(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記離型力判定工程において、第m+1転写工程における前記離型力が第m+1の閾値以下であると判定された場合に、前記離型力が第1の閾値を超えているか否かをさらに判定し、
前記第m+1転写工程における前記離型力が第1の閾値以下であると判定された場合に、その次に前記凸状構造を形成する予定の転写領域上の被転写材料に、前記第1転写工程により前記凸状構造を形成することを特徴とする請求項1に記載の凸状構造体の製造方法。
前記傾斜修正工程において、前記凸状構造の相対的に伸長している側面に対し活性エネルギー線を照射することにより、当該側面を収縮させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の凸状構造体の製造方法。
前記剥離力判定工程において前記第n転写工程における前記剥離力が第nの閾値を超えると判定された場合に、前記モールドにおける前記被転写材料との接触面に離型性能回復処理を施すか、又は前記モールドとは別の予備モールドを準備する離型性能回復工程をさらに含み、
前記離型性能回復工程において離型性能回復処理が施された前記モールド又は前記予備モールドを用い、前記第1転写工程を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の凸状構造体の製造方法。
複数の転写領域のそれぞれと凹状構造を有するモールドとの間に被転写材料を介在させた状態で当該被転写材料を硬化させ、前記モールドを前記被転写材料から相対的に引き離し、前記被転写材料に前記モールドの凹状構造に対応する凸状構造であって、目的とする方向に軸線が向く凸状構造を形成することで凸状構造体を製造するシステムであって、
前記各転写領域と前記モールドとの間に前記被転写材料を介在させた状態で硬化させた当該被転写材料から前記モールドを、前記凸状構造の前記軸線の前記目的方向に対して第1〜第nの角度(nは2以上の整数である。)の方向に向かって引き離し可能な転写部と、
前記転写部における前記モールドと前記被転写材料との引き離しに要する離型力が、前記モールドの引き離し角度(第1〜第nの角度)のそれぞれに対応する第1〜第nの閾値のそれぞれを超えているか否かを判定する離型力判定部と、
前記転写部により前記被転写材料に形成され、前記凸状構造の前記軸線の前記目的方向に対して傾斜している凸状構造にエネルギーを作用させて、当該凸状構造の傾斜を前記目的方向に向けて修正する傾斜修正部と、
前記転写部、前記離型力判定部及び前記傾斜修正部を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記離型力判定部において、第mの角度(mは1以上n−1以下の整数である。)における前記離型力が第mの閾値を超えたと判定された場合に、その次に前記凸状構造を形成する予定の転写領域上の被転写材料に前記凸状構造を形成する際に、第m+1の角度の方向に向かって前記モールドを引き離すように前記転写部を制御する
ことを特徴とする凸状構造体製造システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
インプリント処理により基材上に形成される凸状パターンは、例えば、そのまま細胞培養シート等として、エッチングにより基材に凹状パターンを形成するためのエッチングマスク等として用いられることから、当該凸状パターンは、基材における凸状パターンが形成される面(基材表面)から、その用途に応じた目的とする方向(例えば、基材表面に対する略垂直方向)に突出している必要がある。そのため、当該凸状パターンを形成する場合、目的とする方向(凸状パターンの突出方向)に沿ってモールドを引き離す、すなわちモールドの離型方向を上記目的方向とするのが一般的である。よって、上記特許文献2に記載の発明のように、離型力が所定の閾値を超えたときにモールドを交換することで、離型性能の低下(劣化)したモールドを適切なタイミングで交換することができると考えられる。
【0009】
しかしながら、当該離型方向を傾斜させる、すなわち上記目的とする方向よりも傾斜する方向に沿ってモールドを引き離すと、目的方向にモールドを引き離すときよりも樹脂等やモールドに加わる応力を低減することができる。そのため、上記特許文献2に記載の発明において、離型力が所定の閾値を超えた後であっても、モールドを交換せずに離型方向を変更することで、凸状パターンの破損等を生じさせることなく、さらにインプリント処理を継続することができる。すなわち、上記特許文献2に記載の発明においては、一のモールドを用いた連続インプリント処理回数をさらに増大させることができ、スループットを向上させる余地があるということができる。
【0010】
一方で、上記離型方向を傾斜させることにより生じ得る問題もある。インプリントにより形成される凸状パターン(例えば、ピラー状、ラインアンドスペース状等の樹脂パターン)は、上述したように、その用途に応じた目的とする方向に突出している必要がある。しかしながら、その目的方向よりも傾斜する方向に沿ってモールドを引き離すと、形成される凸状パターンに面内方向(基材表面と略平行な方向)の力が加わるため、凸状パターンが倒れてしまうことがあるという問題がある。
【0011】
また、上記特許文献2に記載の発明においては、樹脂等とモールドとの引き離し時における離型力が所定の閾値を超えたときに、モールドの離型性能が低下(劣化)したものと判断し、そのタイミングで予備モールドに交換する。しかしながら、樹脂等とモールドとの引き離し時における離型力は、モールドの離型性能のみならず、凸状パターンが形成される基材の平坦度によっても変動する。例えば、基材上の樹脂とモールドとを引き離そうとして、モールドを基材表面に対する垂直方向に引っ張った場合、樹脂を塗布した基材の平坦度によって樹脂とモールドとの界面に加わる応力が異なる。そのため、同様にして凸状パターンを形成しようとしても、基材の平坦度によって、モールドの離型性能が低下(劣化)していないにもかかわらず上記離型力が増大してしまうことがある。上記特許文献2に記載の発明においては、基材上の平坦度の悪い領域に凸状パターンを形成したときにも離型力が閾値を超えてしまうおそれがあり、そのような場合に離型性能の低下(劣化)していないモールドを交換してしまうおそれがあるという問題もある。
【0012】
上述した問題に鑑みて、本発明は、連続インプリント処理により複数の転写領域のそれぞれに凸状構造を有する凸状構造体をさらなる高いスループットで製造する方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述したように、ナノインプリント技術にて形成される凸状構造体は、そのまま最終製品となったり、所定の基材をエッチングする際のエッチングマスクとして用いられたりするものであるため、目的とする方向に凸状構造が立設されていることが要求される。そのためにも、凸状構造が当該目的方向よりも傾斜してしまわないように形成される必要がある。しかしながら、モールドを用いた転写工程後に凸状構造が目的方向よりも傾斜していたとしても、その傾斜した凸状構造を目的方向に立設させる(凸状構造の傾斜を修正する)ことができるのであれば、凸状構造の傾斜を気にすることなくナノインプリント技術にて凸状構造体を製造することができ、スループットをさらに向上させることができる。そのような考えに基づいて、上記課題を解決すべく本発明者らが鋭意研究した結果、凸状構造に所定の力を作用させることで、傾斜する凸状構造を目的方向に立設させ得る(凸状構造の傾斜を修正し得る)ことを見出した。そして、本出願人は、その知見に基づき、凸状構造の傾斜を修正する方法等につき既に特許出願をしている(特願2012−176938,特願2012−176939,特願2012−176940)。上記知見に基づき、本発明者らは、一のモールドを用いた連続インプリント処理の回数を増大させ得ることをさらに見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、複数の転写領域のそれぞれに、凹状構造を有するモールドを用いて
、目的とする方向に軸線が向く凸状構造を有する凸状構造体を製造する方法であって、前記各転写領域上の被転写材料と前記モールドとを接触させた状態で当該被転写材料を硬化させ、前
記凸状構造の
前記軸線
の前記目的方向に対する第1の角度の方向に向かって、前記モールドを前記被転写材料から相対的に引き離し、前記被転写材料に前記モールドの凹状構造に対応する凸状構造を形成する第1転写工程と、前記各転写領域上の被転写材料と前記モールドとを接触させた状態で当該被転写材料を硬化させ、前
記凸状構造の
前記軸線の前記目的方向に対する第nの角度(nは2以上の整数である。)であって、第n−1の角度よりも大きい角度の方向に向かって、前記モールドを前記被転写材料から相対的に引き離し、前記被転写材料に前記モールドの凹状構造に対応する凸状構造を形成する第n転写工程と、前記第1〜第n転写工程のそれぞれにおける前記モールドと前記被転写材料との引き離しに要する離型力が、各転写工程における第1〜第nの閾値のそれぞれを超えているか否かを判定する離型力判定工程と、前記転写工程により前記被転写材料に形成され、前
記凸状構造の
前記軸線
の前記目的方向に対し傾斜している凸状構造にエネルギーを作用させて、当該凸状構造の傾斜を
前記目的方向に向けて修正する傾斜修正工程とを有し、前記離型力判定工程において、第m転写工程(mは1以上n−1以下の整数である。)における前記離型力が第mの閾値を超えたと判定された場合に、その次に前記凸状構造を形成する予定の転写領域上の被転写材料に、第m+1転写工程により前記凸状構造を形成することを特徴とする凸状構造体の製造方法を提供する(発明1)。
【0015】
上記発明(発明1)によれば、モールドの離型性能の低下等により離型力が所定の閾値を超えた後であっても、モールドと被転写材料との引き離し角度(離型角度)を調整することで離型力を低減させることができるため、モールドの連続転写回数を増大させることができる一方、形成した凸状構造がモールドと被転写材料との引き離し角度(離型角度)によって目的とする角度よりも傾斜した方向に突出してしまったとしても、エネルギーを作用させることで当該凸状構造の傾斜を修正可能であるため、凸状構造体を高スループットで製造することができる。
【0016】
なお、本発明において、「被転写材料に形成される予定の凸状構造の軸線方向に対し傾斜している凸状構造」とは、被転写材料に形成された凸状構造の軸線方向と被転写材料に形成される予定の凸状構造の軸線方向とが実質的に相違しており、当該2つの軸線方向により形成される角度が、製造される凸状構造体の用途等に応じて許容される範囲を超えていることを意味する。例えば、当該2つの軸線方向により形成される角度が5°を超えている場合、被転写材料に形成された凸状構造が傾斜しているものとすることができる。
【0017】
上記発明(発明1)においては、前記離型力判定工程において、第m+1転写工程における前記離型力が第m+1の閾値以下であると判定された場合に、前記離型力が第1の閾値を超えているか否かをさらに判定し、前記第m+1転写工程における前記離型力が第1の閾値以下であると判定された場合に、その次に前記凸状構造を形成する予定の転写領域上の被転写材料に、前記第1転写工程により前記凸状構造を形成するのが好ましい(発明2)。
【0018】
上記発明(発明1,2)においては、少なくとも前記第2〜第n転写工程により形成された前記凸状構造が、前記
軸線の前記目的方向に対し傾斜しているか否かを判定する傾斜判定工程をさらに含み、前記傾斜判定工程により前記凸状構造が傾斜していると判定された場合に、傾斜していると判定された前記凸状構造を含む転写領域に対して前記傾斜修正工程を行うのが好ましい(発明3)。
【0019】
上記発明(発明1〜3)においては、前記傾斜修正工程において傾斜の修正された凸状構造が、前記
軸線の前記目的方向に対し傾斜しているか否かを判定する検査工程をさらに含み、前記検査工程により前記凸状構造が傾斜していると判定された場合に、傾斜していると判定された前記凸状構造を含む転写領域に対してさらに前記傾斜修正工程を行うのが好ましい(発明4)。
【0020】
上記発明(発明1〜4)においては、前記傾斜修正工程において、前記凸状構造の相対的に伸長している側面に対し活性エネルギー線を照射することにより、当該側面を収縮させてもよいし(発明5)、少なくとも前記凸状構造に電荷を生じさせてもよい(発明6)。
【0021】
上記発明(発明1〜6)においては、前記剥離力判定工程において前記第n転写工程における前記剥離力が第nの閾値を超えると判定された場合に、前記モールドにおける前記被転写材料との接触面に離型性能回復処理を施す離型性能回復工程をさらに含み、前記離型性能回復工程において離型性能回復処理が施された前記モールドを用い、前記第1転写工程を行うのが好ましい(発明7)。
【0022】
また、本発明は、少なくとも一度のインプリント処理に用いられたことがあり、離型性能の低下度が不明である、凹状構造を有するモールドを用いて、複数の転写領域のそれぞれに
、目的とする方向に軸線が向く凸状構造を有する凸状構造体を製造する方法であって、前記各転写領域上の被転写材料と前記モールドとを接触させた状態で当該被転写材料を硬化させ、前
記凸状構造の
前記軸線
の前記目的方向に対する第1の角度の方向に向かって、前記モールドを前記被転写材料から相対的に引き離し、前記被転写材料に前記モールドの凹状構造に対応する凸状構造を形成する第1転写工程と、前記各転写領域上の被転写材料と前記モールドとを接触させた状態で当該被転写材料を硬化させ、前
記凸状構造の
前記軸線の前記目的方向に対する第nの角度(nは2以上の整数である。)であって、第n−1の角度よりも小さい角度の方向に向かって、前記モールドを前記被転写材料から相対的に引き離し、前記被転写材料に前記モールドの凹状構造に対応する凸状構造を形成する第n転写工程と、前記第1〜第n転写工程のそれぞれにおいて、前記モールドと前記被転写材料との引き離しに要する離型力が、各転写工程における第1〜第nの閾値のそれぞれを超えているか否かを判定する離型力判定工程と、前記転写工程により前記被転写材料に形成され、前
記凸状構造の
前記軸線
の前記目的方向に対し傾斜している凸状構造にエネルギーを作用させて、当該凸状構造の傾斜を
前記目的方向に向けて修正する傾斜修正工程とを有し、前記離型力判定工程において、第m転写工程(mは1以上n−1以下の整数である。)における前記離型力が第mの閾値未満であると判定された場合に、その次に前記凸状構造を形成する予定の転写領域上の被転写材料に、第m+1転写工程により前記凸状構造を形成することを特徴とする凸状構造体の製造方法を提供する(発明8)。
【0023】
さらに、本発明は、複数の転写領域のそれぞれと凹状構造を有するモールドとの間に被転写材料を介在させた状態で当該被転写材料を硬化させ、前記モールドを前記被転写材料から相対的に引き離し、前記被転写材料に前記モールドの凹状構造に対応する凸状構造
であって、目的とする方向に軸線が向く凸状構造を形成することで凸状構造体を製造するシステムであって、前記各転写領域と前記モールドとの間に前記被転写材料を介在させた状態で硬化させた当該被転写材料から前記モールドを、前
記凸状構造の
前記軸線
の前記目的方向に対して第1〜第nの角度(nは2以上の整数である。)の方向に向かって引き離し可能な転写部と、前記転写部における前記モールドと前記被転写材料との引き離しに要する離型力が、前記モールドの引き離し角度(第1〜第nの角度)のそれぞれに対応する第1〜第nの閾値のそれぞれを超えているか否かを判定する離型力判定部と、前記転写部により前記被転写材料に形成され、前
記凸状構造の
前記軸線
の前記目的方向に対して傾斜している凸状構造にエネルギーを作用させて、当該凸状構造の傾斜を
前記目的方向に向けて修正する傾斜修正部と、前記転写部、前記離型力判定部及び前記傾斜修正部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記離型力判定部において、第mの角度(mは1以上n−1以下の整数である。)における前記離型力が第mの閾値を超えたと判定された場合に、その次に前記凸状構造を形成する予定の転写領域上の被転写材料に前記凸状構造を形成する際に、第m+1の角度の方向に向かって前記モールドを引き離すように前記転写部を制御することを特徴とする凸状構造体製造システムを提供する(発明9)。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、連続インプリント処理により複数の転写領域のそれぞれに凸状構造を有する凸状構造体をさらなる高いスループットで製造する方法及びシステムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<凸状構造体の製造方法>
本発明の一実施形態に係る凸状構造体の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図1〜
図3は、本実施形態に係る凸状構造体の製造方法を示すフローチャートであり、
図4は、本実施形態における第1転写工程のフローを示す断面図であり、
図5は、本実施形態における第1〜第3転写工程のうちのモールド剥離工程における離型角度を示す断面図であり、
図6は、本実施形態における第2及び第3転写工程により作製される凸状構造体を示す断面図である。
【0027】
(第1転写準備工程)
本実施形態に係る凸状構造体の製造方法においては、まず、凸状構造体1を製造する領域である複数の転写領域IAを設定可能な所定の基板2をインプリント装置の基板ステージに載置し、当該基板2上の一の転写領域IA上に被転写材料としてのインプリント樹脂(紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の一般にナノインプリント処理に用いられる絶縁性樹脂材料や導電性樹脂材料等)3を公知の塗布法により供給する。例えば、インクジェット法によりインプリント樹脂3を転写領域IA上に離散的に滴下する(S101,
図4(a)参照)。
【0028】
本実施形態において、基板2としては、シリコン基板、金属基板、ガラス基板、石英基板等を例示することができ、平板状の基板であってもよいし、配線層等の別個の構造体が各転写領域IAに予め形成されてなるものであってもよい。
【0029】
本実施形態において、転写領域IAの数は、製造予定の凸状構造体1の数に応じて適宜設定され得るものである。なお、本実施形態において、一の基板2上に複数の転写領域IAが設定可能なものを例にあげて説明するが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、本発明には、一の基板2上に一の転写領域IAが設定され、複数の基板2のそれぞれの転写領域IAに一のインプリントモールドを用いて凸状構造体1を製造する態様や、一の基板2上に複数の転写領域IAが設定され、複数の基板2のそれぞれにおける各転写領域IAに一のインプリントモールドを用いて凸状構造体1を製造する態様も含まれ得る。
【0030】
(第1転写工程)
次に、製造しようとする凸状構造体1が有する凸状構造11に対応する凹状構造41を備えるインプリントモールド4を、インプリント樹脂3が滴下された転写領域IA上に移動する(S102,
図4(b)参照)。なお、本実施形態において、インプリントモールド4は、その凹状構造が形成されてなる面に、離型処理(離型剤層等の形成等)が施されてなるものを例に挙げるが、離型処理が施されていないものであってもよい。
【0031】
そして、インプリントモールド4の凹状構造41が形成されてなる面とインプリント樹脂3とを接触させてインプリント樹脂3を押し広げるとともに、インプリントモールド4の凹状構造41内にインプリント樹脂3を充填し、硬化させる(S103,
図4(c)参照)。なお、インプリント樹脂3を硬化させる方法は、当該インプリント樹脂3の種類(硬化タイプ)に応じて適宜選択され得るものであり、インプリント樹脂3が紫外線硬化性樹脂であれば、紫外線を照射することで硬化させることができ、熱硬化性樹脂であれば熱を印加することで硬化させることができる。なお、インプリント樹脂3が高粘度のものであれば、インプリントモールド4により圧力を加えてインプリント樹脂3を押し広げる必要があるが、低粘度のものであれば必ずしもインプリント樹脂3を押し広げる必要はなく、インプリントモールド4をインプリント樹脂3に接触させることで、毛細管現象を利用してインプリント樹脂3を凹状構造41内に充填させることができる。
【0032】
続いて、硬化したインプリント樹脂3からインプリントモールド4を引き離す(第1離型処理,S104,
図4(d)参照)。このとき、基板2の転写領域IAに形成される凸状構造体1の凸状構造11の軸線AL方向(基板2表面(凸状構造体1が形成される面)の鉛直方向)に対する第1の角度θ
1の方向(
図5(a)に示す矢印方向)に向かって、インプリント樹脂3とインプリントモールド4とを相対的に引き離すようにする。
【0033】
第1の角度θ
1は、形成予定の凸状構造体1における凸状構造11の軸線AL方向と、インプリントモールド4を引き離す方向とが略平行となるような角度であって、通常、5°以下である。典型的には、第1の角度θ
1の方向は、基板2表面(凸状構造体1が形成される面)に対する鉛直方向(形成予定の凸状構造体1における凸状構造11の軸線AL方向)に略平行な方向である。
【0034】
このインプリントモールド4の引き離しとともに、インプリントモールド4の引き離しに要する力(離型力)を測定する(S104)。この離型力は、例えば、インプリント装置が備えるロードセルを用いて測定可能であるが、基板ステージに供給される電圧を検知する電圧計により検出される電圧に基づいて離型力を測定してもよいし、圧力センサ等により離型力を測定してもよい。
【0035】
(離型力判定工程)
上述のようにして離型力を測定した後に、予定する全転写領域IAに凸状構造体1を製造したか否かを判断し(S105)、全転写領域IAに凸状構造体1を製造したと判断した場合(S105,Yes)には後述する傾斜修正工程(S122)に移行し、全転写領域IAに凸状構造体1を製造していないと判断した場合(S105,No)、上述のようにして測定された離型力が、第1転写工程に対応する第1閾値以下であるか否かを判断する(S106)。
【0036】
ここで、第1閾値としては、第1の角度θ
1の方向に向かってインプリント樹脂3からインプリントモールド4を引き離す第1離型処理において、当該インプリントモールド4の引き離しにより形成される凸状構造11等に破損等が生じない程度の最大離型力が設定され得る。
【0037】
したがって、測定された離型力が第1閾値以下であれば、次に凸状構造体1を形成する予定の転写領域IAにおいても、第1転写工程を実施可能、すなわち第1の角度θ
1方向へのインプリントモールド4の引き離しが可能であると判断できる。よって、離型力が第1閾値以下であると判断した場合(S106,Yes)、次に予定されている転写領域IAにて、S101以降の工程(第1転写工程)を繰り返し行う。例えば、
図12に示すように転写領域IA1にて第1転写工程を行い、当該転写領域IA1における第1転写工程時の離型力が第1の閾値以下であると判断された場合、次に予定されている転写領域IA2においても第1転写工程が行われる。
【0038】
一方、測定された離型力が第1閾値を超える場合(S106,No)、次に凸状構造体1を形成する予定の転写領域IAにおいて第1転写工程を行うと、当該転写領域IAに形成される凸状構造11に破損等が生じる可能性が高まると予想される。よって、この場合(S106,No)においては、次に予定されている転写領域IAにおいては、後述する第2転写工程を行う。例えば、
図12に示すように転写領域IA31にて第1転写工程を行い、当該転写領域IA31における第1転写工程時の離型力が第1閾値を超えていると判断された場合、次に予定されている転写領域IA32においては第2転写工程を行う。
【0039】
なお、第1閾値は、実験的に又は理論的に導き出される値である。例えば、インプリントモールド4と略同様な構成の別個のインプリントモールドを用いた連続インプリント処理を予め行い、凸状構造11に破損等が生じたか否かをSEM、AFM等で検査することで、離型力と凸状構造11の破損等の発生との間の相関を求め、それにより第1閾値を設定することができる。また、インプリントモールド4の凹状構造の開口寸法、深さ、開口密度、形状、表面エネルギー等のモールドの固有情報、及びインプリント樹脂3の物性等の情報などに基づいて第1閾値を算出することもできる。なお、第1閾値は、第1転写工程時の離型力が第1閾値を超えていると判断されたときに形成された凸状構造11に破損等が生じない程度の値として設定されるのが望ましい。
【0040】
(第2転写準備工程)
上記離型力判定工程(S106)において、離型力が第1閾値を超えると判断された場合(S106,No)、次に凸状構造体1を形成する予定の転写領域IAにインプリント樹脂(紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等)3を公知の塗布法により供給する。例えば、インクジェット法によりインプリント樹脂3を転写領域IA上に離散的に滴下する(S107,
図4(a)参照)。
【0041】
(第2転写工程)
次に、インプリント樹脂3が滴下された転写領域IA上にインプリントモールド4を移動する(S108,
図4(b)参照)。そして、インプリントモールド4の凹状構造41が形成されてなる面とインプリント樹脂3とを接触させてインプリント樹脂3を押し広げるとともに、インプリントモールド4の凹状構造41内にインプリント樹脂3を充填し、硬化させる(S109,
図4(c)参照)。
【0042】
続いて、硬化したインプリント樹脂3からインプリントモールド4を引き離す(第2離型処理,S110)。このとき、基板2の転写領域IAに形成される凸状構造体1の凸状構造11の軸線AL方向(基板2表面(凸状構造体1が形成される面)の鉛直方向)に対する第2の角度θ
2の方向(
図5(b)に示す矢印方向)に向かって、インプリント樹脂3とインプリントモールド4とを相対的に引き離すようにする。
【0043】
第2の角度θ
2は、第1転写工程における第1の角度θ
1よりも大きい角度であり、好ましくは5〜10°程度である。このようにしてインプリントモールド4を引き離すことで、インプリントモールド4の引き離し時の離型力を第1離型処理に比して低減することができる。その結果、第1離型処理(第1の角度θ
1方向へのインプリントモールド4の引き離し)が困難な程度にインプリントモールド4の離型性能が低下している場合であっても、凸状構造11の破損等を生じさせることなく凸状構造体1を製造することができる。
【0044】
インプリントモールド4を第2の角度θ
2方向に引き離す方法としては、例えば、例えば、インプリントモールド4を保持するためのモールドステージに備えられているアクチュエータの動作を制御してインプリントモールド4の一の外縁部(角部又は一辺)から引き離し始める方法、インプリントモールド4のパターン形成面に対向する面(凹状構造41が形成されていない面)側から押圧し、インプリントモールド4を撓ませた状態で引き離す方法等が挙げられる。
【0045】
このインプリントモールド4の引き離しとともに、インプリントモールド4の引き離しに要する力(離型力)を測定する(S110)。この離型力の測定は、第1転写工程における離型力の測定と同様にして行うことができる。
【0046】
(離型力判定工程)
上述のようにして離型力を測定した後に、予定する全転写領域IAに凸状構造体1を製造したか否かを判断し(S111)、全転写領域IAに凸状構造体1を製造したと判断した場合(S111,Yes)には後述する傾斜修正工程(S122)に移行し、全転写領域IAに凸状構造体1を製造していないと判断した場合(S111,No)、上述のようにして測定された離型力が、第2転写工程に対応する第2閾値以下であるか否かを判断する(S112)。
【0047】
ここで、第2閾値としては、第2の角度θ
2の方向に向かってインプリント樹脂3からインプリントモールド4を引き離す第2離型処理において、当該インプリントモールド4の引き離しにより形成される凸状構造11等に破損等が生じない程度の最大離型力が設定され得る。なお、第2閾値は、第1閾値と同様に実験的に又は理論的に設定され得る。
【0048】
したがって、測定された離型力が第2閾値以下であれば、次に凸状構造体1を形成する予定の転写領域IAにおいても、少なくとも第2転写工程を実施可能、すなわち第2の角度θ
2方向へのインプリントモールド4の引き離しが可能であると判断できる。
【0049】
その一方で、上記S106にて離型力が第1閾値を超えていると判断されたとき(S106,No)、当該離型力が第1閾値を超えた理由が、インプリントモールド4の離型性能の低下(劣化)であるのか、基板2の表面状態(基板2表面の平坦度等)の不良であるのかまでは判断することができない。
【0050】
そのため、上記S112にて離型力が第2閾値以下であると判断された場合であっても、インプリントモールド4の離型性能が第1転写工程を実施不可能な程度にまで低下(劣化)していない場合も考えられる。
【0051】
そこで、上記S112にて離型力が第2閾値以下であると判断された場合(S112,Yes)、さらに当該離型力が第1閾値以下であるか否かを判断し(S113)、離型力が第1閾値以下であると判断された場合には(S113,Yes)、次に予定されている転写領域IAにおいてS101以降の工程(第1転写工程)を行う。このように、第2転写工程を実施したときの離型力が第2閾値以下である場合に、当該離型力が第1閾値以下であるか否かをさらに判断することで、インプリントモールド4の離型性能が第1転写工程を実施可能な程度にまで低下(劣化)しているか否かを判断することができる。その結果、次に凸状構造体1を形成する予定の転写領域IAにおいて、第2転写工程を実施することなく第1転写工程を実施することができるため、当該転写領域IAに形成された凸状構造体1に対して後述する傾斜修正工程(S122)を実施する必要がなくなるという効果を奏する。
【0052】
一方、離型力が第1閾値を超えていると判断された場合(S113,No)、すなわち離型力が第1閾値を超えているが第2閾値以下であると判断された場合には、次に予定されている転写領域IAにおいてS107以降の工程(第2転写工程)を繰り返し行う。
【0053】
測定された離型力が第2閾値を超える場合(S112,No)、次に凸状構造体1を形成する予定の転写領域IAにおいて第2転写工程を実施すると、当該転写領域IAに形成される凸状構造11等に破損が生じる可能性が高まると予想される。よって、この場合(S112,No)においては、次に予定されている転写領域IAにおいて、後述する第3転写工程を実施する。例えば、
図12に示すように転写領域IA48にて第2転写工程を行い、当該転写領域IA48における第2転写工程時の離型力が第2の閾値を超えていると判断された場合、次に予定されている転写領域IA49においては第3転写工程を行う。
【0054】
(第3転写準備工程)
上記離型力判定工程(S112)において、離型力が第2閾値を超えると判断された場合(S112,No)、次に凸状構造体1を形成する予定の転写領域IAにインプリント樹脂(紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等)3を公知の塗布法により供給する。例えば、インクジェット法によりインプリント樹脂3を転写領域IA上に離散的に滴下する(S114,
図4(a)参照)。
【0055】
(第3転写工程)
次に、インプリント樹脂3が滴下された転写領域IA上にインプリントモールド4を移動する(S115,
図4(b)参照)。そして、インプリントモールド4の凹状構造41が形成されてなる面とインプリント樹脂3とを接触させてインプリント樹脂3を押し広げるとともに、インプリントモールド4の凹状構造41内にインプリント樹脂3を充填し、硬化させる(S116,
図4(c)参照)。
【0056】
続いて、硬化したインプリント樹脂3からインプリントモールド4を引き離す(第3離型処理,S117,
図4(d)参照)。このとき、基板2の転写領域IAに形成される凸状構造体1の凸状構造11の軸線AL方向(基板2表面(基板2における凸状構造体1が形成される面)の鉛直方向)に対する第3の角度θ
3の方向(
図5(c)に示す矢印方向)に向かって、インプリント樹脂3とインプリントモールド4とを相対的に引き離すようにする。
【0057】
第3の角度θ
3は、第2転写工程における第2の角度θ
2よりも大きい角度であり、好ましくは10〜15°程度である。このようにしてインプリントモールド4を引き離すことで、インプリントモールド4の引き離し時の離型力を第2離型処理時の離型力に比して低減することができるため、第2転写工程(第2の角度θ
2方向へのインプリントモールド4の引き離し)が困難な程度にインプリントモールド4の離型性能が低下している場合であっても、形成される凸状構造11の破損等を生じさせることなく凸状構造体1を製造することができる。
【0058】
インプリントモールド4を第3の角度θ
3方向に引き離す方法としては、インプリントモールド4を第2の角度θ
2方向に引き離す方法と同様の方法を例示することができる。
このインプリントモールド4の引き離しとともに、インプリントモールド4の引き離しに要する力(離型力)を測定する(S117)。この離型力の測定は、第1転写工程及び第2転写工程における離型力の測定と同様にして行うことができる。
【0059】
(離型力判定工程)
上述のようにして離型力を測定した後に、予定する全転写領域IAに凸状構造体1を製造したか否かを判断し(S118)、全転写領域IAに凸状構造体1を製造したと判断した場合(S118,Yes)には後述する傾斜修正工程(S122)に移行し、全転写領域IAに凸状構造体1を製造していないと判断した場合(S118,No)、上述のようにして測定された離型力が、第3転写工程に対応する第3閾値以下であるか否かを判断する(S119)。
【0060】
ここで、第3閾値としては、第3の角度θ
3の方向に向かってインプリント樹脂3からインプリントモールド4を引き離す第3離型処理において、当該インプリントモールド4の引き離しにより形成される凸状構造11に破損等が生じない程度の最大離型力が設定され得る。
【0061】
したがって、測定された離型力が第3閾値以下であれば、次に凸状構造体1を形成する予定の転写領域IAにおいても、少なくとも第3転写工程を実施可能であると判断できる。その一方で、上記S112にて離型力が第2閾値を超えていると判断されたとき、当該離型力が第2閾値を超えた理由が、インプリントモールド4の離型性能の低下(劣化)であるのか、基板2の表面状態(基板2表面の平坦度等)の不良であるのかまでは判断することができない。そのため、上記S119にて離型力が第3閾値以下であると判断された場合であっても、インプリントモールド4の離型性能が第2転写工程を実施不可能な程度にまで低下(劣化)していない場合も考えられる。
【0062】
そこで、上記S119にて離型力が第3閾値以下であると判断された場合(S119,Yes)、さらに当該離型力が第2閾値以下であるか否かを判断し(S120)、離型力が第2閾値以下であると判断された場合には(S120,Yes)、同様の理由により離型力が第1閾値以下であるか否かを判断する(S121)。そして、離型力が第1閾値以下であると判断された場合には(S121,Yes)、次に予定されている転写領域IAにおいてS101以降の工程(第1転写工程)を行う。
【0063】
このように、第3転写工程を実施したときの離型力が第3閾値以下である場合に、当該離型力が第2閾値以下であるか否か、さらには第1閾値以下であるか否かを判断することで、インプリントモールド4の離型性能が第1転写工程又は第2転写工程を実施可能な程度にまで低下(劣化)しているか否かを判断することができる。その結果、次に凸状構造体1を形成する予定の転写領域IAにおいて、第3転写工程を実施することなく第1転写工程又は第2転写工程を実施することができるため、第1転写工程を実施した転写領域IAに形成された凸状構造体1に対しては、後述する傾斜修正工程(S122)を実施する必要がなくなるという効果を奏する。
【0064】
また、第3転写工程を実施して形成された凸状構造体1よりも、第2転写工程を実施して形成された凸状構造体1の方が、凸状構造11の傾斜の程度が緩やかであると考えられる。そのため、次に凸状構造体1を形成する予定の転写領域IAにおいて、第3転写工程を実施することなく第2転写工程を実施することで、後述する傾斜修正工程(S122)において凸状構造11に作用させるエネルギー量を低減することができる。
【0065】
また、離型力が第2閾値以下であるが、第1閾値を超えていると判断された場合(S121,No)、次に予定されている転写領域IAにおいてS107以降の工程(第2転写工程)を行う。一方、上記離型力が第2閾値を超えていると判断された場合(S120,No)、すなわち離型力が第2閾値を超えているが第3閾値以下であると判断された場合には、次に予定されている転写領域IAにおいてS114以降の工程(第3転写工程)を繰り返し行う。
【0066】
一方、測定された離型力が第3閾値を超えると判断した場合(S119,No)、次に凸状構造体1を形成する予定の転写領域IAにおいて第3転写工程を実施すると、当該転写領域IAに形成される凸状構造11に破損等が生じる可能性が高まると予想される。よって、この場合(S119,No)においては、インプリントモールド4を新たな予備モールドに交換することで、又はインプリントモールド4に離型性能回復処理(インプリントモールド4の洗浄、離型剤層の再形成等)を施すことで、次に予定されている転写領域IAにおいて再度第1転写工程(S101)を実施することができる。
【0067】
(傾斜修正工程)
上述のようにして測定された離型力に応じて第1〜第3転写工程のいずれかを実施し、予定されている全転写領域IAに凸状構造体1を形成したとき、第2転写工程及び第3転写工程を実施した転写領域IAに形成された凸状構造体1においては、第2の角度θ
2や第3の角度θ
3の方向にインプリントモールド4を引き離すことに起因して、
図6に示すように、凸状構造11の軸線ALが基板2表面の鉛直方向CD(形成予定の凸状構造11の軸線方向)に対して傾斜してしまうことがある。そこで、第2転写工程及び第3転写工程を実施した転写領域IA上の少なくとも凸状構造11(の表面)にエネルギーを作用させて、凸状構造11の傾斜を修正する(S122)。
【0068】
凸状構造11にエネルギーを作用させ、その傾斜を修正する方法としては、例えば、凸状構造11に電荷を生じさせ、すなわち凸状構造11を帯電させて、電気的反発力を利用して、凸状構造11の傾斜を修正する方法;凸状構造11に外部からエネルギーを付与し、当該エネルギーによる凸状構造11の収縮力を利用して、凸状構造11の傾斜を修正する方法等が挙げられる。
【0069】
これらのうち、凸状構造11に電荷を生じさせる方法としては、例えば、プラズマ発生装置や、ドライエッチング装置等を用い、プラズマ雰囲気等の凸状構造体1を帯電させることが可能な雰囲気下に当該凸状構造体1を存在させることで、少なくとも凸状構造11の表面に同じ極性の電荷(例えばマイナス電荷)を与える方法;電界発生装置等により発生した電界中に凸状構造体1を存在させ、凸状構造体1の誘電分極又は静電誘導により少なくとも凸状構造11の表面に同じ極性の電荷(マイナス電荷又はプラス電荷)を偏在させる方法等が挙げられる。
【0070】
なお、凸状構造11に電荷を生じさせる方法として、ドライエッチング装置を用いて形成したプラズマ雰囲気下に凸状構造体1を存在させる方法を選択した場合、凸状構造体1(特に、基板2等)が実質的にエッチングされない程度の出力(例えば、ドライエッチング装置を用いてドライエッチング処理を行うときに、基板2の所望のエッチングレートが得られるプラズマ出力の80%以下程度、好ましくは50〜70%程度の出力)にてプラズマ雰囲気が形成されるようにし、所望により凸状構造体1が載置された電極に高周波電流が印加されないようにする(凸状構造体1側にプラズマ中の陽イオンが引き込まれ難いようにする)のが好ましい。これにより、プラズマ雰囲気中にて凸状構造体1がエッチングされることなく、当該凸状構造11に電荷を生じさせることができる。
【0071】
また、凸状構造11に外部からエネルギーを付与する方法としては、例えば、活性エネルギー線照射装置(電子線照射装置、イオンビーム照射装置等の荷電粒子線照射装置;紫外線照射装置、赤外線照射装置、可視光線照射装置、レーザー光線照射装置等の光線照射装置;X線照射装置、ガンマ線照射装置等の放射線照射装置等)を用い、活性エネルギー線(電子線、イオンビーム等の荷電粒子線;紫外線、赤外線、可視光線、レーザー光線等の光線;X線、ガンマ線等の放射線等)5を凸状構造11に照射する方法等が挙げられる(
図7参照)。
【0072】
凸状構造11に照射される活性エネルギー線5の種類は、凸状構造11を構成する樹脂材料の種類に応じて適宜選択され得る。例えば、凸状構造11が紫外線硬化性樹脂により構成され、当該紫外線硬化性樹脂を、架橋(重合)反応を利用して収縮させる場合、一般に、紫外線硬化性樹脂は波長400nm以下の活性エネルギー線5の照射により収縮するため、そのような波長を有する活性エネルギー線5を照射する必要がある。ここで、仮に活性エネルギー線5として紫外線を選択した場合、紫外線硬化性樹脂に含まれる重合開始剤は最適吸収波長を有するため、当該最適吸収波長に適合するピーク波長を有する紫外線を照射すると、凸状構造11は短時間のうちに収縮することになる。そのため、凸状構造11が収縮しすぎないように、紫外線の照射量を厳密に制御する必要がある。すなわち、制御性の観点からも使用するエネルギーを選択する必要がある。
【0073】
また、凸状構造11を構成するインプリント樹脂3の種類によっても活性エネルギー線5の種類が適宜選択され得る。例えば、活性エネルギー線5として波長が400nm以下の光線を選択した場合(活性エネルギー線照射装置として光線照射装置を選択した場合)、本実施形態により奏される効果は、当該凸状構造11を構成する樹脂の厚みや物性に依存することになる。具体的には、使用する光の波長に対する透過率が30%以下のインプリント樹脂3から構成される凸状構造11に光線を照射する場合と、透過率が90%以上のインプリント樹脂3から構成される凸状構造11に光線を照射する場合とでは、樹脂の硬化の態様が異なってくる。透過率30%以下の樹脂材料から構成される凸状構造11においては、光線が照射される表面がより収縮するが、透過率90%以上の樹脂材料から構成される凸状構造11においては、全体が略均一に収縮してしまう。このような樹脂材料における光線の透過率の違いにより、光線の透過率の高い(例えば90%)の樹脂材料から構成される凸状構造11においては、凸状構造11全体が略均一に収縮するため、凸状構造11の傾斜を修正することが困難となるが、光線の透過率の低い(例えば30%)の樹脂材料から構成される凸状構造11においては、凸状構造11の傾斜を修正することが容易となる。また、光線の照射により凸状構造11の傾斜を修正する場合には、基板2からの反射光によりさらに樹脂材料の収縮が生じる可能性も懸念される。よって、光線の照射により凸状構造11の傾斜を修正しようとする場合においては、凸状構造11に対して光線を照射する方向や散乱光等の光学系、凸状構造11を構成する樹脂材料の透過率(吸収率)や波長に対する反応性当の物性を考慮するのが好ましい。
【0074】
一方、活性エネルギー線5として電子線を選択した場合(活性エネルギー線照射装置として電子線照射装置を選択した場合)には、照射方向に面した樹脂の表面近傍においてエネルギーが消費されやすくなるため、樹脂の表面(電子線の照射面)に対して強い変化を起こすことが可能であり、凸状構造11の傾斜を修正することが可能となる。なお、電子線の照射条件もまた、適宜に選択するのが好ましい。例えば、電子線の照射源から照射方向を見たときの厚さ20nm以下の凸状構造11に対し、0.1〜10kV程度の低加速電圧により生じた電子線を照射することで、凸状構造11の側面のうち電子線の照射された面を構成する樹脂材料をより効果的に収縮させることができるが、当該凸状構造11の電子線照射面に対向する側面(電子線非照射面)を構成する樹脂材料をほとんど収縮させないため、凸状構造11の傾斜を修正することができる。よって、電子線の照射により樹脂材料を収縮させようとする場合には、電子線照射源から照射方向を見たときの凸状構造11の樹脂の厚さに応じて、電子線照射装置における加速電圧を適宜設定するのが望ましい。
【0075】
本実施形態において、傾斜する凸状構造11の側面のうち、当該凸状構造11の傾斜方向(
図6に示す例においては右方向)に対向する側面11a(
図6に示す例においては、側面視左側の側面)は相対的に伸長し、傾斜方向側の側面11b(
図6に示す例においては、側面視右側の側面)は相対的に収縮することになる。
【0076】
そのため、本実施形態において凸状構造11にエネルギーを付与する際には、傾斜する凸状構造11の側面のうち、相対的に伸長している側面11aに付与されるエネルギー量が大きくなるように、凸状構造11にエネルギーを付与する。相対的に伸長している側面11aに対して付与されるエネルギー量をより大きくすることで、相対的に収縮している側面11bよりも相対的に伸長している側面11aの収縮量が大きくなり、結果として凸状構造11の傾斜を修正することができる。
【0077】
具体的には、傾斜した凸状構造における相対的に伸長している側面に活性エネルギー線(電子線、イオンビーム、紫外線、赤外線、可視光線、レーザー光線、X線、ガンマ線等)5が重点的に照射されるようにするのが好ましく、そのために、凸状構造の傾斜方向や傾斜角度、隣接する凸状構造の間隔等を考慮して、活性エネルギー線源(電子銃やイオン銃;紫外線、赤外線、可視光線、レーザー光線の光源;X線、ガンマ線の照射源等)の設置位置を設定し、活性エネルギー線の照射方向を設定するのが好ましい。
【0078】
例えば、
図7に示すように、凸状構造体1の上方から基板2に対する直交方向CDに活性エネルギー線5を照射することにより、凸状構造11の側面11aに効率的に活性エネルギー線を照射することができる一方、凸状構造11の側面11bには活性エネルギー線5が照射され難くなるため、凸状構造11の側面11bよりも側面11aに対して付与されるエネルギー量を大きくすることができる。この結果、当該側面11aの収縮量が、側面11bの収縮量よりも大きくなるため、
図8に示すように、基板2の直交方向CDに向かって立ち上がるようにして凸状構造11の傾斜が修正されることになる。
【0079】
上述した傾斜修正工程(S122)において活性エネルギー線5を照射する場合、凸状構造11の傾斜角度、隣接する凸状構造11の間隔等に応じて、凸状構造11の側面11aにより効率的に活性エネルギー線5が照射されるように、活性エネルギー線5の照射方向を設定してもよい。
【0080】
例えば、凸状構造体1の側面視において、凸状構造11が右側に向かって傾斜しており、凸状構造11の傾斜(基板2の直交方向CDに対する、凸状構造11の軸線ALのなす角度)が大きく、凸状構造体1の上面視において一の凸状構造11の側面11aの一部が隣接する凸状構造11により隠れてしまうような場合、活性エネルギー線5の照射方向を
図9における左下方向(基板2の直交方向CDと凸状構造11の軸線ALとのなす角度よりも、活性エネルギー線5の照射方向と凸状構造11の軸線1Lとのなす角度の方が鋭角となる方向)に設定するのが好ましい(
図9参照)。
【0081】
また、凸状構造11の傾斜(基板2の直交方向CDに対する、凸状構造11の軸線ALのなす角度)が小さく、凸状構造体1の上面視において一の凸状構造11の側面11a全体が露見されるような場合、活性エネルギー線5の照射方向を
図10における右下方向(活性エネルギー線5の照射方向と凸状構造11の軸線1Lとのなす角度よりも、基板2の直交方向CDと凸状構造11の軸線ALとのなす角度の方が鋭角となる方向)に設定するのが好ましい(
図10参照)。
【0082】
本実施形態において、エネルギーの付与による凸状構造11の収縮は、凸状構造11を構成する樹脂材料の化学構造の変化に起因する収縮、凸状構造11に付与されるエネルギーにより生じる熱に起因する収縮等のうちの少なくとも1つのメカニズムにより生じているものと考えられる。
【0083】
これらのうち、樹脂材料の化学構造の変化に起因する収縮としては、例えば、凸状構造11を構成する樹脂材料の架橋(重合)反応が進行することにより起こる収縮;凸状構造11を構成する樹脂材料が環構造を有する材料であって、当該環構造が開環により直鎖構造となることで凸状構造11中の樹脂材料が高密度化されることにより起こる収縮;凸状構造11を構成する樹脂材料の分子鎖を切断し、凸状構造11の構造に影響を与えない程度(凸状構造11に損傷が生じない程度)の一部の分子を脱離させることにより起こる収縮;凸状構造11の外部から加わった力(圧力)により樹脂材料の分子鎖が伸びた状態となっていたものが、エネルギーの付与により相互に安定な状態となる距離へと移行することによる収縮等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1つのメカニズムにより凸状構造11が収縮しているものと考えられる。
【0084】
そのため、例えば、凸状構造11を構成する樹脂材料が活性エネルギー線硬化性樹脂である場合、当該活性エネルギー線硬化性樹脂の架橋(重合)反応を進行させ得るが、分子鎖を切断し得ない程度のエネルギー強度を有する活性エネルギー線5を凸状構造11の側面11aに向けて照射する。これにより、活性エネルギー線5が照射された部分(側面11a)近傍における活性エネルギー線硬化性樹脂の架橋(重合)反応が進行し、凸状構造11の側面11a近傍がより収縮することになる。この結果として、凸状構造11の傾斜を修正することができる。
【0085】
また、凸状構造11を構成する樹脂材料が環構造を有する樹脂材料である場合、当該環構造の開環反応を進行させ得る程度のエネルギー強度を有する活性エネルギー線5を凸状構造11の側面11aに向けて照射する。これにより、活性エネルギー線5が照射された部分(側面11a)近傍における樹脂材料の開環反応が進行して環構造が直鎖構造に変化することで当該側面11a近傍の樹脂材料の高密度化が生じるため、凸状構造11の側面11a近傍がより収縮し、凸状構造11の傾斜を修正することができる。
【0086】
さらに、凸状構造11を構成する樹脂材料の分子鎖を切断し、一部の分子を脱離させ得る程度のエネルギー強度を有する活性エネルギー線5を凸状構造11の側面11aに向けて照射する。これにより、活性エネルギー線5が照射された部分(側面11a)近傍における樹脂材料の分子鎖が切断されて一部の分子が脱離し、凸状構造11の側面11a近傍がより収縮する。この結果として、凸状構造11の傾斜を修正することができる。
【0087】
さらにまた、凸状構造11の側面11aに向けて活性エネルギー線5を照射することにより、当該照射された部分(側面11a)近傍を加熱する。これにより、凸状構造11の側面11a近傍を熱収縮させることができ、その結果として、凸状構造11の傾斜を修正することができる。
【0088】
本実施形態においては、凸状構造11に活性エネルギー線5を連続的に照射してもよいが、パルス状に活性エネルギー線5を照射することで、凸状構造11に過剰なエネルギーが付与されないようにするのが好ましい。凸状構造11に過剰なエネルギーが付与されてしまうと、主に収縮させたい部分(凸状構造11の側面11a)以外の部分も収縮してしまうこと等により、凸状構造体1が変形してしまうおそれがある。
【0089】
この場合において、活性エネルギー線照射のパルス幅及びパルス休止時間を含む活性エネルギー線照射条件は、凸状構造体1を構成する樹脂材料の種類、凸状構造11の寸法やアスペクト比、凸状構造11の傾斜角度等に応じて、凸状構造11の傾斜を修正し得る程度であって、凸状構造体1の変形を生じさせない程度に適宜設定すればよい。
【0090】
なお、凸状構造11の側面のうちの相対的に伸長している側面11aに重点的に活性エネルギー線5を照射したとしても、当該側面11a以外の部分(他の側面、基板2等)にも活性エネルギー線5が照射されたり、側面11aからエネルギーが伝播したりすることで、側面11a以外の部分にもエネルギーが付与される。このような場合に、凸状構造体1が全体的に収縮することになるが、凸状構造体1を構成する樹脂材料と、基板2を構成する材料との収縮率が相違することにより、凸状構造体1の全体的な収縮に伴い基板2の反り返りによる変形が生じるおそれがある。したがって、このような弊害を防止するために、
図11に示すように、凸状構造体1を製造する際にスリット6を形成しておいたり、凸状構造体1と基板2との間に断熱性、絶縁性、吸収性等のエネルギーの伝播を遮る特性を有する層を設けておくことで、エネルギーの伝播が生じるのを抑制したりするのが好ましい。
【0091】
従来の凸状構造体の製造方法であれば、第1転写工程における離型力が第1閾値を超えてしまうと、当該インプリントモールド4を用いた転写を継続することによるリスクが高いために予備モールドに交換せざるを得ない。しかしながら、上述した本実施形態に係る凸状構造体の製造方法によれば、第1転写工程における離型力が第1閾値を超えてしまった後であっても、そのまま継続して第2転写工程及び第3転写工程を行うことができるため、一のインプリントモールド1を用いた連続インプリント回数を増大させることができ、スループットをより向上させることができる。
【0092】
<半導体装置の製造方法>
上述した本実施形態に係る凸状構造体の製造方法により凸状構造体1を製造した後、当該凸状構造体1をマスクとしたエッチング処理等を行うことにより、半導体装置を製造することができる。
【0093】
例えば、本実施形態に係る凸状構造体の製造方法を用いて、LSI等の半導体装置を製造するための基板上に微細な配線層を形成するための凸状構造体1を製造する。その後、当該凸状構造体1をエッチングマスクとして用いて従来公知のエッチング処理(ドライエッチング処理)等を行う。これにより、半導体装置用の微細な配線層を基板上に形成することができる。
【0094】
上述した本実施形態に係る凸状構造体の製造方法によれば、第1転写工程における離型力が第1閾値を超えてしまった後であっても、そのまま継続して第2転写工程及び第3転写工程を行うことができ一のインプリントモールド4を用いた連続インプリント回数を増大させることができるため、半導体装置の製造スループットを向上させることができる。
【0095】
半導体装置では、配線層を多層化させることがある。所望の配線層をインプリントにより形成する場合、下地の層(配線や絶縁層)の平坦度分布の影響を受けることでインプリントにおけるインプリントモールド4の離型力が変動することがある。したがって、本実施形態に係る凸状構造体の製造方法を用いて、離型力が増大してしまう転写領域においてはインプリントモールド4を第2の角度θ
2又は第3の角度θ
3の方向に引き離し、当該転写領域に形成された凸状構造体1の凸状構造11の傾斜を修正することで、半導体装置の製造歩留りを向上させることができる。
【0096】
<凸状構造体の製造システム>
続いて、上述した本実施形態に係る凸状構造体の製造方法を実施可能なシステムの一例について説明する。
図13は、本実施形態における凸状構造体の製造システムの概略構成を示すブロック図である。
【0097】
図13に示すように、本実施形態における凸状構造体製造システム20は、基板上の所定の転写領域に、例えば、インクジェット法によりインプリント樹脂を離散的に滴下する樹脂塗布部21と、基板上の転写領域に塗布されたインプリント樹脂とインプリントモールドとを接触させ、その状態でインプリント樹脂を硬化させ、硬化後のインプリント樹脂からインプリントモールドを引き離し、基板上の転写領域に凸状構造体を形成するインプリント部22と、インプリント部22にて基板上の転写領域に形成された凸状構造体(の表面)にエネルギーを作用させて凸状構造の傾斜を修正する傾斜修正部23と、樹脂塗布部21、インプリント部22及び傾斜修正部23における動作等を制御する制御部24とを有する。
【0098】
インプリント部22は、基板を載置する基板ステージ、インプリントモールドを保持するモールドホルダー、インプリントモールドを基板の面内方向(X方向、Y方向)及び基板の垂直方向(Z方向)に相対的に移動するための駆動部、インプリントモールドをインプリント樹脂から引き離す際の離型力を測定する測定部、インプリントモールドと転写領域との位置合わせをするための位置合わせ部、並びにインプリントモールドが押圧されたインプリント樹脂を硬化させるための硬化手段(インプリント樹脂が紫外線硬化性樹脂の場合はUV光源等)を有する。
【0099】
インプリント部22における駆動部は、基板上の転写領域に塗布されたインプリント樹脂とインプリントモールドとを接触させるために、モールドステージをZ方向に移動させ得る機構、インプリント樹脂からインプリントモールドを所定の角度(第1〜第3の角度θ
1〜θ
3)に引き離すために、モールドステージを傾けることのできる機構(アクチュエータ等)等を有する。
【0100】
傾斜修正部23は、凸状構造体1における凸状構造11の傾斜を修正するために当該凸状構造11にエネルギーを作用させ得る構成を有するものであって、当該凸状構造11の表面に電荷を生じさせ得る構成を有するものや、当該凸状構造11の側面11aにおける樹脂材料を収縮させるために、当該側面11aにエネルギーを付与し得る構成を有するものを例示することができる。
【0101】
このような傾斜修正部23としては、プラズマチャンバーを有するプラズマ発生装置、プラズマ発生装置を有するドライエッチング装置、電界発生装置;電子線照射装置、イオンビーム照射装置、紫外線照射装置、赤外線照射装置、可視光線照射装置、レーザー光線照射装置、X線照射装置、ガンマ線照射装置等の活性エネルギー線照射装置等を例示することができる。
【0102】
制御部24は、樹脂塗布部21、インプリント部22及び傾斜修正部23における各種動作を制御するためのプログラム、インプリント部22における各転写工程(第1〜第3転写工程)の離型力に関する各閾値(第1〜第3閾値)データ、インプリント部22において各転写工程(第1〜第3転写工程)を実施したときのインプリントモールド4の引き離し時の離型力測定値データ、インプリント部22において第1転写工程以外の転写工程(第2転写工程、第3転写工程等)を実施した転写領域IAの位置データ等が記憶される記憶部を少なくとも有する。
【0103】
上述した構成を有する凸状構造体製造システム20を用い、本実施形態に係る凸状構造体の製造方法を実施することで、凸状構造体1を製造することができる。
【0104】
この場合において、樹脂塗布部21を作動させることで、基板2上の一の転写領域IAにインプリント樹脂3が離散的に滴下される(第1〜第3転写準備工程;S101,S107,S114)。
【0105】
また、インプリント部22の駆動部を作動させることで、基板2上の転写領域IAに凸状構造体1が形成され、測定部を作動させることで、インプリントモールド4の引き離し時の離型力が測定される(第1〜第3転写工程;S102〜S104,S108〜S110,S115〜S117)。なお、第2転写工程及び第3転写工程を実施した転写領域IAの位置データ及び測定部により測定された離型力測定値データは、制御部24の記憶部に一時的に記憶される。
【0106】
さらに、制御部24は、記憶部に記憶された離型力測定値データ及び各閾値(第1〜第3閾値)データに基づいて、離型力が各閾値を超えているか否かを判断する(離型力判定工程;S105〜S106,S111〜S113,S118〜S121)。そして、離型力が各閾値を超えているか否かの判断結果に基づいて、制御部24は、次の転写領域IAにおいて実施する転写工程(第1〜第3転写工程)を決定し、次の転写領域IAにおけるインプリント部22の駆動部の動作(インプリントモールドの引き離し角度(第1の角度θ
1〜第3の角度θ
3)等)を制御する。
【0107】
さらにまた、制御部24は、記憶部に記憶されている、第1転写工程以外の転写工程(第2転写工程、第3転写工程等)を実施した転写領域IAの位置データに基づいて、傾斜修正部23の動作を制御する(傾斜修正工程;S122)。具体的には、第1転写工程以外の転写工程(第2転写工程、第3転写工程等)を実施した転写領域IAを含む基板2上の凸状構造11の表面に電荷を生じさせるように、また、第1転写工程以外の転写工程(第2転写工程、第3転写工程等)を実施した転写領域IA上の凸状構造11にのみエネルギー線5を照射するように、傾斜修正部23が制御される。
【0108】
上述した凸状構造体製造システム20において、インプリント部22にて第2及び第3転写工程を実施することで凸状構造体1が形成された基板2のみを傾斜修正部23に搬送する。すなわち、基板2上の全転写領域IAに第1転写工程を実施することで凸状構造体1が形成されている場合、当該基板2は傾斜修正部23に搬送されない。これにより、傾斜修正部23においては、搬送された基板2上の凸状構造体1の表面に電荷を生じさせるか、搬送された基板2上の転写領域IAのうち、第2及び第3転写工程を実施した転写領域IA上の凸状構造体1のみに活性エネルギー線5が照射される。
【0109】
なお、インプリント部22にて凸状構造体1が形成された基板2のすべてを傾斜修正部23に搬送してもよい。この場合において、搬送された基板2の中で第2及び第3転写工程を実施することで転写領域IA上に凸状構造体1が形成されている場合にのみ、当該凸状構造体1にエネルギーを作用させるように、制御部24が傾斜修正部23を制御すればよい。
【0110】
上述した凸状構造体製造システム20によれば、基板2上の各転写領域IAにおいて、離型力が第1〜第3転写工程のそれぞれにおける第1〜第3閾値を超えているか否かにより、離型処理におけるインプリントモールドの引き離し角度(第1の角度θ
1〜第3の角度θ
3)を調整しながら、各転写工程を実施することができる。そして、第2転写工程及び第3転写工程を実施した転写領域IA上の凸状構造体1に対しては、傾斜修正部23にて傾斜する凸状構造11にエネルギーを作用させ、凸状構造11の傾斜を修正することができる。
【0111】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0112】
上記実施形態においては、第1の角度θ
1〜第3の角度θ
3の方向にインプリントモールドを引き離す第1転写工程〜第3転写工程を実施することができるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、第1の角度θ
1〜第nの角度θ
nの方向にインプリントモールドを引き離す第1転写工程〜第n転写工程(nは2以上の整数である。)を実施可能であればよい。
【0113】
この場合において、第m+1転写工程(mは1以上n−1以下の整数である。)における第m+1離型処理時の第m+1の角度θ
m+1は、第m転写工程における第m離型処理時の第mの角度θ
mよりも大きく設定される。
【0114】
上記実施形態において、各転写工程(各離型処理)における離型力を測定し、当該離型力が各転写工程(各離型処理)における各閾値を超えるか否かを判断しているが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、インプリントモールド4の引き離しの開始から終了までにおける離型力の変化率であってもよい
【0115】
上記実施形態として、インプリント処理(転写処理)に未使用であって、十分な離型性能(第1の角度θ
1方向への引き離しが可能(そのときの離型力が第1閾値以下となる))を奏し得るインプリントモールドを用いて凸状構造体を製造する例を説明したが、少なくとも一度のインプリント処理に用いられたインプリントモールドであって、例えば、インプリント処理後に長期間保管されていた等により、十分な離型性能を奏し得るか否かを判別不能なインプリントモールドを用いて凸状構造体を製造しようとする場合においても、本発明を適用することができる。
【0116】
この場合においては、最初に第n転写工程(nは2以上の整数である。)を実施し、第n転写工程における第n離型処理時の離型力と第n閾値とに基づいて、当該離型力が第n閾値以下である場合には、次に予定されている転写領域においては第n−1転写工程を実施し、徐々にインプリントモールドの引き離し角度を第1の角度θ
1に近づけるようにしてもよい。
【0117】
上記実施形態においては、第1転写工程以外の転写工程(第2転写工程及び第3転写工程)を実施した転写領域IA上の凸状構造体1のすべてにエネルギーを作用させているが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、第1転写工程以外の転写工程(第2転写工程及び第3転写工程)を実施した転写領域IA上に形成された凸状構造11の傾斜を検出する工程(傾斜判定工程)を有し、当該凸状構造11が傾斜していると判断された転写領域のみに、エネルギーを作用させるようにしてもよい。また、当該傾斜判定工程において、各転写工程(第1〜第3転写工程)により転写領域IA上に形成されたすべての凸状構造11の傾斜の有無を判断し、当該凸状構造11が傾斜していると判断された転写領域のみに、エネルギーを作用させるようにしてもよい。
【0118】
この場合において、凸状構造11の傾斜の検出方法としては、例えば、凸状構造体1をその上面又は側面からレーザー顕微鏡やSEM等を用いて撮像して、凸状構造11の傾斜の有無を確認する方法、AFM等を用いて凸状構造体1に探針を近接又は接触させ、凸状構造11の傾斜の有無を確認する方法等が挙げられる。なお、光学顕微鏡を用いると、凸状構造11に応答する分解能が十分ではなく、各凸状構造11を識別することは困難な場合があるが、傾斜していない凸状構造11が存在することが分かっている領域(例えば、第1転写工程を行った転写領域IA上の凸状構造11)の画像と比較したり、そのような領域を同一解像度にて撮像した画像と比較したりすることで、当該画像のコントラストや色味等の光学特性の違いにより凸状構造11の傾斜の有無を確認してもよい。また、透過率、屈折率、反射率等の測定データに基づいて凸状構造11の傾斜の有無を確認してもよい。さらには、これらの方法を組み合わせて用いてもよい。また、上記傾斜修正工程にて、傾斜した凸状構造11にSEM等を用いて電子線を照射する場合には、当該SEM等で電子線を照射しながら凸状構造11の傾斜の有無を確認することもできる。
【0119】
上記実施形態に係る凸状構造体の製造方法において、傾斜修正工程後に凸状構造11の傾斜が修正されたか否かを検査する検査工程をさらに有していてもよい。この場合において、当該検査工程において凸状構造11の傾斜が修正されていない又は傾斜の修正が不十分であると判断された場合には、当該凸状構造11に対して傾斜修正工程を再度実施することができる。なお、当該検査工程における凸状構造11の傾斜の修正を検査する方法としては、上述した凸状構造11の傾斜の検出方法と同様の方法(凸状構造体1をその上面又は側面からレーザー顕微鏡やSEM等を用いて撮像して、凸状構造11の傾斜の有無を確認する方法、AFM等を用いて凸状構造体に探針を近接又は接触させ、凸状構造11の傾斜の有無を確認する方法等)を例示することができる。
【0120】
上記実施形態において、形成予定の凸状構造11の軸線AL方向が基板2に対する鉛直方向CDであるものを例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、形成予定の凸状構造11の軸線AL方向が、基板2に対する鉛直方向CDよりも傾斜しているものであってもよい。