(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020052
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】コイルアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 7/08 20060101AFI20161020BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20161020BHJP
G06K 19/077 20060101ALN20161020BHJP
【FI】
H01Q7/08
H01Q1/38
!G06K19/077 252
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-243406(P2012-243406)
(22)【出願日】2012年11月5日
(65)【公開番号】特開2014-93675(P2014-93675A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】110001449
【氏名又は名称】特許業務法人プロフィック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】家木 勉
【審査官】
米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−118411(JP,A)
【文献】
特開平08−250332(JP,A)
【文献】
特開2001−257518(JP,A)
【文献】
特開2010−245776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 7/08
H01Q 1/38
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1主面及び第2主面と、該第1主面及び第2主面とに連接する側面とを有する平板状のコア基板と、
前記第1主面、第2主面及び側面に沿って導体をコイル状に巻回したアンテナ導体と、
を備えたコイルアンテナであって、
前記第1主面に沿って形成された複数の導体は、該導体の全長にわたって該第1の主面に接しており、かつ、該導体の両端部を結ぶ直線に対して同一方向に膨らみを有すること、
を特徴とするコイルアンテナ。
【請求項2】
前記第1主面及び第2主面と平行な面において平面視した場合、前記第1主面に複数の導体が形成されている領域と前記第2主面に複数の導体が形成されている領域とは少なくとも一部が重なっていること、を特徴とする請求項1に記載のコイルアンテナ。
【請求項3】
前記第2主面に沿って形成された複数の導体は、該導体の全長にわたって該第2の主面に接しており、該導体の両端部を結ぶ直線に対して、前記第1主面に沿って形成された複数の導体の膨らみ方向とは反対方向に膨らみを有すること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコイルアンテナ。
【請求項4】
前記コア基板は直方体形状をなすこと、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のコイルアンテナ。
【請求項5】
前記側面に沿って形成された導体は前記コア基板を第1主面から第2主面へと貫通する層間導体であること、を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のコイルアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルアンテナ、特に、RFID(Radio Frequency Identification)システムや短距離無線通信システムに用いられるコイルアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の積層チップインダクタは、RFIDシステムのコイルアンテナとして用いることが可能であり、この技術を用いたコイルアンテナ100を
図8、
図9に示す。直方体形状をなすコア基板101の第1主面101a及び第2主面101bに、複数の直線状をなす第1導体111及び第2導体112を形成するとともに、第1導体111及び第2導体112の端部を層間導体(ビアホール導体113,114)にて電気的に接続し、コイル状のアンテナ導体としている。第1導体111はコア基板101の短辺とほぼ平行に配置され、第2導体112は第1導体111に対して若干傾いて配置されている。また、コア基板101の両端部には実装用電極121,122が配置されている。
【0003】
図9は前記コイルアンテナ100を基板130(例えば、端末機器に内蔵されている基板)に搭載した状態を示している。ところで、コイルアンテナ100は、アンテナ導体の巻回方向に強い放射指向性を持ち、その指向性を点線A、Bで示す。従って、コイルアンテナ100の通信相手(リーダライタのアンテナ)がこの指向性の範囲にあればよいが、例えば基板130の上下方向に通信相手が位置するような場合には通信特性が劣化してしまう。従って、基板130の表面に対して仰角方向の指向性が必要とされる場合もある。
【0004】
仰角方向の指向性を高めたコイルアンテナとして特許文献2に記載のものがある。このコイルアンテナ150は、
図10(B)に示すように、平面内で渦巻き状に形成された芯巻線151にフェライト板152を斜め方向に挿入したものであり、フェライト板152の挿入方向(仰角方向)に強い放射指向性を持つことになる。しかし、フェライト板152を差し込む構造は製造上の自動化が難しく、コイルアンテナ150自体の低背化や平坦化が損なわれるという問題点を有している。また、巻線151の線間容量Cの値が内側から外側にかけて巻径に比例して大きくなるため、換言すれば、線間容量Cがそれぞれの線間で異なるため、他物体の近接状態に応じて放射特性への影響が異なり、特性が安定しないという問題点も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−193512号公報
【特許文献2】特開2002−325013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、低背化、平坦性を損なうことなく、仰角方向の放射指向性を有するコイルアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態であるコイルアンテナは、
互いに対向する第1主面及び第2主面と、該第1主面及び第2主面とに連接する側面とを有する平板状のコア基板と、
前記第1主面、第2主面及び側面に沿って導体をコイル状に巻回したアンテナ導体と、
を備えたコイルアンテナであって、
前記第1主面に沿って形成された複数の導体は、
該導体の全長にわたって該第1の主面に接しており、かつ、該導体の両端部を結ぶ直線に対して同一方向に膨らみを有すること、
を特徴とする。
【0008】
前記コイルアンテナにおいて、第1主面に沿って形成された導体が同一方向の膨らみを有することにより、コイルの巻回軸を第1主面に対して傾けた構造となり、膨らんだ方向とは反対方向の仰角方向に放射指向性を持つことになる。また、アンテナ導体はコア基板の主面や側面に沿って形成されるため、コイルアンテナ自体の低背化、平坦性が損なわれることはない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コイルアンテナにおいて、低背化、平坦性を損なうことなく、仰角方向の放射指向性を強めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施例であるコイルアンテナを示し、(A)は上面からの斜視図、(B)は下面からの斜視図である。
【
図2】第1実施例であるコイルアンテナの分解斜視図である。
【
図3】第1実施例であるコイルアンテナの導体を示し、(A)は上面図、(B)は下面図である。
【
図4】第1実施例であるコイルアンテナの放射指向性を示す説明図である。
【
図5】第2実施例であるコイルアンテナの分解斜視図である。
【
図6】第2実施例であるコイルアンテナの導体を示し、(A)は上面図、(B)は下面図である。
【
図7】第3実施例であるコイルアンテナの導体を示し、(A)は上面図、(B)は下面図である。
【
図8】第1の従来例であるコイルアンテナの分解斜視図である。
【
図9】第1の従来例であるコイルアンテナの放射指向性を示す説明図である。
【
図10】コイルアンテナの線間容量を示し、(A)は本発明例の説明図、(B)は第2の従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るコイルアンテナの実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部品、部分は同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
(第1実施例、
図1〜
図4参照)
第1実施例であるコイルアンテナ1は、
図1、
図2に示すように、互いに対向する第1主面10a及び第2主面10bと、該第1主面10a及び第2主面10bとに連接する側面10c,10dとを有する平板状のコア基板10と、第1主面10a、第2主面10b及び側面10c,10dに沿って第1導体21、第2導体22、層間導体23,24をコイル状に巻回したアンテナ導体20と、を備えている。そして、第1主面10a及び第2主面10bに沿って形成された複数の第1及び第2導体21,22は、該導体21,22の両端部を結ぶ直線に対してそれぞれ同一方向に円弧状の膨らみを有している。複数の第1導体21と複数の第2導体22の、それぞれの膨らみ方向は互いに反対方向である。また、コア基板10はフェライトを好適に用いることができるが、フェライトに限定するものではない。
【0013】
複数の第1導体21と複数の第2導体22のそれぞれの両端部を電気的に接続する導体23,24は、コア基板10を第1主面10aから第2主面10bへと貫通する層間導体(以下、ビアホール導体23,24と記す)である。また、コア基板10の第2主面10bの両端部には実装用電極25,26が配置されている。さらに、コア基板10の第1主面10a上の第1導体21及び第2主面10b上の第2導体22は、それぞれレジスト層31,32によって覆われ、保護されている。
【0014】
第1及び第2導体21,22や電極25,26は、銀、銅などの導電率の高い材料を印刷やフォトリソグラフィ−などの工法によってコア基板10の表面に形成される。ビアホール導体23,24も同様の材料を用いて印刷やめっきなどによって形成される。本第1実施例において、第1及び第2導体21,22の形状、ピッチは同じである。また、第1主面10a及び第2主面10bと平行な面において平面視した場合、第1主面10aに複数の第1導体21が形成されている領域と第2主面10bに複数の第2導体22が形成されている領域とは少なくとも一部が重なっている。
【0015】
接続関係を
図3を参照して説明すると、電極25の一端はビアホール導体23aを介して第1導体21aの一端に接続され、該第1導体21aの他端はビアホール導体24aを介して第2導体22aの一端に接続される。該第2導体22aの他端はビアホール導体23bを介して第1導体21bの一端に接続される。以下同様の関係で第1導体21と第2導体22がコイル状に巻回されていくことになる。また、コア基板10の他端部においても、電極26の一端はビアホール導体24yを介して第1導体21yの一端に接続され、該第1導体21yの他端はビアホール導体23yを介して第2導体22yの一端に接続される。
【0016】
以上の構成からなるコイルアンテナ1は、
図4に示すように、例えば、携帯電話などの端末機器に内蔵されている基板40上に電極25,26を半田付けすることで搭載される。この状態において、第1及び第2導体21,22に同一方向の膨らみを有することにより、コイルの巻回軸を第1主面10a及び第2主面10bに対して傾けた構造となり、膨らんだ方向とは反対方向の仰角方向に放射指向性A,Bを持つことになる。また、アンテナ導体20はコア基板10の主面10a,10bや側面10c,10dに沿って形成されるため、コイルアンテナ1自体の低背化、平坦性が損なわれることはない。
【0017】
また、
図10(B)に示したように、従来のコイルアンテナ150では線間容量Cの値が内側から外側にかけて巻径に比例して大きくなる。これに対して、
図10(A)に示すように、第1実施例であるコイルアンテナ1では、巻径が等しいため線間容量Cも均一の値となる。従って、コイルアンテナ1への他物体の近接状態が変化したとしても、放射特性への影響が安定する。
【0018】
(第2実施例、
図5及び
図6参照)
第2実施例であるコイルアンテナ2は、
図5、
図6に示すように、コア基板10の第1主面10aに沿って形成した第1導体21及び第2主面10bに沿って形成した第2導体22に、1箇所で屈曲した同一方向の膨らみを持たせている。他の構成、第1及び第2導体21,22の接続関係などは前記第1実施例と同様である。従って、その作用効果も第1実施例と同様である。
【0019】
(第3実施例、
図7参照)
第3実施例であるコイルアンテナ3は、
図7に示すように、コア基板10の第1主面10aに沿って形成した第1導体21を互い違いに長さを異ならせ、及び、第2主面10bに沿って形成した第2導体22を互い違いにオフセット配置したものである。第1及び第2導体21,22の接続関係は
図3を参照して説明したとおりである。
【0020】
第1及び第2導体21,22をこのように配置することで、ビアホール導体23,24が千鳥模様状に配置される。前記第1及び第2実施例のように、全てのビアホール導体23,24が直線状に並ぶと、熱膨張などでコア基板10に発生する応力が一直線上に集中するおそれがあるのに対して、本第3実施例のように、ビアホール導体23,24を千鳥模様状に配置することで応力が分散され、コア基板10の強度が向上する。ビアホール導体23,24の配置は、千鳥模様状以外の不規則なものであってもよい。
【0021】
(他の実施例)
なお、本発明に係るコイルアンテナは前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0022】
例えば、コア基板10としてはフェライト以外に誘電体セラミックや樹脂を材料としてもよい。コア基板10は、単層基板、多層基板のいずれであってもよく、直方体以外の形状であってもよい。多層基板であれば、第1及び第2導体21,22を内層として形成してもよい。この場合、最外層となるフェライト層に代えてレジスト層を配置してもよい。
【0023】
また、上下面の導体21,22をコイル状に接続するために、ビアホール導体23,24に代えて、コア基板10の側面10c,10dに印刷によって接続用導体を形成してもよく、あるいは、多数個取りの手法でマザー基板からコア基板10を切り出すときに、側面10c,10dに相当する部分にスルーホール導体を形成しておき、該スルーホール導体を分断することで接続用導体としてもよい。
【0024】
また、第1主面10aに沿って設けた第1導体21のみが同一方向の膨らみを有していればよく、第2主面10bに沿って設けた第2導体22は直線状であってもよい。さらに、導体21,22の膨らみ形状は任意であり、第1実施例に示した円弧状、第2実施例に示した1箇所の屈曲形状以外の形状であってもよい。即ち、導体21,22は屈曲が2箇所以上であってもよく、直線と曲線を組み合わせた形状であってもよい。また、導体21,22の巻径やピッチは必ずしも均一である必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上のように、本発明は、コイルアンテナに有用であり、特に、低背化、平坦性を損なうことなく、仰角方向の放射指向性を有する点で優れている。
【符号の説明】
【0026】
1,2,3…コイルアンテナ
10…コア基板
10a,10b…主面
10c,10d…側面
21…第1導体
22…第2導体
23,24…ビアホール導体
25,26…電極
31,32…レジスト層