特許第6019986号(P6019986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6019986
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】板材加工システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20161020BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20161020BHJP
【FI】
   G05B19/418 Z
   G06Q50/04
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-205607(P2012-205607)
(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公開番号】特開2014-59815(P2014-59815A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(72)【発明者】
【氏名】永松 康司
(72)【発明者】
【氏名】玉村 仁
【審査官】 影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−014017(JP,A)
【文献】 特開2006−313559(JP,A)
【文献】 特開2001−142520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G05B 19/18−19/416
G05B 19/42−19/46
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材から部品を切抜く加工を行う加工機本体、および加工プログラムに従って前記加工機本体を数値制御するNC装置を有する所定の加工機と、この加工機に接続されかつ通信ネットワークに接続され前記加工機に対する前記加工プログラムの付与およびオペレータによる操作を行う加工機端末と、前記通信ネットワーク上に構築されたサーバとを備え、 前記加工機端末は、前記通信ネットワークを介して前記サーバに前記部品の形状データおよび識別情報の少なくとも一方と数量とを含む加工プログラム送信要求を行う要求手段を有し、
前記サーバは、前記加工機を含む複数の加工機の加工プログラムを作成するCAM手段を有し、このCAM手段が行う処理の一部として、前記所定の加工機に用いる加工プログラムを作成し、その作成した加工プログラムを前記加工機端末から送信された前記加工プログラム送信要求に応答して前記加工機端末へ送信し、
前記加工機端末は、生産管理システムから前記部品の形状データと数量とを含む通常時の生産指示を受け、かつ前記生産管理システムとは別の手段から、前記部品の形状データと数量とを含む非通常時の生産指示を受け、これら通常時の生産指示および非通常時の生産指示を前記加工機端末の持つ画面表示装置に画像して表示し、オペレータによる操作により、または自動で、前記通常時および非通常時の生産指示の中から選ばれた生産指示を含む前記加工プログラム送信要求を前記サーバに行い、前記サーバは、通常時の生産指示に対応する前記加工機の加工サイクル内で前記加工プログラムの作成を行って前記加工機端末に送信する処理能力を有する板材加工システム。
【請求項2】
素材から部品を切抜く加工を行う加工機本体、および加工プログラムに従って前記加工機本体を数値制御するNC装置を有する所定の加工機と、この加工機に接続されかつ通信ネットワークに接続され前記加工機に対する前記加工プログラムの付与およびオペレータによる操作を行う加工機端末と、前記通信ネットワーク上に構築されたサーバとを備え、 前記加工機端末は、前記通信ネットワークを介して前記サーバに前記部品の形状データおよび識別情報の少なくとも一方と数量とを含む加工プログラム送信要求を行う要求手段を有し、
前記サーバは、前記加工機を含む複数の加工機の加工プログラムを作成するCAM手段を有し、このCAM手段が行う処理の一部として、前記所定の加工機に用いる加工プログラムを作成し、その作成した加工プログラムを前記加工機端末から送信された前記加工プログラム送信要求に応答して前記加工機端末へ送信し、
前記サーバは、前記通信ネットワークに接続された生産管理システムから、この生産管理システムで計画スケジュールされた前記部品の形状データと数量とを含む通常時の複数の生産指示を受け、この受けた複数の生産指示に従って前記加工プログラムを順次作成して通常スケジュールとして蓄積しておき、
かつ前記サーバは、前記生産管理システムまたはこの生産管理システムとは別の手段から非通常時の生産指示を受け、この受けた非通常時の生産指示に従って前記加工プログラムを作成して割込加工スケジュールとして記憶しておき、
前記加工機端末は、オペレータの指示入力により、または自動で、前記サーバに蓄積された前記通常スケジュールを参照してこの通常スケジュールの加工プログラムを取得し、画面表示装置に、前記加工機へ付与する加工プログラムの選択を促がす画像を出力し、前記割込スケジュールがある場合は、この割込スケジュールを前記画面表示装置に、前記通常スケジュールとは区別可能に画像として出力する板材加工システム。
【請求項3】
前記加工機端末は、前記サーバへの前記加工プログラム送信要求を、前記加工機の状態の情報を含めて行い、前記サーバは、前記加工機の状態の情報を用いて前記加工プログラム作成要求に対する前記加工プログラムの作成を行う請求項1または請求項2に記載の板材加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、素材から部品を切抜く加工を行うレーザ加工機等のNC加工機と、その加工プログラムを作成する汎用のサーバとを備えた板材加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ加工機等の板材加工機における板金加工プログラムの作成は、加工機とは離れた部屋,場所に設置した高性能なパーソナルコンピュータの自動プログラミング装置(CAD/CAM)で事前に作成し、その加工プログラムを加工機に転送して加工を行っている。加工プログラムの作成は、専用の自動プログラミング装置で行う。また、生産管理システムで予めスケジュールを作成し、加工プログラムの実施順を決定している。
【0003】
このような板材加工システムの一つとして、曲げ加工機から現在の加工機の属性情報(伸び値等)をサーバへ送り、サーバからその属性情報を自動プログラミング装置へ送って、前記属性情報を考慮した加工プログラムを作成するものが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−222305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の板材加工システムは、予めスケジュールを決めて加工機へ加工プログラムを転送しているため、次のような問題点がある。
・短納期の注文、加工不良による作り直し等によって、特急で切抜き加工を行わなければならない状況が生じた場合に、現場での局所的なスケジュール変更を行うことになる。その結果、予め省工数化を図った段取り、および仕分け作業を悪化させ、実際の加工の割込時間よりも長いスケジュール遅延を発生させる。また、断片的に特急部品を加工することによって、歩留りの低下および端材の増加の原因となってしまう。
・加工現場での部品の配置変更および加工変更には、加工プログラム自体の修正が必要であり、手間がかかる。
・加工機にCAM機能を追加するには、高性能なパーソナルコンピュータとバックアップの仕組みが必要となり、設備コストがかかる。加工プログラムの作成には、加工の自動割り付け、自動ネスティング、NCプログラム出力等の処理負荷の大きい処理が含まれ、このような処理の実用化が可能なコンピュータを備えるには、高性能で高価なコンピュータが必要になる。
・ 加工プログラムが加工機端末毎に保管され、バックアップおよび2次利用ができない。
・ 加工現場で修正された加工プログラムで加工された部品の実績を上位システムが把握することができない。
【0006】
この発明の目的は、短納期の部品または、後工程における加工不良による作り直しなどで、特急で部品の切抜き加工を割り込んで行わなければならない状況が生じても、その加工の割り込みに伴う余分な遅延時間を出来るだけ抑えて加工が行える板材加工システムを提供することである。
この発明の他の目的は、前記特急部品の加工の割り込みを行う場合も、略その加工の割込時間だけの遅延で済むようにすることである。
この発明のさらに他の目的は、加工サイクルの低下を伴うことなく、加工機の状態の情報を用いた適切な加工プログラムを作成可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の板材加工システムは、素材(W)から部品(p)を切抜く加工を行う加工機本体(7)、および加工プログラム(9)に従って前記加工機本体(7)を数値制御するNC装置(8)を有する所定の加工機(1)と、この加工機(1)に接続されかつ通信ネットワーク(4)に接続され前記加工機(1)に対する前記加工プログラム(9)の付与およびオペレータによる操作を行う加工機端末(2)と、前記通信ネットワーク(4)上に構築されたサーバ(5)とを備える。
前記加工機端末(2)は、前記通信ネットワーク(4)を介して前記サーバ(5)に前記部品(p)の形状データおよび識別情報の少なくとも一方と数量とを含む加工プログラム送信要求(R,R′)を行う要求手段(24)を有する。
前記サーバ(5)は、前記加工機(1)を含む複数の加工機(1,1A)の加工プログラム(9)を作成するCAM手段(31)を有し、このCAM手段(31)が行う処理の一部として、前記所定の加工機(1)に用いる加工プログラム(9)を作成し、その作成した加工プログラム(9)を前記加工機端末(2)から送信された前記加工プログラム送信要求(R,R′)に応答して前記加工機端末(2)へ送信する。
【0008】
前記サーバ(5)は、1台の高速処理が可能なコンピュータで構成されていても良く、またクラウドコンピューティング等により通信ネットワーク(4)上で複数台のコンピュータで構成されたものであっても良い。また、前記サーバ(5)は、仮想サーバ、すなわち1台または複数台の実コンピュータ上に理論上で1台のサーバとして認識できるように設けたサーバであっても良い。仮想サーバの場合、負荷に応じて接続台数または処理能力が可変とされたものであっても良い。前記加工機本体(7)は、レーザ加工機、およびパンチプレス等である。
【0009】
この構成によると、複数の加工機(1,1A)の加工プログラム(9)を作成するCAM手段(31)を有するサーバ(5)を用い、このCAM手段(31)が行う処理の一部として、前記所定の加工機(1)に用いる加工プログラム(9)を作成するため、特定の加工機(1)に専用のCAM手段(31)を設ける場合と異なり、コスト増の問題を生じることなく、前記サーバ(5)として高速処理が可能なサーバを用い、加工プログラム(9)を高速で作成することができる。例えば、前記加工機(1)の通常の加工サイクルや素材(W)の搬送サイクルよりも短い時間で加工プログラム(9)を作成できる処理能力を持ったサーバ(5)を用いることも可能である。
このように加工プログラム(9)を高速で作成できるため、短納期の部品(p)や、後工程における加工不良による作り直しなどで、特急で部品(p)の切抜き加工を割り込んで行わなければならない状況が生じても、その加工の割り込みに伴う余分な遅延時間を出来るだけ抑えて加工が行える。
【0010】
前記加工機端末(2)は、生産管理システム(6)から前記部品(p)の形状データと数量とを含む通常時の生産指示を受け、かつ前記生産管理システム(6)とは別の手段から、前記部品(p)の形状データと数量とを含む非通常時の生産指示を受け、これら通常時の生産指示および非通常時の生産指示を前記加工機端末(2)の持つ画面表示装置(22)に画像として表示し、オペレータ(10)による操作により、または自動で、前記通常時および非通常時の生産指示の中から選ばれた生産指示を含む前記加工プログラム送信要求(R)を前記サーバ(5)に行うようにしても良い。この場合、前記サーバ(5)は、通常時の生産指示に対応する前記加工機(1)の加工サイクル内で前記加工プログラム(9)の作成を行って前記加工機端末(2)に送信する処理能力を有するものとする。
【0011】
この構成の場合、前記所定の加工機(1)による加工は、新たな加工プログラム(9)が必要な都度、加工機端末(2)からサーバ(5)に加工プログラム送信要求(R)を行い、サーバ(5)で作成された加工プログラム(9)を受信して加工を行う過程を繰り返すことになる。前記サーバ(5)は、通常時の生産指示に対応する前記加工機(1)の加工サイクル内で前記加工プログラム(9)の作成を行って前記加工機端末(2)に送信する処理能力を有するものであるため、サーバ(5)により加工プログラム(9)を作成する時間が、加工のサイクルタイムに影響しない。事業者への使用貸与のサービスが行れている現在の高速のサーバ(5)によれば、一般的な部品(p)切抜きの板金加工の加工プログラム(9)の作成は数秒以内で行え、上記のような通常時の加工機の加工サイクル内で加工プログラム(9)の作成を行って前記加工機端末(2)に送信することが可能である。
このように常に、加工機端末(2)からサーバ(5)へ加工プログラム送信要求(R)を行ってサーバ(5)から送信された加工プログラム(9)で加工を行う過程を繰り返すため、前記特急部品の加工の割り込みを行う場合も、通常時と同様の各処理が行えて、略その加工の割込時間だけの遅延で済む。
【0012】
この発明において、図5〜7の実施形態に対応する図面に示すように、前記サーバ(5)は、前記通信ネットワーク(4)に接続された生産管理システム(6)から、この生産管理システム(6)で計画スケジュールされた前記部品(p)の形状データ(G)と数量とを含む通常時の複数の生産指示(a)を受け、この受けた複数の生産指示(a)に従って前記加工プログラム(9)を順次作成して通常スケジュールとして蓄積しておき、
かつ前記サーバ(5)は、前記生産管理システム(6)またはこの生産管理システム(6)とは別の手段から非通常時の生産指示(b,c)を受け、この受けた非通常時の生産指示(b,c)に従って前記加工プログラム(9)を作成して割込加工スケジュールとして記憶しておき、
前記加工機端末(2)は、オペレータ(10)の指示入力により、または自動で、前記サーバ(5)に蓄積された前記通常スケジュールを参照してこの通常スケジュールの加工プログラム(9)を取得し、画面表示装置(22)に、前記加工機(1)へ付与する加工プログラム(9)の選択を促がす画像を出力し、前記割込スケジュールがある場合は、この割込スケジュールを前記画面表示装置(22)に、前記通常スケジュールとは区別可能に画像として出力するようにしても良い。
【0013】
この構成の場合は、生産管理システム(6)からの生産指示を、加工機端末(2)ではなく、サーバ(5)に与え、サーバ(5)はその生産指示に従って加工プログラム(9)を作成し、記憶しておく。通常生産指示(a)の場合は、通常スケジュールとして蓄積しておき、非通常時の生産指示(b,c)の場合は、割込加工スケジュールとして記憶しておく。
前記加工機端末(2)では、サーバ(5)の通常スケジュールを表示し、また割込スケジュールがある場合はその割込スケジュールを表示し、オペレータ(10)の操作により、または自動で選択された加工プログラム(9)をサーバ(5)から得る。
この場合、生産管理システム(6)の通常生産指示(a)、およびこの生産管理システム(6)または別の手段からの非通常時の生産指示(b,c)を、加工機端末(2)を通さずにサーバ(5)が直接に受け、加工プログラム(9)を作成するため、特急部品(p)の加工の割り込みを行う場合も、通常時と同様の各処理が行えて、略その加工の割込時間だけの遅延で済む。
【0014】
この発明において、前記加工機端末(2)は、前記サーバ(5)への前記加工プログラム送信要求(R,R′)を、前記加工機(1)の状態の情報を含めて行い、前記サーバ(5)は、前記加工機(1)の状態の情報を用いて前記加工プログラム(9)作成要求に対する前記加工プログラム(9)の作成を行うようにしても良い。前記加工機(1)の状態の情報は、一例を挙げると、レーザ加工機の無数の支持突起(いわゆる剣山)からなるワークサポートと素材(W)の位置関係等である。
加工機(1)の状態の情報を理由して加工プログラム(9)を作成することで、加工機(1)の状態に応じた適切な加工が行える。例えば、前記レーザ加工機による部品(p)の切抜き加工では、ワークサポートの前記支持突起はレーザによる熱を受けて次第に溶融するが、その溶融は部品(p)に影響を与える。このとき、前記ワークサポートと素材(W)の位置関係が分かっていると、その素材(W)から切抜かれる部品(p)の重要な位置に前記ワークサポートの支持突起が位置しないように加工プログラム(9)を作成でき、切抜き加工される部品(p)の高品質化が図れる。また、前述のような高速処理が可能なサーバ(5)を用いることができるため、加工サイクルの低下を伴うことなく、加工機(1)の状態の情報を用いた適切な加工プログラム(9)を作成することができる。
【0015】
参考提案例に係る端末付き板材加工機(3)は、素材(W)から部品(p)を切抜く加工を行う加工機本体(7)、および加工プログラム(9)に従って前記加工機本体(7)を数値制御するNC装置(8)を有する所定の加工機(1)と、この加工機(1)に接続されかつ通信ネットワーク(4)に接続され前記加工機(1)に対する前記加工プログラム(9)の付与およびオペレータ(10)による操作を行う加工機端末(2)とを備え、 前記加工機端末(2)は、前記通信ネットワーク(4)上に構築されたサーバ(5)と接続され、この接続するサーバ(5)は、前記加工機(1)を含む複数の加工機(1,1A)の加工プログラム(9)を作成するCAM手段(31)を有し、このCAM手段(31)が行う処理の一部として、前記所定の加工機(1)に用いる加工プログラム(9)を作成し、その作成した加工プログラム(9)を前記加工機端末(2)から送信された加工プログラム送信要求(R,R′)に応答して前記加工機端末(2)へ送信する機能を有するものであり、
前記加工機端末(2)は、前記通信ネットワーク(4)を介して前記サーバ(5)に前記部品(p)の形状データおよび識別情報の少なくとも一方と数量とを含む前記加工プログラム送信要求(R,R′)を行う要求手段(24)を有することを特徴とする。
【0016】
この構成の場合、この発明の板材加工システムにつき前述したと同様に、短納期の部品(p)や、後工程における加工不良による作り直しなどで、特急で部品(p)の切抜き加工を割り込んで行わなければならない状況が生じても、その加工の割り込みに伴う余分な遅延時間を出来るだけ抑えて加工が行える。
【0017】
参考提案例に係る自動プログラミング装置(51)は、素材(W)から部品(P)を切抜く加工を行う加工機(1)の数値制御に用いる加工プログラム(9)を作成する自動プログラミング装置(51)であって、通信ネットワーク(4)上に構築されたサーバ(5)に接続され、
前記サーバ(5)は、前記自動プログラミング装置(51)よりも高速に前記加工プログラム(9)の作成、または前記加工プログラム(9)の作成段階で用いる定められた処理を行うCAM手段(31)を有し、
前記自動プログラミング装置(51)は、前記部品(P)の形状データと数量とを含むプログラム作成指示に応答して前記加工プログラム(9)を作成する処理のうち、自己で行う処理と前記サーバ(5)に行わせる処理とを定められた規則(52R)に従って分別する分別手段(52)と、この分別手段(52)でサーバ(5)に行わせると分別した処理を前記サーバ(5)に依頼してこのサーバ(5)から処理結果を受け取るサーバ依頼・結果受取手段(53)と、前記自己で行うと分別された処理を行う内部自動プログラミング手段(54)と、前記サーバ依頼・結果受取手段で受け取った処理結果と前記内部自動プログラミング手段(54)で行った処理とを併せて作成された加工プログラム(9)を出力する加工プログラム出力手段(55)とを有する。前記加工プログラム(9)の作成段階で用いる定められた処理は、ネスティングまたは加工の自動割り付け等の処理である。前記サーバ(5)は仮想サーバであっても良い。
【0018】
この構成の場合、この自動プログラミング装置(51)に対して前記プログラム作成指示が行われると、前記分別手段(52)は、前記加工プログラム(9)を作成する処理のうち、自己で行う処理と前記サーバ(5)に行わせる処理とを定められた規則(52R)に従って分別する。この分別により前記定められた規則(52R)に従って前記サーバ(5)に行わせる処理は、加工プログラム(9)の作成段階における特定の処理、例えばネスティングまたは加工の自動割り付け等であっても良く、また加工プログラム(9)の全体、すなわち複数の加工プログラム(9)のプログラム作成指示における、一部の加工プログラム(9)であっても良い。前記分別手段(52)による分別は、前記プログラム作成指示の内容から演算の大体の負荷量を計算し、閾値よりも負荷量が多い場合のみ弁別を行うようにしても良い。
ネスティングおよび加工の自動割り付けは、加工プログラム(9)の作成の処理のうちで、負荷の大きな処理であり、この負荷の大きな処理を高速処理が可能なサーバ(5)に行わせることで、要求されるプログラム作成指示に対して自動プログラミング装置(51)の処理能力が不十分であっても、加工プログラム(9)を高速に作成することができる。また、複数の加工プログラム(9)のプログラム作成指示における、一部の加工プログラム(9)をサーバ(5)に作成されるようにした場合であっても、この自動プログラミング装置(51)が前記プログラム作成指示を受け、その作成指示に対する加工プログラム(9)を全て出力することで、あたかもこの自動プログラミング装置(51)が作成したかのように、プログラム作成指示に対する加工プログラムの出力が行える。そのため、この自動プログラミング装置(51)に特別に高速の処理機能を有するものを用いることなく、一般的なパーソナルコンピュータまたは一般的なワークステーションに用いられる程度のコンピュータを用いても、必要な場合のみサーバ(5)に処理を行わせることで、加工プログラムの作成が迅速に行える。
【発明の効果】
【0019】
この発明の板材加工システムは、素材から部品を切抜く加工を行う加工機本体、および加工プログラムに従って前記加工機本体を数値制御するNC装置を有する所定の加工機と、この加工機に接続されかつ通信ネットワークに接続され前記加工機に対する前記加工プログラムの付与およびオペレータによる操作を行う加工機端末と、前記通信ネットワーク上に構築されたサーバとを備え、前記加工機端末は、前記通信ネットワークを介して前記サーバに前記部品の形状データおよび識別情報の少なくとも一方と数量とを含む加工プログラム送信要求を行う要求手段を有し、前記サーバは、前記加工機を含む複数の加工機の加工プログラムを作成するCAM手段を有し、このCAM手段が行う処理の一部として、前記所定の加工機に用いる加工プログラムを作成し、その作成した加工プログラムを前記加工機端末から送信された前記加工プログラム送信要求に応答して前記加工機端末へ送信するため、短納期の部品や、後工程における加工不良による作り直しなどで、特急で部品の切抜き加工を割り込んで行わなければならない状況が生じても、その加工の割り込みに伴う余分な遅延時間を出来るだけ抑えて加工が行える。
【0020】
この発明の板材加工システムにおいて、前記加工機端末が、生産管理システムから前記部品の形状データと数量とを含む通常時の生産指示を受け、かつ前記生産管理システムとは別の手段から、前記部品の形状データと数量とを含む非通常時の生産指示を受け、これら通常時の生産指示および非通常時の生産指示を前記加工機端末の持つ画面表示装置に画像として表示し、オペレータによる操作により、または自動で、前記通常時および非通常時の生産指示の中から選ばれた生産指示を含む前記加工プログラム送信要求を前記サーバに行い、前記サーバは、通常時の生産指示に対応する前記加工機の加工サイクル内で前記加工プログラムの作成を行って前記加工機端末に送信する処理能力を有するものとする場合は、前記特急部品の加工の割り込みを行う場合も、略その加工の割込時間だけの遅延で済むようにできる。
【0021】
この発明の板材加工システムにおいて、前記サーバが、前記通信ネットワークに接続された生産管理システムから、この生産管理システムで計画スケジュールされた前記部品の形状データと数量とを含む通常時の複数の生産指示を受け、この受けた複数の生産指示に従って前記加工プログラムを順次作成して通常スケジュールとして蓄積しておき、かつ前記サーバは、前記生産管理システムまたはこの生産管理システムとは別の手段から非通常時の生産指示を受け、この受けた非通常時の生産指示に従って前記加工プログラムを作成して割込加工スケジュールとして記憶しておき、前記加工機端末は、オペレータの指示入力により、または自動で、前記サーバに蓄積された前記通常スケジュールを参照してこの通常スケジュールの加工プログラムを取得し、画面表示装置に、前記加工機へ付与する加工プログラムの選択を促がす画像を出力し、前記割込スケジュールがある場合は、この割込スケジュールを前記画面表示装置に、前記通常スケジュールとは区別可能に画像として出力する場合も、前記特急部品の加工の割り込みを行うときに、略その加工の割込時間だけの遅延で済むようにできる。
【0022】
この発明の板材加工システムにおいて、前記加工機端末が、前記サーバへの前記加工プログラム送信要求を、前記加工機の状態の情報を含めて行い、前記サーバは、前記加工機の状態の情報を用いて前記加工プログラム作成要求に対する前記加工プログラムの作成を行う場合は、加工サイクルの低下を伴うことなく、加工機の状態の情報を用いた適切な加工プログラムを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明の第1の実施形態に係る板材加工システムの概略の概念構成を示すブロック図である。
図2】同板材加工システムの詳細の概念構成を示すブロック図である。
図3】同板材加工システムのCAM手段が行う加工プログラム作成過程の説明図である。
図4】同板材加工システムにおける加工機の一例を示す側面図、そのワークサポートの部分側面図、および同加工機で加工する部品の平面図である。
図5】この発明の第2の実施形態に係る板材加工システムの概略の概念構成を示すブロック図である。
図6】同板材加工システムの詳細の概念構成を示すブロック図である。
図7】同板材加工システムでサーバから加工機端末に送られて表示されるスケジュールの画面例の説明図である。
図8】この発明のさらに他の実施形態に係る自動プログラミング装置を備えた板材加工システムの概略の概念構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図4と共に説明する。図1はこの板材加工システムの概略の概念構成を示すブロック図であり、図2はその詳細の概念構成を示す。概要を説明すると、この板材加工システムは、加工機1を通信ネットワーク4で外部の仮想サーバ等のサーバ5に接続し、加工プログラムの作成において処理負荷の大きい、加工の自動割り付け、自動ネスティング、加工プログラムの出力をサーバ5で処理することで、加工機1に高性能なCAMを搭載することなく、加工現場での加工プログラムの修正を実現し、またストレージ領域を備え、加工プログラムのバックアップと検索機能により、加工プログラムの管理を効率化するものである。
【0027】
この板材加工システムは、NC加工機からなる所定の加工機1と、この加工機1に接続されかつ通信ネットワーク4に接続された所定の加工機端末2と、サーバ5と、生産管理システム6とを備える。加工機1と加工機端末2とで端末付き加工機3が構成される。通信ネットワーク4は、インターネット等の広域のコンピュータ通信ネットワークであるが、ローカルエリアネットワークであっても、その両者を組み合わせたネットワークであっても良い。前記サーバ5は、前記端末付き加工機3と同様な構成の他の端末付き加工機3A(図2)とも、前記通信ネットワーク4で接続される。前記他の端末付き加工機3Aは、前記所定の端末付き加工機3と同じ形式の加工プログラムで制御可能なものである。
【0028】
図2において、加工機1は、加工機本体7と、この加工機本体7を加工プログラム9に従って数値制御するNC装置8とで構成される。加工機本体7は、加工機1における制御系を除いた部分を言う。加工機本体7は、金属板の板材である素材から部品を切抜く加工を行う装置であり、例えばレーザ加工機、パンチプレス等からなる。図4(A)は加工機本体7の一例を示す。可動のフレーム11に設置されたレーザヘッド12の下方に、板金の素材Wを載せるワークサポート13が設置されている。レーザヘッド12は、水平な直交2軸方向(X,Y方向)に移動可能である。ワークサポート13は、同図(B)に示すように無数の支持突起13aを有する剣山状に構成されている。素材Wはワークサポート13上の任意位置に載せられ、その載せられた素材Wのワークサポート13上の位置が、加工機本体7の素材位置認識手段(図示せず)で認識され、記憶される。
【0029】
図2において、NC装置8はコンピュータ式の数値制御装置であり、NCコード等で記述された加工プログラム9を解読し、加工機本体7の制御を行う。NC装置8は、数値制御部とプログラマブルコントローラ部とを備える。加工プログラム9は、通常は素材Wの一枚分の加工を行うプログラムとされる。
【0030】
加工機端末2は、加工機1の操作を行うオペレータ用の端末であって、パーソナルコンピュータ等で構成され、加工機1に対して加工プログラム9の付与を行う機能を備える。加工機端末2は、具体的には、次の加工機操作手段21、画面表示装置22、加工プログラム表示・選択手段23、要求手段24、受信情報記憶手段25、および通信制御手段26を有する。
【0031】
加工機操作手段21は、オペレータ10の入力等の操作によって加工機1の加工機本体7およびNC装置8の操作を行う手段であり、タッチパネル等のポインティグディバイス、およびスイッチ、キーボード等からなる。
画面表示装置22は、画像を表示可能な装置であり、液晶表示装置等からなる。
【0032】
加工プログラム表示・選択手段23は、サーバ5から受信した加工プログラム9またはサーバ5にある未受信の加工プログラム9を前記画面表示装置22の画面に表示させ、オペレータ10の操作によって、受信済みの加工プログラム9を選択してNC装置8に次に実行するように与え、また未受信の加工プログラム9を選択してサーバ5から受信する。
【0033】
要求手段24は、サーバ5に対して加工プログラム送信要求Rを送信する手段である。この加工プログラム送信要求Rには、加工を行わせる各部品の形状データ(CAD等による線データ)G(図3(A))と、その各部品の数量、およびパラメータ等で示される加工機1の状態の情報とが含まれる。この加工機1の状態の情報は、例えば、図4(B)と共に前述したワークサポート13に対して今置かれている素材Wの位置の情報等である。要求手段24による加工プログラム送信要求Rは、オペレータ10の入力によって行うようにしても良く、また定められた規則(図示せず)に従って自動で行うようにしても良い。
【0034】
受信情報記憶手段25は、加工プログラム送信要求Rに応答してサーバ5から送信されて加工機端末2で受信した情報を記憶しておく手段であり、上記の受信した情報には加工プログラム9と、素材Wに対する部品pのネスティング結果である配置結果情報とがある。配置結果情報は必ずしも送受信を行わなくても良い。
【0035】
通信制御手段26は、通信ネットワーク4を介してサーバ5と通信が行えるように各種の処理を行う手段である。通信制御手段26は、通信の確立の他に、サーバ5に加工機端末3を認識させ、登録された加工機端末2であることの認証を行わせるための加工機端末2の識別情報や、パスワードの送信等の処理を行う。
【0036】
サーバ5は、通信ネットワーク4上に構築されて複数の加工機1の加工プログラム9の作成を並列処理するコンピュータであり、加工機1の通常の加工サイクル内で加工プログラム9の作成が可能な程度に高速処理が可能なものが用いられる。このサーバ5は、1台のコンピュータで構成されていても良く、またクラウドコンピューティング等により通信ネットワーク4上で複数台のコンピュータにより構成されたものであっても良い。また、前記サーバ5は、仮想サーバ、すなわち1台または複数台の実コンピュータ上に理論上で1台のサーバとして認識できるように設けたサーバであっても良い。この実施形態では、サーバ5として仮想サーバを用いている。
【0037】
サーバ5は、次のCAM手段32、加工機登録手段33、認証等処理手段34、要求応答送信手段35、および通信制御手段36を備える。
CAM手段32は、自動プログラミングを行う手段であり、加工の自動割り付け部31a,自動ネスティング部31b、加工プログラム出力部31cを有する。
加工の自動割り付け部31aは、CADで描かれた部品形状の線分上に、パンチプレスであればタレットに装填されている工具形状を、レーザ加工機であればレーザヘッドの加工経路をそれぞれ線分上を加工できるように割り付ける。この時、形状に求められている精度を確保するために、加工速度または加工順、アプローチ加工など、様々な要素を考慮して、自動的に形状に対して加工を割り付ける処理を行う。
自動ネスティング部31bは、与えられた部品pの形状データG(図3(A))と、素材Wの寸方のデータとから、定められたネスティング規則(図示せず)に従って同図のようにネスティング、つまり素材Wに対する各部品pの配置を行う。上記ネスティング規則としては、歩留りを最大にする規則、部品pの相互間の最小間隔,部品pと素材Wの外周との間の最小間隔の規則、素材Wにおけるどの位置から順に部品pを配置するかの規則等がある。
加工プログラム出力部31cは、自動ネスティング部31bでネスティングした配置結果の情報から、加工機1で加工するための加工プログラム9を作成する。
【0038】
加工機登録手段33は、サーバ5により加工プログラム9を作成する加工機1を、その加工機1の識別情報等によって登録しておく手段である。
認証等処理手段32は、加工機端末2から送信された加工プログラム送信要求Rの受信時に認証処理を行い、加工機登録手段33に登録された加工機1,1Aであることを認証する手段である。
【0039】
要求応答送信手段35は、加工プログラム送信要求Rを行った加工機端末2に対して、その応答として、CAM手段31による加工プログラム9等の作成結果を送信する手段である。送信する情報は、加工プログラム9の他に、ネスティングの配置結果情報を含めても良い。この送信は暗号化して送り、加工機端末2において暗号解読手段(図示せず)により解読する。要求応答送信手段35は、この他に、前記の作成された加工プログラム9を所定の記憶手段(図示せず)にバックアップする処理を行う。
【0040】
通信制御手段36は、加工機端末2と通信ネットワーク4を介して通信の確立の処理を行う手段である。
【0041】
生産管理システム6は、ローカルエリアネットワーク、またはインターネット等の広域の通信ネットワーク4上に構築した工程管理サーバである。生産管理システム6は、スケジュール機能を有し、加工機端末2に対する部品pの生産指示、および進捗管理を行う。部品pの生産指示は、生産する各部品pの形状データおよび材質データと、その各部品pの生産個数のデータである。進捗管理は、加工機端末2から送信される加工実績の情報を元に、各部品pの進捗を捉える。
【0042】
加工機端末2は、前記生産管理システム6から前記部品pの形状データG(図3(A))と数量とを含む通常時の生産指示Aを受け、かつ前記生産管理システム6とは別の手段から、前記部品pの形状データと数量とを含む非通常時の生産指示Bを受ける。前記生産管理システム6とは別の手段は、例えば、後工程19における情報処理端末である。
【0043】
上記構成の板材加工システムにおける処理の全体的な流れの概要を説明する。加工機端末2は、生産管理システム6、およびこの生産管理システム6とは別の後工程19などの手段から、生産指示A,B、すなわち部品の作成要求pを受け、画面表示装置22にその作成要求の内容を表示する。生産管理システム6とは別の手段から生産指示Bを受けるときは、その手段で特急に部品pを作成する必要が生じた場合等の非通常時である。これらの生産指示A,Bは、要求する各部品pの形状データGと、各部品pの要求個数である。
【0044】
オペレータ10は、加工機端末2で、サーバ5に要求するための加工プログラム送信要求Rを作成する。この加工プログラム送信要求Rは、各部品pの形状データGと、各部品pの要求個数と、パラメータ情報である。このパラメータ情報は、前述の加工機1の状態の情報である。
加工機端末2は、オペレータ10の操作によって、その作成された加工プログラム送信要求Rをサーバに送信する。
【0045】
サーバ5は、加工プログラム送信要求Rを元に加工プログラム9と前記配置結果情報を作成する。サーバ5は、その作成した加工プログラム9と配置結果情報を、加工プログラム送信要求Rを行った加工機端末2へ送信する。
加工機端末2は、受信した加工プログラム9を加工機1のNC装置9へへ与え、加工機1はこの加工プログラム9に従って加工を行う。この加工プログラム9を加工機1へ与える処理は、オペレータ10による加工機端末2の操作に従って行うようにしても、また加工機端末2が自動で行うようにしても良い。
【0046】
この構成の板材加工システムによると、複数の加工機1,1Aの加工プログラム9を作成するCAM手段31を有するサーバ5を用い、このCAM手段31が行う処理の一部として、前記所定の加工機1に用いる加工プログラム9を作成するため、特定の加工機に専用のCAM手段を設ける場合と異なり、コスト増の問題を生じることなく、前記サーバ5として高速処理が可能なものを用い、加工プログラム9を高速で作成することができる。例えば、前記加工機1の通常の加工サイクルや素材の搬送サイクルよりも短い、数秒以内に加工プログラム9を作成できる処理能力を持ったサーバ9を用いることが可能である。
このように加工プログラム9を高速で作成できるため、短納期の部品や、後工程における加工不良による作り直しなどで、特急で部品の切抜き加工を割り込んで行わなければならない状況が生じても、その加工の割り込みに伴う余分な遅延時間を出来るだけ抑えて加工が行える。
【0047】
また、前記加工機1による加工は、加工プログラム9が必要な都度、加工機端末2からサーバ5に加工プログラム送信要求Rを行い、サーバ5で作成された加工プログラム9を受信して加工を行う過程を繰り返すことになる。前記サーバ5は、通常時の生産指示に対応する前記加工機1の加工サイクル内で前記加工プログラム9の作成を行って前記加工機端末2に送信する処理能力を有するものであるため、サーバ5により加工プログラム9を作成する時間が加工のサイクルタイムに影響しない。事業者への使用の貸与のサービスが行われている現在の高速のサーバによれば、一般的な部品切抜きの板金加工の加工プログラムの作成は数秒以内で行え、上記のような通常時の加工機1の加工サイクル内で加工プログラムの作成を行って前記加工機端末2に送信することが可能である。
【0048】
このように常に、加工機端末2からサーバ5へ加工プログラム送信要求Rを行ってサーバ5で作成され送信された加工プログラム9で加工を行う過程を繰り返すため、前記特急部品の加工の割り込みを行う場合も、通常時と同様の各処理が行えて、略その加工の割込時間だけの遅延で済む。
【0049】
また、加工機端末2からサーバ5へ加工プログラム送信要求Rを行ってサーバ5で作成され送信された加工プログラム9で加工を行う過程を繰り返すため、前記加工プログラム送信要求Rに加工機1の状態の情報をパラメータ等として含めて行い、前記サーバ5は、加工機1の状態の情報を用いて前記加工プログラム作成要求Rに対する前記加工プログラムの作成を行うことができる。そのため、加工機1の状態に応じた適切な加工プログラム9が作成できる。
【0050】
具体例を挙げると、図4(C)に示す部品pのように、一部に形状が複雑であったり寸法,品質上等の要求の強い重要部分paを有する場合、この重要部分paにワークサポート13の支持突起13aが位置すると、その重要部分paの加工品質の確保の上で好ましくない。このような場合に、加工プログラム送信要求Rに、ワークサポート13とその上に置かれた素材Wの位置関係の情報がパラメータ等で含まれていると、前記重要部分paにワークサポート13が位置しないようなネスティング,加工プログラム9の作成が行える。このように、加工機1の状態に応じた適切な加工プログラム9が作成できる。
【0051】
図5ないし図7は、この発明の他の実施形態を示す。特に説明した事項の他は、前記第1の実施形態と同様である。加工機1は、前記実施形態で説明したものと同じである。この実施形態は、生産管理システム6から、サーバ5に生産指示を行うようにした点で、第1の実施形態と異なっている。上記生産指示には、通常生産指示aと、非通常生産指示bとが含まれる。
概要を説明すると、加工機1の加工機端末2と通信ネットワーク4で接続した仮想サーバ等のサーバ5に、スケジュール機能を持たせ、かつ加工プログラム9を溜めることにより、計画スケジュールの決定後の割込みに対して、加工機1の現在の状態と、現在の端材在庫と、現在の後工程19の負荷の状態を考慮して、非通常の生産指示b,cによる加工を割り込ませるタイミングと単位を決定する。また、複数の加工機1,1Aで切抜き加工できる部品pは、現在の加工機1,1Aの負荷とランニングコスト等の評価値を考慮して加工機1,1Aの振替えを行う。加工機端末2は、間近の加工プログラム9をサーバ5から取得し、最終的な順番を確認して加工機1による加工を実施させる。
【0052】
加工機端末2は、加工機1の操作を行うオペレータ用の端末であって、かつ通信ネットワーク4を介してサーバ5と接続されている点では第1の実施形態と同様であるが、この実施形態では生産管理システム6からの生産指示がサーバ5に行われることに伴って、一部の機能が異なっている。加工機端末2は、加工機操作手段21、画面表示装置22、加工プログラム表示・選択手段23B、要求手段24B、受信情報記憶手段25B、および通信制御手段26を有している。
【0053】
要求手段24は、サーバ5に対して、加工プログラム送信要求R′を送信する手段である。この送信要求R′は、参照要求と、その後の加工プログラム9のダウンロード要求との2段階で行われる。
上記参照要求に対して、サーバ5は、加工プログラム記憶手段42に実行すべき順に記憶されている加工プログラム9の集まりである加工スケジュールの加工プログラム9の表題のリスト40(図7)を、要求応答送信手段35Bによって加工機端末2へ送信する。
なお、加工プログラム送信要求R′は、上記のように参照要求とその後のダウンロード要求とに分けずに一度の要求だけとし、サーバ5はその加工プログラム送信要求R′に対して前記加工スケジュールの加工プログラム9を全て加工機端末2へ送信するようにしても良いが、ここでは、参照要求とダウンロード要求に分けて行う場合につき説明する。
【0054】
加工機端末2の加工プログラム表示・選択手段23Bは、受信した前記加工スケジュールのリスト40を、画面表示装置22の画面に表示させ、オペレータ10に選択を促す。画面表示装置22における加工スケジュールの表示内容は、例えば図7に示すように、各行に1本の加工プログラム9についての、実行させるべき順番、通常加工か特急加工(すなわち非通常加工)かの区別を示す予定、素材Wの材質、板厚、およびプログラムナンバーを表示したリスト40である。このリスト40において、特急加工の加工プログラム9については、他の加工プログラム9に対して目立つように異なる色で表示する。例えば、通常加工の加工プログラム9についての表示は青色、特急加工の加工プログラム9についての表示は赤色とされる。
また、加工プログラム表示・選択手段23Bは、加工の割込みがある場合は、画面表示装置22にその割込みの通知を表示する。この割込みの通知の表示は、前記のリスト40における色の違いとして行っても、また前記リスト40とは別に行われる表示としても良い。
【0055】
加工機端末22の要求手段24は、オペレータ10に加工プログラム9が選択され、指定の選択内容確認等の操作がなされると、その選択された加工プログラム9のダウンロード要求をサーバ5に対して行う。加工プログラム9の選択は、1本ずつ順次行うようにしても、また任意数だけ纏めて行うようにしても良い。サーバ5は、その要求された加工プログラム9を加工機端末2へ送信する。
加工機端末2の受信情報記憶手段25Bは、前記加工スケジュールを受信してその受信内容を記憶する。
【0056】
上記ダウンロードの要求は、前記リスト40上で加工プログラム9を選択する他に、部品pの識別情報と数量とで行うようにしても良い。サーバ5は、加工プログラム送信要求R′に部品pの識別情報と数量とが含まれる場合は、その部品pの加工を行う加工プログラム9を含む加工スケジュールを要求応答送信手段35Bによって加工機端末2へ送信する。なお、サーバ5は、部品pの識別情報と形状データGとを対応させて記憶したマスタファイル等の記憶手段(図示せず)を有し、かつ部品pの識別情報および個数を含む情報とその情報に対応する加工プログラム9とを対応して記憶した記憶手段(図示せず)を有する。
【0057】
サーバ5は、前記実施形態と同じく通信ネットワーク4上に構築した高速処理が可能な加工サーバであり、前記と同様の加工プログラム作成処理を行うCAM手段31を有する。サーバ5は、この他に、スケジュール作成手段41、加工プログラム記憶手段42、端材管理手段43、加工機登録手段33、入力処理手段44、要求応答送信手段35B、および通信制御手段36を有する。
【0058】
スケジュール作成手段41は、生産管理システム6から通常生産指示aが与えられて計画スケジュールを決定した後の、生産管理システム6および後工程19などから与えられる非通常の生産指示b,cである割込みに対して、加工機1の現在の状態と、端材管理手段43て管理している現在の端材在庫と、現在の後工程19の負荷の状態等を考慮して、非通常の生産指示b,cによる加工を割り込ませるタイミングと単位を決定する。
また、スケジュール作成手段41は、複数の加工機1,1Aで切抜き加工できる部品pは、現在の加工機1,1Aの負荷とランニングコスト等の評価値を考慮して加工機1,1Aの振替えを行う。
【0059】
加工プログラム記憶手段42は、CAM手段31で作成された加工プログラム9を格納するデータベースであり、通常スケジュール記憶部42aと、非通常スケジュール記憶部42bとを有する。加工プログラム記憶手段42は、登録された加工機1,1Aに毎に識別可能に、例えば区分して設けられている。通常スケジュール記憶部42aには、生産管理システム6から与えられた通常生産指示aに従って作成した加工プログラム9を、その通常生産指示aに応じた順に記憶する。非通常スケジュール記憶部42bには、CAM手段31で作成された割込用の加工プログラム9を記憶する。
【0060】
端材管理手段43は、各加工機1,1Aから送信された端材の情報を記憶する。
入力処理手段44は、生産管理システム6、加工機端末2,2A、および後工程19から送信された入力を、その入力内容に応じてCAM手段31,スケジュール作成手段41,端材管理手段43に振り分けて転送する処理を行う。
【0061】
要求応答送信手段35Bは、加工機端末2から送信された加工プログラム送信要求R′に対して、加工プログラム記憶手段42に記憶されている通常加工の加工スケジュールおよび非通常加工の加工スケジュールを加工機端末2へ送信する手段である。
通信制御手段36は、第1の実施形態と同じく、加工機端末2と暗号化通信を行う機能を備える。
【0062】
生産管理システム6は、ローカルエリアネットワークまたはインターネット等の通信ネットワーク4上に構築されたサーバである。生産管理システム6は、前記CAM手段31を有するサーバ5に対して部品pの生産指示を行う。また、各加工機端末2からの加工実績情報を元に、各部品pの進捗を捉え、進捗管理を行う。
【0063】
この実施形態の板材加工システムにおける処理の全体的な流れの概要を説明する。
仮想サーバ等からなるサーバ5は、生産管理システム6から計画スケジュールされた通常生産指示aを受ける。
サーバ5は、CAM手段31によって、前記通常生産指示aに応じた加工プログラム9を作成する。
作成された加工プログラム9は、スケジュール作成手段41で最適化された順番で、通常スケジュール記憶部42aに、プログラムテーブルとして格納される。
サーバ5は、生産管理システム6または後工程19から特急生産指示等の非通常生産指示b,cを受けると、現在の端材在庫を考慮して加工プログラム9を作成し、割込みがあることを加工機端末2に通知する。
サーバ5は、現在の加工機の段取り等の状況と、現在の後工程19の負荷を考慮して、割込の加工プログラム9による加工を割り込ませるタイミングと単位を決定する。
加工機1は、直近のスケジュールを参照して、該当の加工プログラム9を取得し、加工を行う。
【0064】
この実施形態の場合、生産管理システム6の通常生産指示a、およびこの生産管理システム6または別の手段からの非通常時の生産指示b,cを、加工機端末2を通さずにサーバ5が直接に受け、加工プログラム9を作成する。そのたため、特急部品の加工の割り込みを行う場合も、通常時と同様の各処理が行えて、略その加工の割込時間だけの遅延で済む。
【0065】
図8は、この発明のさらに他の実施形態に係る自動プログラミング装置を示す。なお、特に説明する事項の他は、図1図5に示す第1の実施形態につき説明した内容と同様であり、重複する説明を省略する。
この自動プログラミング装置51は、素材W(図3)から部品を切抜く加工を行う加工機1の数値制御に用いる加工プログラム9を作成する装置であって、通信ネットワーク4上に構築されたサーバ5に接続される。
【0066】
この例のサーバ5は、前記自動プログラミング装置51よりも高速の処理が可能なコンピュータで構成され、前記実施形態と同様に単独のコンピュータであっても、またクラウドコンピューティング等により通信ネットワーク4上で複数台のコンピュータにより構成されたものであっても良い。また、このサーバ5は、仮想サーバ、すなわち1台または複数台の実コンピュータ上に理論上で1台のサーバとして認識できるように設けたサーバであっても良い。この実施形態では、サーバ5として仮想サーバを用いている。
このサーバ5は、CAM手段31、要求応答送信手段35C、および通信制御手段36を有する。CAM手段31は、加工機1で加工する部品Wの形状データと数量とから前記加工プログラム9を作成する処理の他に、要求に応じて、加工プログラム9の作成段階で用いる定められた処理だけを行う機能を備える。この加工プログラム9の作成段階における定められた処理は、例えばネスティング、および加工の自動割り付け等である。
【0067】
前記自動プログラミング装置51は、分別手段52、サーバ依頼・結果受取手段53、内部自動プログラミング手段54、および加工プログラム出力手段55を有する。
【0068】
前記分別手段52は、生産管理システム6等から指示される部品Wの形状データと数量とを含むプログラム作成指示に応答して前記加工プログラム9を作成する処理のうち、自己で行う処理と前記サーバ5に行わせる処理とを定められた規則52Rに従って分別する手段である。この分別により前記定められた規則52Rに従って前記サーバ5に行わせる処理は、加工プログラム9の作成段階における特定の処理、例えばネスティングまたは加工の自動割り付け等であっても良く、また加工プログラム9の全体、すなわち複数の加工プログラム9のプログラム作成指示における、一部の加工プログラム9であっても良い。また、前記分別手段52における前記定められた規則52Rは、例えば、前記プログラム作成指示の内容から演算の大体の負荷量を計算し、閾値よりも負荷量が多い場合のみ弁別を行うようにしても良く、また常に加工プログラム9の作成段階における特定の処理をサーバ5に行わせる処理として分別するものであっても良い。
【0069】
前記サーバ依頼・結果受取手段54は、前記分別手段52でサーバ5に行わせると分別した処理を前記サーバ5に依頼し、このサーバ5から処理結果を受け取る手段である。
【0070】
前記内部自動プログラミング手段54は、部品Wの形状データと数量とを含むプログラム作成指示に応答して加工プログラム9を作成する手段である。
前記加工プログラム出力手段55は、前記サーバ依頼・結果受取手段53で受け取った処理結果と前記内部自動プログラミング手段54で行った処理とを併せて作成された加工プログラム9を出力する手段である。サーバ5に行わせる処理が加工プログラム9の作成段階における特定の処理だけである場合は、加工プログラム出力手段55は、結果的には、内部自動プログラミング手段54で作成された加工プログラム9のみを出力する。
【0071】
この構成の場合、この自動プログラミング装置51に対して前記プログラム作成指示が行われると、前記分別手段52は、加工プログラム9を作成する処理のうち、自己で行う処理とサーバ5に行わせる処理とを定められた規則に従って分別する。前記サーバ依頼・結果受取手段54は、前記分別手段52でサーバ5に行わせると分別した処理を前記サーバ5に依頼する。サーバ5は、この依頼された処理をCAM手段31で行い、CAM手段31による処理結果を要求応答送信手段35Cによって自動プログラミング装置51へ送信する。
【0072】
自動プログラミング装置51は、依頼に対してサーバ5から送信された処理結果を受信し、その処理結果を用いて内部自動プログラミング手段54により加工プログラム9の作成を行う。また、自動プログラミング装置51は、弁別内容によっては、内部自動プログラミング手段54による加工プログラム9の作成と、サーバ5に加工プログラム9の作成を依頼して結果を受け取る処理とを並行して行い、それらの作成された加工プログラム9を加工プログラム出力手段55から出力する。
【0073】
この自動プログラミング装置51によると、このようにして加工プログラム9の作成段階におけるネスティングおよび加工の自動割り付け等の特定の処理、また複数の加工プログラム9のうちの一部の加工プログラム9の作成の全体をサーバ5に行わせる。ネスティングおよび加工の自動割り付けは、加工プログラム9の作成の処理のうちで、負荷の大きな処理であり、この負荷の大きな処理を高速処理が可能なサーバ5に行わせることで、要求されるプログラム作成指示に対して自動プログラミング装置51の処理能力が不十分であっても、加工プログラム9を高速に作成することができる。また、複数の加工プログラム9のプログラム作成指示における、一部の加工プログラム9をサーバに作成されるようにした場合であっても、この自動プログラミング装置51が前記プログラム9作成指示を受け、その作成指示に対する加工プログラム9を全て出力することで、あたかもこの自動プログラミング装置が作成したように、プログラム作成指示に対する加工プログラム9の出力が行える。そのため、この自動プログラミング装置51に特別に高速の処理機能を有するコンピュータを用いることなく、一般的なパーソナルコンピュータまたは一般的なワークステーションに用いられる程度のコンピュータを用いても、必要な場合のみサーバに処理を行わせることで、加工プログラム9の作成が迅速に行える。
【符号の説明】
【0074】
1,1A…加工機
2…加工機端末
3,3A…端末付き加工機
4…通信ネットワーク
5,5B…サーバ
6,6B…生産管理システム
7…加工機本体
8…NC装置
9…加工プログラム
10…オペレータ
19…後工程
21…加工機操作手段
22…画面表示装置
23…加工プログラム表示・選択手段
24…要求手段
31…CAM手段
23B…加工プログラム表示・選択手段
24B…要求手段
31…CAM手段
41…加工プログラム記憶手段
51…自動プログラミング装置
・ 52…分別手段
52R…規則
53…サーバ依頼・結果受取手段
54…内部自動プログラミング手段
55…加工プログラム出力手段
A,B…生産指示
a,b,c…生産指示
G…形状データ
p…部品
R,R′…加工プログラム送信要求
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8