特許第6020054号(P6020054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020054
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】高周波モジュール
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20161020BHJP
   H01P 1/212 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   H05K9/00 P
   H01P1/212
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-243537(P2012-243537)
(22)【出願日】2012年11月5日
(65)【公開番号】特開2014-93446(P2014-93446A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】孝谷 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】行松 正伸
(72)【発明者】
【氏名】近藤 旭
【審査官】 久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−240592(JP,A)
【文献】 特開2011−258748(JP,A)
【文献】 実開昭63−125404(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H01P 1/212
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(2)と、
前記基板に実装された集積回路(6、7、8)と、
前記集積回路の周囲を囲い、電波を遮断する筒状のシールド(4)と、
前記シールドの前記基板と反対側に設けられ、電波を遮断するケース(3)と、
前記シールドに向き合う前記ケースの内壁に前記シールドと所定の隙間を開けて設けられ、前記集積回路が基板上の空間に放出した所定周波数の電波を逆位相にするチョーク部(5)と、を備え、
前記チョーク部は、前記ケースの前記シールドに対向する端面から前記シールドと反対側に凹む溝部(51)であり、
前記チョーク部を構成する前記溝部は、前記ケースの内壁(58)から前記基板側へ突出する筒状の内枠体(52)と筒状の外枠体(53)とで構成されることを特徴とする高周波モジュール。
【請求項2】
前記チョーク部は、逆位相にした電波により、前記チョーク部と前記シールドとの隙間からの電波の漏出を抑制することを特徴とする請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項3】
前記チョーク部の深さは、前記集積回路が基板上の空間に放出した所定周波数の電波が前記チョーク部を通過するときの波長の1/4の長さであることを特徴とする請求項1または2に記載の高周波モジュール。
【請求項4】
前記シールドは、前記チョーク部と反対側の端部が前記基板のグランド配(41)接続されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高周波モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波またはマイクロ波レーダなどに用いられる高周波モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両前方などの状況をレーダにより監視し、その状況に応じたスロットル制御およびブレーキ制御を行う車間自動制御システム(ACC:アダプティブクルーズコントロール)または衝突防止システムが知られている。これらのシステムに用いられるレーダには、ミリ波またはマイクロ波などの高周波信号を送信および受信可能な高周波モジュールが用いられる。
高周波モジュールは、送信回路で生成した信号をアンテナから発信し、ターゲットに反射して戻ってきた信号をアンテナを通じて受信回路により受信する。受信回路は、送信回路から基板の配線を通じて供給された信号と、アンテナを通じて受信した信号とを比較し、ターゲットの位置、距離などを検出する。
【0003】
ところで、送信回路で作られた信号が基板の配線を経由することなく、基板上の空間を経由して受信回路に伝わると、アイソレーションが悪化し、ターゲットの位置及び距離等の検出精度低下、またはゴーストの発生などの問題が生じる。
特許文献1に記載の高周波モジュールは、送信回路及び受信回路が実装された基板がケース内に収容され、そのケースの開口を金属製のシールド枠が塞いでいる。送信回路は、シールド枠とそのシールド枠から基板側に延びる金属製の隔壁によって周囲を囲まれている。基板を挟んで隔壁の反対側には、基板とケースとの間に弾性体が設けられている。弾性体が基板を隔壁側へ押圧することで、基板に設けられたグランド配線と隔壁とが確実に当接する。シールド枠と隔壁は、送信回路で作られた高周波信号がシールド枠および隔壁の外側へ漏れることを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−107476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、次の問題を生じる。
(1)高周波モジュールは、その構成に弾性体を追加することで、部品点数が増加し、製造コストが高くなる。
(2)基板と弾性体が当接することで、基板に電子部品を実装可能なスペースが制約される。
(3)弾性体、基板およびケースの線膨張係数の差により、基板が熱変形すると、基板にストレスがかかり、基板に実装された電子部品の剥離、脱落、断線のおそれがある。
(4)高周波モジュールが取り付けられた車両の振動などにより、基板のグランド配線と隔壁とが摺動すると、導体くずが発生し、回路がショートするおそれがある。
したがって、特許文献1では、高周波モジュールの製造コストの増加と共に、その出力信号の信頼性が懸念される。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、信頼性を高めることの可能な高周波モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板に実装された集積回路の周囲を囲う筒状のシールドを備えた高周波モジュールにおいて、シールドに向き合うケースの内壁に設けられたチョーク部が、集積回路が基板上の空間に放出した所定周波数の電波を逆位相にする。
このチョーク部は、ケースのシールドに対向する端面からシールドと反対側に凹む溝部である。その溝部は、ケースの内壁から基板側へ突出する筒状の内枠体と筒状の外枠体とで構成される。
これにより、チョーク部によって逆位相にされた電波と、集積回路が放出した電波とが打ち消し合い、シールドの外側への電波の漏れが抑制される。そのため、集積回路で作られた信号が基板上の空間を経由し、シールドの外側に実装された受信回路に意図しない電波信号が伝わることが防がれる。したがって、受信回路の受信する信号のアイソレーションが良好になるので、高周波モジュールの出力信号の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態による高周波モジュールの断面図である。
図2図1のII−II線の断面図である。
図3】高周波モジュールの解析モデルである。
図4図3において、チョーク部及びシールドを備えない場合の解析モデルである。
図5図4の解析モデルにおける周波数と通過損失との関係を示すグラフである。
図6図3において、チョーク部及びシールドを備えた場合の解析モデルである。
図7図6の解析モデルにおける周波数と通過損失との関係を示すグラフである。
図8】本発明の第2実施形態による高周波モジュールの断面図である。
図9図8のIX−IX線の断面図である。
図10図8のX部分の拡大図である。
図11】本発明の第3実施形態による高周波モジュールの断面図である。
図12図11のXII−XII線の断面図である。
図13】第1比較例の高周波モジュールの断面図である。
図14】第2比較例の高周波モジュールの断面図である。
図15】第3比較例の高周波モジュールの断面図である。
図16】第4比較例の高周波モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、第1及び第3実施形態が、特許請求の範囲に記載の発明を実施する形態に相当する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を図1図7に示す。本実施形態の高周波モジュール1は、ミリ波またはマイクロ波などの高周波信号を送受信するレーダに用いられる。
【0010】
図1及び図2に示すように、高周波モジュール1は、基板2に実装された電子回路、ケース3、シールド4及びチョーク部5を備えている。
基板2は、例えばFR−4またはFR−5等の多層基板であり、送信回路6、受信回路7、信号処理回路8および図示しないアンテナなどからなる電子回路が実装される。
送信回路6及び受信回路7は、例えばモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)、またはトランジスタやダイオード等を基板2に実装することで構成される。
本実施形態の送信回路6、受信回路7及び信号処理回路8は、特許請求の範囲に記載の「集積回路」に相当する。
【0011】
送信回路6は、ミリ波またはマイクロ波などの高周波信号を生成し、例えば基板2の送信回路6と反対側の面に設けたアンテナからターゲットに向けて発信される。なお、アンテナは、送信回路6とは別個の基板に設けてもよい。
また、送信回路6のつくる高周波信号は、その一部が基板2の配線を通じて受信回路7に供給される。
受信回路7は、ターゲットに反射して戻ってきた信号を再びアンテナを通じて受信する。信号処理回路8は、送信回路6から基板2の配線を通じて供給された信号と、アンテナを通じて受信した信号とを比較し、ターゲットの位置、距離などを検出する。
【0012】
ケース3は、例えば金属などの導電体から皿状に形成され、その端部に基板2が取り付けられる。ケース3は、基板2の送信回路6及び受信回路7側を覆っている。ケース3は、送信回路6から基板上の空間に放出された電波がセンサの外に放射されるのを防止する。
ケース3の基板2と反対側には樹脂製のカバー9が取り付けられる。カバー9は、アンテナから発信される電波、及びアンテナが受信する電波を透過する。
【0013】
シールド4は、例えば金属などの導電体から筒状に形成され、送信回路6の周囲を囲う。シールド4は、基板2に設けられたグランド配線41にはんだ42によって接続される。
シールド4の基板2の反対側の端面と、ケース3の基板側の端面との距離Aは、0よりも大きく設定される。また、その距離Aは、後述するチョーク部5の作用により、目標とする漏出電波の低減量に応じて設定される。
【0014】
チョーク部5は、シールド4に向き合うケース3の内壁に設けられ、ケース3のシールド4に対向する端面59からシールド4と反対側に凹む溝部51である。図2では、ケース3の内壁にチョーク部5が設けられる位置を、一点鎖線B、B´で示している。
ここで、送信回路6によって生成され、基板上の空間へ放出される所定周波数の電波の波長をλとする。チョーク部5の深さCは、λ/4の長さに設定されている。
これにより、送信回路6から発せられて溝部51に入り再び溝部51から出る電波(以下「反射波」という)は、溝部51に入る前の電波(以下「入射波」という)に対し、溝部51の入口から終端までに1/4波長分位相が遅れ、終端から入口までに1/4波長分位相が遅れる。そのため、入射波と反射波とは、1/2波長分位相が遅れた、いわゆる逆位相になり、互いに打ち消し合う。したがって、チョーク部5は、波長λの周波数の電波がシールド4の外側へ漏れることを抑制可能である。
【0015】
次に、高周波モジュール1の解析モデルを使用し、周波数と通過損失との関係を説明する。
図3は、第1実施形態の高周波モジュール1において、解析モデルとした領域を直方体D、D´で示したものである。なお、図3の斜線部分は、シールド4が設けられる箇所である。
【0016】
図4は、図3で示した領域において、チョーク部5及びシールド4を備えない場合の解析モデルを示している。図4(b)は図4(a)をb方向から見た図であり、図4(c)は図4(a)をc方向から見た図である。モデルの内部は空気、基板はその物性値としている。
図4においてPerfectHは領域の側面の境界条件を示し、PerfectEは領域の上面の境界条件(ケース3の内壁面の境界条件)をあらわす。WavePORT1は送信回路側の解析領域端面を示し、WavePORT2は受信回路側の解析領域端面を示す。
【0017】
図4の解析モデルで、WavePORT1から信号を入力し、WavePORT2から出力された信号の通過損失を計算した。
図5のグラフの実線αに示すように、図4の解析モデルでは、全ての周波数で通過損失は僅かなものであった。これは、基板材に現実的な誘電率、誘電損失を設定しているためであり、また、基板以外の構造(パラメータ)が理想的なモデルであるためと考えられる。
【0018】
図6は、図3で示した領域において、シールドおよびチョーク部を備えた場合の解析モデルを示している。図6(a)においてシールドを符号4で示し、チョーク部を符号5で示す。
図6(b)は図6(a)をb方向から見た図であり、図6(c)は図6(a)をc方向から見た図である。モデルの内部は空気、基板はその物性値としている。
図6の解析モデルでは、シールドの幅W1:0.4mm、シールドの高さH1:2.75mm、シールドとチョーク部との隙間S1:0.15mm、チョーク部の幅W2:2mm、チョーク部の深さH2:3.16mmに設定した。
【0019】
図6の解析モデルで、WavePORT1から信号を入力し、WavePORT2から出力された信号の通過損失を計算した。
図7のグラフの実線βに示すように、図6の解析モデルでは、24GHz付近の周波数で通過損失−50〜−60(dB)となった。これは、チョーク部5によって反射した電波により、チョーク部5とシールド4との隙間を通る24GHz付近の電波が打ち消されたことによるものである。
なお、チョーク部5とシールド4との隙間S1、およびチョーク部5の幅W2等は、目標とする漏出電波の低減量に応じて設定可能である。
上記の結果から、チョーク部5により、チョーク部5とシールド4との隙間からの所定周波数の電波の漏出を低減可能であることが明らかになった。
【0020】
ここで、複数の比較例による高周波モジュールを図13図16に示す。
図13に示すように、第1比較例では、送信回路60の外側を有底筒状のシールドキャップ40によって覆っている。シールドキャップ40は、導電体から形成され、基板20のグランド配線41にはんだ42によって接合されている。なお、シールドキャップ40の内側に図示しない電波吸収体を設けてもよい。
第1比較例では、基板20にシールドキャップ40を実装した後、送信回路60を外観検査することが困難になる。
【0021】
図14に示すように、第2比較例では、基板20のグランド配線41に複数のクリップ21を実装し、そのクリップ21にシールドキャップ40を取り付けている。
第2比較例では、クリップ21を用いることで部品点数が増加し、製造コストが高くなる。また、漏出を防ぐ周波数が高くなると複数のクリップ21の間隔を狭くしなければならず、クリップ21の個数が増えるので、さらに製造コストが高くなる。
【0022】
図15に示すように、第3比較例では、送信回路60の周囲の基板20のグランド配線41に筒状のシールド47をはんだ42によって接合し、そのシールド47の基板20と反対側の端部を導電性接着剤49によってケース30に接続している。
第3比較例では、振動や熱により導電性接着剤49が剥がれると、その隙間から高周波が漏れるおそれがある。
【0023】
図16に示すように、第4比較例では、ケース30と一体に形成したシールド48によって送信回路60の周囲を囲い、そのシールド48のケース30と反対側の端部を導電性接着剤49によって基板20のグランド配線41に接続している。
第4比較例においても、第3比較例と同様の問題が生じるおそれがある。
【0024】
上述した第1〜第4比較例に対し、第1実施形態では、次の作用効果を奏する。
(1)第1実施形態では、筒状のシールド4とチョーク部5により送信回路6が発した所定周波数の電波の漏れを抑制する。そのため、送信回路6から基板上の空間を経由して受信回路7に意図しない電波信号が供給されることが防がれるので、受信回路7の受信する信号のアイソレーションが良好になる。したがって、高周波モジュール1の出力信号の信頼性を高めることができる。
【0025】
(2)第1実施形態では、シールド4を筒状にしているので、シールド4を基板2に実装した後、送信回路6を外観検査することができる。
(3)第1実施形態では、ケース3に溝部51を設けることでチョーク部5とするので、高周波モジュール1を構成する部品点数が増加することなく、製造コストを低減することができる。
【0026】
(4)第1実施形態では、ケース3とシールド4との間に隙間が設けられる。これにより、ケース3と基板2の振動または熱変形によって基板2に応力が作用することが防がれる。したがって、基板2のストレスがかからず、基板2に実装された電子部品の剥離、脱落、断線を防ぐことができる。
【0027】
(5)第1実施形態では、チョーク部5をなす溝部51の深さは、所定周波数の波長λの1/4の長さである。これにより、チョーク部5は、入射波に対して反射波を逆位相とし、入射波と反射波とが互いに打ち消し合ようにすることができる。
【0028】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を図8図10に基づいて説明する。以下複数の実施形態において、上述した第1実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施形態の高周波モジュール10では、シールド44がケース3と一体に筒状に形成され、送信回路6の周囲を囲む。シールド44と基板2との間には僅かな隙間が設けられている。この隙間の距離Fは、0より大きく設定される。また、その距離Fは、基板2に設けたチョーク部50の作用により、目標とする漏出電波の低減量に応じて設定される。
【0029】
第2実施形態では、チョーク部50が基板2に設けられている。チョーク部50は、基板2を形成する誘電体55と、基板2に設けられたビアホール56およびグランド配線57によって構成される。
誘電体55は、基板2を形成する材料と同一のものであり、基板2の一部分である。誘電体55は、基板2のシールド44に対向する端面から板厚方向に延び、一定の深さで基板2の平面方向に延びている。このため、誘電体55は、基板2の断面視においてL形に設けられる。図10では、そのL形を破線Lによって概念的に現している。
【0030】
ここで、基板2を形成する誘電体55の比誘電率は空気の比誘電率に対して大きい。そのため、誘電体55を通過する電波の波長は、基板上の空気を伝わる波長よりも短くなる。第2実施形態では、送信回路6から基板上の空間に放出された所定周波数の電波が誘電体55を通過するときの波長をλ´とする。L形の誘電体55は、基板2の板厚方向に延びる長さL1と、平面方向に延びる長さL2との合計が、波長λ´の1/4に設定されている。
これにより、送信回路6から発せられてチョーク部50の誘電体55に入り、再び誘電体55から出る電波(以下「反射波」という)は、誘電体55に入る前の電波(以下「入射波」という)に対し、逆位相になり、且つ、元の長さの波長λに戻って、送信回路6が発した電波を打ち消す。したがって、チョーク部50により、シールド44の外側への電波の漏れが抑制される。
【0031】
複数のビアホール56は、L形の誘電体55の外側に所定の間隙Gで並べられる。この所定の間隙Gは、波長λ´の1/4以下に設定される。これにより、誘電体55を通る波長λ´の電波は、複数のビアホール56の隙間から外側へ漏れることが防がれる。
【0032】
第2実施形態では、次の作用効果を奏する。
(1)第2実施形態では、シールド44は、ケース3と一体に形成される。これにより、部品点数を少なくし、製造コストを低減することができる。
(2)第2実施形態では、チョーク部50は、基板2を形成する誘電体55、その誘電体55の外側に並ぶ複数のビアホール56およびグランド配線57により構成される。これにより、簡素な構成で基板2にチョーク部50を構成することが可能になる。
【0033】
(3)第2実施形態では、複数のビアホール56の間隙は、送信回路6から放出された電波が誘電体55を通過するときの波長λ´の1/4以下の間隙で設けられる。これにより、ビアホール56の隙間をその波長λ´の電波が通過することを防ぐことができる。
(4)第2実施形態では、チョーク部50は、基板2の断面視において、L形としている。これにより、基板2の厚さが薄い場合でも、チョーク部50の深さをλ´/4にすることができる。
また、チョーク部50を形成するグランド配線57およびビアホール56のよりも下層に位置する基板に、電子回路の配線を形成することが可能である。
【0034】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態を図11及び図12に基づいて説明する。
第3実施形態の高周波モジュール11では、チョーク部5を構成する溝部51は、ケース3の内壁58から基板側へ互いに平行に突出する筒状の内枠体52と筒状の外枠体53によって形成されている。この内枠体52と外枠体53の間に溝部51が設けられる。
ケース3と内枠体52と外枠体53とは、一体で形成してもよし、別体で形成した後、溶接などにより接合してもよい。
なお、第3実施形態において、内枠体52と外枠体53の基板側の端面59が、特許請求の範囲に記載の「前記ケースの前記シールドに対向する端面」に相当する。
【0035】
第3実施形態においても、チョーク部5の深さCは、λ/4の長さに設定されている。
これにより、チョーク部5は、波長λの周波数の電波がシールド4の外側へ漏れることを抑制可能である。
第3実施形態では、使用する周波数λによらず、ケース3の肉厚を薄くすることができる。したがって、高周波モジュール11を軽量化するとともに、その製造コストを低減することができる。
【0036】
(他の実施形態)
上述した実施形態では、レーダに用いられる高周波モジュールについて説明した。これに対し、他の実施形態では、高周波モジュールは、例えば携帯電話など、高周波を発振する種々の装置に適用することが可能である。
上述した実施形態では、送信回路の周囲にシールド及びチョーク部を設けた。これに対し、他の実施形態では、受信回路7または他の信号処理回路8の周囲にシールド及びチョーク部を設けてもよい。
上述した実施形態では、シールド及びチョーク部は、平面視において四角形とした。これに対し、他の実施形態では、シールド及びチョーク部は、平面視において円形または多角形であってもよい。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記複数の実施形態および比較例を組み合わせることに加え、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0037】
1、10、11・・・高周波モジュール
2 ・・・基板
3 ・・・ケース
4、44・・・シールド
5、50・・・チョーク部
6 ・・・送信回路(集積回路)
7 ・・・受信回路(集積回路)
8 ・・・信号処理回路(集積回路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
図11
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