特許第6019957号(P6019957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019957
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】車輪支持用ハブユニット
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/76 20060101AFI20161020BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   F16C33/76 A
   F16C19/18
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-195754(P2012-195754)
(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公開番号】特開2014-52011(P2014-52011A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 良雄
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−087858(JP,A)
【文献】 特開2011−084265(JP,A)
【文献】 特開2010−190421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/76
F16C 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に複列の外輪軌道を設け、使用状態で懸架装置に支持された状態で回転しない外輪と、
外周面の軸方向外端部に車輪を支持固定する為の回転側フランジを、同じく中間部乃至軸方向内端部に複列の内輪軌道を、それぞれ設け、使用状態で前記車輪と共に回転するハブと、
これら両内輪軌道と前記両外輪軌道との間に、両列毎にそれぞれ複数個ずつ転動自在に設けられた転動体と、
前記外輪の内周面と前記ハブの外周面との間でこれら各転動体を設置した軸受空間の軸方向外端側開口部を塞ぐシールリングと、
円筒部と、この円筒部の軸方向内端開口部を塞ぐ状態で設けられた底部とを有し、この円筒部を前記外輪の軸方向内端寄り内周面に内嵌した状態で、この外輪の軸方向内端側開口部を塞ぐキャップと、
前記外輪の軸方向内端寄り内周面に形成した係止溝に係止されて、前記外輪と前記キャップとの間に弾性的に圧縮された状態で設けられたOリングとを備えた車輪支持用ハブユニットに於いて、
前記外輪の内周面のうち、前記キャップの円筒部と径方向に対向する部分で、且つ前記係止溝よりも軸方向外側部分に、軸方向に関して内径寸法が変化しない円筒面状の大径円筒面部が設けられ
前記外輪の内周面のうち、前記キャップの円筒部と径方向に対向する部分で、且つ前記係止溝よりも軸方向内側部分に、軸方向に関して内径寸法が変化せず、この内径寸法が前記大径円筒面部の内径寸法よりも小さい小径円筒面部が設けられ、
前記小径円筒面部が、前記キャップの円筒部の外周面の軸方向内端部と締り嵌めで嵌合され、
前記円筒部の外周面の軸方向外端縁が前記大径円筒面部に当接すると共に、この大径円筒面部の軸方向内端寄り部分と、当該部分と径方向に対向する前記円筒部の外周面との間に、径方向に関する隙間が設けられている事を特徴とする車輪支持用ハブユニット。
【請求項2】
前記キャップの円筒部、軸方向内端から軸方向外端へ向かう程、その外径寸法が大きくなる方向に傾斜したテーパ状とし、前記外輪の内周面のうち、前記キャップの円筒部と径方向に対向する部分で、且つ前記係止溝よりも軸方向外側部分の内径寸法が、自由状態での前記円筒部の軸方向外端部の外径寸法よりも小さい、請求項1に記載した車輪支持用ハブユニット。
【請求項3】
前記外輪の軸方向内端部内周面と、前記キャップの円筒部の外周面とにより構成される嵌合面の軸方向内端部を、絶縁層により被覆している、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した車輪支持用ハブユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、懸架装置に対し車輪を回転自在に支持する為の車輪支持用ハブユニットの改良に関する。具体的には、外輪と、この外輪の軸方向内端部に、この内端部側の開口を塞ぐ状態で固定されたキャップとの係合部(嵌合部)の構造を工夫する事により、このキャップの前記外輪に対する組み付け性が良く(組付作業が容易であり)、且つこのキャップの耐久性を確保できる構造を実現するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪は懸架装置に対して、車輪支持用ハブユニットにより回転自在に支持する。この様な車輪支持用ハブユニットとして従来から各種構造のものが、例えば特許文献1等に記載されて広く知られている。図4は、この特許文献1に記載されている車輪支持用ハブユニットの1例を示している。この車輪支持用ハブユニット1は、外輪2と、ハブ3と、複数個の転動体4、4と、シールリング5と、キャップ6と、エンコーダ7とを備える。
【0003】
このうちの外輪2は、内周面に複列の外輪軌道8、8を、外周面に取付フランジ9を、それぞれ設けている。
又、前記ハブ3は、外周面の軸方向外端部に回転側フランジ10を設けている。又、このハブ3の外周面の中間部に第一の内輪軌道11を形成し、同じく内端(軸方向に関して内とは、自動車への組み付け状態で幅方向中央寄りとなる側を言い、各図の右側。これに対して、自動車への組み付け状態で幅方向外寄りとなる、各図の左側を、軸方向に関して外と言う。本明細書及び特許請求の範囲全体で同じ。)部に形成した小径段部12に、その外周面に第二の内輪軌道13を形成した内輪14を外嵌固定している。この様なハブ3は、使用状態で前記車輪と共に回転する。
【0004】
又、前記各転動体4、4は、前記両外輪軌道8、8と前記第一、第二の両内輪軌道11、13との間に、両列毎にそれぞれ複数個ずつ、転動自在に設けられている。
又、前記シールリング5は、前記外輪2の軸方向外端部内周面と前記ハブ3の軸方向中間部外周面との間に設けられている。この様なシールリング5は、前記外輪2の内周面と前記ハブ3の外周面との間で、前記各転動体4、4を設置した軸受空間15の軸方向外端側開口部を塞ぐ。
【0005】
更に、前記キャップ6は、非磁性金属板(例えば、オーステナイト系ステンレス鋼板)に絞り加工等の塑性加工を施す事により全体を有底円筒状に形成している。この様なキャップ6は、円筒部16を、前記外輪2の軸方向内端部内周面に内嵌固定する事により、この内端部側の開口を塞ぐ状態で固定している。
又、前記エンコーダ7は、断面L字形で全体を円環状に構成した磁性金属板製の芯金17と、円輪状の永久磁石18とから成り、内輪14の軸方向内端部外周面に外嵌固定している。
そして、懸架装置を構成するナックル等に支持固定したセンサ20の検出部を、前記キャップ6の底部19を介して、前記エンコーダ7の被検出面を構成する、前記永久磁石18の軸方向内側面に対向させている。
【0006】
この様に構成する車輪支持用ハブユニット1の使用時には、前記取付フランジ9を懸架装置を構成するナックルにねじ止め固定し、前記回転側フランジ10に車輪を支持固定する。この状態でこの車輪が、前記ナックルに対し回転自在に支持される。例えば雨天での走行時には、この車輪が路面から泥水等の異物を跳ね上げるが、一般的な使用状態である限りこの異物は、前記シールリング5及び前記キャップ6により遮られて、前記軸受空間15内に進入する事はない。更に、前記車輪支持用ハブユニット1の場合、前記外輪2と前記キャップ6との嵌合面21のシール性を向上すべく、この外輪2とこのキャップ6との間に、Oリング22を設けている。この様なOリング22は、前記外輪2の軸方向内端寄り内周面に形成した係止溝23に係止した状態、且つこの係止溝23の底部と、前記キャップ6の円筒部16の外周面との間で、弾性的に圧縮した状態で設けている。
【0007】
ところで、上述の様なキャップ6を、金属板に絞り加工を施す事により造る場合、この金属板のスプリングバック等の影響で、金型の形状がそのまま中間素材の形状になるとは限らない。具体的には、前記キャップ6の様な有底円筒状の場合、このキャップ6の円筒部16が、前記底部19から離れる方向(組み付け状態の軸方向外側)に進む程、その外径寸法が大きくなる方向に傾斜したテーパ状となる。
【0008】
この様な形状を有する前記円筒部16を、前記外輪2の軸方向内端部内周面に内嵌固定する場合、この外輪2の軸方向内端側の開口部から、前記円筒部16を、その外径が小さくなる方向に弾性変形させた状態で押し込む。即ち、この円筒部16は、その外径が大きくなる方向(径方向外方)への弾性力を保持した状態で、前記外輪2の軸方向内端部内周面に押し込まれる。この為、前記円筒部16の軸方向外端部が、前記係止溝23と整合する位置まで押し込まれた際、この円筒部16の軸方向外端部が有する径方向外方への弾性力に基づいて、この円筒部16の軸方向外端部の外径が、前記係止溝23の軸方向外側面の径方向内端部の内径よりも大きくなる場合がある。すると、前記円筒部16の軸方向外端部と、前記係止溝23の軸方向外側面の径方向内端部とが当接して、この円筒部16を押し込み難くなる。又、この様に当接した状態から、この円筒部16を強引に押し込もうとすると、この円筒部16の軸方向外端部に変形等の損傷が生じて、前記キャップ6の耐久性が低下してしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−87858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、外輪と、この外輪の軸方向内端部に、この内端部側の開口を塞ぐ状態で固定されたキャップとの係合部(嵌合部)の構造を工夫する事により、このキャップの前記外輪に対する組み付け性が良く(組付作業が容易であり)、且つこのキャップの耐久性を確保できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車輪支持用ハブユニットは、外輪と、ハブと、複数個の転動体と、シールリングと、キャップと、Oリングとを備える。
このうちの外輪は、内周面に複列の外輪軌道を設け、使用状態で懸架装置に支持された状態で回転しない。
又、前記ハブは、外周面の軸方向外端部に車輪を支持固定する為の回転側フランジを、同じく中間部乃至軸方向内端部に複列の内輪軌道を、それぞれ設け、使用状態で前記車輪と共に回転する。
又、前記各転動体は、前記両外輪軌道と前記両内輪軌道との間に、両列毎にそれぞれ複数個ずつ、転動自在に設けられている。
又、前記シールリングは、前記外輪の内周面と前記ハブの外周面との間でこれら各転動体を設置した軸受空間の、軸方向外端側開口部を塞ぐ。
又、前記キャップは、円筒部と、この円筒部の軸方向内端開口部を塞ぐ状態で設けられた底部とを有しており、この円筒部を前記外輪の軸方向内端寄り内周面に内嵌した状態で、この外輪の軸方向内端側開口部を塞ぐ。
更に、前記Oリングは、前記外輪の軸方向内端寄り内周面に形成した係止溝に係止されており、前記外輪と前記キャップとの間に弾性的に圧縮された状態で設けられている。
【0012】
特に、本発明の車輪支持用ハブユニットの場合、前記外輪の内周面のうち、前記キャップの円筒部と径方向に対向する部分で、且つ前記係止溝よりも軸方向外側部分の内径寸法が、同じくこの係止溝よりも軸方向内側部分の内径寸法よりも大きい。
具体的には、前記外輪の内周面のうち、前記キャップの円筒部と径方向に対向する部分で、且つ前記係止溝よりも軸方向外側部分に、軸方向に関して内径寸法が変化しない円筒面状の大径円筒面部が設けられている。
又、前記外輪の内周面のうち、前記キャップの円筒部と径方向に対向する部分で、且つ前記係止溝よりも軸方向内側部分に、軸方向に関して内径寸法が変化せず、この内径寸法が前記大径円筒面部の内径寸法よりも小さい小径円筒面部が設けられている。
そして、前記小径円筒面部を、前記キャップの円筒部の外周面の軸方向内端部に締り嵌めで嵌合している。この状態で、前記円筒部の外周面の軸方向外端縁が前記大径円筒面部に当接し、この大径円筒面部の軸方向内端寄り部分と、当該部分と径方向に対向する前記円筒部の外周面との間に、径方向に関する隙間が設けられている。
上述の様な本発明の車輪支持用ハブユニットを実施する場合に例えば、請求項2に記載した発明の様に、前記キャップの円筒部を、軸方向内端から軸方向外端へ向かう程(キャップの底部から離れる程)、その外径寸法が大きくなる方向に傾斜したテーパ状とし、前記外輪の内周面のうち、前記キャップの円筒部と径方向に対向する部分で、且つ前記係止溝よりも軸方向外側部分の内径寸法を、自由状態(キャップを外輪に組み付けていない状態)での前記円筒部の軸方向外端部の外径寸法よりも小さくする。
又、上述の様な本発明の車輪支持用ハブユニットを実施する場合に好ましくは、請求項3に記載した発明の様に、前記外輪の軸方向内端寄り部分の内周面と、前記キャップの円筒部の外周面とにより構成される嵌合面の軸方向内端部を、絶縁層により被覆する。
【発明の効果】
【0013】
上述した様な本発明の車輪支持用ハブユニットによれば、キャップの外輪に対する組み付け性が良く(組付作業が容易であり)、且つこのキャップの耐久性を確保できる。
即ち、本発明の場合、外輪の内周面のうち、前記キャップの円筒部と径方向に対向する部分で、且つこの外輪の係止溝よりも軸方向外側部分の内径寸法を、同じくこの係止溝よりも軸方向内側部分の内径寸法よりも大きくしている。従って、前記キャップの円筒部を、前記外輪の内端側の開口部から押し込む際、例えば、このキャップの円筒部が、軸方向外方程外径寸法が大きくなる方向に傾斜したテーパ状である場合でも、この円筒部の軸方向外端部と、前記係止溝の軸方向外側面の径方向内端部とが当接しにくい。この為、前記円筒部を、前記外輪の内側に押し込み易くできると共に、この円筒部の軸方向外端部に、変形等の損傷が生じる事を防止できる。この結果、前記キャップの耐久性、延いては車輪支持用ハブユニットの耐久性を確保できる。
【0014】
又、請求項2に記載した発明によれば、前記キャップの円筒部を前記外輪の軸方向内端部内周面に内嵌固定した状態で、この円筒部の軸方向外端部と、この外輪の内周面のうちで前記係止溝よりも軸方向外側部分とを、全周に亙り当接させる事ができる。この為、軸受空間内に存在するグリース等の潤滑剤が、前記外輪と前記キャップとの嵌合面に進入する事を防止できる。この結果、この潤滑剤が、この外輪とこのキャップとの間に設けられたOリングに接触して、このOリングを変質(例えば、固化、膨張等)させる事を防止できる。
又、請求項3に記載した発明によれば、前記外輪の軸方向内端寄り部分の内周面と、前記キャップの円筒部の外周面とにより構成される嵌合面に水が浸入して、この嵌合面に電食が生じる事を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態の1例を示す、図4のX部に相当する部分拡大断面図。
図2】同じく、絶縁層を形成する作業を説明する為の図であって、図1のY部に相当する部分拡大断面図。
図3】本発明の技術的範囲から外れる構造の1例を示す、図1と同様の図。
図4】従来構造の1例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜2は、総ての請求項に対応する、本発明の実施の形態の1例を示している。本発明の車輪支持用ハブユニット1aの特徴は、外輪2aと、この外輪2aの軸方向内端部に、この内端部側の開口を塞ぐ状態で固定されたキャップ6aとの係合部(嵌合部)の構造を工夫した点にある。尚、本発明の特徴部分以外の構造は、図4に示した従来構造を含め、従来から知られている車輪支持用ハブユニットの構造とほぼ同様であるから、従来と同様に構成する部分に就いては、図示並びに説明を省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0017】
本例の車輪支持用ハブユニット1aは、図4に示した従来構造の車輪支持用ハブユニット1と同様に、キャップ6aを、外輪2aの軸方向内端部に、この内端部側の開口を塞ぐ状態で固定している。
前記キャップ6aは、底部19aと、円筒部16aとを有する。このうちの底部19aは、円板部24と、この円板部24の外径側に設けられた円輪部25とを、段部26で連続させた、略ハット形状の構造を有している。又、前記円筒部16aは、前記円輪部25の径方向外端から、底部19aから離れる方向(軸方向外方)へ延出した状態で形成している。又、本例の場合も、前記キャップ6aは、非磁性金属板(例えば、オーステナイト系ステンレス鋼板)に絞り加工等の塑性加工を施す事により造っている。従って、前記金属板のスプリングバック等の影響で、前記キャップ6aの円筒部16aは、前記底部19aから離れる(軸方向外方)程外径寸法が大きくなる方向に傾斜したテーパ状である。
この様な構造を有する前記キャップ6aは、前記円筒部16aを、前記外輪2aの軸方向内端部内周面に内嵌固定した状態で、前記外輪2aの軸方向内端開口部に組み付けている。
【0018】
又、前記外輪2aの内周面の軸方向内端寄り部分に、全周に亙り係止溝23aを形成している。そして、Oリング22aを、この係止溝23aに係止した状態で、この係止溝23aの底面と、前記キャップ6aの円筒部16aの軸方向中間部外周面との間で、弾性的に圧縮した状態で設けている。尚、前記Oリング22aに、炭素繊維、ガラス繊維等の補強材を、その繊維の方向が周方向となる状態で混入する事もできる。この様に繊維を混入すれば、前記Oリング22aに、軸受空間内15に存在するグリース等の潤滑剤が接触して、このOリング22aが膨張する様な場合でも、円周方向に関する膨張率を、径方向に関する膨張率に比べて小さくする事ができる。
【0019】
又、本例の場合、前記外輪2aの内周面の軸方向内端寄り部分のうち、前記係止溝23aよりも軸方向内側部分を小径部27とし、同じく軸方向外側部分を、大径部28としている。この様な大径部28の内径寸法R28は、前記小径部27の内径寸法R27よりも大きい(R28>R27)。即ち、前記係止溝23aの軸方向外側面29の径方向内端部の内径寸法(=内径寸法R28)を、前記係止溝23aの軸方向内側面30の径方向内端部の内径寸法(=内径寸法R27)よりも大きくしている。
【0020】
又、前記大径部28の内径寸法R28は、前記係止溝23aの底部の内径寸法よりも小さい。更に、前記大径部28の内径寸法R28は、自由状態(外輪に組み付けていない状態)に於ける、前記キャップ6aの円筒部16aの軸方向外端部の外径寸法よりも小さい。尚、本例の場合、前記大径部28を、前記係止溝23aの軸方向外側から前記キャップ6aの円筒部16aの軸方向外端よりも軸方向外側部分に掛けて形成している。但し、前記大径部28は、少なくとも前記係止溝23aの軸方向外側から、前記キャップ6aの円筒部16aの軸方向外端と径方向に対向する部分にまでの範囲に形成すれば良い。
【0021】
上述の様な構成を有するキャップ6aを、前記外輪2aに対して組み付ける場合、このキャップ6aの円筒部16aをこの外輪2aの軸方向内端側の開口部から、この外輪2aの軸方向内側面と前記キャップ6aの円輪部25の軸方向内側面とが同一平面上に位置する状態にまで押し込む。前記Oリング22aは、前記キャップ6aを前記外輪2aに対して組み付けた状態で、前記係止溝23aの底部と、このキャップ6aの円筒部16aの軸方向中間部外周面との間で、弾性的に圧縮される。又、前記外輪2aの軸方向内端部内周面の小径部27と、前記円筒部16aの軸方向内端寄り部分の外周面(前記底部19a寄り外周面)とが、締り嵌めで嵌合すると共に、前記外輪2aの大径部28と、前記円筒部16aの軸方向外端部外周面とが、全周に亙り当接する。
【0022】
又、本例の場合、前記キャップ6aを、前記外輪2aに対して組み付けた状態で、この外輪2aの小径部27と前記キャップ6aの円筒部16aの外周面とにより構成される嵌合面31の軸方向内端部(外輪2aの小径部27とキャップ6aの円筒部16aの外周面との境界部分の軸方向内側開口部)を絶縁層32により被覆している。この様な絶縁層32は、前記外輪2aに対して前記キャップ6aを組み付けた後、前記嵌合面31の軸方向内端部に、絶縁性を持つ塗料、或はコーキング剤を塗布する事により形成したものである。尚、この様な絶縁層32を構成する材料は、撥水性及び撥油性を有する事が好ましい。
【0023】
前記絶縁層32を構成する、絶縁性を有する塗料としては、例えば、ホルマール系、ポリエステル系、ポリエステルイミド系、ポリウレタン系、ポリアミドイミド系、ポリイミド系、ナイロン系、或いはこれらの混合物等、この他にも一般に絶縁被膜形成用の塗料として知られている各種塗料を使用する事ができる。又、この様な塗料に、チタン原子に親水基及び親油基が結合したチタン酸エステルを1〜5%添加すると共に、シリコーンオイル等の潤滑成分を、絶縁層を形成する部分の油分量に応じて適量加える事により、機械特性に優れた絶縁層を形成する事ができる。
【0024】
一方、前記絶縁層32を、コーキング剤により形成する場合、コーキング剤は乾燥(硬化)が遅く、乾燥に従って体積が減少すると、表面にひけ或いは剥がれが生じ易い。この為、絶縁層を形成する部分の油分量を考慮すると共に、表面が乾燥してもその内部は乾燥していない状態(ゲル状)を保てる様な、油性コーキング材等を選択する事が好ましい。
この様な油性コーキング剤としては、例えば、液状ポリサルファイド樹脂と、エポキシ樹脂或はフェノール樹脂等の密着付与剤と、可塑剤と、物性値を改善する為の無機充填剤(例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、珪酸アルミニウム等の金属塩)とを配合したものを使用する。
【0025】
又、本例の場合、図2に示す様に、前記嵌合面31の軸方向内端縁に、上述の様なコーキング剤33を塗布した後、このコーキング剤33の表面(軸方向内側面)に、硬化剤34を塗布している。この硬化剤34は、例えば、金属酸化物の硬化触媒(例えば、二酸化鉛、二酸化マンガン等)と、前記コーキング剤33に柔軟性を与える可塑剤(例えば、塩素化パラフィン等)と、このコーキング剤33の揺変性(チクソトロピ性)を改善し液垂れを防止する為の無機充填剤(例えば、カーボンブラック等)とを配合したものを使用する。
【0026】
本例の場合、図2に示す様に、前記嵌合面31の軸方向内端部に、上述の様なコーキング剤33を塗布した後、円輪状(シート状)に成形した硬化剤34を、このコーキング剤33の表面(軸方向内側面)に被せた状態で、円筒状の押し込み冶具35により押し込む(このコーキング剤33に押し付ける)様にして形成する。尚、このコーキング剤33の表面硬化を促進する為に、前記押し込み冶具35を適度な温度に加熱した状態で前記硬化層34を形成する事もできる。
【0027】
この様な方法により設けられた前記硬化層34は、常温下でも数分後には、その表面に防錆油を塗布しても問題ない程度にまで硬化する。又、前記硬化層34は、数時間後に硬化が完了して、前記コーキング剤33を長くゲル状態に保つ事ができる。更に、前記硬化剤34を、円輪状(シート状)に形成している為、前記コーキング材33の液垂れを防止し易い。この結果、製造ライン上で前記硬化剤34の硬化を待つ必要がなく、この硬化剤34を形成した後、すぐに次の製造工程に移行する事ができる。
【0028】
前述した様な本例の車輪支持用ハブユニット1aによれば、キャップ6aの外輪2aに対する組み付け性が良く(組付作業が容易であり)、且つこのキャップ6aの耐久性を確保できる。
即ち、本発明の場合、前記大径部28(前記外輪2aの軸方向内端寄り内周面のうち、前記係止溝23aよりも軸方向外側部分)の内径寸法R28を、前記小径部27(前記外輪2aの軸方向内端寄り内周面のうち、前記係止溝23aよりも軸方向内側部分)の内径寸法R27よりも大きくしている(R28>R27)。
従って、前記キャップ6aの円筒部16aを前記外輪2aの内端側の開口部から押し込む際、この円筒部16aが、前記底部19aから離れる程その外径寸法が大きくなる方向に傾斜したテーパ状であっても、前記円筒部16aの軸方向外端部と、前記係止溝23aの軸方向外側面29の径方向内端部とが当接しにくい。この為、前記円筒部16aを、前記外輪2aの内側に押し込み易くできると共に、この円筒部16aの軸方向外端部に変形等の損傷が生じる事を防止できる。この結果、前記キャップ6aの耐久性、延いては前記車輪支持用ハブユニット1aの耐久性を確保できる。
【0029】
又、本例の場合、前記大径部28の内径寸法R28を、自由状態での、前記円筒部16aの軸方向外端部の外径寸法よりも小さくしている。従って、この円筒部16aを前記外輪2aの軸方向内端部に内嵌固定した状態で、この円筒部16aの軸方向外端部外周面(先端部外周縁)を、この外輪2aの大径部28と、全周に亙って当接させる事ができる。この為、軸受空間15内に存在するグリース等の潤滑剤が、前記大径部28と前記円筒部16aとの間に進入する事を防止できる。この結果、この潤滑剤が前記Oリング22aに接触して、このOリング22aが変質する事を防止できる。
又、前記外輪2aの小径部27と、前記キャップ6aの円筒部16aの外周面とにより構成される前記嵌合面31の軸方向内端部を、絶縁層32により被覆している。この為、この嵌合面31に水が浸入して、電食が生じる事を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
前述した実施の形態の1例の場合、前記外輪2aの軸方向内端寄り内周面のうち、前記係止溝23aよりも軸方向内側部分に小径部27を形成すると共に、同じく軸方向外側部分に、この小径部27の内径寸法R27よりも大きい内径寸法R28(R28>R27)を有する大径部28を形成している。
一方、図3は、本発明の技術的範囲から外れる構造の1例を示している。本例の場合には、外輪2bの軸方向内端寄り内周面のうち、係止溝23bよりも軸方向外側部分に小径部27aを形成すると共に、同じく軸方向内側部分に、この小径部27aの内径寸法R27aよりも大きい内径寸法R28a(R28a>R27a)を有する、大径部28aを形成している。即ち、本例の場合、前述した実施の形態の1例に対して、外輪の軸方向内端寄り内周面に形成する大径部と小径部とを、係止溝を中心に軸方向に関して反対の関係で形成している。
【符号の説明】
【0031】
1、1a 車輪支持用ハブユニット
2、2a、2b 外輪
3 ハブ
4 転動体
5 シールリング
6、6a キャップ
7 エンコーダ
8 外輪軌道
9 取付フランジ
10 回転側フランジ
11 第一の内輪軌道
12 小径段部
13 第二の内輪軌道
14 内輪
15 軸受空間
16、16a 円筒部
17 芯金
18 永久磁石
19、19a 底部
20 センサ
21 嵌合面
22、22a Oリング
23、23a、23b 係止溝
24 円板部
25 円輪部
26 段部
27、27a 小径部
28、28a 大径部
29 軸方向外側面
30 軸方向内側面
31 嵌合面
32 絶縁層
33 コーキング材
34 硬化剤
35 押し込み冶具

図1
図2
図3
図4