特許第6020018号(P6020018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6020018ハブユニット軸受およびハブユニット軸受の輸送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020018
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】ハブユニット軸受およびハブユニット軸受の輸送方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20161020BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20161020BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20161020BHJP
【FI】
   F16C33/78 D
   F16C19/18
   F16J15/3204
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-225675(P2012-225675)
(22)【出願日】2012年10月11日
(65)【公開番号】特開2014-77499(P2014-77499A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(72)【発明者】
【氏名】高梨 晴美
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−177897(JP,A)
【文献】 特開2000−337390(JP,A)
【文献】 特開2009−068617(JP,A)
【文献】 特開2004−019722(JP,A)
【文献】 特開2009−264571(JP,A)
【文献】 特開2010−112472(JP,A)
【文献】 特開平09−273559(JP,A)
【文献】 特開2006−044399(JP,A)
【文献】 特開2009−138804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00 − 19/56
F16C 33/30 − 33/66
F16C 33/72 − 33/82
F16J 15/3204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対回転可能に配置された外輪および内輪と、前記外輪と前記内輪との間の環状空間に転動自在に配置される複数の転動体と、前記環状空間を密封する密封装置とを備えたハブユニット軸受であって、
前記密封装置は、前記内輪に取り付けられるスリンガと、前記外輪に取り付けられるシール芯金を有し、
前記シール芯金には、前記スリンガに摺接するリング状のシールリップが設けられ、
前記シールリップは、前記スリンガに摺接するグリースリップと、前記スリンガの前記グリースリップより軸受の外部側に摺接するメインリップとを有し、
前記グリースリップと前記メインリップと前記スリンガとで囲まれた空間に、軸受内部でかつ前記密封装置の近傍に存在するグリースが、前記グリースリップと前記スリンガとの間の隙間から毛細管現象によって侵入するの防止するために、前記空間は、前記毛細管現象の発生を防止可能な大きさに設定され、
前記グリースリップに、前記空間と前記軸受内部を連通する連通部が前記グリースリップの周方向に所定間隔で複数設けられ
前記連通部が前記グリースリップの周方向に沿う縁部を周方向に所定間隔で切り欠いてなる切欠部によって構成され、
前記切欠部は、周方向に隣り合う切欠部間の中央位置に存在する前記グリースリップの部分より軸受内側方向に位置していることを特徴とするハブユニット軸受。
【請求項2】
請求項1に記載のハブユニット軸受を輸送するハブユニット軸受の輸送方法において、
前記ハブユニット軸受の軸受内側端を上方に向けて、当該ハブユニット軸受を輸送することを特徴とするハブユニット軸受の輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハブユニット軸受およびハブユニット軸受の輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ハブユニット軸受は、互いに相対回転可能に配置された内輪および外輪と、内外輪間の環状空間に設けられた複数の転動体とを備えており、自動車など車両の車輪を車体に対して回転自在に支持するために用いられる。
上記のようなハブユニット軸受は、例えば特許文献1に示すように、前記環状空間を密封する密封装置を備えている。この密封装置は、内輪に固定されるスリンガと、外輪に固定されるシール芯金と、スリンガとシール芯金との間に設けられるとともに、シール芯金に固定され、スリンガに摺接するゴム材からなるシールリップとを備えている。
スリンガは、内輪に固定される円筒状の固定部と、この固定部の端部に形成された円板部とを備えた断面L字形に形成されている。
【0003】
前記シールリップ12は、例えば図5に示すように、スリンガ10の固定部10aに摺接するグリースリップ12bと、スリンガ10の固定部10aのグリースリップ12bより軸受の外部側に摺接するメインリップ12eと、スリンガ10の円板部10bに摺接するサイドリップ12fとを有している。
最も軸受の内部側のリップのみ、軸受の内部向きのグリースリップ12bとなっており、他のメインリップ12eとサイドリップ12fは軸受の外部向きにダストリップとなっている。また、それぞれのリップには、通常、軸受に封入されるグリースと同様のグリースGが塗布され、潤滑されている。
前記グリースリップ12bは、シールの回転トルクを抑える目的で締め代は小さく設定され、スリンガ10の固定部10aの摺動面とグリースリップ12bの稜部で軽接触(線接触)しているが、新品時のリップの稜部は成形時に不可避に発生するヒケ(不均一な成形収縮)やバリ、カケ(アンダーフィル)などの影響で微視的には部分的に隙間が開いた状態となっている。
なお、図5において、符号11はシール芯金を示している。
【0004】
前記のようなハブユニット軸受は、当該ハブユニット軸受単体輸送や、車両組込後の新車輸送時に発生するフォールスブリネリングを防止するために、基油分離し易いウレア系グリースが封入されている。なお、フォールスブリネリングとは、フレッチングのうち、転動体と軌道輪との接触部分において振動や揺動による摩耗が進みブリネル圧痕に似た窪みを生ずる現象である。
前記ウレア系グリースは、増ちょう剤と基油と添加剤とから構成されている。
増ちょう剤は、耐フレッチング性を良くする目的で、極性を持つため軌道面に吸着し易く、また、増ちょう剤どうしが吸着し合って網目構造を形成し易い芳香族系のウレア系増ちょう剤が用いられる。
一方、極性を持つ増ちょう剤と組み合わせる基油は鉱油や炭化水素系合成油など、無極性の油剤が選ばれる。基油は増ちょう剤の網目構造に保持され、網目構造から適宜漏れ出した基油によって、軌道面と転動体との接触面が潤滑されることでフォールスブリネリングが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−36283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記のようなハブユニット軸受の組立工程では、外側列(ハブフランジに近い側の列)のグリースは、組立て前に、内輪、内輪軌道面、外輪軌道面、転動体、保持器近傍に塗布された後、組み立てられるので、外側列のグリースは外側シールに近接することは少ない。
これに対して、内側列のグリースは軸受部分の組立て後、密封装置の装着前に、外輪と内輪に設けられた内輪構成体(回転輪構成体)との間から封入される。軸受部分の組立て後にグリースを封入するのは、内側列にグリースが存在すると、音響検査や予圧量の測定など、軸受の検査に支障がでるためである。
内側列にグリースを封入するとき、既に外側シールは装着されているので、軸受内部空間は袋小路となっており、グリース封入によって内圧が上昇し、グリースは深く入らず、また、封入グリースの一部は外内輪の戸場口まで押し戻され、内側シール、つまり密封装置に近接した位置に留まる。
【0007】
したがって、基油分離し易いグリースが密封装置のグリースリップに接触するように存在し、密封装置の装着(圧入)によって軸受内圧が上昇すると、軸受内側端を上方に向けて出荷する場合でも、輸送中にグリースから分離した基油が、スリンガの摺動面とグリースリップの稜部との間の隙間から軸受内圧と毛細管現象により、密封装置内のグリースリップ〜メインリップ間の空間(グリースリップとメインリップとスリンガとで囲まれたリップ間空間)に侵入し、最後には密封装置から漏洩、つまり軸受外部に漏洩するおそれがある。すなわち、前記リップ間空間に侵入した基油は、当該リップ間空間のグリース(増ちょう剤)に吸収され、リップ間空間のグリースの体積を増やし(リップ間空間をグリースで満たし)つつ、メインリップの摺動部に達し、同様の現象を発生させ、サイドリップでも同様の状態となり、最後に軸受外部に漏洩するおそれがある。軸受内圧はこの侵入を加速し、軸受内側端を上にして輸送出荷する場合でも、軸受外部へ漏洩するおそれがある。したがって、このような漏洩を防止するためには、グリースの連鎖を断ち切る必要があるが、泥水リップであるメインリップやサイドリップは締め代(面圧)も大きいため、グリースの塗布は必須である。
なお、前記隙間(スリンガの摺動面とグリースリップの稜部との間の隙間)は微小なものであり、車両装着後、自動車の使用が始まれば摩滅し、グリースあるいは基油の漏洩が発生することはない。
【0008】
このような問題を解決するため、前記特許文献1に記載の転がり軸受では、軸受内圧を下げた状態で密封装置を組み込み、密封装置圧入後の軸受内圧を略大気圧にすることによって、グリースの漏洩を防止している。しかし、軸受内圧を下げた状態で密封装置を組み込むには、吸引装置等が必要となり設備コストの上昇を招く。
また、図6に示すように、グリースリップ12bの断面形状を、円弧状(図6(a)参照)または円弧と直線の組み合わせた形状(図6(b)参照)とし、バリやカケがなく、ヒケの影響の少ない側面を摺動面に面当たりさせることでグリースリップの密着度を高めることも考えられるが、シールトルクの上昇やシール幅寸法の増加に繋がり、好ましくない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、グリースの漏洩を容易かつ確実に防止できるハブユニット軸受およびハブユニット軸受の輸送方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のハブユニット軸受は、相対回転可能に配置された外輪および内輪と、前記外輪と前記内輪との間の環状空間に転動自在に配置される複数の転動体と、前記環状空間を密封する密封装置とを備えたハブユニット軸受であって、
前記密封装置は、前記内輪に取り付けられるスリンガと、前記外輪に取り付けられるシール芯金を有し、
前記シール芯金には、前記スリンガに摺接するリング状のシールリップが設けられ、
前記シールリップは、前記スリンガに摺接するグリースリップと、前記スリンガの前記グリースリップより軸受の外部側に摺接するメインリップとを有し、
前記グリースリップと前記メインリップと前記スリンガとで囲まれた空間に、軸受内部でかつ前記密封装置の近傍に存在するグリースが、前記グリースリップと前記スリンガとの間の隙間から毛細管現象によって侵入するの防止するために、前記空間は、前記毛細管現象の発生を防止可能な大きさに設定され、
前記グリースリップに、前記空間と前記軸受内部を連通する連通部が前記グリースリップの周方向に所定間隔で複数設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、グリースリップとメインリップとスリンガとで囲まれた空間が毛細管現象の発生を防止可能な大きさに設定されているので、毛細管現象によって、グリースがグリースリップとスリンガとの間の隙間から前記空間に侵入することがない。
また、グリースリップに、前記空間と前記軸受内部を連通する連通部が前記グリースリップの周方向に所定間隔で複数設けられているので、前記空間と軸受内部との圧力差を解消できる。したがって、軸受内部から前記空間に向けてグリース(の基油)が前記隙間を通過するのを抑制できるとともに、隙間を通過したグリース(の基油)を当該隙間を通して軸受内部に還流できる。
よって、グリースの漏洩を容易かつ確実に防止できる。
【0012】
なお、前記連通部は、例えばグリースリップの周縁部に切欠部や貫通孔を形成することによって容易に設けることができる。
また、切欠部の幅や貫通孔の径は、グリースを構成する基油の性情とグリースリップを構成するゴム材料の濡れ性により必要な大きさが変化するため、特に定量的に規定するものではないが、例えば増ちょう剤は通過できないが、基油は通過できるサイズとしてもよい。
例えばJIS K2220のグリースの離油試験方法から明らかなように、グリースを目開き250μm、線径160μmの網上に置いた場合、増ちょう剤は網上に残り、基油の一部は滴下する。したがって、この結果に基づいて基油が通過できるサイズを設定してもよい。なお、ここでいう基油は、純粋な基油である鉱油や炭化水素系合成油の他に、これらの油剤に溶解可能なグリースの添加剤を含むものである。なお、この場合も基油は無極性の油剤の方が、切欠部の幅や貫通孔の径が小さくてすむ。
【0013】
また、メインリップの潤滑グリース塗布量を最小化し、グリースリップとメインリップとスリンガとで囲まれた空間の最大径部(軸受の径方向における前記空間の最大隙間寸法)までメインリップの潤滑グリースを到達させないようにするのが好ましい。
また、締め代の小さいグリースリップは、グリースの塗布を省略すれば、メインリップとグリースリップとの連鎖の形成をよりよく防ぐことができ、この結果、グリースの漏洩を防止できる。
【0014】
また、本発明の前記構成において、前記連通部が前記グリースリップの周方向に沿う縁部を周方向に所定間隔で切り欠いてなる切欠部によって構成され、
前記切欠部は、周方向に隣り合う切欠部間の中央位置に存在する前記グリースリップの部分より軸受内側方向に位置しているのが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、ハブユニット軸受の軸受内側端(図1においてハブユニット軸受の右端)を上方に向けた場合に、グリースリップの内径側が、切欠部間のグリース(の基油)を切欠部に導く斜面となるので、この斜面に沿ってグリース(の基油)が流れて、当該切欠部からグリース(の基油)を軸受内部に還流できる。
また、グリースリップの内径側は、軸受回転時にグリースを掻くことによって、切欠部からのグリースの侵入を防止するブレードの役割を果たすことになるので、より確実にグリースの侵入を防止できる。
【0016】
また、本発明のハブユニット軸受の輸送方法は、請求項1に記載のハブユニット軸受を輸送するハブユニット軸受の輸送方法において、
前記ハブユニット軸受の軸受内側端を上方に向けて、当該ハブユニット軸受を輸送することを特徴とする。
【0017】
本発明においては、毛細管現象によって、グリースがグリースリップとスリンガとの間の隙間から前記空間に侵入することもなく、さらに、軸受内部から前記空間に向けてグリース(の基油)が前記隙間を通過するのを抑制できるとともに、ハブユニット軸受の軸受内側端を上方に向けることによって、隙間を通過したグリース(の基油)を当該隙間を通して軸受内部に還流できる。よって、グリースの漏洩を容易かつ確実に防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、グリースの漏洩を容易かつ確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るハブユニット軸受を示す図であって、断面図である。
図2】同、ハブユニット軸受の密封装置の要部を示す断面図である。
図3】本発明の第2の実施の形態に係るハブユニット軸受の密封装置の要部を示す断面図である。
図4】同、グリースリップをその径方向から見た要部の図である。
図5】従来のハブユニット軸受の一例を示すもので、密封装置の要部を示す断面図である。
図6】従来のハブユニット軸受の他の例を示すもので、密封装置の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態に係るハブユニット軸受1は、図1に示すように、相対回転可能に配置された外輪3および内輪4と、外輪3と内輪4との間の環状空間に転動自在に配置される複数の転動体5と、前記環状空間を密封する密封装置6とを備えている。
【0021】
外輪3には、その外周面3aから外方(拡径方向)に向かって突出した固定フランジ3fが一体成形されており、当該固定フランジ3fを貫通する固定ネジ孔3hに、ナックルの車両中心側から挿入された固定用ボルト(図示略)を螺合、締結することで、外輪3を図示しない懸架装置(サスペンション)のナックルに固定することができる。
【0022】
内輪4は、概略円筒形を成すハブ41と、このハブ41のインボード側(図1において右側)の外側に嵌着された環状の内輪構成体42から構成されている。ハブ41は、ブレーキのブレーキロータ(図示略)を介して車輪のディスクホイール(図示略)に固定され、当該ディスクホイールとともに回転するように構成されている。なお、ハブ41には、そのアウトボード側にブレーキロータおよびディスクホイールを固定(外嵌)するためのフランジ41fが周方向に沿って連続して突設されている。
【0023】
フランジ41fは、外輪3を越えて外方(ハブ41の拡径方向)に向かって延出しており、その延出縁付近には、周方向に沿って複数の貫通孔(ボルト孔)41hが設けられている。また、図示しないブレーキロータおよびディスクホイールにも、それぞれ当該ボルト孔41hと連通可能な貫通孔が周方向に沿って複数個(一例として、ボルト孔41hと同数個)設けられている。そして、ハブボルト41bをボルト孔41hから前記貫通孔へ挿通し、ハブナット(図示略)で締結(共締め)することにより、ブレーキロータおよびディスクホイールがフランジ41fに対して位置決めされて固定されている。
【0024】
内輪4の外径側に外輪3が配置されており、この外輪3と内輪4との間に、複数の転動体(玉)5が周方向に所定間隔で配置されている。
内輪4の内輪構成体42をハブ41に嵌着する場合、外輪3と内輪4との間に複数の転動体5を組み込んだ状態で、内輪構成体42をハブ41に形成された段部41sまで当て付けた後、ハブ41のインボード側端部(図1の右端)を加締めることにより、当該内輪構成体42がハブ41のインボード側に固定されている。
なお、上述したような加締による固定に代えて、例えば、内輪構成体42をハブ41に形成された段部41sまで外嵌した後、インボード側からナットなどの締結部材により締め付けることで、内輪構成体42をハブ41のインボード側に固定してもよい。
【0025】
また、転動体(玉)5は、環状の保持器7に形成されたポケットへ1つずつ回転自在に保持された状態で外輪3と内輪4の軌道面間に組み込まれ、所定間隔(一例として、等間隔)でこれらの間を転動するようになっている。
これにより、各転動体(玉)5は、その転動面が相互に接触することなく軌道面間を円滑に転動することができ、結果として、当該各転動体(玉)5が相互に接触して摩擦が生じることによる回転抵抗の増大や、焼付きなどを防止することができる。なお、ハブユニット軸受1の軸受内部には、このような回転抵抗の増大や焼付きなどをさらに効果的に防止すべく、潤滑剤としてのグリースが封入されている。
また、トラック等の重量の嵩む自動車に用いられるハブユニット軸受の場合には、上記転動体として、玉5に代わり、円錐ころが使用されることもある。
【0026】
前記密封装置6は、図2に示すように、内輪4の内輪構成体42に嵌合固定されるスリンガ10と、外輪3に嵌合固定されるシール芯金11と、スリンガ10とシール芯金11との間に設けられたシールリップ12とを備えている。
スリンガ10およびシール芯金11は、いずれもリング状でかつ断面形状が略L字状に形成されており、シールリップ12はシール芯金11に加硫接合されて、スリンガ10に摺接するようになっている。
【0027】
前記スリンガ10は、内輪4の内輪構成体42に嵌合される円筒状の固定部10aと、この固定部10aの端部に形成された円板部10bとから構成されている。
また、シール芯金11は、外輪3に嵌合される円筒状の固定部11aと、この固定部11aの端部に形成された円板部11bとから構成されている。
【0028】
前記シールリップ12は、ゴム、エラストマー等の弾性材によって全体としてリング状に形成されており、装着部12aを有している。この装着部12aは断面略L字形に形成されており、断面L字形のシール芯金11に密着した状態で加硫接着されている。装着部12aの内周部にはグリースリップ12bが形成されている。
グリースリップ12bは装着部12aの内周部から前記固定部10aの端部側に向けて延び、先端が固定部10aに弾性的に摺接するようになっている。また、装着部12aの内周部には挟持片12cが形成されており、この挟持片12cと装着部12aとによってシール芯金11の円板部11bの内周部のゴムの接着性が高められている。さらに、装着部12aの外周部には挟持片12dが形成されており、この挟持片12dと装着部12aとによってシール芯金11の固定部11aのゴムの接着性を高めると共に、ノーズガスケットを形成している。
【0029】
また、前記装着部12aには、前記グリースリップ12bより軸受の外部側に、メインリップ12eが軸受の外部向きに形成されており、その先端がスリンガ10の固定部10aに、前記グリースリップ12bより軸受の外部側で摺接するようになっている。
さらに、前記装着部12aには、メインリップ12eより外径側(図2において上側)にサイドリップ12fが形成されている。このサイドリップ12fは、前記スリンガ10の円板部10b側の方が大径となるテーパリング状に形成されており、その先端は円板部10bに摺接するようになっている。
【0030】
前記グリースリップ12bとメインリップ12eとスリンガ10の固定部10aとで囲まれた空間S(以下、リップ間空間Sと称す。)に、軸受内でかつ前記密封装置6の近傍に存在するグリースが、グリースリップ12bとスリンガ10の固定部10aとの間の隙間から毛細管現象によって侵入するの防止するために、当該リップ間空間Sは、前記毛細管現象の発生を防止可能な大きさに設定されている。例えば、前記リップ間空間Sにおいて、シールリップ12の径方向(図2において上下方向)における、最大隙間寸法tを、毛細管現象が発生しないように適宜設定している。この最大隙間寸法tは、グリースを構成する基油の性情とシールリップ12のゴム材料の濡れ性によって長さが変化するため、特に定量的に限定されるものではない。なお、基油が無極性の鉱油や炭化水素系合成油の場合、極性油(例えば弗素油や芳香族系の合成油)に比べ、最大隙間寸法は小さくてよい。
【0031】
また、前記グリースリップ12bには、前記リップ間空間Sと軸受内部を連通する連通部としての切欠部15がグリースリップ12bの周方向に所定間隔で複数設けられている。この切欠部15は、グリースリップ12bとスリンガ10の固定部10aとの間の隙間を通過した基油を軸受内部空間へ還流するとともに、リップ間空間Sと軸受内部の圧力差を解消し、基油のグリースリップ通過に対する加速効果を抑制することを目的とするものである。
切欠部15の幅は、グリースを構成する基油の性情とグリースリップ12bを構成するゴム材料の濡れ性により必要な大きさが変化するため、特に定量的に規定するものではないが、例えば、増ちょう剤は通過できないが、基油は通過できるサイズとしてもよい。
【0032】
また、メインリップ12eの潤滑グリース塗布量を最小化し、前記リップ間空間Sの最大径部(軸受の径方向におけるリップ間空間Sの最大隙間寸法t)までメインリップ12eの潤滑グリースGを到達させないようにするのが好ましい。
また、締め代の小さいグリースリップ12bは、グリースの塗布を省略すれば、メインリップ12eとグリースリップ12bとの連鎖の形成をよりよく防ぐことができ、この結果、グリースの漏洩を防止できる。
【0033】
このような構成のハブユニット軸受1を輸送する場合、ハブユニット軸受1の軸受内側端(図1においてハブユニット軸受1の右端)を上方に向けて、当該ハブユニット軸受1を輸送する。
【0034】
本実施の形態によれば、リップ間空間Sが毛細管現象の発生を防止可能な大きさに設定されているので、毛細管現象によって、グリースがグリースリップ12bとスリンガ10との間の隙間からリップ間空間Sに侵入することがない。
また、グリースリップ12bに、リップ間空間Sと軸受内部を連通する切欠部15がグリースリップ12bの周方向に所定間隔で複数設けられているので、リップ間空間Sと軸受内部との圧力差を解消できる。したがって、軸受内部からリップ間空間Sに向けてグリース(の基油)が前記隙間を通過するのを抑制できるとともに、ハブユニット軸受1の軸受内側端を上方に向けて輸送することによって、前記隙間を通過したグリース(の基油)を当該隙間を通して軸受内部に還流できる。よって、グリースの漏洩を容易かつ確実に防止できる。
【0035】
(第2の実施の形態)
図3は、第2の実施の形態に係るハブユニット軸受の要部を示す断面図である。この図に示すハブユニット軸受が第1の実施の形態のハブユニット軸受と異なる点は、切欠部15の形成位置であるので、以下ではこの点について説明する。なお、その他の構成は第1の実施の形態と同一であるので、その説明を省略する。
【0036】
前記グリースリップ12bには、前記リップ間空間Sと軸受内部を連通する切欠部15がグリースリップ12bの周方向に所定間隔で複数設けられている。
切欠部15は、周方向に隣り合う切欠部15,15間の中央位置に存在するグリースリップ12bの部分12b1より軸受内側方向に位置している。
すなわち、グリースリップ12bをその径方向から見ると、図4に示すように、複数の円弧16が繋がったような形状となるが、隣り合う円弧16,16の接続部に前記切欠部15が形成されている。なお、図4はハブユニット軸受1の軸受内側端(図1においてハブユニット軸受1の右端)を上方に向けた状態において、グリースリップ12bをその径方向から見た図である。
このような切欠部15は、周方向に隣り合う切欠部15,15間の中央位置に存在するグリースリップ12bの部分12b1より軸受内側(図4において下側)に位置している。
【0037】
本実施の形態によれば、ハブユニット軸受1の軸受内側端を上方に向けた場合に、グリースリップ12bの内径側が、切欠部15,15間のグリース(の基油)を切欠部15に導く斜面17となるので、この斜面17に沿ってグリース(の基油)が流れて、当該切欠部15からグリース(の基油)を軸受内部に還流できる。
また、グリースリップ12bの内径側は、軸受回転時にグリースを掻くことによって、切欠部15からのグリースの侵入を防止するブレードの役割を果たすことになるので、より確実にグリースの侵入を防止できる。
【符号の説明】
【0038】
1 ハブユニット軸受
3 外輪
4 内輪
5 転動体
6 密封装置
10 スリンガ
11 シール芯金
12 シールリップ
12b グリースリップ
12e メインリップ
15 切欠部(連通部)
S 空間(リップ間空間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6