(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物において、ゴム成分はジエン系ゴムであり、そのジエン系ゴムは天然ゴム及び変性共役ジエン系重合体ゴムを必ず含むようにする。天然ゴムを含有することにより低転がり抵抗性及びウェット性能を高いレベルで維持しながら耐摩耗性を改良することができる。特にゴム組成物の耐摩耗性を高めながら、優れた混合性・加工性を確保することができる。
【0012】
天然ゴムの配合量は、ジエン系ゴム100重量%中45重量%以上、好ましくは45〜70重量%にする。天然ゴムの配合量が45重量%未満であると、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性を高くする効果が必ずしも十分に得られない。天然ゴムとしては、タイヤ用ゴム組成物に通常用いられるものを使用するとよい。
【0013】
変性共役ジエン系重合体ゴムは、分子鎖の両末端に官能基を有するようにした溶液重合で製造した共役ジエン系重合体ゴムである。変性共役ジエン系重合体ゴムを配合することによりシリカとの親和性を高くし分散性を改善するため、シリカの作用効果を一層向上するので、低転がり抵抗性及びウェット性能を共に改良すると同時に耐摩耗性を改良することができる。
【0014】
本発明において、変性共役ジエン系重合体の骨格は、共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体とを共重合して得られた共重合体により構成される。共役ジエン系単量体としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが例示される。また芳香族ビニル単量体としては、例えばスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、tert−ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4−ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N−ジメチルアミノエチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0015】
骨格となる共役ジエン系重合体は、その末端がイソプレン単位ブロックによって構成されることが好ましい。末端がイソプレン単位ブロックにより構成されることにより、その末端を変性し、シリカを配合したときに、変性共役ジエン系重合体とシリカとの親和性が良好となり、低発熱性、ウェット性能が良好となる。したがって、重合体を構成する共役ジエン単量体単位がイソプレン単位以外の共役ジエンを含む場合には、活性共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基を有する化合物を添加する前、あるいはこれら化合物を分けて添加する間に、活性末端を有する重合体を含有する溶液に、イソプレンを添加することにより、その重合体末端にイソプレン単位ブロックを導入することが好ましい。
【0016】
本発明において、共役ジエン系重合体は、上述した共役ジエン系単量体及び芳香族ビニル単量体を、炭化水素溶媒中で有機活性金属化合物を開始剤として共重合して調製する。炭化水素溶媒としては、通常使用される溶媒であればよく、例えばシクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン等が例示される。
【0017】
使用する有機活性金属触媒としては、有機アルカリ金属化合物が好ましく使用され、例えばn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼンなどの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機カリウム化合物が挙げられる。また、3,3−(N,N−ジエメチルアミノ)−1−プロピルリチウム、3−(N,N−ジエチルアミノ)−1−プロピルリチウム、3−(N,N−ジプロピルアミノ)−1−プロピルリチウム、3−モルホリノ−1−プロピルリチウム、3−イミダゾール−1−プロピルリチウム及びこれらをブタジエン、イソプレン又はスチレン1〜10ユニットにより鎖延長した有機リチウム化合物なども使用することができる。
【0018】
また、重合反応において、芳香族ビニル単量体を共役ジエン系単量体とランダムに共重合する目的で、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラハイドロフラン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン等のエーテル類、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のアミン類等の非プロトン性極性化合物を添加することも実施可能である。
【0019】
本発明において、共役ジエン系単量体及び芳香族ビニル単量体を共重合して得られた活性共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、反応可能な官能基を有する化合物を少なくとも1種結合させることにより、末端変性基を生成する。ここで、活性共役ジエン系重合体鎖の活性末端に反応可能な官能基を有する化合物は、少なくとも一つの活性共役ジエン系重合体鎖と結合すればよく、一つの化合物に一つ以上の活性共役ジエン系重合体鎖が結合することができる。すなわち、本発明で使用する変性共役ジエン系重合体ゴムは、共役ジエン系重合体の両末端に変性基を有した変性ゴム、任意にその変性基が1以上の他の共役ジエン系重合体と結合した変性ゴム及びこれら複数の変性ゴムの混合物を含むことができる。また、活性共役ジエン系重合体鎖の活性末端とこの活性末端に反応可能な官能基を有する化合物との反応は、一段或いは多段に反応させることができる。また同一或いは異なる化合物を、逐次的に反応させることができる。
【0028】
後述する一般式(I)〜(III)で表されるポリオルガノシロキサン化合物に、ハロゲン及び/又はアルコキシ基を含むケイ素化合物を組合わせることができる。ハロゲン及び/又はアルコキシ基を含むケイ素化合物としては、下記一般式(IV)で表される化合物が好ましく、この化合物一分子に複数の活性共役ジエン系重合体鎖の結合が容易になる。
【化4】
(式(IV)において、X
1及びX
2はハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。p及びqは、それぞれ独立に0〜3の整数であり、式(IV)で表わされる化合物におけるハロゲン原子及び炭素数1〜20のアルコキシ基の数の合計は5以上である。R
1及びR
2は、それぞれ炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。nは、0〜20の整数であり、A
1及びA
2は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜20の2価の炭化水素である。A
3は、式−(SiX
3rR
32-r)
m−、又は−NR
4−、又は−N(−A
4−SiX
4SR
53-S)−で表わされる2価の基である。なお、X
3,X
4は、ハロゲン原子または炭素数1〜20のアルコキシ基である。R
3,R
5は、炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。R
4は、水素原子または炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。A
4は、単結合または炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。rは0〜2の整数であり、mは0〜20の整数である。sは、0〜3の整数である。)
【0029】
一般式(IV)で表される化合物としては、例えば、ヘキサクロロジシラン、ビス(トリクロロシリル)メタン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、1,3−ビス(トリクロロシリル)プロパン、1,4−ビス(トリクロロシリル)ブタン、1,5−ビス(トリクロロシリル)ペンタン、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサン等のハロゲン化ケイ素化合物;ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ブタン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、ビス(トリエトキシシリル)ヘプタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリル)シクロヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)シクロヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリル)オクタン、ビス(トリエトキシシリル)オクタン、ビス(トリメトキシシリル)ノナン、ビス(トリエトキシシリル)ノナン、ビス(トリメトキシシリル)エチレン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン、ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリルエチル)ベンゼン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エタン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)エタン等のアルコキシシラン化合物;ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)エチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)プロピルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)プロピルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ブチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ブチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)フェニルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)フェニルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ベンジルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ベンジルアミン、ビス(トリメトキシシリルメチル)メチルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)メチルアミン、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)メチルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)メチルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)プロピルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)プロピルアミン等のアミノ基を含むアルコキシシラン化合物;トリス(トリメトキシシリルメチル)アミン、トリス(2−トリエトキシシリルエチル)アミン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン等のアミノ基を含むアルコキシシラン化合物;等を例示することができる。
【0030】
ポリオルガノシロキサン化合
物は、下記一般式(I)〜(III)で表される化合物
である。すなわち、活性共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応可能な官能基を有する化合物は、これらのポリオルガノシロキサン化合物から選ばれる少なくとも1種類を含むとよく、複数の種類を組み合わせてもよい。またこれらのポリオルガノシロキサン化合物と、活性末端と反応可能な官能基を有する他の化合物、例えば上述した式(IV)で表される化合物とを組み合わせてもよい。
【化5】
(上記式(I)において、R
1〜R
8は、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違してもよい。X
1およびX
4は、活性共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応する官能基を有する基、または炭素数1〜6のアルキル基もしくは炭素数6〜12のアリール基であり、X
1およびX
4は互いに同一であっても相違してもよい。X
2は、活性共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応する官能基を有する基である。X
3は、2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、X
3の一部は2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基から導かれる基であってもよい。mは3〜200の整数、nは0〜200の整数、kは0〜200の整数である。)
【化6】
(上記式(II)において、R
9〜R
16は、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違してもよい。X
5〜X
8は、活性共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応する官能基を有する基である。)
【化7】
(上記式(III)において、R
17〜R
19は、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違してもよい。X
9〜X
11は、活性共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応する官能基を有する基である。)
【0031】
上記一般式(I)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、R
1〜R
8、X
1およびX
4を構成する炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基などが挙げられる。これらのアルキル基およびアリール基の中では、メチル基が特に好ましい。
【0032】
一般式(I)のポリオルガノシロキサンにおいて、X
1、X
2およびX
4を構成する重合体鎖の活性末端と反応する官能基を有する基としては、炭素数1〜5のアルコキシル基、2−ピロリドニル基を含有する炭化水素基、およびエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基が好ましい。
【0033】
X
1、X
2およびX
4を構成する炭素数1〜5のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。なかでも、メトキシ基が好ましい。X
1、X
2およびX
4の少なくとも一つが炭素数1〜5のアルコキシル基の場合、活性共役ジエン系重合体鎖の活性末端にアルコキシル基を有するポリオルガノシロキサンを反応させると、ケイ素原子とアルコキシル基の酸素原子との結合が開裂して、そのケイ素原子に活性共役ジエン系重合体鎖が直接結合して単結合を形成する。
【0034】
X
1、X
2およびX
4を構成する2−ピロリドニル基を含有する炭化水素基としては、下記一般式(V)で表される基が好ましく挙げられる。
【化8】
(式(V)中、jは2〜10の整数である。特にjは2であることが好ましい。)
【0035】
このようにX
1,X
2及びX
4の少なくとも一つが2−ピロリドニル基を含有する炭化水素基を含むポリオルガノシロキサンを、活性共役ジエン系重合体鎖の活性末端に反応させると、2−ピロリドニル基を構成するカルボニル基の炭素−酸素結合が開裂して、その炭素原子に重合体鎖が結合した構造を形成する。
【0036】
X
1、X
2およびX
4を構成するエポキシ基を有する炭素数4〜12の基としては、下記一般式(VI)で表される基が好ましく挙げられる。
一般式(VI): ZYE
【0037】
上記式(VI)中、Zは炭素数1〜10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Yはメチレン基、硫黄原子または酸素原子であり、Eはエポキシ基を有する炭素数2〜10の炭化水素基である。これらの中でも、Yが酸素原子であるものが好ましく、Yが酸素原子かつEがグリシジル基であるものがより好ましく、Zが炭素数3のアルキレン基、Yが酸素原子かつEがグリシジル基であるものが特に好ましい。
【0038】
一般式(I)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X
1、X
2およびX
4の少なくとも一つがエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基の場合、活性共役ジエン系重合体鎖の活性末端にポリオルガノシロキサンを反応させると、エポキシ環を構成する炭素−酸素結合が開裂して、その炭素原子に重合体鎖が結合した構造を形成する。
【0039】
一般式(I)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X
1およびX
4としては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基または炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、また、X
2としては、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基が好ましい。
【0040】
一般式(I)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X
3は、2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基である。2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基としては、下記一般式(VII)で表される基が好ましい。
【化9】
【0041】
式(VII)中、tは2〜20の整数であり、R
1は炭素数2〜10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R
3は水素原子またはメチル基であり、R
2は炭素数1〜10のアルコキシル基またはアリーロキシ基である。これらの中でも、tが2〜8の整数であり、R
1が炭素数3のアルキレン基であり、R
3が水素原子であり、かつR
2がメトキシ基であるものが好ましい。
【0042】
上記一般式(II)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、R
9〜R
16は炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X
5〜X
8は、重合体鎖の活性末端と反応する官能基を有する基である。
【0043】
上記一般式(III)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、R
17〜R
19は炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X
9〜X
11は、重合体鎖の活性末端と反応する官能基を有する基である。sは1〜18の整数である。
【0044】
上記一般式(II)および上記一般式(III)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、ならびに重合体鎖の活性末端と反応する官能基を有する基は、一般式(I)のポリオルガノシロキサンについて説明したものと同様である。
【0045】
さらに、上記反応により生成した末端変性基は、シリカとの相互作用を有する官能基を有する。このシリカとの相互作用を有する官能基は、上述した化合物の構造に含まれた官能基でよい。また、上記化合物と活性末端との反応により生じ得た官能基でもよい。シリカとの相互作用を有する官能基としては、特に制限されるものではないが、例えばアルコキシシリル基、ヒドロキシル基(オルガノシロキサン構造を含む)、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、エポキシ基、アミド其、チオール基、エーテル基等が例示される。なかでもヒドロキシル基(オルガノシロキサン構造を含む)基が好ましい。このように末端変性基がシリカとの相互作用を有する官能基を含むことにより、シリカとの親和性をより高くし、分散性を大幅に改良することができる。
【0046】
本発明では、変性共役ジエン系重合体ゴムにおける末端変性基の濃度は、変性共役ジエン系重合体ゴムの重量平均分子量(Mw)との関係で決められる。変性共役ジエン系重合体ゴムの重量平均分子量は60万〜100万、好ましくは65〜85万である。変性共役ジエン系重合体ゴムの重量平均分子量が60万未満であると、変性共役ジエン系重合体ゴム末端の変性基濃度が高くなり、ゴム組成物中のシリカの分散性は良化するが、重合体自身の分子量が低いために、強度、剛性を改良する効果が十分に得られず耐摩耗性が不足し、また粘弾性特性の改良幅が小さくなってしまうことがある。また変性共役ジエン系重合体ゴムの重量平均分子量が100万を超えると、変性共役ジエン系重合体ゴム末端の変性基濃度が低くなりシリカとの親和性が不足し、分散性が悪化するため転がり抵抗を低減する効果が不足したり、ウェット性能が不足したりする。また同時にゴム組成物の剛性及び強度が低下する。なお変性共役ジエン系重合体ゴムの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
【0047】
本発明で使用する変性共役ジエン系重合体ゴムは、芳香族ビニル単位含有量が38〜48重量%、好ましくは40〜45重量%である。変性共役ジエン系重合体ゴムの芳香族ビニル単位含有量をこのような範囲内にすることにより、ゴム組成物の剛性及び強度を高くして空気入りタイヤにしたときのウェット性能及び耐摩耗性をより高くすることができる。また変性共役ジエン系重合体ゴム以外の他のジエン系ゴムを配合するとき、変性共役ジエン系重合体ゴムが他のジエン系ゴムに対して微細な相分離形態を形成する。このため、変性共役ジエン系重合体ゴムがシリカ粒子の近くに局在化するようになり、その末端変性基がシリカに対して効率的に作用することにより親和性を一層高くし、シリカの分散性を良好にすることができる。変性共役ジエン系重合体ゴムの芳香族ビニル単位含有量が38重量%未満であると、他のジエン系ゴムに対して微細な相分離形態を形成する作用が十分に得られない。またゴム組成物の剛性及び強度を高くする効果が十分に得られない。また変性共役ジエン系重合体ゴムの芳香族ビニル単位含有量が48重量%を超えると、共役ジエン系重合体ゴムのガラス転移温度(Tg)が上昇し、粘弾性特性のバランスが悪くなり、発熱性を低減する効果が得られにくくなる。なお変性共役ジエン系重合体ゴムの芳香族ビニル単位含有量は赤外分光分析(ハンプトン法)により測定するものとする。
【0048】
本発明では、変性共役ジエン系重合体ゴムのビニル単位含有量は20〜35%、好ましくは26〜34%にする。変性共役ジエン系重合体ゴムのビニル単位含有量を20〜35%にすることにより、変性共役ジエン系重合体ゴムのガラス転移温度(Tg)を適正化することができる。また、他のジエン系ゴムに対して形成された変性共役ジエン系重合体ゴムの微細な相分離形態を安定化することができる。変性共役ジエン系重合体ゴムのビニル単位含有量が20%未満であると、変性共役ジエン系重合体ゴムのTgが低くなり、ウェット性能の指標である0℃における動的粘弾性特性の損失正接(tanδ)が低下してしまう。また、変性共役ジエン系重合体ゴムの微細な相分離形態を安定化することができない。また変性共役ジエン系重合体ゴムのビニル単位含有量が35%を超えると加硫速度が低下したり、強度や剛性が低下したりする可能性がある。なお変性共役ジエン系重合体ゴムのビニル単位含有量は赤外分光分析(ハンプトン法)により測定するものとする。
【0049】
変性共役ジエン系重合体ゴムのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−22〜−32℃にするとよい。変性共役ジエン系重合体ゴムのTgを−22〜−32℃にすることにより、ウェット性能を確保すると共に、転がり抵抗を低減することができる。変性共役ジエン系重合体ゴムのTgが−22℃より高いと粘弾性特性のバランスが悪くなり、発熱性を低減する効果が得られにくくなる。また変性共役ジエン系重合体ゴムのTgが−32℃より低いと変性共役ジエン系重合体ゴムのTgが低くなり、湿潤路でのグリップの指標である0℃における動的粘弾性特性の損失正接(tanδ)が低下する虞がある。変性共役ジエン系重合体ゴムのTgは、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度とする。また、変性共役ジエン系重合体ゴムが油展品であるときは、油展成分(オイル)を含まない状態における変性共役ジエン系重合体ゴムのガラス転移温度とする。
【0050】
変性共役ジエン系重合体ゴムは、油展することによりゴム組成物の成形加工性を良好にすることができる。油展量は特に制限されるものではないが、変性共役ジエン系重合体ゴム100重量部に対し、好ましくは25重量部以下にするとよい。変性共役ジエン系重合体ゴムの油展量が25重量部を超えると、ゴム組成物にオイル、軟化剤、粘着性付与剤等を配合するとき組成設計の自由度が小さくなる。
【0051】
本発明において、変性共役ジエン系重合体ゴムの含有量は、ジエン系ゴム100重量%中、1重量%以上30重量%未満、好ましくは5〜30重量%である。変性共役ジエン系重合体ゴムの含有量がジエン系ゴム中の1重量%未満であると、シリカとの親和性が悪化し、シリカの分散性を良好にすることができない。また変性共役ジエン系重合体ゴムの含有量がジエン系ゴム中の30重量%以上になると、耐摩耗性が悪化する。
【0052】
本発明において、ゴム成分として天然ゴム及び変性共役ジエン系重合体ゴム以外の他のジエン系ゴムを配合することができる。他のジエン系ゴムとしては、例えばイソプレンゴム、ブタジエンゴム、末端変性していない溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等を例示することができる。好ましくはイソプレンゴム、ブタジエンゴム、乳化重合スチレンブタジエンゴムがよい。このようなジエン系ゴムは、単独又は複数のブレンドとして使用することができる。他のジエン系ゴムの含有量は、ジエン系ゴム100重量%中54重量%以下、好ましくは25重量%以下にするとよい。
【0053】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、粘着付与樹脂を配合することにより低転がり抵抗性及び耐摩耗性を維持しながらウェット性能を一層向上することができる。特に湿潤路面における操縦安定性を一層向上することができる。
【0054】
粘着性付与樹脂の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し好ましくは1〜50重量部、より好ましくは1〜45重量部にするとよい。粘着性付与樹脂の配合量が1重量部未満であると、ウェットグリップ性能を改良する効果が十分に得られない。粘着性付与樹脂の配合量が50重量部を超えると、耐摩耗性及び低転がり抵抗性が悪化する。また、ゴム組成物の粘着性が増大し、成形ロールに密着するなど成形加工性及び取り扱い性が悪化する。
【0055】
粘着性付与樹脂の軟化点は、特に限定されるものではないが、好ましくは130〜170℃、より好ましくは140〜165℃であるとよい。粘着性付与樹脂の軟化点が130℃未満であると、ウェット性能を改良する効果が十分に得られないことがある。また、粘着性付与樹脂の軟化点が170℃を超えると、ジエン系ゴムに対する分散性が悪化し、ウェット路面でのグリップ性能が低下すると共に、耐摩耗性及びゴム強度が低下することがある。なお、粘着性付与樹脂の軟化点はJIS K6220−1(環球法)に準拠し測定したものとする。
【0056】
粘着性付与樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、特に限定されるものではないが、上述した変性共役ジエン系重合体ゴムのTgより50〜110℃高いことが好ましい。粘着性付与樹脂のTgが変性共役ジエン系重合体ゴムのTgより好ましくは50℃以上高くすることにより、0℃のtanδが増加しウェットグリップ性能を向上することができる。また、粘着性付与樹脂のTgの上限を変性共役ジエン系重合体ゴムのTgより110℃を超えて高くすると、発熱性が悪化してしまう。なお、粘着性付与樹脂のTgは、上述した変性共役ジエン系重合体ゴムのTgと同じ方法で測定するものとする。
【0057】
粘着性付与樹脂の種類としては、特に制限されるものではなく、例えば、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂などの天然樹脂、石油系樹脂、石炭系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂などの合成樹脂及びこれらの変性物が例示される。なかでもテルペン系樹脂及び/又は石油系樹脂が好ましく、特にテルペン系樹脂の変性物が好ましい。
【0058】
テルペン系樹脂としては、例えばα−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、リモネン樹脂、水添リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペンスチレン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が好適に挙げられる。なかでも芳香族変性テルペン樹脂が好ましく、例えばα−ピネン、βピネン、ジペンテン、リモネンなどのテルペンとスチレン、フェノール、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族化合物とを重合させて得られる芳香族変性テルペン樹脂等が例示される。
【0059】
石油系樹脂としては、芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂が挙げられ、例えばC
5系石油樹脂(イソプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエン、メチルブテン、ペンテンなどの留分を重合した脂肪族系石油樹脂)、C
9系石油樹脂(α−メチルスチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエンなどの留分を重合した芳香族系石油樹脂)、C
5C
9共重合石油樹脂などが例示される。
【0060】
本発明において、シリカ及びカーボンブラックを含む充填剤を必ず含むようにする。充填剤の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し35〜140重量部、好ましくは40〜135重量部にする。充填剤の配合量をこのような範囲にすることにより、ゴム組成物の低転がり抵抗性及びウェット性能と、耐摩耗性とをより高いレベルでバランスさせることができる。充填剤の配合量が35重量部未満であると、ウェット性能及び耐摩耗性を確保することができない。充填剤の配合量が140重量部を超えると、低転がり抵抗性が悪化する。
【0061】
またシリカ及びカーボンブラックを含む充填剤100重量%中のシリカの含有量は50重量%以上、好ましくは70〜100重量%にする。充填剤中のシリカの含有量をこのような範囲にすることにより、ゴム組成物の低転がり抵抗、ウェット性能及び耐摩耗性をより高いレベルでバランスさせることができる。また、変性共役ジエン系重合体ゴムの配合により、シリカとの親和性を高くし分散性を改善するため、シリカ配合の効果を一層向上する。
【0062】
シリカとしては、タイヤトレッド用ゴム組成物に通常使用されるシリカ、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカあるいは表面処理シリカなどを使用することができる。シリカは、市販されているものの中から適宜選択して使用することができる。また通常の製造方法により得られたシリカを使用することができる。
【0063】
またシリカの粒子性状は、窒素吸着比表面積(N
2SA)が好ましくは194〜225m
2/gであるとよい。なおシリカのN
2SAはJIS K6217−2に準拠して求めるものとする。
【0064】
従来、シリカが、小粒子径で高比表面積であると、粒子表面間の相互作用が強くジエン系ゴムとの親和性が乏しいため、単にジエン系ゴムに配合すると分散性を良好にすることが困難であり、tanδなどの動的粘弾性特性を改質する効果が十分に得られなかった。また従来の末端変性スチレンブタジエンゴムと共に配合しても高比表面積のシリカの分散性は必ずしも十分に改良されたとは言えなかった。
【0065】
これに対し本発明では、上述した変性共役ジエン系重合体ゴムと共に配合することにより、高比表面積のシリカを配合する場合でも、シリカの分散性を改良することができる。このため、変性共役ジエン系重合体ゴム及び高比表面積のシリカがゴム組成物のtanδを共に改質し、さらなる相乗的効果を得ることができる。
【0066】
またタイヤトレッド用ゴム組成物がカーボンブラックを含むことにより、ゴム組成物の強度及び耐摩耗性を向上することができる。カーボンブラックの配合量は、充填剤の配合量がジエン系ゴム100重量部に対し35〜140重量部であること及びカーボンブラックの比率の上限が50重量%であることから決められる。
【0067】
本発明において、シリカ及びカーボンブラック以外の他の充填剤を配合することができる。他の充填剤としては、例えばクレー、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等を例示することができる。他の充填剤を配合することによりゴム強度を高くすることができる。他の充填剤の含有量は、充填剤100重量%中50重量%以下、好ましくは0〜20重量%にするとよい。他の充填剤の含有量が50重量%を超えると転がり抵抗が悪化する。
【0068】
本発明のゴム組成物において、シリカと共にシランカップリング剤を配合することが好ましく、シリカの分散性を向上しジエン系ゴムとの補強性をより高くすることができる。シランカップリング剤は、シリカ配合量に対して4〜18重量%、より好ましくは4〜15重量%配合するとよい。シランカップリング剤の配合量がシリカ重量の4重量%未満の場合、シリカの分散性を向上する効果が十分に得られない。また、シランカップリング剤が18重量%を超えると、シランカップリング剤同士が重合してしまい、所望の効果を得ることができなくなる。
【0069】
シランカップリング剤としては、特に制限されるものではないが、好ましくは硫黄原子を含むシランカップリング剤、より好ましくはメルカプト基(SH)を有するシランカップリング剤にするとよい。硫黄原子、とりわけメルカプト基を有するシランカップリング剤はシリカとの親和性が高くジエン系ゴムへの分散性を向上する。
【0070】
硫黄原子を含むシランカップリング剤としては、例えばビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、(CH
3CH
2O)
3Si(CH
2)
3S−CO−(CH
2)
6CH
3等を例示することができる。メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、例えば下記一般式(IX)で表されるメルカプトシラン化合物、下記一般式(X)及び(XI)で表わされるセグメントを有するメルカプトシラン化合物が好ましい。
【化10】
(式(IX)中、R
22は炭素数1〜4のアルコキシ基、R
23はメチレン又は炭素数2〜4のアルキレン基、nは1,2又は3の整数、R
21は炭素数1〜4のアルキル基或いは式−O−(R
24−O)p−R
25で表されるアルキルポリエーテル基であり、R
24は炭素数2〜4のアルキレン基、R
25は炭素数10〜16のアルキル基、pは2〜15の数である。)
【化11】
(式(X)中、R
26は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基、アリル基又は炭素数2〜30のアルケニル基である。)
【化12】
(式(X)中、R
27は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基、アリル基又は炭素数2〜30のアルケニル基である。)
【0071】
上記記一般式(IX)で表されるメルカプトシラン化合物において、R
22は炭素数1〜4のアルコキシ基であり、好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。なお、(3−n)が2又は3のとき、R
22は互いに独立であり、同じであっても異なっていてもよい。
【0072】
R
23はメチレン又は炭素数2〜4のアルキレン基であり、好ましくはトリメチレン基(―CH
2CH
2CH
2―)である。
【0073】
R
21は、炭素数1〜4のアルキル基又はアルキルポリエーテル基である。アルキル基は好ましくはメチル基又はエチル基であるとよい。なお、nが2又は3のとき、R
21は互いに独立であり、同じであっても異なっていてもよい。R
21が示すアルキルポリエーテル基は式−O−(R
24−O)p−R
25で表される。ポリエーテル部分(R
24−O)pにおいて、R
24は炭素数2〜4のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基、トリメチレン基(―CH
2CH
2CH
2―)、プロピレン基である。R
24は、一つの種類でも複数の種類でもよい。pは、エーテル部分の繰り返し数の平均値であり、2〜15の数、好ましくは3〜10、より好ましくは3.5〜8の数である。R
25は炭素数10〜16、好ましくは11〜15のアルキル基である。アルキルポリエーテル基は複数種の混合物であってもよく、例えば―O―(CH
2CH
2−O)
5−(CH
2)
10CH
3、―O―(CH
2CH
2−O)
5−(CH
2)
11CH
3、―O―(CH
2CH
2−O)
5−(CH
2)
12CH
3、―O―(CH
2CH
2−O)
5−(CH
2)
13CH
3、―O―(CH
2CH
2−O)
5−(CH
2)
14CH
3、―O―(CH
2CH
2−O)
3−(CH
2)
12CH
3、―O―(CH
2CH
2−O)
4−(CH
2)
12CH
3、―O―(CH
2CH
2−O)
6−(CH
2)
12CH
3、―O―(CH
2CH
2−O)
7−(CH
2)
12CH
3等が例示される。
【0074】
本発明で好適に使用される上記式(IX)で表されるメルカプトシラン化合物としては、例えば3−メルカプトプロピル(トリメトキシシラン)、3−メルカプトプロピル(トリエトキシシラン)、3−メルカプトプロピル(ジエトキシメトキシシラン)、3−メルカプトプロピル(トリプロポキシシラン)、3−メルカプトプロピル(ジプロポキシメトキシシラン)、3−メルカプトプロピル(トリブトキシシラン)、3−メルカプトプロピル(ジブトキシメトキシシラン)、3−メルカプトプロピル(ジメトキシメチルシラン)、3−メルカプトプロピル(メトキシジメチルシラン)、3−メルカプトプロピル(ジエトキシメチルシラン)、3−メルカプトプロピル(エトキシジメチルシラン)、3−メルカプトプロピル(ジプロポキシメチルシラン)、3−メルカプトプロピル(プロポキシジメチルシラン)、3−メルカプトプロピル(ジイソプロポキシメチルシラン)、3−メルカプトプロピル(イソプロポキシジメチルシラン)、3−メルカプトプロピル(ジブトキシメチルシラン)、3−メルカプトプロピル(ブトキシジメチルシラン)、2−メルカプトエチル(トリメトキシシラン)、2−メルカプトエチル(トリエトキシシラン)、メルカプトメチル(トリメトキシシラン)、メルカプトメチル(トリエトキシシラン)、3−メルカプトブチル(トリメトキシシラン)、3−メルカプトブチル(トリエトキシシラン)、[C
11H
23O(CH
2CH
2O)
5](CH
2CH
2O)
2Si(CH
2)
3SH、
[C
12H
25O(CH
2CH
2O)
3](CH
2CH
2O)
2Si(CH
2)
3SH、
[C
12H
25O(CH
2CH
2O)
4](CH
2CH
2O)
2Si(CH
2)
3SH、
[C
12H
25O(CH
2CH
2O)
5](CH
2CH
2O)
2Si(CH
2)
3SH、
[C
12H
25O(CH
2CH
2O)
6](CH
2CH
2O)
2Si(CH
2)
3SH、
[C
13H
27O(CH
2CH
2O)
3](CH
2CH
2O)
2Si(CH
2)
3SH、
[C
13H
27O(CH
2CH
2O)
4](CH
2CH
2O)
2Si(CH
2)
3SH、
[C
13H
27O(CH
2CH
2O)
5](CH
2CH
2O)
2Si(CH
2)
3SH、
[C
13H
27O(CH
2CH
2O)
6](CH
2CH
2O)
2Si(CH
2)
3SH、
[C
14H
29O(CH
2CH
2O)
3](CH
2CH
2O)
2Si(CH
2)
3SH、
[C
14H
29O(CH
2CH
2O)
4](CH
2CH
2O)
2Si(CH
2)
3SH、
[C
14H
29O(CH
2CH
2O)
5](CH
2CH
2O)
2Si(CH
2)
3SH、
[C
14H
29O(CH
2CH
2O)
6](CH
2CH
2O)
2Si(CH
2)
3SH、
[C
15H
31O(CH
2CH
2O)
5](CH
2CH
2O)
2Si(CH
2)
3SH、
[C
11H
23O(CH
2CH
2O)
5]
2(CH
2CH
2O)Si(CH
2)
3SH、
[C
12H
25O(CH
2CH
2O)
3]
2(CH
2CH
2O)Si(CH
2)
3SH、
[C
12H
25O(CH
2CH
2O)
4]
2(CH
2CH
2O)Si(CH
2)
3SH、
[C
12H
25O(CH
2CH
2O)
5]
2(CH
2CH
2O)Si(CH
2)
3SH、
[C
12H
25O(CH
2CH
2O)
6]
2(CH
2CH
2O)Si(CH
2)
3SH、
[C
13H
27O(CH
2CH
2O)
3]
2(CH
2CH
2O)Si(CH
2)
3SH、
[C
13H
27O(CH
2CH
2O)
4]
2(CH
2CH
2O)Si(CH
2)
3SH、
[C
13H
27O(CH
2CH
2O)
5]
2(CH
2CH
2O)Si(CH
2)
3SH、
[C
13H
27O(CH
2CH
2O)
6]
2(CH
2CH
2O)Si(CH
2)
3SH、
[C
14H
29O(CH
2CH
2O)
3]
2(CH
2CH
2O)Si(CH
2)
3SH、
[C
14H
29O(CH
2CH
2O)
4]
2(CH
2CH
2O)Si(CH
2)
3SH、
[C
14H
29O(CH
2CH
2O)
5]
2(CH
2CH
2O)Si(CH
2)
3SH、
[C
14H
29O(CH
2CH
2O)
6]
2(CH
2CH
2O)Si(CH
2)
3SH、
[C
15H
31O(CH
2CH
2O)
5]
2(CH
2CH
2O)Si(CH
2)
3SH、等が例示される。なかでも3−メルカプトプロピル(トリメトキシシラン)、3−メルカプトプロピル(トリエトキシシラン)、[C
13H
27O−(CH
2CH
2O)
5]
2(CH
2CH
2O)Si(CH
2)
3SH、[C
13H
27O−(CH
2CH
2O)
5](CH
2CH
2O)
2Si(CH
2)
3SHが好ましい。
【0075】
上記一般式(X)及び(XI)で表わされるセグメントを有するメルカプトシラン化合物において、R
26及びR
27は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基、アリル基又は炭素数2〜30のアルケニル基である。R
26及びR
27は、好ましくはエチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基を例示することができる。
【0076】
上記式(X)で表わされるセグメントの含有率は好ましくは20〜99モル%、好ましくは30〜95モル%である。式(X)のセグメントの含有率が20モル%未満では、低転がり抵抗、ウェット性能及び耐摩耗性のバランスをとることが困難になる。また、式(X)のセグメントの含有率が99モル%を超えると、シランカップリング剤を介したゴムとシリカとの化学的な結合が充分に生じず、低転がり抵抗、ウェット性能及び耐摩耗性が悪化する。
【0077】
上記式(XI)で表わされるセグメントの含有率は好ましくは1〜80モル%、好ましくは5〜70モル%である。(XI)で表わされるセグメントの含有率が1モル%未満では、シランカップリング剤を介したゴムとシリカとの化学的な結合が十分に生じず、低転がり抵抗、ウェット性能及び耐摩耗性が悪化する。(XI)で表わされるセグメントの含有率が80モル%を超えると、加工性と低転がり抵抗、ウェット性能及び耐摩耗性などの性能とのバランスをとることが困難になる。
【0078】
本発明において、好適に使用される一般式(X)及び(XI)で表わされるセグメントを有するメルカプトシラン化合物としては、たとえば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のNXT−Z30(R
26,R
27:エチル基、セグメント(X)が70モル%、セグメント(XI)が30モル%、メルカプト基の含有量:4%)、NXT−Z45(R
26,R
27:エチル基、セグメント(X)が55モル%、セグメント(XI)が45モル%、メルカプト基の含有量:6%)、NXT−Z60(R
26,R
27:エチル基、セグメント(X)が40モル%、セグメント(XI)が60モル%、メルカプト基の含有量:9%)などがあげられる。
【0079】
タイヤトレッド用ゴム組成物には、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、加工助剤、液状ポリマー、熱硬化性樹脂などのタイヤトレッド用ゴム組成物に一般的に使用される各種配合剤を配合することができる。このような配合剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの配合剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。タイヤトレッド用ゴム組成物は、公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0080】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、空気入りタイヤに好適に使用することができる。このゴム組成物をトレッド部に使用した空気入りタイヤは、低転がり抵抗性、ウェット性能及び耐摩耗性を従来レベル以上に向上することができる。
【0081】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0082】
表3に示す配合剤を共通配合とし、表1〜3に示す配合からなる22種類のタイヤトレッド用ゴム組成物(実施例1〜10、比較例1〜22)を、硫黄、加硫促進剤を除く成分を1.8Lの密閉型ミキサーで160℃、5分間混練し放出したマスターバッチに、硫黄、加硫促進剤を加えてオープンロールで混練することにより調製した。
【0083】
なお、表1〜3中、変性S−SBR−1〜変性S−SBR−3,変性S−SBR−6−SBR−9,変性S−SBR−5及びS−SBRがそれぞれ25重量部、25重量部、20重量部及び37.5重量部の油展オイルを含むため、配合量の欄に実際の配合量と共に、括弧内に油展オイルを除いたそれぞれのSBR正味の配合量を示した。また、表4に記載した配合剤の量は、表1〜3に記載したジエン系ゴム100重量部(正味のゴム量)に対する重量部で示した。
【0084】
得られた22種類のタイヤトレッド用ゴム組成物を所定形状の金型中で、160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴムサンプルを作製し、下記に示す方法で転がり抵抗(60℃のtanδ)及び耐摩耗性を測定した。
【0085】
転がり抵抗(60℃におけるtanδ)
得られた加硫ゴムサンプルの転がり抵抗を、その指標であることが知られている損失正接tanδ(60℃)により評価した。tanδ(60℃)は、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度60℃の条件下で測定した。得られた結果は比較例1におけるtanδ(60℃)の逆数を100とする指数として、表1〜3の「転がり抵抗」の欄に示した。この「転がり抵抗」の指数が大きいほどtanδ(60℃)が小さく低発熱であり、空気入りタイヤにしたとき転がり抵抗が小さく燃費性能が優れることを意味する。
【0086】
耐摩耗性
得られた加硫ゴムサンプルのランボーン摩耗を、JIS K6264−2に準拠して、岩本製作所社製ランボーン摩耗試験機を使用し、温度20℃、荷重15N、スリップ率50%の条件で測定した。得られた結果は、比較例1を100とする指数として、表1〜3の「耐摩耗性」の欄に示した。この指数が大きいほど耐摩耗性が優れることを意味する。
【0087】
次に、タイヤ構造が
図1に示す構成で、タイヤサイズが225/50R17の空気入りタイヤを、上述した22種類のタイヤトレッド用ゴム組成物をトレッド部に使用して4本ずつ製作した。得られた22種類の空気入りタイヤのウェット性能を下記に示す方法により評価した。
【0088】
次に、タイヤサイズが225/50R17の空気入りタイヤを、上述した22種類のタイヤトレッド用ゴム組成物をトレッド部に使用して4本ずつ製作した。得られた22種類の空気入りタイヤの湿潤路面における制動性能(ウェット性能)を下記に示す方法により評価した。
【0089】
湿潤路面における制動性能(ウェット性能)
得られた空気入りタイヤをリムサイズ7×Jのホイールに組付け、国産2.5リットルクラスの試験車両に装着し、空気圧230kPaの条件で湿潤路面からなる1周2.6kmのテストコースを実車走行させ、そのときの制動性能を専門パネラー3名による感応評価により採点した。得られた結果は比較例1を100とする指数として、表1〜3の「ウェット性能」の欄に示した。この指数が大きいほど湿潤路面におけるウェット制動性能が優れていることを意味する。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
なお、表1〜3において使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、RSS#3
・E−SBR:乳化重合スチレンブタジエンゴム、芳香族ビニル単位含有量が23.5重量%、ビニル単位含有量が23.5重量%、重量平均分子量(Mw)が45万、日本ゼオン社製Nipol 1502、非油展品
・変性S−SBR1:前記一般式(I)の構造を有するポリオルガノシロキサンからなる変性共役ジエン系重合体ゴム、芳香族ビニル単位含有量が42重量%、ビニル単位含有量が32%、重量平均分子量(Mw)が75万、Tgが−25℃、ゴム成分100重量部に対しオイル分25重量部を含む油展品、以下の製造方法により調製した末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム。
【0094】
〔変性S−SBR1の製造方法〕
窒素置換された内容量10Lのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン4533g、スチレン338.9g(3.254mol)、ブタジエン468.0g(8.652mol)、イソプレン20.0g(0.294mol)およびN,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン0.189mL(1.271mmol)を仕込み、攪拌を開始した。反応容器内の内容物の温度を50℃にした後、n−ブチルリチウム5.061mL(7.945mmol)を添加した。重合転化率がほぼ100%に到達した後、さらにイソプレン12.0gを添加して5分間反応させた後、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサンの40wt%トルエン溶液0.281g(0.318mmol)を添加し、30分間反応させた。さらに、下記に示すポリオルガノシロキサンAの40wt%キシレン溶液18.3g(0.318mmol)を添加し、30分間反応させた。メタノール0.5mLを添加して30分間攪拌した。得られたポリマー溶液に老化防止剤(イルガノックス1520、BASF社製)を少量添加し、伸展油としてフッコールエラミック30(新日本石油(株)製)を25部添加した後、スチームストリッピング法により固体状のゴムを回収した。得られた固体ゴムをロールにより脱水し、乾燥機中で乾燥を行い、変性S−SBR1を得た。
ポリオルガノシロキサンA; 前記一般式(I)の構造を有するポリオルガノシロキサンであって、m=80、n=0、k=120、X
1,X
4,R
1〜R
3,R
5〜R
8がそれぞれメチル基(−CH
3)、X
2が下記式で表される炭化水素基であるポリオルガノシロキサン
【化13】
【0095】
・変性S−SBR2:前記一般式(II)の構造を有するポリオルガノシロキサンからなる変性共役ジエン系重合体ゴム、芳香族ビニル単位含有量が42重量%、ビニル単位含有量が32%、重量平均分子量(Mw)が75万、Tgが−25℃、ゴム成分100重量部に対しオイル分25重量部を含む油展品、以下の製造方法により調製した末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム。
【0096】
〔変性S−SBR2の製造方法〕
窒素置換された内容量10Lのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン4550g、スチレン341.1g(3.275mol)、ブタジエン459.9g(8.502mol)、イソプレン20.0g(0.294mol)およびN,N,N′,N′―テトラメチルエチレンジアミン0.190mL(1.277mmol)を仕込み、攪拌を開始した。反応容器内の内容物の温度を50℃にした後、n−ブチルリチウム5.062mL(7.946mmol)を添加した。重合転化率がほぼ100%に到達した後、さらにイソプレン12.0gを添加して5分間反応させた後、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサンの40wt%トルエン溶液0.283g(0.320mmol)を添加し、30分間反応させた。さらに下記に示すポリオルガノシロキサンBの40wt%キシレン溶液19.0g(0.330mmol)を添加し、30分間反応させた。メタノール0.5mLを添加して30分間攪拌した。得られたポリマー溶液に老化防止剤(イルガノックス1520、BASF社製)を少量添加し、伸展油としてフッコールエラミック30(新日本石油(株)製)を25部添加した後、スチームストリッピング法により固体状のゴムを回収した。得られた固体ゴムをロールにより脱水し、乾燥機中で乾燥を行い、変性S−SBR2を得た。
ポリオルガノシロキサンB; 前記一般式(II)の構造を有するポリオルガノシロキサンであって、R
9〜R
16がそれぞれメチル基(−CH
3)、X
5〜X
8がそれぞれ前記式(VIII)で表される炭化水素基であるポリオルガノシロキサン
【0097】
・変性S−SBR3:前記一般式(III)の構造を有するポリオルガノシロキサンからなる変性共役ジエン系重合体ゴム、芳香族ビニル単位含有量が41重量%、ビニル単位含有量が32%、重量平均分子量(Mw)が75万、Tgが−25℃、ゴム成分100重量部に対しオイル分25重量部を含む油展品、以下の製造方法により調製した末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム。
【0098】
〔変性S−SBR3の製造方法〕
窒素置換された内容量10Lのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン4542g、スチレン339.2g(3.257mol)、ブタジエン462.8g(8.556mol)、イソプレン20.0g(0.294mol)およびN,N,N′,N′―テトラメチルエチレンジアミン0.188mL(1.264mmol)を仕込み、攪拌を開始した。反応容器内の内容物の温度を50℃にした後、n−ブチルリチウム5.059mL(7.942mmol)を添加した。重合転化率がほぼ100%に到達した後、さらにイソプレン12.0gを添加して5分間反応させた後、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサンの40wt%トルエン溶液0.283g(0.320mmol)を添加し、30分間反応させた。さらに下記に示すポリオルガノシロキサンCの40wt%キシレン溶液19.2g(0.333mmol)を添加し、30分間反応させた。メタノール0.5mLを添加して30分間攪拌した。得られたポリマー溶液に老化防止剤(イルガノックス1520、BASF社製)を少量添加し、伸展油としてフッコールエラミック30(新日本石油(株)製)を25部添加した後、スチームストリッピング法により固体状のゴムを回収した。得られた固体ゴムをロールにより脱水し、乾燥機中で乾燥を行い、変性S−SBR3を得た。
ポリオルガノシロキサンC; 前記一般式(III)の構造を有するポリオルガノシロキサンであって、s=2、R
17〜R
19がそれぞれメチル基(−CH
3)、X
9〜X
11がそれぞれ前記式(VIII)で表される炭化水素基であるポリオルガノシロキサン
【0099】
・変性S−SBR4:末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム、芳香族ビニル単位含有量が20重量%、ビニル単位含有量が67%、重量平均分子量(Mw)が51万、Tgが−25℃、日本ゼオン社製Nipol NS616、非油展品
・変性S−SBR5:末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム、芳香族ビニル単位含有量が35重量%、ビニル単位含有量が48%、重量平均分子量(Mw)が45万、Tgが−30℃、住友化学社製SE0372、ゴム成分100重量部に対しオイル分20重量部を含む油展品
・変性S−SBR6:前記一般式(I)の構造を有するポリオルガノシロキサンからなる変性共役ジエン系重合体ゴム、芳香族ビニル単位含有量が34重量%、ビニル単位含有量が34%、重量平均分子量(Mw)が76万、Tgが−33℃、ゴム成分100重量部に対しオイル分25重量部を含む油展品、以下の製造方法により調製した末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム。
【0100】
〔変性S−SBR6の製造方法〕
窒素置換された内容量10Lのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン4541g、スチレン277.6g(2.665mol)、ブタジエン523.1g(9.671mol)、イソプレン20.0g(0.294mol)およびN,N,N′,N′―テトラメチルエチレンジアミン0.175mL(1.178mmol)を仕込み、攪拌を開始した。反応容器内の内容物の温度を50℃にした後、n−ブチルリチウム4.984mL(7.824mmol)を添加した。重合転化率がほぼ100%に到達した後、さらにイソプレン12.0gを添加して5分間反応させた後、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサンの40wt%トルエン溶液0.273g(0.327mmol)を添加し、30分間反応させた。さらに、上述したポリオルガノシロキサンAの40wt%キシレン溶液18.1g(0.314mmol)を添加し、30分間反応させた。メタノール0.5mLを添加して30分間攪拌した。得られたポリマー溶液に老化防止剤(イルガノックス1520、BASF社製)を少量添加し、伸展油としてフッコールエラミック30(新日本石油(株)製)を25部添加した後、スチームストリッピング法により固体状のゴムを回収した。得られた固体ゴムをロールにより脱水し、乾燥機中で乾燥を行い、変性S−SBR6を得た。
・変性S−SBR7:前記一般式(I)の構造を有するポリオルガノシロキサンからなる変性共役ジエン系重合体ゴム、芳香族ビニル単位含有量が49重量%、ビニル単位含有量が28%、重量平均分子量(Mw)が71万、Tgが−17℃、ゴム成分100重量部に対しオイル分25重量部を含む油展品、以下の製造方法により調製した末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム。
【0101】
〔変性S−SBR7の製造方法〕
窒素置換された内容量10Lのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン4536g、スチレン401.0g(3.850mol)、ブタジエン392.0g(7.247mol)、イソプレン20.0g(0.294mol)およびN,N,N′,N′―テトラメチルエチレンジアミン0.201mL(1.352mmol)を仕込み、攪拌を開始した。反応容器内の内容物の温度を50℃にした後、n−ブチルリチウム5.141mL(8.071mmol)を添加した。重合転化率がほぼ100%に到達した後、さらにイソプレン12.0gを添加して5分間反応させた後、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサンの40wt%トルエン溶液0.279g(0.320mmol)を添加し、30分間反応させた。さらに、上述したポリオルガノシロキサンAの40wt%キシレン溶液18.6g(0.323mmol)を添加し、30分間反応させた。メタノール0.5mLを添加して30分間攪拌した。得られたポリマー溶液に老化防止剤(イルガノックス1520、BASF社製)を少量添加し、伸展油としてフッコールエラミック30(新日本石油(株)製)を25部添加した後、スチームストリッピング法により固体状のゴムを回収した。得られた固体ゴムをロールにより脱水し、乾燥機中で乾燥を行い、変性S−SBR7を得た。
・変性S−SBR8:前記一般式(I)の構造を有するポリオルガノシロキサンからなる変性共役ジエン系重合体ゴム、芳香族ビニル単位含有量が41重量%、ビニル単位含有量が17%、重量平均分子量(Mw)が74万、Tgが−37℃、ゴム成分100重量部に対しオイル分25重量部を含む油展品、以下の製造方法により調製した末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム。
【0102】
〔変性S−SBR8の製造方法〕
窒素置換された内容量10Lのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン4542g、スチレン339.2g(3.257mol)、ブタジエン462.8g(8.556mol)、イソプレン20.0g(0.294mol)およびN,N,N′,N′―テトラメチルエチレンジアミン0.0376mL(0.253mmol)を仕込み、攪拌を開始した。反応容器内の内容物の温度を50℃にした後、n−ブチルリチウム5.059mL(7.942mmol)を添加した。重合転化率がほぼ100%に到達した後、さらにイソプレン12.0gを添加して5分間反応させた後、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサンの40wt%トルエン溶液0.280g(0.331mmol)を添加し、30分間反応させた。さらに、上述したポリオルガノシロキサンAの40wt%キシレン溶液18.8g(0.326mmol)を添加し、30分間反応させた。メタノール0.5mLを添加して30分間攪拌した。得られたポリマー溶液に老化防止剤(イルガノックス1520、BASF社製)を少量添加し、伸展油としてフッコールエラミック30(新日本石油(株)製)を25部添加した後、スチームストリッピング法により固体状のゴムを回収した。得られた固体ゴムをロールにより脱水し、乾燥機中で乾燥を行い、変性S−SBR8を得た。
・変性S−SBR9:前記一般式(I)の構造を有するポリオルガノシロキサンからなる変性共役ジエン系重合体ゴム、芳香族ビニル単位含有量が39重量%、ビニル単位含有量が40%、重量平均分子量(Mw)が75万、Tgが−21℃、ゴム成分100重量部に対しオイル分25重量部を含む油展品、以下の製造方法により調製した末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム。
【0103】
〔変性S−SBR9の製造方法〕
窒素置換された内容量10Lのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン4543g、スチレン319.8g(3.071mol)、ブタジエン480.1g(8.876mol)、イソプレン20.0g(0.294mol)およびN,N,N′,N′―テトラメチルエチレンジアミン0.217mL(1.462mmol)を仕込み、攪拌を開始した。反応容器内の内容物の温度を50℃にした後、n−ブチルリチウム5.141mL(8.0714mmol)を添加した。重合転化率がほぼ100%に到達した後、さらにイソプレン12.0gを添加して5分間反応させた後、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサンの40wt%トルエン溶液0.279g(0.320mmol)を添加し、30分間反応させた。さらに、上述したポリオルガノシロキサンAの40wt%キシレン溶液18.6g(0.323mmol)を添加し、30分間反応させた。メタノール0.5mLを添加して30分間攪拌した。得られたポリマー溶液に老化防止剤(イルガノックス1520、BASF社製)を少量添加し、伸展油としてフッコールエラミック30(新日本石油(株)製)を25部添加した後、スチームストリッピング法により固体状のゴムを回収した。得られた固体ゴムをロールにより脱水し、乾燥機中で乾燥を行い、変性S−SBR9を得た。
・S−SBR:未変性の溶液重合スチレンブタジエンゴム、芳香族ビニル単位含有量が41重量%、ビニル単位含有量が25%、重量平均分子量(Mw)が101万、Tgが−30℃、Dow Chemical社製SLR6430、ゴム成分100重量部に対しオイル分37.5重量部を含む油展品
・アロマオイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
・粘着性付与樹脂1:軟化点が85℃、Tgが31℃の芳香族変性テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製YSレジンTO−85
・粘着性付与樹脂2:軟化点が105℃、Tgが53℃の芳香族変性テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製YSレジンTO−105
・粘着性付与樹脂3:軟化点が125℃、Tgが77℃の芳香族変性テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製YSレジンTO−125
・CB:カーボンブラック、東海カーボン社製シーストKH
・シリカ:ローディア社製Zeosil Premium 200MP、窒素吸着比表面積(N
2SA)が200m
2/g
・カップリング剤1:エボニックデグサ社製Si75、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド
・カップリング剤2:モーメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製NXT−Z45、前記式(X)及び(XI)で表わされるセグメントを有するメルカプトシラン化合物(R
26,R
27:エチル基、セグメント(X)が55モル%、セグメント(XI)が45モル%)
・カップリング剤3:エボニックデグサ社製Si363、[C
13H
27O(CH
2CH
2O)
5]
2(CH
2CH
2O)Si(CH
2)
3SH
・カップリング剤4:モーメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製NXT、(CH
3CH
2O)
3Si(CH
2)
3S−CO−(CH
2)
6CH
3
【0104】
【表4】
【0105】
表4において使用した原材料の種類を下記に示す。
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・老化防止剤:フレキシス社製サントフレックス6PPD 6C
・ワックス:大内新興化学工業社製サンノック
・硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄
・加硫促進剤1:加硫促進剤CBS、大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G
・加硫促進剤2:加硫促進剤TBzTD、フレキシス社製Perkacit TBzTD
【0106】
表1,3から明らかなように実施例1〜10のタイヤトレッド用ゴム組成物は、低転がり抵抗性(60℃のtanδ)、耐摩耗性及びウェット制動性が向上することが確認された。
【0107】
比較例2のゴム組成物は、変性S−SBR−1の配合量が30重量%以上、天然ゴムの配合量が45重量%未満であるので、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性を高くする効果が十分に得られない。
【0108】
表2から明らかなように、比較例3のゴム組成物は、変性S−SBR−3の芳香族ビニル単位含有量が38重量%未満、ビニル単位含有量が35%超、重量平均分子量(Mw)が60万未満であるので、剛性、強度を改良する効果が十分に得られず耐摩耗性が不足する。
【0109】
比較例4のゴム組成物は、変性S−SBR−2の芳香族ビニル単位含有量が38重量%未満、ビニル単位含有量が35%超、重量平均分子量(Mw)が60万未満であるので、剛性、強度を改良する効果が十分に得られず耐摩耗性が不足してしまう。
【0110】
比較例5のゴム組成物は、粘着性付与樹脂を配合しなかったので、ウェットグリップ性能を改良する効果が十分に得られない。
【0111】
比較例6のゴム組成物は、シリカ及びカーボンブラックからなる充填剤100重量%中シリカが50重量%未満であるので、ウェットグリップ性能が十分に得られない。
【0112】
比較例7のゴム組成物は、シランカップリング剤の配合量がシリカ量の4重量%未満であるので、転がり抵抗を低減する効果が不足し、ゴム組成物の剛性及び強度が低下し、耐摩耗性が不足してしまう。
【0113】
比較例8のゴム組成物は、シランカップリング剤の配合量がシリカ量の18重量%を超えるので、ゴム組成物の最適な剛性が得られず強度が低下し、耐摩耗性が悪化してしまう。
【0114】
表3から明らかなように、比較例9のゴム組成物は、変性S−SBR6の芳香族ビニル単位含有量が38重量%未満であるので、ウェット性能及び耐摩耗性を高くする効果が十分に得られない。
【0115】
比較例10のゴム組成物は、変性S−SBR7の芳香族ビニル単位含有量が48重量%を超えるので、転がり抵抗が悪化する。
【0116】
比較例11のゴム組成物は、変性S−SBR8のビニル単位含有量が20重量%未満であるので、ウェット性能を改良することができない。
【0117】
比較例12のゴム組成物は、変性S−SBR9のビニル単位含有量が35重量%を超えるので、剛性、強度を改良する効果が十分に得られず耐摩耗性が不足する。