【実施例】
【0052】
(実施例I)
1.GaN結晶の熱膨張係数の測定
HVPE法により成長させた、転位密度が1×10
6cm
−2、Si濃度が1×10
18cm
−2、酸素濃度が1×10
17cm
−2、炭素濃度が1×10
16cm
−2のGaN単結晶から、サイズが2×2×20mm(長手方向がa軸、長手方向に平行な面がc面およびm面のいずれかで構成され、面方位の精度は±0.1°以内)の評価用サンプルを切り出した。
【0053】
上記の評価用サンプルについて、室温(25℃)から800℃まで昇温したときの平均熱膨張係数をTMA(熱機械分析)により測定した。具体的には、(株)リガク製TMA8310を用いて示差膨張方式により窒素ガス流通雰囲気下で評価サンプルの熱膨張係数を測定した。かかる測定により得られたGaN結晶のa軸方向の25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数α
GaNは、5.84×10
−6/℃であった。
【0054】
2.複合基板の準備工程
(1)支持基板を準備するサブ工程
図3(A)を参照して、支持基板11の材料として、ZrO
2とSiO
2との所定のモル比の混合物をアルゴンガス雰囲気下一軸方向に50MPaの圧力をかけて1700℃で1時間焼結させることにより、13種類のZrO
2−SiO
2系焼結体A〜Mを準備した。かかる13種類のZrO
2−SiO
2系焼結体IA〜IMには、X線回折により確認したところ、いずれについてもZrSiO
4、ZrO
2およびSiO
2が存在していた。また、上記13種類のZrO
2−SiO
2系焼結体のそれぞれからサイズが2×2×20mm(長手方向は焼結体から切り出される支持基板の主面に実質的に平行な方向)の測定用サンプルを切り出した。ここで、ZrO
2−SiO
2系焼結体は方向特異性がないため、切り出し方向は任意とした。それらの測定用サンプルについて、上記と同様にして、室温(25℃)から800℃まで昇温下時の平均熱膨張係数α
Sを測定した。
【0055】
ZrO
2−SiO
2系焼結体IAは、ZrO
2とSiO
2とのモル比が82:18であり、25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数α
S(以下、単に平均熱膨張係数α
Sという)が4.25×10
−6/℃であり、GaN結晶のa軸方向の平均熱膨張係数α
GaNに対する焼結体の熱膨張係数α
Sの比(以下、α
S/α
GaN比という)が0.728であった。ZrO
2−SiO
2系焼結体IBは、ZrO
2とSiO
2とのモル比が77:23であり、平均熱膨張係数α
Sが4.75×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.813であった。ZrO
2−SiO
2系焼結体ICは、ZrO
2とSiO
2とのモル比が71:29であり、平均熱膨張係数α
Sが5.00×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.856であった。ZrO
2−SiO
2系焼結体IDは、ZrO
2とSiO
2とのモル比が69:31であり、平均熱膨張係数α
Sが5.20×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.890であった。ZrO
2−SiO
2系焼結体IEは、ZrO
2とSiO
2とのモル比が66:34であり、平均熱膨張係数α
Sが5.40×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.925であった。ZrO
2−SiO
2系焼結体IFは、ZrO
2とSiO
2とのモル比が63:37であり、平均熱膨張係数α
Sが5.60×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.959であった。ZrO
2−SiO
2系焼結体IGは、ZrO
2とSiO
2とのモル比が58:42であり、平均熱膨張係数α
Sが5.80×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.993であった。ZrO
2−SiO
2系焼結体IHは、ZrO
2とSiO
2とのモル比が57:43であり、平均熱膨張係数α
Sが6.00×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.027であった。ZrO
2−SiO
2系焼結体IIは、ZrO
2とSiO
2とのモル比が53:47であり、平均熱膨張係数α
Sが6.33×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.084であった。ZrO
2−SiO
2系焼結体IJは、ZrO
2とSiO
2とのモル比が46:54であり、平均熱膨張係数α
Sが6.67×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.142であった。ZrO
2−SiO
2系焼結体IKは、ZrO
2とSiO
2とのモル比が42:58であり、平均熱膨張係数α
Sが7.00×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.199であった。ZrO
2−SiO
2系焼結体ILは、ZrO
2とSiO
2とのモル比が38:62であり、平均熱膨張係数α
Sが7.25×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.241であった。ZrO
2−SiO
2系焼結体IMは、ZrO
2とSiO
2とのモル比が35:65であり、平均熱膨張係数α
Sが7.50×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.284であった。
【0056】
上記13種類のZrO
2−SiO
2系焼結体IA〜IMから、直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmの支持基板をそれぞれ切り出して、それぞれの支持基板の両主面を鏡面に研磨して、13種類の支持基板IA〜IMとした。すなわち、13種類の支持基板IA〜IMの25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数は、それぞれ対応する13種類のZrO2−SiO2系焼結体IA〜IMの25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数に等しい。結果を表1にまとめた。
【0057】
(2)下地基板上に単結晶膜を成膜するサブ工程
図3(B)を参照して、下地基板30として、鏡面に研磨された(111)面の主面30nを有する直径5インチ(127mm)で厚さ0.5mmのSi基板を準備した。
【0058】
上記の下地基板30の主面30n上に、単結晶膜13として厚さ0.4μmのGaN膜をMOCVD法により成膜した。成膜条件は、原料ガスとしてTMGガスおよびNH
3ガスを使用し、キャリアガスとしてH
2ガスを使用し、成膜温度1000℃、成膜圧力は1気圧とした。なお、こうして得られた単結晶膜13の主面13mは、(0001)面からのオフ角が±1°以内の面方位を有していた。
【0059】
(3)支持基板と単結晶膜とを貼り合わせるサブ工程
図3(C)中の(C1)を参照して、
図3(A)の支持基板11である支持基板IA〜IMのそれぞれの主面11m上に厚さ2μmのSiO
2膜をCVD(化学気相堆積)法により成膜した。次いで、かかる支持基板IA〜IMのそれぞれの主面11m上の厚さ2μmのSiO
2膜を、CeO
2スラリーを用いて研磨することにより、厚さ0.2μmのSiO
2層だけ残存させて、接着層12aとした。これにより、支持基板IA〜IMのそれぞれの主面11mの空隙が埋められ、接着層12aである平坦な主面12amを有する厚さ0.2μmのSiO
2層が得られた。
【0060】
また、
図3(C)中の(C2)を参照して、
図3(B)の下地基板30であるSi基板上に成膜された単結晶膜13であるGaN膜の主面13n上に厚さ2μmのSiO
2膜をCVD法により成膜した。次いで、この厚さ2μmのSiO
2膜を、CeO
2スラリーを用いて研磨することにより、厚さ0.2μmのSiO
2層だけ残存させて、接着層12bとした。
【0061】
次いで、
図3(C)中の(C3)を参照して、支持基板11である支持基板IA〜IMのそれぞれに形成された接着層12aの主面12amおよび下地基板30であるSi基板上に成膜された単結晶膜13上に形成された接着層12bの主面12bnをアルゴンプラズマにより清浄化および活性化させた後、接着層12aの主面12amと接着層12bの主面12bnとを貼り合わせて、窒素雰囲気下300℃で2時間熱処理した。
【0062】
(4)下地基板を除去するサブ工程
図3(D)を参照して、支持基板11である支持基板IA〜IMのそれぞれの裏側(単結晶膜13が貼り合わされていない側)の主面および側面をワックス40で覆って保護した後、10質量%のフッ化水素酸および5質量%の硝酸を含む混酸水溶液を用いて、エッチングにより下地基板30であるSi基板を除去した。こうして、支持基板11である支持基板IA〜IMのそれぞれの主面11m側に単結晶膜13であるGaN膜が配置された複合基板10である複合基板IA〜IMが得られた。
【0063】
3.GaN系膜の成膜工程
図2(B)を参照して、複合基板10である複合基板IA〜IMの単結晶膜13であるGaN膜の主面13m(かかる主面は(0001)面である。)上および直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmのサファイア基板の主面(かかる主面は(0001)面である。)上に、それぞれMOCVD法によりGaN系膜20としてGaN膜を成膜した。かかるGaN系膜20の成膜においては、原料ガスとしてTMG(トリメチルガリウム)ガスおよびNH
3ガスを使用し、キャリアガスとしてH
2ガスを使用して、まず、500℃で、GaN系バッファ層21として厚さ0.1μmのGaNバッファ層を成長させ、次いで、1050℃で、GaN系単結晶層23として厚さ5μmのGaN単結晶層を成長させた。ここで、GaN単結晶層の成長速度は1μm/hrであった。その後、複合基板IA〜IMおよびサファイア基板のそれぞれにGaN膜が成膜されたウエハIA〜IMおよびIRを10℃/minの速度で室温(25℃)まで冷却した。
【0064】
室温まで冷却後に成膜装置から取り出されたウエハIA〜IMおよびIRについて、ウエハの反り、GaN膜のクラック本数密度および転位密度を測定した。ここで、ウエハの反りの形状および反り量は、GaN膜の主面をCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞により測定した。GaN膜のクラック本数密度は、ノマルスキー顕微鏡を用いて単位長さ当りのクラック本数を測定し、1本/mm未満を「極少」、1本/mm以上5本/mm未満を「少」、5本/mm以上10本/mm未満を「多」、10本/mm以上を「極多」と評価した。GaN膜の転位密度は、L(カソードルミネッセンス)による暗点の単位面積当たりの個数を測定した。なお、本実施例においてGaN膜に発生したクラックは、膜を貫通しない微小なものであった。
【0065】
ウエハIAは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が680μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多であった。ウエハIBは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が630μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が4×10
8cm
−2であった。ウエハICは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が500μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が3×10
8cm
−2であった。ウエハIDは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が400μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が2.5×10
8cm
−2であった。ウエハIEは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が350μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIFは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が230μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハIGは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が150μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハIHは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハIIは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が15μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハIJは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が120μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIKは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が230μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が3×10
8cm
−2であった。ウエハILは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が745μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が4×10
8cm
−2であった。ウエハIMは、支持基板に割れが発生し、十分なGaN膜が得られなかった。ウエハIRは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が750μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度は4×10
8cm
−2であった。これらの結果を表1にまとめた。表1において、「−」は、その物性値が未測定であることを示す。
【0066】
4.支持基板の除去工程
図2(C)を参照して、上記で得られたウエハIA〜ILを、10質量%のフッ化水素酸水溶液に浸漬することにより、支持基板11である支持基板IA〜ILおよび接着層12であるSiO
2層を溶解させることにより除去して、単結晶膜13であるGaN膜の主面13m上に成膜されたGaN系膜20であるGaN膜A〜Lが得られた。なお、ウエハIA〜ILから支持基板IA〜ILおよびSiO
2層が除去されることにより形成されたGaN系膜20であるGaN膜IA〜ILにおいても反りがCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞による測定により認められ、GaN膜IA〜ILの反りの大小関係には、ウエハIA〜ILにおける反りの大小関係が維持されていた。
【0067】
【表1】
【0068】
表1を参照して、主面内の熱膨張係数α
SがGaN結晶の熱膨張係数α
GaNの0.8倍より大きく1.2倍より小さい(すなわち、0.8<(α
S/α
GaN比)<1.2)支持基板を有する複合基板を用いることにより(ウエハIB〜IK)、反りが小さく転位密度が低く結晶性の良好なGaN膜を成膜することができた。また、GaN膜の反りおよび転位密度をさらに低減する観点から、複合基板の支持基板の主面内の熱膨張係数α
Sは、GaN結晶の熱膨張係数α
GaNの0.9倍より大きく1.15倍より小さいこと(すなわち、0.9<(α
S/α
GaN比)<1.15)(ウエハIE〜IJ)が好ましく、GaN結晶の熱膨張係数α
GaNの0.95倍より大きく1.1倍より小さいこと(すなわち、0.95<(α
S/α
GaN比)<1.1)(ウエハIF〜II)がより好ましい。
【0069】
(実施例II)
1.GaN結晶の熱膨張係数の測定
GaN結晶のa軸方向の25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数α
GaNは、実施例Iと同様にして測定したところ、5.84×10
−6/℃であった。
【0070】
2.複合基板の準備工程
(1)支持基板を準備するサブ工程
図3(A)を参照して、支持基板11の材料として、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)とSiO
2との所定のモル比の混合物をアルゴンガス雰囲気下一軸方向に50MPaの圧力をかけて1700℃で1時間焼結させることにより、13種類のYSZ−SiO
2系焼結体IIA〜IIMを準備した。ここで、YSZは、YSZに対するY
2O
3(イットリア)の含有率が30モル%のものを用いた。かかる13種類のYSZ−SiO
2系焼結体IIA〜IIMには、X線回折により確認したところ、いずれについてもYSZおよびSiO
2が存在していた。また、上記13種類のYSZ−SiO
2系焼結体のそれぞれからサイズが2×2×20mm(長手方向は焼結体から切り出される支持基板の主面に実質的に平行な方向)の測定用サンプルを切り出した。ここで、YSZ−SiO
2系焼結体は方向特異性がないため、切り出し方向は任意とした。それらの測定用サンプルについて、上記と同様にして、室温(25℃)から800℃まで昇温下時の平均熱膨張係数α
Sを測定した。
【0071】
YSZ−SiO
2系焼結体IIAは、YSZとSiO
2とのモル比が82:18であり、25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数α
S(以下、単に平均熱膨張係数α
Sという)が4.25×10
−6/℃であり、GaN結晶のa軸方向の平均熱膨張係数α
GaNに対する焼結体の熱膨張係数α
Sの比(以下、α
S/α
GaN比という)が0.728であった。YSZ−SiO
2系焼結体IIBは、YSZとSiO
2とのモル比が77:23であり、平均熱膨張係数α
Sが4.75×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.813であった。YSZ−SiO
2系焼結体IICは、YSZとSiO
2とのモル比が71:29であり、平均熱膨張係数α
Sが5.00×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.856であった。YSZ−SiO
2系焼結体IIDは、YSZとSiO
2とのモル比が69:31であり、平均熱膨張係数α
Sが5.20×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.890であった。YSZ−SiO
2系焼結体IIEは、YSZとSiO
2とのモル比が66:34であり、平均熱膨張係数α
Sが5.40×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.925であった。YSZ−SiO
2系焼結体IIFは、YSZとSiO
2とのモル比が63:37であり、平均熱膨張係数α
Sが5.60×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.959であった。YSZ−SiO
2系焼結体IIGは、YSZとSiO
2とのモル比が58:42であり、平均熱膨張係数α
Sが5.80×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.993であった。YSZ−SiO
2系焼結体Hは、YSZとSiO
2とのモル比が57:43であり、平均熱膨張係数α
Sが6.00×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.027であった。YSZ−SiO
2系焼結体IIIは、YSZとSiO
2とのモル比が53:47であり、平均熱膨張係数α
Sが6.33×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.084であった。YSZ−SiO
2系焼結体IIJは、YSZとSiO
2とのモル比が46:54であり、平均熱膨張係数α
Sが6.67×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.142であった。YSZ−SiO
2系焼結体IIKは、YSZとSiO
2とのモル比が42:58であり、平均熱膨張係数α
Sが7.00×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.199であった。YSZ−SiO
2系焼結体IILは、YSZとSiO
2とのモル比が38:62であり、平均熱膨張係数α
Sが7.25×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.241であった。YSZ−SiO
2系焼結体IIMは、YSZとSiO
2とのモル比が35:65であり、平均熱膨張係数α
Sが7.50×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.284であった。
【0072】
上記13種類のYSZ−SiO
2系焼結体IIA〜IIMから、直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmの支持基板をそれぞれ切り出して、それぞれの支持基板の両主面を鏡面に研磨して、13種類の支持基板IIA〜IIMとした。すなわち、13種類の支持基板IIA〜IIMの25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数は、それぞれ対応する13種類のYSZ−SiO
2系焼結体IIA〜IIMの25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数に等しい。結果を表2にまとめた。
【0073】
(2)下地基板上に単結晶膜を成膜するサブ工程
図3(B)を参照して、下地基板30として、実施例Iと同様に、鏡面に研磨された(111)面の主面30nを有する直径5インチ(127mm)で厚さ0.5mmのSi基板を準備した。かかる下地基板30の主面30n上に、実施例Iと同様にして、単結晶膜13として厚さ0.4μmのGaN膜を成膜した。得られた単結晶膜13の主面13mは、(0001)面からのオフ角が±1°以内の面方位を有していた。
【0074】
(3)支持基板と単結晶膜とを貼り合わせるサブ工程
図3(C)を参照して、実施例Iと同様にして、支持基板11と単結晶膜13とを接着層12を介在させて貼り合わせた。
【0075】
(4)下地基板を除去するサブ工程
図3(D)を参照して、実施例Iと同様にして、下地基板30であるSi基板を除去した。こうして、支持基板11である支持基板IIA〜IIMのそれぞれの主面11m側に単結晶膜13であるGaN膜が配置された複合基板IIA〜IIMが得られた。
【0076】
3.GaN系膜の成膜工程
図2(B)を参照して、実施例Iと同様にして、複合基板10である複合基板IIA〜IIMの単結晶膜13であるGaN膜の主面13m(かかる主面は(0001)面である。)上および直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmのサファイア基板の主面(かかる主面は(0001)面である。)上に、GaN系膜20としてGaN膜を成膜した。こうして、複合基板IIA〜IIMおよびサファイア基板のそれぞれにGaN膜が成膜されたウエハIIA〜IIMおよびIIRを得た。
【0077】
得られたウエハIIA〜IIMおよびIIRについて、ウエハの反り、GaN膜のクラック本数密度および転位密度を実施例Iと同様にして測定した。なお、本実施例においてGaN膜に発生したクラックは、膜を貫通しない微小なものであった。
【0078】
ウエハIIAは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が680μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多であった。ウエハIIBは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が630μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が4×10
8cm
−2であった。ウエハIICは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が500μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が3×10
8cm
−2であった。ウエハIIDは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が400μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が2.5×10
8cm
−2であった。ウエハIIEは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が350μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIIFは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が230μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハIIGは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が150μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハIIHは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハIIIは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が15μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハIIJは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が120μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIIKは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が230μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が3×10
8cm
−2であった。ウエハIILは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が745μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が4×10
8cm
−2であった。ウエハIIMは、支持基板に割れが発生し、十分なGaN膜が得られなかった。ウエハIIRは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が750μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度は4×10
8cm
−2であった。これらの結果を表2にまとめた。表2において、「−」は、その物性値が未測定であることを示す。
【0079】
4.支持基板の除去工程
図2(C)を参照して、上記で得られたウエハIIA〜IILを、実施例Iと同様にして、支持基板11である支持基板IIA〜IILおよび接着層12であるSiO
2層を溶解させることにより除去して、単結晶膜13であるGaN膜の主面13m上に成膜されたGaN系膜20であるGaN膜IIA〜IILを得た。なお、ウエハIIA〜IILから支持基板IIA〜IILおよびSiO
2層が除去されることにより形成されたGaN系膜20であるGaN膜IIA〜IILにおいても反りがCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞による測定により認められ、GaN膜IIA〜IILの反りの大小関係には、ウエハA〜Lにおける反りの大小関係が維持されていた。
【0080】
【表2】
【0081】
表2を参照して、主面内の熱膨張係数α
SがGaN結晶の熱膨張係数α
GaNの0.8倍より大きく1.2倍より小さい(すなわち、0.8<(α
S/α
GaN比)<1.2)支持基板を有する複合基板を用いることにより(ウエハIIB〜IIK)、反り小さく転位密度が低く結晶性の良好なGaN膜を成膜することができた。また、GaN膜の反りおよび転位密度をさらに低減する観点から、複合基板の支持基板の主面内の熱膨張係数α
Sは、GaN結晶の熱膨張係数α
GaNの0.9倍より大きく1.15倍より小さいこと(すなわち、0.9<(α
S/α
GaN比)<1.15)(ウエハIIE〜IIJ)が好ましく、GaN結晶の熱膨張係数α
GaNの0.95倍より大きく1.1倍より小さいこと(すなわち、0.95<(α
S/α
GaN比)<1.1)(ウエハIIF〜III)がより好ましい。
【0082】
(実施例III)
1.GaN結晶の熱膨張係数の測定
GaN結晶のa軸方向の25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数α
GaNは、実施例Iと同様にして測定したところ、5.84×10
−6/℃であった。
【0083】
2.複合基板の準備工程
(1)支持基板を準備するサブ工程
図3(A)を参照して、支持基板11の材料として、CaSZ(カルシア安定化ジルコニア)とSiO
2との所定のモル比の混合物をアルゴンガス雰囲気下一軸方向に50MPaの圧力をかけて1700℃で1時間焼結させることにより、13種類のCaSZ−SiO
2系焼結体IIIA〜IIIMを準備した。ここで、CaSZは、CaSZに対するCaO(カルシア)の含有率が30モル%のものを用いた。かかる13種類のCaSZ−SiO
2系焼結体IIIA〜IIIMには、X線回折により確認したところ、いずれについてもCaSZおよびSiO
2が存在していた。また、上記13種類のCaSZ−SiO
2系焼結体のそれぞれからサイズが2×2×20mm(長手方向は焼結体から切り出される支持基板の主面に実質的に平行な方向)の測定用サンプルを切り出した。ここで、CaSZ−SiO
2系焼結体は方向特異性がないため、切り出し方向は任意とした。それらの測定用サンプルについて、上記と同様にして、室温(25℃)から800℃まで昇温下時の平均熱膨張係数α
Sを測定した。
【0084】
CaSZ−SiO
2系焼結体IIIAは、CaSZとSiO
2とのモル比が82:18であり、25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数α
S(以下、単に平均熱膨張係数α
Sという)が4.25×10
−6/℃であり、GaN結晶のa軸方向の平均熱膨張係数α
GaNに対する焼結体の熱膨張係数α
Sの比(以下、α
S/α
GaN比という)が0.728であった。CaSZ−SiO
2系焼結体IIIBは、CaSZとSiO
2とのモル比が77:23であり、平均熱膨張係数α
Sが4.75×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.813であった。CaSZ−SiO
2系焼結体IIICは、CaSZとSiO
2とのモル比が71:29であり、平均熱膨張係数α
Sが5.00×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.856であった。CaSZ−SiO
2系焼結体IIIDは、CaSZとSiO
2とのモル比が69:31であり、平均熱膨張係数α
Sが5.20×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.890であった。CaSZ−SiO
2系焼結体IIIEは、CaSZとSiO
2とのモル比が66:34であり、平均熱膨張係数α
Sが5.40×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.925であった。CaSZ−SiO
2系焼結体IIIFは、CaSZとSiO
2とのモル比が63:37であり、平均熱膨張係数α
Sが5.60×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.959であった。CaSZ−SiO
2系焼結体IIIGは、CaSZとSiO
2とのモル比が58:42であり、平均熱膨張係数α
Sが5.80×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.993であった。CaSZ−SiO
2系焼結体IIIHは、CaSZとSiO
2とのモル比が57:43であり、平均熱膨張係数α
Sが6.00×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.027であった。CaSZ−SiO
2系焼結体IIIIは、CaSZとSiO
2とのモル比が53:47であり、平均熱膨張係数α
Sが6.33×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.084であった。CaSZ−SiO
2系焼結体IIIJは、CaSZとSiO
2とのモル比が46:54であり、平均熱膨張係数α
Sが6.67×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.142であった。CaSZ−SiO
2系焼結体IIIKは、CaSZとSiO
2とのモル比が42:58であり、平均熱膨張係数α
Sが7.00×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.199であった。CaSZ−SiO
2系焼結体IIILは、CaSZとSiO
2とのモル比が38:62であり、平均熱膨張係数α
Sが7.25×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.241であった。CaSZ−SiO
2系焼結体IIIMは、CaSZとSiO
2とのモル比が35:65であり、平均熱膨張係数α
Sが7.50×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.284であった。
【0085】
上記13種類のCaSZ−SiO
2系焼結体IIIA〜IIIMから、直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmの支持基板をそれぞれ切り出して、それぞれの支持基板の両主面を鏡面に研磨して、13種類の支持基板IIIA〜IIIMとした。すなわち、13種類の支持基板IIIA〜IIIMの25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数は、それぞれ対応する13種類のCaSZ−SiO
2系焼結体IIIA〜IIIMの25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数に等しい。結果を表3にまとめた。
【0086】
(2)下地基板上に単結晶膜を成膜するサブ工程
図3(B)を参照して、下地基板30として、実施例Iと同様に、鏡面に研磨された(111)面の主面30nを有する直径5インチ(127mm)で厚さ0.5mmのSi基板を準備した。かかる下地基板30の主面30n上に、実施例Iと同様にして、単結晶膜13として厚さ0.4μmのGaN膜を成膜した。得られた単結晶膜13の主面13mは、(0001)面からのオフ角が±1°以内の面方位を有していた。
【0087】
(3)支持基板と単結晶膜とを貼り合わせるサブ工程
図3(C)を参照して、実施例Iと同様にして、支持基板11と単結晶膜13とを接着層12を介在させて貼り合わせた。
【0088】
(4)下地基板を除去するサブ工程
図3(D)を参照して、実施例Iと同様にして、下地基板30であるSi基板を除去した。こうして、支持基板11である支持基板IIIA〜IIIMのそれぞれの主面11m側に単結晶膜13であるGaN膜が配置された複合基板A〜Mが得られた。
【0089】
3.GaN系膜の成膜工程
図2(B)を参照して、実施例Iと同様にして、複合基板10である複合基板IIIA〜IIIMの単結晶膜13であるGaN膜の主面13m(かかる主面は(0001)面である。)上および直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmのサファイア基板の主面(かかる主面は(0001)面である。)上に、GaN系膜20としてGaN膜を成膜した。こうして、複合基板IIIA〜IIIMおよびサファイア基板のそれぞれにGaN膜が成膜されたウエハIIIA〜IIIMおよびIIIRを得た。
【0090】
得られたウエハIIIA〜IIIMおよびIIIRについて、ウエハの反り、GaN膜のクラック本数密度および転位密度を実施例Iと同様にして測定した。なお、本実施例においてGaN膜に発生したクラックは、膜を貫通しない微小なものであった。
【0091】
ウエハIIIAは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が680μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多であった。ウエハIIIBは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が630μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が4×10
8cm
−2であった。ウエハIIICは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が500μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が3×10
8cm
−2であった。ウエハIIIDは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が400μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が2.5×10
8cm
−2であった。ウエハIIIEは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が350μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIIIFは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が230μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハIIIGは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が150μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハIIIHは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハIIIIは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が15μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハIIIJは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が120μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIIIKは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が230μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が3×10
8cm
−2であった。ウエハIIILは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が745μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が4×10
8cm
−2であった。ウエハIIIMは、支持基板に割れが発生し、十分なGaN膜が得られなかった。ウエハIIIRは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が750μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度は4×10
8cm
−2であった。これらの結果を表3にまとめた。表3において、「−」は、その物性値が未測定であることを示す。
【0092】
4.支持基板の除去工程
図2(C)を参照して、上記で得られたウエハIIIA〜IIILを、実施例Iと同様にして、支持基板11である支持基板IIIA〜IIILおよび接着層12であるSiO
2層を溶解させることにより除去して、単結晶膜13であるGaN膜の主面13m上に成膜されたGaN系膜20であるGaN膜IIIA〜IIILを得た。なお、ウエハIIIA〜IIILから支持基板IIIA〜IIILおよびSiO
2層が除去されることにより形成されたGaN系膜20であるGaN膜IIIA〜IIILにおいても反りがCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞による測定により認められ、GaN膜IIIA〜IIILの反りの大小関係には、ウエハIIIA〜IIILにおける反りの大小関係が維持されていた。
【0093】
【表3】
【0094】
表3を参照して、主面内の熱膨張係数α
SがGaN結晶の熱膨張係数α
GaNの0.8倍より大きく1.2倍より小さい(すなわち、0.8<(α
S/α
GaN比)<1.2)支持基板を有する複合基板を用いることにより(ウエハIIIB〜IIIK)、反り小さく転位密度が低く結晶性の良好なGaN膜を成膜することができた。また、GaN膜の反りおよび転位密度をさらに低減する観点から、複合基板の支持基板の主面内の熱膨張係数α
Sは、GaN結晶の熱膨張係数α
GaNの0.9倍より大きく1.15倍より小さいこと(すなわち、0.9<(α
S/α
GaN比)<1.15)(ウエハIIIE〜IIIJ)が好ましく、GaN結晶の熱膨張係数α
GaNの0.95倍より大きく1.1倍より小さいこと(すなわち、0.95<(α
S/α
GaN比)<1.1)(ウエハIIIF〜IIII)がより好ましい。
【0095】
(実施例IV)
1.GaN結晶の熱膨張係数の測定
GaN結晶のa軸方向の25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数α
GaNは、実施例Iと同様にして測定したところ、5.84×10
−6/℃であった。
【0096】
2.複合基板の準備工程
(1)支持基板を準備するサブ工程
図3(A)を参照して、支持基板11の材料として、1気圧、1700℃で10時間焼結する常圧焼結および2000気圧、1700℃で1時間焼結するHIP(熱間等方位圧プレス)により製造された57種類のYSZ(イットリア安定化ジルコニア)−ムライト系焼結体IVA0、IVB1〜IVB8、IVC1〜IVC8、IVD1〜IVD8、IVE1〜IVE8、IVF1〜IVF8、IVG1〜IVG8およびIVH1〜IVH8のそれぞれのX線回折によりY
2O
3、ZrO
2およびムライト(3Al
2O
3・2SiO
2〜2Al
2O3・SiO
2、具体的にはAl
6O
13Si
2)の存在の有無および比率を確認した。また、上記57種類のYSZ−ムライト系焼結体のそれぞれから、サイズが2×2×20mm(長手方向は焼結体から切り出される支持基板の主面に実質的に平行な方向)の測定用サンプルを切り出した。ここで、YSZ−ムライト系焼結体は方向特異性がないため、切り出し方向は任意とした。それらの測定用サンプルについて、上記と同様にして、室温(25℃)から800℃まで昇温下時の平均熱膨張係数α
Sを測定した。
【0097】
YSZ−ムライト系焼結体IVA0は、YSZおよびムライトの全体に対するYSZの含有率(以下、YSZ含有率という)が0質量%、25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数α
S(以下、単に平均熱膨張係数α
Sという)が未測定であり、GaN結晶のa軸方向の平均熱膨張係数α
GaNに対する焼結体の熱膨張係数α
Sの比(以下、α
S/α
GaN比という)が非算出であった。
【0098】
YSZ−ムライト系焼結体IVB1は、YSZ含有率が20質量%、YSZに対するY
2O
3(イットリア)の含有率(以下、Y
2O
3含有率という)が0モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.40×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.753であった。YSZ−ムライト系焼結体IVB2は、YSZ含有率が20質量%、Y
2O
3含有率が3モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.58×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.784であった。YSZ−ムライト系焼結体IVB3は、YSZ含有率が20質量%、Y
2O
3含有率が5モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.68×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.801であった。YSZ−ムライト系焼結体IVB4は、YSZ含有率が20質量%、Y
2O
3含有率が6モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.69×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.803であった。YSZ−ムライト系焼結体IVB5は、YSZ含有率が20質量%、Y
2O
3含有率が10モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.72×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.808であった。YSZ−ムライト系焼結体IVB6は、YSZ含有率が20質量%、Y
2O
3含有率が20モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.81×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.823であった。YSZ−ムライト系焼結体IVB7は、YSZ含有率が20質量%、Y
2O
3含有率が50モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.06×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.866であった。YSZ−ムライト系焼結体IVB8は、YSZ含有率が20質量%、Y
2O
3含有率が100モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。
【0099】
YSZ−ムライト系焼結体IVC1は、YSZ含有率が25質量%、Y
2O
3含有率が0モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.48×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.767であった。YSZ−ムライト系焼結体IVC2は、YSZ含有率が25質量%、Y
2O
3含有率が3モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.62×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.791であった。YSZ−ムライト系焼結体IVC3は、YSZ含有率が25質量%、Y
2O
3含有率が5モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.26×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.901であった。YSZ−ムライト系焼結体IVC4は、YSZ含有率が25質量%、Y
2O
3含有率が6モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.27×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.903であった。YSZ−ムライト系焼結体IVC5は、YSZ含有率が25質量%、Y
2O
3含有率が10モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.31×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.909であった。YSZ−ムライト系焼結体IVC6は、YSZ含有率が25質量%、Y
2O
3含有率が20モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.40×10
−6/℃であり、α
S/α
GaN比が0.925であった。YSZ−ムライト系焼結体IVC7は、YSZ含有率が25質量%、Y
2O
3含有率が50モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.69×10
−6/℃であり、α
S/α
GaN比が0.974であった。YSZ−ムライト系焼結体IVC8は、YSZ含有率が25質量%、Y
2O
3含有率が100モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。
【0100】
YSZ−ムライト系焼結体IVD1は、YSZ含有率が30質量%、Y
2O
3含有率が0モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.56×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.781であった。YSZ−ムライト系焼結体IVD2は、YSZ含有率が30質量%、Y
2O
3含有率が3モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.65×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.796であった。YSZ−ムライト系焼結体IVD3は、YSZ含有率が30質量%、Y
2O
3含有率が5モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.55×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.950であった。YSZ−ムライト系焼結体IVD4は、YSZ含有率が30質量%、Y
2O
3含有率が6モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.56×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.952であった。YSZ−ムライト系焼結体IVD5は、YSZ含有率が30質量%、Y
2O
3含有率が10モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.60×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.959であった。YSZ−ムライト系焼結体IVD6は、YSZ含有率が30質量%、Y
2O
3含有率が20モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.70×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.976であった。YSZ−ムライト系焼結体IVD7は、YSZ含有率が30質量%、Y
2O
3含有率が50モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.00×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.027であった。YSZ−ムライト系焼結体IVD8は、YSZ含有率が30質量%、Y
2O
3含有率が100モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。
【0101】
YSZ−ムライト系焼結体IVE1は、YSZ含有率が35質量%、Y
2O
3含有率が0モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.77×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.816であった。YSZ−ムライト系焼結体IVE2は、YSZ含有率が35質量%、Y
2O
3含有率が3モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.86×10
−6/℃であり、α
S/α
GaN比が0.832であった。YSZ−ムライト系焼結体IVE3は、YSZ含有率が35質量%、Y
2O
3含有率が5モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.80×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.993であった。YSZ−ムライト系焼結体IVE4は、YSZ含有率が35質量%、Y
2O
3含有率が6モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.81×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.995であった。YSZ−ムライト系焼結体IVE5は、YSZ含有率が35質量%、Y
2O
3含有率が10モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.85×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.002であった。YSZ−ムライト系焼結体IVE6は、YSZ含有率が35質量%、Y
2O
3含有率が20モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.96×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.020であった。YSZ−ムライト系焼結体IVE7は、YSZ含有率が35質量%、Y
2O
3含有率が50モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.27×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.074であった。YSZ−ムライト系焼結体IVE8は、YSZ含有率が35質量%、Y
2O
3含有率が100モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。
【0102】
YSZ−ムライト系焼結体IVF1は、YSZ含有率が40質量%、Y
2O
3含有率が0モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.97×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.851であった。YSZ−ムライト系焼結体IVF2は、YSZ含有率が40質量%、Y
2O
3含有率が3モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.07×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.868であった。YSZ−ムライト系焼結体IVF3は、YSZ含有率が40質量%、Y
2O
3含有率が5モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.05×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.036であった。YSZ−ムライト系焼結体IVF4は、YSZ含有率が40質量%、Y
2O
3含有率が6モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.06×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.038であった。YSZ−ムライト系焼結体IVF5は、YSZ含有率が40質量%、Y
2O
3含有率が10モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.10×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.045であった。YSZ−ムライト系焼結体IVF6は、YSZ含有率が40質量%、Y
2O
3含有率が20モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.21×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.064であった。YSZ−ムライト系焼結体IVF7は、YSZ含有率が40質量%、Y
2O
3含有率が50モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.54×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.120であった。YSZ−ムライト系焼結体IVF8は、YSZ含有率が40質量%、Y
2O
3含有率が100モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。
【0103】
YSZ−ムライト系焼結体IVG1は、YSZ含有率が70質量%、Y
2O
3含有率が0モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.99×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.854であった。YSZ−ムライト系焼結体IVG2は、YSZ含有率が70質量%、Y
2O
3含有率が3モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.09×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.872であった。YSZ−ムライト系焼結体IVG3は、YSZ含有率が70質量%、Y
2O
3含有率が5モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.07×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.039であった。YSZ−ムライト系焼結体IVG4は、YSZ含有率が70質量%、Y
2O
3含有率が6モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.08×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.041であった。YSZ−ムライト系焼結体IVG5は、YSZ含有率が70質量%、Y
2O
3含有率が10モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.12×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.048であった。YSZ−ムライト系焼結体IVG6は、YSZ含有率が70質量%、Y
2O
3含有率が20モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.23×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.067であった。YSZ−ムライト系焼結体IVG7は、YSZ含有率が70質量%、Y
2O
3含有率が50モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.56×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.123であった。YSZ−ムライト系焼結体IVG8は、YSZ含有率が70質量%、Y
2O
3含有率が100モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。
【0104】
YSZ−ムライト系焼結体IVH1は、YSZ含有率が100質量%、Y
2O
3含有率が0モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。YSZ−ムライト系焼結体IVH2は、YSZ含有率が100質量%、Y
2O
3含有率が3モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。YSZ−ムライト系焼結体IVH3は、YSZ含有率が100質量%、Y
2O
3含有率が5モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。YSZ−ムライト系焼結体IVH4は、YSZ含有率が100質量%、Y
2O
3含有率が6モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。YSZ−ムライト系焼結体IVH5は、YSZ含有率が100質量%、Y
2O
3含有率が10モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。YSZ−ムライト系焼結体IVH6は、YSZ含有率が100質量%、Y
2O
3含有率が20モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。YSZ−ムライト系焼結体IVH7は、YSZ含有率が100質量%、Y
2O
3含有率が50モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。YSZ−ムライト系焼結体IVH8は、YSZ含有率が100質量%、Y
2O
3含有率が100モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。
【0105】
上記57種類のYSZ−ムライト系焼結体から、直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmの支持基板をそれぞれ切り出して、それぞれの支持基板の両主面を鏡面に研磨して、57種類の支持基板IVA0、IVB1〜IVB8、IVC1〜IVC8、IVD1〜IVD8、IVE1〜IVE8、IVF1〜IVF8、IVG1〜IVG8およびIVH1〜IVH8とした。すなわち、上記57種類の支持基板についてのYSZおよびムライトの全体に対するYSZの含有率(YSZ含有率)、YSZに対するY
2O
3(イットリア)の含有率(Y
2O
3含有率)25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数は、それぞれ上記57種類のYSZ−ムライト系焼結体についてのYSZ含有率、Y
2O
3含有率および25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数にそれぞれ等しい。結果を表4〜10にまとめた。表4〜10において、「−」は、その物性値が未測定または非算出であることを示す。
【0106】
(2)下地基板上に単結晶膜を成膜するサブ工程
図3(B)を参照して、下地基板30として、鏡面に研磨された(111)面の主面30nを有する直径5インチ(127mm)で厚さ0.5mmのSi基板を準備した。
【0107】
上記の下地基板30の主面30n上に、単結晶膜13として厚さ0.4μmのGaN膜をMOCVD法により成膜した。成膜条件は、原料ガスとしてTMGガスおよびNH
3ガスを使用し、キャリアガスとしてH
2ガスを使用し、成膜温度1000℃、成膜圧力は1気圧とした。なお、こうして得られた単結晶膜13の主面13mは、(0001)面からのオフ角が±1°以内の面方位を有していた。
【0108】
(3)支持基板と単結晶膜とを貼り合わせるサブ工程
図3(C)中の(C1)を参照して、
図3(A)の支持基板11である57種類の支持基板IVA0、IVB1〜IVB8、IVC1〜IVC8、IVD1〜IVD8、IVE1〜IVE8、IVF1〜IVF8、IVG1〜IVG8、IVH1〜IVH8のそれぞれの主面11m上に厚さ300nmのSiO
2膜をCVD(化学気相堆積)法により成膜した。次いで、上記57種類の支持基板のそれぞれの主面11m上の厚さ300nmのSiO
2膜を、CeO
2スラリーを用いて研磨することにより、厚さ270nmのSiO
2層を残存させて、接着層12aとした。これにより、上記57種類の支持基板のそれぞれの主面11mの空隙が埋められ、接着層12aである平坦な主面12amを有する厚さ270nmのSiO
2層が得られた。
【0109】
また、
図3(C)中の(C2)を参照して、
図3(B)の下地基板30であるSi基板上に成膜された単結晶膜13であるGaN膜の主面13n上に厚さ300nmのSiO
2膜をCVD法により成膜した。次いで、この厚さ300nmのSiO
2膜を、CeO
2スラリーを用いて研磨することにより、厚さ270nmのSiO
2層だけ残存させて、接着層12bとした。
【0110】
次いで、
図3(C)中の(C3)を参照して、支持基板11である上記57種類の支持基板のそれぞれに形成された接着層12aの主面12amおよび下地基板30であるSi基板上に成膜された単結晶膜13上に形成された接着層12bの主面12bnをアルゴンプラズマにより清浄化および活性化させた後、接着層12aの主面12amと接着層12bの主面12bnとを貼り合わせて、窒素雰囲気下300℃で2時間熱処理した。
【0111】
(4)下地基板を除去するサブ工程
図3(D)を参照して、支持基板11である上記57種類の支持基板のそれぞれの裏側(単結晶膜13が貼り合わされていない側)の主面および側面をワックス40で覆って保護した後、10質量%のフッ化水素酸および5質量%の硝酸を含む混酸水溶液を用いて、エッチングにより下地基板30であるSi基板を除去した。こうして、支持基板11である上記57種類の支持基板のそれぞれの主面11m側に単結晶膜13であるGaN膜が配置された複合基板10である57種類の複合基板IVA0、IVB1〜IVB8、IVC1〜IVC8、IVD1〜IVD8、IVE1〜IVE8、IVF1〜IVF8、IVG1〜IVG8、IVH1〜IVH8が得られた。
【0112】
3.GaN系膜の成膜工程
図2(B)を参照して、複合基板10である上記57種類の複合基板の単結晶膜13であるGaN膜の主面13m(かかる主面は(0001)面である。)上および直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmのサファイア基板の主面(かかる主面は(0001)面である。)上に、それぞれMOCVD法によりGaN系膜20としてGaN膜を成膜した。かかるGaN系膜20の成膜においては、原料ガスとしてTMG(トリメチルガリウム)ガスおよびNH
3ガスを使用し、キャリアガスとしてH
2ガスを使用して、まず、500℃で、GaN系バッファ層21として厚さ50nmのGaNバッファ層を成長させ、次いで、1050℃で、GaN系単結晶層23として厚さ50nmのGaN単結晶層を成長させた。ここで、GaN単結晶層の成長速度は1μm/hrであった。その後、上記57種類の複合基板のそれぞれにGaN膜が成膜された57種類のウエハIVA0、IVB1〜IVB8、IVC1〜IVC8、IVD1〜IVD8、IVE1〜IVE8、IVF1〜IVF8、IVG1〜IVG8およびIVH1〜IVH8を10℃/minの速度で室温(25℃)まで冷却した。
【0113】
室温まで冷却後に成膜装置から取り出された上記57種類のウエハについて、ウエハの反り、GaN膜のクラック本数密度および転位密度を測定した。ここで、ウエハの反りの形状および反り量は、GaN膜の主面をCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞により測定した。GaN膜のクラック本数密度は、ノマルスキー顕微鏡を用いて単位長さ当りのクラック本数を測定し、1本/mm未満を「極少」、1本/mm以上5本/mm未満を「少」、5本/mm以上10本/mm未満を「多」、10本/mm以上を「極多」と評価した。GaN膜の転位密度はCL(カソードルミネッセンス)による暗点の単位面積当たりの個数を測定した。なお、本実施例においてGaN膜に発生したクラックは、膜を貫通しない微小なものであった。
【0114】
ウエハIVA0は、GaN膜のクラック本数密度が極多であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表4にまとめた。
【0115】
ウエハIVB1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が670μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハIVB2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が660μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハIVB3は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が655μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVB4は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が650μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVB5は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が645μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVB6は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が610μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVB7は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が480μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVB8は、GaN膜のクラック本数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表4にまとめた。
【0116】
ウエハIVC1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が665μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハIVC2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が657μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハIVC3は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が390μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVC4は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が385μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVC5は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が380μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVC6は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が350μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVC7は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が180μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハIVC8は、GaN膜のクラック数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表5にまとめた。
【0117】
ウエハIVD1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が660μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハIVD2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が650μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハIVD3は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が250μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVD4は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が240μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVD5は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が230μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハIVD6は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が180μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハIVD7は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVD8は、GaN膜のクラック数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表6にまとめた。
【0118】
ウエハIVE1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が630μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハIVE2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が520μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハIVE3は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が150μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVE4は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が120μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハIVE5は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が1μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハIVE6は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が7μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVE7は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が12μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVE8は、GaN膜のクラック数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表7にまとめた。
【0119】
ウエハIVF1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が500μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハIVF2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が480μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハIVF3は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVF4は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVF5は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が11μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVF6は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が12μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVF7は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が110μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVF8は、GaN膜のクラック数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表8にまとめた。
【0120】
ウエハIVG1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が510μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハIVG2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が490μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハIVG3は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVG4は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が11μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVG5は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が11μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVG6は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が12μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVG7は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が110μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハIVG8は、GaN膜のクラック数密度が極多であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表9にまとめた。
【0121】
ウエハIVH1〜IVH8は、いずれも、GaN膜のクラック数密度が極多であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表10にまとめた。
【0122】
4.支持基板の除去工程
図2(C)を参照して、上記で得られた57種類のウエハを、10質量%のフッ化水素酸水溶液に浸漬することにより、支持基板11である上記57種類の支持基板および接着層12であるSiO
2層を溶解させることにより除去して、単結晶膜13であるGaN膜の主面13m上に成膜されたGaN系膜20である57種類のGaN膜IVA0、IVB1〜IVB8、IVC1〜IVC8、IVD1〜IVD8、IVE1〜IVE8、IVF1〜IVF8、IVG1〜IVG8およびIVH1〜IVH8が得られた。なお、上記57種類のウエハから上記57種類の支持基板およびSiO
2層がそれぞれ除去されることにより形成されたGaN系膜20である上記57種類のGaN膜においても反りがCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞による測定により認められ、上記57種類のGaN膜の反りの大小関係には、それぞれ対応する上記57種類のウエハにおける反りの大小関係が維持されていた。
【0123】
【表4】
【0124】
【表5】
【0125】
【表6】
【0126】
【表7】
【0127】
【表8】
【0128】
【表9】
【0129】
【表10】
【0130】
表4〜10を参照して、主面内の熱膨張係数α
SがGaN結晶の熱膨張係数α
GaNの0.8倍より大きく1.2倍より小さい(すなわち、0.8<(α
S/α
GaN比)<1.2)支持基板を有する複合基板を用いることにより(ウエハIVB3〜IVB7、IVC3〜IVC7、IVD3〜IVD7、IVE1〜IVE7、IVF1〜IVF7およびIVG1〜IVG7)、反りが小さく転位密度が低く結晶性の良好なGaN膜を成膜することができた。また、GaN膜の反りおよび転位密度をさらに低減する観点から、複合基板の支持基板の主面内の熱膨張係数α
Sは、GaN結晶の熱膨張係数α
GaNの0.9倍より大きく1.15倍より小さいこと(すなわち、0.9<(α
S/α
GaN比)<1.15)(ウエハIVC3〜IVC7、IVD3〜IVD7、IVE3〜IVE7、IVF3〜IVF7およびIVG3〜IVG7)が好ましく、GaN結晶の熱膨張係数α
GaNの0.95倍より大きく1.1倍より小さいこと(すなわち、0.95<(α
S/α
GaN比)<1.1)(ウエハIVC7、IVD3〜IVD7、IVE3〜IVE7、IVF3〜IVF6およびIVG3〜IVG6)がより好ましい。
【0131】
また、表4〜10から、上記57種類の複合基板10の上記57種類の支持基板11のYSZ含有率およびY
2O
3含有率と上記57種類の複合基板10のGaN系単結晶層23上に成長させるGaN系膜20のクラック本数密度との関係を表11にまとめた。
【0132】
【表11】
【0133】
表11を参照して、複合基板の支持基板に含まれるムライト(Al
2O
3−SiO
2複合酸化物)およびYSZ(イットリア安定化ジルコニア)の全体に対するYSZの含有率が20質量%以上40質量%以下のとき、より好ましくは25質量%以上35質量%以下のとき、複合基板の単結晶膜上に成膜したGaN系膜のクラック本数密度が著しく減少した。さらに、YSZに対するY
2O
3(イットリア)の含有率が5モル%以上のとき、より好ましくは6モル%以上50モル%以下のとき、複合基板の単結晶膜上に成膜したGaN系膜のクラック本数密度が極めて著しく減少した。
【0134】
(実施例V)
1.GaN結晶の熱膨張係数の測定
GaN結晶のa軸方向の25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数α
GaNは、実施例Iと同様にして測定したところ、5.84×10
−6/℃であった。
【0135】
2.複合基板の準備工程
(1)支持基板を準備するサブ工程
図3(A)を参照して、支持基板11の材料として、1気圧、1700℃で10時間焼結する常圧焼結および2000気圧、1700℃で1時間焼結するHIP(熱間等方位圧プレス)により製造された57種類のCaSZ(カルシア安定化ジルコニア)−ムライト系焼結体VA0、VB1〜VB8、VC1〜VC8、VD1〜VD8、VE1〜VE8、VF1〜VF8、VG1〜VG8およびVH1〜VH8のそれぞれのX線回折によりCaO、ZrO
2およびムライト(3Al
2O
3・2SiO
2〜2Al
2O
3・SiO
2、具体的にはAl
6O
13Si
2)の存在の有無および比率を確認した。また、上記57種類のCaSZ−ムライト系焼結体のそれぞれから、サイズが2×2×20mm(長手方向は焼結体から切り出される支持基板の主面に実質的に平行な方向)の測定用サンプルを切り出した。ここで、CaSZ−ムライト系焼結体は方向特異性がないため、切り出し方向は任意とした。それらの測定用サンプルについて、上記と同様にして、室温(25℃)から800℃まで昇温下時の平均熱膨張係数α
Sを測定した。
【0136】
CaSZ−ムライト系焼結体VA0は、CaSZおよびムライトの全体に対するCaSZの含有率(以下、CaSZ含有率という)が0質量%、25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数α
S(以下、単に平均熱膨張係数α
Sという)が未測定であり、GaN結晶のa軸方向の平均熱膨張係数α
GaNに対する焼結体の熱膨張係数α
Sの比(以下、α
S/α
GaN比という)が非算出であった。
【0137】
CaSZ−ムライト系焼結体VB1は、CaSZ含有率が20質量%、CaSZに対するCaO(カルシア)の含有率(以下、CaO含有率という)が0モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.40×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.753であった。CaSZ−ムライト系焼結体VB2は、CaSZ含有率が20質量%、CaO含有率が3モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.58×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.784であった。CaSZ−ムライト系焼結体VB3は、CaSZ含有率が20質量%、CaO含有率が5モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.68×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.801であった。CaSZ−ムライト系焼結体VB4は、CaSZ含有率が20質量%、CaO含有率が6モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.69×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.803であった。CaSZ−ムライト系焼結体VB5は、CaSZ含有率が20質量%、CaO含有率が10モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.72×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.808であった。CaSZ−ムライト系焼結体VB6は、CaSZ含有率が20質量%、CaO含有率が20モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.81×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.823であった。CaSZ−ムライト系焼結体VB7は、CaSZ含有率が20質量%、CaO含有率が50モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.06×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.866であった。CaSZ−ムライト系焼結体VB8は、CaSZ含有率が20質量%、CaO含有率が100モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。
【0138】
CaSZ−ムライト系焼結体VC1は、CaSZ含有率が25質量%、CaO含有率が0モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.48×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.767であった。CaSZ−ムライト系焼結体VC2は、CaSZ含有率が25質量%、CaO含有率が3モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.62×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.791であった。CaSZ−ムライト系焼結体VC3は、CaSZ含有率が25質量%、CaO含有率が5モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.26×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.901であった。CaSZ−ムライト系焼結体VC4は、CaSZ含有率が25質量%、CaO含有率が6モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.27×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.903であった。CaSZ−ムライト系焼結体VC5は、CaSZ含有率が25質量%、CaO含有率が10モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.31×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.909であった。CaSZ−ムライト系焼結体C6は、CaSZ含有率が25質量%、CaO含有率が20モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.40×10
−6/℃であり、α
S/α
GaN比が0.925であった。CaSZ−ムライト系焼結体VC7は、CaSZ含有率が25質量%、CaO含有率が50モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.69×10
−6/℃であり、α
S/α
GaN比が0.974であった。CaSZ−ムライト系焼結体VC8は、CaSZ含有率が25質量%、CaO含有率が100モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。
【0139】
CaSZ−ムライト系焼結体VD1は、CaSZ含有率が30質量%、CaO含有率が0モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.56×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.781であった。CaSZ−ムライト系焼結体VD2は、CaSZ含有率が30質量%、CaO含有率が3モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.65×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.796であった。CaSZ−ムライト系焼結体VD3は、CaSZ含有率が30質量%、CaO含有率が5モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.55×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.950であった。CaSZ−ムライト系焼結体VD4は、CaSZ含有率が30質量%、CaO含有率が6モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.56×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.952であった。CaSZ−ムライト系焼結体VD5は、CaSZ含有率が30質量%、CaO含有率が10モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.60×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.959であった。CaSZ−ムライト系焼結体VD6は、CaSZ含有率が30質量%、CaO含有率が20モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.70×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.976であった。CaSZ−ムライト系焼結体VD7は、CaSZ含有率が30質量%、CaO含有率が50モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.00×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.027であった。CaSZ−ムライト系焼結体VD8は、CaSZ含有率が30質量%、CaO含有率が100モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。
【0140】
CaSZ−ムライト系焼結体VE1は、CaSZ含有率が35質量%、CaO含有率が0モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.77×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.816であった。CaSZ−ムライト系焼結体VE2は、CaSZ含有率が35質量%、CaO含有率が3モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.86×10
−6/℃であり、α
S/α
GaN比が0.832であった。CaSZ−ムライト系焼結体VE3は、CaSZ含有率が35質量%、CaO含有率が5モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.80×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.993であった。CaSZ−ムライト系焼結体VE4は、CaSZ含有率が35質量%、CaO含有率が6モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.81×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.995であった。CaSZ−ムライト系焼結体VE5は、CaSZ含有率が35質量%、CaO含有率が10モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.85×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.002であった。CaSZ−ムライト系焼結体VE6は、CaSZ含有率が35質量%、CaO含有率が20モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.96×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.020であった。CaSZ−ムライト系焼結体VE7は、CaSZ含有率が35質量%、CaO含有率が50モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.27×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.074であった。CaSZ−ムライト系焼結体VE8は、CaSZ含有率が35質量%、CaO含有率が100モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。
【0141】
CaSZ−ムライト系焼結体VF1は、CaSZ含有率が40質量%、CaO含有率が0モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.97×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.851であった。CaSZ−ムライト系焼結体VF2は、CaSZ含有率が40質量%、CaO含有率が3モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.07×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.868であった。CaSZ−ムライト系焼結体VF3は、CaSZ含有率が40質量%、CaO含有率が5モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.05×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.036であった。CaSZ−ムライト系焼結体VF4は、CaSZ含有率が40質量%、CaO含有率が6モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.06×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.038であった。CaSZ−ムライト系焼結体VF5は、CaSZ含有率が40質量%、CaO含有率が10モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.10×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.045であった。CaSZ−ムライト系焼結体VF6は、CaSZ含有率が40質量%、CaO含有率が20モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.21×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.064であった。CaSZ−ムライト系焼結体VF7は、CaSZ含有率が40質量%、CaO含有率が50モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.54×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.120であった。CaSZ−ムライト系焼結体VF8は、CaSZ含有率が40質量%、CaO含有率が100モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。
【0142】
CaSZ−ムライト系焼結体VG1は、CaSZ含有率が70質量%、CaO含有率が0モル%、平均熱膨張係数α
Sが4.99×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.854であった。CaSZ−ムライト系焼結体VG2は、CaSZ含有率が70質量%、CaO含有率が3モル%、平均熱膨張係数α
Sが5.09×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が0.872であった。CaSZ−ムライト系焼結体VG3は、CaSZ含有率が70質量%、CaO含有率が5モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.07×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.039であった。CaSZ−ムライト系焼結体VG4は、CaSZ含有率が70質量%、CaO含有率が6モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.08×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.041であった。CaSZ−ムライト系焼結体VG5は、CaSZ含有率が70質量%、CaO含有率が10モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.12×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.048であった。CaSZ−ムライト系焼結体VG6は、CaSZ含有率が70質量%、CaO含有率が20モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.23×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.067であった。CaSZ−ムライト系焼結体VG7は、CaSZ含有率が70質量%、CaO含有率が50モル%、平均熱膨張係数α
Sが6.56×10
−6/℃、α
S/α
GaN比が1.123であった。CaSZ−ムライト系焼結体VG8は、CaSZ含有率が70質量%、CaO含有率が100モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。
【0143】
CaSZ−ムライト系焼結体VH1は、CaSZ含有率が100質量%、CaO含有率が0モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。CaSZ−ムライト系焼結体VH2は、CaSZ含有率が100質量%、CaO含有率が3モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。CaSZ−ムライト系焼結体VH3は、CaSZ含有率が100質量%、CaO含有率が5モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。CaSZ−ムライト系焼結体VH4は、CaSZ含有率が100質量%、CaO含有率が6モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。CaSZ−ムライト系焼結体VH5は、CaSZ含有率が100質量%、CaO含有率が10モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。CaSZ−ムライト系焼結体VH6は、CaSZ含有率が100質量%、CaO含有率が20モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。CaSZ−ムライト系焼結体VH7は、CaSZ含有率が100質量%、CaO含有率が50モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。CaSZ−ムライト系焼結体VH8は、CaSZ含有率が100質量%、CaO含有率が100モル%、平均熱膨張係数α
Sが未測定であり、α
S/α
GaN比が非算出であった。
【0144】
上記57種類のCaSZ−ムライト系焼結体から、直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmの支持基板をそれぞれ切り出して、それぞれの支持基板の両主面を鏡面に研磨して、57種類の支持基板VA0、VB1〜VB8、VC1〜VC8、VD1〜VD8、VE1〜VE8、VF1〜VF8、VG1〜VG8およびVH1〜VH8とした。すなわち、上記57種類の支持基板についてのCaSZおよびムライトの全体に対するCaSZの含有率(CaSZ含有率)、CaSZに対するCaO(カルシア)の含有率(CaO含有率)25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数は、それぞれ上記57種類のCaSZ−ムライト系焼結体についてのCaSZ含有率、CaO含有率および25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数にそれぞれ等しい。結果を表12〜18にまとめた。表12〜18において、「−」は、その物性値が未測定または非算出であることを示す。
【0145】
(2)下地基板上に単結晶膜を成膜するサブ工程
図3(B)を参照して、下地基板30として、実施例IVと同様に、鏡面に研磨された(111)面の主面30nを有する直径5インチ(127mm)で厚さ0.5mmのSi基板を準備した。かかる下地基板30の主面30n上に、実施例IVと同様にして、単結晶膜13として厚さ0.4μmのGaN膜を成膜した。得られた単結晶膜13の主面13mは、(0001)面からのオフ角が±1°以内の面方位を有していた。
【0146】
(3)支持基板と単結晶膜とを貼り合わせるサブ工程
図3(C)を参照して、実施例IVと同様にして、支持基板11と単結晶膜13とを接着層12を介在させて貼り合わせた。
【0147】
(4)下地基板を除去するサブ工程
図3(D)を参照して、実施例IVと同様にして、支持基板11である上記57種類の支持基板のそれぞれの裏側(単結晶膜13が貼り合わされていない側)の主面および側面をワックス40で覆って保護した後、10質量%のフッ化水素酸および5質量%の硝酸を含む混酸水溶液を用いて、エッチングにより下地基板30であるSi基板を除去した。こうして、支持基板11である上記57種類の支持基板のそれぞれの主面11m側に単結晶膜13であるGaN膜が配置された複合基板10である57種類の複合基板VA0、VB1〜VB8、VC1〜VC8、VD1〜VD8、VE1〜VE8、VF1〜VF8、VG1〜VG8、VH1〜VH8が得られた。
【0148】
3.GaN系膜の成膜工程
図2(B)を参照して、実施例IVと同様にして、複合基板10である上記57種類の複合基板の単結晶膜13であるGaN膜の主面13m(かかる主面は(0001)面である。)上および直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmのサファイア基板の主面(かかる主面は(0001)面である。)上に、それぞれGaN系膜20としてGaN膜を成膜した。こうして、上記57種類の複合基板のそれぞれにGaN膜が成膜された57種類のウエハVA0、VB1〜VB8、VC1〜VC8、VD1〜VD8、VE1〜VE8、VF1〜VF8、VG1〜VG8およびVH1〜VH8を得た。
【0149】
得られた上記57種類のウエハについて、実施例IVと同様にして、ウエハの反り、GaN膜のクラック本数密度および転位密度を測定した。なお、本実施例においてGaN膜に発生したクラックは、膜を貫通しない微小なものであった。
【0150】
ウエハVA0は、GaN膜のクラック本数密度が極多であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表12にまとめた。
【0151】
ウエハVB1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が670μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハVB2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が660μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハVB3は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が655μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVB4は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が650μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVB5は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が645μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVB6は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が610μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVB7は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が480μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVB8は、GaN膜のクラック本数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表12にまとめた。
【0152】
ウエハVC1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が665μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハVC2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が657μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハVC3は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が390μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVC4は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が385μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVC5は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が380μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVC6は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が350μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVC7は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が180μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハVC8は、GaN膜のクラック数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表13にまとめた。
【0153】
ウエハVD1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が660μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハVD2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が650μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハVD3は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が250μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVD4は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が240μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVD5は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が230μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハVD6は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が180μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハVD7は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVD8は、GaN膜のクラック数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表14にまとめた。
【0154】
ウエハVE1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が630μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハVE2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が520μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハVE3は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が150μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVE4は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が120μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハVE5は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が1μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×10
8cm
−2であった。ウエハVE6は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が7μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVE7は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が12μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVE8は、GaN膜のクラック数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表15にまとめた。
【0155】
ウエハVF1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が500μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハVF2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が480μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハVF3は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVF4は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVF5は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が11μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVF6は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が12μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVF7は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が110μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVF8は、GaN膜のクラック数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表16にまとめた。
【0156】
ウエハVG1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が510μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハVG2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が490μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が5×10
8cm
−2であった。ウエハVG3は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVG4は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が11μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVG5は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が11μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVG6は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が12μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVG7は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が110μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×10
8cm
−2であった。ウエハVG8は、GaN膜のクラック数密度が極多であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表17にまとめた。
【0157】
ウエハVH1〜VH8は、いずれも、GaN膜のクラック数密度が極多であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表18にまとめた。表18において、「−」はその物性値が実測定であることを示す。
【0158】
4.支持基板の除去
図2(C)を参照して、上記で得られた57種類のウエハを、実施例IVと同様にして、支持基板11である上記57種類の支持基板および接着層12であるSiO
2層を溶解させることにより除去して、単結晶膜13であるGaN膜の主面13m上に成膜されたGaN系膜20である57種類のGaN膜VA0、VB1〜VB8、VC1〜VC8、VD1〜VD8、VE1〜VE8、VF1〜VF8、VG1〜VG8およびVH1〜VH8が得られた。なお、上記57種類のウエハから上記57種類の支持基板およびSiO
2層がそれぞれ除去されることにより形成されたGaN系膜20である上記57種類のGaN膜においても反りがCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞による測定により認められ、上記57種類のGaN膜の反りの大小関係には、それぞれ対応する上記57種類のウエハにおける反りの大小関係が維持されていた。
【0159】
【表12】
【0160】
【表13】
【0161】
【表14】
【0162】
【表15】
【0163】
【表16】
【0164】
【表17】
【0165】
【表18】
【0166】
表12〜18を参照して、主面内の熱膨張係数α
SがGaN結晶の熱膨張係数α
GaNの0.8倍より大きく1.2倍より小さい(すなわち、0.8<(α
S/α
GaN比)<1.2)支持基板を有する複合基板を用いることにより(ウエハVB3〜VB7、VC3〜VC7、VD3〜VD7、VE1〜VE7、VF1〜VF7およびVG1〜VG7)、反りが小さく転位密度が低く結晶性の良好なGaN膜を成膜することができた。また、GaN膜の反りおよび転位密度をさらに低減する観点から、複合基板の支持基板の主面内の熱膨張係数α
Sは、GaN結晶の熱膨張係数α
GaNの0.9倍より大きく1.15倍より小さいこと(すなわち、0.9<(α
S/α
GaN比)<1.15)(ウエハVC3〜VC7、VD3〜VD7、VE3〜VE7、VF3〜VF7およびVG3〜VG7)が好ましく、GaN結晶の熱膨張係数α
GaNの0.95倍より大きく1.1倍より小さいこと(すなわち、0.95<(α
S/α
GaN比)<1.1)(ウエハVC7、VD3〜VD7、VE3〜VE7、VF3〜VF6およびVG3〜VG6)がより好ましい。
【0167】
また、表12〜18から、上記57種類の複合基板10の上記57種類の支持基板11のCaSZ含有率およびCaO含有率と上記57種類の複合基板10のGaN系単結晶層23上に成長させるGaN系膜20のクラック本数密度との関係を表19にまとめた。
【0168】
【表19】
【0169】
表19を参照して、複合基板の支持基板に含まれるムライト(Al
2O
3−SiO
2複合酸化物)およびCaSZ(カルシア安定化ジルコニア)の全体に対するCaSZの含有率が20質量%以上40質量%以下のとき、より好ましくは25質量%以上35質量%以下のとき、複合基板の単結晶膜上に成膜したGaN系膜のクラック本数密度が著しく減少した。さらに、CaSZに対するCaO(カルシア)の含有率が5モル%以上のとき、より好ましくは6モル%以上50モル%以下のとき、複合基板の単結晶膜上に成膜したGaN系膜のクラック本数密度が極めて著しく減少した。
【0170】
なお、上記実施例においては、複合基板上に非ドーピングのGaN膜を成膜した例を示したが、ドーピングによりn型またはp型の導電性が付与されたGaN膜を成膜した場合、ドーピングにより比抵抗が高められたGaN膜を成膜した場合にも、上記実施例とほぼ同一の結果が得られた。
【0171】
また、GaN膜に替えてGa
xIn
yAl
1−x−yN膜(0<x<1、y≧0、x+y≦1)などのGaN系膜を成膜した場合にも上記実施例と同様の結果が得られた。特に、GaN膜に替えてGa
xIn
yAl
1−x−yN膜(0.5<x<1、y≧0、x+y≦1)を成膜する場合には、上記実施例とほぼ同一の結果が得られた。
【0172】
また、GaN系膜(具体的にはGa
xIn
yAl
1−x−yN膜(x>0、y≧0、x+y≦1)など)は、Ga、In、AlなどのIII族元素の組成比を変えて複数成膜することもできる。すなわち、GaN膜に替えてGa
xIn
yAl
1−x−yN膜(x>0、y≧0、x+y≦1)などのGaN系膜を、Ga、In、AlなどのIII族元素の組成比を変えて、複数成膜することができる。
【0173】
本発明の実施においては、GaN系膜の成膜の際にELO(Epitaxial Lateral Overgrowth;ラテラル成長)技術などの公知の転位低減技術を適用できる。
【0174】
また、複合基板にGaN系膜を成膜した後に、複合基板の支持基板などを除去する際には、GaN系膜を別の支持基板に転写してもよい。
【0175】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。