(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面は概念図であり、説明上の都合に応じて適宜、構成要素の縮尺関係、縦横比等は誇張されていることがある。
【0014】
〔A〕用語の定義:
以下に、本発明において用いる主要な用語について、その定義をここで説明しておく。
【0015】
「表側」とは、表示装置用前面保護板或いはその他の構成要素において、表示装置用前面保護板を表示パネルと組み合わせて使用したときに、表示パネルからの表示光が出光する側であり、表示パネルの表示を観察する側を意味する。
「裏側」とは、前記「表側」とは反対側を意味し、表示装置用前面保護板或いはその他の構成要素において、表示パネルの表示光が入光する側を意味する。
透光性基板1の面に対して、「一方の面」は、遮光層2を構成する着色樹脂層2a、及び酸素遮断層3を必ず有する側の面である。「一方の面」とは「裏側」の面を意味し、「他方の面」とは「表側」の面を意味する。「一方の面」乃至は「裏側」の面を「第1面S1」とも呼び、「他方の面」乃至は「表側」の面を「第2面S2」とも呼ぶ。
【0016】
〔B〕表示装置用前面保護板:
以下、本発明による表示装置用前面保護板を説明する。
【0017】
《第1の実施形態》
図1(a)の平面図及び
図1(b)の部分拡大断面図を参照して、本発明による表示装置用前面保護板の第1の実施形態例を説明する。
図1(b)の断面図は
図1(a)の平面図中で、C−C線での断面図である。
【0018】
図1に示す本実施形態の表示装置用前面保護板10は、中央の表示用領域A1と、この表示用領域A1の外周部に設けられ可視光を遮蔽する不透明領域A2とを有する。本実施形態における表示装置用前面保護板10は、透光性基板1と、この透光性基板1の一方の面である第1面S1において、不透明領域A2に設けられる遮光層2の一構成層として着色樹脂層2aが設けられ、この着色樹脂層2aにより遮光層2は黒色などの色を呈する。
【0019】
本実施形態においては、遮光層2は透光性基板1の第1面S1上に設けられ、この第1面S1を裏側にして、第2面S2は表示用領域A1を透して見る表示パネルの観察者V側に向けて用いられることを、想定した形態である。
【0020】
着色樹脂層2aは、着色顔料を、感光性樹脂の硬化物を用いた樹脂バインダ中に含む。
着色樹脂層2aは、着色顔料と感光性樹脂の未硬化物とを含む着色感光性樹脂組成物を透光性基板1上に塗布し、フォトリソグラフィ法によってパターニングすることで形成されている。
【0021】
こうして、本実施形態では、遮光層2は着色樹脂層2aによって黒色などの色意匠を意匠表現しつつ、遮光性も確保した層となっている。このため、遮光層2は、配線7などを隠す機能以外に、表示装置用前面保護板10を加飾する加飾層となっている。
【0022】
さらに、透光性基板1の遮光層2が形成された後の一方の面である第1面S1の面上には、酸素遮断層3が着色樹脂層2aの全表面を被覆するように形成されている。本実施形態においては、酸素遮断層3は、着色樹脂層2aの部分のみに形成されている。したがって、酸素遮断層3は、表示用領域A1の全面には形成されていない。
なお、本実施形態においては、表示装置用前面保護板10は、
図1(a)で示すように、製品ロゴなどの可視情報8を有し、酸素遮断層3は、この可視情報8の部分も形成されており、したがって、酸素遮断層3は不透明領域A2の全域に形成されている。
【0023】
本発明においては、この酸素遮断層3によって、着色樹脂層2aの光劣化を抑制することができ、着色樹脂層2aを用いた遮光層2の耐光性が向上した構成となっている。
【0025】
〔表示用領域A1と不透明領域A2〕
表示装置用前面保護板10は、
図1(a)の平面図で例示したように、中央に表示用領域A1を有し、表示用領域A1の外周部に、可視光を遮蔽する不透明領域A2を有する。表示用領域A1は、表示装置用前面保護板10を表示パネルに適用したときに、表示装置用前面保護板10を透して、表示パネルが表示する内容を表示できる領域である。不透明領域A2は、不透明な、配線7やコネクタなどを隠したり、或いは、表示パネルが外周部に有する配線、コネクタなどを隠したりする為の領域である。また、不透明領域A2は、それが表現する色や模様、適宜設けるロゴやマークなどの可視情報8によって加飾部にもなる領域である。
【0026】
〔透光性基板1〕
透光性基板1は、少なくとも可視光線に対して透明で、表示装置用前面保護板10を適用する表示パネルに対して、表面を保護し得る機械強度を有するものであれば、特に制限はなく、代表的にはガラス板を用いることができる。とくに、前記ガラス板として、化学強化ガラスはフロートガラスに比べて機械的強度に優れ、その分薄くできる点で好ましい。化学強化ガラスは、典型的には、ガラスの表面近傍について、ナトリウムをカリウムに代えるなどイオン種を一部交換することで、化学的な方法によって機械的物性を強化したガラスである。
透光性基板1には、樹脂を用いることも可能である。例えば、前記樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂などを用いることができる。透光性基板1に樹脂を用いることで、軽量にできる上、可撓性を持たせることも可能となる。
【0027】
〔遮光層2〕
本実施形態における遮光層2は、透光性基板1の表示パネル側とする裏側の第1面S1の不透明領域A2の部分に形成されている。遮光層2は、不透明領域A2中の全領域に設けられている。逆に言えば、この遮光層2によって、不透明領域A2が不透明な領域として形成される。
本実施形態においては、遮光層2は、透光性基板1の第1面S1と第2面S2のうちの一方の面として第1面S1の面の、不透明領域A2に形成される。
遮光層2は、タッチパネルとしての中央の位置検知領域に対して、その外周部に有する配線7や制御回路、或いは表示パネルがその中央の表示領域に対して、その外周部に有する配線や制御回路などを隠して、目視不能にして、表示パネルと組み合わされた表示装置において、外観を損なわないようにする機能を有する。
【0028】
遮光層2は、不要な部品を隠すための遮光性と共に、外観意匠を向上させる機能も有する。本実施形態においては、遮光層2は着色樹脂層2aを一構成層として有する。そして、この着色樹脂層2aは、酸素遮断層3によって、光に対する耐光性が向上している。この結果、遮光層2の耐光性が向上している。
【0029】
遮光層2の遮光性は、要求仕様、表現色にもよるが、透過率で言えば大きくても3%以下(光学濃度ODにて1.5以上)、より好ましくは透過率で1%以下(光学濃度OD2.0以上)、さらに好ましくは透過率で0.01%以下(光学濃度OD4.0以上)が望ましい。
【0030】
[着色樹脂層2a]
着色樹脂層2aは、着色顔料を感光性樹脂の硬化物を用いた樹脂バインダ中に含む層からなる。
【0031】
着色樹脂層2aの形成法は基本的には特に限定されないが、例えば、着色顔料と感光性樹脂の未硬化物とを含む着色感光性樹脂組成物を、透光性基板1の面上に塗布した後、所定のパターンで露光し、現像するという、いわゆるフォトリソグラフィ法により形成することができる。本実施形態においては、着色樹脂層2aはフォトリソグラフィ法によって形成されている。
【0032】
(着色顔料)
上記着色顔料としては、着色樹脂層2aひいては遮光層2で表現する色に応じたものを用いればよく、特に制限はない。例えば、着色顔料としては、黒色顔料、白色顔料、赤色顔料、黄色顔料、青色顔料、緑色顔料、紫色顔料などを用いることができる。着色顔料は、1種単独で用いてもよいし、同種類の色、或いは異なる色の着色顔料を複数種類用いてもよい。
前記黒色顔料には、例えば、カーボンブラック、チタンブラック(低次酸化チタン、酸窒化チタンなど)を用いることができる。着色顔料としては、表現する色にもよるが、遮光性が得易い点では黒色顔料が好ましい。また、黒色など暗色を表現する場合、カーボンブラックなどの黒色顔料を用いずに、有彩色の着色顔料を複数種類混合して、黒色を表現することができる。
【0033】
(感光性樹脂)
前記感光性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ桂皮酸ビニル系樹脂、環化ゴム、等の反応性ビニル基などの光反応性基を有する感光性樹脂を1種以上用いることができる。前記アクリル系樹脂では、例えば、アルカリ可溶性樹脂、多官能アクリレート系モノマー、光重合開始剤、その他添加剤などからなる感光性樹脂を樹脂バインダの樹脂成分として用いることができる。
【0034】
前記アルカリ可溶性樹脂には、ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体などのメタクリル酸エステル共重合体、ビスフェノールフルオレン構造を有するエポキシアクリレートなどのカルド樹脂、などを1種以上用いることができる。
前記多官能アクリレート系モノマーには、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、などを1種以上用いることができる。
なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、メタクリレート、又は、アクリレートのいずれかであることを意味する。
【0035】
前記光重合開始剤には、アルキルフェノン系、オキシムエステル系、トリアジン系、チタネート系などを1種以上用いることができる。例えば、アルキルフェノン系では、(2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア(登録商標)907、BASFジャパン株式会社製))、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリオフェニル)ブタノン−1(イルガキュア(登録商標)369、BASFジャパン株式会社製))、オキシムエステル系では、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(O−ベンゾイルオキシム)(イルガキュア(登録商標)OXE01、BASFジャパン株式会社製))などを用いることができる。
【0036】
着色樹脂層2aの樹脂バインダとしては、この他、光増感剤、分散剤、界面活性剤、安定剤、レベリング剤などの、公知の各種添加剤を含むことができる。
【0037】
以上のように、着色樹脂層2aは、着色顔料を、感光性樹脂の硬化物を用いた樹脂バインダ中に含むが、本発明において、この樹脂バインダを構成する感光性樹脂の前記硬化物とは、光重合性化合物のみの硬化物に限定されず、例えば、上記分散剤、界面活性剤、或いは、アルカリ現像適性のために配合される前記アルカリ可溶性樹脂として用いられ得る光重合性化合物ではない非光重合性重合物、その他の非光重合性化合物などを、通常は含み得る硬化物である。
【0038】
(着色樹脂層2aによる表現色)
着色樹脂層2aによる表現色は、代表的には黒色であるが、特に制限はない。例えば、青色、緑色、赤色、茶色、橙色、或いは、白色系の色でもよい。
【0039】
上記白色系の色とは、純粋な白色(純白)以外に、アイボリー色、ベージュ色、赤みの白である赤白色(薄いピンク色)、黄みの白である黄白色、青みの白である青白色、緑みの白である緑白色、紫みの白である紫白色、茶色みの白である茶白色、黒みの白である灰色(ライトグレー)、銀色みの白である銀白色、金色みの白である金白色などの、有彩色で白っぽい色、及び無彩色で白っぽい色、も含む。
こうした白色系の色を、数値的に示せば、各種表色系を用いて定義することができる。なかでも慣用的な表色系の1種であるマンセル表色系(JIS Z 8721)によって示せば、本発明において白色系の色とは、マンセル表色系において、明度が8.0以上で、且つ彩度が2.0以下の色であると、定義することができる。白色系の色の色相については、どんな色味でも構わない。
【0040】
なお、マンセル表色系では、全ての色を、明度と、彩度と、色相の三属性によって表現する。この明度は、マンセル表色系では、最も明るい理想的な白を10とし、最も暗い理想的な黒を0とする。本発明においては、白色系の色は、明度は小さくても8とし、8.0以上とすることができる。また、マンセル表色系では、彩度は、無彩色を0とし、色が濃くなるほど値か大きくなり、最大値は明度と色相によって変わるが最大で14である。白色系の色とは、白っぽい色であるので、彩度は最大でも2として、2.0以下とすることができる。
マンセル表色系の前記三属性は、市販の分光測色計、分光光度計などによって測定することができる。
白色系の色の中でも、とりわけ白っぽい色は、マンセル表色系によって表現すれば、明度においては9.0以上の色、彩度においては1.0以下の色であり、さらに白っぽい色は、明度が9.0以上で且つ彩度が1.0以下の色である。
【0041】
(着色樹脂層2aの形成)
着色樹脂層2aの形成法は、本発明においては、特に限定されないことは既に述べたが、着色樹脂層2aは、前記感光性樹脂の未硬化物を含む樹脂バインダ中に着色顔料を含有する、着色感光性樹脂組成物によって、形成することができる。また、着色樹脂層2aは、フォトリソグラフィ法によって形成することが好ましい。スクリーン印刷で形成する場合に比べて、パターン精度よく、且つ、段差部分の断線などの生じ難くして着色樹脂層2aとすることができるからである。
前記着色感光性樹脂組成物には、さらに、この樹脂組成物を透光性基板1の面上に塗布する際の塗布適性、或いは印刷する際の印刷適性の調整などの為に、溶剤を含むことができる。
前記溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルセロソルブ、3−メトキシブチルアセテート、等を1種以上用いることができる。
【0042】
硬化性樹脂として感光性樹脂を用いる場合、前記着色顔料、前記感光性樹脂の未硬化物としては、従来、カラーフィルタ用途として調整された着色レジスト用の材料を用いてもよい。
【0043】
着色感光性樹脂組成物を、透光性基板1の面上に塗布する方法は、例えば、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ビードコート法などの公知の塗工法によることができる。
【0044】
着色感光性樹脂組成物を、透光性基板1の面上に塗布した後は、フォトリソグラフィー技術を用いて露光、現像、ベークなどの所定の工程を経て、パターニングすることにより、透光性基板1の面上の一部に、所定パターンの着色樹脂層2aを形成することができる。
【0045】
〔酸素遮断層3〕
酸素遮断層3は、耐光性が不足することがある着色樹脂層2aに対して、空気中の酸素が接触するのを防ぐ層である。このため、酸素遮断層3は、酸素透過度が小さい層となっている。
酸素遮断層3は、少なくとも着色樹脂層2aの部分に着色樹脂層2aを被覆するように形成すればよいが、表示用領域A1及び不透明領域A2の全面に形成してもよい。全面に形成する場合は、表示用領域A1での表示に支障を来たさないように、透明な層とする。
【0046】
本実施形態においては、酸素遮断層3は透明な層として形成されている。このため、不透明領域A2から表示用領域A1に向って、はみ出して、着色樹脂層2aの側面部分を被覆する部分(通常5〜20μm程度)でも、表示用領域A1としての透明性が確保されている。もしも、酸素遮断層3が不透明であれば、着色樹脂層2aからはみ出した酸素遮断層3の部分も不透明領域A2となる。このよにう、酸素遮断層3が表示用領域A1の全領域に形成されないときでも、着色樹脂層2aの側面も含めて着色樹脂層2aを被覆する場合は、酸素遮断層3は透明であることが、表示用領域A1の領域を狭めない点で、好ましい。もっとも、酸素遮断層3が表示用領域A1にはみ出したとしても、前記のように僅かであるので、本発明においては、酸素遮断層3は不透明としてもよい。
ただ、本発明においては、酸素遮断層3は着色樹脂層2aの側面を被覆することまでは、必須ではない。側面は酸素遮断層3の第1面S1に平行な層面に比べて面積的に小さいからである。
【0047】
こうした酸素遮断層3としては、着色樹脂層2aが太陽光を受けたときに、変質しない程度の小さい酸素透過度を示すものであれば特に制限はない。例えば、酸素遮断層3としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素などの無機材料、或いは、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ桂皮酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂などの有機材料を用いることができる。
酸素遮断層3の材料及び厚みは、JIS K7126−2のA法、23℃、50%RHの条件で、層の酸素透過度〔cm
3/(m
2・d・atm)〕が、1.0以下、好ましく、0.1以下となるように設定する。
酸素透過度が大き過ぎると、光劣化が生じ易くなることがあり、また、小さ過ぎても過剰性能となるだけである。
酸素遮断層3の形成は、無機材料では、スパッタ法などの物理的乃至は化学的気相成長法などで形成することができ、樹脂材料では塗工法により形成することができる。
【0048】
酸素遮断層3としては、層自体が透明である透明導電体薄膜を用いることもできる。
透明導電体薄膜としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide;インジウム錫酸化物)、IZO(登録商標;出光興産株式会社)(Indium Zinc Oxide;インジウム亜鉛化物)、AZO(Aluminum Zinc Oxide;アルミニウム亜鉛酸化物)、IGZO(Indium Gallium Zinc Oxide、インジウムガリウム亜鉛酸化物)、等の透明導電体薄膜を用いることができる。
透明導電体薄膜には、いわゆる透明電極として用いられているものを採用することができる。但し、酸素遮断層3自体としては、導電性は必要ないので、透明電極として必要な程度の導電性を有さなくてもよい。
【0049】
酸素遮断層3としては、層自体が不透明である金属層を用いることもきる。
金属層としては、例えば、銀、金、銅、クロム、プラチナ、アルミニウム、パラジウム、モリブデンなどの金属(含むその合金)などを用いることができる。金属層は、例えば、銀、パラジウム及び銅からなる銀合金(APCとも言う)の金属層としてスパッタ法により製膜後、フォトリソグラフィ法によりパターン形成することができる。
具体例を示せば、金属層としては、モリブデン(Mo)/アルミニウム(Al)/モリブデン(Mo)と3層積層構造の導電性層(MAMと呼ばれている)、銀、パラジウム及び銅からなる銀合金(APCとも言う)による金属層などを用いることができる。
金属層の形成法としては、特に制限はなく、フォトリソグラフィ法以外に、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法などの印刷法によって形成してもよい。
金属層としては、いわゆるメタル配線として用いられている導電性金属層を採用することができる。但し、酸素遮断層3自体としては、導電性は必要ないので、メタル配線として必要な程度の導電性を有さなくてもよい。
【0050】
〔製造方法〕
本実施形態の表示装置用前面保護板10を構成する各層は、例えば、次の様にして形成される。
1)先ず、透光性基板1の第1面S1の不透明領域A2とする領域に、遮光層2を構成する着色樹脂層2aをパターン形成する。
2)次に、着色樹脂層2aに対しては、その側面も含めて被覆する様に着色樹脂層2aの面上に酸素遮断層3を形成する。
【0051】
〔酸素遮断層3による耐光性向上メカニズム〕
本発明においては、遮光層2に用いる着色樹脂層2aの耐光性を向上させるために、着色樹脂層2aに当たる光が来る方向とは反対側に、酸素遮断層3という光透過可能な透明でもよい層を設ける。着色樹脂層2aの耐光性を向上させる方策に対する通常の発想ならば、着色樹脂層2aに対して光が来る側に、例えば紫外線吸収機能を有する紫外線吸収層を設けるなどして、耐光性を向上させることになる。この紫外線吸収層2は、着色樹脂層2aの色が表側から見える必要から可視光に対しては透明である。また、耐光性が密着性の低下として生じるならば、着色樹脂層2aが形成される透光性基板1と、着色樹脂層2aとの間に、プライマ層などの密着強化層を、設けることも考えられる。
しかし、驚くべきことに、本発明者は、光が来る方向とは反対側、つまり着色樹脂層2aの裏側に、酸素遮断層3を設けることで、着色樹脂層2aの耐光性が向上することを、偶然に発見して、本発明に至った。
したがって、酸素遮断層3は、着色樹脂層2aの光劣化の原因となる光を遮蔽する機能は全くと言ってよいほど持たない。このため、酸素遮断層3を設けることによって、着色樹脂層2aの耐光性が向上するメカニズムは、現段階に於いては不明である。ただ、酸素遮断層3による耐光性向上のメカニズムは、想像するに、着色樹脂層2aの裏側に設けた酸素遮断層3によって耐光性が向上していることから判断すると、着色樹脂層2aの光劣化には、光と共に空気中の酸素の存在も影響していると考えられる。つまり、着色樹脂層2aの裏側から酸素が供給され、この酸素と、表側から到達する光との協同作用によって、着色樹脂層2a中の物質の光酸化反応が促進されているのではないかと思われる。
【0052】
〔耐光性の指標〕
本実施形態においては、着色樹脂層2aの耐光性の指標として、着色樹脂層2aで黒色を表現したときの正反射率の経時的な上昇の程度、及び密着性の低下を採用した。
なお、本発明においては、耐光性の指標としては、太陽光によって着色樹脂層2aに係る性能が劣化するものであれば、基本的には特に制限はない。例えば、拡散反射光のスペクトル変化、などを採用することもできる。
【0053】
(正反射率)
前記正反射率の経時的な上昇は、具体的には次の様にして測定評価した。
表示装置用前面保護板10を試験片として、耐光性試験機によって促進試験を実施後、着色樹脂層2aの部分の表側からの正反射率の経時的な推移を測定し、正反射率の上昇が少なくなっていることによって、耐光性が向上していると判断した。
上記耐光性試験機としては、例えば、キセノンロングライフフェードメーターFAL−25AX(スガ試験機械株式会社製)を用いることができる。
上記正反射率の推移は、正反射光強度の測定によって得られ、正反射光強度の測定には、例えば、顕微分光測色機OSP−SP200(オリンパス株式会社製)を用いることができる。
【0054】
図2は、正反射率の測定方法を示す図である。正反射率は、同図に示すように、表側から垂直に、国際照明委員会CIEによる標準光源Cの光を当てて、Yxy表色系でのY値〔%〕をもって正反射光の正反射率〔%〕とする。測定は、透光性基板1と着色樹脂層2aとの界面に顕微分光測色機の焦点を当てて測定する。
また、正反射率の推移として、その変化を、耐光性促進試験を開始前の初期状態の正反射率に対する、試験開始後の正反射率の差として算出する。
【0055】
耐光性試験機での試験時間は、通常、100h以上、好ましくは500h以上、より好ましくは1000h以上である。この時間内で、耐光性の指標の変化が酸素遮断層3によって少なく成っていれば、耐光性が向上したと言える。さらに、変化が許容できる範囲内であれば、耐光性が実用的に向上したと言える。
【0056】
本実施形態における正反射率の推移を
図3のグラフに示し、正反射率の変化の推移を
図4のグラフに示す。このときの耐候性試験機の試験条件は、300〜700nmでの積算照度320W/m
2、試験片温度60℃である。
これらのグラフから、酸素遮断層3を設けることによって、正反射率の変化が少なくなり、耐光性が向上していることが判る。
正反射率の変化が0.15以上となると、目視でも変化が判別できるようになるので、要求水準にもよるが、正反射率の変化は0.15未満であることが好ましい。
本実施形態においては、耐光性試験機による試験時間が少なくとも300hまで、正反射率の変化が0.15未満であり、実用上、耐光性が向上していることが判る。
【0057】
(密着性)
本実施形態においては、密着性の点においても耐光性の向上が確認された。密着性の評価は、JIS K5400(1990年)の碁盤目テープ法に準拠して評価することができる。具体的には、試験片の着色樹脂層2aの上から、カッターナイフで1mm間隔で切り傷を付けて、1mmの大きさの正方形からなる碁盤目を100個作り、この碁盤目の上から、セロハン粘着テープ(ニチバン株式会社製)を貼り付けてから1〜2分後に、セロハン粘着テープの一端を持って、試験片の面に直角に保ち瞬間的に引き剥がしたときの、碁盤目の面の状態から密着性を評価点数で評価する。
【0058】
評価点数は最もよいのを10点、最も悪いのを0点とし、以下の基準により判定する。
10点:切り傷1本毎が細く両端が滑らかで、碁盤目の剥がれが1個もない状態。
8点:切り傷の交点にわずかに剥がれがあるが、碁盤目の剥がれは1個もなく、欠損部の面積が碁盤目全体の5%以内の状態。
6点:切り傷の両側と交点とに剥がれがあり欠損部の面積が碁盤目全体の5〜15%の状態。
4点:切り傷による剥がれの幅が広く、欠損部の面積が碁盤目全体の15〜35%の状態。
2点:切り傷による剥がれの幅が4点よりも広く、欠損部の面積が碁盤目全体の35〜65%の状態。
0点:欠損部の面積が碁盤目全体の65%以上の状態。
【0059】
本実施形態においては、耐光性試験機による試験時間が100hの時点で、上記評価点数が、酸素遮断層3を設けない構成では0点となるのに対して、10点となり、耐光性の向上が認められた。
【0060】
〔オーバーコート層4〕
本発明においては、
図5の断面図で示すように、着色樹脂層2aと酸素遮断層3との間に、オーバーコート層4を設けることができる。
オーバーコート層4によって、酸素遮断層3の着色樹脂層2aに対する密着性が不足する場合に、密着性を向上させることができる。
また、着色樹脂層2aの表面が荒れていると、酸素遮断層3としての透明導電体薄膜が均質な膜として形成できず酸素遮断性能が充分に発揮されないことがあるのを、オーバーコート層4によって形成面を平坦化して防ぐことができる。
【0061】
なお、オーバーコート層4には、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂などの硬化性樹脂を用いることができ。硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂、光硬化性のアクリル系の感光性樹脂などを用いることができる。オーバーコート層4は、前記着色樹脂層2aと同様の塗工法で形成することができる。感光性樹脂の場合は、部分形成するときにフォトリソグラフィ法を利用することができる。
【0062】
〔本実施形態における効果〕
本実施形態においては、酸素遮断層3によって、遮光層2を構成する感光性樹脂を用いた着色樹脂層2aの耐光性を向上させることができる。
【0063】
《第2の実施形態:タッチパネル一体化とその透明導電体薄膜による酸素遮断層3》
本実施形態は、タッチパネル用の透明電極5及び配線7も有する形態例である。
図6の裏側から見た平面図、及び、
図7の模式的な部分拡大断面図、
図8の透明電極5の交差部5Cの形成順序を示す部分拡大平面図、及び、
図9の透明電極5の交差部5C周辺の部分拡大断面図、さらに、
図10の透明電極5の交差部5Cの形成順序を示す部分拡大平面図、及び、
図11の透明電極5の交差部5C周辺の部分拡大断面図、及び
図12の模式的な部分拡大断面図を参照して、本発明による表示装置用前面保護板10の第2の実施形態例を説明する。
図6(a)は、表示装置用前面保護板10を、裏側から見た全体図である。
図6(b)及び
図6(c)の部分拡大平面図は、透明電極5を構成する第1電極5a及び第2電極5bの電極パターン形状を模式的に示す図である。透明電極5は、投影型静電容量方式のタッチパネル用として形成されている例である。
【0064】
本実施形態は、
図1に示した前記第1の実施形態に対して、次の点が異なる以外は、同じである。よって、同じ部分の説明は省略する。
a)第1面S1の面上に、タッチパネル用の透明電極5及び配線7が形成されている点。
b)X方向に延びる第1電極5a及びY方向に延びる第2電極5bの互いの交差部5Cに、絶縁層6が形成されている点。
c)酸素遮断層3となる透明導電体薄膜が、前記透明電極5と同一材料で同時形成されている点。
d)酸素遮断層3が導電性である為に、酸素遮断層3の面上に形成される配線7、及びこの配線7に接続する透明電極5の取り出し部の形成面を絶縁性とするための絶縁層6が、酸素遮断層3の面上に形成されている点。
【0065】
なお、本発明においては、「絶縁性」とは、電気的に絶縁性であることを意味する。
【0066】
〔積層構造〕
本実施形態では、タッチパネルの位置検知用の透明電極5として、第1電極5aと、第2電極5bとを、ともに同一の面上に形成するタッチパネル構造を採用している。すなわち、第1電極5a及び第2電極5bは、透光性基板1の同一の面である第1面S1の面上に形成される。
【0067】
透明電極5は、本実施形態においては、互いに絶縁されて形成される第1電極5a及び第2電極5bから構成される。
第1電極5a、第2電極5bは、本実施形態、及びこれから説明する各実施形態においては全て、同一実施形態内においては同じ材料で形成してある。よって、本明細書において、これらを纏めて言うときは、単に「透明電極5」とも呼ぶ。
【0068】
一般に投影型静電容量式タッチパネルでは、
図6(a)〜
図6(c)に示すように、図面で左右方向であるX方向に延在する複数の第1電極5aと、X方向とは直交し図面で上下方向であるY方向に延在する複数の第2電極5bとを有する。ここでは、X方向に延在する電極を第1電極5aと呼び、Y方向に延在する電極を第2電極5bと呼ぶことにする。
静電容量式タッチパネル自体としては、第1電極5a及び第2電極5bは、それぞれが別々の透光性基板1に形成される形態もあるが、同一基板、それも、同一基板の同一面上に形成される形態とすることで、互いの相対的位置精度を向上できる利点がある。
本実施形態における表示装置用前面保護板10も、第1電極5a及び第2電極5bを、一つの透光性基板1の同一面上に形成した形態である。
【0069】
第1電極5a及び第2電極5bのパターンとしては、投影型静電容量方式では各種パターンが知られているが、本実施形態におけるパターンでは、一つの第1電極5aは、
図6(b)に示すように、菱形形状の複数の第1透明電極要素5aEと、互いに隣接する第1透明電極要素5aE同士を接続し第1透明電極要素5aEに比べて面積が小さい第1接続部5aCと、不図示の、位置検知領域の外周部の不透明領域A2まで延びて配線7に第1透明電極要素5aEを電気的に接続する為の取り出し部と、から構成される。同様に、一つの第2電極5bも、
図6(c)に示すように、菱形形状の複数の第2透明電極要素5bEと、互いに隣接する第2透明電極要素5bE同士を接続し第2透明電極要素5bEに比べて面積が小さい第2接続部5bCと、第2透明電極要素5bEを配線7に電気的に接続する不図示の取り出し部と、から構成される。
ただし、
図6(a)では、第1電極5aは第1透明電極要素5aEのみを描いてあり、第2電極5bも第2透明電極要素5bEのみを描いてあり、第1接続部5aC、第2接続部5bC、及び取り出し部の図示は省略してある。
【0070】
図7の部分拡大断面図、
図8の形成順序を説明する平面図、及び
図9の交差部5C周辺を示す部分拡大断面図を参照して、さらに説明する。
第1電極5aと第2電極5bとは、これらの交差部5Cにおいて絶縁層6によって互いに絶縁されている。絶縁層6は、通常ならば、少なくとも前記第1電極5aと第2電極5bとの交差部5Cに必要となるのだが、本実施形態においては、酸素遮断層3の面上にも、絶縁層6が、配線7などを互いに絶縁するために、交差部5Cの絶縁層6と同一材料で同時形成されている。
【0071】
延在方向が互いに交差する第1電極5a及び第2電極5bは、互いに電気的に絶縁されて形成される必要があるから、透光性基板1の同一面(同図では第1面S1の面)上に、これらを形成する構成では、第1電極5a及び第2電極5bのいずれか一方、例えば、第1電極5aを形成した後、全面に透明な絶縁層を形成し、この絶縁層の面上に、第2電極5bを形成することもできる。しかし、これでは、第1電極5aと第2電極5bのパターン形成は別工程となり、アライメント精度が関係してくるために、互いの相対的位置精度は向上しない。そこで、同図の構成では、第1接続部5aCを除く第1電極5a、及び、第2電極5bは、同一面に同時パターン形成されている。
【0072】
こうした透明電極5の交差部5Cの構造は、
図8で示すようにして形成することができる。
1)先ず、
図8(A)のように、第1接続部5aCとなるブリッジ下側部5aUを形成する。このとき、同図では図示しないが、ブリッジ下側部5aUを構成する透明導電体薄膜によって、酸素遮断層3も同一材料で同時形成する。
2)次に、
図8(B)のように、絶縁層6を形成する。このとき、同図では図示しないが、交差部5Cにおける絶縁層6を構成する材料によって、酸素遮断層3の面上の絶縁層6も同一材料で同時形成する。
3)次に、
図8(C)のように、第1電極5aのうちブリッジ下側部5aUを除く全てと、ブリッジ部5bBを含む第2電極5bの全てを、同一材料で同時形成する。
4)後は、図示はしないが、不透明領域A2における配線7を形成する。
上記3)及び4)は順序が逆でもよい。
図9は、
図8(C)中のC−C線における、透明電極の交差部5C周囲を示す部分拡大断面図である。
【0073】
こうして、
図6の平面図、
図7及び
図9の部分拡大断面図で示す、本実施形態における表示装置用前面保護板10を製造することができる。
【0075】
こうした透明電極5の交差部5Cの逆構造は、
図10で示すようにして形成することができる。
1)先ず、
図10(A)のように、第1電極5aのうちブリッジ部5aB及び取り出し部を除く全てと、ブリッジ下側部5bUを含み取り出し部を除く第2電極5bを、同一材料で同時形成する。このとき、同図では図示しないが、これら第1電極5a及び第2電極5bを構成する透明導電体薄膜によって、酸素遮断層3も同一材料で同時形成する。
2)次に、
図10(B)のように、絶縁層6を形成する。このとき、同図では図示しないが、交差部5Cにおける絶縁層6を構成する材料によって、酸素遮断層3の面上の絶縁層6も同一材料で同時形成する。
3)次に、
図10(C)のように、第1接続部5aCとなるブリッジ部5aBを形成する。このとき、同図では図示しないが、配線7に接続する部分である取り出し部を第1電極5a及び第2電極5bについても、ブリッジ部5aBと同一材料で同時形成する。
4)後は、図示はしないが、不透明領域A2における配線7を形成する。
上記3)及び4)は順序が逆でもよい。
図10は、
図10(C)中のC−C線における、透明電極のか交差部5C周囲に対応した部分拡大断面図である。
【0076】
〔酸素遮断層3〕
本実施形態においては、酸素遮断層3は、透明導電体薄膜によって形成されている。さらに、この透明導電体薄膜は、タッチパネル用の透明電極5を構成する透明導電体薄膜と同一材料で同時形成されている。
【0077】
〔透明電極5〕
本実施形態においては、透明電極5には、層自体が透明である透明導電体薄膜が用いられる。
透明導電体薄膜からなる透明電極5としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide;インジウム錫酸化物)、IZO(登録商標;出光興産株式会社)(Indium Zinc Oxide;インジウム亜鉛化物)、AZO(Aluminum Zinc Oxide;アルミニウム亜鉛酸化物)、IGZO(Indium Gallium Zinc Oxide、インジウムガリウム亜鉛酸化物)、等の透明導電体薄膜をパターン形成したものを用いることができる。
本実施形態においては、透明導電体薄膜としては、具体的にはITOを用いてある。
【0078】
また、本実施形態においては、透明電極5に用いた透明導電体薄膜は、前記酸素遮断層3と同一材料を用いてある。つまり、透明電極5のパターンの中に、酸素遮断層3と同時形成可能な面に同時形成可能なパターンを含み、この同時形成可能な面に同時形成可能なパターン部分において、透明電極5と酸素遮断層3とは同時形成されているので、追加の工程無しに、酸素遮断層3が形成されている。
【0079】
なお、交差部5Cにおいて絶縁層6の上に形成されるブリッジ部5aB或いはブリッジ部5bBに該当する透明電極5の部分は、酸素遮断層3と同時形成可能な面に形成されるパターンではない。この点について、更に言えば、交差部5Cにおける透光性基板1側からの積層順序をみると、交差部5Cにおいては、ブリッジ下側部5aU(或いはブリッジ下側部5bU)、絶縁層6、ブリッジ部5bB(或いはブリッジ部5aB)となるのに対して、不透明領域A2においてては、透光性基板1側からの積層順序が、遮光層2となる着色樹脂層2a、絶縁層6、透明電極5の取り出し部、乃至は配線7となる。従って、絶縁層6を基準にすると、絶縁層6よりも透光性基板1側となるブリッジ下側部5aU(或いはブリッジ下側部5bU)と酸素遮断層3とは、本実施形態のように同一材料で形成できれば、同時形成可能な面に同時形成可能な層となる。
【0080】
〔絶縁層6〕
本実施形態においては、タッチパネル機能を一体化した形態であり、タッチパネル用の配線7及び透明電極5も、遮光層2が形成された第1面S1上に有し、配線7及び、この配線7に接続する透明電極5の一部(取り出し部)が、遮光層2の面上に形成されている。つまり、遮光層2を構成する着色樹脂層2aを被覆する酸素遮断層3の面上に、絶縁層6が形成されている。本実施形態においては、酸素遮断層3は透明導電体薄膜からなり導電性であるため、酸素遮断層3の面に接して配線7及びこれに接続する透明電極5の取り出し部を、直接接触させて形成すると、これらの導体に必要となる絶縁を確保できない。このため、配線7及び透明電極5の取り出し部は、酸素遮断層3の面上及び側面において、絶縁層6を介するように形成してある。
【0081】
酸素遮断層3は、基本的には導電性、絶縁性、いずれでもよい。但し、タッチパネルと一体化し、タッチパネル用の配線7や透明電極5なとが、酸素遮断層3の面に接して形成される構成となる場合は、これらの配線7及び透明電極5の絶縁を、いかなる層構成でも確保できる意味では、絶縁性であることが好ましい。
しかし、酸素遮断層3を導電性とする場合は、透明電極5と同一材料で同時形成することで、コストをかけずに酸素遮断層3を形成できることがある。本実施形態は、交差部5Cの絶縁層6を、酸素遮断層3の面上にも同一材料で同時形成できることを活かして、酸素遮断層3は導電性の層として、透明電極5を構成する透明導電体薄膜と同一材料で同時形成されている例である。
【0082】
絶縁層6には、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂などの硬化性樹脂を用いることができる。硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂、光硬化性のアクリル系の感光性樹脂などを用いることができる。絶縁層6は、前記着色樹脂層2aと同様の塗工法で形成することができる。感光性樹脂の場合は、部分形成するときにフォトリソグラフィ法を利用することができる。
絶縁層6には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素などの無機材料を用いることもできる。
絶縁層6が透明である場合、絶縁層6は、表示用領域A1も含めて、表示装置用前面保護板10の全面に形成することもできる。
【0083】
本実施形態においては、不透明領域A2に形成される配線7間の絶縁を確保する為に、透光性基板1の遮光層2としての着色樹脂層2a、及び酸素遮断層3が形成された後の一方の面である第1面S1の面上には、酸素遮断層3の直上に絶縁層6が形成されている。つまり、絶縁層6は、酸素遮断層3形成後に、酸素遮断層3の面に接して形成されている。
絶縁層6は、本実施形態においては、透明樹脂層として形成されており、この透明樹脂層は、前記着色樹脂層2aが含む着色顔料を除いた透明樹脂組成物によって、着色樹脂層2aと同様にして形成されている。
【0084】
〔配線7〕
配線7には、公知の材料及び形成法を採用することができる。例えば、配線7には、銀、金、銅、クロム、プラチナ、アルミニウム、パラジウム、モリブデンなどの金属(含むその合金)などを用いることができる。配線7は、例えば、銀、パラジウム及び銅からなる銀合金(APCとも言う)の金属層としてスパッタ法により製膜後、フォトリソグラフィ法によりパターン形成することができる。
配線7には、モリブデン(Mo)/アルミニウム(Al)/モリブデン(Mo)と3層積層構造の導電性層(MAMと呼ばれている)を用いることもできる。
本実施形態においては、配線7は、銀、パラジウム及び銅からなる銀合金(APCとも言う)によって、導電性金属層として形成されている。
配線7の形成法としては、特に制限はなく、フォトリソグラフィ法以外に、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法などの印刷法によって形成してもよい。
【0085】
配線7には、フォトリソグラフィ法によるパターン形成が不要な材料及び方法を採用することもできる。例えば、銀、金、銅、アルミニウムなどの金属粒子と樹脂バインダを含む導電性インクを、インクジェット印刷などの印刷法でパターン印刷して、配線7を形成することができる。
【0086】
〔本実施形態における効果〕
本実施形態においては、酸素遮断層3によって、遮光層2を構成する感光性樹脂を用いた着色樹脂層2aの耐光性を向上させることができる。
さらに、タッチパネル機能も備えており、部品点数の削減、軽量化にも寄与することができる。
しかも、耐光性向上のための、酸素遮断層3、及び酸素遮断層3が導電性であるが故の、酸素遮断層3上の絶縁層6は、酸素遮断層3はタッチパネル用の透明電極5と同一材料で同時形成され、絶縁層6はタッチパネル用の透明電極5の交差部5Cにおける絶縁層6と同一材料で同時形成されている。このため、酸素遮断層3及び酸素遮断層3上の絶縁層6は、工程数を増やすことなく、パターン形成時のパターンを変更するのみで形成することができる。この結果、コストをかけずに、耐光性を向上させることができる。
【0087】
《第3の実施形態:タッチパネル一体化とその導電性金属層による酸素遮断層3》
本実施形態も、タッチパネル用の透明電極5及び配線7も有する形態例である。但し、透明電極5は、層自体が不透明な導電性金属層がメッシュ状に形成されることで透視性を確保したメッシュ電極を含む。
図13の透明電極5の交差部5C周辺を示す平面図、
図14の模式的な部分拡大断面図、及び、
図15の透明電極5のメッシュ電極のパターン形状例を示す部分拡大平面図、さらに、
図16の透明電極5の交差部5C周辺の部分拡大断面図、及び、
図17の模式的な部分拡大断面図を参照して、本発明による表示装置用前面保護板10の第3の実施形態例を説明する。透明電極5は、投影型静電容量方式のタッチパネル用として形成されている例である。
【0088】
本実施形態は、前記第2の実施形態に対して、次の点が異なる以外は、同じである。よって、同じ部分の説明は省略する。
a)酸素遮断層3が不透明な導電性金属層で形成されている点。
b)透明電極5が、不透明な導電性金属層をメッシュ状に形成することで、透明性を確保したメッシュ電極を含む点。
c)酸素遮断層3となる導電性金属層が、前記透明電極5と同一材料で同時形成されている点。
d)透明電極5と配線7が同一材料で、透明電極5の一部と配線7とが同時形成されている点。
【0089】
〔交差部5Cの構造〕
本実施形態においても、前記第2の実施形態と同様に、交差部5Cは、2種類の構造で形成することができる。
図13は、透明電極5の交差部5C周囲を示す部分拡大平面図であり、同図は、透明電極5を透明導電体薄膜で形成した前記第2の実施形態における
図8(C)に対応する断面図である。
また、
図14の模式的な部分拡大断面図は、前記第2の実施形態における
図7に対応する断面図である。
酸素遮断層3及び透明電極5の形成順は、配線7以外は、前記第2の実施形態と同様である。よって、ここでは、配線7について説明する。
【0090】
本実施形態においては、配線7は透明電極5と同一材料で、透明電極5の一部と同時形成されている。具体的には、前記第2の実施形態の
図8を借りて説明すれば、前記第2の実施形態にて、
「3)次に、
図8(C)のように、第1電極5aのうちブリッジ下側部5aUを除く全てと、ブリッジ部5bBを含む第2電極5bの全てを、同一材料で同時形成する。」
の工程のときに、配線7も同時形成する。よって、次の
「4)後は、図示はしないが、不透明領域A2における配線7を形成する。」
の工程は不要となる。
【0091】
(逆構造の交差部5C)
交差部5Cの積層構造は、
図13及び
図14とは逆構造も可能である。これを、
図16及び
図17で示す。
図16は
図13に対応し た平面図であり、
図17は
図14に対応した断面図である。こうした逆構造は、具体的には、前記第2の実施形態の
図10を借りて説明すれば、前記第2の実施形態にて、
「 3)次に、
図10(C)のように、第1接続部5aCとなるブリッジ部5aBを形成する。このとき、同図では図示しないが、配線7に接続する部分である取り出し部を第1電極5a及び第2電極5bについても、ブリッジ部5aBと同一材料で同時形成する。」
の工程のときに、配線7もブリッジ部5aBと同一材料で同時形成する。したがって、配線7と前記透明電極5の取り出し部は連続層として形成される。よって、次の
「4)後は、図示はしないが、不透明領域A2における配線7を形成する。」
の工程は不要となる。
【0092】
こうした透明電極5の交差部5Cの構造も、前記第2の実施形態と同様にして形成することができる。但し、本実施形態においては、配線7は透明電極5と同一材料で同時形成される。
【0093】
〔透明電極5:メッシュ電極〕
本実施形態における透明電極5は、層自体が不透明な導電性金属層がメッシュ状に形成されたメッシュ電極が用いられている。メッシュ電極を用いる部分は、
図6(b)及び
図6(c)の平面図で説明すると、少なくとも、第1透明電極要素5aE及び第2透明電極要素5bEの部分である。
不透明な導電性金属層であっても、導電性メッシュとして形成することで、透視性(透明性)を確保できる。このため、メッシュ電極のメッシュパターンを構成する線の幅は、不可視性の観点から30μm以下、好ましくは10μm以下である。
【0094】
前記不透明な導電性金属層には、例えば、前記配線7で列記した材料を用いることができる。すなわち、前記不透明な導電性層には、例えば、銀、金、銅、クロム、プラチナ、アルミニウム、パラジウム、モリブデンなどの金属(含むその合金)などを用いることができる。例えば、銀、パラジウム及び銅からなる合金(APCとも言う)の金属層としてスパッタ法により製膜後、フォトリソグラフィ法によりパターン形成したものを用いることができる。
本実施形態においては、導電性金属層に銀、パラジウム及び銅からなる銀合金(APCとも言う)を用いてある。
【0095】
メッシュ電極のメッシュパターン形状は、特に制限はない。例えば、メッシュパターン形状は、
図15に示す正方格子形状、或いは図示は省略するが、三角格子形状、六角格子形状(ハニカム形状)、レンガ積み形状などである。
【0096】
本実施形態においては、酸素遮断層3は透明電極5と同一材料で同時形成され、さらに、配線7も透明電極5の一部と同一材料で同時形成されている。
しかし、本発明においては、透明電極5と配線7とは、異なる材料で形成されていてもよい。
【0097】
〔配線7〕
本発明において、配線7を透明電極5と同一材料で形成しない場合、配線7には、フォトリソグラフィ法によるパターン形成が不要な材料及び方法を採用することもできる。例えば、銀、金、銅、アルミニウムなどの金属粒子と樹脂バインダを含む導電性インクを、インクジェット印刷などの印刷法でパターン印刷して、配線7とすることもできる。
【0098】
〔本実施形態における効果〕
本実施形態においては、酸素遮断層3によって、遮光層2を構成する感光性樹脂を用いた着色樹脂層2aの耐光性を向上させることができる。
さらに、タッチパネル機能も備えており、部品点数の削減、軽量化にも寄与することができる。
しかも、耐光性向上のための、酸素遮断層3、及び酸素遮断層3が導電性であるが故の、酸素遮断層3上の絶縁層6は、酸素遮断層3はタッチパネル用の透明電極5と同一材料で同時形成され、絶縁層6はタッチパネル用の透明電極5の交差部5Cにおける絶縁層6と同一材料で同時形成されている。このため、酸素遮断層3及び酸素遮断層3上の絶縁層6は、工程数を増やすことなく、パターン形成時のパターンを変更するのみで形成することができる。この結果、コストをかけずに、耐光性を向上させることができる。
さらに、配線7と透明電極5とは同一材料で同時形成されている。この結果、コストをかけずに、耐光性を向上させることができる。
【0099】
《変形形態》
本発明の表示装置用前面保護板10は、上記した形態以外のその他の形態をとり得る。以下、その一部を説明する。
【0100】
〔全面の透明な酸素遮断層3〕
前記した実施形態では、酸素遮断層3は着色樹脂層2aの部分に、表示装置用前面保護板10からみれば部分的に形成されていた。しかし、本発明においては、
図18の部分拡大断面図に示すように、酸素遮断層3は、表示用領域A1も含めて、表示装置用前面保護板10の全面に形成されていてもよい。この場合、表示用領域A1における透視性を確保する為に、透明な層として形成される。
このように酸素遮断層3を全面に形成されたものとすることで、酸素遮断層3のパターニングを省略することができる。
【0101】
〔導電性の酸素遮断層3を被覆する絶縁層6〕
前記した実施形態中、タッチパネル用の透明電極5及び配線7を有する形態では、酸素遮断層3に透明導電体薄膜など導電性を有する材料を用いた場合には、この酸素遮断層3の面上には絶縁層6を形成していた。
しかし、本発明においては、
図19の部分拡大断面図に示すように、表示装置用前面保護板10が、透明電極5や配線7を有さない形態においても、酸素遮断層3が導電性である場合には、そして、この導電性が支障を来たす場合には、この酸素遮断層3の面上に絶縁層6を形成しておいてもよい。同図のように、絶縁層6が専ら不透明領域A2に形成される場合は、絶縁層6は不透明でもよい。また、絶縁層6を表示用領域A1まで延長する場合は透明とする。
このような構成とすることで、透明電極5や配線7が形成されていない状態の表示装置用前面保護板10を製品として出荷し、後で、透明電極5や配線7を酸素遮断層3の面上に形成するような、表示装置用前面保護板10の流通形態が可能となる。
【0102】
〔複層の着色樹脂層2a〕
前記した実施形態においては、着色樹脂層2aは、不透明領域A2の全域に亙って膜厚一定の、いわゆる「ベタ層」として形成されているとして説明した。しかし、着色樹脂層2aは、単層構成でもよいし、2層以上の複層構成でもよい。
着色樹脂層2aが複層構成の場合、各層は同一色でもよく、異なる色の層でもよい。また、着色樹脂層2aを不透明領域A2内においてパターン状に形成した模様を表現してもよい。
【0103】
〔可視情報8〕
図1及び
図9に例示する表示装置用前面保護板10のように、遮光層2が形成される不透明領域A2には可視情報8として製品のロゴマークなどが形成されていてもよい。
本発明においては、可視情報8は必須ではないが、不透明領域A2に対して、製品ロゴマーク、操作説明用の文字や記号、模様などの任意の目視可能な可視情報8を設けることができる。
【0104】
可視情報8は、表側から見える様に、不透明領域A2内において、例えば、着色樹脂層2aの非形成部に設けることができる。可視情報8は、着色樹脂層2aの前記非形成部の部分を、表側から見たときの色及び形状によって表現される目視可能な情報である。
可視情報8は、着色樹脂層2aの前記非形成部の部分に、着色樹脂層2aよりも裏側となる様に可視情報形成層を設けることで、この可視情報形成層を、表側から見たときの色及び形状によって表現することができる。
可視情報形成層の位置を、次に説明する赤外透過層9Lに関する
図20を借りて説明すれば、例えば、同図にて赤外透過層9Lを可視情報形成層に置き換えた層構造を採用することができる。可視情報形成層は、裏側からの照明光を透過可能な着色透明層とすることもある。この意味においては、可視情報形成層は、遮光性である遮光層2の一構成には該当しない。
【0105】
可視情報形成層としては、金属層、有色樹脂層など、着色樹脂層2aとは色や表面状態の外観が異なる層を用いることができる。前記金属層としては、銀、アルミニウムなどの金属薄膜を用いることができる。前記有色樹脂層としては着色顔料や金属粉末を含む樹脂組成物層を用いることができる。
【0106】
〔赤外透過窓9〕
図6の平面図及び
図20の部分拡大断面図に示すように、本発明においては、表示装置用前面保護板10は、赤外透過窓9を不透明領域A2に有してしてもよい。赤外透過窓9を設けることによって、赤外線センサに対応したものとできる。
【0107】
赤外透過窓9は、例えば、通話時に携帯電話を耳にあてがったときに、タッチパネルの誤作動を防ぐ必要から、また、表示パネルの表示を消して電池寿命を長くする観点などから、人肌の接近を感知する人感センサとして設ける赤外線センサの部分に設けられる。
赤外透過窓9は、不透明領域A2内において遮光層2の非形成部として設けられ、可視光に対しては遮光性を示すと共に赤外光に対しては透過性を示す部分として形成される。赤外透過窓9の上記光学性能は、上記光学性能を有する赤外透過層9Lを、赤外透過窓9の部分に形成することで実現できる。赤外透過層9Lを用いるのは、遮光層2の着色樹脂層2aが例えば黒色の場合、黒色顔料としてカーボンブラックを用いると、可視光のみならず赤外光に対しても遮光性となってしまうために、着色樹脂層2aとは材料が異なる層として赤外透過層9Lが必要になることがあるからである。
【0108】
赤外透過窓9の赤外光に対する透過性は、要求仕様、表現色、赤外透過窓9に適用する赤外線センサなどの赤外利用部品にもよるが、一例を示せば、赤外領域での透過率70%以上にする。前記透過率70%以上とする赤外領域は、必ずしも780nm以上の領域でなくてもよく、例えば850nm以上の領域であれば、充分に対応可能である。なお、透過率70%以上とする赤外領域の上限は、近赤外域、それも通常、1300nmまでを満たせば、対応できる。
赤外透過窓9の可視光に対する遮光性は、要求仕様、表現色にもよるが、赤外透過窓9の部分は、通常、スポット的に小さいため、必ずしも、遮光層2の遮光性のレベルに合わせる必要はない。このため、赤外透過窓9の可視光に対する遮光性は、一例を示せば、透過率で言えば大きくても50%以下(光学濃度ODにて0.2以上)、より好ましくは透過率で25%以下(光学濃度OD0.6以上)、さらに好ましくは透過率で10%以下(光学濃度OD1.0以上)が望ましい。
こうして、赤外透過窓9は、例えば、赤外光領域に対しては、波長850nm以上1300nm以下で70%以上、可視光領域に対しては10%以下で設ける。なお、この透過率とは、平均値ではなく、各波長毎の値である。
【0109】
(赤外透過層9L)
赤外透過層9Lは、着色樹脂層2aと共に遮蔽層3の一構成層である。
赤外透過層9Lは、赤外透過窓9の存在を目立たなくさせるために、通常、着色樹脂層2aと類似色で形成される。そして、赤外透過層9Lは、可視光に対しては遮光性を示すと共に赤外光に対しては透過性を示す。
赤外透過層9Lは、カーボンブラックのような黒色顔料は含有させずに、互いに色が異なる有彩色の着色顔料の複数種類、例えば、赤色、黄色、青色を含有させることで、黒色など暗色を表現した層として形成することができる。
【0110】
赤外透過層9Lと遮光層2との関係は、
図20(a)のように着色樹脂層2aよりも先に形成する構成、
図20(b)のように着色樹脂層2aよりも後に形成する構成などがある。なお、酸素遮断層3との関係では、赤外透過層9Lは
図20(a)では酸素遮断層3よりも先に形成され、
図20(b)では酸素遮断層3よりも後に形成される例である。
なお、同図に例示する構成では、酸素遮断層3は赤外透過層9Lと重なっているので、可視光及び赤外光において透明とする。
【0111】
〔透明電極5の交差部5Cの絶縁層6と同一材料で同時形成の酸素遮断層3〕
前記した実施形態では、タッチパネル用の透明電極5及び配線7も有する形態において、酸素遮断層3は透明電極5を構成する材料と同一材料、つまり導電性である場合であった。
しかし、本発明においては、
図7に対応する
図21の断面図で示すように、タッチパネル用の透明電極5及び配線7を有する形態において、酸素遮断層3がタッチパネル用の透明電極5における交差部5Cの絶縁層6と同一材料で形成されていてもよい。この場合、同一材料で同時形成することも可能である。酸素遮断層3を交差部5Cの絶縁層6と同一材料で同時形成することで、工程数を増やさずに、交差部5Cの絶縁層6と同時に酸素遮断層3をコストをかけずに形成することが可能となる。
【0112】
〔導電性金属層からなるタッチパネル用の透明電極5を隠蔽する着色樹脂層3〕
前記した第3の実施形態では、表示用領域A1においてタッチパネル用の透明電極5は層自体が不透明な導電性金属層がメッシュ状に形成されるメッシュ電極を含むことで、透明性を確保していた。ただ、導電性金属層は、金属特有の金属反射色を呈するので、これが表示に支障を来たすことがある。こうした場合には、
図14に対応する
図22の断面図で示すように、導電性金属層が表側から見えない様に隠蔽する層として、着色樹脂層2aを導電性金属層と透光性基板1との間にも設けるとよい。この着色樹脂層2aのパターン形状は、導電性金属層のパターン形状と同じとすることで、導電性金属層乃至は着色樹脂層2aの非形成部によって、透視性を確保することができる。表示用領域A1において導電性金属層からなる透明電極5と同じパターン形状で形成されているこの着色樹脂層2aの耐光性は、透明電極5を構成する導電性金属層によって被覆されることで、向上させることができる。ただ、多少の位置ズレを考慮して、導電性金属層を隠蔽するための着色樹脂層2aは、導電性金属層の線幅以上とするのが好ましい。
【0113】
導電性金属層を隠蔽する着色樹脂層2aは、不透明領域A2に於ける着色樹脂層2aと同一材料でしかも同時形成することも可能である。
図22の断面図で、交差部5Cにおける透光性基板1上への積層順序は、着色樹脂層2a、酸素遮断層3と同一材料で同時形成される導電性金属層からなる第1電極5a(3),絶縁層6、導電性金属層からなる第2電極5bである。一方、不透明領域A2における透光性基板1上への積層順も、着色樹脂層2a、酸素遮断層3、絶縁層6、導電性金属層からなる第1電極5aである。よって、導電性金属層を隠蔽する着色樹脂層2aも、工程数を増やさずに、コストをかけずに、形成することができる。そして、導電性金属層からなる透明電極5を、目立ち難くすることができる。
【0114】
〔タッチパネル用の透明電極5或いは絶縁層6と同時形成しない酸素遮断層3〕
前記した実施形態において、タッチパネル用の透明電極5及び配線7も有する第2及び体3の実施形態では、いずれも、酸素遮断層3はタッチパネル用の透明電極5と同一材料で形成されていた。
ここで、
図23では、酸素遮断層3が形成された後に、表示装置用前面保護板10の全面にオーバーコート層4が形成され、このオーバーコート層4の面に接して透明電極5及び配線7が形成されている例である。
本発明においては、酸素遮断層3が、
図1或いは
図7に対応する
図23の断面図で示す層構造のように、タッチパネル用の透明電極5と同一材料で形成されるにしても、同時形成不可能な構造であるときは、酸素遮断層3は透明電極5と同時形成されてなくてもよい。
また、絶縁層6についても、
図23に示す層構造では、同様に、酸素遮断層3が絶縁層6と同一材料で形成されるにしても、酸素遮断層3は絶縁層6とは同時形成されてなくてもよい。
こうした構成とすることで、製品設計の自由度を上げることができる。
【0115】
〔オーバーコート層4〕
前記
図5に示した前記第1の実施形態の変形例では、着色樹脂層2aと酸素遮断層3との間にオーバーコート層4が形成されていた。このオーバーコート層4は、表示用領域A1には表示用領域A1の外周部内側を除いて形成されておらず、表示装置用前面保護板10全体としては、部分的に形成されていた。
しかし、本発明においては、
図23に示すオーバーコート層4及びオーバーコート層4aのように、表示装置用前面保護板10の全面に形成されていてもよい。オーバーコート層4aは、透明電極5及び配線7が形成された後の面の全面に形成されている。全面に形成する場合のオーバーコート層4、及びオーバーコート層4aは、絶縁性且つ透明でもある。オーバーコート層4aは、配線7がフレキシブルプリント配線基板(FPC)を介して制御回路に接続する部分は形成せず、配線7を露出してある。
こうした構成とすることによって、信頼性を向上させることができる。
【0116】
〔透明電極5のタッチパネルでの位置付け〕
上述した実施形態においては、透明電極5及び配線7の用途はタッチパネルであった。
タッチパネルの位置検知方式として、透明電極5が互いに異なる面に2層になる位置検知方式では、このうちの少なくとも1層を設ける形態もあり得る。
【0117】
本発明においては、表示装置用前面保護板10が、タッチパネル用の透明電極5及び配線7を有する形態では、さらにその他の、例えば、コネクタ、制御回路なとのタッチパネル機能の一部、さらには全部が一体化されたものであってもよい。
タッチパネルとして必要な機能の全部を一体化した表示装置用前面保護板10は、タッチパネルと言うこともできる。タッチパネルとして必要な機能の一部を一体化した表示装置用前面保護板10は、タッチパネル用部材と言うこともできる。
【0118】
〔C〕表示装置:
本発明による表示装置は、上記した表示装置用前面保護板10と、表示パネルとを少なくとも備える表示装置である。
【0119】
《第1の実施形態》
本発明による表示装置の第1の実施形態を、
図24に示す断面図を参照して説明する。同図に示す表示装置100は、図面上方の観察者V側の表側から順に、表示装置用前面保護板10、タッチパネル20、表示パネル30を備えている。
【0120】
〔表示装置用前面保護板10〕
本実施形態における表示装置用前面保護板10は、タッチパネル用の透明電極5及び配線7を有さない形態の、例えば、前記した
図1で例示した形態のものである。
【0121】
〔タッチパネル20〕
タッチパネル20は、典型的には、マルチタッチ(多点同時入力)が可能な投影型静電容量方式のタッチパネルであるが、この他、表面型静電容量方式、抵抗膜方式、電磁誘導方式、光学方式、など、透明電極を必要としない位置検知方式も含めた公知の各種位置検知方式のタッチパネルのいずれでもよい。
タッチパネル20は、中央の位置検知領域の外周部に、配線、制御回路、これらを電気的に接続するコネクタなどの何らかの不透明な構成要素を有する。これらの不透明な構成要素は、表示装置用前面保護板10の不透明領域A2の遮光層2に平面視において重なり、隠れる位置となるような、タッチパネル20と表示装置用前面保護板10との位置関係となっている。このため、これら配線などの不透明な構成要素が、表示装置100の外観を損なわない様にすることができる。
【0122】
〔表示パネル30〕
表示パネル30は、液晶表示パネル、電界発光(EL)パネルが代表的であるが、この他、電子ペーパーパネル、ブラウン管でもよく、公知の各種表示パネルでよい。
【0123】
〔本実施形態における効果〕
以上のような構成の、表示装置100とすることで、タッチパネル20の位置検知領域の外周部、或いは表示パネル30の表示用領域の外周部、において存在する、表示内容それ自体には不要な、配線、コネクタ、制御回路などの各種構成要素を隠して、これらにより外観が損なわれることを防ぐことができる。
しかも、表示装置用前面保護板10の遮光層2は、その着色樹脂層2aは耐光性が向上しており、信頼性の高い製品とすることができる。
【0124】
《第2の実施形態》
本発明による表示装置の第2の実施形態を、
図25に示す断面図を参照して説明する。同図に示す表示装置100は、図面上方の観察者V側の表側から順に、タッチパネル機能が一体化された表示装置用前面保護板10、表示パネル30を備えている。
【0125】
〔表示装置用前面保護板10〕
本実施形態における表示装置用前面保護板10は、タッチパネル用の透明電極5及び配線7などを有する形態であり、例えば、前記した
図6、
図7、
図12、
図14及び
図17で例示した形態のものである。
【0126】
本実施形態における表示装置用前面保護板10は、タッチパネル機能として、その他の機能、例えば、コネクタ、制御回路などを備えることで、タッチパネルの機能の一部又は全部が一体化された表示装置用前面保護板10としてもよい。
【0127】
表示装置用前面保護板10が備える透明電極5及び配線7は、典型的には、マルチタッチ(多点同時入力)が可能な投影型静電容量方式のタッチパネル用のものであるが、この他、表面型静電容量方式、抵抗膜方式、電磁誘導方式、など、透明電極を必要とする公知の各種位置検知方式のタッチパネルのいずれでもよい。
【0128】
〔本実施形態における効果〕
このような構成とすることで、前記表示装置としての第1の実施形態による効果に加えて、部品点数の低減、薄型化の効果が得られる。
しかも、表示装置用前面保護板10の遮光層2は、その着色樹脂層2aは耐光性が向上しており、信頼性の高い製品とすることができる。
さらに、酸素遮断層3を透明電極5と同一材料で同時形成されたものとする形態では、加えて、酸素遮断層3上の絶縁層6も透明電極5の交差部5Cの絶縁層6と同一材料で同時形成されたものとする形態では、工程数を増やさずに、コストをかけずに着色樹脂層2aの耐光性を向上させることができる。
さらに、タッチパネル機能も備えており、部品点数の削減、軽量化にも寄与することができる。
【0129】
〔表示装置としての変形形態〕
本発明の表示装置100は、上記した形態以外のその他の形態をとり得る。以下、その一部を説明する。
【0130】
[タッチパネル機能の一部を一体化した表示装置用前面保護板10]
一体化しようとするタッチパネル用の透明電極5が互いに絶縁された第1電極5aと第2電極5bとの2層からなり、この2層が互いに別々の基板上に形成される構造である場合は、このうちのいずれか一方の基板を表示装置用前面保護板10の透光性基板1と兼用することで、一方の透明電極と共に一体化し、他方の透明電極と基板とを、表示装置用前面保護板10、表示パネル30とは別体のタッチパネル構成部材として組み込んで、表示装置100を構成することも可能である。どのような構成で表示装置用前面保護板10とタッチパネル機能とを一体化するかは、使用し得る製造設備、組立工程などの諸条件に適した、構成を選べばよい。
【0131】
このような構成においても、タッチパネル機能が一体化しているので、部品点数が減り組み立て工数が少なくなり、低コストなものとできる。しかも、表示装置用前面保護板10の遮光層2は耐光性が向上しており、信頼性の高い製品が可能となる。
【0132】
[粘着シートなどの樹脂層の介在]
図24で例示した実施形態による表示装置100では、表示装置用前面保護板10と表示パネル30との間は、空隙を有し空気層が存在する構造となっているが、本発明においては、表示装置用前面保護板10と表示パネル30との間など、構成部材の間は、粘着剤層など樹脂層で埋め尽くしてもよい。樹脂層によって部材表面での光反射が減ることで、表示をより見易くすることができる。
【0133】
前記樹脂層には、粘着シート、塗布した樹脂液の固化層などを用いることができる。
前記粘着シートとしては、透明性に優れた光学グレードのものが好ましく、このような粘着シートとしては、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、エポキシ系粘着剤、シリコーン系粘着剤などからなるものを用いることができる。
【0134】
〔D〕用途:
本発明による表示装置用前面保護板10、及び表示装置100の用途は、特に限定されない。例えば、スマートフォンなどの携帯電話、タブレットPCなどの携帯情報端末、パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、デジタルカメラ、電子手帳、ゲーム機器、自動券売機、ATM端末、POS端末、自販機などである。