(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記蓄熱用バイパス流路(15)内に前記熱源(5)であるエンジンの熱を空気に対して放熱する第3熱交換器(83)を有し、前記第3熱交換器(83)は前記第2熱交換器(82)の風下側に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の熱交換システム。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0053】
各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0054】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態を示す。この
図1において、熱交換システム100は、例えば走行用モータを走行用駆動源として備える電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、あるいはプラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両に搭載される。この熱交換システムは、機器5(インバータ、または電動発電機等のことであり、熱源5とも言う)の冷却を行うと共に、ヒートポンプサイクル100cによる冷房暖房運転を可能としている。
【0055】
先ず、車両用空調装置のヒートポンプサイクル100cの冷房サイクルについて説明する。冷房時には、圧縮機6から室内放熱器11、電気式膨張弁(絞り)7、更に、室外の液冷熱交換器(冷房時は水冷凝縮器として機能する)81、冷房絞り14、蒸発器9、アキュムレータ10、圧縮機6の順に冷媒が流れる。室内放熱器11には、エアミックスドア12が閉じられることで、空調風が与えられない。
【0056】
電気式膨張弁7は、絞り機能(絞り)と全開機能(開)をもつ電気式可変絞り弁であり、制御装置20によって図示を省略した配線を介して制御される。なお、電気式膨張弁7は、後述するように、冷媒が流れる固定絞りとこの固定絞りに並列に接続された電磁弁で代用することもできる。
【0057】
暖房時においては、圧縮機6、室内放熱器11、電気式膨張弁(開)7、液冷熱交換器(吸熱器)81、電磁弁13、アキュムレータ10、圧縮機6のように冷媒が流れる。なお、除湿暖房時は、減圧弁14、蒸発器9側にも冷媒が流入するように電磁弁13の開度が調整される。
【0058】
次に、第2冷却液Y2が流れる熱源5側の冷却回路について説明する。ヒートポンプサイクル100cから成る車両用空調装置の暖房または冷房運転時においては、矢印Y1にて示す第1冷却液Y1による第1冷却回路1Rは、熱交換器側ポンプ4、第2開閉弁2、第1熱交換器(冷房時放熱作用、暖房時吸熱作用をなす液冷熱交換器)81、第2熱交換器(冷房時放熱、暖房時吸熱作用をなす)82のように第1冷却液Y1が流れる。なお、第2熱交換器82は、空気と後述する第1冷却液Y1と第2冷却液Y2とに係る三流体が流れる三流体熱交換器82である。
【0059】
車両用空調装置の暖房運転時であって液冷熱交換器を成す第1熱交換器81から吸熱するときは、熱源5、熱源側ポンプ3、第2熱交換器82、熱交換器側ポンプ4、第1開閉弁1、熱源5と矢印Y2で示す第2冷却液Y2が第1冷却液温度とは別温度で流れる。これにより、熱源5側の熱を、第2熱交換器82を介して第1冷却液Y1側に熱を移動させ、第1熱交換器(液冷熱交換器)81を介してヒートポンプサイクル100c側に吸熱させる。
【0060】
暖房運転時における第1熱交換器(液冷熱交換器)81の吸熱作用があっても第1熱交換器81は液冷熱交換器であるため、着霜することは無い。しかし、第1冷却液Y1を介して第1熱交換器81に吸熱される第2熱交換器82は外気に晒されているで、表面に霜が付着することがあり、除霜運転が必要となることがある。この除霜運転時は、第2開閉弁2の開度を小(閉を含む)とし、第1冷却液Y1が流れないか少量の流れとする。
【0061】
次に、矢印Y2にて示す第2冷却液Y2について説明する。熱源5を通る第2冷却液Y2は、熱源5、熱源側ポンプ3、第2熱交換器(放熱作用を成す)82、熱交換器側ポンプ4、第1開閉弁1、熱源5と流れる。
【0062】
除霜運転前の蓄熱時は、開閉弁1または2の開度を制御して、熱源5、熱源側ポンプ3、蓄熱用バイパス流路15と熱源5を通るように第2冷却液Y2が循環する。そして除霜時は、熱源5、熱源側ポンプ3、蓄熱用バイパス流路15のように循環して蓄熱された第2冷却液Y2が、霜が付着した第2熱交換器82に流れこみ、短時間除霜が行われる。
【0063】
このように、第1実施形態においては、除霜用の熱量を蓄熱して増大させることができる。また、ガス冷媒に対して伝熱性能が良好な水またはLLCからなる第2冷却液Y2にて熱を室外器となる第2熱交換器に供給することができる。更に、蓄えられた第2冷却液Y2の熱量を空気流のような別流体を介さずに第2熱交換器82の金属から成るチューブやアウターフィンに供給し除霜できるという効果が得られ、大幅な着霜抑制効果ないし除霜効果が得られる。
【0064】
また、第2熱交換器82は、送風機16によって矢印Y3のように流れる空気流Y3と第1冷却液Y1と第2冷却液Y2とが流れる熱交換器として構成されている。この場合、この第2熱交換器82は、空気流以外の流体が共に液体であるから、空気流以外の流体が液体とガス冷媒のように分かれる場合と比べると、ガス冷媒と冷却液との内部リークの問題や、冷媒と冷却液との耐久性能、耐圧性能の相違等から最適設計が困難であるという問題は解消される。
【0065】
以下、更に詳細に周知の構成も含めて説明する。この
図1においては、冷凍サイクル100cと熱の授受を行う第1流体回路1Rを有している。第2流体回路2Rは、熱源5、熱源側ポンプ3、第2熱交換器82等にて冷却回路を形成している。また、
図1の熱交換システムは、制御装置20を備えている。室内放熱器11、および蒸発器9によって、車両室内の空調(冷房運転、暖房運転)を行うユニットが、室内ユニット21として設けられている。
【0066】
ヒートポンプサイクル100cは、車室内の暖房あるいは冷房を行うための熱サイクルであり、圧縮機6、室内放熱器11、電気式膨張弁7による暖房絞り、室外熱交換器となる第1熱交換器(液冷熱交換器)81、およびアキュムレータ10に加えて、電磁弁13(周知のように三方弁を使用しても良い)から分岐する分岐流路に設けられた冷房絞り14および蒸発器9を備えている。
【0067】
上記ヒートポンプサイクル100cを構成する各機器のうち、室内放熱器11、および蒸発器9は、室内ユニット21の構成部品として車室内(インストルメントパネル内)の空調ケース内に配設され、圧縮機6、第1第2熱交換器81、82、送風機16、熱源5等はエンジンルーム内に配設されている。
【0068】
圧縮機6は、図示しない電動モータによって駆動されて、冷媒を高温高圧に圧縮して吐出する電動式の流体機械であり、作動回転数によって冷媒の吐出量を調節可能としている。この圧縮機6は、制御装置20によってその作動および冷媒吐出量が制御される。
【0069】
室内放熱器11は、内部に冷媒流路が形成された放熱用の熱交換器であり、空調ケース内の空調用空気流の下流側に配設されている。室内放熱器11内の冷媒流路には、圧縮機6から吐出された高温高圧の冷媒が流れ、室内放熱器11は、空調ケース内を流通して、室内放熱器11自身を通過する空調用空気流に放熱して、空調用空気流を加熱するようになっている。
【0070】
制御絞りを成す電気式膨張弁7による暖房絞りは、所定開度の絞りを構成し、室内放熱器11から流出される冷媒を減圧する減圧手段である。なお、この電気式膨張弁7は、暖房絞りと、この暖房絞りをバイパスするように分岐された分岐流路に設けられた電磁弁とで代用することもできる。
【0071】
電気式膨張弁7または電磁弁7bの開閉動作は制御装置20によって制御されるようになっている。電気式膨張弁7は、暖房運転時には暖房絞りとして流路を絞り、冷媒が減圧されて第1熱交換器81から成る液冷熱交換器に流入するようになっている。また、電気式膨張弁7は、冷房運転時には開かれて、室内放熱器11から流出される冷媒は、減圧を受けずに室外熱交換器を成す第1熱交換器81に流入するようになっている。第1熱交換器81は、冷媒と第1冷却液Y1との間で熱交換する液冷熱交換器である。
【0072】
暖房運転時に電気式膨張弁7による暖房絞りから冷媒が流出される場合、冷媒は低温低圧に減圧されているので、第1熱交換器81は空気流から吸熱する吸熱用熱交換器(吸熱器)として機能する。また、冷房運転時に、冷媒は減圧されずに高温高圧のままであるので、第1熱交換器81は第1冷却液Y1によって冷媒が冷却される液冷放熱器として機能する。
【0073】
第2熱交換器82の車両後方側には、空気流Y3を供給する送風機16が設けられている。送風機16は、制御装置20によってファンの回転数が増減されることで、空気流Y3の送風量が調節されるようになっている。なお、送風機16は、第2熱交換器82の車両前方側に設けられて、空気流Y3を車両の前方側から後方側に供給する押し込み式の空気流供給手段としても良い。
【0074】
第2体熱交換器82の流出側には、熱交換器側ポンプ4、第1開閉弁1、第2開閉弁2繋がる流路が設けられている。次に、電磁弁13は、閉じることにより、冷媒が冷房絞り(減圧弁)14側を流通する場合と、電磁弁13を開くことにより冷媒を主としてアキュムレータ10側に流通させる場合とに切替えることができる。この電磁弁13は電気式膨張弁7と共に制御装置20で制御される冷房暖房切替え手段を形成している。
【0075】
冷房絞り14は、減圧手段であり、所定開度の絞りを備え、冷媒を減圧するようになっている。蒸発器9は、冷房絞り14の下流側に設けられた熱交換器であり、冷房絞り14で減圧された冷媒と空調ケース内を流通する空調用空気流との間で熱交換して、空調用空気流を冷却するようになっている。蒸発器9は、空調ケース内で流路全体を横断するように設けられている。蒸発器9は、空調ケース内で室内放熱器11よりも空調用空気流の上流側に配設されている。
【0076】
アキュムレータ10は、気液分離手段であり、電磁弁13を介して第1熱交換器81から流出された冷媒、あるいは冷房絞り14を通り蒸発器9から流出された冷媒を受け入れ、冷媒の気液を分離して液冷媒を溜め、ガス冷媒および底部付近の少量の液冷媒(オイルが溶け込んでいる)を圧縮機6へ吸入させるようになっている。
【0077】
室内ユニット21は、空調用空気流の温度を、乗員が設定する設定温度に調節して車室内に吹出すユニットであり、空調ケース内にブロワ25、蒸発器9、室内放熱器11、およびエアミックスドア12等が設けられている。
【0078】
ブロワ25は、内外気切替えドア27の切替えによって車室内あるいは車室外から空調用空気流を空調用ケース内に取り入れて、最下流側となる各種吹出口から車室内へ吹出す送風手段である。ブロワ25の作動回転数、即ち送風量は、制御装置20によって制御されるようになっている。ブロワ25の空調用空気流の下流側には、上記で説明した蒸発器9、および室内放熱器11が配設されている。また、室内放熱器11と空調ケースとの間には、空調用空気流が室内放熱器11をバイパスして流通可能となるバイパス通路26が形成されている。
【0079】
エアミックスドア12は、室内放熱器11、およびバイパス通路26を通過する空調用空気流量を調節する調節手段である。エアミックスドア12は、室内放熱器11の空調用空気流通部、あるいはバイパス通路26を開閉する回動式のドアである。エアミックスドア12の開度に応じて、室内放熱器11を流通する加熱空気流と、蒸発器9で冷却されてバイパス通路26を流通する冷却空気流との流量割合が調節されて、室内放熱器11の下流側の空調用空気温度が調節されるようになっている。
【0080】
エアミックスドア12の開度は、制御装置20によって制御されるようになっている。更に、制御装置20は演算結果に基づいて、ポンプ3、4の作動制御、開閉弁1または2の開閉制御、圧縮機6の作動および吐出量制御、電磁弁13の開閉制御、電気式膨張弁7の開度制御、送風機16の作動および送風量制御、エアミックスドア12の開度制御等を行うことで、機器5の冷却運転、車室内の冷房運転、暖房運転を行う。
【0081】
(除霜運転)
暖房運転中においては、室外熱交換器となる第1熱交換器81は、第1冷却液Y1から冷媒に吸熱するので、第2熱交換器82は第1冷却液Y1との熱交換により温度低下する。冬場のように外気温度が低く、上記熱交換によって第2熱交換器82の表面の温度が空気中に含まれる水蒸気の露点温度を下回ると、水蒸気は凝縮水となり、更に空気流の温度が低下して0℃以下となると、凝縮水は凍結して霜となって第2熱交換器82の表面に付着してしまう。
【0082】
第2熱交換器82の表面に霜が付着すると、熱交換器全体の通気抵抗が上昇すると共に、熱抵抗が増加するので、熱交換器と空気流との熱交換性能が低下してしまい、ひいては、室内放熱器11の加熱性能が低下してしまう。除霜運転は、霜を融解させて除去するための運転として設定されている。
【0083】
除霜運転にあたって、まず、制御装置20は、蓄熱用バイパス流路15側に熱源5からの第2冷却液Y2が流れるように第1開閉弁1、第2開閉弁2を実質的に閉じ(わずかに開いていても良い)、熱源側ポンプ3を作動させる。すると、冷却回路2R内の第2冷却液Y2は蓄熱用バイパス流路15側を通過して循環し、第2熱交換器82および第1熱交換器81による放熱を受けない形となる。よって、熱源5から発生する熱は、第2冷却回路2Rに充分蓄熱されていくことになる。
【0084】
そして、制御装置20は、冷凍サイクル100cの暖房運転中に除霜を行う際に、第1開閉弁1を開き、蓄熱された第2冷却液Y2を第2熱交換器82に流入させる。更に、送風機16を作動状態とする。すると、冷却回路2R内の第2冷却液Y2は、第2熱交換器82内を通過して循環し、第2冷却液Y2に蓄熱された熱は、第2熱交換器82表面の除霜を行う。
【0085】
例えば、第2熱交換器82に流入する前の空気流の温度を図示しないT1とすると、第2熱交換器82を通過した後の空気流の温度(図示しない温度センサの検出温度)は、蓄熱した第2冷却液Y2によって加熱されT2に上昇する。このとき、制御装置20は、空気流の温度T2が、第2熱交換器82の除霜に必要とされる所定の空気温度以上となるように、送風機16の送風量を制御する。霜を融解させるための空気流の温度T2としては、0℃以上であることが必要であるため、所定の空気温度としては、ここでは0℃と設定している。
【0086】
第2冷却液Y2から第2熱交換器82を介して放出される放熱量は、空気流の風量と、(温度T2−温度T1)との積に比例する。よって、制御装置20は、例えば熱交換用空気温度T2が、所定の空気温度よりも低い場合は、送風機16の風量を低下させることで、空気流の温度T2を所定の空気温度以上に確保する。
【0087】
そして、温度T2に加熱された空気流が第2熱交換器82から流出することになり、第2熱交換器82の除霜が可能となる。このとき、ヒートポンプサイクル100cにおいては、暖房運転時の作動条件がそのまま維持できる。
【0088】
以上のように、除霜運転において、除霜を行う前段階で、第2冷却液Y2が蓄熱用バイパス流路15を循環することで、熱源5から発生する熱を第2冷却液Y2に蓄熱するようにしている。これにより、第2熱交換器82における除霜のための熱を準備することができる。
【0089】
そして、予め第2冷却液Y2に蓄熱した熱を、第2熱交換器82に与えることができるので、即効性のある除霜が可能となる。また、従来技術においては、ホットガス除霜運転時に、送風機16を停止させると共に、ヒートポンプサイクル100c内の圧縮機6を作動させる必要があった。しかしながら、この実施形態では、除霜時に送風機16が作動を継続し、第1熱交換器81は暖房運転時と同様に吸熱器としての作動を維持することができる。よって、ヒートポンプサイクル100cにおいては、本来の暖房運転状態を維持したままで除霜することが可能となる。そして、除霜のために圧縮機6を作動させることがなく、圧縮機6の余分な動力を必要としない。
【0090】
また、上記第1実施形態においては、熱源5は、エンジン(内燃機関)以外の車載発熱機器5から成る。そして、車載発熱機器5の発熱を第2冷却液Y2が流れる第2熱交換器82で放熱させている。これによれば、第2熱交換器82には第1冷却液Y1と第2冷却液Y2との両方が流れるが、エンジン以外の車載発熱機器5のエンジンに比較して低温の熱を第2冷却液Y2に流すため、第1冷却液Y1と第2冷却液Y2の温度差が小さく、第2熱交換器82に対する熱歪みに係るストレスを小さくすることができる。
【0091】
具体的には、例えば第1冷却液Y1と第2冷却液Y2とが夫々流れる第2熱交換器82内のチューブの熱歪みにおけるストレスを小さくすることができ、特にチューブ同士を交互配置した場合に有効である。
【0092】
更に、上記第1実施形態においては、第2熱交換器82に熱源5側から第2冷却液Y2が流れ込む量を開閉弁1の制御によって抑制し、かつ第2熱交換器82に第1熱交換器側81からの第1冷却液Y1が主としてまたは第1冷却液Y1のみが流れこむように開閉弁1または2を制御する手段を制御装置20に有する。
【0093】
これによれば、第2熱交換器82に熱源5側から第2冷却液Y2が流れ込む量を抑制し、かつ第2熱交換器82に第1熱交換器側81からの第1冷却液Y1が流れこむようにすることによって、三流体熱交換器を成す第2熱交換器82の熱交換面積が冷凍サイクルの冷媒と熱交換する第1冷却液側に使用され、冷凍サイクルの性能を向上させることができる。
【0094】
なお、、第2熱交換器82に熱源5によって加熱された第2冷却液Y2と、第1熱交換器側81からの第1冷却液Y1との両方が共通ポンプ4を介して流れ込む。そして、共通ポンプ4と第2熱交換器82とを通過して流れる第2冷却液Y2が流れる流路内に開閉弁の一方の弁1が配置されている。また、共通ポンプ4と第2熱交換器82とを通過して流れる第1冷却液Y1が流れる流路内に開閉弁1、2の他方の弁2が配置されている。
【0095】
これによれば、第2熱交換器82に第1熱交換器側81からの第1冷却液Y1のみが流れこむように開閉弁の他方の弁2を開き、開閉弁の一方の弁1を閉じることによって、三流体熱交換器の熱交換面積が冷凍サイクルの冷媒と熱交換する第1冷却液Y1側のみに使用され、冷凍サイクルの性能を任意のタイミング(例えば真夏時のクールダウン時)において向上させることができる。
【0096】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以降の各実施形態においては、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成および特徴について説明する。なお、第2実施例以下については、第1実施例と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明が援用される。
【0097】
本発明の第2実施形態を示す
図2の
図1との相違点は、蓄熱用バイパス流路が存在しないことである。この場合においても、熱源側ポンプ3および熱交換器側ポンプ4を回転させ、熱源5となるエンジン(E/G)の高温廃熱で第2熱交換器82の除霜が可能である。
【0098】
また、暖房時は車両用空調装置のヒートポンプサイクル100c側の要求によって制御装置20を介して、エンジン1を起動し、吸熱暖房および除霜熱源の確保を可能としている。なお、車両用空調装置が搭載されている車両は、ガソリン車であっても良い。また、熱源5は、エンジン以外の高温の熱源5であってもよく、燃料電池自動車等に適用してもよい。
【0099】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。
図3は本発明の第3実施形態を示す。
図3において、第2冷却液Y2が第2熱交換器82をバイパスする位置に第3熱交換器83を有している。
【0100】
そして、第3熱交換器83を流れる第2冷却液Y2を介して熱源5となるエンジンが空気に放熱する。また、開閉弁1または2の第1作動によって、車両用空調装置の冷房暖房時には第1交換器81からの第1冷却液Y1を第2熱交換器82に流入させている。
【0101】
また、開閉弁1または2の第2作動によって、熱源5の熱を第2冷却液Y2に蓄熱する蓄熱時には第2冷却液Y2が第2熱交換器82をバイパスするようにして熱源5からの第3冷却液Y2を第3熱交換器83に流入させている。更に、開閉弁1または2の第3作動によって、車両用空調装置の除霜時には蓄熱された第2冷却液Y2を第2熱交換器82に流入させている。
【0102】
この構成によれば、開閉弁1または2の第1作動によって、車両用空調装置の冷房時には第1交換器81からの第1冷却液Y1を第2熱交換器82に流入させているから、凝縮器として作用する第1熱交換器81の熱を第1冷却液Y1を介して放熱させることができる。また、開閉弁1または2の第2作動によって、熱源5の熱を熱源冷却回路2Rに蓄熱する蓄熱時には、第2冷却液Y2をバイパスさせて熱源5からの第2冷却液Y2を第3熱交換器83に流入させることができる。
【0103】
更に、開閉弁1または2の第3作動によって、車両用空調装置の除霜時には蓄熱された第2冷却液Y2を第2熱交換器82に流入させているから、除霜時に蓄熱された第2冷却液Y2で第2熱交換器82に対して短時間で除霜を完了させることができる。
【0104】
以上のように、蓄熱用バイパス流路15内に熱源5であるエンジンの熱を空気に対して放熱する第3熱交換器83を有している。この第3熱交換器(83)は、第2熱交換器82の送風機16による空気流Y3の風下側に配置されている。
【0105】
これによれば、蓄熱用バイパス流路15内にエンジンの熱を空気に対して放熱する第3熱交換器83を有しているから、エンジンの最大発熱時の冷却性能保証が容易であり、かつ車両用空調装置の冷房時には第2冷却液Y2の冷却に第3熱交換器83が寄与するから、第2熱交換器82の冷却性能確保も可能である。なお、蓄熱用バイパス流路15を複数並置し、その中の一つの蓄熱用バイパス流路15に第3熱交換器83を設けてもよい。
【0106】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。
図4は本発明の第4実施形態を示す。
図4において、熱源5はエンジンから成る。第1冷却液Y1が流れる第1熱交換器81と第2熱交換器82とを含む流路内にエンジン以外の車載発熱機器50を配置している。
【0107】
そして、第2熱交換器82にて車載発熱機器50とエンジン5からの熱を放熱させている。これによれば、エンジン停止時においても車載発熱機器50の発熱を、冷凍サイクルの暖房時に冷媒が蒸発する室外蒸発器として吸熱動作を行う第1熱交換器81にて吸熱させることができる。従って、冷凍サイクルによる暖房運転時の暖房性能および成績係数(COP)を良好にすることができる。
【0108】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。
図5は、本発明の第5実施形態を示す。
図5において、第2熱交換器82は、第1熱交換器81側から流れ込む第1冷却液Y1と、熱源5側から流れこむ第2冷却液Y2と、空気流(Y3)とから成る3つの媒体間において、同時に熱交換する三流体熱交換器から成る。
【0109】
この三流体熱交換器82は、共通の
図5では図示しないアウターフィンを介して第1冷却液Y1が流れる三流体熱交換器82内のチューブと第2冷却液Y2が流れるチューブとが機械的および熱的に結合されている。
【0110】
これによれば、第2熱交換器82は、三流体熱交換器82から成るから小型に構成できる。また、空気流以外は第1冷却液Y1、第2冷却液Y2共に液体であるから、三流体熱交換器82の設計および製造が容易になる。また、共通のアウターフィンを介して第1冷却液Y1と第2冷却液Y2とが少ないスペースで熱交換し易い。また、第1冷却液Y1および第2冷却液Y2の温度を2種類にし易い。よって、このような三流体熱交換器82を使用して、第1冷却液Y1と第2冷却液Y2との間に温度差が存在する場合であっても容易に熱交換システムを構築することができる。
【0111】
また、
図5において、第1冷却液Y1の流量を第2冷却液Y2とは独立して制御する流量制御手段となるポンプ4bまたは開閉弁1を第1冷却液Y1が流れる回路中、および第2冷却液Y2が流れる回路中に設けている。従って、第1冷却液Y1の流量を第2冷却液Y2とは独立して制御できるから、三流体熱交換器82の熱交換面積が冷凍サイクルの冷媒と熱交換する第1冷却液側に主として使用される程度を制御することができる。なお、三流体熱交換器82の具体的構成は、後述する
図7または
図8によることができる。
【0112】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。本発明の第6実施形態を示す
図6において、第1熱交換器81が凝縮器として作動する場合に、第1冷却液Y1の水温が所定温度以上になったときに、制御装置20が、第2熱交換器82に流れる第1冷却液Y1の流量を多くするように制御する。
【0113】
これによれば、冷房時に第1熱交換器81が凝縮器として作動する場合に、第1冷却液Y1の高温化にともなう第1冷却液Y1が流れる流路の保護または性能保証のため第2熱交換器82に流入する第1冷却液Y1の量を増加させ、充分に第2熱交換器82にて第1冷却液Y1の放熱を行うことができる。
【0114】
また、第1熱交換器81が室外機として設置され、蒸発器として作動する場合に、第1冷却液Y1の水温が所定水温以下、および、第1熱交換器81内の冷媒圧力が所定圧力以下、および、第2熱交換器82の温度(例えばフィン温度)が所定温度以下のいずれかと成った場合に、制御装置20は、第2冷却液Y2が第2熱交換器82に流れ込む量を増加させるように制御する。
【0115】
これらの制御は、例えば、ポンプ3、4の回転数を上昇させることによって行うことができる。これによって、暖房運転時において、第1冷却液Y1の水温が所定水温以下、第1熱交換器81内の冷媒圧力が所定圧力以下、および、第2熱交換器82の温度が所定温度以下のいずれかと成った場合に、熱交換性能回復の必要な着霜状態と判定することができる。そして、着霜状態と判定されたときに、第2冷却液Y2が第2熱交換器82に流れ込む量を増加させるようにして、車両用空調装置の吸熱暖房性能の確保および耐着霜性の向上を図ることができる。
【0116】
なお、
図6のように、第1冷却液Y1の水温が所定水温以下になったことを検出する水温センサS1、第1熱交換器81内の冷媒圧力が所定圧力以下になったことを検出する圧力センサS2、および、第2熱交換器82の温度が所定温度以下になったことを検出する温度センサS3を設けて制御装置20にセンサ信号を入力している。
【0117】
更に、
図6において、車両用空調装置が搭載された車両の走行速度が所定速度以下、または、エンジンの熱を放熱させる第2熱交換器82に流れる空気流を阻止するようにラジエータシャッター82Sが作動した場合に、室外機として設置された第2熱交換器82内に流入される第2冷却液Y2の温度を上昇させるかまたは流量を増加させても良い。
【0118】
なお、車両の走行速度が所定速度以下となって走行風が第2熱交換器82に流れこまなくなった場合、または、エンジンの熱を放熱させる第2熱交換器82に流れる空気流を阻止するようにラジエータシャッター82Sが作動した場合には、第2熱交換器82が空気と熱交換する作用が低下する。この場合を利用して、制御装置20は、第2熱交換器82内に流入される第2冷却液Y2の温度を上昇させるか、または流量を増加させるから、第2熱交換器82の除霜または耐着霜性の向上を速やかに行うことができる。
【0119】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。例えば、上述の第1実施形態では、第2熱交換器82は、第1冷却液Y1も第2冷却液Y2も同じ不凍液(LLC)を使用したが、オイルと不凍液のように同じ液体であっても異なる性質のものとすることができる。
【0120】
この場合は、オイルと不凍液が混ざらないように、オイル側の熱交換部(図示しない5A)を成すチューブと不凍液側の熱交換部(図示しない5B)を成すチューブとは別にしなければならない。
【0121】
図7は、その他の実施形態における三流体熱交換器の構造例を示す。この
図7に示すように、オイル側の熱交換部(図示しない5A)を成すチューブ41と不凍液側の熱交換部(図示しない5B)を成すチューブ42とは別に構成され、互いにアウターフィン43にて熱的機械的に結合されている。三流体熱交換器は、理想的には2列コアにて製作されるが1列コアでも良い。
【0122】
次に、
図8は、その他の実施形態における三流体熱交換器の別の構造例を示す。
図8においてはチューブ41とチューブ42は
図7のような交互配列ではなく千鳥状に配列されている。この
図7または
図8のような三流体熱交換器が、第1第2実施形態に採用されることにより以下の効果がある。
【0123】
冷却液は、第1冷却液Y1と第2冷却液Y2のように流路を分離することができる。よって、第1第2冷却液Y1、Y2の温度を2種類にし易い。一方、熱源5側の第2冷却回路2Rは、熱源5周りの電子素子保護のために、所定温度(65℃)以下としたいが、冷凍サイクル100cの凝縮器となる第1熱交換器81の温度は100℃〜80℃くらいとなることがある。よって、三流体熱交換器を使用する場合は、このような温度差が存在する場合であっても容易に熱交換システムを構築することができる。
【0124】
また、ヒートポンプサイクル100cの暖房運転のときに、三流体熱交換器から成る第2熱交換器82は、高い温度(熱源5の第2冷却回路2R側)と低い温度(冷凍サイクル100cの第1冷却回路1R側)とを作ることができ、高い温度の第2冷却液Y2を霜に直接導入することができ、除霜効率がよい。
【0125】
更に、ヒートポンプサイクル100cの暖房運転のときに、吸熱暖房として第1熱交換器81を介して第2熱交換器82から冷凍サイクル100c側に熱を移動させる場合でも、高い温度のチューブが第2熱交換器82内にあるため、その周囲の着霜が抑制されることで、着霜を要因とする第2熱交換器82表面の閉塞が発生せず、それ故に、風の不流入が抑制され、第2熱交換器82の性能悪化を緩和することができる。
【0126】
以上のように、
図7および
図8の三流体熱交換器を成す第2熱交換器82は、第1冷却液Y1が流れるチューブと、第2冷却液Y2が流れるチューブとを有し、これらのチューブがチューブ積層方向に交互に配置されている。また、第1冷却液Y1が流れるチューブ41と、第2冷却液Y2が流れるチューブ42とが共通のアウターフィン43にて結合されている。従って、これによれば、三流体熱交換器として第2熱交換器82を容易に構成できる。また、冷却液は、第1冷却液Y1と第2冷却液Y2のように流路を分離することができる。
【0127】
次に、第1開閉弁1、第2開閉弁2の位置、熱源側ポンプ3、熱交換器側ポンプ4の位置は機能上同一なら
図1、
図2等の位置によらなくても良い。例えば、熱源5の上流、あるいは下流に熱源側ポンプ3を配置しても機能は同一である。なお、第1開閉弁1、第2開閉弁2は流調弁で構成し、ONOFF弁として構成しなくても良い。また見かけ上単一の弁として統合してもよい。
【0128】
更に、上述したように、車両は電気自動車(EV)を想定しているがハイブリッド車(HV、PHV)でもよい。また、熱源5は、エンジンのほか、電動発電機、走行用モータの作動を制御するモータ制御部を成すインバータ、排気再循環装置(EGR)、過給器、インタークーラ、パワーステアリング、バッテリ等の発熱源であっても良い。そして、これらの機器1の内部の所定領域は、冷却液の流通が可能となっており、流通する冷却液によって、機器作動時の温度が予め定めた制御温度以下に調節(冷却)されるようになっている。
【0129】
次に、更にその他の実施形態として、上記各実施形態において三流体熱交換器として採用可能な熱交換器の具体的構成例について説明する。
図9は、この熱交換器70の外観を示す。
図10は、熱交換器70を分解して示す。
図11は、
図9の一部断面を示す。
図12では、熱交換器70における第1冷却液Y1および第2冷却液Y2を説明する。
【0130】
上記実施形態では、第1熱交換器81における第1冷却液Y1との熱交換にて第1冷却液Y1から失われた熱を、外気から吸熱して第1冷却液Y1に供給するために外気環境下に配置された第2熱交換器82とを備え、第1熱交換器81は、第1冷却液(Y1)との熱交換にて冷媒が吸熱をする液冷熱交換器からなり、第2熱交換器82は、第2冷却液Y2で熱源5を冷却する熱源冷却回路2Rの放熱も行う三流体熱交換器として以下の構成を採用できる。
【0131】
まず、
図9、10に示すように、第1冷却液Y1側の熱交換器Aを成す室外熱交換部160および第2冷却液Y2側の熱交換器Bを成すラジエータ部430は、それぞれ第1冷却液Y1または第2冷却液Y2を流通させる複数本のチューブ、この複数本のチューブの両端側に配置されてそれぞれのチューブを流通する第1冷却液Y1または第2冷却液Y2の集合あるいは分配を行う一対の集合分配用タンク等を有する、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器として構成されている。
【0132】
より具体的には、室外熱交換部160は、第1流体としての第1冷却液Y1が流通する複数本の第1冷却液用チューブ160a、および、複数本の第1冷却液用チューブ160aの積層方向に延びて第1冷却液用チューブ160aを流通する第1冷却液の集合あるいは分配を行う第1冷却液側タンク部160cを有し、第1冷却液用チューブ160aを流通する第1冷却液Y1と第1冷却液用チューブ160aの周囲を流れる第3流体としての空気(送風ファン11から送風された外気)とを熱交換させる熱交換部である。
【0133】
一方、ラジエータ部430は、第2流体としての第2冷却液Y2が流通する複数本の冷却媒体用チューブ430a、および、冷却媒体用チューブ430aの積層方向に延びて冷却媒体用チューブ430aを流通する冷却液の集合あるいは分配を行う冷却媒体側タンク部430cを有している。そして、ラジエータ部430は、冷却媒体用チューブ430aを流通する冷却液と冷却媒体用チューブ430aの周囲を流れる空気(送風ファン11から送風された外気)とを熱交換させる熱交換部である。
【0134】
まず、第1冷却液用チューブ160aおよび冷却媒体用チューブ430aとしては、長手方向垂直断面の形状が扁平形状の扁平チューブが採用されている。そして、
図10に示すように、室外熱交換部160の第1冷却液用チューブ160aおよびラジエータ部430の冷却媒体用チューブ430aが、それぞれ送風ファン11によって送風された外気の流れ方向X9に沿って2列配置されている。
【0135】
更に、外気の流れ方向風上側に配列された第1冷却液用チューブ160aおよび冷却媒体用チューブ430aは、その外表面のうち平坦面同士が互いに平行に、かつ、対向するように所定の間隔を開けて交互に積層配置されている。同様に、外気の流れ方向風下側に配列された第1冷却液用チューブ160aおよび冷却媒体用チューブ430aについても、所定の間隔を開けて交互に積層配置されている。
【0136】
換言すると、この熱交換器の第1冷却液用チューブ160aは、冷却媒体用チューブ430aの間に配置され、冷却媒体用チューブ430aは、第1冷却液用チューブ160aの間に配置されている。更に、第1冷却液用チューブ160aと冷却媒体用チューブ430aとの間に形成される空間は、送風ファン11によって送風された外気が流通する外気通路70a(第3流体用通路)を形成している。
【0137】
そして、この外気通路70aには、室外熱交換部160における第1冷却液Y1と外気との熱交換およびラジエータ部430における冷却液と外気との熱交換を促進するとともに、第1冷却液用チューブ160aを流通する第1冷却液Y1と冷却媒体用チューブ430aを流通する第2冷却液Y2との間の熱移動を可能とするアウターフィン50が配置されている。
【0138】
このアウターフィン50としては、伝熱性に優れる金属の薄板を波状に曲げ成形したコルゲートフィンが採用されており、この熱交換器では、このアウターフィン50が、第1冷却液用チューブ160aおよび冷却媒体用チューブ430aの双方に接合されていることによって、第1冷却液用チューブ160aと冷却媒体用チューブ430aとの間の熱移動を可能としている。
【0139】
次に、第1冷却液側タンク部160cおよび冷却媒体側タンク部430cについて説明する。これらのタンク部160c、430cの基本的構成は同様である。第1冷却液側タンク部160cは、2列に配置された第1冷却液用チューブ160aおよび冷却媒体用チューブ430aの双方が固定される第1冷却液側固定用プレート部材161、第1冷却液側固定用プレート部材161に固定される第1冷却液側中間プレート部材162、並びに、第1冷却液側タンク形成部材163を有している。
【0140】
第1冷却液側中間プレート部材162には、
図10および
図11に示すように、第1冷却液側固定用プレート部材161に固定されることによって、第1冷却液側固定用プレート部材161との間に冷却媒体用チューブ430aに連通する複数の空間162bSを形成する複数の凹み部162bが形成されている。この空間162bSは、外気の流れ方向X9に2列に並んだ冷却媒体用チューブ430a同士を互いに連通させる冷却媒体用の連通空間162bSとしての機能を果たす。
【0141】
なお、
図11では、図示の明確化のため、冷却媒体側中間プレート部材432に設けられた凹み部432b周辺の断面を図示しているが、前述の如く、第1冷却液側タンク部160cおよび冷却媒体側タンク部430cの基本的構成は同様なので、第1冷却液側接続用プレート部材161および凹み部162b等についてはカッコを付して符合を記載している。
【0142】
また、第1冷却液側中間プレート部材162のうち第1冷却液用チューブ160aに対応する部位にはその表裏を貫通する第1連通穴162a(
図10)が設けられ、この第1連通穴162aには第1冷却液用チューブ160aが貫通している。これにより、第1冷却液用チューブ160aが第1冷却液側タンク形成部材163内に形成される空間に連通している。
【0143】
更に、第1冷却液側タンク部160c側の端部では、第1冷却液用チューブ160aが冷却媒体用チューブ430aよりも、第1冷却液側タンク部160c側へ突出している。つまり、第1冷却液用チューブ160aの第1冷却液側タンク部160c側の端部と冷却媒体用チューブ430aの第1冷却液側タンク部160c側の端部は、不揃いに配置されている。
【0144】
第1冷却液側タンク形成部材163は、第1冷却液側固定用プレート部材161および第1冷却液側中間プレート部材162に固定されることによって、その内部に第1冷却液Y1の集合を行う集合空間163aおよび第1冷却液Y1の分配を行う分配空間163bを形成するものである。具体的には、第1冷却液側タンク形成部材163は、平板金属にプレス加工を施すことにより、その長手方向から見たときに、二山状(W字状)に形成されている。
【0145】
そして、第1冷却液側タンク形成部材163の二山状の中央部163cが第1冷却液側中間プレート部材162に接合されることによって、集合空間163aおよび分配空間163bが区画されている。なお、この熱交換器では、外気の流れ方向X9の風上側に集合空間163aが配置され、更に、外気の流れ方向X9の風下側に分配空間163bが配置されている。
【0146】
この中央部163cは、第1冷却液側中間プレート部材162に形成された凹み部162bに適合する形状に形成されており、集合空間163aと分配空間163bは、第1冷却液側固定用プレート部材161および第1冷却液側中間プレート部材162の接合部位から内部の第1冷却液Y1が漏れないように区画されている。
【0147】
更に、前述の如く、第1冷却液用チューブ160aは、第1冷却液側中間プレート部材162の第1連通穴162aを貫通して、第1冷却液側タンク形成部材163の内部に形成される集合空間163aあるいは分配空間163bへ突出していることにより、外気の流れ方向X9の風上側に配列された第1冷却液用チューブ160aは集合空間163aに連通し、外気の流れ方向X9の風下側に配列された第1冷却液用チューブ160aは分配空間163bに連通している。
【0148】
また、第1冷却液側タンク形成部材163の長手方向一端側には、分配空間163bへ第1冷却液Y1を流入させる第1冷却液流入配管164が接続されるとともに、集合空間163aから第1冷却液Y1を流出させる第1冷却液流出配管165が接続されている。更に、第1冷却液側タンク形成部材163の長手方向他端側は、閉塞部材によって閉塞されている。
【0149】
一方、冷却媒体側タンク部430cについても、
図10に示すように、同様の構成の冷却媒体側固定用プレート部材431、冷却媒体側固定用プレート部材431に固定される冷却媒体側中間プレート部材432、並びに、冷却媒体側タンク形成部材433を有している。
【0150】
更に、冷却媒体側固定用プレート部材431と冷却媒体側中間プレート部材432との間には、冷却媒体側中間プレート部材432に設けられた凹み部432bによって、外気の流れ方向X9に2列に並んだ第1冷却液用チューブ160a同士を互いに連通させる第1冷却液用連通空間が形成されている。
【0151】
また、冷却媒体側中間プレート部材432のうち冷却媒体用チューブ430aに対応する部位にはその表裏を貫通する第2連通穴432a(
図10)が設けられ、この第2連通穴432aには冷却媒体用チューブ430aが貫通している。これにより、冷却媒体用チューブ430aが冷却媒体媒側タンク形成部材433内に形成される空間に連通している。
【0152】
従って、冷却媒体側タンク部430c側の端部では、冷却媒体用チューブ430aが第1冷却液用チューブ160aよりも、冷却媒体側タンク部430c側へ突出している。つまり、第1冷却液用チューブ160aの冷却媒体側タンク部430c側の端部と冷却媒体用チューブ430aの冷却媒体側タンク部430c側の端部は、不揃いに配置されている。
【0153】
更に、冷却媒体側タンク形成部材433は、冷却媒体側固定用プレート部材431および冷却媒体側中間プレート部材432に固定される。これによって、内部に冷却媒体側タンク形成部材433の中央部433cによって区画された冷却媒体の集合空間433aおよび冷却媒体の分配空間433bを形成している。なお、この熱交換器では、外気の流れ方向X9の風上側に分配空間433bが配置され、外気の流れ方向X9風下側に集合空間433aが配置されている。
【0154】
また、冷却媒体側タンク形成部材433の長手方向一端側には、分配空間433bへ冷却媒体を流入させる冷却媒体流入配管434が接続されるとともに、集合空間433aから冷却媒体を流出させる冷却媒体流出配管435が接続されている。更に、冷却媒体側タンク部430cの長手方向他端側は、閉塞部材によって閉塞されている。
【0155】
従って、本実施形態の熱交換器70では、
図12の模式的な斜視図に示すように、第1冷却液流入配管164を介して第1冷却液側タンク部160cの分配空間163bへ流入した第1冷却液Y1が、2列に並んだ第1冷却液用チューブ160aのうち、外気の流れ方向X9の風下側に配列された各第1冷却液用チューブ160aへ流入する。
【0156】
そして、風下側に配列された各第1冷却液用チューブ160aから流出した第1冷却液Y1が、冷却媒体側タンク部430cの冷却媒体側固定用プレート部材431と冷却媒体側中間プレート部材432との間に形成された第1冷却液用連通空間を介して、外気の流れ方向X9の風上側に配列された各第1冷却液用チューブ160aへ流入する。
【0157】
更に、風上側に配列された各第1冷却液用チューブ160aから流出した第1冷却液Y1は、
図12の実線矢印で示すように、第1冷却液側タンク部160cの集合空間163aにて集合して、第1冷却液流出配管165から流出していく。つまり、この熱交換器70では、第1冷却液Y1が、風下側の第1冷却液用チューブ160a→冷却媒体側タンク部430cの第1冷却液用連通空間→風上側の第1冷却液用チューブ160aの順にUターンしながら流れることになる。
【0158】
同様に、冷却液については、風上側の冷却媒体用チューブ430a→第1冷却液側タンク部160cの冷却媒体用連通空間→風下側の冷却媒体用チューブ430aの順にUターンしながら流れることになる。従って、隣り合う第1冷却液用チューブ160aを流通する第1冷却液と冷却媒体用チューブ430aを流通する冷却液とは、その流れ方向が互いに対向する方向となる。
【0159】
また、上述した室外熱交換部160の第1冷却液用チューブ160a、ラジエータ部430の冷却媒体用チューブ430a、第1冷却液側タンク部160cの各構成部品、冷却媒体側タンク部430cの各構成部品およびアウターフィン50は、いずれも同一の金属材料(本実施形態では、アルミニウム合金)で形成されている。
【0160】
そして、第1冷却液側中間プレート部材162を挟み込んだ状態で第1冷却液側固定用プレート部材161と第1冷却液側タンク形成部材163がかしめによって固定され、また、冷却媒体側中間プレート部材432を挟み込んだ状態で冷却媒体側固定用プレート部材431と冷却媒体側タンク形成部材433が、かしめによって固定されている。
【0161】
更に、かしめ固定された状態の熱交換器70全体を加熱炉内へ投入して加熱し、各構成部品表面に予めクラッドされたろう材を融解させ、更に、再びろう材が凝固するまで冷却することで、各構成部品が一体にろう付けされる。これにより、室外熱交換部160とラジエータ部430とが一体化されている。