特許第6019945号(P6019945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019945
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】制御装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 17/00 20060101AFI20161020BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20161020BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20161020BHJP
   B41J 19/18 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   G05B17/00
   G05B23/02 302P
   G05B11/36 C
   B41J19/18 F
【請求項の数】18
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-191973(P2012-191973)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-48929(P2014-48929A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】家▲崎▼ 健一
(72)【発明者】
【氏名】枦山 智昭
【審査官】 川東 孝至
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−283561(JP,A)
【文献】 特開平05−184178(JP,A)
【文献】 特開2010−239802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 17/00
B41J 19/18
G05B 11/36
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと前記モータにより駆動される被駆動物とを備える駆動系を制御対象として、前記被駆動物の運動を制御する制御装置であって、
前記制御対象に入力する操作量を演算する演算手段と、
前記制御対象の制御量を計測する計測手段と、
前記計測手段による前記制御量の計測信号を、前記制御対象の入出力特性を表すモデルの逆モデルに入力する逆モデル入力手段と、
前記逆モデルの出力と前記制御対象に入力される前記操作量との差分信号を生成する差分信号生成手段と、
前記差分信号生成手段により生成された前記差分信号を濾波するフィルタであって、前記差分信号から、前記制御対象の機械的特性により生じる振動成分を減衰可能な周波数特性を有するフィルタと、
前記フィルタの出力に基づき、前記制御対象において前記被駆動物が異物と接触する異常が発生したか否かを判定する判定手段と、
前記フィルタの周波数特性を更新する更新手段と、
を備え
前記フィルタは、設定されたカットオフ周波数以上の振動成分を減衰させるローパスフィルタであり、
前記更新手段は、前記異物が存在しないときに得られた前記ローパスフィルタの出力に基づき、当該出力が高い程、前記カットオフ周波数が低くなるように、前記カットオフ周波数を更新することによって、前記フィルタの周波数特性を更新すること
を特徴とする制御装置。
【請求項2】
モータと前記モータにより駆動される被駆動物とを備える駆動系を制御対象として、前記被駆動物の運動を制御する制御装置であって、
前記制御対象に入力する操作量を演算する演算手段と、
前記制御対象の制御量を計測する計測手段と、
前記計測手段による前記制御量の計測信号を、前記制御対象の入出力特性を表すモデルの逆モデルに入力する逆モデル入力手段と、
前記逆モデルの出力と前記制御対象に入力される前記操作量との差分信号を生成する差分信号生成手段と、
前記差分信号生成手段により生成された前記差分信号を濾波するフィルタであって、前記差分信号から、前記制御対象の機械的特性により生じる振動成分を減衰可能な周波数特性を有するフィルタと、
前記フィルタの出力に基づき、前記制御対象に異常が発生したか否かを判定する判定手段と、
前記フィルタの周波数特性を更新する更新手段と、
を備え
前記フィルタは、設定されたカットオフ周波数以上の振動成分を減衰させるローパスフィルタであり、
前記更新手段は、前記判定手段において誤判定が生じたことを示す情報が入力されたことを条件に、前記カットオフ周波数を低くする方向に更新することによって、前記フィルタの周波数特性を更新すること
を特徴とする制御装置。
【請求項3】
モータと前記モータにより駆動される被駆動物とを備える駆動系を制御対象として、前記被駆動物の運動を制御する制御装置であって、
前記制御対象に入力する操作量を演算する演算手段と、
前記制御対象の制御量を計測する計測手段と、
前記計測手段による前記制御量の計測信号を、前記制御対象の入出力特性を表すモデルの逆モデルに入力する逆モデル入力手段と、
前記逆モデルの出力と前記制御対象に入力される前記操作量との差分信号を生成する差分信号生成手段と、
前記差分信号生成手段により生成された前記差分信号を濾波するフィルタであって、前記差分信号から、前記制御対象の機械的特性により生じる振動成分を減衰可能な周波数特性を有するフィルタと、
前記フィルタの出力に基づき、前記制御対象に異常が発生したか否かを判定する判定手段と、
前記フィルタの周波数特性を更新する更新手段と、
を備え
前記フィルタは、設定された減衰傾度で振動成分を減衰させるローパスフィルタであり、
前記更新手段は、前記ローパスフィルタの減衰傾度を更新することによって、前記フィルタの周波数特性を更新すること
を特徴とする制御装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記異常として、前記被駆動物が異物と接触する異常が発生したか否かを判定し、
前記更新手段は、前記異物が存在しないときに得られた前記ローパスフィルタの出力に基づき、当該出力が高い程、前記減衰傾度が高くなるように、前記減衰傾度を更新すること
を特徴とする請求項記載の制御装置。
【請求項5】
前記更新手段は、前記判定手段において誤判定が生じたことを示す情報が入力されたことを条件に、前記減衰傾度を高くする方向に更新すること
を特徴とする請求項記載の制御装置。
【請求項6】
モータと前記モータにより駆動される被駆動物とを備える駆動系を制御対象として、前記被駆動物の運動を制御する制御装置であって、
前記制御対象に入力する操作量を演算する演算手段と、
前記制御対象の制御量を計測する計測手段と、
前記計測手段による前記制御量の計測信号を、前記制御対象の入出力特性を表すモデルの逆モデルに入力する逆モデル入力手段と、
前記逆モデルの出力と前記制御対象に入力される前記操作量との差分信号を生成する差分信号生成手段と、
前記差分信号生成手段により生成された前記差分信号を濾波するフィルタであって、前記差分信号から、前記制御対象の入出力特性のモデル化誤差により生じる振動成分、及び、前記振動成分より高い周波数のノイズ成分を除去可能な周波数特性を有するフィルタと、
前記フィルタの出力に基づき、前記制御対象に異常が発生したか否かを判定する判定手段と、
を備えること
を特徴とする制御装置。
【請求項7】
前記フィルタの周波数特性を更新する更新手段
を備えることを特徴とする請求項記載の制御装置。
【請求項8】
前記判定手段は、前記フィルタの出力と予め定められた閾値とを比較し、当該出力が前記閾値より大きい場合に、前記制御対象に異常が発生したと判定すること
を特徴とする請求項1〜請求項のいずれか一項記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記フィルタとしての第一のローパスフィルタに加えて、
前記差分信号生成手段により生成された前記差分信号の高周波成分を減衰させる第二のローパスフィルタと、
前記第二のローパスフィルタの出力に基づき、前記演算手段により演算された前記操作量を補正し、当該補正後の操作量を、前記制御対象へ入力する補正入力手段と、
を更に備え、
前記第一のローパスフィルタカットオフ周波数は、前記第二のローパスフィルタのカットオフ周波数よりも低いこと
を特徴とする請求項1〜請求項のいずれか一項記載の制御装置。
【請求項10】
モータと前記モータにより駆動される被駆動物とを備える駆動系を制御対象として、前記被駆動物の運動を制御する制御装置であって、
前記制御対象に入力する操作量を演算する演算手段と、
前記制御対象の制御量を計測する計測手段と、
前記計測手段による前記制御量の計測信号を、前記制御対象の入出力特性を表すモデルの逆モデルに入力する逆モデル入力手段と、
前記逆モデルの出力と前記制御対象に入力される前記操作量との差分信号を生成する差分信号生成手段と、
前記差分信号生成手段により生成された前記差分信号の高周波成分を減衰させる第一及び第二のローパスフィルタと、
前記第一のローパスフィルタの出力に基づき、前記制御対象に異常が発生したか否かを判定する判定手段と、
前記第二のローパスフィルタの出力に基づき、前記演算手段により演算された前記操作量を補正し、当該補正後の操作量を、前記制御対象へ入力する補正入力手段と、
を備え、
前記第一のローパスフィルタのカットオフ周波数は、前記第二のローパスフィルタのカットオフ周波数よりも低いこと
を特徴とする制御装置。
【請求項11】
前記第一のローパスフィルタの周波数特性を更新する更新手段
を備えることを特徴とする請求項10記載の制御装置。
【請求項12】
前記判定手段は、前記異常として、前記被駆動物が異物と接触する異常が発生したか否かを判定するものであり、
前記更新手段は、前記異物が存在しないときに得られた前記第一のローパスフィルタの出力に基づき、当該出力が高い程、カットオフ周波数を下げる方向に又は減衰傾度を高める方向に、前記周波数特性を更新すること
を特徴する請求項11記載の制御装置。
【請求項13】
前記判定手段は、前記第一のローパスフィルタの出力と予め定められた閾値とを比較し、当該出力が前記閾値より大きい場合に、前記被駆動物が前記異物と接触したと判定すること
を特徴とする請求項10〜請求項12のいずれか一項記載の制御装置。
【請求項14】
前記逆モデルは、前記制御対象の入出力特性を剛体モデルより表したときの逆モデルであること
を特徴とする請求項1〜請求項13のいずれか一項記載の制御装置。
【請求項15】
前記判定手段により前記異常が発生したと判定されると、前記被駆動物を停止させる異常対応手段
を更に備えること
を特徴とする請求項1〜請求項14のいずれか一項記載の制御装置。
【請求項16】
前記制御対象は、前記モータと、前記モータにより駆動されて変位し、対向するシートに画像を形成する前記被駆動物としての記録ユニットと、を備える画像形成機構であり、
前記判定手段は、前記記録ユニットが前記異物としての前記シートに接触する異常が発生したか否かを判定する手段であること
を特徴とする請求項1〜請求項15のいずれか一項記載の制御装置。
【請求項17】
搬送されるシートに画像を形成する画像形成システムであって、
前記シートに画像を形成する記録ユニットと前記記録ユニットを駆動するモータとを備え、前記記録ユニットが前記モータによって駆動されて前記シートに対して変位する記録ユニット搬送機構と、
前記記録ユニット搬送機構を制御対象として、前記被駆動物としての前記記録ユニットの運動を制御する請求項1〜請求項15のいずれか一項記載の制御装置と、
を備え、
前記演算手段は、前記記録ユニット搬送機構が備える前記モータの操作量を演算し、
前記計測手段は、前記制御量として、前記記録ユニットの運動状態を表す物理量を計測し、
前記判定手段は、前記フィルタの出力に基づき、前記記録ユニットが前記異物としての前記シートと接触したか否かを判定することにより、前記制御対象に異常が発生したか否かを判定する画像形成システム。
【請求項18】
搬送されるシートに画像を形成する画像形成システムであって、
前記シートに画像を形成する記録ユニットと前記記録ユニットを駆動するモータとを備え、前記記録ユニットが前記モータによって駆動されて前記シートに対して変位する記録ユニット搬送機構と、
前記記録ユニット搬送機構を制御対象として前記記録ユニットの運動を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記モータの操作量を演算する演算手段と、
前記操作量に対応する制御量として、前記記録ユニットの運動状態を表す物理量を計測する計測手段と、
前記計測手段による前記物理量の計測信号を、前記制御対象の入出力特性を表すモデルの逆モデルに入力する逆モデル入力手段と、
前記逆モデルの出力と前記モータに入力される前記操作量との差分信号を生成する差分信号生成手段と、
前記差分信号生成手段により生成された前記差分信号の高周波成分を減衰させる第一及び第二のローパスフィルタと、
前記第一のローパスフィルタの出力に基づき、前記記録ユニットが前記シートと接触したか否かを判定する判定手段と、
前記第二のローパスフィルタの出力に基づき、前記演算手段により演算された前記操作量を補正し、当該補正後の操作量を、前記モータへ入力する補正入力手段と、
を備え、
前記第一のローパスフィルタのカットオフ周波数は、前記第二のローパスフィルタのカットオフ周波数よりも低いこと
を特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被駆動物の運動を制御する制御装置、及び、この制御装置を備えた画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被駆動物の運動を制御する制御装置としては、被駆動物が周辺物に衝突した際の衝突のダメージを抑える保護機能を有した制御装置が知られている。
具体的には、モータの回転速度を制御する制御装置であって、外乱オブザーバにより、トルク電流指令とモータの回転速度とから外乱トルクを推定し、推定された外乱トルクが予め設定されている外乱トルク値を超えると、被駆動物に周辺物との衝突が生じたとして、モータが停止する方向のモータ制御を行う制御装置が知られている(特許文献1参照)。この他、外乱オブザーバに関連する技術としては、外乱オブザーバの出力をローパスフィルタにより濾波して高周波成分を除去する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−284764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被駆動物の異物(周辺物)との接触等による制御対象の異常は、迅速且つ高精度に検知できることが好ましい。例えば、プリンタ装置では、記録ユニットの搬送時に用紙が記録ユニットと接触してジャムが発生する場合があるが、このような異常の検知が遅れると、その後の処置に手間がかかる。
【0005】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、外乱オブザーバの出力を用いて制御対象の異常を検知するのに好適な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本発明の制御装置は、モータとモータにより駆動される被駆動物とを備える駆動系を制御対象として、被駆動物の運動を制御する制御装置であって、演算手段と、計測手段と、逆モデル入力手段と、差分信号生成手段と、フィルタと、判定手段と、を備えるものである。
【0007】
この制御装置における演算手段は、制御対象に入力する操作量を演算し、計測手段は、制御対象の制御量を計測する。一方、逆モデル入力手段は、計測手段による制御量の計測信号を、制御対象の入出力特性を表すモデルの逆モデルに入力し、差分信号生成手段は、この逆モデルの出力と制御対象に入力される上記操作量との差分信号を生成する。
【0008】
フィルタは、差分信号生成手段により生成された上記差分信号を濾波するものであり、差分信号から制御対象の機械的特性により生じる振動成分を減衰可能な周波数特性を有するように構成される。判定手段は、このフィルタの出力に基づき、制御対象に異常が発生したか否かを判定する。
【0009】
例えば、判定手段は、制御対象の異常として、被駆動物が異物と接触する異常が発生したか否かを判定する構成にすることができる。この他、判定手段は、フィルタの出力と予め定められた閾値とを比較し、この出力が閾値より大きい場合に、制御対象に異常が発生したと判定する構成にすることができる。この制御装置には、更に、判定手段により異常が発生したと判定されると、被駆動物を停止させる異常対応手段を設けることができる。
【0010】
上述したように、本発明の制御装置に対しては、上記差分信号を濾波するフィルタの周波数特性が、制御対象の機械的特性により生じる振動成分を減衰可能なように定められる。本発明によれば、フィルタが、このような周波数特性を有する構成にされるため、制御対象の機械的特性により生じる振動成分、即ち、外乱オブザーバにおける制御対象の逆モデルと実際の制御対象の機械的特性との相違により生じる振動成分が、外乱オブザーバの出力に現れ、この振動成分が判定手段による判定動作に悪影響を与えるのを抑えることができる。
【0011】
従って、本発明によれば、制御対象の異常を高精度に判定可能に制御装置を構成することができ、制御対象の異常を検知するのに好適な制御装置を提供することができる。付言すると、本発明によれば、上述した周波数特性を有するようにフィルタを構成することによって、誤判定を抑えつつ、制御対象の異常を迅速に検知可能な制御装置を構成することができる。例えば、フィルタの周波数特性として、制御対象の機械的特性により生じる振動成分を減衰可能で、時間遅れの少ない周波数特性を採用すれば、制御対象の異常を迅速且つ精度良く判定可能な制御装置を構成することができる。
【0012】
また、上記フィルタとしては、ローパスフィルタを採用することができ、ローパスフィルタに対しては、制御対象の機械的特性により生じる振動成分を減衰可能なカットオフ周波数や減衰傾度を設定することができる。
【0013】
ところで、制御対象の機械的特性については、個体毎にばらつきがあったり、経時変化したりする。そこで、本発明の制御装置には、フィルタの周波数特性を更新する更新手段を設けるとよい。具体的に、カットオフ周波数以上の振動成分を減衰させるローパスフィルタを採用する場合、更新手段は、ローパスフィルタのカットオフ周波数を更新する構成にすることができる。
【0014】
また、被駆動物が異物と接触する異常が発生したか否かを判定する制御装置において、更新手段は、異物が存在しないときに得られたローパスフィルタの出力に基づき、この出力が高い程、カットオフ周波数が低くなるように、カットオフ周波数を更新する構成にすることができる。この制御装置によれば、制御対象における機械的特性の経時変化やばらつきに応じた周波数特性の適切な更新を行うことができ、判定手段による異常判定を、高精度なものとすることができる。
【0015】
また、更新手段は、判定手段において誤判定が生じたことを示す情報が入力されたことを条件に、カットオフ周波数を低くする方向に更新する構成にすることもできる。誤判定が生じたということは、ローパスフィルタによる濾波後の信号に、誤判定を生じさせる原因となる信号成分が残留したということになるが、上記情報の入力を条件に、カットオフ周波数を低くして、このような信号成分を除去するようにローパスフィルタの周波数特性を変更すれば、誤判定の発生を抑えることができる。
【0016】
また、更新手段は、カットオフ周波数に代えて又は加えて、ローパスフィルタの減衰傾度を更新する構成にされてもよい。被駆動物が異物と接触する異常が発生したか否かを判定する制御装置において、更新手段は、異物が存在しないときに得られたローパスフィルタの出力に基づき、当該出力が高い程、減衰傾度が高くなるように、減衰傾度を更新する構成にすることができる。
【0017】
この他、更新手段は、判定手段において誤判定が生じたことを示す情報が入力されたことを条件に、減衰傾度を高くする方向に更新するように構成されてもよい。このような構成の制御装置によっても、カットオフ周波数を更新する場合と同様に、判定手段による異常判定を、機械的特性の経時変化やばらつきによる影響を抑えて、高精度に行うことができる。
【0018】
また、制御装置は、上記フィルタとしての第一のローパスフィルタに加えて、差分信号生成手段により生成された差分信号の高周波成分を減衰させる第二のローパスフィルタを備えた構成にすることができ、第二のローパスフィルタの出力に基づき、演算手段により演算された操作量を補正し、当該補正後の操作量を、制御対象へ入力する構成にすることができる。
【0019】
更に、この制御装置に対しては、ローパスフィルタの用途に応じた異なるカットオフ周波数を、第一及び第二のローパスフィルタに設定することができる。即ち、第一及び第二のローパスフィルタのカットオフ周波数は、第一のローパスフィルタのカットオフ周波数が、第二のローパスフィルタのカットオフ周波数よりも低くなるように設定することができる。
【0020】
出力が被駆動物の運動制御に用いられる第二のローパスフィルタに関しては、その出力に、制御対象の機械的特性に応じた振動成分が含まれるほうが、制御対象の実際の入出力特性と逆モデルとの相違も外乱とみなして補正を行うことができるため好ましい。一方、出力が異常判定に用いられる第一のローパスフィルタに関しては、その出力に、制御対象の機械的特性を応じた振動成分が含まれると、異常判定の精度が劣化する。
【0021】
従って、第一のローパスフィルタのカットオフ周波数が、第二のローパスフィルタのカットオフ周波数よりも低くなるように、第一及び第二のローパスフィルタのカットオフ周波数を設定すれば、各ローパスフィルタに用途に応じた適切なカットオフ周波数を設定することができ、第二のローパスフィルタの出力に基づき、外乱の影響を抑えつつ、第一のローパスフィルタの出力に基づき、高精度な異常判定を行うことができる。
【0022】
この他、モータを用いた被駆動物の運動制御によれば、剛体モデルにより制御対象の入出力特性を表すことができ、演算手段は、上記操作量として、モータに対する操作量(電流指令値など)を演算する構成にすることができる。また、被駆動物の速度を制御する場合、計測手段は、制御量として、被駆動物の速度を計測する構成にすることができる。
【0023】
また、上述の制御装置は、モータと、モータにより駆動されて変位し、対向するシートに画像を形成する記録ユニットと、を備える画像形成機構における記録ユニットの運動制御に用いることができる。そして、判定手段は、記録ユニットが異物としてのシートに接触する異常が発生したか否かを判定する手段として構成することができる。
【0024】
また、本発明の画像形成システムは、搬送されるシートに画像を形成する画像形成システムに、上述した制御装置に対応する技術的思想を適用したものであり、記録ユニット搬送機構と、記録ユニット搬送機構を制御対象として記録ユニットの運動を制御する制御装置と、を備えるものである。
【0025】
この画像形成システムにおける記録ユニット搬送機構は、シートに画像を形成する記録ユニットと、記録ユニットを駆動するモータと、を備える。この記録ユニット搬送機構では、記録ユニットがモータによって駆動されてシートに対して変位する。
【0026】
一方、制御装置は、記録ユニット搬送機構を制御対象として記録ユニットの運動を制御するものであり、演算手段と、計測手段と、逆モデル入力手段と、差分信号生成手段と、フィルタと、判定手段と、を備える。
【0027】
この制御装置において、演算手段は、モータの操作量を演算し、計測手段は、この操作量に対応する制御量として、記録ユニットの運動状態を表す物理量を計測する。逆モデル入力手段は、計測手段による上記物理量の計測信号を、記録ユニット搬送機構の入出力特性を表すモデルの逆モデルに入力し、差分信号生成手段は、この逆モデルの出力と上記モータに入力される操作量との差分信号を生成する。
【0028】
フィルタは、差分信号生成手段により生成された差分信号を濾波するフィルタであって、差分信号から、記録ユニット搬送機構の機械的特性により生じる振動成分を減衰可能な周波数特性を有する。判定手段は、このフィルタの出力に基づき、記録ユニットがシートと接触したか否かを判定する。
【0029】
本発明の画像形成システムによれば、記録ユニットがシートと接触したか否かを、記録ユニット搬送機構の機械的特性により生じる振動成分の影響を抑えて、高精度に判定することができる。従って、優れた画像形成システムを消費者に提供することができる。
【0030】
また、この画像形成システムには、上記制御装置に代えて、上記演算手段と、上記計測手段と、上記逆モデル入力手段と、上記差分信号生成手段と、第一及び第二のローパスフィルタと、判定手段と、補正入力手段と、を備えた制御装置を設けることができる。
【0031】
即ち、制御装置は、差分信号生成手段により生成された差分信号の高周波成分を減衰させる第一のローパスフィルタの出力に基づき、判定手段により、記録ユニットがシートと接触したか否かを判定する一方、差分信号生成手段により生成された差分信号の高周波成分を減衰させる第二のローパスフィルタの出力に基づき、演算手段により演算された操作量を、補正入力手段により補正し、当該補正後の操作量をモータへ入力する構成にすることができる。そして、第一のローパスフィルタのカットオフ周波数は、第二のローパスフィルタのカットオフ周波数よりも低い値に設定することができる。
【0032】
このような画像形成システムによれば、第一及び第二のローパスフィルタに対して用途に応じた適切なカットオフ周波数を設定することができ、第二のローパスフィルタの出力に基づき、外乱の影響を抑えつつ、第一のローパスフィルタの出力に基づき、高精度な異常判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】プリンタ装置1の構成を表すブロック図である。
図2】キャリッジ搬送機構40及び用紙搬送機構60に関する説明図である。
図3】キャリッジ搬送機構40の詳細構成を表す上面図である。
図4】CRモータ制御部31の詳細構成を表すブロック図である。
図5】CRモータ制御部31の詳細構成を表すブロック図である。
図6】反力推定値τ1の変動態様を表すグラフである。
図7】ジャムが発生した場合の反力推定値τの変動態様を表すグラフである。
図8】反力推定値τ1,τ2及び速度Vr,Vの変動態様を表すグラフである。
図9】ジャムが発生した場合の反力推定値τ1,τ2及び速度Vr,Vの変動態様を表すグラフである。
図10】操作量演算ユニット170が実行するキャリッジ41の搬送制御に関するフローチャートである。
図11】CPU11が実行するフィルタ更新処理を表すフローチャートである。
図12】カットオフ周波数ω1及び次数nの組合せ毎の反力推定値τの変動態様を表すグラフである。
図13】操作量演算ユニット170が実行する起動時フィルタ更新処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明の実施例について、図面と共に説明する。
本実施例のプリンタ装置1は、ジャムの検知機能を有したプリンタ装置であって、インクジェット方式で用紙Qに画像を形成する所謂インクジェットプリンタとして構成されるものである。このプリンタ装置1は、CPU11と、ROM12と、RAM13と、EEPROM15と、ユーザインタフェース17と、接続インタフェース19と、印字制御部20と、モータ制御部30と、を備える。
【0035】
更に、このプリンタ装置1は、用紙Qに画像を形成するための構成として、記録ヘッド21と、駆動回路23と、を備え、記録ヘッド21を主走査方向に搬送するための構成として、キャリッジ搬送機構40と、CR(キャリッジ)モータ51と、駆動回路53と、を備え、用紙Qを主走査方向とは直交する副走査方向に搬送するための構成として、用紙搬送機構60と、LFモータ71と、駆動回路73と、を備える。
【0036】
この他、プリンタ装置1は、記録ヘッド21が搭載されるキャリッジ41の位置及び速度を計測可能なエンコーダ55、及び、用紙Qの搬送量及び搬送速度を計測可能なエンコーダ75を備える。
【0037】
詳述すると、CPU11は、ROM12に記録されたプログラムに従う処理を実行することにより、プリンタ装置1を統括制御して、各種機能を実現する。ROM12は、各種プログラムを記憶し、RAM13は、CPU11による処理実行時に、作業用メモリとして使用される。EEPROM15は、電気的にデータ書換可能な不揮発性メモリとして、各種設定情報を記憶する。
【0038】
ユーザインタフェース17は、プリンタ装置1を利用するユーザに向けて各種情報を表示するためのディスプレイ、及び、ユーザからプリンタ装置1への各種操作情報を受け付けるための操作デバイスを備える。接続インタフェース19は、パーソナルコンピュータ(PC)3とプリンタ装置1とを接続するためのインタフェース(例えばUSBインタフェース)であり、PC3からの印刷命令や印刷対象データを受信可能に構成される。
【0039】
CPU11は、接続インタフェース19を通じてPC3から印刷命令及び印刷対象データを受信すると、印字制御部20及びモータ制御部30に指令入力することによって、印字制御部20に、記録ヘッド21からのインク液滴の吐出制御を実行させ、モータ制御部30に、CRモータ51及びLFモータ71の制御によるキャリッジ41及び用紙Qの搬送制御を実行させる。これによって、用紙Qに印刷対象データに基づく画像を形成する。
【0040】
記録ヘッド21は、インク液滴を吐出するためのノズルが複数配列された周知のインクジェットヘッドである。この記録ヘッド21は、駆動回路23により駆動され、ノズル面に対向する用紙Qの領域にインク液滴を吐出する。
【0041】
印字制御部20は、CPU11からの指令に基づき、用紙Qに印刷対象データに基づく画像が形成されるように、駆動回路23に対して制御信号を入力し、この動作によって、記録ヘッド21によるインク液滴の吐出制御を実現する。
【0042】
一方、キャリッジ搬送機構40は、図2に示すように、CRモータ51に駆動されて回転するベルト機構43を備え、このベルト機構43により、記録ヘッド21を搭載するキャリッジ41を主走査方向に搬送する。このキャリッジ搬送機構40は、図3に示すように、キャリッジ41、ベルト機構43、及び、ガイドレール450,470を備える。
【0043】
ベルト機構43は、主走査方向に一列に配置された駆動プーリ431及び従動プーリ433と、駆動プーリ431と従動プーリ433との間に巻回されたベルト435と、を備える。このベルト機構43では、駆動プーリ431がCRモータ51からの動力を受けて回転し、ベルト435及び従動プーリ433が、駆動プーリ431の回転に伴って、従動回転する。キャリッジ41は、このように動作するベルト435に固定される。
【0044】
また、ガイドレール450は、主走査方向に沿って延設され、主走査方向に垂直な断面がL字形状の部材45により構成される。この他、ガイドレール470は、ガイドレール450とは副走査方向に離れた位置で、ガイドレール450と平行に設けられる。ガイドレール470を構成する部材47は、主走査方向に垂直な断面がL字形状の部材であり、部材45よりも副走査方向上流に設けられる。
【0045】
ベルト機構43は、この部材47のガイドレール470を構成する部位から副走査方向上流の領域に設置される。また、部材47におけるベルト機構43とガイドレール470との間の領域には、リニアエンコーダを構成するエンコーダスケール551が主走査方向に沿って設けられる。
【0046】
キャリッジ41は、下面部に、ガイドレール450,470の形状に対応する主走査方向の溝(図示せず)を備え、上面部に、エンコーダスケール551の形状に対応する主走査方向の溝410を備える。溝410には、エンコーダスケール551を読取可能な光学センサ553が搭載され、このキャリッジ41には、用紙Qに対してインク液滴を吐出可能に、記録ヘッド21が搭載される。
【0047】
キャリッジ41は、下面部の溝(図示せず)にガイドレール450,470が配置されるように、ガイドレール450,470上に載置される。この載置によって、キャリッジ41は、CRモータ51が回転すると、ベルト435の回転に連動して、ガイドレール450,470に案内され、主走査方向に移動する。また、記録ヘッド21は、このキャリッジ41の移動に伴って、主走査方向に搬送される。
【0048】
エンコーダ55は、キャリッジ41の溝410に配置された上記エンコーダスケール551と上記光学センサ553とを備えるものであり、これらの要素によりキャリッジ41の位置及び速度を計測可能なリニアエンコーダとして構成される。エンコーダ55は、周知のリニアエンコーダと同様に、エンコーダスケール551において等間隔に設けられた目盛りを光学センサ553で光学的に読み取る。
【0049】
即ち、エンコーダ55は、キャリッジ41が主走査方向に移動すると、部材47に固定されたエンコーダスケール551と、キャリッジ41と共に移動する光学センサ553との相対位置が変化する現象を利用して、光学センサ553でエンコーダスケール551の目盛り(スリット等)を読み取り、エンコーダ信号として、キャリッジ41の主走査方向の変位に応じたパルス信号を出力する。本実施例では、このエンコーダ55の出力信号(エンコーダ信号)に基づき、主走査方向におけるキャリッジ41の位置及び速度(間接的には記録へッド21の位置及び速度)が計測される。
【0050】
この他、モータ制御部30(図1参照)は、CRモータ51の制御により、キャリッジ41の主走査方向への搬送制御を行うCRモータ制御部31を備える。このCRモータ制御部31は、CPU11からの指令に従って、駆動回路53に対する入力信号としてのPWM信号を生成し、直流モータで構成されるCRモータ51を制御する。この際、CRモータ制御部31は、エンコーダ55の出力信号に基づいたフィードバック制御により、キャリッジ41の速度を制御する。また、駆動回路53は、CRモータ制御部31から入力されるPWM信号に従う駆動電流でCRモータ51を駆動する。
【0051】
また、用紙搬送機構60は、図2に示すように、LFモータ71に駆動されて副走査方向に回転する、主走査方向に平行な軸を有する少なくとも一つのローラ61を備える。用紙搬送機構60は、トレイから供給された用紙Qを、ローラ61の回転により副走査方向に搬送し、用紙Qを記録ヘッド21によるインク液滴の吐出位置に送出する。
【0052】
モータ制御部30(図1参照)は、LFモータ71の制御により、用紙Qの副走査方向への搬送制御を行うLFモータ制御部35を備える。このLFモータ制御部35は、CPU11からの指令に従って、駆動回路73に対する入力信号としてのPWM信号を生成し、直流モータで構成されるLFモータ71を制御する。この際、LFモータ制御部35は、LFモータ71、ローラ61又はこれらの間の伝達系、に設けられたロータリエンコーダとしてのエンコーダ75からの出力信号に基づいたフィードバック制御により、用紙Qの搬送制御を行う。また、駆動回路73は、LFモータ制御部35から入力されるPWM信号に従ってLFモータ71を駆動する。
【0053】
プリンタ装置1が備えるCPU11は、接続インタフェース19を通じて印刷指令及び印刷対象データが入力されると、上記印字制御部20を動作させて、印刷対象データに基づく画像を用紙Qに形成させるためのインク液滴の吐出動作を記録ヘッド21に実行させると共に、CRモータ制御部31を動作させて、キャリッジ41を主走査方向に移動させ、更に、キャリッジ41が、主走査方向の折返し地点に到達する度に、LFモータ制御部35を動作させて、用紙Qを所定量副走査方向に送出することにより、用紙Qに対して段階的に画像を形成し、印刷対象データに基づく画像を形成する。
【0054】
続いて、CRモータ制御部31の構成について、図4を用いて説明する。本実施例のCRモータ制御部31は、図4に示すように、エンコーダ信号処理ユニット110と、第一の外乱オブザーバ130と、判定用反力推定ユニット140と、ジャム判定ユニット160と、操作量演算ユニット170と、第二の外乱オブザーバ180と、PWM信号生成回路190と、を備える。尚、CRモータ制御部31は、ハードウェア又はマイクロコンピュータによるソフトウェアの実行により実現される。
【0055】
エンコーダ信号処理ユニット110は、エンコーダ55の出力信号に基づき、キャリッジ41の位置及び速度を計測するものである。周知のようにキャリッジ41の速度計測は、上記出力信号としてエンコーダ55から出力されるパルス信号のパルスエッジ間隔(時間間隔)を計測することにより実現できる。また、キャリッジ41の位置計測については、所定の原点位置にキャリッジ41を配置してからのエンコーダ55からの入力パルス数をカウントすることにより計測することができる。具体的には、キャリッジ41が正方向に変位している場合にはパルス入力毎に1加算し、キャリッジ41が負方向に変位している場合にはパルス入力毎に1減算するように、入力パルス数をカウントすることによりキャリッジ41の位置を計測することができる。周知のように、エンコーダ55からは、A相信号及びB相信号が出力される。キャリッジ41の変位方向については、これらA相信号及びB相信号の位相差により特定することができる。
【0056】
また、第一の外乱オブザーバ130は、エンコーダ信号処理ユニット110により計測されたキャリッジ41の速度Vと、操作量演算ユニット170から出力されるCRモータ51に対する操作量Uと、に基づき、モータ駆動によりキャリッジ41に作用する力に対する反力を推定し、その反力推定値τ1を、判定用反力推定ユニット140に入力する。
【0057】
判定用反力推定ユニット140は、この第一の外乱オブザーバ130で推定された反力推定値τ1からジャムの発生有無の判定に不要な成分を除去し、除去後の反力推定値τをジャム判定ユニット160に入力する。ジャム判定ユニット160は、この判定用反力推定ユニット140から入力される反力推定値τに基づき、キャリッジ41と用紙Qとが接触する事象であるジャムが発生したか否かを判定する。そして、ジャムが発生していると判定した場合には、そのことを表すフラグF=1を操作量演算ユニット170に入力し、ジャムが発生していないと判定した場合には、そのことを表すフラグF=0を操作量演算ユニット170に入力する。以下では、ジャムの発生有無の判定を、簡易に「ジャム判定」とも表現する。
【0058】
操作量演算ユニット170は、このジャム判定ユニット160から入力されるフラグFと、第二の外乱オブザーバ180から入力される反力推定値τ2と、エンコーダ信号処理ユニット110により計測されたキャリッジ41の速度Vと、に基づいて、CRモータ51に対する操作量Uを演算し、その操作量Uを、PWM信号生成回路190に入力する。本実施例では、操作量Uとして、CRモータ51に対する電流指令値を算出し、これをPWM信号生成回路190に入力する。
【0059】
第二の外乱オブザーバ180では、第一の外乱オブザーバ130と同様に、モータ駆動によりキャリッジ41に作用する力に対する反力が推定され、その反力推定値τ2が操作量演算ユニット170に入力される。
【0060】
PWM信号生成回路190は、この操作量演算ユニット170から入力される操作量Uに対応した駆動電流でCRモータ51が駆動されるようなPWM信号を生成し、これを駆動回路53に入力する。
【0061】
続いては、図5を用いて、CRモータ制御部31の詳細構成を更に説明する。第一の外乱オブザーバ130では、入力ユニット131が、エンコーダ信号処理ユニット110による速度Vの計測信号(例えば計測された速度Vの時系列データ)を、制御対象の逆モデルP-1に入力する。ここで言う制御対象の逆モデルP-1は、CRモータ51に対する操作量Uと制御対象の制御量(キャリッジ41の速度V)との入出力特性モデルP=V/U、換言すれば操作量Uから制御量Vへの数学モデルである伝達関数P=V/Uの逆モデルP-1のことである。以下で表現する「制御対象」は、操作量Uにより制御量Vを実現する駆動系のことを言う。この駆動系には、少なくともPWM信号生成回路190、CRモータ51及びキャリッジ搬送機構40が含まれる。
【0062】
逆モデルP-1は、例えば、入出力特性モデルPを、剛体モデルにより表現して定めることができる。即ち、トルク定数K、慣性モーメントJ、及び、速度Vと回転角速度ωとの間の比例係数α=V/ωから定まる係数A(=K・α/J)並びにラプラス演算子sを用いて、入出力特性モデルをP=A/sで表現したときの逆数P-1=(1/A)・sで定めることができる。
【0063】
第一の外乱オブザーバ130では、減算器133が、この逆モデルP-1の出力U*と、操作量演算ユニット170から出力されるCRモータ51に対する操作量Uとの差分(U−U*)を表す信号(差分信号)を生成し、この差分信号を第一のローパスフィルタ135に入力する。第一のローパスフィルタ135は、カットオフ周波数ω1の1次ローパスフィルタとして構成され、入力された差分信号を濾波して、その濾波信号である高周波成分減衰後の差分信号を、判定用反力推定ユニット140に入力する。
【0064】
尚、制御対象の入出力特性については、それを完全にモデル化することは困難である。従って、逆モデルP-1に対応する入出力特性モデルPとして、剛体モデルのようなシンプルなモデルを設定しても、物理現象を緻密に数式化した複雑なモデルを設定しても、実際の入出力特性と、モデル化された入出力特性(入出力特性モデルP)との間には誤差が生じる(モデル化誤差)。そして、このようなモデル化誤差は、上記差分信号において振動成分として現れる。第一のローパスフィルタ135は、後述するように、このようなモデル化誤差による振動成分、言い換えれば、制御対象の機械的特性に応じた振動成分を、差分信号から除去するために用いられる。
【0065】
差分(U−U*)は、操作量Uが電流指令値である関係上、単位をアンペアとするものであるが、アンペアとトルク(反力)との間には比例関係が成立する。このため、差分(U−U*)は、反力推定値τ1を表すものとして取り扱うことができる。即ち、第一の外乱オブザーバ130は、差分信号を第一のローパスフィルタ135により濾波したものを、反力推定値τ1を表す信号として、判定用反力推定ユニット140に入力する。
【0066】
判定用反力推定ユニット140は、第一の外乱オブザーバ130からの入力信号が表す反力推定値τ1から、動摩擦力に対応する反力μNを減算することにより、ジャム判定に不要な成分としての入出力特性モデルPでは考慮されていない動摩擦力成分を除去し、その除去後の反力推定値τ=τ1−μNをジャム判定ユニット160に入力する。具体的に、本実施例では、動摩擦係数μ及び抗力Nが一定であるものとみなし、一定の動摩擦力μNに基づく反力推定値τ=τ1−μNをジャム判定ユニット160に入力する。
【0067】
但し、キャリッジ41が静止している状態では、反力推定値τ1に動摩擦力成分は含まれない。また、動摩擦力は、キャリッジ41の搬送方向とは逆方向に働くものであるので、反力推定値τ1から動摩擦力成分μNを減算した値が負値となるのは不自然である。
【0068】
このため、判定用反力推定ユニット140は、エンコーダ信号処理ユニット110により計測された速度Vに基づき、当該速度Vがゼロ(V=0)、又は、反力推定値τ1がμN以下(τ1≦μN)であるときには、反力推定値τとしてゼロ(τ=0)をジャム判定ユニット160に入力し、それ以外の場合(V>0且つτ1>μNである場合)に限って、反力推定値τ1から動摩擦力成分μNを減算してなる反力推定値τ=τ1−μNをジャム判定ユニット160に入力する。
【0069】
ジャム判定ユニット160は、このようにして判定用反力推定ユニット140から入力される反力推定値τを、予め設定された閾値Hと比較し、反力推定値τの絶対値|τ|が閾値H以上であるときには、フラグF=1を出力し、絶対値|τ|が閾値H未満であるときには、フラグF=0を出力する。このようにして、ジャム判定ユニット160は、ジャムの発生有無を判定し、発生していると判定した場合には、フラグF=1を出力し、そうでない場合には、フラグF=0を出力する。
【0070】
この他、操作量演算ユニット170は、フラグF=0である通常時には、CPU11から設定された速度プロファイルに基づく現時刻での目標速度Vrと、エンコーダ信号処理ユニット110により計測された速度Vと、に基づいて、キャリッジ41が目標速度Vrに追従するような操作量U0を演算し、この操作量U0と第二の外乱オブザーバ180から入力される反力推定値τ2とを加算して、補正後の操作量U=U0+τ2をPWM信号生成回路190に入力する。速度プロファイルは、制御開始時からの各時刻における目標速度Vrの軌跡を表すものである。
【0071】
例えば、操作量演算ユニット170は、速度プロファイルから特定される現時刻の目標速度Vrから上記計測された速度Vを減算し、その差分(Vr−V)を出力する減算器171と、減算器171の出力(Vr−V)にゲインKpを作用させて操作量U0=Kp(Vr−V)を出力する比例制御器173と、比例制御器173の出力U0=Kp(Vr−V)に反力推定値τ2を加算することにより操作量U0を補正し、補正後の操作量U=U0+τ2をPWM信号生成回路190に入力する加算器175、としての機能を有した構成にされる。尚、この機能は、ハードウェア又はマイクロコンピュータによるソフトウェアの実行により実現される。
【0072】
一方、フラグF=1が入力されると、操作量演算ユニット170は、ジャムが発生したとみなして、CRモータ51及びキャリッジ41を停止させるための操作量Uを演算し、これをPWM信号生成回路190に入力する停止処理を実行する。
【0073】
この他、第二の外乱オブザーバ180では、第一の外乱オブザーバ130と同様に、入力ユニット181が、エンコーダ信号処理ユニット110による速度Vの計測信号を、制御対象の逆モデルP-1に入力し、減算器183が、この逆モデルP-1の出力U*と、操作量演算ユニット170から出力されるCRモータ51に対する操作量Uとの差分(U−U*)を表す差分信号を第二のローパスフィルタ185に入力する。
【0074】
第二のローパスフィルタ185は、カットオフ周波数ω2の1次ローパスフィルタとして構成され、減算器183から入力された差分信号を濾波して、その濾波信号である高周波成分減衰後の差分信号を、反力推定値τ2を表す信号として操作量演算ユニット170に入力する。尚、第二の外乱オブザーバ180に設定される逆モデルP-1は、第一の外乱オブザーバ130と同じものである。
【0075】
本実施例のCRモータ制御部31では、このような構成により、キャリッジ41の速度フィードバック制御が行われると共に、第一の外乱オブザーバ130を用いたジャム判定、及び、この判定結果に基づいたCRモータ51及びキャリッジ41の停止処理が行われる。
【0076】
ところで、第二の外乱オブザーバ180とは別に、ジャム判定専用の第一の外乱オブザーバ130を設けているのは、第二の外乱オブザーバ180における第二のローパスフィルタ185のカットオフ周波数ω2よりも、第一の外乱オブザーバ130における第一のローパスフィルタ135のカットオフ周波数ω1を小さい値に設定し、制御対象の機械的特性により生じる差分信号(U−U*)の振動成分に起因したジャムの誤判定(ジャム判定の誤り)を抑えるためである。この振動成分は、上述したように、逆モデルP-1のモデル化誤差によるもので、制御対象の振動モードに対応する。
【0077】
第二の外乱オブザーバ180に対しては、制御対象の実際の入出力特性と逆モデルとの相違も外乱とみなして、その影響を抑えるために、制御対象の機械的特性による差分信号(U−U*)の振動成分が減衰しないようなカットオフ周波数ω2を設定すべきである。付言すれば、差分信号の電気的ノイズが励起されない程度に、カットオフ周波数ω2を大きく設定するべきである。
【0078】
これに対し、ジャム判定用の第一の外乱オブザーバ130に対しては、その反力推定値τ1に、制御対象の機械的特性による差分信号(U−U*)の振動成分が含まれると、特に加速に伴って振動成分が大きく現れた際に、ジャムが発生していないのにも拘らず、反力推定値τが閾値Hを超えてしまう。そして、この事象により、ジャム判定ユニット160においてジャムの誤判定が生じ、操作量演算ユニット170においてCRモータ51及びキャリッジ41の停止処理が行われてしまう。
【0079】
図6(A)に示すグラフは、キャリッジ41を停止状態から一定速度Vcまで加速制御後、キャリッジ41を一定速度Vcに速度制御した場合に得られる反力推定値τ1であって、第一のローパスフィルタ135のカットオフ周波数ω1を、制御対象の機械的特性に応じた振動成分の周波数である振動周波数ωr未満としたときの反力推定値τ1を、横軸を時間、縦軸を反力推定値τ1として表したグラフである。一方、図6(B)は、図6(A)と同様の制御を行った場合に得られる反力推定値τ1であって、第一のローパスフィルタ135のカットオフ周波数ω1を、振動周波数ωrより大きい値に設定したときの反力推定値τ1を、横軸を時間、縦軸を反力推定値τ1として表したグラフを示す。
【0080】
このように、第一のローパスフィルタ135のカットオフ周波数ω1を振動周波数ωrより大きい値に設定すると、反力推定値τ1に振動成分が大きく現れることから、ジャム判定ユニット160においてジャムの誤判定が生じる。
【0081】
このため、本実施例によれば、制御誤差抑制のために、振動周波数ωrより大きい値に設定される第二のローパスフィルタ185のカットオフ周波数ω2に対し、第一のローパスフィルタ135のカットオフ周波数ω1として、振動周波数ωrより小さい値を設定することにより、ジャム判定ユニット160によるジャムの誤判定を抑えつつ、第一の外乱オブザーバ130の出力に基づいたジャムの発生有無の判定を行う。
【0082】
尚、振動周波数ωrについては、プリンタ装置1を試験動作させて、その際に得られる減算器133の出力信号を周波数解析し、この周波数スペクトルのピークを検出することにより得ることができる。カットオフ周波数ω1については、小さい値を設定する程、ジャムの誤判定が生じにくくなるが、カットオフ周波数ω1を小さく設定し過ぎると、用紙Qとキャリッジ41とが接触し始めてからジャム判定ユニット160によりジャムが発生したと判定されるまでの時間が長くなり、好ましくない。
【0083】
そこで、プリンタ装置1の設計に際しては、用紙Qとキャリッジ41とが接触し始めてからジャム判定ユニット160によりジャムが発生したと判定されるまでの時間の許容値Tjamを定め、この許容値Tjamに基づいて、カットオフ周波数ω1を、2π/Tjamより大きい値に定めると良い。尚、ここでは「カットオフ周波数」ω1と表現しているが、ω1は、角周波数を表すものであることを念のため言及しておく。
【0084】
図7(A)に示すように、カットオフ周波数ω1を、2π/Tjamより大きい値に設定すると、用紙Qとキャリッジ41とが接触し始めてから時間Tjam以内に、この接触の影響が明確に反力推定値τに現れ、適切な閾値Hの設定により、時間Tjamで、ジャムの発生有無を高精度に判定することができる。
【0085】
一方、図7(B)に示すように、カットオフ周波数ω1を、2π/Tjamより小さい値に設定すれば、用紙Qとキャリッジ41とが接触し始めてから時間Tjam以内においては、接触による影響が反力推定値τに十分に表れず、反力推定値τの上昇がジャムの発生によるものであるか否かを高精度に判定することが難しい。即ち、カットオフ周波数ω1を、2π/Tjamより小さい値に設定した場合には、時間Tjam内では、接触による影響が反力推定値τに十分反映されないため、閾値Hの調整によっても、ジャム判定の高精度化に限度がある。
【0086】
従って、カットオフ周波数ω1は、振動周波数ωr未満で2π/Tjamより大きい値に設定するのが好ましい。閾値Hについては、カットオフ周波数ω1を、2π/Tjamより大きい値に設定しつつ、第一のローパスフィルタ135に、このカットオフ周波数ω1を設定したときに、用紙Qとキャリッジ41とが接触し始めてから時間Tjamで、一定以上の確率で到達する反力推定値τの最小値付近を設定すればよい。
【0087】
このように用途に応じた適切なカットオフ周波数ω1,ω2を設定した場合の反力推定値τ1,τ2の変動態様を、キャリッジ41の目標速度Vr及び計測速度Vの変動態様と共に、図8(A)及び図8(B)に示す。図8(A)及び図8(B)は、ジャムが発生していない環境での変動態様を示すものである。
【0088】
図8(A)のグラフ内に示す実線は、キャリッジ41を主走査方向に搬送制御するときの速度プロファイル(目標速度Vrの軌跡)である。一方、図8(A)のグラフ内に示す一点鎖線は、このような搬送制御が行われる場合に、計測されるキャリッジ41の速度Vである。
【0089】
また、図8(B)のグラフ内に示す実線は、第一の外乱オブザーバ130の出力(反力推定値τ1)であり、図8(B)のグラフ内に示す破線は、第二の外乱オブザーバ180の出力(反力推定値τ2)である。図8(B)からも理解できるように、カットオフ周波数ω1を適切に設定することにより、反力推定値τ1については、キャリッジ41の加速中に、反力推定値τ2のように上昇することがなく、加速時に大きく表れる振動成分の影響を受けて、ジャムの誤判定が生じるのを適切に抑えることができる。
【0090】
一方、キャリッジ41の搬送制御の過程において、キャリッジ41と用紙Qとが接触し、ジャムが発生した場合における反力推定値τ1,τ2の変動態様を、キャリッジ41の目標速度Vr及び計測速度Vの変動態様と共に、図9(A)及び図9(B)に示す。図8(A)と同様、図9(A)における実線は、キャリッジ41の目標速度Vrを表し、一点鎖線は、キャリッジ41の計測速度Vを表す。また、図8(B)と同様、図9(B)における実線は、第一の外乱オブザーバ130の出力(反力推定値τ1)を表し、破線は、第二の外乱オブザーバ180の出力(反力推定値τ2)を表す。この他、二点鎖線は、閾値に対応する。
【0091】
図9(A)及び図9(B)からも理解できるように、本実施例によれば、カットオフ周波数ω1が適切に設定されている結果、加速中に反力推定値τ1が大きく上昇するのを抑えることができる一方、キャリッジ41と用紙Qとの接触が発生した場合には、感度良く反力推定値τ1が上昇するため、迅速且つ高精度にジャムを検知することができる。
【0092】
即ち、従来技術としては、計測速度Vの目標速度Vrとの乖離に基づき、異物との衝突を検知する技術が知られているが、本実施例によれば、計測速度Vの目標速度Vrとの乖離に基づく検知よりも、迅速に異物(用紙Q)との接触を検知することができる。
【0093】
また、従来技術としては、外乱オブザーバの出力を指標に、異物との衝突を検知する技術が知られているが、従来技術によれば、カットオフ周波数ω1を、ωr未満とする思想がなかったため、このような技術を採用しても、加速中での誤判定を抑えるために、閾値Hを高く設定せざるを得ず、迅速に異物との接触を検知することができなかった。これに対し、本実施例によれば、異物との接触を迅速に検知することができる。
【0094】
以上にジャム判定の技術について説明したが、操作量演算ユニット170は、ジャム判定ユニット160から入力されるフラグFに基づき、図10に示すように、操作量Uの出力を切り替える。
【0095】
即ち、操作量演算ユニット170は、CPU11からの指令に基づき、CRモータ51の制御、換言すれば、キャリッジ41の搬送制御を開始すると、ジャム判定ユニット160から入力されるフラグFが値ゼロから値1に切り替わるまでは、速度プロファイルに基づくキャリッジ41の速度制御を行う(S110〜S150)。
【0096】
具体的には、速度プロファイルに基づく現時刻での目標速度Vrと、エンコーダ信号処理ユニット110により計測された速度Vと、に基づいて、キャリッジ41が目標速度Vrに追従するような操作量U0を演算し(S110)、この操作量U0と第二の外乱オブザーバ180から入力される反力推定値τ2とを加算して、操作量U0を補正する(S120)。即ち、PWM信号生成回路190に入力する操作量U=U0+τ2を演算する(S120)。
【0097】
また、ジャム判定ユニット160から入力されるフラグFが値ゼロである場合には(S130でNo)、S120で算出した補正後の操作量UをPWM信号生成回路190に入力し、この操作量Uに対応する駆動電流でCRモータ51が駆動されて、キャリッジ41が搬送されるようにする(S140)。
【0098】
また、キャリッジ41の搬送制御の終了条件が満足されたか否かを判断し(S150)、終了条件が満足されていないと判断した場合には(S150でNo)、S110に移行する。このようにして、操作量演算ユニット170は、終了条件が満足されたと判断するか(S150でYes)、ジャム判定ユニット160から入力されるフラグFが値ゼロから値1に切り替わるまで(S130でYes)、S110〜S150の処理を繰り返し実行する。そして、終了条件が満足されると(S150)、キャリッジ41の搬送制御を終了する。
【0099】
S150では、例えば、速度プロファイルに基づく制御終了時刻に達すると、終了条件が満足されたとして、キャリッジ41の搬送制御を終了することができる。この他、一定時間キャリッジ41が停止したことを条件に、キャリッジ41の搬送制御を終了することも可能である。一定時間キャリッジ41が停止したか否かは、エンコーダ信号処理ユニット110にて計測されるキャリッジ41の位置Xを参照して判断することができる。
【0100】
一方、操作量演算ユニット170は、ジャム判定ユニット160から入力されるフラグFが値ゼロから値1に切り替わると、ジャムが発生したことを検知して(S130でYes)、CRモータ51及びキャリッジ41の停止処理を実行しつつ(S160)、CPU11に対し、ジャムが発生した旨のエラー通知を行う(S170)。CPU11は、このエラー通知を受けて、ユーザインタフェース17のディスプレイを通じたメッセージ表示やブザー音の出力によるエラー通知をユーザに向けて行うことができる。
【0101】
この他、上記停止処理は、S120で演算された操作量Uを用いずに、操作量U=ゼロをPWM信号生成回路190に入力する処理にて実現することができる。別例として、停止処理では、CRモータ51が減速及び停止するように、操作量Uを搬送方向に対してマイナス出力してもよい。
【0102】
操作量演算ユニット170は、このような停止処理(S160)及びエラー通知(S170)をキャリッジ41が停止するまで継続的に実行し、キャリッジ41が停止したと判断すると(S180でYes)、キャリッジ41の搬送制御を終了する。
【0103】
以上、本実施例のプリンタ装置1について説明したが、本実施例によれば、逆モデルの出力U*と操作量Uとの差分(U−U*)に基づくジャム判定を行うが、この差分信号を、制御対象の機械的特性による振動成分を減衰させることが可能な周波数ωr未満のカットオフ周波数ω1を有する第一のローパスフィルタ135に入力して、そのフィルタ通過後の信号(濾波信号)に基づくジャム判定を行う。
【0104】
従って、本実施例によれば、制御対象の機械的特性によって生じる振動成分が原因で、ジャムの誤判定が生じるのを抑えることができる。特に、差分信号に含まれる振動成分は加速中に大きくなるが、本実施例によれば、このような加速中においてもジャム判定を高精度に行える。従って、上述した本実施例のジャム判定技術は、キャリッジ41の加速中にジャムが生じ得るようなプリンタ装置1に非常に有用である。
【0105】
また、本実施例によれば、制御誤差を抑えるための第二の外乱オブザーバ180と、ジャム判定用の第一の外乱オブザーバ130とを別個に設けて、夫々に対して、適切なカットオフ周波数ω1,ω2を設定できるようにした。即ち、第一のローパスフィルタ135のカットオフ周波数ω1を、第二のローパスフィルタ185のカットオフ周波数ω2よりも低く設定できるようにし、第一のローパスフィルタ135では、制御対象の機械的特性による振動成分を除去してジャムの誤判定を抑えることができるようにしつつ、第二のローパスフィルタ185では、この振動成分が除去されないようにして、制御誤差を抑えた適切なキャリッジ41の速度制御を行うことができるようにした。従って、本実施例によれば、外乱オブザーバ130,180を用いて、制御誤差及びジャムの誤判定の抑制を同時に実現することができて、高性能で信頼性の高いプリンタ装置1を提供することができる。
【0106】
特に、本実施例によれば、第一の外乱オブザーバ130の出力に基づいて、迅速且つ高精度にジャムを検知することができるので、ジャムが進行して、ユーザがジャムを解消するための用紙Qの除去作業に手間を要したり、ジャムの進行により記録ヘッド21のノズル面が傷ついてしまったりするのを抑制することができる。
【0107】
ところで、制御対象の機械的特性については、個体毎にばらつきがあったり、経時変化したりする。そこで、プリンタ装置1には、第一のローパスフィルタ135の周波数特性を更新する機能を設けるとよい。
【0108】
[第一変形例]
第一変形例のプリンタ装置1は、第一のローパスフィルタ135のカットオフ周波数ω1を更新する機能を上記実施例のプリンタ装置1に設けたものである。第一変形例のプリンタ装置1は、上記実施例のプリンタ装置1と基本構成を同一とするものであるので、以下では、同一構成の説明を省略し、第一変形例のプリンタ装置1に特有な構成を、選択的に説明する。
【0109】
本変形例のプリンタ装置1が備えるCPU11は、フラグFが値ゼロから値1に切り替わってCRモータ制御部31からジャムが発生した旨の上記エラー通知を受けると、図11に示すフィルタ更新処理を実行する。
【0110】
フィルタ更新処理を開始すると、CPU11は、ユーザインタフェース17を用いて、ジャムの判定結果が正しいか否かを問い合せるメッセージをユーザに向けて表示し(S210)、その問合せに対する回答を表す操作情報を、ユーザインタフェース17を通じてユーザから取得する(S220)。そして取得した操作情報が表す回答が、判定結果が正しい旨の回答であるか否かを判断し(S230)、正しい旨の回答であると判断すると(S230でYes)、カットオフ周波数ω1を更新することなく、フィルタ更新処理を終了する。
【0111】
一方、判定結果が間違いである旨の回答であると判断すると(S230でNo)、現カットオフ周波数ω1では、第一のローパスフィルタ135の出力に振動成分が大きく現れている可能性が高いため、S240に移行して、第一のローパスフィルタ135のカットオフ周波数ω1を、所定量Cを下げる方向に更新する。その後、当該フィルタ更新処理を終了する。
【0112】
所定量Cについては、プリンタ装置1の設計者が予め適当な値を定めておくことができる。また、更新後のカットオフ周波数ω1については、EEPROM15に記憶することができる。そして、プリンタ装置1は、その電源投入時に、CPU11がEEPROM15から更新後のカットオフ周波数ω1を読み出して第一のローパスフィルタ135に設定するように構成することができる。
【0113】
以上、第一変形例のプリンタ装置1について説明したが、本実施例のプリンタ装置1によれば、誤判定が生じたことを示す情報がユーザインタフェース17を通じて入力されると、第一のローパスフィルタ135のカットオフ周波数ω1を低くする方向に更新する。このように誤判定が生じたときに、第一のローパスフィルタ135の周波数特性を更新すれば、制御対象の機械的特性の経時変化に対応して、第一のローパスフィルタ135の周波数特性を適切に学習更新することができ、ジャムの誤判定を抑えることができる。
【0114】
また、制御対象の機械的特性については個体差がある旨述べたが、プリンタ装置1を生産する際には、まず個体差を考慮せずに、標準の周波数特性を第一のローパスフィルタ135に設定しておき、プリンタ装置1の工場出荷時に、プリンタ装置1をテスト動作させて、必要があれば、フィルタ更新処理により、第一のローパスフィルタ135の周波数特性を更新すれば、個体によって誤判定率がばらつくのを抑えることができ、高品質なプリンタ装置1をユーザに提供することができる。
【0115】
また、以上では、カットオフ周波数ω1を下げる方向に更新することによって、第一のローパスフィルタ135の周波数特性を更新するようにしたが、S240では、カットオフ周波数ω1を下げる方向に更新する代わりに、第一のローパスフィルタ135の次数を増加させる方向に更新することによって、ジャムの誤判定を抑えてもよい。
【0116】
例えば、第一のローパスフィルタ135を、1次フィルタ{ω1/(s+ω1)}、二次フィルタ{ω1/(s+ω1)}2、三次フィルタ{ω1/(s+ω1)}3、更なる高次のn次フィルタ{ω1/(s+ω1)}nへと更新可能に構成し、S240では、次数nを現在の設定値から1加算した値に更新するようにしてもよい。S240を実行する度に、第一のローパスフィルタ135を、1次フィルタから2次フィルタへ、2次フィルタから3次フィルタへ切り替えるといった具合である。フィルタ次数nを増加させると、第一のローパスフィルタ135における減衰傾度が高くなる(即ち急峻になる)ため、カットオフ周波数ω1より少し高い周波数帯域の振動成分を十分に減衰させることができる結果となり、この振動成分によりジャムの誤判定が生じるのを抑えることができる。
【0117】
図12(A)には、第一のローパスフィルタ135として、カットオフ周波数ω1が初期値ω11であり次数が1次であるローパスフィルタを用いた際のキャリッジ41と用紙Qとの接触時の反力推定値τの上昇態様を示し、図12(B)には、第一のローパスフィルタ135として、カットオフ周波数ω1が初期値ω11より小さい値ω12(<ω11)であり次数が1次であるローパスフィルタを用いた際のキャリッジ41と用紙Qとの接触時の反力推定値τの上昇態様を示し、図12(C)には、第一のローパスフィルタ135として、カットオフ周波数ω1が初期値ω11であり次数が2次であるローパスフィルタを用いた際のキャリッジ41と用紙Qとの接触時の反力推定値τの上昇態様を示す。
【0118】
図12(A)に示すように、キャリッジ41と用紙Qとの接触が生じていないにも拘らず、反力推定値τが閾値Hを超えてしまうような事象が発生するプリンタ装置1において、カットオフ周波数ω1を、初期値ω11より小さい値ω12(<ω11)に更新するか、次数nを、一次から二次に更新すると、このような事象の発生を抑えることができて、ジャムの誤判定を抑えることができる。
【0119】
尚、このような周波数特性の更新は、カットオフ周波数ω1を更新する手法を採用するほうが次数nを更新する手法を採用するよりも簡単な構成で実現することができる。仮に、第一のローパスフィルタ135をハードウェアにより構成する場合には、第一のローパスフィルタ135として、次数毎のローパスフィルタをCRモータ制御部31に内蔵し、フィルタ更新処理によって使用するローパスフィルタを切り替えるようなハードウェア構成が必要になり得る。また、周波数特性の更新は、カットオフ周波数ω1の更新及び次数nの更新の両者を組み合わせて実現されてもよい。
【0120】
また、本変形例では、ジャム判定ユニット160によりジャムが発生したと判定された際に、CPU11がフィルタ更新処理を実行する例について説明したが、プリンタ装置1の起動時には、用紙Qがキャリッジ41の搬送路周辺に存在している可能性が非常に低く、ジャムが発生しない環境である可能性が高い。そして、このような環境で、ジャム判定ユニット160によりジャムが発生したと判定された場合には、ユーザからの情報入力がなくとも、それが誤判定であると特定できる。
【0121】
従って、プリンタ装置1は、プリンタ装置1の起動時などの用紙Qがキャリッジ41の搬送路周辺に存在しないときに得られた反力推定値τに基づき、第一のローパスフィルタ135の周波数特性を更新する構成にされてもよい(第二変形例)。
【0122】
[第二変形例]
第二変形例のプリンタ装置1は、プリンタ装置1の起動時に、第一のローパスフィルタ135の周波数特性を更新する機能を第一変形例を含む上記実施例のプリンタ装置1に設けたものである。第二変形例のプリンタ装置1は、上述したプリンタ装置1と基本構成を同一とするものであるので、以下では、同一構成の説明を省略し、第二変形例のプリンタ装置1に特有な構成を、選択的に説明する。
【0123】
本変形例のプリンタ装置1では、電源が投入され起動した直後において、CRモータ制御部31が、CPU11からの指令に基づき、図13に示す起動時フィルタ更新処理を実行する。具体的には、操作量演算ユニット170が、CPU11から入力される指令に従って、図13に示す起動時フィルタ更新処理を実行する。
【0124】
起動時フィルタ更新処理を開始すると、操作量演算ユニット170は、操作量Uの出力によるCRモータ51の制御により、キャリッジ41を原点位置に配置した後(S310)、キャリッジ41を、その原点位置から検査開始位置まで移動させる(S320)。原点位置及び検査開始位置は、設計段階で定められるキャリッジ搬送路上に位置である。この検査開始位置は、最も使用頻度の高い規格サイズの用紙Q又はプリンタ装置1に供給される最も大きい規格サイズの用紙Qに対して画像形成(印刷)を行う場合の印刷開始位置又は用紙位置を基準に定めることができる。例えば、検査開始位置は、上記用紙(例えばA4用紙)の副走査方向に沿う一つの辺が通過するキャリッジ41搬送路上の位置に定めることができる。また、これに対応して、検査終了位置は、例えば、上記用紙に対して画像形成(印刷)を行う場合の印刷終了位置又は用紙位置を基準に定めることができる。例えば、検査終了位置は、上記用紙(例えばA4用紙)の副走査方向に沿うもう一方の辺が通過するキャリッジ搬送路上の位置に定めることができる。
【0125】
キャリッジ41が検査開始位置まで移動すると、操作量演算ユニット170は、検査用の速度プロファイルに従うキャリッジ41の搬送制御を開始する(S330)。この検査用の速度プロファイルは、キャリッジ41を検査開始位置から検査終了位置まで搬送するための速度プロファイルである。
【0126】
このキャリッジ41の搬送制御では、上記速度プロファイルに基づく現時刻での目標速度Vrと、エンコーダ信号処理ユニット110により計測された速度Vと、に基づいて、キャリッジ41が目標速度Vrに追従するような操作量U0を演算し、この操作量U0と第二の外乱オブザーバ180から入力される反力推定値τ2とを加算して、補正後の操作量U=U0+τ2をPWM信号生成回路190に入力する。このようなキャリッジ41の搬送制御を開始する。
【0127】
そして、この搬送制御を開始すると、操作量演算ユニット170は、ジャム判定ユニット160から入力されるフラグFに基づき、ジャム判定ユニット160においてジャムが発生したと判定されたか否かを判断し(S340)、ジャムが発生したと判定されていない(F=0である)場合には(S340でNo)、キャリッジ41が検査終了位置に到達したか否かを判断し(S350)、キャリッジ41が検査終了位置に到達していないと判断すると(S350でNo)、S330に移行して、キャリッジ41の搬送制御を継続する。そして、キャリッジ41が検査終了位置に到達したと判断すると(S350でYes)、キャリッジ41の搬送制御を終了して、当該起動時フィルタ更新処理を終了する。
【0128】
一方、ジャムが発生したと判定されると(S340でYes)、操作量演算ユニット170は、CRモータ51及びキャリッジ41を停止させるための処理を、キャリッジ41が停止するまで実行する(S360,S370)。具体的には、PWM信号生成回路190に入力する操作量Uをゼロに切り替えることにより、CRモータ51及びキャリッジ41を停止させることができる。
【0129】
そして、キャリッジ41が停止すると(S370でYes)、第一のローパスフィルタ135のカットオフ周波数ω1を、所定量Cを下げる方向に更新する、又は、第一のローパスフィルタ135の次数nを1加算する方向に更新することにより、第一のローパスフィルタ135の周波数特性を更新する(S380)。
【0130】
その後、操作量演算ユニット170は、キャリッジ41を検査開始位置に再配置する制御を行い(S390)、S330以降の処理を再度実行する。このようにして、ジャムが発生したと判定された場合には、ジャムが発生したと判定されなくなるまで、段階的に第一のローパスフィルタ135の周波数特性(カットオフ周波数ω1又はフィルタ次数n)を更新する。そして、このようなジャムの誤判定がなくなると、S350で肯定判断して、当該起動時フィルタ更新処理を終了する。即ち、初期の周波数特性では、反力推定値τの出力が高いものであるほど、カットオフ周波数ω1が低くなるように、又は、フィルタ次数nが増加するように、第一のローパスフィルタ135の周波数特性を更新する。
【0131】
以上、第二変形例のプリンタ装置1について説明したが、本変形例のプリンタ装置1においても、第一のローパスフィルタ135に対して、制御対象の機械的特性の経時変化やばらつきに応じた周波数特性の適切な更新を行うことができ、ジャムの誤判定を抑えて、信頼性の高いプリンタ装置1を構成することができる。また、本変形例によれば、ユーザから判定結果の正否を問い合せなくても、適切に第一のローパスフィルタ135の周波数特性を更新することができ、ユーザにとっては便利である。
【0132】
[その他の実施例]
以上に、変形例を含む本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、上記実施例では、第二の外乱オブザーバ180の出力により操作量U0を補正するプリンタ装置1について説明したが、第二の外乱オブザーバ180は必須の構成ではないので、プリンタ装置1には、これを設けなくてもよい。この場合、操作量演算ユニット170は、上記操作量U0を、操作量UとしてPWM信号生成回路190に入力することになる。また、差分信号を濾波する第一のローパスフィルタ135は、振動成分を減衰可能であれば、他の周波数特性を有するフィルタでもよい。
【0133】
また、本発明は、その適用をインクジェットプリンタに限定されるものではなく、モータにより物体の運動を制御する制御装置であって、物体が異物に接触する等、制御体対象に異常が発生する可能性のある種々の制御装置に適用することができる。ここで言う異常には、例えば、エンコーダスケールの汚れによるキャリッジの位置及び速度の検知異常や、キャリッジの摺動負荷の急変動など、制御対象に発生する想定していない異常が含まれる。この他、本発明は、フィードバック制御系だけでなく、フィードフォワード制御系等にも適用可能であるし、速度制御系だけでなく、位置制御系等にも適用することができる。
【0134】
[対応関係]
用語間の対応関係は、次の通りである。操作量演算ユニット170が実行するS110の処理は、演算手段によって実現される処理の一例に対応し、S120,S140の処理は、補正入力手段によって実現される処理の一例に対応し、S160の処理は、異常対応手段によって実現される処理の一例に対応する。また、CRモータ51とキャリッジ搬送機構40との組合せは、画像形成機構又は記録ユニット搬送機構の一例に対応する。
【0135】
この他、エンコーダ55及びエンコーダ信号処理ユニット110は、計測手段の一例に対応し、入力ユニット131,181は、逆モデル入力手段の一例に対応し、減算器133,183は、差分信号生成手段の一例に対応する。また、ジャム判定ユニット160は、判定手段の一例に対応する。そして、フィルタ更新処理及び起動時フィルタ更新処理は、更新手段によって実現される処理の一例に対応する。
【符号の説明】
【0136】
1…プリンタ装置、11…CPU、12…ROM、13…RAM、15…EEPROM、17…ユーザインタフェース、19…接続インタフェース、20…印字制御部、21…記録ヘッド、30…モータ制御部、31…CRモータ制御部、35…LFモータ制御部、40…キャリッジ搬送機構、41…キャリッジ、43…ベルト機構、51…CRモータ、23,53,73…駆動回路、55,75…エンコーダ、60…用紙搬送機構、61…ローラ、71…LFモータ、110…エンコーダ信号処理ユニット、130,180…外乱オブザーバ、131,181…入力ユニット、133,171,183…減算器、135,185…ローパスフィルタ、140…判定用反力推定ユニット、160…ジャム判定ユニット、170…操作量演算ユニット、173…比例制御器、175…加算器、190…PWM信号生成回路、410…溝、431…駆動プーリ、433…従動プーリ、435…ベルト、450,470…ガイドレール、551…エンコーダスケール、553…光学センサ
図1
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図9
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