特許第6019984号(P6019984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6019984導電性部材と回路電極との接続構造、及び、導電性部材と回路電極との接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019984
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】導電性部材と回路電極との接続構造、及び、導電性部材と回路電極との接続方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   H01L21/60 321E
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-204764(P2012-204764)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-60281(P2014-60281A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(72)【発明者】
【氏名】小倉 圭輔
【審査官】 溝本 安展
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−165241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性部材と回路電極との接続構造において、
前記導電性部材と前記回路電極とが、前記回路電極上に形成された無電解めっき層と、該無電解めっき層上に形成され、めっき金属の粒界に耐熱性樹脂が分散した複合電解めっき層と、で構成される接合層で接合されて電気的に接続していることを特徴とする導電性部材と回路電極との接続構造。
【請求項2】
前記導電性部材が、リードワイヤ、リードフレーム及び金属ピンから選ばれる1種以上であり、
前記回路電極が、絶縁基板に回路パターンが形成された配線基板上に半導体チップが配置された半導体装置の、前記配線基板の回路パターン及び/又は前記半導体チップのチップ電極である請求項1に記載の導電性部材と回路電極との接続構造。
【請求項3】
前記耐熱性樹脂の熱分解温度が、150℃以上である請求項1又は2に記載の導電性部材と回路電極との接続構造。
【請求項4】
前記耐熱性樹脂が、ポリイミド樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性部材と回路電極との接続構造。
【請求項5】
前記めっき金属が、Cu、Ag、Au、Ni、Pd及びこれらの合金から選ばれる1種以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性部材と回路電極との接続構造。
【請求項6】
前記複合電解めっき層が、前記耐熱性樹脂を1〜40vol%含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性部材と回路電極との接続構造。
【請求項7】
前記導電性部材の先端部であって、前記回路電極との接続部分は、該回路電極へ向かうほど縮径した形状をなしている請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性部材と回路電極との接続構造。
【請求項8】
前記無電解めっき層が無電解Niめっき層である請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性部材と回路電極との接続構造。
【請求項9】
前記回路電極が、Al、Cu及びこれらの合金から選ばれる1種で形成されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電性部材と回路電極との接続構造。
【請求項10】
導電性部材と回路電極との接続方法において、
前記導電性部材と前記回路電極とを当接させた状態で、陽イオン性耐熱性樹脂前駆体とめっき金属イオンとを含有するめっき液に浸漬して電解めっきを行う複合電解めっき工程と、
前記複合電解めっき工程で形成された複合電解めっき層を加熱処理して前記陽イオン性耐熱性樹脂前駆体を反応硬化させる加熱工程とを含むことを特徴とする導電性部材と回路電極との接続方法。
【請求項11】
前記導電性部材が、リードワイヤ、リードフレーム及び金属ピンから選ばれる1種以上であり、
前記回路電極が、絶縁基板に回路パターンが形成された配線基板上に、半導体チップが配置された半導体装置の、前記配線基板の回路パターン及び/又は前記半導体チップのチップ電極である請求項10に記載の導電性部材と回路電極との接続方法。
【請求項12】
前記陽イオン性耐熱性樹脂前駆体として、反応硬化後の樹脂の熱分解温度が150℃以上となるものを用いる請求項10又は11に記載の導電性部材と回路電極との接続方法。
【請求項13】
前記陽イオン性耐熱性樹脂前駆体として、陽イオン性官能基を有するポリアミック酸を用い、
前記加熱工程において、前記複合電解めっき層を100〜250℃に加熱する請求項10〜12のいずれか1項に記載の導電性部材と回路電極との接続方法。
【請求項14】
前記めっき金属イオンが、Cuイオン、Agイオン、Auイオン、Niイオン、Pdイオンから選ばれる1種以上である請求項10〜13のいずれか1項に記載の導電性部材と回路電極との接続方法。
【請求項15】
前記めっき液として、前記陽イオン性耐熱性樹脂前駆体を1〜40vol%含有するものを用いる請求項10〜14のいずれか1項に記載の導電性部材と回路電極との接続方法。
【請求項16】
前記回路電極上に無電解めっき層を形成した後、前記複合電解めっき工程を行う請求項10〜15のいずれか1項に記載の導電性部材と回路電極との接続方法。
【請求項17】
前記無電解めっき層として、無電解Niめっき層を形成する請求項16に記載の導電性部材と回路電極との接続方法。
【請求項18】
前記回路電極が、Al、Cu及びこれらの合金から選ばれる1種で形成されている請求項10〜17のいずれか1項に記載の導電性部材と回路電極との接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置における導電性部材と回路電極との接続構造、及び、これらの接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップをモジュール化した半導体装置は、例えば図9に示すパッケージ構造をなしている。
【0003】
図9に示されるように、半導体チップ51の裏面電極(図示しない)が、はんだ接合層52を介して絶縁基板53の表面の回路パターン部54に接合されている。絶縁基板53の裏面の金属層55は、はんだ接合層56を介してヒートシンク57に接合されている。ヒートシンク57の周縁には、ケース58が配設されている。ケース58の内側には、外部電極用端子59が設けられている。外部電極用端子59と、絶縁基板53の回路パターン部54とは、リードワイヤ60aにより電気的に接続されている。また、半導体チップ51の表面に設けられたチップ電極51aと回路パターン部54とは、リードワイヤ60bにより電気的に接続されている。そして、ケース58とヒートシンク57との間には、封止材65が封入されている。
【0004】
また、昨今の大電流通電の要求に対し、図10に示すように、半導体チップ51のチップ電極51aと、絶縁基板53の回路パターン部54とをリードフレーム61により電気的に接続して、通電面積、熱容量を確保できるようにすることも行われている。
【0005】
半導体チップ51や回路パターン部54と、リードフレーム61との接合には、はんだ層62を用いることが一般的である。例えば、特許文献1では、Sn−Cu系はんだを用いて接合している。
【0006】
しかしながら、はんだでは融点が低いため、長期の信頼性に問題があった。特に、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー半導体等のように、大電流通電による発熱の著しい半導体チップを備えた半導体装置の場合、接合部分のはんだが高温に曝されてはんだ層が溶融し易く、高温での信頼性が劣るものであった。
【0007】
一方、はんだに替わる接合方法として、特許文献2に開示されているように、金属微粒子を焼結させて、導体チップ51のチップ電極や回路パターン部54と、リードフレーム61とを接合する方法がある。
【0008】
特許文献2には、放熱ベースの所定の箇所に金属微粒子を含むペーストを塗布する第1塗布工程と、第1塗布工程で塗布された金属微粒子を含むペースト上に絶縁基板を載置する第1載置工程と、絶縁基板のおもて面の導体パターンの所定の箇所に金属微粒子を含むペーストを塗布する第2塗布工程と、第2塗布工程で塗布された金属微粒子を含むペースト上に半導体チップを載置する第2載置工程と、半導体チップ上の所定の箇所に金属微粒子を含むペーストを塗布する第3塗布工程と、第3塗布工程で塗布された金属微粒子を含むペースト上に金属放熱板を載置する第3載置工程と、金属放熱板上の所定の箇所に金属微粒子を含むペーストを塗布する第4塗布工程と、第4塗布工程で塗布された金属微粒子を含むペースト上に金属導体板を載置する第4載置工程と、金属微粒子を含むペースト内の金属微粒子を焼結させる加熱工程とを含む半導体装置の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−352080号公報
【特許文献2】特開2008−147469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
半導体装置において、材質の異なる部品が接合されている部分では、線膨張係数の違いから両者の間に熱応力が発生する。特に、パワー半導体等のように、大電流通電による発熱の著しい半導体チップを備えた半導体装置の場合、電流が流れる部分に大きな熱ストレスが加わるので、接合部分に大きな熱応力が発生する。
【0011】
金属微粒子の焼結体は、耐熱性に優れるものの、展性や延性に欠けるので、電流通電時の発熱に伴う熱応力を緩和する効果が期待できず、耐熱疲労特性が不十分であった。特に高温でのパワーサイクル耐量が得られず、長期信頼性を確保することが困難な場合があった。
【0012】
よって、本発明の目的は、長期信頼性や耐熱疲労特性に優れた、導電性部材と回路電極との接続構造、及び、導電性部材と回路電極との接続方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の導電性部材と回路電極との接続構造は、前記導電性部材と前記回路電極とが、前記回路電極上に形成された無電解めっき層と、該無電解めっき層上に形成され、めっき金属の粒界に耐熱性樹脂が分散した複合電解めっき層と、で構成される接合層で接合されて電気的に接続していることを特徴とする。
【0014】
本発明の導電性部材と回路電極との接続構造は、前記導電性部材が、リードワイヤ、リードフレーム及び板状の導電性部材から選ばれる1種以上であり、前記回路電極が、絶縁基板に回路パターンが形成された配線基板上に、半導体チップが配置された半導体装置の、前記配線基板の回路パターン及び/又は前記半導体チップのチップ電極であることが好ましい。
【0015】
本発明の導電性部材と回路電極との接続構造は、前記耐熱性樹脂の熱分解温度が、150℃以上であることが好ましい。
【0016】
本発明の導電性部材と回路電極との接続構造は、前記耐熱性樹脂が、ポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0017】
本発明の導電性部材と回路電極との接続構造は、前記めっき金属が、Cu、Ag、Au、Ni、Pd及びこれらの合金から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0018】
本発明の導電性部材と回路電極との接続構造は、前記複合電解めっき層が、前記耐熱性樹脂を1〜40vol%含有することが好ましい。
【0019】
本発明の導電性部材と回路電極との接続構造は、前記無電解めっき層が無電解Niめっき層であることが好ましい。
【0020】
本発明の導電性部材と回路電極との接続構造は、前記回路電極が、Al、Cu及びこれらの合金から選ばれる1種で形成されていることが好ましい。
【0021】
また、本発明の導電性部材と回路電極との接続方法は、前記導電性部材と前記回路電極とを当接させた状態で、陽イオン性耐熱性樹脂前駆体とめっき金属イオンとを含有するめっき液に浸漬して電解めっきを行う複合電解めっき工程と、前記複合電解めっき工程で形成された複合電解めっき層を加熱処理して前記陽イオン性耐熱性樹脂前駆体を反応硬化させる加熱工程とを含むことを特徴とする。
【0022】
本発明の導電性部材と回路電極との接続方法は、前記導電性部材が、リードワイヤ、リードフレーム及び板状の導電性部材から選ばれる1種以上であり、前記回路電極が、絶縁基板に回路パターンが形成された配線基板上に、半導体チップが配置された半導体装置の、前記配線基板の回路パターン及び/又は前記半導体チップのチップ電極であることが好ましい。
【0023】
本発明の導電性部材と回路電極との接続方法は、前記陽イオン性耐熱性樹脂前駆体として、反応硬化後の樹脂の熱分解温度が150℃以上となるものを用いることが好ましい。
【0024】
本発明の導電性部材と回路電極との接続方法は、前記陽イオン性耐熱性樹脂前駆体として、陽イオン性官能基を有するポリアミック酸を用い、前記加熱工程において、前記複合電解めっき層を100〜250℃に加熱することが好ましい。
【0025】
本発明の導電性部材と回路電極との接続方法は、前記めっき金属イオンが、Cuイオン、Agイオン、Auイオン、Niイオン、Pdイオンから選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0026】
本発明の導電性部材と回路電極との接続方法は、前記めっき液として、前記陽イオン性耐熱性樹脂前駆体を1〜40vol%含有するものを用いることが好ましい。
【0027】
本発明の導電性部材と回路電極との接続方法は、前記回路電極上に無電解めっき層を形成した後、前記複合電解めっき工程を行うことが好ましい。そして、前記無電解めっき層として、無電解Niめっき層を形成することが好ましい。
【0028】
本発明の導電性部材と回路電極との接続方法は、前記回路電極が、Al、Cu及びこれらの合金から選ばれる1種で形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の導電性部材と回路電極との接続構造によれば、導電性部材と回路電極とが、めっき金属の粒界に耐熱性樹脂が分散した複合電解めっき層を含む接合層で接合されている。この複合電解めっき層は、融点が高く、耐熱性に優れている。また、めっき金属の粒界に耐熱性樹脂が分散していることにより、展性や延性が向上して、応力緩和特性や、耐熱疲労特性に優れる。このため、耐熱性、応力緩和性に優れ、高温動作時の熱疲労、パワーサイクル耐量を十分満足できる。
【0030】
また、本発明の導電性部材と回路電極との接続方法によれば、導電性部材と回路電極とを当接させた状態で、陽イオン性耐熱性樹脂前駆体とめっき金属イオンとを含有するめっき液に浸漬して電解めっきを行い、複合電解めっき工程で形成された複合電解めっき層を加熱処理して陽イオン性耐熱性樹脂前駆体を反応硬化させることにより、導電性部材と回路電極とを、めっき金属の粒界に耐熱性樹脂が分散した複合電解めっき層を含む接合層で接合することができ、耐熱性、応力緩和性に優れ、高温動作時の熱疲労、パワーサイクル耐量を十分満足できる接合構造を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の導電性部材と回路電極との接合構造を有する半導体装置の一実施形態を示す概略図である。
図2】本発明の導電性部材と回路電極との接合方法の工程図である。
図3】同接合方法の工程図である。
図4】同接合方法の工程図である。
図5】同接合方法の工程図である。
図6】リードフレームの他の好ましい一例を示す概略図である。
図7】本発明の導電性部材と回路電極との接合構造を有する半導体装置の他の実施形態を示す概略図である。
図8図7の半導体装置の要部拡大図である。
図9】従来の半導体装置の一例を示す概略断面図である。
図10】従来の半導体装置の他の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の導電性部材と回路電極との接続構造の一実施形態について、図1に示す半導体装置を用いて説明する。
【0033】
なお、本発明において、導電性部材とは、例えば、回路電極どうし、又は、回路電極と外部電極等の他の電極とを導通させるための部材であって、リードフレーム、リードワイヤ、金属ピンなどが一例として挙げられる。また、回路電極とは、配線基板の回路パターン、及び、該回路パターンに配置された半導体チップなどの電子部品のチップ電極等を意味する。
【0034】
図1に示す半導体装置は、ヒートシンク1の周縁に樹脂ケース2が配設されている。そして、樹脂ケース2の内側には、外部電極用端子20が設けられている。
【0035】
ヒートシンク1は、放熱性の高い材料で構成される。例えば、Cu、Al及びこれらの合金等が挙げられる。
【0036】
図中の3は、配線基板であって、絶縁基板4の一方の面に、回路パターンをなす金属層(以下、回路パターン部5という)が形成され、他方の面に金属層6が形成されている。そして、配線基板3の金属層6と、ヒートシンク1とが、接合層7aを介して接合している。
【0037】
配線基板3としては、特に限定は無いが、例えば、セラミック基板上に銅板を直接接合させたDirect Copper Bonding基板や、セラミックスと銅板とをろう材を介して接合したActive Metal Brazed Copper基板等が挙げられる。
【0038】
配線基板3の金属層6と、ヒートシンク1とを接合する接合層7aとしては、特に限定は無く、はんだ層、金属焼結層等が挙げられる。はんだ層を構成するはんだ材料としては、Sn、Ag、Cu、Ni、Ge、In、Pb、Sb、Bi、Zn、Gd等が挙げられる。金属焼結層を構成する金属材料としては、粒径が1〜20nmのAg、Cu、Au、Pt等の金属微粒子等が挙げられる。
【0039】
配線基板3の回路パターン部5を構成する材料としては、特に限定は無い。Al、Cu、Au、Ag、Ni及びこれらの合金等が挙げられ、Al、Cu及びこれらの合金が好ましく、Cu及びCu合金が特に好ましい。Cu及びCu合金は、放熱性に優れる。
【0040】
配線基板3の回路パターン部5の所定箇所には、半導体チップ8が配設されている。この半導体チップの裏面側には、図示しない裏面電極が形成されており、配線基板3の回路パターン部5と接合層7bを介して接合している。また、半導体チップ8の表面側には、チップ電極9が形成されている。
【0041】
半導体チップ8は、用途により異なるが、例えば、IGBT等のパワー半導体素子、FWD等の整流素子等が挙げられる。
【0042】
半導体チップ8の裏面電極及びチップ電極9を構成する材料としては、特に限定は無い。Al、Ni、Au、Ti、Cu、Ag及びこれらの合金等が好ましく用いることができる。チップ電極9は、Al、Cu及びこれらの合金が好ましい。
【0043】
配線基板3の回路パターン部5、及び、半導体チップ8のチップ電極9には、これらの電極の一部が露出するようにマスク10が形成されている。
【0044】
マスク10を構成する材料としては、特に限定は無い。絶縁性、耐めっき性に優れたものであればよい。パターニング可能な感光性樹脂が好ましい。例えば、ポリイミド樹脂、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられる。
【0045】
そして、リードフレーム11の一端が、マスク10から露出した半導体チップ8の表面側のチップ電極9と、接合層15aで接合され、リードフレーム11の他端が、マスク10から露出した回路パターン部5と、接合層15bで接合されて、チップ電極9と回路パターン部5とが、リードフレーム11により電気的に接続されている。
【0046】
図6(a)〜(c)を合わせて参照して、リードフレーム11の好ましい先端形状について説明する。図6(a)に示されるリードフレーム11は、先端部11aが略垂直方向に延出し、先端が台形状に縮径した形状をなしている。図6(b)に示されるリードフレーム11は、先端部11aが略垂直方向に延出し、先端が鋭角に突出した形状をなしている。図6(c)に示すリードフレーム11は、先端部11aが、チップ電極9又は回路パターン部5に対して略水平に延出し、略水平方向に伸びた先端部の下面から、1個以上(図6(c)では4個)の突起11bが形成された形状をなしている。図6(c)のリードフレームは、突起11bが、チップ電極9又は回路パターン部5と接して接合される。
【0047】
リードフレーム11の材質は、導電性に優れたものであればよく、特に限定は無い。例えば、Cu、Ag、Al、Au、Ni及びこれらの合金等が挙げられる。
【0048】
また、リードワイヤ12の一端が、マスク10から露出した回路パターン部5と、接合層15cで接合され、リードワイヤ12の他端が、外部電極用端子20とはんだ接合、金属焼結等の方法で接合されている。
【0049】
そして、樹脂ケース2の内部に、ゲル、エポキシ樹脂などの封止樹脂25が充填されて封止されている。
【0050】
この半導体装置においては、チップ電極9、回路パターン部5が、本発明における「回路電極」に相当し、リードフレーム11、リードワイヤ12が、本発明における「導電性部材」に相当する。
【0051】
以下、リードフレーム11とチップ電極9とを接合する接合層15a、リードフレーム11と回路パターン部5とを接合する接合層15b、リードワイヤ12と回路パターン部5とを接合する接合層15cについて、すなわち、本発明の導電性部材と回路電極との接続構造について、図5を参照しながら説明する。
【0052】
図5に示されるように、この実施形態では、接合層15a,15b,15cは、無電解めっき層16と、めっき金属の粒界に耐熱性樹脂が分散した複合電解めっき層17とで構成されている。
【0053】
なお、本発明において、「めっき金属の粒界」とは、めっき金属の結晶粒間の界面、又は、めっき金属粒子の境界面を意味する。また、めっき金属の粒界に耐熱性樹脂が分散しているかどうかは、透過型電子顕微鏡による結晶粒界の観察の方法で確認できる。
【0054】
複合電解めっき層17は、融点がめっき金属の融点に近く、約1000℃以上であり、耐熱性に優れている。また、めっき金属の粒界に耐熱性樹脂が分散していることにより、めっき金属の結晶の滑りが向上して展性や延性が向上し、応力緩和特性や、耐熱疲労特性に優れる。
【0055】
また、この実施形態では、無電解めっき層16上に複合電解めっき層17が形成されているので、複合電解めっき層17のめっき付きが良好であり、複合電解めっき層17を短時間で形成できる。このため、チップ電極9や回路パターン部5などの回路電極と、リードフレーム11やリードワイヤ12などの導電性部材とを、短時間で効率よく接合できる。
【0056】
無電解めっき層16としては、無電解Niめっき層、無電解Cuめっき層、無電解Coめっき層、無電解Agめっき層等が挙げられ、下地との密着性に優れ、かつ安価であるという理由から無電解Niめっき層が好ましい。
【0057】
複合電解めっき層17のめっき金属としては、Cu、Ag、Au、Ni、Pd及びこれらの合金等が挙げられる。なかでも、融点が高く、導電性、放熱性に優れることからCu及びCu合金が好ましい。
【0058】
複合電解めっき層17の耐熱性樹脂は、熱分解温度が、150℃以上であることが好ましく、250℃以上がより好ましい。熱分解温度が150℃以上であれば、電流通電時に耐熱性樹脂が熱分解することを防止でき、複合電解めっき層17の応力緩和特性や、耐熱疲労特性の経時劣化を抑制できる。特に、熱分解温度が250℃以上であれば、パワー半導体チップなどのように、大電流通電による発熱の著しい半導体チップを備えた半導体装置であっても、複合電解めっき層17の応力緩和特性や、耐熱疲労特性の経時劣化を効率よく抑制できる。
【0059】
熱分解温度が150℃以上の耐熱性樹脂の具体例としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、4フッ化エチレン樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、等が挙げられる。なかでも、ポリイミド樹脂は、熱分解温度が250℃以上であり、耐熱性に優れ、安価な材料であるので好ましく用いることができる。
【0060】
複合電解めっき層17は、耐熱性樹脂を1〜40vol%含有することが好ましく、10〜30vol%がより好ましい。耐熱性樹脂の含有量が1vol%未満であると、複合電解めっき層17の応力緩和特性や、耐熱疲労特性が低下する傾向にある。40vol%を超えると、複合電解めっき層17の耐熱性や、導電性が低下する傾向にある。
【0061】
上記した図1に示す半導体装置において、チップ電極9や回路パターン部5などの回路電極と、リードフレーム11やリードワイヤ12などの導電性部材とは、以下のようにして接続することができる。以下、本発明の導電性部材と回路電極との接続方法について、図2〜5を用いて説明する。
【0062】
まず、図2に示すように、回路パターン部5、及び、チップ電極9に対し、接合層を形成する部分のみが露出するようにマスク10を形成する。
【0063】
マスク10の形成方法としては、特に限定は無い。例えば、マスク材料として感光性樹脂を用い、フォトリソグラフィーを用いた方法によりパターニングして形成する方法等が挙げられる。
【0064】
次に、図3に示すように、マスク10から露出した回路パターン部5、及び、チップ電極9に対し、無電解めっきを行い、無電解めっき層16を形成する。
【0065】
無電解めっき層16の形成方法は、特に限定は無く、従来公知の方法により行うことができる。
【0066】
なお、無電解めっき層16の形成工程は、マスク10の形成工程前に行ってもよい。
【0067】
次に、図4に示すように、リードフレーム11の一端をチップ電極9上に形成した無電解めっき層16に当接させ、リードフレーム11の他端を回路パターン部5上に形成した無電解めっき層16に当接させる。また、リードワイヤ12の一端を回路パターン部5上に形成した無電解めっき層16に当接させる。
【0068】
次に、この状態を保持しつつ、接合部分を、陽イオン性耐熱性樹脂前駆体とめっき金属イオンとを含有するめっき液に浸漬し、接合部分が陰極となるように電圧を印加して電解めっきを行う。
【0069】
電解めっきは、少なくとも接合部分がめっき液に浸漬するようにめっき浴に浸漬して行ってもよく、接合部分のみにめっき液を供給して行ってもよい。
【0070】
めっき液に用いるめっき金属イオンとしては、Cuイオン、Agイオン、Auイオン、Niイオン、Pdイオン等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0071】
めっき液中の陽イオン性耐熱性樹脂前駆体は、1〜40vol%が好ましく、10〜30vol%がより好ましい。陽イオン性耐熱性樹脂前駆体の含有量が1vol%未満であると、複合電解めっき層17の応力緩和特性や、耐熱疲労特性が低下する傾向にある。40vol%を超えると、複合電解めっき層17の耐熱性や、導電性が低下する傾向にある。
【0072】
めっき液に用いる陽イオン性耐熱性樹脂前駆体は、反応硬化後の樹脂の熱分解温度が150℃以上となるものが好ましく、250℃以上となるものがより好ましい。このような陽イオン性耐熱性樹脂前駆体としては、陽イオン性官能基を有するポリアミック酸が好ましい。陽イオン性官能基としては、アミノ基等が挙げられる。また、ポリアミック酸の数平均分子量は、800以上が好ましく、1000〜8000が好ましい。800未満であると、耐熱性が不十分な場合がある。8000を超えると、粘度が高くなり、めっき液中に分散し難くなり、取り扱い性が劣る傾向にある。更には、めっき膜形成の阻害要因となる傾向にある。
【0073】
このようにして電解めっきを行うことで、無電解めっき層16上に、めっき金属の粒界に陽イオン性耐熱性樹脂前駆体が分散した複合電解めっき層17が形成される。
【0074】
次に、複合電解めっき層17を加熱処理して、陽イオン性耐熱性樹脂前駆体を反応硬化させる。
【0075】
複合電解めっき層17の加熱処理条件は、陽イオン性耐熱性樹脂前駆体の種類により異なるが、半導体装置の耐熱温度以下で行う必要があり、100〜250℃が好ましく、100〜230℃がより好ましい。また、陽イオン性耐熱性樹脂前駆体としてポリアミック酸を用いた場合、100〜250℃が好ましく、100〜150℃がより好ましい。
【0076】
このようにして複合電解めっき層17を加熱処理することで、図5に示すように、無電解めっき層16上に、めっき金属の粒界に耐熱性樹脂が分散した複合電解めっき層17が形成され、リードフレーム11とチップ電極9、リードフレーム11と回路パターン部5、リードワイヤ12と回路パターン部5を、無電解めっき層16と複合電解めっき層17とで構成される接合層15a,15b,15cで接合できる。
【0077】
なお、この実施形態では、接合層15a,15b,15cは、無電解めっき層16上に複合電解めっき層17が形成された構造をなしているが、無電解めっき層16を形成せずに、チップ電極9や回路パターン部5に対して、複合電解めっき層17を直接形成してもよい。すなわち、接合層15a,15b,15cは、複合電解めっき層17のみからなる単層であってもよい。
【0078】
本発明の導電性部材と回路電極との接続構造の他の実施形態について、図7に示す半導体装置を用いて説明する。なお、図1と同一箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0079】
この半導体装置は、半導体チップ8の上方にインプラント基板30が配置されている。インプラント基板30は、絶縁基板31の両面に、パターン回路をなす金属層32,33が接合され、金属層32,絶縁基板31,金属層33を貫通するビアホール34が形成されている。そして、回路パターン部5、及び、チップ電極9のマスク10から露出した部分に、金属ピン35の一端が接合層15d、15eにより接合され、金属ピン35の他端が、半導体チップ8の上方に配置されたインプラント基板30のビアホール34に挿入され、はんだや金属焼結体等で接合されて、金属ピン35とインプラント基板30により、半導体チップ8と回路パターン部5とが電気的に接続している。回路パターン部5、及び、チップ電極9に接合される金属ピン35の先端形状は、図8に示すように、先端が台形状に縮径した形状をなしている。
【0080】
また、リードワイヤ12の一端が、マスク10から露出した回路パターン部5と、接合層15cで接合され、リードワイヤ12の他端が、外部電極用端子20とはんだ接合、金属焼結等の方法で接合されている。
【0081】
金属ピン35とチップ電極9とを接合する接合層15d、金属ピン35と回路パターン部5とを接合する接合層15e、リードワイヤ12と回路パターン部5とを接合する接合層15cは、図8に示されるように、無電解めっき層16と、めっき金属の粒界に耐熱性樹脂が分散した複合電解めっき層17とで構成されている。
【0082】
この実施形態では、チップ電極9、回路パターン部5が、本発明における「回路電極」に相当し、金属ピン35、リードワイヤ12が、本発明における「導電性部材」に相当する。
【実施例】
【0083】
半導体チップとして、Siウエハ上にデバイスが形成され、Alスパッタ膜を含むチップ電極が形成された半導体チップを用いた。
【0084】
ウエハ状態で、半導体チップのチップ電極表面に無電解Ni−Pめっきを施した。これをチップサイズにダイシングし、半導体チップの裏面電極をDCB基板にAgナノペーストで接合し、搭載した。
【0085】
電解複合めっき層を形成する箇所をマスキングし、その他の部分にポリイミド樹脂を塗布し、200℃で1h加熱で硬化した。その後、不要な部分のポリイミド樹脂を剥離して、マスクを形成した。
【0086】
次に、チップ電極のマスクから露出した部分にリードフレームの一端を接触させて固定した。
【0087】
次に、硫酸銅五水和物90g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50ml/L、ポリエチレングリコール(平均分子量:6000)300mg/L、下式(1)で表されるポリアミック酸(平均分子量6000)6g/Lとを混合してめっき液を調製した。
【0088】
【化1】
【0089】
上記めっき液で満たされためっき浴に、チップ電極にCuリードフレームが固定された半導体チップを浸漬し、電解めっきを行った。
【0090】
めっき条件は、浴温を20℃、電流密度は1A/dmとし、陰極に接合相手材であるCuリードフレームを用い、陽極にアノードバックで覆ったCuの可溶性陽極を用いた。
【0091】
以上の条件で電解めっきを行い、厚さ80μmの複合電解めっき層を形成した。この複合電解めっき層を120℃で60分間加熱処理を行った。
【0092】
リードフレームとチップ電極とを、めっき金属の粒界にポリイミド樹脂が分散した複合電解めっき層で接合することができた。
【符号の説明】
【0093】
1:ヒートシンク
2:樹脂ケース
3:配線基板
4:絶縁基板
5:回路パターン部
6:金属層
7a、7b:接合層
8:半導体チップ
9:チップ電極
10:マスク
11:リードフレーム
12:リードワイヤ
15a,15b,15c,15d,15e:接合層
16:無電解めっき層
17:複合電解めっき層
20:外部電極用端子
25:封止樹脂
30:インプラント基板
31:絶縁基板
32,33:金属層
34:ビアホール
35:金属ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10