特許第6020075号(P6020075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020075
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 1/26 20060101AFI20161020BHJP
   B65H 1/14 20060101ALI20161020BHJP
   B65H 7/06 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B65H1/26 310Z
   B65H1/14
   B65H7/06
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-252245(P2012-252245)
(22)【出願日】2012年11月16日
(65)【公開番号】特開2014-101153(P2014-101153A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】端山 幸義
【審査官】 冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−93697(JP,A)
【文献】 特開2001−106388(JP,A)
【文献】 特開平7−319241(JP,A)
【文献】 特開平9−255188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H1/00−3/68、7/00−7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を印刷する印刷部と,
シートを収納する収納部と,
前記収納部に収納されたシートを搬送路内に給紙する給紙部と,
前記収納部内にあってシートを載置し,前記収納部が開状態から閉状態に変化した際には,前記給紙部でのシートの給紙が不可能な非給紙位置にある載置板と,
前記載置板を,前記非給紙位置から前記給紙部でのシートの給紙が可能な給紙位置に移動させる移動機構と,
前記搬送路に位置し,シートの有無を検知する検知部と,
シートの搬送制御を開始してから前記検知部がシートの有無の変化を検知するまでの搬送時間Tを測定する測定部と,
前記載置板が前記給紙位置にある状態で前記給紙部によってシートが給紙されてから当該シートが前記検知部の検知位置に到達するまでの搬送時間βと,前記測定部によって測定された搬送時間Tとが,T>βの関係を満たす場合に,前記収納部の開閉状態に変化があったと判定する判定部と,
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載する印刷装置において,
前記判定部は,前記収納部に収納可能な最大枚数のシートが前記載置板に載置され,前記載置板が前記非給紙位置にある場合に,前記移動機構によって前記非給紙位置から前記給紙位置までの前記載置板の移動にかかる時間である最小移動時間αと,前記搬送時間βと,前記搬送時間Tとが,T≧α+βの関係を満たす場合に,前記収納部の開閉状態に変化があったと判定することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載する印刷装置において,
前記最小移動時間αは,前記収納部の容量,シートの種別,装置内の温度,装置内の湿度の少なくとも1つに応じて異なることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する印刷装置において,
前記搬送時間βは,前記収納部,シートの種別,前記給紙部の消耗度,装置内の温度,装置内の湿度の少なくとも1つに応じて異なることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載する印刷装置において,
前記検知部がシートの有無の変化を検知したタイミングに基づいて,当該シートの搬送方向のサイズを取得する取得部と,
前記取得部にて取得されたサイズを記憶する記憶部と,
シートに印刷を行うか否かを判断する判断部と,
を備え,
前記検知部は,前記印刷部よりもシートの搬送方向の上流側に位置し,
前記印刷部は,前記判断部にて印刷を行うと判断された場合に,シートに画像を印刷し,
前記判断部は,
(1)前記判定部にて前記収納部の開閉状態に変化があったと判定されていないこと,
(2)前記記憶部に記憶されている前回のシート搬送時のシートのサイズと,印刷データに設定されたシートのサイズとが一致すること,
の2つの条件を満たしている場合に,印刷を行うと判断することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載する印刷装置において,
前記判断部は,前記判定部にて前記収納部の開閉状態に変化があったと判定されていない状態で,前記記憶部に記憶されている前回のシート搬送時のシートのサイズと,印刷データに設定されたシートのサイズとが一致しない場合には,印刷を行わないと判断することを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項5に記載する印刷装置において,
前記判断部は,前記判定部にて前記収納部の開閉状態に変化があったと判定されていない状態で,前記記憶部に記憶されている前回のシート搬送時のシートのサイズが,印刷データに設定されたシートのサイズより大きい場合には印刷を行い,前記記憶部に記憶されている前回のシート搬送時のシートのサイズが,印刷データに設定されたシートのサイズより小さい場合には印刷を行わないと判断することを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載する印刷装置において,
前記判断部にて印刷を行わないと判断された場合に,前記収納部に収納されているシートの変更または印刷データの変更を行うよう通知するシート変更通知部
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
請求項5から請求項8のいずれか1つに記載する印刷装置において,
前記判断部は,前記判定部にて前記収納部の開閉状態に変化があったと判定されている場合,前記記憶部に記憶されている前回のシート搬送時のシートのサイズに関わらず,印刷を行うと判断することを特徴とする印刷装置。
【請求項10】
請求項5から請求項9のいずれか1つに記載する印刷装置において,
前記取得部にて取得されたサイズと,前記取得部にて取得対象となったシートを収納していた前記収納部に設定されているシートのサイズとが一致しない場合に,前記収納部に収納されているシートのサイズと,前記収納部に設定されているサイズとを一致させるよう通知する不一致通知部
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項11】
請求項5から請求項10のいずれか1つに記載する印刷装置において,
前記記憶部に記憶されているシートのサイズは,少なくとも電源オフまたは印刷中のシート無し検出のいずれかを契機に消去され,
前記判断部は,前記記憶部にシートのサイズが記憶されていない場合に,印刷を行うと判断することを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,シートに画像を印刷する印刷装置に関する。さらに詳細には,装置内に給紙されるシートを収納する収納部の開閉状態の変化を検知する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,印刷装置に関連する技術として,装置内に給紙されるシートを収納する収納部の開閉を検知する技術が提案されている。例えば特許文献1には,複数の収納部と,各収納部に対応するトレイセットセンサとを備えた給紙装置が開示されている。また,特許文献1では,収納部が引き出されて開状態となった後,再び元に戻されて閉状態になったことをその収納部に対応するトレイセットセンサによって検知し,そのことを契機にその収納部を給紙可能な位置に移動させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−65846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記した従来の技術には,次のような問題があった。すなわち,従来の印刷装置では,シートの収納部の開閉状態の変化を検知するために,各収納部にそれぞれ専用のセンサを設けている。そのため,部品点数が多く,装置構成の複雑化を招くことから,改善の余地がある。
【0005】
本発明は,前記した従来の印刷装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,部品点数が少ない構成でシートの収納部の開閉状態の変化を認識できる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決を目的としてなされた印刷装置は,シートに画像を印刷する印刷部と,シートを収納する収納部と,前記収納部に収納されたシートを搬送路内に給紙する給紙部と,前記収納部内にあってシートを載置し,前記収納部が開状態から閉状態に変化した際には,前記給紙部でのシートの給紙が不可能な非給紙位置にある載置板と,前記載置板を,前記非給紙位置から前記給紙部でのシートの給紙が可能な給紙位置に移動させる移動機構と,前記搬送路に位置し,シートの有無を検知する検知部と,シートの搬送制御を開始してから前記検知部がシートの有無の変化を検知するまでの搬送時間Tを測定する測定部と,前記載置板が前記給紙位置にある状態で前記給紙部によってシートが給紙されてから当該シートが前記検知部の検知位置に到達するまでの搬送時間βと,前記測定部によって測定された搬送時間Tとが,T>βの関係を満たす場合に,前記収納部の開閉状態に変化があったと判定する判定部とを備えることを特徴としている。
【0007】
本明細書に開示される印刷装置は,収納部内でシートを載置する載置板とその載置板を移動させる移動機構とを備える。載置板は,収納部が開状態から閉状態に変化した際には非給紙位置にある。そして,載置板は,移動機構によって非給紙位置から給紙位置に移動される。さらに,給紙部によってシートが給紙されてから検知位置に搬送されるまでの搬送時間βと,シートの搬送制御を開始してから検知部がシートの有無の変化を検知するまでの搬送時間Tとが,T>βの関係を満たす場合には,収納部の開閉状態に変化があったと判定される。なお,収納部が閉状態とは,装置にセットされている状態であり,開状態とは,装置にセットされていない状態である。また,載置板が給紙位置から非給紙位置に移動するタイミングは,例えば,収納部が閉状態から開状態になるときが該当する。また,搬送時間βは,あらかじめ記憶されていてもよいし,サーバ等の外部装置から取得してもよい。搬送時間βは,出荷前のテストで測定した実測値であってもよいし,移動速度と移動距離とによって計算された設計値であってもよい。
【0008】
すなわち,本明細書に開示される印刷装置では,収納部の開閉状態に変化がなければ,載置板が給紙位置にあり,搬送時間Tに載置板を移動させる時間が殆ど含まれない。そのため,搬送時間Tは搬送時間βとほぼ等しい。一方,収納部の開閉状態に変化があれば,載置板が非給紙位置にあり,搬送時間Tには移動機構によって給紙位置に載置板を移動させる移動時間が含まれる。そのため,搬送時間Tは大きくなり,上記の関係を満たす。従って,この構成によれば,収納部の開閉状態の変化を検知するセンサがなくても,収納部の開閉状態の変化を認識できる。
【0009】
また,前記判定部は,前記移動機構によって前記非給紙位置から前記給紙位置までの前記載置板の移動にかかる最小移動時間αと,前記搬送時間βと,前記搬送時間Tとが,T≧α+βの関係を満たす場合に,前記収納部の開閉状態に変化があったと判定するとよい。最小移動時間αを考慮することにより,より厳密に,収納部の開閉状態の変化を認識できる。この最小移動時間αは,あらかじめ記憶されていてもよいし,サーバ等の外部装置から取得してもよい。最小移動時間αは,出荷前のテストで測定した実測値であってもよいし,移動速度と移動距離とによって計算された設計値であってもよい。
【0010】
また,前記最小移動時間αは,前記収納部の容量,シートの種別,装置内の温度,装置内の湿度の少なくとも1つに応じて異なるとよい。最小移動時間αは,列記した要素ごとにばらつきが生じる可能性がある。そのため,これらの要素ごとに最小移動時間αを用意し,現状に適した最小移動時間αを選択して判定部の判定に適用することで,より正確に収納部の開閉状態を検知できる。
【0011】
また,前記搬送時間βは,前記収納部,シートの種別,前記給紙部の消耗度,装置内の温度,装置内の湿度の少なくとも1つに応じて異なるとよい。搬送時間βは,列記した要素ごとにばらつきが生じる可能性がある。そのため,これらの要素ごとに搬送時間βを用意し,現状に適した搬送時間βを選択して判定部の判定に適用することで,より正確に収納部の開閉状態を検知できる。
【0012】
また,本明細書に開示される印刷装置は,前記検知部がシートの有無の変化を検知したタイミングに基づいて,当該シートの搬送方向のサイズを取得する取得部と,前記取得部にて取得されたサイズを記憶する記憶部と,シートに印刷を行うか否かを判断する判断部とを備え,前記検知部は,前記印刷部よりもシートの搬送方向の上流側に位置し,前記印刷部は,前記判断部にて印刷を行うと判断された場合に,シートに画像を印刷し,前記判断部は,(1)前記判定部にて前記収納部の開閉状態に変化があったと判定されていないこと,(2)前記記憶部に記憶されている前回のシート搬送時のシートのサイズと,印刷データに設定されたシートのサイズとが一致することの2つの条件を満たしている場合に,印刷を行うと判断するとよい。収納部の開閉状態に変化がなければ,前回のシート搬送時に取得したサイズと同じサイズのシートが搬送されると推測できる。そのため,印刷データに設定されたサイズと,前回取得したサイズとが一致する場合には,目的のサイズのシートに印刷できる可能性が高いと推測される。そのため,印刷する方が好ましい。
【0013】
また,前記判断部は,前記判定部にて前記収納部の開閉状態に変化があったと判定されていない状態で,前記記憶部に記憶されている前回のシート搬送時のシートのサイズと,印刷データに設定されたシートのサイズとが一致しない場合には,印刷を行わないと判断するとよい。収納部が開閉されていないにもかかわらず,前回のシート搬送時のシートのサイズと印刷データに設定されたシートのサイズとが不一致であれば,目的のサイズのシートに印刷できないおそれがある。そのため,印刷しない方が好ましい。
【0014】
また,前記判断部は,前記判定部にて前記収納部の開閉状態に変化があったと判定されていない状態で,前記記憶部に記憶されている前回のシート搬送時のシートのサイズが,印刷データに設定されたシートのサイズより大きい場合には印刷を行い,前記記憶部に記憶されている前回のシート搬送時のシートのサイズが,印刷データに設定されたシートのサイズより小さい場合には印刷を行わないと判断してもよい。前回のシート搬送時のシートのサイズより,印刷データに設定されたシートのサイズのほうが大きい場合には,画像がはみ出すことはなく,シートに印刷できると推測される。そのため,印刷してもよい。
【0015】
また,本明細書に開示される印刷装置は,前記判断部にて印刷を行わないと判断された場合に,前記収納部に収納されているシートの変更または印刷データの変更を行うよう通知するシート変更通知部を備えるとよい。シートの変更または印刷データの変更を行うことにより,印刷を行わないと判断された理由が解消されて,印刷可能となることが期待できる。そこで,ユーザに前述の変更を促す通知をする方が好ましい。
【0016】
また,前記判断部は,前記判定部にて前記収納部の開閉状態に変化があったと判定されている場合に,印刷を行うと判断するとよい。収納部の開閉状態に変化があれば,収納部に収納されていたシートが他のシートに交換された可能性があり,前回のシート搬送時に取得したサイズの信頼性が低い。そのため,シートサイズの誤認識による印刷回避判断を防止する上で,印刷する方が好ましい。
【0017】
また,本明細書に開示される印刷装置は,前記取得部にて取得されたサイズと,前記取得部にて取得対象となったシートを収納していた前記収納部に設定されているシートのサイズとが一致しない場合に,前記収納部に収納されているシートのサイズと,前記収納部に設定されているサイズとを一致させるよう通知する不一致通知部を備えるとよい。取得部にて取得されたサイズと収納部に設定されているシートのサイズとが一致しない場合には,例えば,収納部に収納されているシートが変更された際に,収納部の設定が変更されなかった可能性がある。不一致を通知することにより,収納部に設定されているサイズを実際に収納されているシートのサイズと一致させることが期待できる。
【0018】
また,前記記憶部に記憶されているシートのサイズは,少なくとも電源オフまたは印刷中のシート無し検出のいずれかを契機に消去され,前記判断部は,前記記憶部にシートのサイズが記憶されていない場合に,印刷を行うと判断するとよい。電源がオフされた場合には,電源オフ中に収納部に収納されていたシートが他のシートに交換された可能性がある。または,印刷中にシートが無いことが検出された場合には,収納部へのシートの収納時に他のシートに交換される可能性がある。つまり,これらの場合には,前回のシート搬送時に取得したサイズの信頼性が低い。そのため,シートサイズの誤認識による印刷回避判断を防止する上で,印刷する方が好ましい。そして,前回のシート搬送時に取得したサイズは,収納部の開閉が行われなかった場合に限って使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば,部品点数が少ない構成でシートの収納部の開閉状態の変化を認識できる印刷装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態に係るプリンタを示す斜視図である。
図2】プリンタの内部構成を示す概略構成図である。
図3】載置板が非給紙位置にある給紙カセットを示す説明図である。
図4】載置板が給紙位置にある給紙カセットを示す説明図である。
図5】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図6】印刷処理の手順を示すフローチャートである。
図7】開閉判定処理の手順を示すフローチャートである。
図8】搬送時間Tを示す説明図である。
図9】最小移動時間αと搬送時間βとのデータベースの例を示す説明図である。
図10】シートサイズ確認処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下,本発明にかかる印刷装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,電子写真方式のカラープリンタに本発明を適用したものである。
【0022】
[プリンタの全体構成]
実施の形態のプリンタ100は,図1に示すように,シートに画像を形成する画像形成部10と,画像形成部10の上面に位置する操作パネル40とを有する。操作パネル40は,液晶ディスプレイからなる表示部41と,スタートキー,ストップキー,テンキー等から構成されるボタン群42とを備える。この操作パネル40により,プリンタ100は,動作状況の表示やユーザによる入力操作が可能になっている。プリンタ100は,印刷装置の一例である。
【0023】
プリンタ100の底部には,印刷前のシートが載置され,プリンタ100本体から着脱可能な給紙カセット91がセットされている。プリンタ100の上面には,印刷済みのシートを載置する排紙トレイ96が設けられている。プリンタ100は,給紙カセット91に収納されているシートに画像形成部10にて画像を印刷して,印刷済みのシートを排紙トレイ96に排紙する。
【0024】
給紙カセット91は,開状態と閉状態とのいずれかの状態とすることができる。閉状態は,図1に示す配置であり,給紙カセット91がプリンタ100に正しくセットされた状態である。給紙カセット91は,プリンタ100の前面側から引き出されると,開状態となる。プリンタ100にて印刷を行うときには,給紙カセット91を閉状態とする。給紙カセット91が開状態では,プリンタ100は,給紙カセット91から給紙して印刷することはできない。給紙カセット91は,収納部の一例である。
【0025】
[プリンタの内部構成]
画像形成部10は,図2に示すように,トナー像を形成し,そのトナー像をシートに転写するプロセス部50と,シート上の未定着のトナーを定着させる定着部8と,給紙カセット91と,排紙トレイ96とを備えている。プロセス部50は,印刷部の一例である。
【0026】
また,画像形成部10内には,底部に位置する給紙カセット91に収納されたシートを搬送する搬送路11が設けられている。シートは,搬送路11に沿って,給紙ローラ71,レジストローラ74,プロセス部50,定着部8を通り,排紙ローラ77を介して上部の排紙トレイ96へと導かれる。なお,図2中では,搬送路11を一点鎖線で示している。給紙ローラ71は,給紙部の一例である。
【0027】
プロセス部50は,カラー画像の形成が可能であり,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色に対応する各構成を並列に配置している。プロセス部50は,周知の電子写真方式によってトナー像を形成するものである。さらに,画像形成部10は,ローラ75,76によって張架され,シートをプロセス部50の転写位置に搬送する搬送ベルト7を備えている。
【0028】
画像形成部10は,給紙カセット91に載置されているシートを給紙ローラ71によって1枚ずつ取り出し,そのシートをプロセス部50に搬送する。搬送路11には,給紙ローラ71より下流でレジストローラ74より上流の位置にシートセンサ72が設けられている。シートセンサ72は,その検知位置にてシートの有無を検知する。給紙ローラ71によって給紙されたシートの先端部がシートセンサ72の検知位置に到達すると,シートセンサ72はシートの有無の変化,具体的には,シートの無からシートの有への変化を検出する。また,搬送中のシートの後端部がシートセンサ72の検知位置に到達すると,シートセンサ72はシートの有無の変化,具体的には,シートの有からシートの無への変化を検出する。シートセンサ72が,検知部の一例である。
【0029】
そして,画像形成部10は,プロセス部50にて形成されたトナー像を,搬送ベルト7にて搬送されるシートに転写する。さらに,トナー像が転写されたシートを定着部8に搬送し,トナー像をそのシートに熱定着させる。そして,定着後のシートを排紙トレイ96に排出する。
【0030】
[給紙カセットの内部構成]
給紙カセット91の内部には,図3図4とに示すように,底部に載置板92が設けられている。複数枚のシートを積み重ねたシート束Bが,載置板92の上に収納される。載置板92は,少なくとも給紙ローラ71に近い側の端部が上下方向に移動する。載置板92は,図3に示す非給紙位置と図4に示す給紙位置との間で移動する。
【0031】
非給紙位置は,例えば,図3に示すように,載置板92のうち少なくとも給紙ローラ71に近い側の端部が,給紙カセット91の底まで下がっている配置である。そして,載置板92が非給紙位置にある場合には,シート束Bのシートと給紙ローラ71とは接していない。従って,非給紙位置では,給紙ローラ71を回転させてもシートを搬送路11に取り出すことはできない。なお,給紙カセット91に収納可能な最大の枚数のシートを収納しても,載置板92を非給紙位置とすれば,シート束Bのシートと給紙ローラ71とは接しない。
【0032】
給紙位置は,図4に示すように,給紙ローラ71に近い側の端部が非給紙位置よりも給紙ローラ71に近い位置にある載置板92の配置である。給紙位置は,例えば,シート束Bの一番上のシートと給紙ローラ71とが接している配置である。シート束Bの一番上のシートと給紙ローラ71とが接している状態で給紙ローラ71を回転させれば,シート束Bの一番上のシートが給紙される。
【0033】
プリンタ100は,閉状態の給紙カセット91の載置板92を上昇させる移動機構93を有している。例えば,給紙ローラ71を回転駆動する駆動モータ78の駆動力が,移動機構93を介して,載置板92に伝達される。つまり,駆動モータ78は,給紙ローラ71を回転させるとともに,載置板92を上昇させる。
【0034】
そのため,給紙カセット91がプリンタ100から引き出され,開状態となると,図示しないクラッチ機構等により,駆動モータ78と移動機構93との駆動が切断される。従って,載置板92は,非給紙位置に配置される。この状態で,ユーザは,給紙カセット91にシートを収納したり,シートを交換したりすることができる。その後,給紙カセット91がプリンタ100にセットされると,給紙カセット91は閉状態となり,図示しないクラッチ機構等により,駆動モータ78の駆動力が移動機構93に伝達できるように駆動が連結される。
【0035】
ただし,給紙カセット91が単に閉状態となっただけでは,載置板92は移動しない。つまり,給紙カセット91が一旦開状態となった後,閉状態へと変化した際には,図3に示すように,載置板92は非給紙位置である。なお,駆動モータ78と移動機構93との間に設けられるクラッチ機構は,給紙カセット91が引き抜かれたときに駆動を切断する切断機構だけでなく,一定以上の駆動力が駆動モータ78から移動機構93に伝達されないように,すべりクラッチ機構をも有している。
【0036】
給紙カセット91の開状態では,プリンタ100は,給紙カセット91からの給紙ができない。給紙カセット91の閉状態では,プリンタ100は,給紙カセット91からの給紙が要求されている印刷データを受信すると,シートの搬送制御を開始する。給紙カセット91が開状態から閉状態となってから初めての給紙の場合には,載置板92が非給紙位置にある。そこで,プリンタ100は,駆動モータ78によって,給紙ローラ71を回転させるとともに,載置板92を上昇させる。つまり,載置板92が非給紙位置にある状態で,給紙カセット91からのシートの搬送制御を開始すると,プリンタ100は,載置板92を上方へ移動させる。載置板92が上昇し,シート束Bの一番上のシートが給紙ローラ71と接触すると,シートが搬送される。載置板92は,給紙ローラ71からの反力が所定値になったところで,図示しないクラッチ機構のすべりクラッチ機構により,上昇を停止する。
【0037】
なお,シート束Bの一番上のシートを給紙した後,載置板92は,適宜,駆動モータ78によってシートの1枚分の厚さだけ上昇される。載置板92は,一旦給紙位置まで移動されると,給紙カセット91が開状態とされない限り,駆動モータ78と移動機構93との駆動連結が切断されないので非給紙位置となることはない。すなわち,プリンタ100は,印刷後も,給紙カセット91が閉状態を維持している限り,載置板92を給紙位置に維持する。なお,移動機構93に加えて,載置板92を,バネ等で給紙ローラ71に向かって機械的に付勢する構成にすると,1枚分ずつ載置板92を上昇させなくても給紙位置を維持することができる。
【0038】
[プリンタの電気的構成]
続いて,プリンタ100の電気的構成について説明する。プリンタ100は,図5に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM(不揮発性RAM)34とを備えた制御部30を備えている。また,制御部30は,画像形成部10,操作パネル40,ネットワークインターフェース37,シートセンサ72,温度センサ73,駆動モータ78等と電気的に接続されている。プリンタ100は,温度センサ73によって,プリンタ100の内部の温度を取得する。プリンタ100は,さらに,湿度センサをも備えていてもよい。
【0039】
ROM32には,プリンタ100を制御するための各種制御プログラムや各種設定,初期値等が記憶されている。CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムや,シートセンサ72等から送られる信号に従って,プリンタ100の各構成要素を制御する。CPU31は,測定部,判定部,取得部,判断部,シート変更通知部,不一致通知部の一例である。
【0040】
RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。RAM33には,例えば,シートセンサ72の検知結果に基づいて取得されるシートのサイズである前回データが記憶される。RAM33は,記憶部の一例である。NVRAM34には,各種の設定値等が記憶される。NVRAM34には,例えば,ユーザによって設定された,給紙カセット91に収納されているシートのサイズが記憶される。ユーザは,給紙カセット91に載置したシートのサイズを,操作パネル40等によって設定する。
【0041】
ネットワークインターフェース37は,LAN等のネットワークに接続され,プリンタ100用のプリンタドライバが組み込まれた外部装置との接続を可能にしている。プリンタ100は,ネットワークインターフェース37を介して印刷データの受け渡しを行うことができる。
【0042】
[印刷処理]
続いて,プリンタ100において印刷を実行する印刷処理について,図6のフローチャートを参照しつつ説明する。印刷処理は,印刷ジョブを受信し,画像形成部10にて印刷動作を開始したことを契機に,CPU31によって実行される。
【0043】
印刷処理を開始すると,CPU31は,まず,給紙カセット91が開閉されたか否かを判定する開閉判定処理を実行する(S101)。S101にて実行される開閉判定処理については,図7のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0044】
[給紙カセットの開閉判定処理]
開閉判定処理では,まず,駆動モータ78による駆動を開始し,給紙ローラ71の回転を開始する(S201)。駆動モータ78による駆動力は,移動機構93を介して載置板92にも伝達され,載置板92のリフトアップを開始する(S202)。S201とS202とがシートの搬送制御の開始に相当する。さらに,タイマをスタートさせる(S203)。このタイマは,測定部の一例である。なお,判定の精度を確保するためには,S201とS202とS203とを,ほぼ同時に開始することが望ましい。
【0045】
続いて,シートセンサ72にてシートの先端部を検出したか否かを判断する(S204)。すなわち,シートの先端部がシートセンサ72の検出位置まで到達したか否かを判断する。シートが未到達の場合は(S204:No),シートがシートセンサ72によって検出されるまで待機する。シートが検出されたら(S204:Yes),タイマの計時時間を取得する(S205)。S205にて取得される時間が,搬送時間Tである。
【0046】
ここで,搬送時間Tについて詳説する。搬送時間Tは,シートの搬送制御を開始してから,シートセンサ72がシートの有無の変化を検出するまでの時間である。例えば,シートの搬送制御を開始した時点で,載置板92が非給紙位置にあった場合の搬送時間Tは,図8に示すように,移動時間T1と搬送時間T2との和である。
【0047】
図8(a)は,シートの搬送制御を開始した時点であり,給紙ローラ71が回転される。次に,載置板92がリフトアップされ,図8(b)に示す給紙位置まで移動される。シート束Bのシートと給紙ローラ71とが接触するとシートが搬送路11へと引き出され,図8(c)に示す位置までシートの先端部が到達することにより,シートセンサ72がシートを検出する。図8(a)から図8(b)まで載置板92が移動するのに掛かる時間が移動時間T1であり,図8(b)から図8(c)までシートが搬送されるのに掛かる時間が搬送時間T2である。
【0048】
給紙ローラ71の回転を開始したときに,載置板92が既に給紙位置にあり,給紙カセット91に収納されているシート束Bのシートが給紙ローラ71に接触していれば,シートは直ちに搬送路11へ給紙される。この場合の搬送時間Tは,シートが給紙ローラ71による給紙を開始されてから,当該シートがシートセンサ72の検出位置まで搬送される時間である。この場合には,移動時間T1≒0であり,搬送時間T≒搬送時間T2である。なお,搬送時間T2は,給紙カセット91の大きさや収納されているシートの多寡にはかかわらず,ほぼ一定である。これを搬送時間βとする。
【0049】
一方,給紙ローラ71の回転を開始したときに,載置板92が非給紙位置にあれば,シート束Bのシートが給紙ローラ71に接触していない。そこで,接触するまで載置板92を上昇させてから,シートの給紙を開始する。従って,非給紙位置から給紙位置まで載置板92を移動させるための移動時間T1が必要である。この場合には,搬送時間T=移動時間T1+搬送時間T2である。
【0050】
移動時間T1は,給紙カセット91に収納されているシートの多寡によって異なる。給紙カセット91における移動時間T1は,収納可能な最大枚数のシートが給紙カセット91に収納されている場合に最小となる。この最小の移動時間T1を最小移動時間αとする。収納されているシートの枚数が少ないほど移動時間T1は大きい。移動時間T1は,最小移動時間α以上である。
【0051】
つまり,シートの搬送制御を開始したときに,載置板92が給紙位置にあれば,移動時間T1はほぼ0であり,搬送時間T2は搬送時間βとほぼ等しい。一方,載置板92が非給紙位置にあれば,移動時間T1は最小移動時間α以上の値であり,搬送時間T2は搬送時間βとほぼ等しい。従って,S205で取得される搬送時間Tと搬送時間βとを比較すれば,シートの搬送制御の開始時に,載置板92が非給紙位置にあったか否かを判定できる。つまり,T>βであれば,載置板92が非給紙位置にあった,すなわち,給紙カセット91が開閉された後の最初のシートの搬送であると判定する。
【0052】
なお,駆動モータ78による駆動のタイミングによっては,シートの搬送制御を開始したときに,載置板92が給紙位置と非給紙位置との間の位置にある可能性もある。つまり,給紙カセット91からシートが給紙された後,1枚分の移動がまだ終了していない時点でシートの搬送制御が開始された場合である。その場合の移動時間T1は,最小移動時間αより小さい。従って,この場合の搬送時間Tは,最小移動時間αと搬送時間βとの和よりは小さい。
【0053】
載置板92が非給紙位置にあれば,移動時間T1は最小移動時間α以上であり,搬送時間T2は搬送時間βとほぼ等しい。従って,搬送時間Tは,最小移動時間α+搬送時間β以上である。一方,載置板92が非給紙位置でなければ,移動時間T1は最小移動時間αより小さいので,搬送時間Tは,最小移動時間α+搬送時間βより小さい。従って,S205で取得される搬送時間Tと最小移動時間α+搬送時間βとを比較すれば,シートの搬送制御の開始時に,載置板92が非給紙位置にあったか否かを,中間の位置も考慮に入れて精密に判定できる。
【0054】
前述の判定を行うために,プリンタ100では,NVRAM34に,最小移動時間αと搬送時間βとを記憶している。最小移動時間αと搬送時間βとは,例えば,図9に示すようなデータベース99に記憶されている。最小移動時間αは,収納されているシートの種別や装置内の温度に応じて異なる。シートの種別は,印刷実行している印刷ジョブに設定されているシートのサイズや厚さの種別である。また,温度は,温度センサ73(図5参照)によって取得される温度である。なお,最小移動時間αと搬送時間βとの各数値は,工場出荷前に測定により取得される実測値であってもよいし,搬送ローラの回転速度と移動距離等から算出される設計値としてもよい。
【0055】
なお,最小移動時間αは,さらに,給紙カセット91の容量ごとに分けて記憶されるとよい。容量の大きい給紙カセット91では,シートの多寡による移動距離の差が大きいため,載置板92の移動速度が速めに設定されることがある。図9では,容量の小さい給紙カセット91のデータベース99の例を示している。また,搬送時間βは,給紙ローラ71の消耗度によって異なる値が記憶されるとさらによい。給紙ローラ71が消耗することにより,シートの搬送速度が変化するからである。
【0056】
図7の説明に戻り,S205にて搬送時間Tを取得した後,CPU31は,NVRAM34のデータベース99から最小移動時間αと搬送時間βとを読み出す(S207)。使用中の給紙カセット91の容量や,印刷実行しているシートの種別,装置内の温度,給紙ローラ71の消耗度等を鑑み,最も適切な最小移動時間αと搬送時間βとを読み出すとよい。
【0057】
そして,S205で取得される搬送時間Tと最小移動時間α+搬送時間βとを比較する(S208)。T≧α+βであれば(S208:Yes),載置板92が非給紙位置にあったことになる。そのため,今回のシート搬送制御の前に給紙カセット91は,開状態とされたとみなすことができる。従って,給紙カセット91の開閉があったと判定する(S209)。
【0058】
一方,T≧α+βでなければ(S208:No),載置板92が非給紙位置になかったことになる。そのため,今回のシート搬送制御の前には,給紙カセット91は,開状態とされていないとみなすことができる。従って,給紙カセット91の開閉がなかったと判定する(S210)。これにより,開閉判定処理を終了する。
【0059】
なお,プリンタ100では,開閉判定とは別に,シートの搬送時には,シートサイズを取得する処理を実行する。そのために,タイマによって,シートの先端部がシートセンサ72の検出位置に到達してから,シートの終端部がシートセンサ72の検出位置に到達するまでの時間を計時する。計時された時間とシートの搬送速度とからシートサイズが算出される。従って,搬送時間Tを取得した後も,タイマによる計時を継続する。計時された時間と搬送速度とから,シートサイズが算出される。シートの先端部がシートセンサ72の検出位置に到達してから,シートの終端部がシートセンサ72の検出位置に到達するまでの間に,シートの搬送が一時停止されるなど,搬送状況に変化があった場合には,その点をも考慮してシートサイズを取得するとよい。
【0060】
[印刷処理の続き]
次に,図6の印刷処理に戻り,S101の開閉判定処理の後,RAM33に前回データが記憶されているか否かを判断する(S102)。前回データは,前回のシート搬送時に取得したシートサイズのデータである。なお,前回データは,プリンタ100の電源オフおよび給紙カセット91のシート無し検出の少なくとも一方が発生した場合に,RAM33から消去される。また,プリンタ100の新品時には,前回データは記憶されていない。なお,プリンタ100は,給紙カセット91からのシート搬送制御を開始してから所定の時間が経過しても,シートセンサ72の検出位置にてシートが検出されなかった場合に,給紙カセット91のシートが無いと判定する。
【0061】
前回データがあると判断した場合には(S102:Yes),続いて,この印刷の前に給紙カセット91が開閉されたか否かを判断する(S103)。S101の開閉判定処理の結果,開閉されなかったと判断された場合には(S103:No),給紙カセット91に収納されているシートは,前回の印刷時から変化していないと推測できる。つまり,給紙カセット91には,前回データのシートサイズのシートが収納されていると推定される。そこで,前回データと今回の印刷データで要求されているシートサイズとを比較する(S104)。
【0062】
前回データと要求サイズとが一致している場合は(S104:Yes),印刷データとシートサイズとの関係が適切である可能性が高い。そこで,1ページの印刷を実行する(S105)。すなわち,受信している印刷データに基づくトナー像を形成し,既に搬送を開始しているシートに転写する。転写されたトナー像は,定着部8にてシートに定着される。
【0063】
なお,前回データがないと判断した場合(S102:No),および,S101の開閉判定処理の結果,給紙カセット91が開閉されたと判断された場合には(S103:Yes),いずれも,S105へ進んで,1ページ印刷する。前回データがない場合には,今回の印刷データで要求されているシートサイズと比較する対象がない。また,給紙カセット91が開閉されたと判断された場合には(S103:Yes),開閉時に給紙カセット91に収納されているシートが入れ替えられた可能性がある。つまり,今収納されているシートについての信頼性の高いデータはない。そこで,これらの場合にもS105に移行し,とりあえず1ページ印刷する。
【0064】
印刷実行時には,さらに,シートサイズ確認処理を実行する(S106)。続いて,シートサイズ確認処理について,図10のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0065】
[シートサイズ確認処理]
シートサイズ確認処理では,まず,シートサイズを取得する(S301)。開閉判定処理においてタイマによる計時を行っているので(図7参照),シートセンサ72の検出位置をシートの先端部が通過した時点から,シートセンサ72の検出位置をシートの後端部が通過した時点までの経過時間を取得できる。取得された経過時間と,シートの搬送速度とに基づいて,シートサイズを取得できる。なお,S301で取得されるシートサイズは,搬送したシートの搬送方向の長さである。
【0066】
次に,今回シートを給紙した給紙カセット91に設定されている設定サイズと,S301で取得したシートサイズとが一致しているか否かを判断する(S302)。プリンタ100には,給紙カセット91に収納されているシートのサイズが設定される。この設定はユーザによって,操作パネル40等から行われる。そして,設定されたサイズは,NVRAM34に記憶されている。
【0067】
設定サイズとS301で取得したシートサイズとが一致している場合には(S302:Yes),S301で取得したシートサイズを前回データとしてRAM33に記憶する(S303)。そして,シートサイズ確認処理を終了する。
【0068】
一方,設定サイズとS301で取得したシートサイズとが一致していない場合には(S302:No),ユーザに設定変更を促す通知を表示部41に表示する(S304)。つまり,給紙カセット91に収納されているシートのサイズと,給紙カセット91に設定されている設定サイズとを一致させるようにユーザに通知する。その際,S301で取得されたシートサイズと,現在給紙カセット91に設定されているサイズとを,表示部41に表示してもよい。その後,前回データを記憶し(S303),シートサイズ確認処理を終了する。
【0069】
[印刷処理の続き]
次に,図6の印刷処理に戻り,S106のシートサイズ確認処理の後,受信した印刷データの印刷はすべて終了したか否かを判断する(S108)。すべての印刷データの処理が終了していれば(S108:Yes),印刷処理を終了する。終了していなければ(S108:No),S101へ戻って次のページの処理を実行する。例えば,給紙カセット91のシート無し検出等により,1ページの印刷の後に給紙カセット91が開閉される可能性もあるので,1ページごとに開閉判定処理を行うことが望ましい。
【0070】
一方,前回データと要求サイズとが一致していない場合は(S104:No),印刷データのサイズとシートサイズとの関係が不適切である可能性が高い。そこで,ユーザにシートサイズの確認と変更を促す表示を,操作パネル40の表示部41に表示する(S111)。すなわち,給紙カセット91に収納されているシートの変更,または,印刷データの変更を行うようユーザに通知する。
【0071】
続いて,前回データが要求サイズより大きいか否かを判断する(S112)。たとえサイズが不一致ではあっても,シートの方が印刷データより大きいのであれば,印刷は可能である。そこで,前回データの方が要求サイズより大きい場合には(S112:Yes),サイズが一致した場合と同様に,S105へ進んで1ページ印刷する。
【0072】
一方,前回データの方が要求サイズより小さい場合には(S112:No),印刷データがシートからはみ出してしまう可能性があるので,印刷を中止する(S113)。すなわち,トナー像を形成せず,既に搬送を開始しているシートを白紙のままで排紙トレイ96に排出する。さらに,シートサイズ確認処理を実行する(S114)。S114は,前述したS106と同様の処理であり,説明を省略する。そして,印刷処理を終了する。前回データの方が要求サイズより小さい場合は,さらに次のページがあっても印刷しないことが好ましい。
【0073】
以上詳細に説明したように本形態のプリンタ100では,給紙カセット91内に,給紙カセット91の開閉によって非給紙位置に移動する載置板92が設けられている。そのため,給紙カセット91が開閉された後の最初の印刷要求では,載置板92をまず非給紙位置から給紙位置まで移動させてから,給紙ローラ71による給紙を行う。一方,印刷実行後に給紙カセット91が開閉されていなければ,載置板92は非給紙位置から上昇した位置にある。つまり,載置板92を移動させる移動時間T1は殆どかからない。プリンタ100では,測定された搬送時間Tが,給紙開始からシートセンサ72の検出位置までの搬送時間βより大きければ,給紙カセット91の開閉が行われたと判定するので,給紙カセット91にセンサが無くても,開閉状態の変化を認識することができる。従って,部品点数が少ない構成でシートの収納部の開閉状態の変化を認識できる印刷装置が実現されている。
【0074】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,印刷装置は,プリンタ100に限らず,複合機,コピー機,FAX装置等,印刷機能を備えるものであれば適用可能である。また,カラー画像の形成が可能であっても,モノクロ画像専用であってもよい。また,インクジェット方式の印刷装置であってもよい。
【0075】
また,例えば,2つ以上の給紙カセット91を備える装置でもよい。その場合は,給紙カセットごとに最小移動時間αと搬送時間βとを記憶するデータベースとするとよい。最小移動時間αは,給紙カセットの大きさや深さ,すなわち収納可能なシートのサイズや枚数等に応じて異なるものとしてもよい。また,搬送時間βは,その給紙カセットの給紙ローラとシートセンサ72の検出位置との距離等に応じて異なるものとしてもよい。
【0076】
また,例えば,データベース99では,最小移動時間αと搬送時間βとを,シートの種別,装置内の温度に加えて,さらに,装置内の湿度に応じて異なるものとしてもよい。そのために,装置内の湿度を取得し,取得された湿度に応じて適切な最小移動時間αと搬送時間βとを読み出すとよい。現状に適した値を選択することで,より正確に開閉状態を検知できる。
【0077】
また,例えば,最小移動時間αと搬送時間βとを自装置のデータベース99に記憶する代わりに,サーバ等の外部装置から取得してもよい。
【0078】
また,例えば,前回データの方が要求サイズより大きいか否かの判断(図6のS112)はなくてもよい。つまり,大小関係にかかわらず,前回データと要求サイズとが一致しない場合は(S104:No),サイズ変更通知(S111)の後,S113へ進み,印刷中止するとしてもよい。
【0079】
また,上記の形態では,前回データをRAM33に記憶するとしたが,NVRAM34等の不揮発性の記憶部に記憶してもよい。
【0080】
また,例えば,シートサイズが一致していると判断したら,その印刷データの残りページについては,開閉判定処理を行わずに連続して印刷するとしてもよい。また,例えば,測定された搬送時間Tに基づいて,給紙カセット91に収納されているシート枚数を推測して通知するようにしてもよい。
【0081】
また,実施の形態に開示されている処理は,単一のCPU,複数のCPU,ASICなどのハードウェア,またはそれらの組み合わせで実行されてもよい。また,実施の形態に開示されている処理は,その処理を実行するためのプログラムを記録した記録媒体,または方法等の種々の態様で実現することができる。
【符号の説明】
【0082】
31 CPU
33 RAM
50 プロセス部
71 給紙ローラ
72 シートセンサ
91 給紙カセット
92 載置板
100 プリンタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10