の増幅率を調節するために用いる光増幅装置である。
【0004】
光分岐装置900は、主に光部品から構成される光モジュール部910と、主に電気部品から構成される制御回路部920とを有する。
【0005】
光モジュール部910は、信号光を伝送する光ファイバ90と、信号光が入力される入力インタフェースである光コネクタ91と、光コネクタ91に入力された信号光を増幅する光増幅部92と、増幅された信号光を出力する出力インタフェースである光コネクタ93と、光増幅部92の出力側に接続され、光ファイバ90を伝送する信号光を分岐する光カプラ94と、分岐された信号光を分波するプリズム95と、プリズム95から出力された波長信号光を光電変換して電気信号を出力するフォトダイオード98と、を有する。また制御回路部920は、フォトダイオード98が出力する電気信号に基づいて、光増幅部92の増幅率を調節する制御部99を有する。
【0006】
このように、光伝送路の途中に光カプラなどの分岐部材を接続すれば、光伝送路から信号光を取り出すことができる。
【0007】
しかしながら、分岐部材を挿入する場合には、分岐部材と光伝送路とを接続した箇所で光が損失する接続損失が生じ、光伝送路を伝送する信号光の強度が大幅に低下するという問題がある。また、分岐部材と光伝送路とを接続した箇所以外では信号光を取り出すことができず、柔軟性に欠けるという問題もある。
【0008】
これに対し、特許文献1には、光伝送路から漏洩した信号光であるエバネッセント光を取り出すことで信号光を分岐させる分岐方法が記載されている。なお、屈折率の高い媒質と低い媒質との境界面で信号光が全反射されるとき、境界面に対する波数の垂直成分は虚数になっているため、屈折率の高い媒質から入射した信号光は、屈折率の低い媒質側に1波長程度漏洩する。この漏洩した信号光が、エバネッセント光と呼ばれる。エバネッセント光は、信号光が全反射した全反射点から屈折率の低い媒質側に漏洩した後、媒質間の境界と直行する方向には伝搬せずに減衰するため、光伝送路表面においては全反射点近傍の微小な領域に局在している。このため光伝送路表面の全反射点近傍ではエバネッセント光の強度は高いが、全反射点の近傍以外では、エバネッセント光の強度は低い。
【0009】
特許文献1に記載の分岐方法では、光部材を光伝送路に沿って密接させることで、光部材と密着した光伝送路の各点に局在しているエバネッセント光を光部材に伝搬させることで取り出している。このようにエバネッセント光を取り出すことで信号光を分岐させる場合、分岐部材を光伝送路に接続する必要がないため、接続損失を生じることなく光伝送路から信号光を取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平3−62021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の分岐方法では、光部材と密着した光伝送路の各点のエバネッセント光を均等に取り出しているため、エバネッセント光が最も強くなる全反射点以外の点からもエバネッセント光が取り出されてしまう。このため、効率良くエバネッセント光を取り出すことができないという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、光伝送路から効率良く信号光を取り出すことの可能な光分岐装置および光分岐方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による光分岐装置は、信号光を伝送する光伝送路と、前記光伝送路の近傍に配置され、前記光伝送路から漏洩した信号光であるエバネッセント光を取り出す取出部と、前記取出部にて取り出されたエバネッセント光の強度を検出する強度検出部と、前記検出した強度に基づいて、
前記光伝送路に対する前記取出部の位置を調整する制御部と、を有する。
【0014】
本発明による光分岐方法は、信号光を伝送する光伝送路の近傍に取出部を配置し、前記取出部にて前記光伝送路から漏洩した信号光であるエバネッセント光を取り出し、前記取り出したエバネッセント光の強度を検出し、前記検出した強度に基づいて、
前記光伝送路に対する前記取出部の位置を調整する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光伝送路から効率良く信号光を取り出すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる光増幅装置の構成を説明するための説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる光増幅装置が光伝送路から信号光を分岐する構成について説明するための説明図である。
【
図3】光カプラを用いて信号光を分岐する分岐装置の構成を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、同一の機能を有する構成要素については同じ符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。
【0018】
まず本発明の一実施形態にかかる光分岐装置の一例である光増幅装置について説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる光増幅装置の構成を説明するための説明図である。
【0019】
図1に示す光増幅装置100は、入力された信号光を光のまま増幅し、増幅した信号光を出力する。光増幅装置100は、単体の装置であってもよいし、他の装置(例えばROADM(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)システムで用いられる中継ノード)に備わっていてもよい。
【0020】
光増幅装置100は、主に光部品から構成される光モジュール部110と、主に電気部品から構成される制御回路部120とを有する。
【0021】
光モジュール部110は、光ファイバ10と、信号光が入力される入力インタフェースである光コネクタ11と、光増幅部12と、信号光を出力する出力インタフェースである光コネクタ13と、プリズム15と、モータ16と、導波路17と、フォトダイオード18と、を有する。制御回路部120は、光増幅部12の増幅率を調節し、プリズム15の位置を調整する制御部19を有する。
【0022】
光ファイバ10は、信号光を伝送する光伝送路の一例であり、光コネクタ11および光増幅部12を接続し、光増幅部12および光コネクタ13を接続する。光ファイバ10が伝送する信号光は、波長がそれぞれ異なる複数の波長信号光を多重化した波長多重信号光であるとする。なお信号光は、光増幅装置100の光出力レベルを一定に制御するための基準となる波長信号光である基準光を含む。基準光は、他の波長信号光の変調周波数よりもかなり小さい変調周波数を有する。
【0023】
光ファイバ10は、光コネクタ11に入力された信号光を伝送して光増幅部12に入力し、光増幅部12から出力された信号光を伝送して光コネクタ13から出力する。
【0024】
光増幅部12は、入力された信号光を光のまま増幅して出力する。本実施形態では、光増幅部12は、不純物が添加された光ファイバを用いる光ファイバ増幅器であるとする。添加する不純物には様々なものがあるが、ここでは、光増幅部12は、3価のエルビウムイオンが不純物として添加されたエルビウムドープトファイバ(EDF)であるとする。EDFは、光通信システムで通常使用されている波長(1.55μm帯および1.59μm帯)の信号光を増幅することができる。EDFに0.98μmまたは1.48μmの波長を有する励起光を入力すると、EDF中のエルビウムイオンがこの励起光を吸収して励起状態となる。このとき1.55μm帯または1.59μm帯の信号光をEDFに入力すると、励起状態のエルビウムイオンが基底状態になるとともに誘導放出が生じ、入力された信号光が増幅される。
【0025】
なお、ここでは光ファイバ増幅器を例に説明するが、光増幅部12は、光のまま信号光を増幅する光増幅器であれば、その種類を問わない。また光増幅部12は、信号光を伝送する光伝送路の一例でもある。以下、単に光伝送路と称する場合には、光ファイバ10および光増幅部12のいずれも含む。
【0026】
プリズム15は、光伝送路から漏洩した信号光であるエバネッセント光を取り出す取出部の一例である。プリズム15は、取り出したエバネッセント光を複数の波長信号光に分波し、各波長信号光を出力する分波素子である。なおプリズム15は、光増幅部12の出力側に接続された光ファイバ10の近傍に配置される。ここでプリズム15が光ファイバ10の近傍に配置された状態とは、プリズム15と光ファイバ10とが接触せずに、プリズム15が光ファイバ10表面のエバネッセント光が存在する範囲内に配置された状態をいう。エバネッセント光が存在する範囲とは、通常、光ファイバ10の表面から、数十nmから数百nmの距離である。
【0027】
モータ16は、光伝送路の長手方向に沿ってプリズム15を移動させる原動機である。モータ16は、プリズム15と光伝送路との間の距離を一定に保ったままプリズム15を光伝送路の長手方向に沿って移動させる。モータ16は、モータ16を駆動させるためのスイッチ信号に応じて駆動する。例えばモータ16は、スイッチ信号が入力されている間駆動し、スイッチ信号が入力されなくなるとモータ16は駆動を停止する。
【0028】
導波路17は、プリズム15が出力する波長信号光を伝送し、フォトダイオード18に入力する。なお
図1においては簡単のために導波路17は1本だけ示しているが、実際には、導波路17は、プリズム15が出力する波長信号光のそれぞれに対して設けられる。導波路17は、例えば、光ファイバである。
【0029】
フォトダイオード18は、導波路17から入力された波長信号光の強度を検出することで、プリズム15にて取り出されたエバネッセント光の強度を検出する強度検出部の一例である。具体的には、フォトダイオード18は、入力された波長信号光の強度を検出し、その強度に応じた電気信号を生成する。フォトダイオード18は、生成した電気信号を制御部19に入力する。なおフォトダイオード18は、導波路17ごとに設けられ、各フォトダイオード18は、導波路17のいずれかと1対1で対応して接続される。
【0030】
制御部19は、CPU(Central Processing Unit)およびA/D(Analog/Digital)コンバータなどを用いたアナログ・デジタル混在回路である。
【0031】
制御部19は、フォトダイオード18の検出した波長信号光の強度に基づいて、光増幅部12の増幅率を調節する。具体的には、制御部19は、波長信号光のうち、基準光の強度に基づいて、増幅率を調節する。例えば制御部19は、基準光の強度が一定となるように光増幅部12の増幅率を調節する。
【0032】
基準光は、他の波長信号光の変調周波数よりもかなり小さい変調周波数を有するため、ノイズの影響を受けにくい。このため、基準光を用いて増幅率の調節を行うと、基準光以外の波長信号光を用いて増幅率の調節を行う場合と比較して、適切に増幅率を調節することができる。
【0033】
また制御部19は、モータ16を駆動して、プリズム15の位置を調整する。例えば制御部19は、モータ16を駆動させるためのスイッチ信号をモータ16に入力することで、プリズム15の位置を調整する。このとき制御部19は、フォトダイオード18が検出した強度に基づいて、プリズム15の位置を調整する。制御部19は、例えばフォトダイオード18が検出した強度がより高くなるように、プリズム15の位置を調整する。より具体的には、制御部19は、フォトダイオード18が検出した強度が所定の閾値以上となるように、プリズム15の位置を調整する。
【0034】
制御部19がプリズム15の位置を調整するトリガとしては、例えば以下のものが考えられる。制御部19は、例えばユーザがプリズム15の位置を調整するための入力操作を行うと、当該入力操作に応じて、プリズム15の位置を調整する。また制御部19は、定期的にプリズム15の位置を調整してもよい。また制御部19は、検出したエバネッセント光の強度を監視し、エバネッセント光の強度が所定の閾値以下に低下したときにプリズム15の位置を調整することもできる。
【0035】
以上、本実施形態にかかる光増幅装置100の構成について説明した。ここで説明した構成は一例であり、各種の変形構成をとることが可能である。
【0036】
例えば、上記実施形態では、光増幅部12は、1つの光増幅器を有することとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば光増幅部12は、複数段重ねて接続された光増幅器を有してもよい。また光増幅部12は、例えば光信号利得等化器や光分散補償器など信号光の信号品質を保持するための光デバイスを有する構成であってもよい。
【0037】
また上記実施形態では、エバネッセント光を取り出す取出部の一例としてプリズム15を示したが、取出部は、回折格子などの光部材であってもよい。
【0038】
また上記実施形態では、プリズム15は、光増幅部12の出力側の光ファイバ10の近傍に配置されているが、プリズム15の初期位置および調整後の位置は、光増幅部12の入力側の光ファイバ10、光増幅部12に含まれる増幅媒体である増幅用ファイバ、および光増幅部12の出力側の光ファイバ10を含む光伝送路のいずれの近傍であってもよい。
【0039】
また上記実施形態では、エバネッセント光を取り出す取出部の位置を変更するための原動機の一例としてモータ16を示したが、取出部の位置を変更するための構成は上記の例に限られない。またこのモータ16を制御する方法についても、上記実施形態は一例であって、エバネッセント光を高い強度で取り出すことができれば、どのような制御方法が用いられてもよい。
【0040】
また上記実施形態では、強度検出部の一例としてフォトダイオードを示したが、信号光の強度を検出することのできる素子であればどのような素子であってもよい。
【0041】
次に、光増幅装置100の動作について説明する。
図2は、本実施形態にかかる光増幅装置が光伝送路から信号光を分岐する構成について説明するための説明図である。以下
図1および
図2を参照しながら説明をする。
【0042】
図2に示す光伝送路50は、光ファイバ10または光増幅部12の増幅用ファイバである。ここでは光伝送路50の伝送媒体部分のみ図示したが、光伝送路50は、実際にはクラッドで覆われていてもよい。またクラッドはさらに被覆で覆われていてもよい。光伝送路50の伝送媒体部分は、伝送媒体の外部よりも屈折率の高い媒質で構成されている。このため、信号光が所定の臨界角以上の角度で伝送媒体に入射すると、信号光が伝送媒体の境界と接する点では全反射が生じ、信号光は、全反射を繰り返しながら光伝送路内を進む。なお全反射が生じる点を以下全反射点TRPと称する。
【0043】
ここで全反射点TRPでは、信号光の一部が光伝送路50の外部にエバネッセント光ELとして漏洩する。エバネッセント光ELが存在する領域中にプリズム15が配置されると、エバネッセント光ELを取り出すことができる。
【0044】
エバネッセント光ELを取り出したプリズム15は、取り出したエバネッセント光ELを複数の波長信号光に分波し、波長信号光を導波路17に入力する。
【0045】
導波路17は、入力された波長信号光を伝送し、フォトダイオード18に入力する。フォトダイオード18は、入力された波長信号光の強度を検出し、その強度に応じた電気信号を生成する。フォトダイオード18は、生成した電気信号を制御部19に入力する。
【0046】
制御部19は、入力された電気信号の示す波長信号光の強度に基づいて、光増幅部12の増幅率を調節する。例えば制御部19は、エバネッセント光ELに含まれる基準光の強度を示す電気信号に基づいて、基準光の強度が一定となるように、光増幅部12の増幅率を調節する。
【0047】
また、制御部19は、入力された電気信号の示す波長信号光の強度に基づいて、プリズム15の位置を調整する。制御部19は、検出された強度が高くなるように、プリズム15の位置を調整する。具体的には、制御部19は、検出された強度が所定の閾値以下となると、スイッチ信号を生成してモータ16に入力する。モータ16は、入力されたスイッチ信号に応じて駆動を開始する。モータ16が駆動すると、プリズム15は移動する。プリズム15が移動している間、制御部19は、プリズム15が取り出したエバネッセント光ELの強度を監視しつづける。そして制御部19は、検出された強度が所定の閾値以上となると、モータ16へのスイッチ信号の入力を停止する。制御部19がこのようにプリズム15の位置を調整すると、プリズム15は、高い強度でエバネッセント光ELを取り出すことができる。
【0048】
以上説明したように本実施形態によれば、信号光を伝送する光伝送路の近傍に配置された取出部が、光伝送路から漏洩した信号光であるエバネッセント光を取り出す。そして取り出したエバネッセント光の強度が検出され、検出された強度に基づいて、取出部の位置が調整される。これにより、光伝送路から効率良く信号光を取り出すことが可能になる。
【0049】
また、本実施形態では、検出した強度が高くなるように、取出部の位置が調整される。これにより、光伝送路から高い強度の信号光を取り出すことが可能になる。
【0050】
また、本実施形態では、取出部を光伝送路の長手方向に移動させることで、取出部の位置が調整される。これにより、取出部を全反射点の近傍に移動させることが可能になり、より確実に、光伝送路から高い強度の信号光を取り出すことが可能になる。
【0051】
また、本実施形態では、光伝送路が光増幅部を有し、エバネッセント光に基づいて、光増幅部の増幅率が調節される。このため、エバネッセント光を取り出すことによって光伝送路から取り出した信号光を、光増幅部の増幅率の調節に用いることができる。
【0052】
また、本実施形態では、光伝送路を伝送する信号光は、所定の周波数を有する基準光を含み、光伝送路から取り出されたエバネッセント光は分波され、分波されたエバネッセント光のうちの基準光の強度が検出され、基準光の強度に基づいて増幅率が調節される。これにより、基準光に適切な周波数を用いれば、基準光がノイズの影響を受けにくくなり、増幅率を適切に調節することが可能になる。
【0053】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0054】
例えば、上記実施形態では、光分岐装置の一例として、光伝送路から分岐した信号光を増幅率の調節のために用いる光増幅装置を挙げたが、本発明はかかる例に限定されない。光伝送路から分岐した信号光の用途は問わずあらゆる用途に本発明の技術を適用することが可能である。
【0055】
また上記実施形態では、光増幅装置は、波長信号光のうち基準光に基づいて増幅率を調節したが、本発明はかかる例に限定されない。光増幅装置が基準光以外の波長信号光に基づいて増幅率を調節する構成に対しても、本発明の技術を適用することが可能である。
【0056】
また上記実施形態では、取出部を光伝送路の長手方向に沿って移動させることで取出部の位置を調整することとしたが、本発明はかかる例に限定されない。取出部を移動させる方向は、光伝送路の長手方向に限らない。
【符号の説明】
【0057】
100 光増幅装置
110 光モジュール部
10 光ファイバ
11、13 光コネクタ
12 光増幅部
15 プリズム(取出部)
16 モータ
17 導波路
18 フォトダイオード(強度検出部)
50 光伝送路
120 制御回路部
19 制御部