特許第6020105号(P6020105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6020105ディーゼルエンジンの排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020105
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】ディーゼルエンジンの排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20161020BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20161020BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   F01N3/08 B
   F01N3/24 E
   F01N3/24 L
   F01N3/28 301E
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-267839(P2012-267839)
(22)【出願日】2012年12月7日
(65)【公開番号】特開2014-114714(P2014-114714A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 健二
(72)【発明者】
【氏名】前川 弘吉
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−182804(JP,A)
【文献】 特開2010−138883(JP,A)
【文献】 特開2008−261237(JP,A)
【文献】 特開2000−240441(JP,A)
【文献】 特開2004−324585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの排気ガスを、前段にDOCが配置されたDPFを格納するDPFコンバータを通過させ、前記DPFコンバータを通過した排気ガス中に尿素水を供給し、前記供給された尿素水を還元剤として前記排気ガスに含まれるNOxをSCR触媒で浄化するディーゼルエンジンの排気ガス浄化方法において、
前記尿素水を微粒化し、前記微粒化された尿素水を前記DPFコンバータの外面で加熱し、前記加熱された尿素水を前記DPFコンバータを通過した排気ガス中に供給することを特徴とするディーゼルエンジンの排気ガス浄化方法。
【請求項2】
前記尿素水を、粒径が10nm以上かつ10μm未満である液滴粒子に微粒化する請求項1に記載のディーゼルエンジンの排気ガス浄化方法。
【請求項3】
ディーゼルエンジンの排気管に、前段にDOCが配置されたDPFを格納するDPFコンバータと、尿素水を前記排気管内に供給する尿素水供給手段と、SCR触媒とを上流側から順に介設してなるディーゼルエンジンの排気ガス浄化システムにおいて、
前記尿素水供給手段を、順に接続された前記尿素水の貯留タンクと、アトマイザーと、前記DPFコンバータを外囲する外管と、前記排気管に挿入された尿素水供給管とから構成したことを特徴とするディーゼルエンジンの排気ガス浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムに関し、更に詳しくは、NOx浄化効率及びSCR触媒の耐久性を向上することができるディーゼルエンジンの排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンを搭載した車両から排出される排気ガス中には、粒子状物質(PM:Particulate Matter)や窒素酸化物(NOx:Nitrogen Oxide)などの環境汚染や健康被害の原因となる物質が含まれている。そのため、排出規制値が設定されており、その値は厳しさを増している。この排出規制値を達成するために、燃料の噴射方法、排気ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)などの燃焼システムの改良や、DPF(Diesel Particulate Filter)、尿素水及び選択還元型触媒(SCR:Selective Catalytic Reduction)を用いた尿素SCRシステムなどの後処理システムの導入がなされている。
【0003】
これらのうち尿素SCRシステムは、尿素水が加水分解して生じたアンモニア(NH3)を、SCR触媒の存在下で還元剤として作用させて、排気ガス中のNOxを無害な窒素に還元するものである。SCR触媒としては、鉄イオン交換アルミノシリケートなどのゼオライト触媒が広く用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
尿素SCRシステムにおける還元剤である尿素水は、排気管内を流れる排気ガス中にインジェクターから高圧噴射される。そのため、(1)尿素水から尿素が析出してインジェクターを閉塞させる。(2)排気ガス中での尿素水の拡散性が低いため、SCR触媒での還元反応の低下や気化しない尿素水のSCR触媒上への付着を招く。(3)排気管内及びSCR触媒上で尿素由来の難分解性化合物が析出する。などの問題点が指摘されている。
【0005】
上記の問題点(1)及び(3)は、尿素SCRシステムにおけるNOx浄化効率を低下させる原因となる。また、問題点(2)におけるSCR触媒での還元反応の低下は、NOx浄化効率の低下を招く一方で、尿素水のSCR触媒上への付着は、SCR触媒の耐久性を劣化させる原因となる。
【0006】
そのため、これらの問題点を解消した尿素SCRシステムを用いたディーゼルエンジンの排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムの実現が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−19820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、NOx浄化効率及びSCR触媒の耐久性を向上することができるディーゼルエンジンの排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明のディーゼルエンジンの排気ガス浄化方法は、ディーゼルエンジンの排気ガスを、前段にDOCが配置されたDPFを格納するDPFコンバータを通過させ、前記DPFコンバータを通過した排気ガス中に尿素水を供給し、前記供給された尿素水を還元剤として前記排気ガスに含まれるNOxをSCR触媒で浄化するディーゼルエンジンの排気ガス浄化方法において、前記尿素水を微粒化し、前記微粒化された尿素水を前記DPFコンバータの外面で加熱し、前記加熱された尿素水を前記DPFコンバータを通過した排気ガス中に供給することを特徴とするものである。
【0010】
上記のディーゼルエンジンの排気ガス浄化方法においては、尿素水を粒径が10nm以上かつ10μm未満である液滴粒子に微粒化することが望ましい。
【0011】
また、上記の目的を達成する本発明のディーゼルエンジンの排気ガス浄化システムは、ディーゼルエンジンの排気管に、前段にDOCが配置されたDPFを格納するDPFコンバータと、尿素水を前記排気管内に供給する尿素水供給手段と、SCR触媒とを上流側から順に介設してなるディーゼルエンジンの排気ガス浄化システムにおいて、前記尿素水供給手段を、順に接続された前記尿素水の貯留タンクと、アトマイザーと、前記DPFコンバータを外囲する外管と、前記排気管に挿入された尿素水供給管とから構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のディーゼルエンジンの排気ガス浄化方法及び排気ガス浄化システムによれば、尿素水を微粒化しDPFコンバータの発熱を利用して加熱してから排気ガス中に供給するようにしたので、インジェクターを用いる必要がなく、かつ尿素水が排気ガスと直ちに均一に混合して拡散し、そのほとんどが分解するため、排気ガスのNOx浄化効率及びSCR触媒の耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態からなるディーゼルエンジンの排気ガス浄化システムの構成図である。
図2図1に示すX−X矢視の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態からなるディーゼルエンジンの排気ガス浄化システムを示す。
【0017】
このディーゼルエンジンの排気ガス浄化システム(以下、「排気ガス浄化システム」という。)は、ディーゼルエンジンの排気ガスGが流れる排気管1に上流側から順に介設された、前段にDOC2が配置された連続再生式のDPF3を格納する円筒形のDPFコンバータ4と、SCR触媒5が格納された円筒形のSCRコンバータ6と備えている。また、SCRコンバータ6の入口側の排気管1には、排気管1内に尿素水を供給する尿素水供給手段7が設置されている。
【0018】
DOC2は、排気ガスGの混合機能を有する構造に成形した金属製の担持体に、ロジウム、酸化セリウム、白金、酸化アルミニウム等を担持して形成される。また、連続再生式のDPF3は、多孔質セラミック製のハニカムのチャンネル(セル)の入口と出口を交互に目封じしたモノリスハニカム型のウオールフローフィルタから形成される。
【0019】
SCR触媒5は、ハニカム構造等の担体に、チタニア−バナジア、β型ゼオライト、酸化クロム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化チタンや酸化タングステンなどを担持して形成される。
【0020】
この排気ガス浄化システムの機能は次のようになる。ディーゼルエンジンから排出された排気ガスGは、DPFコンバータ4へ流入すると、前段のDOC2において炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)が分解除去されてから、DPF3においてPMが捕集除去される。そして、この排気ガスGは、DPFコンバータ4から流出すると、尿素水供給手段7から供給された尿素水が加水分解して生成したNH3を同伴してSCRコンバータ6へ流入し、SCR触媒5においてNH3の還元作用によりNOxが浄化される。
【0021】
また、DPF3におけるPMによるフィルタの目詰まりを防ぐために、捕集限界量に達する前にPMを燃焼させて除去する必要がある。排気ガスGの温度が高温であるときには、PMは連続的に自然燃焼するが、低温であるときには、排気ガスG中に燃料の未燃HCなどを供給してDOC2で燃焼させ、その酸化反応熱を利用して、DPF3に堆積するPMを強制的に燃焼させるPM再生が行われる。
【0022】
このような排気ガス浄化システムにおいて、上記の尿素水供給手段7は、尿素水の貯留タンク8と、尿素水を微粒化するアトマイザー9と、微粒化された尿素水を一時貯蔵するバッファー10と、DPFコンバータ4を外囲する外管11と、排気管1に挿入された尿素水供給管12とを、上流側から順に接続することで主に構成されている。
【0023】
アトマイザー9における尿素水の微粒化は、エアタンク13から供給される圧縮空気を用いて行われる。例えば、約250kPaの圧縮空気を用いると、粒径が0.3μmの液滴粒子を106個/cm3の密度で発生させることが可能である。
【0024】
バッファー10は小型のタンクから構成され、エアタンク13からエア供給バルブ14を通じて供給される圧縮空気によりその内圧が調整される。このバッファー10に一時貯蔵される尿素水の液滴粒子の量、逆に言えばバッファー10から下流の外管11及び尿素水供給管12に送られる尿素水の液滴粒子の量は、バッファー10の出入口に設けられた入口バルブ15及び出口バルブ16、並びにエア供給バルブ14の開度をそれぞれ制御することにより決定される。
【0025】
外管11は、図2に示すように、DPFコンバータ4におけるDOC2及びDPF3の格納部分の少なくとも一部を外囲するようにスペーサ17を介して設置されており、DPFコンバータ4の外壁4aを内管とする二重管構造を構成している。
【0026】
バッファー10から送られた尿素水の液滴粒子は、DPFコンバータ4の上流側に位置する外管11の入口から流入し、外管11とDPFコンバータ4との間を通過した後に、尿素水供給管12を通じて排気管1内に供給される。なお、外管11とDPFコンバータ4との間を尿素水の液滴粒子が周方向に均一に通過するように、外管11内に複数の隔壁を設けることが好ましい。
【0027】
更に、DPFコンバータ4の入口側の排気管1にはDPFコンバータ4に流入する排気ガスGの流量を測定する流量センサ18が、SCRコンバータ6の出口側の排気管1にはSCRコンバータ6から流出する排気ガスG中のNOx濃度を測定するNOx濃度センサ19が、それぞれ設置されている。
【0028】
これらの流量センサ18及びNOx濃度センサ19、並びに上記の入口バルブ15、出口バルブ16及びエア供給バルブ14は、それぞれ信号線(一点鎖線で示す)によりECU20に接続されている。
【0029】
このように構成された尿素水供給手段を備えた排気ガス浄化システムにおける排気ガスGの浄化方法を以下に説明する。
【0030】
DPFコンバータ4から流出した排気ガスGには、尿素水供給手段7から尿素水が供給される。この尿素水供給手段7においては、貯留タンク8から供給された尿素水は、アトマイザー9において、粒径が数十nm〜数μmの液滴粒子に微粒化されることでガスと同様の挙動を示すようになる。この微粒化された尿素水はバッファー10で一時貯蔵され、ECU20が流量センサ18のデータ及び/又はNOx濃度センサ19のデータに基づいて決定した必要量が外管11へ送られる。
【0031】
外管11に流入した尿素水の液滴粒子は、外管11内を通過する間にDPFコンバータ4が発生する熱によりDFPコンバータ4の外面を通じて加熱される。このDFPコンバータ4の発熱は、排気ガスGの保有熱、並びにDPF3におけるPMの自然燃焼による発熱及び/又はDOC2の酸化反応熱によりもたらされる。また、外管11内を通過する微粒化された尿素水は、液滴粒子の体積(質量)に対する表面積が大きくなっているため、DPFコンバータ4からの熱を受けて更に微粒化される。DPFコンバータ4の温度が高い場合、例えばDOC2が触媒活性温度(約150℃以上)に達している場合には、尿素水の少なくとも一部は熱分解を起こしてNH3を生成しガス化する。
【0032】
そして、尿素水は外管11内を通過後に、尿素水供給管12を通じて排気管1内を流れる排気ガスG中へ供給されるが、このときの尿素水はガスと同様の挙動をとるようになる。そのため、尿素水は、排気ガスGと混合すると直ちに均一に拡散して排気ガスGの熱を受けやすくなるので、ほとんどの尿素水が分解してNH3を生成するとともに、その生成されたNH3が均一に拡散した状態でSCRコンバータ6へ流入する。
【0033】
このように、尿素水をあらかじめ微粒化するため、尿素水を排気ガスG中に供給する際にインジェクターを用いる必要がない。また、排気ガスG中に供給された尿素水のほとんどが分解するので、難分解性化合物が析出することがなく、かつ尿素水がSCR触媒5上に付着することはない。更に、排気ガスG中に供給された尿素水は、ガスと同様の挙動をとるため、排気ガスGと直ちに均一に混合して拡散する。それらの結果として、NOx浄化効率及びSCR触媒の耐久性を向上することができるのである。
【0034】
上記の尿素水供給手段では、尿素水はアトマイザー9において粒径が数十nm〜数μm(例えば、10nm以上かつ10μm未満)である液滴粒子に微粒化されることが望ましい。液滴粒子の粒径が10nm未満であるとガスと同様の挙動をとる尿素水の気密に掛かる製造コストが過大に増加し、10μm以上であると尿素水がガスと同様の挙動をとらなくなる。
【符号の説明】
【0035】
1 排気管
2 DOC
3 DPF
4 DPFコンバータ
5 SCR触媒
7 尿素水供給手段
8 貯留タンク
9 アトマイザー
10 バッファー
11 外管
12 尿素水供給管
18 流量センサ
19 NOx濃度センサ
20 ECU
図1
図2