特許第6019951号(P6019951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019951
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】フッ素ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20161020BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20161020BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20161020BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C08L27/12
   C08K3/04
   C08K5/14
   C09K3/10 M
   C09K3/10 Q
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-193022(P2012-193022)
(22)【出願日】2012年9月3日
(65)【公開番号】特開2014-47314(P2014-47314A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066005
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】明間 雄輝
(72)【発明者】
【氏名】白根 淳史
(72)【発明者】
【氏名】前田 満
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−056545(JP,A)
【文献】 特開平07−292198(JP,A)
【文献】 特開平03−062842(JP,A)
【文献】 特開2005−350529(JP,A)
【文献】 特開平02−097548(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/026554(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/12
C08K 3/04
C08K 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーオキサイド架橋可能な含フッ素ゴム100重量部に対して、大豆の種皮を焼成した多孔質炭素粉末5〜50重量部、有機過酸化物架橋剤1〜10重量部、多官能性不飽和化合物共架橋剤2〜4重量部を配合してなるフッ素ゴム組成物。
【請求項2】
大豆の種皮を焼成した多孔質炭素粉末以外の充填剤あるいは補強材が配合されていない請求項1記載のフッ素ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載のフッ素ゴム組成物から架橋成形されたフッ素ゴム架橋成形物。
【請求項4】
請求項3記載のフッ素ゴム架橋成形物からなるシール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフッ素ゴム組成物に関する。さらに詳しくは、200℃以上といった高温下における架橋物の耐圧縮永久歪特性を改善せしめることを可能とするフッ素ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素ゴムは耐熱性、耐油性、耐薬品性、耐候性にすぐれており、自動車、油圧機器、一般機器などの分野において、Oリング、オイルシール、ダイヤフラム、ホース材などさまざまな用途に用いられている。フッ素ゴム架橋物をシール材として利用する場合には、フッ素ゴムの復元力によりその密閉性を保持すべく、すぐれた圧縮永久歪値を持つことが要求され、さらには200℃以上の過酷な環境下で使用され得るといったすぐれた耐熱性から、高温での耐圧縮永久歪特性の改善が求められる。
【0003】
本出願人は先に、(a)臭素および/またはヨウ素含有架橋点形成化合物の存在下で含フッ素オレフィンを共重合反応させて得られたパーオキサイド架橋可能な含フッ素エラストマー100重量部当り、(b)カーボンブラック0〜5重量部、(c)有機過酸化物架橋剤0.5〜1.5重量部および(d)多官能性不飽和化合物共架橋剤0.5〜1.5重量部を含有してなるフッ素ゴム組成物を提案している(特許文献1)。このフッ素ゴム組成物は、クッション性、熱伝導性、耐熱性、耐久性、成形加工(非粘着)性等にすぐれた成形プレス用クッション材に用いられるとされているが、フッ素ゴムにカーボンブラックなど従来より用いられている充填剤、補強剤を配合し、パーオキサイド架橋を行った場合には、200℃以上といった高温下における架橋物の圧縮永久歪値が大きくなってしまうため、特にシール材成形材料として用いる場合には、この点について改善を図ることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4,229,004号公報
【特許文献2】特開2010−161057号公報
【特許文献3】特開2012−012452号公報
【特許文献4】特許4,328,591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、200℃以上といった高温下における耐圧縮永久歪特性を改善せしめた架橋物を与えるフッ素ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる本発明の目的は、パーオキサイド架橋可能な含フッ素ゴム100重量部に対して、大豆の種皮を焼成した多孔質炭素粉末5〜50重量部、有機過酸化物架橋剤1〜10重量部、多官能性不飽和化合物共架橋剤2〜4重量部を配合してなるフッ素ゴム組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る含フッ素ゴム組成物は、カーボンブラックあるいはオースチンブラックなど従来より用いられてきた補強剤あるいは充填剤に代えて、大豆の種皮を焼成した多孔質炭素粉末を用いることにより、炭素粉末の混練量を従来用いられているカーボンブラックの混練量の4倍程度まで増加させることが可能であり、それに伴う電気的な効果が得られるばかりではなく、200℃以上といった高温下における耐圧縮永久歪特性を著しく改善せしめた架橋物を与えることを可能にするといったすぐれた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
パーオキサイド架橋可能な含フッ素ゴムは、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン等の含フッ素モノマーの少なくとも一種を含臭素および/またはヨウ素化合物あるいは含ニトリル化合物等の存在下に重合させて得られたものであり、そこにはエチレン、プロピレン等をさらに共重合させることもできる。かかるパーオキサイド架橋可能な含フッ素ゴムとしては、テトラフルオロエチレン-パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン-テトラフルオロエチレン3元共重合体、フッ化ビニリデン-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン3元共重合体等が挙げられ、これらは市販品、例えばデュポン社製品バイトン、ダイキン製品ダイエル、ユニマテック製品ノックスタイトなどをそのまま用いることができる。ここで、パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば次のような化合物が挙げられる。
CF2=CFOCF3
CF2=CFOC2F5
CF2=CFOC3F7
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]1〜4CF3
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]1〜4C3F7
CF2=CFO(CF2)nOCF3
CF2=CFOCF2CF2O(CF2O)nCF3
【0009】
含フッ素エラストマー中に架橋点を形成させるのに用いられる含臭素および/またはヨウ素化合物あるいは含ニトリル化合物等としては、例えば次のような飽和または不飽和の化合物が挙げられる。
CF2=CFBr
CF2=CFI
CF2=CHBr
CF2=CHI
CH2=CHCF2CF2Br
CH2=CHCF2CF2I
CF2=CFOCF2CF2Br
CF2=CFOCF2CF2I
CH2=CHBr
CH2=CHI
Br(CF2)4Br
I(CF2)4I
Br(CH2)2(CF2)4CH2CH2Br
I(CH2)2(CF2)4CH2CH2I
ICF2CF2Br
CF2=CFO(CF2)nOCF(CF3)CN (n:1〜10)
CF2=CFO(CF2)nCN (n:1〜10)
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]m(CF2)nCN (m:1〜10、n:1〜10)
【0010】
かかるパーオキサイド架橋可能な含フッ素ゴムには、それの100重量部当り約1〜50重量部、好ましくは約5〜30重量部の大豆の種皮を焼成した多孔質炭素粉末が用いられる。大豆の種皮を焼成した多孔質炭素粉末がこれより少ない割合で用いられると、得られる架橋成形品の耐圧縮永久歪特性の改善を達成せしめることができず、一方これより多い割合で用いられると、架橋成形時に製品に割れが生じやすくなり、また硬度の著しい上昇あるいは破断伸びの低下が生じるようになる。
【0011】
大豆の種皮を焼成した多孔質炭素粉末については、例えば特許文献2〜3に記載されており、具体的には、大豆皮900℃で3時間程度焼成して得られる多孔質炭素粉末(特許文献2)、あるいは大豆の殻を段階的に炭化処理したもの(特許文献3)などが挙げられる。実際には、市販品である日清オイリオ製品フィトポーラスシリーズなどをそのまま用いることができる。
【0013】
これらの炭素粉末は、例えばメディアン径が0.1〜100μmあるいは約80μm以下であって、多孔質体を形成している。より具体的には、後記各実施例で用いられている日清オイリオ製品フィトポーラスSH-0930は、次にような性状を示している。
メディアン径 30μm
充填密度(JIS K1474準拠) 0.40g/ml
真密度 1.7g/cm3
比表面積 384m2/g
平均細孔半径 9.1Å
結晶子サイズ 1〜3nm
体積固有抵抗率 0.1Ω・cm
比誘電率(誘電損失) 6.33(0.037)
【0014】
従来より、植物由来の多孔質炭素粉末をゴムあるいは樹脂に配合して熱伝導性あるいは電気伝導性を改善することは公知であるが(特許文献2〜3)、これをフッ素ゴムに配合することによって200℃以上といった高温下における架橋品の耐圧縮永久歪特性を改善することは知られていない。また特許文献2〜3では、植物由来の多孔質炭素粉末はカーボンブラック等と併用することが好ましいとされている。本発明では、大豆の種皮を焼成した多孔質炭素粉末は、補強用充填剤として従来から用いられているオースチンブラックあるいはMTカーボンブラックに代えてフッ素ゴムに配合することにより、成形物の機械的物性を維持しつつ、圧縮永久歪特性を著しく改善することができるといったすぐれた効果を奏する。
【0015】
すなわち、パーオキサイド架橋においては、成形品の高温下における圧縮永久歪値が大きくなってしまうものの、従来充填剤あるいは補強剤として用いられてきたカーボンブラック等に代えて、大豆の種皮を焼成した多孔質炭素粉末を配合することで、上述した如く200℃以上といった高温下における架橋物の耐圧縮永久歪特性を改善せしめるとともに、さらには物性向上をも可能とするといった効果を奏するのである。これは、大豆の種皮を焼成した多孔質炭素粉末が通常のカーボンブラックと比べて空隙が多い構造を有しており、混練によって適度な分散度合いを提供し得ることにより、諸物性が向上するためであると考えられる。また、大豆の種皮を焼成した多孔質炭素粉末は、マトリックスゴムまたは樹脂に対する混練配合量を従来の4倍程度迄増加させることができる。
【0016】
架橋剤として用いられる有機過酸化物としては、例えば第3ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、ジ第3ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、1,1-ビス(第3ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2-ビス(第3ブチルパーオキシ)オクタン、1,1-ジ第3ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1-ビス(第3ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(第3ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、m-トルイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、第3ブチルパーオキシイソブチレート、第3ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、第3ブチルパーオキシベンゾエート、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、第3ブチルパーオキシアリルカーボネート等が、含フッ素ゴム100重量部当り約1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部の割合で用いられる。
【0017】
パーオキサイド架橋を行なう場合には、多官能性不飽和化合物共架橋剤が併用され、例えばジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等が、含フッ素ゴム100重量部当り約10重量部以下、好ましくは約2〜4重量部の割合で用いられる。
【0018】
以上の各成分よりなる組成物中には、さらに必要に応じて他の配合剤、例えば受酸剤、老化防止剤、滑剤、可塑剤、顔料等が添加され、ロール、密閉式混練機等で混練した後、一般に用いられている架橋条件に従って、圧縮成形法、射出成形法などにより架橋成形が行われる。配合剤として従来の各種カーボンブラック等の補強剤、充填剤を配合することは、本発明の目的を阻害しない範囲内において可能であるが、これらのカーボンブラック等を配合しない態様であることが望ましい。
【実施例】
【0019】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0020】
実施例1
フッ素ゴム(ユニマテック製品NOXTITE RE-851:TFE/FMVE=66/34モル%) 100重量部
大豆の種皮を焼成した多孔質炭素粉末 5 〃
(日清オイリオ製品フィトポーラスSH-0930)
有機過酸化物(日油製品PH25B-40) 2.2 〃
トリアリルイソシアヌレート(日本化成製品TAIC WH60) 3.7 〃
以上の各成分を2本ロールミルで混和し、得られた硬化性組成物を180℃、6分間圧縮成形して厚さ2mmのシートおよびOリング(P24)を得、さらに200℃、6時間の二次架橋を行い、加硫速度、常態物性(硬度、引張応力、引張強度、破断時伸び)、圧縮永久歪特性についての測定を行った。
加硫速度:可動式ダイレオメータ(モンサント社製MDR2000型)を用い、180℃にて
6分間加熱後のトルク変化を測定
硬度:JIS K6251準拠
引張応力、引張強度、破断時伸び:JIS K6253準拠
圧縮永久歪:ASTM D395 Method B 準拠。Oリング(P24)を200℃または230℃で70時
間圧縮して測定
【0021】
比較例1
実施例1において、大豆の種皮を焼成した多孔質炭素粉末の代わりに、オースチンブラック(コールフィラーズ製品オースチンブラック325)が同量(5重量部)用いられた。
【0022】
比較例2
実施例1において、大豆の種皮を焼成した多孔質炭素粉末の代わりに、MTカーボンブラック(キャンキャブ製品サーマックスN990)が同量(5重量部)用いられた。
【0023】
実施例2
実施例1において、大豆の種皮を焼成した多孔質炭素粉末量が30重量部に変更されて用いられた。
【0024】
比較例3
実施例2において、大豆の種皮を焼成した多孔質炭素粉末の代わりに、オースチンブラック(オースチンブラック325)が同量(30重量部)用いられた。
【0025】
比較例4
実施例2において、大豆の種皮を焼成した多孔質炭素粉末量の代わりに、MTカーボンブラック(サーマックスN990)が同量(30重量部)用いられた。
【0026】
以上の各実施例および比較例で得られた結果は、次の表に示される。


実施例1 比較例1 比較例2 実施例2 比較例3 比較例4
〔加硫速度〕
ML (dN・m) 0.5 0.3 0.5 0.4 1.2 0.5
MH (dN・m) 18.9 18.4 18.9 37.4 28.9 29.7
Tc10 (分) 0.47 0.44 0.45 0.44 0.46 0.39
Tc90 (分) 1.84 2.33 2.20 2.03 2.36 3.14
〔常態物性〕
硬度Hs (ショアA) 72 73 72 87 87 86
100%モジュラス(MPa) 5.4 5.6 4.9 17.3 12.6 17.2
引張強度TB (MPa) 15.7 8.9 15.5 17.3 13.9 19.3
破断時伸びEB (MPa) 200 130 170 100 150 110
〔圧縮永久歪〕
200℃、70時間 (%) 19 42 40 23 43 35
230℃、70時間 (%) 29 65 99 37 54 89